説明

ロールベール用草架

【課題】ロール載置作業の作業性が高く、ロール直径に拘りなく、ロールベールをロール載置領域の中心部に、確実に位置決め可能なロールベール用草架を提供する。
【解決手段】ロールベール11を底板12のロール載置領域Aに縦置きするので、ロールベール11の載置時、グラブによりロールベール11を掴む作業性が高まる。また、ロール載置領域Aに載置されたロールベール11は、位置変更手段16によるロール位置決めガイド15の取り付け位置の変更に伴って、ロール直径の大小に拘わりなく、ロール載置領域Aの中心部に、確実に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロールベール用草架、詳しくは複数の牛に対して、乾草(乾いた草)をロール状に束ねたロールベールを効率良く同時に採食させることが可能なロールベール用草架に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳用牛および肉用牛の多頭化が進み、乾草調製作業はタイトベール体系からロールベール体系へと移行している。そこで、ロールベールを複数の牛に効率良く同時に採食させる餌入れとして、ロールベール用草架が開発されている。
従来のロールベール用草架として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1は、平面方形で、かつ前後方向から視て断面逆V字形状を有する底板と、底板の左右縁にそれぞれ立設され、かつ上方に向かうほど外方へ傾斜した1対の左右柵体(左柵体および右柵体)と、前記底板の前後縁にそれぞれ開閉自在に立設された前後1対の内方柵体と、各柵体内に区画された空間を覆う屋根と、底板の左右縁に外方に向けて連結された受皿と、受皿の各上辺部分にそれぞれ設けられ、各柵体に対して略平行な状態で離間配置された外方柵とを備えている。
外方柵および左右柵体は、所定間隔で縦棒を並設してそれぞれ構成されている。また、各内方柵体は、一定角度の傾斜棒を並設してそれぞれ構成されている。
【0003】
特許文献1による牛の採食時には、底板の上に、長さ方向を水平にしたロールベールを、グラブにより掴んで載置する。その後、複数の牛をロールベール用草架に近づけると、各牛はロールベールの乾草を採食するために首をそれぞれ伸ばし、所定の外方柵の縦棒間のすきまから、続く左右柵体の縦棒間のすきまへ順に頭部を差し込んで行く。これにより、各牛は、それぞれの口が底板上のロールベールに達し、乾草を採食することができる。
【特許文献1】特開昭59−95830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には以下の欠点があった。すなわち、(1) 特許文献1では、ロールベールの底板上への載置が、その長さ方向を水平にした横置き方式であった。そのため、ロールベールを底板の上に載置する際、グラブによりロールベールを掴んで行われるロール載置作業が2工程必要であった。すなわち、例えば縦置きのロールベールの外周部をグラブで掴み(1工程)、それからグラブをさらに可動してロールベールを横倒ししていた(2工程)。その結果、縦置きのロールベールの場合に比べて作業性が劣っていた。
(2) しかも、ロールベールの大きさには、直径が100〜130cm程度の中径ロールだけでなく、直径が150〜180cm程度の大型ロールも存在する。そのため、大型ロール用の底板上に中型ロールを載置すると、ロールベールの安定性が低下していた。
【0005】
(3) また、底板の上には、牛が食い残した乾草が溜まり易く、雨などによりこれが固まった場合には掃除がし難かった。
(4) さらに、乾草は雨に濡れると採食性が劣ることから、特許文献1には屋根が設けられている。しかしながら、従来の屋根は、多数枚の屋根板が張られた構造が複雑で重く、さらに高価であった。しかも、ロールベールを底板上に載置する際には、この屋根にロールベールおよびグラブを衝突させないよう慎重に作業を行う必要があった。
【0006】
この発明は、底板上にロールベールを載置する作業性が高まり、ロール直径に拘りなく、ロールベールをロール載置領域の中心部に、確実に位置決めすることができるロールベール用草架を提供することを目的としている。
