説明

ロール紙送り装置、画像形成装置、ロール紙送り方法、及びプログラム

【課題】ロール紙の巻き始めから巻き終わりまでのロール径の変化によって用紙張力が変化し、用紙搬送負荷が変動することにより、ロール紙の最初から最後まで画像品質を一定に保つことができない。ロール紙の径によって変化する用紙張力を一定に保ち、用紙搬送及び画像の安定化を図る。
【解決手段】ロール紙3を送るロール紙送り装置100であって、ロール紙3の回転数に基づいて、ロール紙3に印加する圧力を変化させる弾性部材9を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙送り装置、画像形成装置、ロール紙送り方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドと共にロール紙を挟み、回転によってロール紙を送るプラテンにロール紙を巻きつけ当該サーマルヘッドにて画像を形成する昇華型画像形成装置において、回転駆動するプラテンに吸入用紙を巻き付けて画像を形成する場合、吸入するロール紙の直径によって、用紙張力が変化する、すなわち、ロール径が小さいときには、用紙張力が大きくなるために、用紙張力の変化によって、用紙走行ムラ等が発生し、ロール径の大から小まで安定的な画像品質を維持することが困難であった。
【0003】
そこで、吸入用紙の弛みを防止するために、ロール紙軸上にあるトルクリミッターにおいて、当該吸入用紙にある一定のトルクを加えることにより、用紙を張らせた状態で用紙を送り画像を形成することが一般的に行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたロール紙送り装置においては、ロール紙の軸受けの機構が複雑であるため、画像形成装置の小型化、省スペース化に支障をきたすという問題がある。また、特許文献1に開示されたロール紙送り装置においては、ロール紙の張力とロール紙の径に基づいて、用紙が弛まないようにトルクリミッターによりトルクを調整するのであるが、用紙を弛ませないようにするためには、ロール紙の径に応じてきめ細かく当該トルクを調整する必要があり、特許文献1に開示されたロール紙送り装置においては、トルクリミッターの切り替えが2段階しか設けられておらず、トルクリミッターによるトルクの調整が離散的であり、ロール紙の径に応じた一定のトルクを得ることができないと共に、トルクリミッターの切り替えに伴う制御が複雑になるという問題もある。
【0006】
よって、ロール紙の巻き始めから巻き終わりまでのロール径の変化によって用紙張力が変化し、用紙搬送負荷が変動することにより、ロール紙の最初から最後まで画像品質を一定に保つことができないという問題は依然として解消されていないのが現状である。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、プラテンに吸入するロール紙の径によって変化する用紙張力を一定に保ち、用紙搬送及び画像の安定化を図ることができるロール紙送り装置、画像形成装置、ロール紙送り方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明におけるロール紙送り装置は、ロール紙を送るロール紙送り装置であって、前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる弾性部材を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項1記載のロール紙送り装置において、前記弾性部材は、回転軸に固定された前記ロール紙の搬送が開始される搬送開始位置と、プラテンに前記ロール紙が巻き付けられる巻き付け位置との間に設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項2記載のロール紙送り装置において、前記搬送開始位置と前記巻き付け位置との間には、前記ロール紙を案内する固定ローラが設けられており、前記弾性部材は、前記ロール紙を前記固定ローラに対して押し付けることを特徴とする。
【0011】
また、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載のロール紙送り装置において、前記弾性部材は、前記ロール紙のロール径が大なるときは前記ロール紙に印加する圧力を上昇させ、前記ロール紙のロール径が小なるときは前記ロール紙に印加する圧力を低下させることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項1から4いずれか1項に記載のロール紙送り装置において、前記弾性部材の、前記ロール紙が搬送される方向に対して直交する方向の長さは、前記ロール紙の用紙幅と略同一であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載のロール紙送り装置において、前記ロール紙の回転数に基づいてステップ数が定められるステッピングモータを含み、前記ロール紙に印加する圧力は、前記ステッピングモータの前記ステップ数に基づいて変化することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項6記載のロール紙送り装置において、前記ステッピングモータの前記ステップ数は、前記回転軸に設けられたエンコーダによって検出される前記ロール紙の前記回転数によって決定されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明におけるロール紙送り装置は、請求項1から5いずれか1項に記載のロール紙送り装置において、前記弾性部材は、板バネであることを特徴とする。
【0016】
そして、上記課題を解決するため、請求項9に記載の本発明における画像形成装置は、請求項1から8のいずれか1項記載のロール紙送り装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の本発明におけるロール紙送り方法は、ロール紙を送るロール紙送り方法であって、弾性部材が、前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる工程を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、上記課題を解決するため、請求項11に記載の本発明におけるプログラムは、ロール紙を送るロール紙送り装置の制御プログラムであって、弾性部材が、前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロール紙の径によって変化する用紙張力を一定に保ち、用紙搬送及び画像の安定化を図ることができるロール紙送り装置、画像形成装置、ロール紙送り方法、及びプログラムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の全体の構成を示す構造図である。
