説明

ロール状帯体の収納箱

【課題】帯体が内部に引き戻されることを防止でき、比較的安価で製造可能なロール状帯体の収納箱を提供すること。
【解決手段】ロール状に巻かれた帯体を収納し、帯体を使用する際には、当該帯体を引き出し可能なロール状帯体の収納箱において、当該収納箱は、その側面に帯体を引き出すための開口部を有しており、かつ、当該収納箱に収納されたロール状帯体の残量に応じて、前記開口部の収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の滅菌用包装材などの、ロール状に巻かれた帯体を収納し、かつ適宜収納された帯体を必要な分量だけ取り出し可能なロール状帯体の収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のロール状帯体の収納箱の断面図である。
【0003】
例えば、医療現場においては、図5に示すような収納箱にロール状に巻かれた滅菌用包装材を収納し、メスや鉗子などの医療器具を滅菌処理するに際しては、収納箱の側面に設けられた開口部から適当な長さ分だけの滅菌用包装材を引き出して切り取って使用している。
【0004】
ここで、開口部は、収納されたロール状の帯体(滅菌用包装材など)を引き出し易くするために、収納箱側面の上部側に設けられていることが多い。
【0005】
この場合、図5(a)に示すように、ロール状の帯体の残量が多い場合には、特に問題とはならないが、一方で、図5(b)に示すように、ロール状帯体の残量が少なくなると、開口部が収納箱の上部側に設けられているため、重力に反して上方に引っ張られている状態となってしまい、ロールの芯の方向に帯体を引き戻そうとする力(張力)と、重力とにより、帯体の先端が収納箱内に引き戻されてしまう場合があった。このように、帯体の先端が収納箱に引き戻されてしまうと、使用に際しては、再度収納箱を開封し、帯体の先端を探し出し、開口部から外側へ引き出す作業が必要となり、非常に煩わしかった。
【0006】
このような問題に鑑み、例えば特許文献1にあっては、開口部に爪部を設けることにより帯体の先端が収納箱内に引き戻されてしまうことを防止することが提案されている。また、特許文献2にあっては、収納箱のフラップに窓穴を設け、当該窓穴に帯体を通すことにより帯体の先端が収納箱内に引き戻されてしまうことを防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−324552号公報
【特許文献2】特開2001−114265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように、爪部などの帯体を係止する部材を設けると、その分だけ収納箱のコストが上がってしまうのみならず、係止された状態で、帯体を引き出した場合、その分だけ摩擦力が大きくなり、帯体および係止部材から、紙くずや紙粉が発生することが予想され、前述したように、帯体が滅菌用包装材の場合には衛生管理上問題である。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、帯体が内部に引き戻されることを防止でき、比較的安価で製造可能なロール状帯体の収納箱を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、ロール状に巻かれた帯体を収納し、帯体を使用する際には、当該帯体を引き出し可能なロール状帯体の収納箱であって、当該収納箱は、その側面に帯体を引き出すための開口部を有しており、かつ、当該収納箱に収納されたロール状帯体の残量に応じて、前記開口部の収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていることを特徴とする。
【0011】
また、上記のロール状帯体の収納箱にあっては、前記開口部は、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が略水平な状態となるように、収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていてもよい。
【0012】
より具体的には、前記開口部は、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が水平(0°)より上方向に10°〜下方向に30°の範囲内の傾き状態となるように、収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていることが好ましい。
【0013】
また、上記のロール状帯体の収納箱にあっては、前記開口部は、収納箱の下方向にむかって順次拡大可能となっていてもよい。
【0014】
また、上記のロール状帯体の収納箱にあっては、前記開口部は、開口後に再度に閉口することができてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロール状帯体の収納箱によれば、収納箱の側面に設けられた、帯体を引き出すための開口部が、当該収納箱に収納されたロール状帯体の残量に応じて、収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっているので、ロール状帯体の残量が少なくなった場合でも、帯体に対し、帯体を内側に戻そうとする張力および不要な重力をかけることがなく、その結果、帯体の先端が開口部から引き出された状態を常に保持することができる。また、本願発明によれば、爪部のような特別な部材を用いる必要がないため、収納箱の製造に際し、歩留まりが低下したりコスト高となったりすることはない。また、帯体を無理に係止していることもないため、帯体を引き出す際に収納箱と帯体との間で過度の摩擦力が発生することもなく、従って、紙くずや紙粉が発生することもない。