また、この発明は、底板の上に牛が食い残した乾草が溜まり難く、清掃を容易に行うことができるロールベール用草架を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ロールベールがその長さ方向を垂直に向けて縦置きされるロール載置領域を有した底板と、該底板のうちのロール載置領域より外周部分に立設され、牛の頭部が出し入れされる頭部出入穴が複数形成された側壁体と、該側壁体と前記底板の外周部との少なくとも一方に設けられ、前記ロールベールをロール載置領域にガイドする複数のロール位置決めガイドと、各ロール位置決めガイドを、前記ロール載置領域を中心部とした半径方向に位置変更可能な複数の位置変更手段とを備えたロールベール用草架である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ロールベールが底板のロール載置領域に縦置きされるので、ロールベールをロール載置領域に載置する際(ロール載置時)、グラブによりロールベールを掴んで行うロール載置作業の作業性が高まる。
また、ロール載置領域に載置されたロールベールは、大径なものであっても、小径なものであっても、位置変更手段によりロール位置決めガイドをロール載置領域の半径方向に位置変更させるだけで、ロール載置領域の中心部において外周からしっかりとガイドされる。これにより、ロールベールの直径(ロール直径)に拘りなく、低コストで、かつ簡単な作業を行うだけで、ロールベールをロール載置領域の中心部に確実に位置決めすることができる。
【0009】
牛の種類は限定されない。例えば、乳用牛、肉用牛を採用することができる。
底板の形状としては、例えば四角形、五角形または六角形の多角形でもよい。
ロール載置領域の形成位置は、底板の表面内であれば限定されない。例えば、底板の中央部でもよいし、この中央部から離間した位置でもよい。
側壁体の素材としては、例えば壁板でもよいし、長さ方向に向かって所定ピッチで複数の縦棒が立設された柵体でもよい。壁板の場合、複数の頭部出入穴が所定の間隔で形成されることになる。
頭部出入穴の大きさおよび形状は、飼育する牛の頭部の大きさや形状に合わせ、適宜変更される。
【0010】
ロール位置決めガイドの使用本数は限定されない。例えば2本、3本以上でもよい。
ロール位置決めガイドの形状は限定されない。例えば棒部材、管部材、板部材などを採用することができる。
ロール位置決めガイドが取り付けられるのは、例えば側壁体でもよいし、底板の外周部でもよい。また、側壁体と底板の外周部との両方でもよい。
位置変更手段の構造は限定されない。例えば、位置変更用の複数のピン孔と、所定のピン孔に挿入されるピンとを有したものでもよい。
【0011】
また、各ロール位置決めガイドの取り付け部には、対応するロール位置決めガイドを、ロール載置領域の中心部に向かって弾性的に移動(例えばばねなどの弾性部材の弾性力による移動)させる複数の弾性移動手段を配設してもよい。これにより、ロール直径に拘わりなく、ロールベールをロール載置領域の中心部に、確実かつ自動的に位置決めすることができる。
弾性移動手段としては、例えば、ロール位置決めガイドを、ロール載置領域の中心部に向かって弾性的に回動させる構造のものを採用してもよい。また、ロール位置決めガイドを、ロール載置領域の中心部に向かって水平状態で弾性的に移動(スライド)させる構造のものでもよい。弾性移動手段に組み込まれ、ロール位置決めガイドを弾性的に移動させる部材(弾性部材)としては、例えば、各種のばね材(板ばね、コイルばねなど)、各種のスポンジなどを採用することができる。
【0012】
弾性移動手段を用いれば、ロール載置時、ロールベールがロール載置領域の中心部上に正確に載置されなかったとき、ロールベールの外周部が、位置ずれした側に配置されたロール位置決めガイドの上端部に衝突する。これにより、その接触したロールベールの短尺部分が、弾性移動手段の弾性力に抗して、ロール載置領域の半径方向の外側に向かって移動される。そして、ロールベールは底板のロール載置領域の偏心位置に載置された後、弾性移動手段の弾性力により、ロール位置決めガイドを介して、外方からロール載置領域の中央部に押し込められて位置決めされることになる。
【0013】
また、前記側壁体の各頭部出入穴は、側壁体の長さ方向に傾斜させてもよい。これにより、牛が採食する際に頭部を上下に振る行動を規制することができる。その結果、その首振りの習性に伴う周辺への乾草の飛散を低減することができる。
平面視した側壁体の全体形状としては、例えば四角形、五角形、六角形などを採用することができる。
各頭部出入穴の傾斜角度は、23°〜33°である。23°未満では牛の首が頭部出入穴から簡単に抜けてしまう。また、33°を超えると牛の首が頭部出し入れ穴から抜け難く過ぎる。各頭部出入穴の好ましい傾斜角度は、28°前後である。
【0014】