【図2】本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の要部の構成を示す構造図である。
【図3】本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の動作を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施形態におけるロール紙(エンコーダ)の回転数とホームポジションからのステップ数(ステッピングモータのステップ数)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の全体の構成を示す構造図である。図1において、本発明におけるロール紙送り装置100は、ロール紙3の回転軸に設けられ、単位時間当たりのロール紙3の回転数を検出するエンコーダ2と、搬送されたロール紙3を案内する固定ローラ7及びフィードローラ5と、ロール紙3の静電気を取り除く除電ローラ4と、ロール紙3に印刷を行うサーマルヘッド6と、ロール紙3を巻き付け、ロール紙3を外部へ搬送するプラテン1と、エンコーダ2により検出されたロール紙3の回転数に応じてホームポジション(初期設定位置)からのステップ数を決定するステッピングモータ8と、ステッピングモータ8により決定されたステップ数に応じて固定ローラ7に対してロール紙3に圧力を加え、ロール紙の搬送が開始される位置とプラテン1にロール紙3が巻き付けられる位置との間に設けられたフリクションプレート9と、から構成される。
【0023】
なお、図1に示した本発明の実施形態におけるロール紙送り装置100は、プラテン1にロール紙3を巻き付けサーマルヘッドにて印画する昇華型画像形成装置に搭載されていることを想定して説明しているが、ロール紙送り装置100が搭載される画像形成装置は、如何なる画像形成装置であっても良い。
【0024】
次に、本発明の実施形態におけるロール紙送り装置100の要部について説明する。図2は、本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の要部の構成、すなわち、図1におけるA部を詳細に示した構造図である。固定ローラ7とフィールドローラ5(図1)との間に吸入されるロール紙3のロール径の大小に関わらず、ロール紙3の張力を一定に保つため、ロール紙3の回転軸上に設けられたエンコーダ2によってロール紙3の単位時間当たりの回転数を検出してロール紙の大小を判断し、固定ローラ7に用紙を押し付ける構造を有するフリクションプレート9の圧力を可変させ、固定ローラ7とフィールドローラ5(図1)との間に吸入される用紙の張力を一定に保つようにしている。
【0025】
固定ローラ7とフィールドローラ5との間に吸入されるロール紙3の直径が大きい場合には用紙の張力が低下するため、フリクションプレート9の圧力を上昇させることによって用紙の張力を増加させ、反対にロール紙3の直径が小さい場合は用紙の張力が高くなるため、フリクションプレート9の圧力を低下させるか若しくは圧力を掛けないようにする。
【0026】
フリクションプレート9の圧力は、固定ローラ7との間隙(ギャップ)で管理され、フリクションプレート9のホームポジション(初期設定位置)から如何なる距離だけ移動するか(ステップするか)は、ステッピングモータ8が計時するステップ数によって決定される。
【0027】
フリクションプレート9のホームポジション(初期設定位置)は、遮蔽板10と透過センサー11とによって位置決めされ、ステッピングモータ8が計時するステップ数は、先にロール紙3の回転軸に設けられたエンコーダ2において検出された回転数によって決定される。エンコーダ2(ロール紙3)の回転数と、ステッピングモータ8のステップ数、すなわち、フリクションプレート9のホームポジション(初期設定位置)からの移動距離(ステップ数)との関係は、実験値によって予め決定されており、図4に示すようにテーブル化して記憶部(図示せず)に格納されている。
【0028】
図4は、本発明の実施形態におけるロール紙(エンコーダ)の回転数とホームポジションからのステップ数(ステッピングモータのステップ数)との関係を示す図である。図4において、エンコーダ2において検出されたロール紙3の回転数が小さい、すなわち、ロール紙3の直径が大きいときには、フリクションプレート9のホームポジションからのステップ数が大きくなるため、用紙に印加される圧力が上昇し、ロール紙3の回転数が大きい、すなわち、ロール紙3の直径が小さいときには、フリクションプレート9のホームポジションからのステップ数が小さくなるため、用紙に印加される圧力が低下する。なお、ステッピングモータ8及びフリクションプレート9は、図2に示す双方向の矢印方向に移動することにより、ステップ数を変化させる。
【0029】
また、フリクションプレート9は、板バネ材などの弾性部材を想定しているが、弾性力を有する部材であれば、必ずしも板バネである必要はなく、材質としては様々なものを採用することが可能である。さらに、フリクションプレート9のロール紙3の搬送方向に直交する方向の長さとしては、ロール紙3に対して均一に圧力を加えるためにもロール紙3の用紙幅とほぼ同一であることが望ましい。
【0030】
次に、本発明の実施形態におけるロール紙送り装置100の動作について説明する。図3は、本発明の実施形態におけるロール紙送り装置の動作を示すフローチャート図である。図3において、まず、ロール紙送り装置100に電源が投入され、イニシャライズ(初期化)動作が開始されると(ステップ(以下、「S」という。)31)、S32において、遮蔽板10が、透過センサー11まで回転することにより、フリクションプレート9がホームポジション(初期設定位置)に位置される。そして、固定ローラ7とフリクションプレート9との間に一定のギャップ(間隙)が設けられ待機する。
【0031】
