説明

ロール原紙の搬送システム

【課題】ミルロールスタンドの近傍に待機させるロール原紙の数量を少なくして作業環境を向上させることができ、しかもロール原紙を効率良く供給することができるロール原紙の搬送システムを提供する。
【解決手段】ミルロールスタンド3A,3B,3Cに装填されたロール原紙Wの原紙長に基づいて、ミルロールスタンド3A,3B,3Cに装填されたロール原紙Wの給紙終了時間を算出する時間算出手段と、待機部11,12のロール原紙Wがミルロールスタンド3A,3B,3Cに向って搬出されるタイミングに合わせて待機部11にロール原紙Wを搬入すべく、第1搬送路5におけるロール原紙Wの搬送所要時間と給紙終了時間とに基づいて投入部7からのロール原紙Wの搬送を開始する搬送駆動制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートマシンに設けられた複数のミルロールスタンドにロール原紙を供給するロール原紙の搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートを製造するコルゲートマシンは、帯状の原紙シートがロール状に巻回されてなるロール原紙を支持するミルロールスタンドを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ミルロールスタンドは、段ボールシートの積層数に応じて複数設けられ、1つのミルロールスタンドにつき2つのロール原紙が装填される。原紙シートはミルロールスタンドに装填された一方のロール原紙から繰り出し供給される。そして、一方のロール原紙の原紙残量が少なくなったときには、一方のロール原紙から繰り出されていた旧原紙シートを当該ロール原紙から切り離し、旧原紙シートの終端を他のロール原紙から引き出された原紙シートの始端部に貼り合わせて紙継ぎされる。これにより、紙継ぎ伴うコルゲートマシンの停止時間を短縮することができる。原紙残量が少なくなったロール原紙は、ミルロールスタンドの一方側から取り外して排出され、そこに新たにロール原紙が装填され、次回の紙継ぎに備えられる。
【0004】
ロール原紙は、搬送路に沿って搬送されて各ミルロールスタンドに供給される。従来、この種の搬送路は、ロール原紙を投入する投入部と、この投入部から投入されたロール原紙を各ミルロールスタンドの配列方向に沿って搬送する第1搬送路と、前記第1搬送路から分岐してロール原紙を各ミルロールスタンドに向って搬送する複数の第2搬送路とで構成されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このものでは、各ミルロールスタンドの近傍からロール原紙を投入することなく、第1搬送路から各第2搬送路にロール原紙を分配して供給することができるので、各ミルロールスタンドの近傍にフォークリフト等による投入スペースを設ける必要がなく、工場の省スペース化を図ることができる。
【0006】
しかし、投入部と第2搬送路との間を繋ぐ第1搬送路による搬送距離が比較的長いために、各ミルロールスタンドへのロール原紙への供給が迅速に行えないおそれがある。このため、第1搬送路や第2搬送路上に複数のロール原紙を待機させることが行われ、作業者の作業スペースが圧迫されて作業環境が低下する不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−318633号公報
【特許文献2】特開2002−167086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、ミルロールスタンドの近傍に待機させるロール原紙の数量を少なくして作業環境を向上させることができ、しかもロール原紙を効率良く供給することができるロール原紙の搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コルゲートマシンに設けられた複数のミルロールスタンドにロール原紙を供給するロール原紙の搬送システムであって、ロール原紙を投入する投入部と、該投入部から投入されたロール原紙を前記ミルロールスタンドの配列方向に沿って搬送する第1搬送路と、該第1搬送路から分岐してロール原紙を各ミルロールスタンドに向って搬送する複数の第2搬送路と、各第2搬送路に設けられ、ミルロールスタンドに装填するロール原紙を待機させる待機部と、第1搬送路及び第2搬送路におけるロール原紙の搬送を制御する搬送制御手段とを備え、前記搬送制御手段は、ミルロールスタンドに装填されたロール原紙の原紙長に基づいて、ミルロールスタンドに装填されたロール原紙の給紙終了時間を算出する時間算出手段と、待機部のロール原紙がミルロールスタンドに向って搬出されるタイミングに合わせて該待機部にロール原紙を搬入すべく、第1搬送路におけるロール原紙の搬送所要時間と前記給紙終了時間とに基づいて投入部からのロール原紙の搬送を開始する搬送駆動制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の構成を備えることにより、待機部のロール原紙がミルロールスタンドに向って搬出されると、そのタイミングに合わせて待機部にロール原紙が搬入される。