説明

ロール基材用印刷機、及び、ロール基材の印刷方法

【課題】ロール紙に対する印刷及び当該ロール紙の印刷面への艶出しコーティングを位置精度良く行うことがに可能なロール紙用印刷機、及び、ロール紙の印刷方法を提供する。
【解決手段】ロール紙搬送機構によってロール紙9を搬送し、当該ロール紙に設けられた見当マークを見当装置4によって検出することによりロール紙の搬送方向及び幅方向の位置決めを行い、位置決めされたロール紙に対し印刷ユニット5により印刷を行うロール基材用印刷機において、印刷ユニットの後段に、当該印刷ユニットによる印刷後のロール紙の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティングユニット6を配設し、見当装置による位置決め、印刷ユニットによる印刷、及び艶出しコーティングユニットによる艶出しコーティングの一連の工程をインラインで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、樹脂、或いは金属フィルム等からなるロール基材を繰出しながら当該ロール基材に対して印刷及び艶出しコーティングを行うロール基材用印刷機、及び、ロール基材の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枚葉紙の印刷面を部分的に樹脂層を形成して当該部分の艶出しを行う枚葉印刷紙面の艶出しコーティング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1で提案されている艶出しコーティング装置は、樹脂塗料塗布機構の上流側に見当装置を備えており、この見当装置によって個々の枚葉紙に設けられた見当マーク(所謂トンボ)を検出し、この見当マークに基づいて枚葉紙の搬送方向及び横方向の位置決めをすることで、枚葉紙の印刷面を部分的に艶出しコーティングすることが可能となっている。
【0003】
【特許文献1】特公平7−106627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ロール紙等のロール状の基材に対して輪転印刷機による印刷を行った後、当該印刷後のロール基材の印刷面に上記艶出しコーティング装置によってオフラインで艶出しを行う場合、位置決め精度が低下するという問題があった。即ち、輪転印刷機によってロール基材に対して印刷を行う際にはロール基材に対して一定のテンションを付与しているので、このテンションが掛かることによってロール基材が伸張する。このロール基材の伸張量は、ロール基材の外側と内側とによっても異なる。また、印刷中と印刷後とでは温度変化があるため、この温度変化によってもロール基材の伸縮が生じる。このため、印刷後のロール基材を艶出しコーティング装置にセットして艶出しコーティングを行う際には、見当装置を用いて位置決めをしても、印刷位置とコーティング位置とにずれが生じる虞がある。
【0005】
また、艶出しコーティングをオフラインにした場合には、印刷時とコーティング時とで装置が異なるのでコストの面で不利であり、また、全ての印刷が終了した後に艶出しコーティングを行うので、例えばコーティング後の色合いや艶等の仕上がりが予定していたものとは違っていた場合においても、最悪の場合には最初から印刷をし直す必要がある等、フィードバックが難しいという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロール基材に対する印刷及び当該ロール基材の印刷面への艶出しコーティングを位置精度良く行うことが可能なロール基材用印刷機、及び、ロール基材の印刷方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、ロール基材搬送機構、見当装置、及び印刷ユニットを備え、
前記ロール基材搬送機構によってロール基材を搬送し、当該ロール基材に設けられた見当マークを前記見当装置によって検出することによりロール基材の搬送方向及び幅方向の位置決めを行い、位置決めされたロール基材に対し前記印刷ユニットにより印刷を行うロール基材用印刷機において、
前記印刷ユニットの後段に、当該印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティングユニットを配設し、
前記見当装置による位置決め、前記印刷ユニットによる印刷、及び前記艶出しコーティングユニットによる艶出しコーティングの一連の工程をインラインで行うことを特徴とするロール基材用印刷機である。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記艶出しコーティングユニットは、前記印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行うことを特徴とする請求項1に記載のロール基材用印刷機である。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記艶出しコーティングユニットは、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料をロール基材に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成機構と、光線を透過可能な樹脂フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜を当該フィルムの表面に圧着させる一対の加圧ローラと、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化装置と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール基材用印刷機である。
