説明

ロール状衛生用紙の製造方法

【課題】高価な設備を用いなくとも、無駄なく最後まで使い切ることが可能なロール状衛生用紙を簡便に製造することが可能なロール状衛生用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】再湿糊からなる再湿糊層12を有する長尺芯管10を用意し、再湿糊層12を水で濡らして接着性を付与して接着層13を形成する工程と、接着層に幅広原紙24の始端部を接着固定するとともに、幅広原紙24を製品長さ分だけ長尺芯管10に巻き取って幅広のログ26を得る工程と、ログ26を製品幅に切断して複数のロール状衛生用紙を得る工程と、を有するロール状衛生用紙の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トイレットペーパー、キッチンタオル等のロール状衛生用紙は、以下に示すような方法により製造される。
【0003】
まず、長尺芯管の外周面に、その長手方向に沿って接着剤を塗工し、その塗工部を介して、長尺芯管の外周面に幅広原紙の始端部を接着固定する(例えば、特許文献1参照)。次いで、長尺芯管の外周に製品長さ分だけ幅広原紙を巻き取ってロールを形成するとともに、ロールの外周面に幅広原紙の終端部を固定して、幅広のロール状衛生用紙(ログ)を形成する。その後、ログソー等の切断刃でログを製品幅にカットすれば、トイレットペーパー等のロール状衛生用紙を得ることができる(例えば、特許文献2(第1図)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−86687号公報
【特許文献2】特開2005−87788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、長尺芯管の外周面に幅広原紙の始端部を接着固定するための接着剤としては、通常、水溶性の接着剤が用いられていた。しかしながら、一般的な水溶性の接着剤は乾き難く、長尺芯管の外周に幅広原紙を巻き取った後でもべたつきが残る場合がある。このため、べたついた状態の接着剤が、幅広原紙の始端部だけでなく、この始端部の直上に重なる部分(複数枚分)にまで染み込んでしまうことがあった。このように、接着剤が幅広原紙の始端部以外の部分にまで染み込んだ場合には、最後の一巻きまでロール状衛生用紙を使い切ることが困難となり、無駄が生ずるという問題があった。特に、気温が低い冬場は接着剤が更に乾き難くなるため、上記の問題がより顕在化する傾向にあった。
【0006】
このような問題を解消するため、例えば、製造設備の付近や製造設備が配置された施設内に加温装置を設置し、接着剤の乾燥を促進する等の対策を講ずる必要があった。しかしながら、このような加温装置は、高価であるとともにランニングコストも嵩むものであった。このため、より簡便に製造する方法を開発する必要性があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高価な設備を用いなくとも、無駄なく最後まで使い切ることが可能なロール状衛生用紙を簡便に製造することが可能なロール状衛生用紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、幅広原紙の始端部の接着固定に再湿糊を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すロール状衛生用紙の製造方法が提供される。
【0010】
[1]その外周面の少なくとも一部に再湿糊からなる再湿糊層を有する長尺芯管を用意し、前記再湿糊層を水で濡らして、前記再湿糊層に接着性を付与して接着層を形成する工程と、前記接着層に幅広原紙の始端部を接着固定するとともに、前記幅広原紙を製品長さ分だけ前記長尺芯管に巻き取って幅広のログを得る工程と、前記ログを製品幅に切断して複数のロール状衛生用紙を得る工程と、を有するロール状衛生用紙の製造方法。
【0011】
[2]スプレー又は転写ローラーを使用して前記再湿糊層を水で濡らす前記[1]に記載のロール状衛生用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロール状衛生用紙の製造方法によれば、加温装置等の高価な設備を用いなくとも、無駄なく最後まで使い切ることが可能なロール状衛生用紙を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のロール状衛生用紙の製造方法における、接着層を形成する工程及び幅広のログを得る工程の一例を示す模式図である。