これにより、工場の省スペース化を図るために第1搬送路を介して投入部がミルロールスタンドから比較的離れた位置に設けられていても、タイムロスが生じることなくロール原紙を効率よく供給することができる。そして、待機部以外の位置でロール原紙を待機させる必要がなく、ミルロールスタンド近傍でのロール原紙の待機数量を削減することができるので、作業者の作業スペースを広くして作業環境を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の搬送システムを模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に模式的に示すように、本実施形態における搬送システムは、段ボールシートを製造するコルゲートマシンに設けられて段ボールシートの材料となる原紙が繰り出し自在に巻回されたロール原紙Wを搬送するものである。
【0013】
コルゲートマシンは、その全体についての図示は省略したが、一部の構成として、シングルフェーサ1とダブルフェーサ2とを備えている。シングルフェーサ1は、波形の中芯の一方面にライナを貼り合わせて片面段ボールシートを製造し、次いで、ダブルフェーサ2は、片面段ボールシートの中芯の他方面に他のライナを貼り合わせて両面段ボールシートを製造する。
【0014】
シングルフェーサ1の前後及びダブルフェーサ2の前方には第1〜第3のミルロールスタンド3A,3B,3Cが各々設けられている。各ミルロールスタンド3A,3B,3Cは、周知であるため詳しい構成の説明は省略するが、ロール原紙Wを着脱自在且つ回転自在に支持する一対の原紙支持部4を備えている。
【0015】
各ミルロールスタンド3A,3B,3Cが一対の原紙支持部4を有するのは、一方の原紙支持部4に支持したロール原紙から原紙を繰り出しているとき、他方の原紙支持部4でロール原紙を準備し、自動的に紙継ぎを行なうことでコルゲートマシンの連続運転を行うためである。
【0016】
シングルフェーサ1の前方に配設された第1ミルロールスタンド3Aには、表ライナ用のロール原紙Wが2系列に交互に供給され、シングルフェーサ1の後方に配設された第2ミルロールスタンド3Bには、中芯用のロール原紙Wが2系列に交互に供給され、ダブルフェーサ2の前方に配設された第3ミルロールスタンド3Cには、裏ライナ用のロール原紙Wが2系列に交互に供給される。
【0017】
次に、本実施形態におけるロール原紙Wの搬送経路について説明する。第1〜第3のミルロールスタンド3A,3B,3Cの配列方向に沿って、ロール原紙Wを一定方向(図中、矢印方向)に所定の速度で搬送する搬入コンベア5(第1搬送路)と搬出コンベア6とが設けられている。搬入コンベア5と搬出コンベア6とは、各ミルロールスタンド3A,3B,3Cを介して平行に延設されている。
【0018】
搬入コンベア5の上流端には、3つの投入テーブル7(投入部)が連設されている。各投入テーブル7には、図示しない保管庫に保管されているロール原紙Wが、オーダシートに基づいてフォークリフト等により移載される。このとき、3つの投入テーブル7には、夫々、表ライナ用、中芯用、裏ライナ用とでロール原紙Wが振り分けて載置される。
【0019】
各投入テーブル7は、その底板が搬入コンベア5に向って傾斜しており、ストッパ8の開閉操作によりロール原紙Wを所定のタイミングで搬入コンベア5に投入できるようになっている。
【0020】
各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの原紙支持部4と搬入コンベア5との間には、搬入コンベア5に直交する方向に延びる移送コンベア9(第2搬送路)が設けられている。
【0021】
搬入コンベア5によりロール原紙Wが搬送されて、その搬入コンベア5が移送コンベア9の上流端に対応する位置で停止されると、各移送コンベア9に対応して搬入コンベア5に沿って設けられたキッカ10が移送コンベア9に向ってロール原紙Wを押圧する。これによりロール原紙Wは移送コンベア9上に転動する。
【0022】
各移送コンベア9には、ロール原紙Wを待機させる第1及び第2の待機部11,12が設けられている。移送コンベア9の上流部に位置する第1待機部11は、ロール原紙Wを載置する昇降自在のリフタ13を備えている。このリフタ13は、ロール原紙Wを持ち上げた状態で床面とに所定の空隙を形成し、ロール原紙Wの転動を防止して待機させる。