【0010】
請求項4に記載のものは、前記艶出しコーティングユニットは、光線を透過可能な樹脂フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料を樹脂フィルムに塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成機構と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜をロール基材の表面に転写させる一対の加圧ローラと、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化装置と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール基材用印刷機である。
【0011】
請求項5に記載のものは、ロール基材搬送機構によって搬送されたロール基材に対し、当該ロール基材に設けられた見当マークを検出することにより、ロール基材の搬送方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め工程と、
位置決め工程を経て位置決めされたロール基材に対し印刷ユニットにより印刷を行う印刷工程と、
前記印刷工程後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティング工程とを、インラインで一連に行うことを特徴とするロール基材の印刷方法である。
【0012】
請求項6に記載のものは、前記艶出しコーティング工程では、印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行うことを特徴とする請求項5に記載のロール基材の印刷方法である。
【0013】
請求項7に記載のものは、前記艶出しコーティング工程は、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料をロール基材に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜を当該フィルムの表面に圧着させる圧着工程と、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロール基材の印刷方法である。
【0014】
請求項8に記載のものは、前記艶出しコーティング工程は、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料を樹脂フィルムに塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜をロール基材の表面に転写させる転写工程と、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロール基材の印刷方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、印刷ユニットの後段に、当該印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティングユニットを配設し、見当装置による位置決め、印刷ユニットによる印刷、及び艶出しコーティングユニットによる艶出しコーティングの一連の工程をインラインで行うので、印刷及び艶出しコーティングにおけるロール基材に対するテンションや温度等の条件を揃えることができ、これにより、印刷と艶出しコーティングを別個の装置でオフラインで行う構成と比較してロール基材の印刷面における艶出しコーティングの位置精度を高めることが可能となる。
【0016】
また、印刷と艶出しコーティングとを同一の装置によってインラインで行うので、印刷と艶出しコーティングを別個の装置でオフラインで行う構成と比較して、コストを低減することができる。
【0017】
さらに、印刷及び艶出しコーティングが終了した全体的な仕上がり状態を逐次確認できるので、例えばコーティング後の色合いや艶等の仕上がりが予定していたものとは違っていた場合にも、この仕上がりに応じて印刷ユニットにおける色合いの調整や艶出しコーティングユニットにおけるコーティングの厚さ等の調整を行うことが容易である。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、艶出しコーティングユニットが、印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行う構成を採用した場合に、艶出しコーティング予定部位と、実際の艶出しコーティング部位との位置ずれを防止することができるので好適である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ロール基材搬送機構によって搬送されたロール基材に対し、当該ロール基材に設けられた見当マークを検出することにより、ロール基材の搬送方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め工程と、位置決め工程を経て位置決めされたロール基材に対し印刷ユニットにより印刷を行う印刷工程と、印刷工程後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティング工程とを、インラインで一連に行うので、印刷及び艶出しコーティングにおけるロール基材に対するテンションや温度等の条件を揃えることができ、これにより、印刷工程と艶出しコーティング工程を別個にオフラインで行う場合と比較してロール基材の印刷面における艶出しコーティングの位置精度を高めることが可能となる。