【図2】長尺芯管の製造工程の一例を示す模式図である。
【図3】長尺芯管の一例を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】ロール状トイレットペーパーの製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0015】
[1]ロール状衛生用紙の製造方法:
図1は、本発明のロール状衛生用紙の製造方法における、接着層を形成する工程及び幅広のログを得る工程の一例を示す模式図である。本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、図1に示すような、その外周面に再湿糊層12を有する長尺芯管10を用意し、この再湿糊層12を水で濡らして再湿糊層12に接着性を付与し、接着層13を形成する工程(接着層形成工程)を備えている。また、本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、図1に示すような、形成された接着層13に幅広原紙24の始端部を接着固定するとともに、幅広原紙24を製品長さ分だけ長尺芯管10に巻き取って幅広のログ26を得る工程(巻き取り工程)を備えている。本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、得られた幅広のログを製品幅に切断し、複数のロール状衛生用紙を得る工程(切断工程)を更に備えている。
【0016】
本発明のロール状衛生用紙の製造方法では、ロール状トイレットペーパーやロール状キッチンタオル等のロール状衛生用紙の巻き芯(コア)となる長尺芯管として、その外周面の少なくとも一部に再湿糊層を有するものを用いることを特徴の一つとしている。この再湿糊層は、切手、壁紙、及び襖紙等の紙類を接着するために用いられる、いわゆる「再湿糊」を層状(膜状)に塗布及び乾燥することによって形成されている。
【0017】
再湿糊は、乾燥速度が迅速であるとともに、塗布及び乾燥した状態ではべたつかないが、乾燥した表面を水で濡らすと接着性が発現するといった特性を有する糊(接着剤)である。また、主として紙類の接着に用いられていることから明らかなように、紙類に対しては浸透し難い特性をも有するものである。このため、この再湿糊を、幅広原紙の始端部を長尺芯管の外周に接着固定するためのピックアップ糊として使用することにより、始端部の直上に重なる部分にまでピックアップ糊が染み込むといった不具合が生じ難く、最後の一巻きまで無駄なく使用可能なロール状衛生用紙を簡便に製造することができる。
【0018】
[1−1]長尺芯管:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法では、その外周面に再湿糊層を有する長尺芯管を使用する。この「長尺芯管」は、ロール状衛生用紙の巻き芯となる部材であり、通常、ボール紙等の厚紙からなる紙管が用いられる。ロール状衛生用紙の種類により異なるが、外径35〜50mmφ、厚さ0.5〜1.5mmの紙管が好適に用いられる。この長尺芯管は、一時に複数個のロール状衛生用紙を製造できるようロール状衛生用紙の幅の10〜30倍の長さを有するものである。
【0019】
図2は、長尺芯管の製造工程の一例を示す模式図である。図2に示すように、外層用ロール2a及び内層用ロール3aから、外層用原紙2b及び内層用原紙3bがそれぞれ送出される。外層用原紙2bの裏面には、接着剤塗布部6によって接着剤4が塗布される。接着剤4としては、一般的な水溶性接着剤等を使用することができる。また、外層用原紙2bの表面には、転写ローラー8によって再湿糊が塗布される。なお、図2に示すような転写ローラー8ではなく、例えば、スポンジ状の塗布部材を使用して外層用原紙2bの表面に再湿糊を塗布してもよい。
【0020】
外層用原紙2bの表面に塗布される再湿糊としては、切手等の紙類の接着に使用される一般的な再湿糊を用いることができる。なお、具体的な再湿糊としては、例えば特開2001−323234号公報等において開示されたものを挙げることができるが、本発明のロール状衛生用紙の製造方法において用いることのできる再湿糊は、前記公報において開示されたもの等に限定されることはない。
【0021】