【0023】
第2待機部12は、図示しないが第1待機部11と同様のリフタを備えており、ロール原紙Wを持ち上げた状態で床面とに所定の空隙を形成し、ロール原紙Wの転動を防止して待機させる。
【0024】
移送コンベア9は図示しない台車が走行することにより台車上にロール原紙Wを載置して移送する。第1待機部11及び第2待機部12のロール原紙Wは、床面との間に所定の空隙を存して待機状態とされているので、台車は第1待機部11又は第2待機部12のロール原紙Wの下方に進入自在とされる。台車は、移送コンベア9に設けられた図示しない牽引チェーン等により牽引されて原紙支持部4と第1待機部11との間で往復移動される。
【0025】
また、移送コンベア9は、各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの原紙支持部4の位置から送出コンベア14に連続する。送出コンベア14は、各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの原紙支持部4から取り外されたロール原紙Wを搬出コンベア6に向って送出する。
【0026】
ここで、原紙支持部4から取り外されたロール原紙Wが送出コンベア14に沿って送り出されると、第2待機部12のロール原紙Wがリフタの下降により台車上に載置され、原紙支持部4の位置まで移送される。原紙支持部4にロール原紙Wが装填されて台車が解放されると、この台車が第1待機部11のロール原紙Wの下方に移動し、リフタ13が下降して台車上に第1待機部11のロール原紙Wが載置される。その後、台車は第2待機部12までロール原紙Wを移送するが、移送中には図示しない回転手段により台車が回転してロール原紙Wの軸線と原紙支持部4の軸線とが一致する姿勢とされる。
【0027】
そして、第1待機部11のリフタ13上にロール原紙Wが無くなると、この第1待機部11には、搬入コンベア5からのロール原紙Wが供給される。
【0028】
本実施形態においては、移送コンベア9の第1待機部11から第2待機部12へのロール原紙Wの移送中にロール原紙Wの軸線と原紙支持部4の軸線とを一致させるべくロール原紙Wの回転が行われるので、例えば、搬入コンベア5に回転テーブル等の大掛かりな機構を設ける必要がなく、装置構成を簡単としてしかも省スペース化が実現できる。
【0029】
原紙支持部4から取り外されたロール原紙Wは送出コンベア14の図示しない台車上に載置され、搬出コンベア6上に送出される。このとき、図示しない回転手段により台車が回転してロール原紙Wの軸線が搬出コンベア6の搬送方向に沿うように回転される。搬出コンベア6の下流に搬送されたロール原紙Wは、ターンテーブル15を経て排出テーブル16に排出される。排出テーブル16上のロール原紙Wは、フォークリフト等によって保管庫の所定の位置まで運搬されて保管される。
【0030】
以上のように構成された搬送経路におけるロール原紙Wの搬送は、搬送制御手段17により制御される。搬送制御手段17は、シングルフェーサ1及びダブルフェーサ2の作動制御手段と通信可能に接続されたコンピュータにより構成されており、図示しないが、各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの原紙支持部4に装填された各ロール原紙W毎の給紙終了時間を算出する第1演算手段(本発明の時間算出手段に相当する)と、各投入テーブル7から各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの原紙支持部4に対応する移送コンベア9の第1待機部11までのロール原紙Wの搬送所要時間を算出する第2演算手段と、投入テーブル7のストッパ8及び搬入コンベア5の駆動を制御する搬送駆動制御手段とを、機能の一部として備えている。
【0031】
また、搬送制御手段17は、投入テーブル7への載置時にロール原紙Wの種別及び原紙残量(原紙長)を採取し、投入テーブル7上の個々のロール原紙Wが何れの移送コンベア9に供給するかを決定する。このとき採取したロール原紙Wの種別及び原紙長は記憶手段に記憶される。
【0032】
ここで、本発明の要旨に係る搬送制御手段17による制御について説明する。第1ミルロールスタンド3Aの一方の原紙支持部4にロール原紙Wが装填されたとき、先ず、搬送制御手段17は、記憶手段に記憶されたロール原紙Wの原紙長を読み出すと共に、コルゲートマシンに設定された第1ミルロールスタンド3Aの原紙供給速度(ロール原紙Wから原紙が繰り出される速度)を採取し、第1演算手段による演算を行う。第1演算手段においては、原紙支持部4に装填されたロール原紙Wの給紙終了時間(ロール原紙Wの供給開始から供給終了までの予測所要時間)が算出される。
