説明

ワイヤハーネス用のプロテクタ

【課題】左右勝手違いとなるプロテクタを共用化できるようにする。
【解決手段】底壁と左右両側の側壁16とでワイヤハーネス貫通路を囲むと共に一方側の前記側壁に上端から取付用細溝19を切り込んで設けているプロテクタ本体10と、T形状のプロテクタ取付部21を一体的に突設したクリップ3またはブラケットからなる車体固定材4と、前記取付用細溝に先端開口から装着する挟持材25を備えた。前記車体固定材のT形状のプロテクタ取付部は縦軸部を前記取付用細溝への挿通部とすると共に、先端横軸部を側壁内面に係止する係止部とした。前記挟持材は、前記プロテクタ本体にかぶせるプロテクタカバー11の周縁から突設し、またはプロテクタカバーと別体として取付用細溝に装着後にプロテクタカバーを押し当てて固定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネス用のプロテクタに関し、詳しくは、自動車に配索するワイヤハーネスに外装するプロテクタであって、特に、自動車の左右両側に配置するプロテクタまたは車種に応じて左右いずれか一方に配置するプロテクタにおいて車体固定用のクリップまたはブラケットを含めて共用化するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索するワイヤハーネスは、配索経路の規制やワイヤハーネスの保護を図るため樹脂成形品からなるプロテクタで外装し、該プロテクタに突設したクリップを介して車体パネルに固定している。この種のプロテクタとして、本出願人は特開2000−341825号公報等において、図8(A)に示すように、プロテクタ100のカバー101にクリップ110の収容係止部102を設け、プロテクタ100にクリップ110を取り付け、図8(B)に示すように車体パネル120にクリップ110を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−341825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、プロテクタを外装したワイヤハーネスを自動車に配索する時、プロテクタの一面(図8では右側面)に位置するプロテクタに取り付けたクリップを車体パネルに固定している。該プロテクタが自動車の後部座席の左右両側(シルサイド)とフロアパネルに配索する左右一対のワイヤハーネスに外装するプロテクタである場合、左側のワイヤハーネスに外装する左側プロテクタと右側のワイヤハーネスに外装する右側プロテクタとは左右勝手違いとなり、プロテクタ自体および該プロテクタに取り付けるクリップも左右勝手違いになり、左右のプロテクタで共用化できない。
【0005】
前記したシルサイドに配索するワイヤハーネスのプロテクタの他に、左右ハンドル車の相違によりワイヤハーネスがフロアパネルの右側または左側に配索される場合や、左右ドアパネル内に配索するドアハーネス等に外装するプロテクタも左右勝手違いとなり、共用化することは困難である。このように、左右勝手違いとなるプロテクタでは、右用プロテクタと左用プロテクタをそれぞれ金型を起工して成形する必要があり、生産コストが高くなるとともに部品点数が多くなり、管理コストもかかる問題がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、クリップまたはブラケットからなる車体固定材の位置が左側と右側とに勝手違いとなるプロテクタを共用化できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
底壁と左右両側の側壁とでワイヤハーネス貫通路を囲むと共に一方側の前記側壁に上端から取付用細溝を切り込んで設けているプロテクタ本体と、
車体取付部を設けた基板の一面からT形状のプロテクタ取付部を一体的に突設すると共に、クリップまたはブラケットを設けてなる車体固定材と、
前記取付用細溝に先端開口から装着する挟持材を備え、
前記車体固定材のT形状のプロテクタ取付部は縦軸部を前記取付用細溝への挿通部とすると共に、先端横軸部を側壁内面に係止する係止部とし、かつ、
前記挟持材は前記プロテクタ取付部の挿通部を前記取付用細溝に通した後に先端開口から挿入して前記取付用細溝の溝底面との間に前記挿通部を挟持固定すると共に他端は前記取付用細溝の挿入側開口に位置し、前記プロテクタ本体にかぶせるプロテクタカバーの周縁から突設し、またはプロテクタカバーと別体として取付用細溝に装着後にプロテクタカバーを押し当てて固定する構成としているワイヤハーネス用のプロテクタを提供している。
