説明

ワイヤハーネス

【課題】防音材と電線との車両への組み付け作業の作業性を向上させることが可能であるとともに、車両の内部に騒音が伝わることを十分に抑えることができる防音性の高いワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、不織材料の間に電線2が挟み込まれた構造である。不織材料は、所定の領域に広がる面状部材4である。電線2は防音性能を有する面状部材4に挟み込まれた状態で車両に設置されるため、車両への組み付け作業の作業性は向上する。また、電線2を挟み込むように重ね合わされた面状部材4によって、車両の内部に騒音が伝わることを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両には、モータ、ファン、それらの制御を行う電子制御ユニット、各種センサ、スイッチなど、様々な電送機器が搭載されている。これらの各電送機器を電気的に接続するために、電線で構成されたワイヤハーネスが車両の各部に配設されている。
【0003】
また、車両が備える車室のフロア部分には、防音材が設置される。フロア部分は、車両を構成する鉄板上にフロアカーペットが敷かれた構造である。このため、走行時のタイヤと路面との接触に由来する走行音(道路ノイズ)及びエンジン音などがフロア部分を通じて車室内部に伝わりやすい。従って、これらの音が車内に伝わることを抑えて、騒音の少ない快適な車内空間を実現するために、防音材が鉄板とフロアカーペットとの間に設置される。
【0004】
このような電線と防音材とを、車両に対して別々に組付け作業すると、その組付作業に手間を要してしまう。ここで、特許文献1には、硬質な板材である基体と防音性を有する不織布で構成された被覆体との間に電線束が挟まれた構造のワイヤハーネスが開示されている。特許文献1のワイヤハーネスは、防音材(被覆体)と電線とが、車両に対して一体的に組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−027242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、電線を挟み込む2つ部材のうち、一方の部材は硬質な板材であるため、ワイヤハーネスは十分な防音性を備える仕様ではなかった。つまり、特許文献1に記載のワイヤハーネスが車両に搭載されても、ワイヤハーネスは、騒音が車室内に伝わることを十分に抑えられない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、防音材と電線との車両への組み付け作業の作業性を向上させることが可能であるとともに、車両の内部に音が伝わることを十分に抑えることができる防音性の高いワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明に係るワイヤハーネスは、電線と、前記電線の両端が露出するように前記電線の一部を挟み込んで重ね合わされており、前記電線の周囲の領域に面状に広がる不織材料で構成された面状部材と、を備える。
【0009】
第2の発明に係るワイヤハーネスは、第1の発明に係るワイヤハーネスであって、前記面状部材の外縁部の少なくとも一部が熱プレスにより接合されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明に係るワイヤハーネスは、第1の発明に係るワイヤハーネスであって、前記面状部材のうち、前記電線を挟み込む部分の少なくとも一部が熱プレスにより接合されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明に係るワイヤハーネスは、第1ないし第3の発明のいずれかに係るワイヤハーネスであって、前記面状部材と接して、又は一体的に形成されており、前記面状部材から延び出た前記電線を支持するとともに、配設対象部位に設けられた凹部形状に嵌め込み可能な位置決め部材を、さらに備える。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、ワイヤハーネスは、不織材料で構成された面状部材が、電線の一部を挟み込んで重ね合わされた構造である。電線が、防音性を有する不織材料の面状部材に挟み込まれた状態で車両に組み付けられるため、電線及び防音材の組み付け作業の作業性を向上させることができる。また、電線の一部を挟み込むように重ね合された不織材料で構成された面状部材によって設置対象部位を覆うことができるため、車両の内部に音が伝わることを十分に抑えることができる。
【0013】
第2の発明によれば、面状部材の外縁部の少なくとも一部が接合されているため、面状部材のめくれ上がりを抑制することができる。
【0014】
第3の発明によれば、面状部材のうち、電線を挟み込む部分の少なくとも一部が熱プレスにより接合されている。このため、面状部材が電線を挟み込んだ状態を維持することができるとともに、面状部材に対する電線の位置決めも行うことができる。
【0015】
第4の発明によれば、位置決め部材は、面状部材と接して、又は一体的に形成されており、面状部材から延び出た電線を支持するとともに、配設対象部位に設けられた凹部形状に嵌め込み可能である。位置決め部材は、電線を支持するとともに凹部形状に嵌め込まれるため、配設対象部位に対する位置決め部材及び電線の位置決めが行われる。また、位置決め部材は面状部材と接して、又は一体的に形成されている。このため、面状部材を配設対象部位に対して一定位置に配設すると、電線が面状部材に対して一定位置に配設された状態が維持される。このため、電線を配設対象部位及び面状部材に対して位置決めすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るワイヤハーネス1の斜視図である。
【図2】面状部材4を熱プレスする熱プレス装置8の斜視図である。
【図3】位置決め部材5を熱プレスする熱プレス装置9の断面が示された斜視図である。