【0033】
次いで、搬送制御手段17は、搬入コンベア5に設定されたロール原紙Wの搬送速度を採取し、その値を第2演算手段に渡す。第2演算手段は、搬入コンベア5における各ミルロールスタンド3A,3B,3Cの夫々の移送コンベア9の上流端に対応する位置までの距離をデータテーブルに保持しており、搬入コンベア5の搬送速度と搬送距離とを用いて搬送所要時間(投入テーブル7から投入されたロール原紙Wが移送コンベア9の上流端に到着するまでの予測所要時間)を算出する。
【0034】
なお、第2演算手段により搬送所要時間を算出することにより、搬入コンベア5の搬送速度の変更に対応することができるが、搬入コンベア5の搬送速度が変更されない場合には、投入テーブル7から投入されたロール原紙Wが各移送コンベア9の上流端に到着するまでの所要時間を予め採取しておき、それらの時間をデータテーブルに保持して用いてもよい。
【0035】
一方、第1ミルロールスタンド3Aの一方の原紙支持部4に装填されているロール原紙Wからは、シングルフェーサ1への原紙の供給が進み、ロール原紙Wの原紙残量が減少する。この間、搬送制御手段17は、搬送駆動制御手段によって、ロール原紙Wの供給経過時間を監視する。そして、搬送駆動制御手段は、第1演算手段が算出した給紙終了時間から供給経過時間を減算し、その残り時間が第2演算手段が算出した搬送所要時間となったとき、投入テーブル7のストッパ8を開としてロール原紙Wを搬入コンベア5上に転動させ、更に搬入コンベア5を駆動して、ロール原紙Wの搬送を開始する。
【0036】
これにより、第1ミルロールスタンド3Aの一方の原紙支持部4に装填されているロール原紙Wからの原紙供給が終了したときには、新たなロール原紙Wが移送コンベア9に向って搬入可能な位置に搬送されている状態となる。そして、第2待機部12のロール原紙Wが原紙支持部4に移送され、第1待機部11のロール原紙Wが第2待機部12に移送されると、即座に、搬送駆動制御手段は、キッカ10を駆動し、搬入コンベア5から第1待機部11にロール原紙Wを移載する。
【0037】
以上の搬送制御手段17の作動は、全てのミルロールスタンド3A,3B,3Cへのロール原紙Wの搬送に対して行われる。
【0038】
これによれば、各移送コンベア9上に待機させるロール原紙Wの数量が削減できるので、ミルロールスタンド3A,3B,3Cの近傍における作業者の作業スペースが多数のロール原紙Wにより圧迫されることがなく、作業環境が向上する。しかも、搬送制御手段17の制御により、ロール原紙Wを迅速に供給することができるので、段ボールシートの製造を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
W…ロール原紙、3A,3B,3C…ミルロールスタンド、5…搬入コンベア(第1搬送路)、7…投入テーブル(投入部)、9…移送コンベア(第2搬送路)、11…第1待機部(待機部)、17…搬送制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルゲートマシンに設けられた複数のミルロールスタンドにロール原紙を供給するロール原紙の搬送システムであって、
ロール原紙を投入する投入部と、該投入部から投入されたロール原紙を前記ミルロールスタンドの配列方向に沿って搬送する第1搬送路と、該第1搬送路から分岐してロール原紙を各ミルロールスタンドに向って搬送する複数の第2搬送路と、各第2搬送路に設けられ、ミルロールスタンドに装填するロール原紙を待機させる待機部と、第1搬送路及び第2搬送路におけるロール原紙の搬送を制御する搬送制御手段とを備え、
前記搬送制御手段は、ミルロールスタンドに装填されたロール原紙の原紙長に基づいて、ミルロールスタンドに装填されたロール原紙の給紙終了時間を算出する時間算出手段と、待機部のロール原紙がミルロールスタンドに向って搬出されるタイミングに合わせて該待機部にロール原紙を搬入すべく、第1搬送路におけるロール原紙の搬送所要時間と前記給紙終了時間とに基づいて投入部からのロール原紙の搬送を開始する搬送駆動制御手段とを備えることを特徴とするロール原紙の搬送システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−79125(P2013−79125A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219287(P2011−219287)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(390022895)株式会社トーモク (45)
【出願人】(592247595)株式会社神戸製作所 (19)
【Fターム(参考)】