裏面に接着剤4及び表面に再湿糊がそれぞれ塗布された外層用原紙2bと、内層用原紙3bとが、一定の速度で回転する芯棒5へと供給されると、内層用原紙3b上に外層用原紙2bが重なるようにスパイラル状に貼り合わされ、連続した長い紙管である長尺捲回体9が形成される。この長尺捲回体9をカッター7により所定の長さに切断することによって、図3に示すような、内層3と外層2を備え、その外周面上(外層2の表面上)に再湿糊からなる再湿糊層12が形成された長尺芯管10を得ることができる。
【0022】
長尺芯管10の外周面上に形成された再湿糊層12は、塗布された再湿糊が乾燥することで形成されている。再湿糊層12はこの状態のままでは接着性を発揮しておらず、べたついていないために、長尺芯管10の取り扱いは容易である。なお、再湿糊層は、長尺芯管の外周面の全ての領域において形成されていなくてもよく、長尺芯管の外周面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0023】
[1−2]接着層形成工程:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法においては、例えば、図1に示すような構成のワインダー34を使用する。先ず、長尺芯管10に円筒状又は円柱(棒)状のマンドレルシャフト14を挿入し、長尺芯管10をマンドレルシャフト14に固定する(図1中のA部)。長尺芯管10が固定されたマンドレルシャフト14は、幅広原紙24が送出されるローラー32の方へ移動する。そして、マンドレルシャフト14は、噛み合わせのギア(図示せず)等の作用によって長尺芯管10の周方向に回転を開始するとともに、適度な量の水がスプレー16によって再湿糊層12に対して噴霧される(図1中のB部)。水が噴霧されることで濡らされた再湿糊層12には接着性が再び発現し、接着性を有する接着層13が形成されることとなる(図1中のC部)。
【0024】
スプレー16で噴霧する水の量、或いはマンドレルシャフト14の回転速度等を適度に制御することによって、再湿糊層12の濡れ具合や、形成される接着層13のべたつきの程度を制御することができる。また、再湿糊の乾燥速度は、一般的な水溶性接着剤に比して迅速であることから、接着層13を乾燥させるために加温装置等を使用する必要がなく、簡便かつ低コストにロール状衛生用紙を製造することができる。
【0025】
再湿糊層12を水で濡らすには、図1に示すようなスプレー16を使用することの他、例えば転写ローラー等を使用することも好ましい。なお、スプレー16で水を噴霧する場合、水が飛散して他の箇所(例えば、幅広原紙24等)に付着することを防止すべく、ローラー32とスプレー16の間、或いはローラー32から送出されてくる幅広原紙24とスプレー16の間に遮蔽版18を設置することが好ましい。
【0026】
[1−3]巻き取り工程:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法においては、図1に示すように、接着層13に幅広原紙24の始端部を接着固定するとともに、マンドレルシャフト14を回転させ、幅広原紙24を製品長さ分だけ長尺芯管10の外周に巻き取る(図1中のC部及びD部)。接着層13を構成する再湿糊は、幅広原紙24の概ね始端部のみを接着固定し、幅広原紙24に対して過度に浸透することがない。このため、再湿糊は、幅広原紙24の始端部の直上に重なる部分までほとんど浸透せず、幅広原紙24を複数巻きに渡って長尺芯管10の外周上に接着固定してしまう等の不具合が生じ難い。
【0027】
「幅広原紙」は、ロール状衛生用紙の中間体となる原紙であり、通常、ロール状衛生用紙の幅の10〜30倍の幅を有するものである。この幅広原紙には、1枚の原紙のみからなる1プライの他、2枚の原紙を重ね合わせた2プライ等、複数枚の原紙を重ね合わせたマルチプライのものも含まれる。なお、幅広原紙には、適当な間隔を隔てて切り取り用のミシン目を形成してもよく、肌触り等を改善すべくエンボス加工を施してもよい。
【0028】
幅広原紙24の巻取り長さは、製造しようとするロール状衛生用紙の種類によって異なる。例えば、ロール状トイレットペーパーの場合であれば25〜90m、ロール状キッチンタオルの場合であれば10〜20mとすることが一般的である。
【0029】
巻き取り終了に際しては、例えば図1に示すように、テールシール部20において幅広原紙24の終端部又は形成されたロールの外周面に接着剤を塗工し、ロールの外周面に幅広原紙24の終端部を接着固定することが好ましい(図1中のE部)。接着剤としては、水溶性接着剤、又は始端部の接着固定する場合と同じく再湿糊が好ましい。以上の操作により、幅広のロール状衛生用紙であるログ26を得ることができる(図1中のF部)。