そして、ロール紙3の先端はフィードローラ5に停止して待機する(S33)。その後、ロール紙送り装置100を搭載するプリンタ等の画像形成装置やユーザ等の上位からの印刷命令により(S41)、フィードローラ5の駆動により、ロール紙3の吸入動作が開始される(S34)。そして、ロール紙3の吸入動作中、ロール紙3の用紙先端がプラテン1に到達した時点で、フィードローラ5は停止する(S35)。
【0032】
ここで、ロール紙3の吸入動作中、エンコーダ2によってロール紙3の回転数が検出される(S36)。そうすると、ステッピングモータ8が、ホームポジション(初期設定位置)からエンコーダ2によって検出された回転数に応じたステップ数を図4に示したテーブルから読み取り、当該読み取られたステップ数だけ回転し、フリクションプレート9で用紙を押し付けることにより張力(テンション)を加える(S37)。
【0033】
そして、プラテン1により吸入されたロール紙3の先端がサーマルヘッド6まで到達したら、印刷が開始される(S38)。なお、連続印刷中は、エンコーダ2によるロール紙3の回転数の検出は、サーマルヘッド6で印画されていないジョブ(JOB)の間で実施され、随時、図4に示したテーブルを読みに行き、固定ローラ7とフリクションプレート9との間のギャップ(間隙)が管理される(S39)。
【0034】
すべての印刷動作が終了したら、遮蔽板10は、透過センサー11まで退避し、フリクションプレート9は、ホームポジション(初期設定位置)に戻される(S40)。
【0035】
なお、この図3に示した一連の動作は、ロール紙送り装置又は画像形成装置内の図示しない制御部に設けられたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる図示しない記憶部に格納されたプログラムを実行することによって行われる。
【0036】
また、上記実施形態においては、ロール紙が吸入される箇所に、ある一定のトルクを加えるトルクリミッターが設けられていないロール紙送り装置(画像形成装置)を前提として説明しているが、ロール紙が吸入される箇所に、ある一定のトルクを加えるトルクリミッターが設けられているロール紙送り装置(画像形成装置)に対して、補助的に作用するよう本発明の実施形態におけるフリクションプレートを設け、ロール紙の張力が一定に保持されるよう構成しても良いことは勿論のことである。
【0037】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 プラテン
10 遮蔽板
11 透過センサー
12 シャフト
100 ロール紙送り装置
2 エンコーダ
3 ロール紙
4 除電ローラ
5 フィードローラ
6 サーマルヘッド
7 固定ローラ
8 ステッピングモータ
9 フリクションプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を送るロール紙送り装置であって、
前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる弾性部材を含むことを特徴とするロール紙送り装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、回転軸に固定された前記ロール紙の搬送が開始される搬送開始位置と、プラテンに前記ロール紙が巻き付けられる巻き付け位置との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のロール紙送り装置。
【請求項3】
前記搬送開始位置と前記巻き付け位置との間には、前記ロール紙を案内する固定ローラが設けられており、前記弾性部材は、前記ロール紙を前記固定ローラに対して押し付けることを特徴とする請求項2記載のロール紙送り装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記ロール紙のロール径が大なるときは前記ロール紙に印加する圧力を上昇させ、前記ロール紙のロール径が小なるときは前記ロール紙に印加する圧力を低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロール紙送り装置。
【請求項5】
前記弾性部材の、前記ロール紙が搬送される方向に対して直交する方向の長さは、前記ロール紙の用紙幅と略同一であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載のロール紙送り装置。
【請求項6】
前記ロール紙の回転数に基づいてステップ数が定められるステッピングモータを含み、前記ロール紙に印加する圧力は、前記ステッピングモータの前記ステップ数に基づいて変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のロール紙送り装置。
【請求項7】
前記ステッピングモータの前記ステップ数は、前記回転軸に設けられたエンコーダによって検出される前記ロール紙の前記回転数によって決定されることを特徴とする請求項6記載のロール紙送り装置。
【請求項8】
前記弾性部材は、板バネであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のロール紙送り装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のロール紙送り装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
ロール紙を送るロール紙送り方法であって、
弾性部材が、前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる工程を含むことを特徴とするロール紙送り方法。
【請求項11】
ロール紙を送るロール紙送り装置の制御プログラムであって、
弾性部材が、前記ロール紙の回転数に基づいて、前記ロール紙に印加する圧力を変化させる処理を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210999(P2012−210999A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77523(P2011−77523)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(302069930)NECエンベデッドプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】