説明

ワイヤハーネス、及び該ワイヤハーネスの配索構造

【課題】コストをかけずに、配索経路の形状に沿う曲げ形状に成形することができ、しかも、配索経路の形状変更等に容易に対応することができるワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス11は、電線束13と、配索経路K1において電線束13に形成される曲げ部M1,M2を含む範囲で電線束13に縦添えされると共に、曲げ変形が残る樹脂製の骨部材15と、電線束13の長手方向に離間した複数箇所で骨部材15を電線束13に固定する結束手段17と、を備え、骨部材15を曲げ変形させることで、電線束13を配索経路K1の形状に適合する曲げ形状に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車体等に配索されるワイヤハーネス、及び該ワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスとその配索構造を示している。
図5のワイヤハーネス1は、例えば、車体上の同一の配索経路に配置される複数の電線2を集めた電線束3と、該電線束3を所定の曲げ形状に収容する樹脂製のプロテクタ5とから構成されている。
【0003】
電線束3は、電線の長手方向に適宜間隔で、テープ6により結束されている。電線束3は、必要に応じて、コルゲートチューブ、織布で形成されたメッシュチューブ、軟質の樹脂チューブ等の保護チューブに収容されることもある。
【0004】
プロテクタ5は、電線束3を収容する筒状の樹脂成形品である。また、このプロテクタ5は、ワイヤハーネス1が配索される配索経路の曲げ形状に合致する形状に成形されている。図示例のプロテクタ5の場合は、両端部に舌状の突出部5aを有している。プロテクタ5に収容された電線束3は、プロテクタ5の両端で、突出部5aにテープ7で結束されて、プロテクタ5に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−55822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のように、プロテクタ5を使って、電線束3を配索経路の曲げ形状に沿う形状に成形する配索構造では、プロテクタ5の製造にコストがかかり、ワイヤハーネス1の高額化を招くという問題があった。
【0007】
また、配索経路の形状変更に際しては、プロテクタ5の成形型から作り直しが必要になり、配索経路の形状変更等に簡単に対応することができないという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、コストをかけずに、配索経路の形状に沿う曲げ形状に成形することができ、しかも、配索経路の形状変更等に容易に対応することができるワイヤハーネスを提供すること、更には、そのワイヤハーネスを使ったワイヤハーネスの配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)同一の配索経路に配置される複数の電線を集めた電線束と、前記配索経路において前記電線束に形成される曲げ部を含む範囲で前記電線束に縦添えされる樹脂製の骨部材と、前記電線束の長手方向に離間した複数箇所で前記骨部材を前記電線束に固定する結束手段と、を備え、
前記骨部材は、前記電線束よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ線条体であり、
前記曲げ部の前記骨部材を配索経路の形状に沿う曲げ形状に変形させることで、前記配索経路の形状に適合する曲げ形状に成形されることを特徴とするワイヤハーネス。
【0010】
(2)上記(1)に記載のワイヤハーネスを用いたワイヤハーネスの配索構造であって、前記電線束が前記骨部材を介して前記配索経路の構造部材に接触するように、前記ワイヤハーネスを配索することを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【0011】
上記(1)の構成によれば、ワイヤハーネスの曲げ形状は、電線束に縦添えされる骨部材を配索経路の曲げ形状に沿う形状に曲げ変形させることで、ワイヤハーネスを配索経路の形状に適合する曲げ形状に成形することができる。そのため、製造コストのかかるプロテクタが不要になり、コストをかけずに、配索経路の形状に沿う曲げ形状に成形することができるワイヤハーネスを提供することができる。
【0012】
また、上記(1)の構成によれば、骨部材は、曲げ位置や、曲げの大きさ等を適宜に調整できるため、多様な曲げ形状に柔軟に対応することができ、配索経路の形状変更等に容易に対応することができるワイヤハーネスを提供することができる。
【0013】
上記(2)の構成によれば、骨部材が、配索経路の構造部材と電線束との間に介在して、前記構造部材と前記電線束との直接接触を防ぐ緩衝材として機能するため、配索したワイヤハーネスが構造部材との擦れ等によって汚損することを防止することができ、配索したワイヤハーネスの耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるワイヤハーネスによれば、ワイヤハーネスの曲げ形状は、電線束に縦添えされる骨部材を配索経路の曲げ形状に沿う形状に曲げ変形させることで、ワイヤハーネスを配索経路の形状に適合する曲げ形状に成形することができる。そのため、製造コストのかかるプロテクタが不要になり、コストをかけずに、配索経路の形状に沿う曲げ形状に成形することができるワイヤハーネスを提供することができる。
【0015】
また、上本発明によるワイヤハーネスによれば、骨部材は、曲げ位置や、曲げの大きさ等を適宜に調整できるため、多様な曲げ形状に柔軟に対応することができ、配索経路の形状変更等に容易に対応することができるワイヤハーネスを提供することができる。
【0016】
また、本発明のワイヤハーネスの配索構造によれば、骨部材が、配索経路の構造部材と電線束との間に介在して、前記構造部材と前記電線束との直接接触を防ぐ緩衝材として機能するため、配索したワイヤハーネスが構造部材との擦れ等によって汚損することを防止することができ、配索したワイヤハーネスの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るワイヤハーネスの一実施形態の配索構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示したワイヤハーネスを別の角度から視た斜視図である。