【0020】
また、印刷と艶出しコーティングとをインラインで行うので、印刷と艶出しコーティングを別個にオフラインで行う場合と比較して、コストを低減することができる。
【0021】
さらに、印刷及び艶出しコーティングが終了した仕上がり状態を逐次確認できるので、例えばコーティング後の色合いや艶等の仕上がりが予定していたものとは違っていた場合にも、この仕上がりに応じて印刷ユニットにおける色合いの調整や艶出しコーティングユニットにおけるコーティングの厚さ等の調整を行うことが容易である。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、艶出しコーティング工程において、印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行う場合に、艶出しコーティング予定部位と、実際の艶出しコーティング部位との位置ずれを防止することができるので好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るロール基材用印刷機としてグラビア輪転印刷機を例に挙げて本発明の実施の最良の形態を図面に基づき説明する。図1は、本実施形態のグラビア輪転印刷機の構成を示す図である。
例示したグラビア輪転印刷機1は、巻き出しロール部2、インフィード3、見当装置4、複数の印刷ユニット5、艶出しコーティングユニット6、アウトフィード7、及び、巻取りロール部8を備えて構成されている。巻き出しロール部2は、印刷対象のロール紙9(ロール基材の一種)がセットされており、当該ロール紙9を印刷ユニット5側に順次巻き解いて繰り出す。インフィード3は、巻き出しロール部2から巻き出されるロール紙9を一定のテンションを保ちながら印刷ユニット5側へ送り出す。このインフィード3と印刷ユニット5との間には見当装置4が設けられている。見当装置4は、ロール紙9の印刷面における印刷領域外に設けられた見当マークを検出し、この見当マークの検出に基づいてロール紙9の搬送方向及び幅方向の位置決めを行う。尚、見当マークは、ロール紙9に予め印刷しておいても、或いは巻き出しロール部2から巻き出した状態で印刷しても良い。そして、見当装置4は、見当マークを検出して最初の印刷ユニット5での位置合わせを行うことができれば、当該印刷ユニット5に配置しても良い。
【0024】
本実施形態におけるグラビア輪転印刷機1は、合計4台の印刷ユニット5を備え、4色刷を行うようになっている。各印刷ユニット5は、ガイドローラ11によってロール紙9を案内しつつ、一対の版胴12及び圧胴13によって当該ロール紙9に対して印刷を行う。なお、各印刷ユニット5には、何れも図示しないが、版胴12を回転駆動するための駆動源や、版胴12の回転角に応じて信号を出力するロータリーエンコーダ等から構成される回転センサを備えており、各印刷ユニット5の版胴12の回転同期を取ることが可能となっている。
【0025】
艶出しコーティングユニット6は、印刷ユニット5の後段に配設されており、印刷ユニット5による印刷後のロール紙9の印刷面に艶出しコーティングを行う。本実施形態における艶出しコーティングユニット6は、ロール紙9の印刷面を、代表的な光線硬化樹脂である紫外線硬化樹脂の膜でコーティングするものである。この艶出しコーティングユニット6の詳細については、図2を用いて後述する。
【0026】
アウトフィード7は、艶出しコーティングユニット6と巻取りロール部8との間に配設されている。このアウトフィード7は、艶出しコーティングユニット6から搬送されてくるロール紙9を、一定のテンションを保ちつつ巻取りロール部8側に送り出すようになっている。また、巻取りロール部8は、印刷及び艶出しコーティングが終了したロール紙9を巻き取って保持する。なお、本実施形態における巻き出しロール部2、インフィード3、アウトフィード7、及び、巻取りロール部8は、ロール紙9を搬送するロール紙搬送機構の主要部分を構成する。また、各印刷ユニット5のガイドローラ11や後述する艶出しコーティングユニット6のガイドローラ22もロール搬送機構の一部を構成する。そして、巻取りロール部8の駆動モータとインフィード3の駆動モータとの回転速度差、及び、アウトフィード7の駆動モータと巻取りロール部8の駆動モータの回転速度差に基づいて、ロール紙9のテンションが調整される。また、上記グラビア輪転印刷機1は、図示しない制御装置を備え、各部を統括的に制御するようになっている。
【0027】
図2は、上記艶出しコーティングユニット6の構成の概略を示す図である。
本実施形態における艶出しコーティングユニット6は、印刷ユニット5側から送り出されてくるロール紙9の表面に光線硬化樹脂塗料を塗布して、当該ロール紙9の印刷面に塗布膜を形成する塗布膜形成機構15と、光を透過可能な樹脂フィルムを搬送するフィルム搬送機構16と、ロール紙9と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜を当該樹脂フィルムの表面に圧着させる一対の加圧ローラ17,18と、樹脂フィルムを通してロール紙9に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化装置19と、ロール紙9に形成された硬化塗布膜から樹脂フィルムを剥離させる剥離装置20とを備えて概略構成されている。
【0028】
印刷ユニット5側から送り出されてくるロール紙9はガイドローラ22で案内されつつ塗布膜形成機構15、加圧ローラ17,18、硬化装置19、及び剥離装置20を順次経由して、アウトフィード7側に搬送される。フィルム搬送機構16は、フィルム巻出し装置24、ガイドローラ25、及び、フィルム巻取り装置26を備えて構成されている。本実施形態では紫外線透過性の長尺な樹脂フィルム23がロールとしてフィルム巻出し装置24に保持されており、巻出された樹脂フィルム23はガイドローラ25で案内されてフィルム巻取り装置26に巻取られる。ガイドローラ25による樹脂フィルム23の搬送途中には硬化装置19及び剥離装置20が設けられている。