側壁体の上部には、シート形状の屋根を着脱自在に設けてもよい。こうすれば、ロールベールの底板上への載置作業に伴って屋根を簡単に取り外すことができ、底板上にロールベールを載置する作業性が高まる。しかも、屋根がシート形状であるので、低コストとなる。
【0015】
屋根の材料としては、例えばポリ塩化ビニルシート、ポリプロピレンシートなどの各種の合成樹脂シートを採用することができる。その他、天然繊維または合成繊維からなる織布などを採用してもよい。織布は、ゴム引きのものでもよい。
シート形状の屋根を、側壁体に着脱自在に取り付ける構造は限定されない。例えば、紐または針金による結束、面状ファスナ、ホック、フックなどを採用することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記底板は、取り外し自在な多孔板により構成された請求項1に記載のロールベール用草架である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、底板を、ロールベール用草架の下部から取り外し自在な多孔板により構成したので、底板の上に、牛が食い残した乾草が溜まり、これが雨などによって固まり難い。仮に固まった場合でも、底板が多孔板であるため、固まった乾草との接触が線接触になる。そのため、従来の面接触となる底板に比較して接触面積が小さくなる。これにより、底板から乾草が容易に剥がれ、掃除がし易くなる。すなわち、底板が多孔板であるために水が溜まらず、底板を取り外して、これを軽く手でたたくだけで乾草を落とすことができる。
【0018】
底板を構成する多孔板の使用枚数は限定されない。例えば、1枚でもよいし、2枚、3枚、4枚以上でもよい。
多孔板の素材は限定されない。例えば、鉄、ステンレス、硬質アルミニウムなどの各種の金属でもよい。また、各種の木材(杉、檜など)、各種のプラスチック(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂など)を採用することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、ロールベールがその長さ方向を垂直に向けて縦置きされるロール載置領域を有した底板と、該底板のうちのロール載置領域より外周部分に立設され、牛の頭部が出し入れされる頭部出入穴が複数形成された側壁体とを備えたロールベール用草架であって、前記ロールベールの長さは130cm以下で、前記底板は、成牛の鼻の高さより、前記ロール載置領域に載置されたロールベールの上部が低くなる高さに設けられたロールベール用草架である。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ロールベールの上部(ロールベールの長さ方向(軸線方向)の中間位置より上側の部分好ましくは上端部)が成牛の鼻の高さ(130cm)以下になるように構成している。そのため、採食時に、ロールベールが崩れ難くなり、乾草をこぼさず、効率よく採食することができる。以下、この理由を詳細に説明する。
牛の上顎には、舌の出し入れが容易なように前歯が存在しない。牛は採食時に乾草を舌でからめとり、これを口の中に引き込み、奥歯ですり潰して呑み込む。それには、上顎に前歯がない方が好都合であることから、牛の上顎の前歯は退化したと考えられる。
【0021】
ところで、背景技術の欄に記載された従来のロールベール用草架では、成牛の鼻の高さより高い位置(130cm以上)にロールベールの下部が配置されていた。そのため、牛はロールベールの下部に存在する乾草の一部を舌でからめた後、これを引きちぎっていた。これにより、ロールベールの全体が山崩れし易く、乾草が周囲に飛び散り易かった。そこで、この発明ではロールベールの上部を成牛の鼻の高さ以下に配置している。これにより、牛はロールベールを上から下へと順に食べて行く。その結果、上述した採食時のロールベールの山崩れはほとんどなくなり、牛は乾草を周囲にこぼさず、効率良く採食することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ロールベールを底板のロール載置領域に縦置きするので、ロールベールの載置時、グラブによりロールベールを掴む作業性が高まる。また、ロール載置領域に載置されたロールベールは、位置変更手段によるロール位置決めガイドの取り付け位置の変更に伴って、ロール直径の大小に拘わりなく、ロール載置領域の中心部に、確実に位置決めされる。
【0023】
特に、請求項2に記載の発明によれば、底板を複数の多孔板により組み立て自在に構成したので、底板の上に、牛が食い残した乾草が溜まり、これが雨などにより固まっても、固まった乾草との接触が線接触となることから、底板から乾草が容易に剥がれ、掃除がし易くなる。