【0016】
また、本発明のロール状帯体の収納箱において、前記開口部の高さ位置を変化するにあたり、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が略水平な状態、例えば、水平より上方向に10°〜下方向に30°の範囲内となるように変化させることにより、上述の効果を充分に発揮することができる。
【0017】
また、前記開口部の実施態様として、開口部の構造が、収納箱の下方向にむかって順次拡大可能とすることにより、開口部を比較的簡単に製造可能となる。
【0018】
また、前記開口部を、開口後に再度に閉口することができるようにすることにより、長期間にわたって使用しない場合などには、開口部を閉口することにより、収納箱内部にゴミや埃等が侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のロール状帯体の収納箱の概略断面図である。
【図2】本発明のロール状帯体の収納箱の具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すロール状帯体の収納箱の開口部を有する側面の一部正面図である。
【図4】本発明の、別の、ロール状帯体の収納箱の開口部を有する側面の一部正面図である。
【図5】従来のロール状帯体の収納箱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明のロール状帯体の収納箱の概略断面図である。
【0021】
まず、図1を用いて、本発明のロール状帯体の収納箱の作用・効果について説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明のロール状帯体の収納箱1は、ロール状に巻かれた帯体Rをその内部に収納可能であり、その側面に帯体Rを収納箱1の外側に引き出すための開口部2を有している。
【0023】
ここで、開口部2が設けられる位置(最初の位置)は、図1(a)に示されるように、引き出される帯体Rが略水平となるような位置、具体的には、帯体Rが略水平(例えば水平より上方向に10°〜下方向に30°の範囲)となるように設計される。
【0024】
そして、本発明のロール状帯体の収納箱1にあっては、図1(b)に示すように、ロール状帯体Rが使用されてその残量が減った場合であっても、当該ロール状帯体Rの残量に応じて、前記開口部2の収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっているため、引き出される帯体Rを、常に略水平な状態(水平より上方向に10°〜下方向に30°の範囲内)とすることができ、これにより、帯体Rが収納箱1の内部に引き戻されることを防止することができる。
【0025】
なお、本発明において「略水平な状態」とは、本発明の効果、つまり引き出されるロール状帯体Rが開口部との間に過度の摩擦を発生させることなく、かつロール状帯体が引き戻されることが防止できる程度の状態をいい、具体的には水平状態(0°)から上方向に10°〜下方向に30°の範囲内をいう。ここで、引き戻し防止の観点からは、ロール状帯体が水平よりも上方向に引き出されることは極力さけるべきであり、水平状態(0°)より上方向に5°〜下方向に15°の範囲内が特に好ましい。
【0026】
図2は、本発明のロール状帯体の収納箱の具体的な実施形態を示す斜視図である。
【0027】
図3は、図2に示すロール状帯体の収納箱の開口部を有する側面の一部正面図である。
【0028】
図2や図3に示すように、本発明のロール状帯体の収納箱20は、その側面21にロール状帯体を引き出すための開口部22を有しており、かつ、当該開口部は、収納されたロール状帯体の残量に応じて、収納箱20に対する高さ方向の位置を変化可能となっている点に特徴を有している。
【0029】
ここで、本発明においては、開口部22の高さ方向の位置を変化させる手段については特に限定することはないが、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が略水平な状態、例えば、引き出されるロール状帯体が水平(0°)から上方向に10°〜下方向に30°傾く範囲内となるように変化させることが好ましい。
【0030】
具体的には、例えば、図2や図3に示すように、開口部22を、収納箱の下方向にむかって順次拡大可能とするようにしてもよい。
【0031】
つまり、開口部22の形成にあたり、収納箱20の側面21において開口部22を形成したい部分に、ミシン目加工を施しておくことにより、使用者は、当該ミシン目加工にそって、当該ミシン目加工された部分を引き出すことにより、当該部分を開口部22とすることができる。(図2参照。図2は、開口部22の第一段階22aのみを開口した状態を示している。)
ここで、当該ミシン目加工が施された部分には、収納箱20の高さ方向に対して段階的に折り目加工がされており、使用者は、収納箱内のロール状帯体の残量に応じて、より具体的には、第1段階は符号22aの部分のみ、第2段階は符号22aに加えて符号22bの部分まで、第3段階はさらに符号22cの部分まで、第4段階はさらに符号22dの部分まで、順次開口部を拡大していくことにより、開口部22の高さを変化させることができる。