【図3】図1に示したワイヤハーネスの横断面図である。
【図4】本発明に係るワイヤハーネスの他の実施の形態の横断面図である。
【図5】従来のワイヤハーネス及び配索構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るワイヤハーネスの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1〜図3は本発明に係るワイヤハーネスの一実施形態を示したもので、図は本発明に係るワイヤハーネスの一実施形態の配索構造を示す斜視図、図2は図1に示したワイヤハーネスを別の角度から視た斜視図、図3は図1に示したワイヤハーネスの横断面図である。
【0020】
この一実施形態のワイヤハーネス11は、電線束13と、樹脂製の骨部材15と、結束手段17とを備える。
【0021】
電線束13は、例えば車体上の同一の配索経路K1に配置される複数の被覆電線12を集めたものである。
【0022】
電線束13は、複数のバラの被覆電線を集めたものでも良いし、複数の被覆電線を帯状に一体化させたリボン電線(フラット電線)でも良く、更に、同軸ケーブル等が混じる構成でも良い。
【0023】
骨部材15は、蛇行する配索経路K1において電線束13に形成される曲げ部M1,M2を含む範囲Lで、電線束13に縦添えされる。
【0024】
本実施形態の場合、骨部材15は、電線束13よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ帯板状の線条体である。
【0025】
骨部材15に曲げ変形を起こす曲げ荷重は、例えば、曲げた電線束13の復元力よりも大きな荷重に設定されている。従って、曲げ変形させた部分が、電線束13の復元力で曲げが戻ることはない。
【0026】
骨部材15は、具体的には、所定の強度の帯状態に仕上げられたものであり、例えばポリエチレン圧延シートが用いられる。
【0027】
結束手段17は、例えば粘着テープや、樹脂製の結束バンド等が使用される。本実施形態の場合、結束手段17は、電線束13の長手方向に離間した複数箇所で骨部材15を電線束13に固定している。
【0028】
本実施形態の場合、電線束13は、図3に示すように、結束手段17によって骨部材15に結束されることで、楕円形断面の電線束に仕上げられている。
【0029】
本実施形態のワイヤハーネス11は、図1及び図2に示すように、曲げ部M1,M2の骨部材15を配索経路K1の形状に沿う曲げ形状に曲げ変形させることで、配索経路K1の形状に適合する曲げ形状に成形される。
【0030】
そして、本実施形態におけるワイヤハーネス11の配索構造では、電線束13が骨部材15を介して配索経路K1の構造部材(不図示)に接触するように、ワイヤハーネス11を配索する。配索経路K1に沿わせたワイヤハーネス11は、市販の樹脂製の結束バンド等で、配索経路K1側の構造物に固定する。
【0031】
以上に説明した一実施形態のワイヤハーネス11によれば、ワイヤハーネス11の曲げ形状は、電線束13に縦添えされる骨部材15を配索経路K1の曲げ形状に沿う形状に曲げ変形させることで、ワイヤハーネス11を配索経路K1の形状に適合する曲げ形状に成形することができる。そのため、製造コストのかかるプロテクタが不要になり、コストをかけずに、配索経路K1の形状に沿う曲げ形状に成形することができるワイヤハーネス11を提供することができる。
【0032】
また、以上に説明した一実施形態のワイヤハーネス11によれば、骨部材15は、曲げ位置や、曲げの大きさ等を適宜に調整できるため、多様な曲げ形状に柔軟に対応することができ、配索経路K1の形状変更等に容易に対応することができるワイヤハーネス11を提供することができる。
【0033】
更に、以上に説明した一実施形態のワイヤハーネスの配索構造では、骨部材15が、配索経路K1の構造部材と電線束13との間に介在して、前記構造部材と電線束13との直接接触を防ぐ緩衝材として機能するため、配索したワイヤハーネス11が構造部材との擦れ等によって汚損することを防止することができ、配索したワイヤハーネス11の耐久性を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明に係るワイヤハーネスにおける電線束の断面形状は、図3に示した楕円形状に限るものではなく、図4に示すような円形状であっても構わない。また、図示はしていないが、電線束がリボン電線を重ねたもので、4角形状の横断面形状であっても良い。
【0035】
また、本発明のワイヤハーネスは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0036】
例えば、骨部材は、帯板状ではなく、丸棒状又は角棒状の線条体を使用するようにしても良い。また、骨部材も、上記の目的を達成できる曲げ特性を備えるものであれば、成分組成等は特に限定しない。
【符号の説明】
【0037】
11 ワイヤハーネス
12 電線
13 電線束
15 骨部材
17 結束手段
K1 配索経路
M1,M2 曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の配索経路に配置される複数の電線を集めた電線束と、前記配索経路において前記電線束に形成される曲げ部を含む範囲で前記電線束に縦添えされる樹脂製の骨部材と、前記電線束の長手方向に離間した複数箇所で前記骨部材を前記電線束に固定する結束手段と、を備え、
前記骨部材は、前記電線束よりも曲げ剛性が高く、且つ、所定以上の曲げ荷重によって曲げ変形すると共に、曲げ荷重が解除されても曲げ変形が残る形状維持特性を持つ線条体であり、
前記曲げ部の前記骨部材を配索経路の形状に沿う曲げ形状に変形させることで、前記配索経路の形状に適合する曲げ形状に成形されることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスを用いたワイヤハーネスの配索構造であって、前記電線束が前記骨部材を介して前記配索経路の構造部材に接触するように、前記ワイヤハーネスを配索することを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−22803(P2012−22803A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157842(P2010−157842)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】