【0024】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、ロールベールの上部が成牛の鼻の高さである130cm以下となるように底板の高さを設定したので、採食時に、ロールベールが崩れ難くなり、乾草をこぼさず、効率よく採食することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1〜図4において、10はこの発明の実施例1に係るロールベール用草架で、このロールベール用草架10は、ロールベール11がその長さ方向を垂直に向けて縦置きされるロール載置領域Aを有した底板12と、底板12のうちのロール載置領域Aより外周部分に立設され、牛の頭部が出し入れされる頭部出入穴13が複数形成された側壁体14と、側壁体14とロール載置領域Aとの間で、かつロール載置領域Aの周方向に向かって互いに離間して配設された複数のロール位置決めガイド15と、各ロール位置決めガイド15を、ロール載置領域Aを中心部とした半径方向に位置変更することができる複数の位置変更手段16とを備えている。また、ロールベール11の長さは130cmで、底板12は、成牛の鼻の高さより、ロール載置領域Aに載置されたロールベール11の上部が低くなる高さ(地面より20cm)に設けられている。
このうち、側壁体14の各頭部出入穴13は、側壁体14の長さ方向に傾斜している。底板12は、複数の多孔板17により組み立て自在に構成されている。側壁体14の上部には、屋根シート(シート形状の屋根)18が着脱自在に設けられている。
【0027】
以下、ロールベール用草架10の各構成体を詳細に説明する。
ロールベール用草架10は、4本の側枠19を平面視して正方形状に組んだ底枠部20を有している。底枠部20の各側枠19の中間部同士は、平面視して十字形状を有する十字枠21により連結されている。底枠部20の上側には、上方に向かうほど徐々に外方に傾く4枚の側底板22Aを、角形のラッパ状に組んだ底壁部22が連結されている。各側底板12は、格子状のリブ22aにより外側から補強されている。
【0028】
また、底枠部20の内部空間は、十字枠21によって4つの小空間に区画されている。各小空間は、前記4本のうちの対応する側枠19と、十字枠21のうちの対応する部分との間に架け渡された4枚の平面視して矩形状の前記多孔板17によって、それぞれ上方から通気可能に覆われている。各多孔板17は、ステンレス製のメッシュ板である。これらの側枠部と、十字枠21と、底壁部22と、各多孔板17とにより、ロールベール用草架10のうち、ロールベール11を収納する部分となる乾草収納体23が構成される。
乾草収納体23は、側枠部の各コーナーの下側に垂設された4本の短尺な床支柱24と、十字枠21の中央部の下側に垂設された1本の短尺な床支柱24とにより支持される。このように、短尺な5本の床支柱24を用いて乾草収納体23を低床式としたので、乾草収納体23の支柱部分の耐久性が高まる。しかも、牛が地面に生えた草を採食するときに近い状態で飼育牛が採食できるので、牛がロールベール用草架10内で採食する時間が長くなる。したがって、乾草がロールベール用草架10の外に脱落する量を低減することができる。
【0029】
前記側壁体14は、長尺な1対の横枠棒14aと短尺な1対の縦枠棒14bとを矩形状に組み、かつ横枠棒14aの長さ方向に所定ピッチで多数の縦棒14cが立設された柵体から構成されている。側壁体14は、合計4つ組み込まれている。各側壁体14は、複数の軸受25を介して、使用時にそれぞれ下側となる横枠棒14aを中心として、各側底板22Aの上辺部に回動自在に配設されている。各側壁体14のうち、隣接する縦棒14cとの間の空間がそれぞれ前記頭部出入穴13となる。各頭部出入穴13は、使用状態で上側の横枠棒14aに向かうほど徐々に図2中での右側に約25°だけ傾斜している。
【0030】
各側壁体14は、隣接するもの同士が、それぞれ垂直に立ち上げた状態(使用状態)において、各側壁体14の上側コーナーに配設された掛止構造体(図示せず)を利用してそれぞれ掛止されている。掛止構造体としては、例えば、一方の側壁体14の上端部に形成された掛止孔と、他方の側壁体14に設けられて掛止孔に抜き差し自在な掛止棒とからなるものを採用することができる。各側壁体14を回動自在にすることで、ロールベール用草架10は現場での組み立て方式のものとなる。これにより、輸送コストを低減するとともに、不使用時においてロールベール用草架10をコンパクトに保管することができる。ロールベール11は、倒した側壁体14からロールベール用草架10内に挿入することもできる。また、各側壁体14を倒した状態でロールベール11をロール載置領域Aに載置する作業を行えば、各側壁体14がない分だけ、このロール載置作業を安全かつ容易に行うことができる。