【0008】
前記クリップまたはブラケットを備えた車体固定材は、L形状の前記基板を備え、該基板の縦板部の背面から前記プロテクタ取付部を突設し、横板部の下面から羽根状クリップを突設し又は横板部にボルト穴を設けている。
なお、前記車体固定材の基板は縦板部のみとし、該縦板部の背面に前記プロテクタ取付部を突設すると共に正面に羽根状クリップを突設し又は車体から突設するブラケットの挿入係止部を設けてもよい。
【0009】
前記のように、車体パネル側に予め設けられるクリップまたはブラケットの取付位置およびクリップ取付形態等に応じてプロテクタ本体に着脱自在に取り付けるクリップまたはブラケットの形態を変えている。
【0010】
さらに、前記取付用細溝を設ける位置を変えたプロテクタ本体を複数種類用意しておくと、車両条件に応じてクリップやブラケットの取付位置を適宜変えることができ、プロテクタの汎用性を高めることができる。
【0011】
前記プロテクタ本体を左右逆転して用い、左右対称位置に前記クリップまたはブラケットからなる車体固定部を突設している左用プロテクタと右用プロテクタとして共用で用いられるものとしている。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、本発明のプロテクタは、プロテクタ本体の一方の側壁に取付用細溝を設け、クリップまたはブラケットからなる車体固定材に設けたプロテクタ取付部のT字状の挿通部を通して着脱自在に取り付け、カバーと一体またはカバーと別体の挟持材を前記取付用細溝に嵌め込んで前記挿通部を固定して取り付けているため、プロテクタを左右逆転して前記取付用細溝に車体固定材を取り付けることで、左右のプロテクタを共用化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態のプロテクタの適用例を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略正面図である。
【図2】(A)は第1実施形態のプロテクタのプロテクタ本体の概略図、(B)は要部正面図である。
【図3】第1実施形態のプロテクタの要部分解斜視図である。
【図4】前記第1実施形態のプロテクタに用いる車体固定材を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図5】第2実施形態のプロテクタの分解斜視図である。
【図6】第3実施形態のプロテクタを示し、(A)は分解斜視図、(B)は要部正面図である。
【図7】第4実施形態のプロテクタの分解斜視図である。
【図8】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態のプロテクタを示す。
プロテクタ1は、後部シートの左右両側とフロアパネルの間に配索する左右のワイヤハーネス2(2A、2B)に左右逆転して外装する共用のプロテクタである。左側ワイヤハーネス2Aに外装するプロテクタ1(1A)には車体取付用のクリップ3を右側面に取り付け、右側ワイヤハーネス2Bに外装するプロテクタ1(1B)にはクリップ3を左側面に取り付け、クリップ3、3をそれぞれ対応する下面側の車体パネルPに取り付けるものとしている。
【0015】
図2および図3に示すように、プロテクタ1は樹脂成形品からなるプロテクタ本体10、該プロテクタ本体10の上面開口を塞ぐカバー11、プロテクタ本体10に着脱自在に取り付けるクリップ3を備えた車体固定材4とから構成している。
【0016】
プロテクタ本体10は底壁15と両方の側壁16、17とでワイヤハーネス貫通路18を囲んでいる。一方の側壁16の上端から略高さ方向の中間位置までクリップを着脱自在に取り付ける取付用細溝19を切り込んで設けている。該取付用細溝19は、図1に示す車体パネルPに設けるクリップ取付穴Hと対応した位置に形成しており、本実施形態では側壁16の長さ方向の両端近傍にそれぞれ各1個設けている。
【0017】
前記クリップ3を設けた車体固定材4は図2、図3に示すように、L形状とした基板20の縦板部20aの背面(外面)中央からプロテクタ取付部21を突設し、縦板部20aの下端から水平方向に屈折する横板部20bの下面から羽根状クリップ3を突設している。