【0030】
[1−4]切断工程:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法においては、マンドレルシャフト14から抜き出した幅広のログ26(図1のF部参照)を製品幅に切断する。ログの切断は、ログソー(丸刃)、バンドソー(平刃)等、従来公知の切断刃を使用して行うことができる。刃の厚さとしては、2〜10mmのものが好適に用いられる。製品幅はロール状衛生用紙の種類によって異なる。例えば、ロール状トイレットペーパーの場合であれば105〜114mm、ロール状キッチンタオルの場合であれば210〜228mmとすることが一般的である。
【0031】
以上の操作により、複数のロール状衛生用紙を製造することができる。このように製造されたロール状衛生用紙は、最外周から最内周に至るまで無駄なく使用することができ、資源の有効活用の面からも好ましいものである。
【0032】
[2]本発明のロール状衛生用紙の製造方法の適用対象:
本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、例えば、図4に示すようなロール状トイレットペーパーの製造工程に適用することができる。
【0033】
[2−1]ログ形成工程:
図4に示すロール状トイレットペーパーの製造工程では、先ず、幅広原紙52が大径に捲回されたジャンボロール50から幅広原紙52を送り出し、ワインダー54により長尺芯管に巻き取ることにより、幅広のロール状衛生用紙であるログ56を得る。このログ形成工程においては、既に説明した本発明のロール状衛生用紙の製造方法を適用し、ピックアップ糊として再湿糊を使用する。
【0034】
[2−2]切断工程:
図4に示すロール状トイレットペーパーの製造工程では、ログ56を、一旦、アキュームレーター58に蓄積する。次いで、2本のログ56を並走するように順次送り出し、ログソー60によって製品長さにカットして、ロール状トイレットペーパー62を得る。なお、並走させるログの数は2本に限定されるものではなく、例えば4本とする場合もある。
【0035】
[2−3]包装工程:
ログソー60によりカットして得られたロール状トイレットペーパー62は、8〜24個(4〜12個×2段)を1組として包装袋64に挿入し、開口部を封着して包装体66とする。
【0036】
[2−4]箱詰め工程:
複数個の包装体66を一組として段ボール箱68に箱詰めして箱詰め体70とし、出荷する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のロール状衛生用紙の製造方法は、ロール状トイレットペーパー、ロール状キッチンタオル等のロール状衛生用紙を製造する方法として好適である。
【符号の説明】
【0038】
2a:外層用ロール、2b:外層用原紙、2:外層、3a:内層用ロール、3b:内層用原紙、3:内層、4:接着剤、5:芯棒、6:接着剤塗布部、7:カッター、8:転写ローラー、9:長尺捲回体、10:長尺芯管、12:再湿糊層、13:接着層、14:マンドレルシャフト、16:スプレー、18:遮蔽版、20:テールシール部、32:ローラー、24:幅広原紙、26,56:ログ、50:ジャンボロール、34,54:ワインダー、58:アキュームレーター、60:ログソー、62:ロール状トイレットペーパー、64:包装袋、66:包装体、68:段ボール箱、70:箱詰め体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外周面の少なくとも一部に再湿糊からなる再湿糊層を有する長尺芯管を用意し、前記再湿糊層を水で濡らして、前記再湿糊層に接着性を付与して接着層を形成する工程と、
前記接着層に幅広原紙の始端部を接着固定するとともに、前記幅広原紙を製品長さ分だけ前記長尺芯管に巻き取って幅広のログを得る工程と、
前記ログを製品幅に切断して複数のロール状衛生用紙を得る工程と、を有するロール状衛生用紙の製造方法。
【請求項2】
スプレー又は転写ローラーを使用して前記再湿糊層を水で濡らす請求項1に記載のロール状衛生用紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−213953(P2010−213953A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65555(P2009−65555)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】