【0031】
各側壁体14には、その使用状態における上側の横枠棒14aに、互いに離間した多数の屋根支柱26を介して、平面視して正方形状でかつ正面視して傾斜角が小さい屋根枠体27が連結されている。屋根枠体27には、ゴム引きされた織布(テント生地)製の屋根シート18が展張されている。また、屋根支柱26および屋根枠体27を各側壁体14に対して着脱自在とすることで、屋根シート18を、直接、各側壁体14の上側の横枠棒14a上に展張するようにしてもよい。
【0032】
次に、図1および図3を参照して、前記ロール位置決めガイド15および前記位置変更手段16とを詳細に説明する。
ロール位置決めガイド15は、それぞれ正面視して長尺部分28と短尺部分29とが直角に連結された略逆L字形状の部材で、合計4本用いられている。各長尺部分28は金属パイプ製である。一方、各短尺部分29は金属棒である。各ロール位置決めガイド15の元部は、軸線方向を水平とした短尺な回動ピン30を介して、十字枠21の4つの端部上に固定された二股ブラケット31にそれぞれ軸支されている。前記各短尺部分29は、軸線方向が水平なピン32を介して、対応する長尺部分28にそれぞれ軸支されている。各短尺部分29の先端部には、軸線方向が水平なピン孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0033】
各短尺部分29は、各側底板22Aの上辺部の内側であって、かつ対応する側底板22Aの長さ方向の中間部に元部がそれぞれ固着された水平なガイド筒33に、それぞれ出し入れ自在に挿入されている。各ガイド筒33は短尺な金属パイプである。各ガイド筒33の軸線は、ロール載置領域Aの中心部にそれぞれ向けられている。各ガイド筒33の長さ方向の両端部には、軸線方向が水平なピン孔33aがそれぞれ形成されている。
各短尺部分29を対応するガイド筒33内に押し込み、各短尺部分29のピン孔と、各ガイド筒33の元部側のピン孔33aとを合致させ、これらに一連に連結ピンPを挿入する。これにより、各長尺部材28は垂直状態となり(図1の実線)、例えば直径180cmの大径のロールベール11をロール載置領域Aの中央部に位置決めして保持することができる。
【0034】
これに対して、各短尺部分29を対応するガイド筒33からほとんど引き出し、各短尺部分29のピン孔と、各ガイド筒33の先部側のピン孔33aとを合致させ、これらに一連に連結ピンPを挿入する。これにより、各長尺部材28は上端部がロール載置領域Aの中央部側に傾斜した状態となり(図1の二点鎖線)、直径130cmの中径なロールベール11をロール載置領域Aの中央部に位置決めして保持することができる。
前記位置変更手段16は、二股ブラケット31、回動ピン30、ガイド筒33、連結ピンPにより主に構成されている。
【0035】
次に、この発明の実施例1に係るロールベール用草架10の使用方法を説明する。
図1〜図4に示すように、屋根枠体27から屋根シート18を外し、その後、グラブによりロールベール11を握る。そして、屋根枠体27の内側に存在する大きな内部空間を通して、ロールベール11を底板12のロール載置領域Aに縦置きする。このようなロール載置作業に関して、従来のロールベール用草架では、軸線を水平にしてロールベール11を底板12に載置していたため、グラブによるロール載置作業が2工程必要であった。これに対して、実施例1のロールベール用草架10では、ロールベール11の縦置きを採用したので、これを解消することができる。その結果、ロール載置作業の作業性が高まる。
【0036】
大径(例えば直径180cm)のロールベール11を採用した場合には、各短尺部分29を対応するガイド筒33内に押し込み、各短尺部分29のピン孔と、各ガイド筒33の元部側のピン孔33aとを合致させ、これらに一連に連結ピンPを挿入して連結する。これにより、各長尺部材28は垂直状態となり(図1の実線)、大径なロールベール11をロール載置領域Aの中央部に位置決めして保持することができる。