【0018】
前記プロテクタ取付部21はT形状で、基板20から水平方向に突出する縦軸部からなる挿通部21aと、該挿通部21aの先端に直交して突設する横軸部からなる係止部21bとからなる。
前記挿通部21aは断面四角形状とし、前記取付用細溝19に上端開口19aから挿入し、溝底19bで停止保持されるものとしている。該挿通部21aを取付用細溝19に通した状態で先端の係止部21bはプロテクタ本体10の側壁16の内面に当接すると共に、基板20の縦板部20aの背面は側壁16の外面に当接するようにしている。即ち、挿通部21aの長さは側壁16の板厚より僅かに長く設定している。かつ、図2(B)に示すように、縦板部20aの下端が側壁16の下端と略一致し、横板部20bが底壁15と同一高さで連続するようにしている。
【0019】
前記横板部20bの下面中央より突設する羽根状クリップ3は周知の形状とし、横板部20bから下向きに突設する軸部3aの先端から一対の羽根部3bを折り返し状に突設し、各羽根部3bの先端に係止段部3cを設けている。さらに、軸部3aを囲むように横板部20bから皿部3dを突設している。
該羽根状クリップ3は車体パネルPに予め穿設されたクリップ取付穴Hに羽根部3bを挿入し、係止段部3cをクリップ取付穴Hの周縁に係止して固定するものである。
【0020】
前記カバー11はプロテクタ本体10にワイヤハーネス2を挿通した後に、プロテクタ本体10の上面開口を塞ぐように取り付け、該カバー11の側縁から突設したロック爪(図示せず)をプロテクタ本体10の側壁16、17の外側上端に設けたロック枠(図示せず)にロック結合して取り付けるものとしている。
【0021】
該カバー11には前記取付用細溝19の上端開口19aから挿入して嵌合する挟持材部25を突設している。該挟持材部25の長さはカバー11をプロテクタ本体10にロック結合した時に、挟持材部25の下端面が挿通部21aと当接し、該挿通部21aを取付用細溝19の溝底19bに押圧固定できる寸法に設定している。
【0022】
前記プロテクタ1の組みつけは、プロテクタ本体10の側壁16の取付用細溝19に、その上端開口19aより挿通部21aを差し込み、下端の溝底19bまで移動させる。この時、係止部21bは側壁16の内面に係止し、クリップ3はプロテクタ本体10に保持される。
【0023】
この状態で、プロテクタ本体10のワイヤハーネス貫通路18にワイヤハーネス2を挿通し、その後、カバー11をプロテクタ本体10の上面開口を閉鎖する状態にかぶせる。該カバー11の取付時に挟持材部25を取付用細溝19に上端開口19aより差し込む。これにより、カバー11をプロテクタ本体10とロック結合した時に、挟持材部25の先端下面と取付用細溝19の溝底19bとの間に挿通部21aを挟持固定する。
これにより、左側ワイヤハーネス2Aをプロテクタ1Aで外装し、該プロテクタ本体10の右側面にクリップ3を突設することができる。
【0024】
一方、右側ワイヤハーネス2Bに外装するプロテクタ1Bは、前記プロテクタ本体10にクリップ3を取り付けた状態で、プロテクタ本体10を左右逆転した後に、プロテクタ本体10に右側ワイヤハーネス2Bを挿通する。挿通後、カバー11を左右逆転してプロテクタ本体10に被せ、前記と同様に、挟持材部25を取付用細溝19に上端開口19aより差し込み、挟持材部25の先端下面と取付用細溝19の溝底19bとの間に挿通部21aを挟持固定する。
これにより、右側ワイヤハーネス2Bをプロテクタ1Bで外装し、該プロテクタ本体10の左側面にクリップ3を突設することができる。
【0025】
前記のように、左右対称位置にクリップ3を取り付けたプロテクタ1Aと1Bとを、共用のプロテクタ本体10、カバー11、クリップ3で組み立てることができる。よって、プロテクタの生産コストを低減できると共に、プロテクタの部品点数も削減でき部品管理が容易となる。
【0026】
図5に第2実施形態のプロテクタを示す。
該プロテクタは、プロテクタ本体10の側壁16に取り付ける車体固定材4は、クリップに代えてブラケット30を設けている。該ブラケット30は前記クリップ3と同様に、L形状とした基板20の縦板部20aの背面(外面)中央からプロテクタ取付部21を突設し、縦板部20aの上端から水平方向に屈折する横板部20bの中央にボルト穴31を設けている。前記プロテクタ取付部21は前記第1実施形態と同様にT形状で、挿通部21aと、該挿通部21aの先端に直交して突設する係止部21bとからなる。