【0029】
上記の樹脂塗布装置15は、紫外線硬化樹脂の溶液を貯留する貯留槽27と、貯留槽27内の紫外線硬化樹脂溶液をコーティングローラ28の表面に均一に塗布する塗布ローラ29と、ロール紙9の搬送方向に対応して回転駆動されるコーティングローラ28とを備えており、加圧ローラ17,18の上流側近傍に設けられている。コーティングローラ28は、版が取り付けられ、当該版に応じてロール紙9の印刷面に対して部分的に紫外線硬化樹脂を塗布することが可能である。また、このコーティングローラ28には、その回転角に応じて信号を出力するロータリーエンコーダ等の回転センサを備えており、見当装置4からの信号に基づいて各印刷ユニット5の版胴12と回転同期を取って所定の位置に正確に塗布することが可能となっている。
【0030】
上記樹脂塗布装置15の下流には、樹脂フィルム23に接して当該樹脂フィルム23の搬送方向に対応して回転駆動される加圧ローラ17と、フィルム搬送機構16によって搬送されてきた樹脂フィルム23とロール紙9を加圧ローラ17との間で重ね合わせて挟圧する受け側の加圧ローラ18と、紫外線照射ランプ32を有する硬化装置19とを配置している。また、上記した剥離装置20は、ロール紙9の印刷面上に形成された硬化塗布膜から離隔する方向へ樹脂フィルム23を案内するセパレートローラ33と、剥離される樹脂フィルム23に対抗してロール紙9を挟持案内する一対の保持ローラ34,34とを備えている。
【0031】
ここで、上記樹脂フィルム23は平滑な表面を有して樹脂が浸透及び密着しない素材、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン複合材等といった紫外線透過性材料からなるフィルムが用いられる。なお、この樹脂フィルム23はコロナ処理などの処理を施さない未処理フィルムであることが望ましい。また、樹脂フィルム23は、表面が平滑なものに限定されるものではなく、樹脂膜の表面をどのように処理するかにより適宜に選択することができる。例えば、ホログラムの転写なども可能である。
【0032】
また、上記紫外線硬化樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル/スチレン等といったアルカリ可溶性の樹脂が用いられる。なお、アルカリ溶剤を用いる故紙再生技術を考慮すれば、紫外線硬化樹脂はアルカリ可溶性の樹脂が用いられるが、故紙再生の方法に応じて生分解性の樹脂塗料等であってもよい。
【0033】
次に、上記構成のグラビア輪転印刷機1の動作について説明する。
まず、ロール紙9は巻出しロール部2から巻出され、インフィード3を通じて見当装置4に搬送され、当該見当装置4からの信号によって下流側における搬送方向及び幅方向の位置が調整される(位置決め工程)。位置決めされたロール紙9は印刷ユニット5に所定の位置とタイミングで供給される。そして、各印刷ユニット5では、ガイドローラ11に案内されつつ版胴12と圧胴13によってユニット毎に対応した色の印刷が行われる(印刷工程)。各印刷ユニット5を順次経て4色刷が施されたロール紙9は、続いて艶出しコーティングユニット6に供給されて、印刷面に対して艶出しコーティングが行われる(艶出しコーティング工程)。
【0034】
艶出しコーティングユニット6において、ロール紙9は、ガイドローラ22で案内されながら、まず塗布膜形成機構15を経由する。塗布膜形成機構15におけるコーティングローラ28は回転駆動され、その外周面に塗布ローラ29を介して貯留槽27内の紫外線硬化樹脂溶液を付着させて、これを搬送されるロール紙9の印刷面に塗布する(塗布膜形成工程)。この紫外線硬化樹脂の塗布に際しては塗布ローラ29によりコーティングローラ28の塗布量が決定され、ロール紙9の表面上には比較的薄くかつ均一の厚さの塗布膜が形成される。また、コーティングローラ28に取り付けられた版に応じて、印刷面の全体或いは部分的に紫外線硬化樹脂を塗布する。そして、ロール紙9は、見当装置4の検出信号に基づいて予め位置決めされているので、ロール紙9の印刷面におけるコーティング予定部位に紫外線硬化樹脂を位置精度良く塗布することができる。
【0035】
上記のようにして塗布膜形成機構15において紫外線硬化樹脂の塗布膜が形成されたロール紙9は、続いて、回転駆動されている一対の加圧ローラ17,18間に入る。一方、樹脂フィルム23はフィルム巻出し装置24からフィルム巻取り装置26へとガイドローラ25で案内されて搬送される。この搬送経路において、樹脂フィルム23は上記ロール紙9と共に加圧ローラ17,18間に、ロール紙9と塗布膜を介して重ね合わされた状態で取り込まれる。このように、ロール紙9と樹脂フィルム23が加圧ローラ17,18間で挟圧されて塗布膜が樹脂フィルム23の表面に圧着される(圧着工程)。
【0036】
なお、本実施形態とは逆に、図3に示すように、加圧ローラ17′よりも上流の樹脂フィルム33に臨ませて設けた塗布膜形成機構15′によって樹脂フィルム23側に紫外線硬化樹脂塗料を塗布して塗布膜を形成し(塗布膜形成工程)、この樹脂フィルム23とロール紙9とを加圧ローラ17′,18に挟圧することによりロール紙9の印刷面に塗布膜を転写(転写工程)する構成を採用することも可能である。この場合、版を用いて部分塗布も可能である。
【0037】