これに対して、小径のロールベール11を採用した場合には、各短尺部分29のほとんどを対応するガイド筒33から引き出し、各短尺部分29のピン孔と、各ガイド筒33の先部側のピン孔33aとを合致させ、これらに一連に連結ピンPを挿入して連結する。これにより、各長尺部材28は上端部がロール載置領域Aの中央部側に傾斜した状態となり(図1の二点鎖線)、ロール載置領域Aの有効面積が狭まる。その結果、直径130cmの中径なロールベール11をロール載置領域Aの中央部に位置決めして保持することができる。
【0037】
その後、牛は何れかの頭部出入穴13を通してロールベール用草架10内に頭部を入れ、ロールベール11を採食する。このとき、各頭部出入穴13が25°だけ傾斜しているので、牛が頭部を上下に振りながら採食する動作を規制することができると同時に、牛がロールベール用草架10内で採食する時間を長くすることができる。そのため、底板12上に落ちた乾草も牛が採食し易くなる。これにより、乾草がロールベール用草架10の外に脱落する量を低減させることができる。採食中に口から零れた乾草は、メッシュ形状の底板12上に落下する。屋根シート18は、ロールベール11の載置後、再び屋根枠体27に被せられる。
【0038】
このように、ロール載置領域A上の所定位置に載置されたロールベール11は、大径なものであっても、小径なものであっても、位置変更手段16によりロール位置決めガイド15をロール載置領域Aの半径方向に位置変更させることで、ロール載置領域Aの中心部において外周からしっかりとガイドされる。これにより、ロールベール11の直径に拘りなく、低コストでかつ簡単な作業を行うだけで、ロールベール11をロール載置領域Aの中心部に確実に位置決めすることができる。
【0039】
また、底板12を、ロールベール用草架10の下部から取り外し自在な多孔板17により構成したので、底板12の上に、牛が食い残した乾草が溜まり、これが雨などによって固まり難い。仮に固まった場合でも、底板12が多孔板17であるため、固まった乾草との接触が線接触になる。そのため、従来の面接触となる底板12に比較して接触面積が小さくなる。これにより、底板12から乾草が容易に剥がれ、掃除がし易くなる。
さらに、ロールベール用草架10の屋根をシート形状としたので、ロールベール11の底板12上への載置作業に伴って屋根を簡単に取り外すことができる。これにより、底板12上にロールベール11を載置する作業性が高まる。しかも、屋根がシート形状であるので、低コストとなる。
【0040】
実施例1では、底板12の高さを、ロールベール11の上部が成牛の鼻の高さ(130cm)より低くなるように地面から20cmに設定している。牛の上顎には、舌の出し入れが容易なように前歯が存在しない。牛は採食時に乾草を舌でからめとり、これを口の中に引き込み、奥歯ですり潰して呑み込む。それには、上顎に前歯がない方が好都合であることから、牛の上顎の前歯は退化したと考えられる。
【0041】
ところで、従来のロールベール用草架10では、成牛の鼻の高さより高い位置(130cm以上)にロールベール11の上部が配置されていた。そのため、牛はロールベール11の下部に存在する乾草の一部を舌でからめてから、これを引きちぎることになる。これにより、ロールベール11の全体が山崩れし易く、乾草が周囲に飛び散り易かった。そこで、この発明のようにロールベール11の上部を成牛の鼻の高さ以下に配置すれば、牛はロールベール11を上から下へと順に食べることができる。その結果、上述した採食時のロールベール11の山崩れはほとんどなくなり、牛は乾草を周囲にこぼさず、効率良く採食することができる。
【0042】
次に、図5および図6を参照して、この発明の実施例2に係るロールベール用草架10Aを説明する。
図5および図6に示すように、実施例2のロールベール用草架10Aの主な特徴は、実施例1の位置変更手段16に代えて、ロール位置決めガイド15Aを、ロール載置領域Aの中心部に向かって水平状態でスライド可能な構造の位置変更手段16Aを採用した点である。
【0043】
具体的には、実施例1の各二股ブラケット31に代えて、ロール載置領域Aの中心部に長さ方向が向けられた長尺ブラケット40をそれぞれ使用している。各長尺ブラケット40の長さ方向の両端部には、ピン孔40aがそれぞれ形成されている。また、ここでは、実施例1の各ロール位置決めガイド15に代えて、長尺部分28Aと短尺部分29Aとが一体的に連結されたロール位置決めガイド15Aをそれぞれ採用している。各長尺部材28Aの下端部には、軸線方向が水平なピン孔28aがそれぞれ形成されている。各短尺部分29Aの長さ方向の両端部には、軸線方向が垂直なピン孔28aがそれぞれ形成されている。また、各ガイド筒33Aの先端部には、軸線方向が垂直なピン孔33bがそれぞれ形成されている。