他の形状及び作用効果は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
図6(A)(B)に第3実施形態のプロテクタを示す。
該プロテクタはプロテクタ本体10の取付用細溝19に挿入する挟持材35をカバー11と別に設けている点が、第1実施形態と相違する。
前記プロテクタ本体10の側壁16に設ける取付用細溝19の両側面にガイド溝19uを設ける一方、該取付用細溝19に挿入する長方形状平板からなる挟持材35の両側面にガイド突起35aを突設している。
【0028】
前記取付用細溝19に挿通部21aを通した後に前記挟持材35を取付用細溝19の上端開口19aから挿入し、ガイド溝19uにガイド突起35aを嵌合してスライドし、挿通部21aと接触させて停止している。この状態で、挟持材35の上端面35bを上端開口19aに位置させている。
ワイヤハーネスを挿通した後にカバー11を閉鎖すると、カバー11の裏面が挟持材35の上端面35bと接触し、該カバー11をプロテクタ本体10とロック結合すると、挟持材35は取付用細溝19に内嵌した状態で固定できる。
他の構成及び作用及び効果は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
図7に第4実施形態のプロテクタを示す。
第4実施形態のプロテクタでは、車体固定材4は第2実施形態のブラケット30を設け、かつ、第3実施形態と同様にカバー11と別体の挟持材35を用いている。
他の構成および作用効果は前記実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
本発明は前記実施形態に限定されず、車体固定材は縦板部のみからなる基板の一面にプロテクタ取付部を突設し、他面に横向きの羽根状クリップを突設してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 プロテクタ
2 ワイヤハーネス
3 クリップ
4 車体固定材
10 プロテクタ本体
11 カバー
15 底壁
16 側壁
19 取付用細溝
20 基板
21 プロテクタ取付部
25 挟持材部
30 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と左右両側の側壁とでワイヤハーネス貫通路を囲むと共に一方側の前記側壁に上端から取付用細溝を切り込んで設けているプロテクタ本体と、
車体取付部を設けた基板の一面からT形状のプロテクタ取付部を一体的に突設すると共に、クリップまたはブラケットを設けてなる車体固定材と、
前記取付用細溝に先端開口から装着する挟持材を備え、
前記車体固定材のT形状のプロテクタ取付部は縦軸部を前記取付用細溝への挿通部とすると共に、先端横軸部を側壁内面に係止する係止部とし、かつ、
前記挟持材は前記プロテクタ取付部の挿通部を前記取付用細溝に通した後に先端開口から挿入して前記取付用細溝の溝底面との間に前記挿通部を挟持固定すると共に他端は前記取付用細溝の挿入側開口に位置し、前記プロテクタ本体にかぶせるプロテクタカバーの周縁から突設し、またはプロテクタカバーと別体として取付用細溝に装着後にプロテクタカバーを押し当てて固定する構成としているワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項2】
前記車体固定材はL形状の前記基板を備え、該基板の縦板部の背面から前記プロテクタ取付部を突設し、横板部の下面から羽根状のクリップを突設し又は横板部にボルト穴を設けている請求項1に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項3】
前記プロテクタ本体を左右逆転して用い、左右対称位置に前記クリップまたはブラケットからなる車体固定部を突設している左用プロテクタと右用プロテクタとして共用で用いられる請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239305(P2012−239305A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106604(P2011−106604)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】