加圧ローラ17,18間で挟圧された樹脂フィルム23とロール紙9は、その後、硬化装置19へと搬送され、ここで紫外線照射ランプ32からの紫外線が樹脂フィルム23を通して塗布膜に照射されて、塗布膜が硬化される。塗布膜が硬化されるとロール紙9と樹脂フィルム23は剥離装置20へと搬送され、セパレートローラ33で樹脂フィルム23をロール紙9から離隔する方向へ案内して引き剥すと共に、引き剥される樹脂フィルム23に抗してロール紙9を一対の保持ローラ34,34で挟持する。これにより、樹脂フィルム23が塗布膜から剥離される。
【0038】
上記のようにして印刷面に艶出しコーティングが施されたロール紙9は、アウトフィード7側に搬送される一方、樹脂フィルム23はフィルム巻取り装置26でロールに巻取られる。そして、艶出しコーティングが終了したロール紙9は、アウトフィード7を通じて巻取りロール部8によって巻き取られる。
【0039】
以上のように、本発明に掛かるグラビア輪転印刷機1では、印刷ユニット5の後段に艶出しコーティングユニット6を配設し、見当装置4による位置決め、印刷ユニット5による印刷、及び艶出しコーティングユニット6による艶出しコーティングの一連の工程をインラインで行うので、印刷及び艶出しコーティングにおけるロール紙9に対するテンションや温度等の条件を揃えることができ、これにより、印刷と艶出しコーティングを別個の装置でオフラインで行う構成と比較して、ロール紙9の印刷面における艶出しコーティング(塗布膜)の位置精度を高めることが可能となる。特に、ロール紙9の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行う場合には、艶出しコーティング予定部位と、実際の艶出しコーティング部位との位置ずれを防止することができるので好適である。
また、印刷と艶出しコーティングとを同一の装置によってインラインで行うので、印刷と艶出しコーティングを別個の装置でオフラインで行う構成と比較して、コストを低減することができる。
さらに、印刷及び艶出しコーティングが終了した仕上がり状態を逐次確認できるので、例えばコーティング後の色合いや艶等の仕上がりが予定していたものとは違っていた場合にも、この仕上がりに応じて印刷ユニットにおける色合いの調整や艶出しコーティングユニットにおけるコーティングの厚さ等の調整を行うことが容易である。
【0040】
なお、上記実施形態では、本発明のロール基材用印刷機として、グラビア輪転印刷機1を例示したが、これには限られず、ロール紙等のロール基材に対する印刷が可能なものであれば、例えば、フレキソ、オフセット、シルク、凸版等の印刷方法を採用するあらゆる印刷機に適用することが可能である。
【0041】
また、上記実施形態では、艶出しコーティングユニット6においてコーティングローラ28を備えた塗布膜形成機構15を示したが、この塗布膜形成機構15はロール紙9の印刷面に紫外線硬化樹脂を塗布することができればよく、例えば、紫外線硬化樹脂塗料をスプレーで吹き付けて塗布する形式、グラビア、フレキソなどで構成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、艶出しコーティングユニット6に剥離装置20を設け、塗布膜の硬化後に当該剥離装置20によってロール紙9から樹脂フィルム23を剥離する構成としたが、これには限られない。例えば、樹脂フィルム23とロール紙9とを重ね合わせた状態で巻取りロール部8でロールとして巻き取り、その後、このロールをグラビア輪転印刷機1から取り外して保管しておき、その後、オフラインで樹脂フィルム23を剥離する構成を採用することも可能である。この様にすると、樹脂フィルム23により艶出しコーティング層を被覆して保護できるので、コーティング層が傷付くことを防止でき、好適である。
【0043】
さらに、上記実施形態では、光線硬化樹脂として代表的な紫外線硬化樹脂をコーティングする例を挙げて説明したが、光線硬化樹脂はこれに限定されるものではない。例えば、電子線(電離線:エレクトリックビーム)の照射により硬化する電子線硬化樹脂でもよい。そして、この場合の樹脂フィルムはこの電子線を透過させる特性を有し、また、照射ランプ(光線照射装置)も電子線を照射できるものとする。
【0044】
また、上記実施形態では、ロール紙9と樹脂フィルム23が加圧ローラ17,18間で挟圧されて塗布膜が樹脂フィルム23に圧着された後に、硬化装置19によって塗布膜を硬化させる構成を例示したが、これには限られない。例えば、図3に示すように、と光線透過性(紫外線透過性)の加圧ローラ17′を用い、この加圧ローラ17′に光線照射装置としての第1の紫外線照射ランプ32aを内蔵し、ロール紙9と樹脂フィルム23を加圧ローラ17′,18間で挟圧して塗布膜が樹脂フィルム23に圧着される際に第1の紫外線照射ランプ32aからの紫外線が加圧ローラ17′及び樹脂フィルム23を通して塗布膜に照射されるように構成することもできる。この構成では、塗布膜表面がある程度硬化を開始した後に加圧ローラ17′,18による樹脂フィルム23との圧着が行われるので、硬化した塗布膜と樹脂フィルム23との接合力は、塗布膜表面が硬化を開始する前から樹脂フィルム23に圧着していた場合と比較すると弱い。このため、フィルム剥離工程における樹脂フィルム23の剥離を容易にすることができる。
【0045】
なお、上記した実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】グラビア輪転印刷機の構成を示す図である。
【図2】艶出しコーティングユニットの構成の概略を示す図である。。