【0032】
なお、開口部22を拡大していくにあたり、図2および図3においては、4段階に分けているが、何段階に分けるかは設計事項であり、当該数字に限定されることはない。また、収納箱20に収納されるロール状帯体は、通常は芯部材に巻かれているものであり、従って本発明のロール状帯体の収納箱20にあっては、芯部材が位置する高さと同程度の高さまで、開口部22を拡大できればよい。
【0033】
また、図2や図3に示すように、開口部22を形成するにあたり、収納箱20の側面の一部を完全に取り外すのではなく、その一部を折り込み加工として、側面の一部を収納箱と一体としておくことにより、開口部22を形成後に再度閉口することができる。これにより、長期間使用しない場合などにおいては、収納箱20をほぼ密閉状態とすることができ、埃等の侵入を防止することができる。
【0034】
さらに、図2や図3に示すように、開口部22を順次拡大できるようにすることにより、長期保存などの場合にあって、帯体の先端を一端収納箱の中に収納してしまった場合であっても、収納箱全体を開封することなく、当該開口部22を利用して、帯体の先端を収納箱の外側へ再度引き出すこともできる。
【0035】
図4は、本発明の、別の、ロール状帯体の収納箱の開口部を有する側面の一部正面図である。
【0036】
図2および図3においては、開口部を収納箱の下方向に向かって拡大していくことにより高さ位置を変化させていたが、本発明はこれに限定されることはなく、図4に示すように、高さ位置の異なる開口部40、41、42を複数設けてもよい。この場合であっても、図示するように、開口部をミシン目加工と折り込み加工とにより形成することにより、開口部を閉口することが可能となる。
【0037】
当該実施形態においては、使用初期段階においては、開口部40を用い、ロール状帯体の残量に応じて、順次、開口部41、開口部42を使用することにより、本発明の効果を得ることができる。
【0038】
本発明において、収納箱の材質については特に限定することはなく、通常用いられる材料を適宜選択して用いることができる。
【0039】
また、収納箱の大きさについても特に限定することはなく、収納されるロール状帯体の種類により適宜設計すればよい。
【0040】
また、収納箱に形成される開口部についても、上記で説明した態様(例えば、ミシン目加工と折り込み加工)に限定されることはなく、テープを用いるなど種々の設計が可能である。
【0041】
さらに、本願のロール状帯体の収納箱に収納されるロール状帯体についても特に限定されることはなく、例えば、医療器具を滅菌する際に用いられる滅菌用包装材、ビニール袋、包帯、さらには、小分け包装された食品など、種々のものを挙げることができる。
【符号の説明】
【0042】
1、20…ロール状帯体の収納箱
2、22、40、41、42…開口部
22a…第一段階の開口部
22b…第二段階の開口部
22c…第三段階の開口部
24d…第四段階の開口部
21…収納箱の側面
R…ロール状帯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた帯体を収納し、帯体を使用する際には、当該帯体を引き出し可能なロール状帯体の収納箱であって、
当該収納箱は、その側面に帯体を引き出すための開口部を有しており、かつ、
当該収納箱に収納されたロール状帯体の残量に応じて、前記開口部の収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていることを特徴とするロール状帯体の収納箱。
【請求項2】
前記開口部は、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が略水平な状態となるように、収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のロール状帯体の収納箱。
【請求項3】
前記開口部は、収納箱に収納されたロール状帯体を開口部から引き出す場合に、常に当該ロール状帯体が水平(0°)より上方向に10°〜下方向に30°の範囲内の傾き状態となるように、収納箱に対する高さ方向の位置を変化可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のロール状帯体の収納箱。
【請求項4】
前記開口部は、収納箱の下方向にむかって順次拡大可能となっていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のロール状帯体の収納箱。
【請求項5】
前記開口部は、開口後に再度に閉口することができることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のロール状帯体の収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63292(P2011−63292A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215399(P2009−215399)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000137052)株式会社ホギメディカル (31)
【Fターム(参考)】