また、実施例2では、屋根枠体27として平坦な屋根用のものを採用している。
【0044】
次に、実施例2のロールベール用草架10Aの使用方法を説明する。
図5および図6に示すように、大径のロールベール11を使用する場合には、各短尺部分29Aを対応するガイド筒33A内に押し込む。そして、各短尺部分Aの元部側のピン孔29aと対応するガイド筒33Aのピン孔33bとを合致させ、これらに一連に連結ピンP1を挿入して連結させる。また、各長尺部分28Aのピン孔28aと、対応する長尺ブラケット40の外側のピン孔40aとを合致させ、これらに一連に連結ピンP2を挿入して連結する。これにより、各長尺部材28Aはロール載置領域Aの外周部で垂直状態となる(図6の実線)。その結果、直径180cmの大径なロールベール11が、ロール載置領域Aの中央部に位置決め状態で保持される。
【0045】
これに対して、小径のロールベール11を採用した場合には、各短尺部分29の全長のほとんどを対応するガイド筒33から外方に引き出す。これにより、ロール位置決めガイド15Aが、ロール載置領域Aの中心部側に所定の長さだけ水平移動される。そして、各短尺部分29Aの先部側(長尺部分28Aとは反対側)のピン孔29aと対応するガイド筒33Aのピン孔33bとを合致させ、これらに一連に連結ピンP1を挿入して連結させる。また、各長尺部分28Aのピン孔28aと、対応する長尺ブラケット40の内側(ロール載置領域Aの中心部側)のピン孔40aとを合致させ、これらに一連に連結ピンP2を挿入して連結させる。これにより、各長尺部材28Aは、ロール載置領域Aの外周部より若干内方で垂直状態となる(図6の実線)。その結果、直径130cmの中径なロールベール11がロール載置領域Aの中央部に位置決め状態で保持される。
その他の構成、作用および効果は、実施例1と略同じであるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施例1に係るロールベール用草架の縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係るロールベール用草架の正面図である。
【図3】図2のS3−S3断面図である。
【図4】この発明の実施例1に係るロールベール用草架の底壁部の平面図である。
【図5】この発明の実施例2に係るロールベール用草架の縦断面図である。
【図6】この発明の実施例2に係るロールベール用草架の位置変更手段の拡大正面図である。
【符号の説明】
【0047】
10,10A ロールベール用草架、
11 ロールベール、
A ロール載置領域、
12 底板、
13 頭部出入穴、
14 側壁体、
15 ロール位置決めガイド、
16 弾性移動手段、
17 多孔板、
18 屋根シート(シート形状の屋根)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールベールがその長さ方向を垂直に向けて縦置きされるロール載置領域を有した底板と、
該底板のうちのロール載置領域より外周部分に立設され、牛の頭部が出し入れされる頭部出入穴が複数形成された側壁体と、
該側壁体と前記底板の外周部との少なくとも一方に設けられ、前記ロールベールをロール載置領域にガイドする複数のロール位置決めガイドと、
各ロール位置決めガイドを、前記ロール載置領域を中心部とした半径方向に位置変更可能な複数の位置変更手段とを備えたロールベール用草架。
【請求項2】
前記底板は、取り外し自在な多孔板により構成された請求項1に記載のロールベール用草架。
【請求項3】
ロールベールがその長さ方向を垂直に向けて縦置きされるロール載置領域を有した底板と、
該底板のうちのロール載置領域より外周部分に立設され、牛の頭部が出し入れされる頭部出入穴が複数形成された側壁体とを備えたロールベール用草架であって、
前記ロールベールの長さは130cm以下で、
前記底板は、成牛の鼻の高さより、前記ロール載置領域に載置されたロールベールの上部が低くなる高さに設けられたロールベール用草架。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−280248(P2006−280248A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102824(P2005−102824)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(591224788)大分県 (31)
【出願人】(592231446)北原電牧株式会社 (18)
【Fターム(参考)】