【図3】他の実施形態における艶出しコーティングユニットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1…グラビア輪転印刷機,2…巻出しロール部,3…インフィード,4…見当装置,5…印刷ユニット,6…艶出しコーティングユニット,7…アウトフィード,8…巻取りロール部,9…ロール紙,15…塗布膜形成機構,16…フィルム搬送機構,17,18…加圧ローラ,19…硬化装置,20…剥離装置,22…ガイドローラ,23…樹脂フィルム,24…フィルム巻出し装置,25…ガイドローラ,26…フィルム巻取り装置,27…貯留槽,28…コーティングローラ,29…塗布ローラ,32…紫外線照射ランプ,33…セパレートローラ,34…保持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール基材搬送機構、見当装置、及び印刷ユニットを備え、
前記ロール基材搬送機構によってロール基材を搬送し、当該ロール基材に設けられた見当マークを前記見当装置によって検出することによりロール基材の搬送方向及び幅方向の位置決めを行い、位置決めされたロール基材に対し前記印刷ユニットにより印刷を行うロール基材用印刷機において、
前記印刷ユニットの後段に、当該印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティングユニットを配設し、
前記見当装置による位置決め、前記印刷ユニットによる印刷、及び前記艶出しコーティングユニットによる艶出しコーティングの一連の工程をインラインで行うことを特徴とするロール基材用印刷機。
【請求項2】
前記艶出しコーティングユニットは、前記印刷ユニットによる印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行うことを特徴とする請求項1に記載のロール基材用印刷機。
【請求項3】
前記艶出しコーティングユニットは、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料をロール基材に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成機構と、光線を透過可能な樹脂フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜を当該フィルムの表面に圧着させる一対の加圧ローラと、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化装置と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール基材用印刷機。
【請求項4】
前記艶出しコーティングユニットは、光線を透過可能な樹脂フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料を樹脂フィルムに塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成機構と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜をロール基材の表面に転写させる一対の加圧ローラと、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化装置と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール基材用印刷機。
【請求項5】
ロール基材搬送機構によって搬送されたロール基材に対し、当該ロール基材に設けられた見当マークを検出することにより、ロール基材の搬送方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め工程と、
位置決め工程を経て位置決めされたロール基材に対し印刷ユニットにより印刷を行う印刷工程と、
前記印刷工程後のロール基材の印刷面に艶出しコーティングを行う艶出しコーティング工程とを、インラインで一連に行うことを特徴とするロール基材の印刷方法。
【請求項6】
前記艶出しコーティング工程では、印刷後のロール基材の印刷面に部分的に艶出しコーティングを行うことを特徴とする請求項5に記載のロール基材の印刷方法。
【請求項7】
前記艶出しコーティング工程は、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料をロール基材に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜を当該フィルムの表面に圧着させる圧着工程と、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロール基材の印刷方法。
【請求項8】
前記艶出しコーティング工程は、光線の照射により硬化する光線硬化樹脂塗料を樹脂フィルムに塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、ロール基材と樹脂フィルムを挟圧して塗布膜をロール基材の表面に転写させる転写工程と、樹脂フィルムを通してロール基材に光線を照射して塗布膜を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロール基材の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−6749(P2008−6749A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181138(P2006−181138)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(398043757)有限会社協和ラミコート (10)
【Fターム(参考)】