【図4】ワイヤハーネス1が取り付けられた状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るワイヤハーネス1bの平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るワイヤハーネス1cの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
<1.第1の実施形態>
図1に示される第1の実施形態に係るワイヤハーネス1は、その両端が、例えばインバータ及びモータなどの車両に搭載される電装機器に接続されることにより、当該電線機器間を電気的に接続する役割を有する。ワイヤハーネス1は、例えば複数の電線2が束ねられた電線束3と、当該電線束3の周囲を覆う不織材料で構成された面状部材4とを備えている。
【0019】
最初に、電線束3について説明する。図1に示されるように、電線束3は複数の電線2が束ねられた構造である。電線2は、線状の導体である芯線に、樹脂などの絶縁体で構成された絶縁被覆による被覆が施された構造である。このような電線2の両端で、接続端子が、絶縁被覆が取り除かれた剥き出しの芯線に取り付けられている。電線2に取り付けられた接続端子がコネクタ等を介して各電装機器に接続されることによって、ワイヤハーネス1が各電装機器と接続される。電線束3に用いられる電線2の形態は、断面が円形状、またはフラットケーブルなどの形態が考えられる。また、本実施の形態では、複数の電線2で構成された電線束3であるが、ワイヤハーネス1を構成する電線は単数であっても構わない。また、電線2に沿って他の光ケーブルが配設されていてもよい。
【0020】
このような電線束3の一部を挟み込むようにして、不織材料製の面状部材4が取り付けられている。面状部材4は、電線束3の一部に取り付けられることによって、電線束3の周囲の領域に面状に広がっている。電線束3の一部とは、電線束3の両端を除く電線束3の延在方向中間の部分である。従って、面状部材4が電線束3に取り付けられることによって、電線束3の両端は面状部材4から延び出て、外部に露出した状態となる。ここでは、図1に示されるように、電線束3は3本の電線2で構成されている。
【0021】
不織材料は、絡み合う基本繊維とバインダと称される接着樹脂とを含んでいる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜150℃程度)を有する樹脂である。このような不織布は、基本繊維の融点よりも低く、かつ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱されることにより、接着樹脂が溶融して基本繊維の隙間に溶け込む。その後、不織材料の温度が接着樹脂の温度よりも低い温度まで下がると、接着樹脂は、周囲に存在する基本繊維を結合した状態で硬化する。これにより、不織材料の形状は、加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時に型枠によって成型された形状で維持される。
【0022】
接着樹脂は、例えば、粒状の樹脂又は繊維状の樹脂などである。また、接着樹脂は、芯繊維の周囲を覆うように形成されることも考えられる。このように、芯繊維が接着樹脂で被覆された構造を有する繊維は、バインダ繊維などと称される。芯繊維の材料は、例えば基本繊維と同じ材料が採用される。
【0023】
また、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態が維持されればよく、樹脂繊維の他に各種の繊維が採用され得る。また、接着樹脂は、例えば、基本繊維の融点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂が採用される。不織材料を構成する基本繊維と接着樹脂との組み合わせとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)を主成分とする樹脂繊維が基本繊維として採用され、PET及びPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂が接着樹脂として採用されることが考えられる。このような不織材料では、基本繊維の融点は概ね250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃程度である。このような不織材料は、型枠内で110℃〜250℃程度の温度に加熱されることによって、接着樹脂が溶融して周囲の基本繊維を結合し、型枠の内面に沿う形状に成型される。そして、加熱後は冷却されることによって、不織材料は成型された形状を維持したままで硬化する。
【0024】
本実施の形態では、電線束3は、折り返された矩形の面領域を有する1枚の不織材料の間に挟み込まれる。つまり、面状部材4の外縁部を構成する4辺のうちの一辺部は、不織材料の折り返しの部分である。なお、面状部材4は、電線束3を、所定の面領域を有する2枚の不織材料で、面領域に直交する方向から挟み込んだ構造であっても構わない。
【0025】
面状部材4の外縁部を構成する4辺の部分を、それぞれ一辺部40a,40b,40c,40dと称する。面状部材4は、一辺部40aと一辺部40cとが対向しており、一辺部40bと一辺部40dとが対向した部材である。また、一辺部40dが不織材料の折り返しの部分に相当する。このような面状部材4に覆われる電線束3は、ここでは、面状部材4内でT字状に分岐している。電線束3のうち直線状部分が一辺部40a、40cから外部に向けて延出し、その中間部から分岐する部分が一辺部40bから外部に向けて延出している。もっとも、電線束3の敷設態様、分岐態様は、その他の箇所での電線束3の敷設レイアウト、接続先となる電装機器の設置位置等に応じて任意に設定するとよい。このような面状部材4の外縁部のうち、一辺部40bが熱プレスにより接合される。なお、不織材料の接合は必ずしも熱プレスにより行われる必要はない。例えば、接着剤が用いられることで不織材料が接合される、又は縫合されることで不織材料が接合される形態であっても構わない。なお、上記のように熱プレスされた部分は、面状部材4の外縁部の少なくとも一部であるといえるし、また、電線2を挟み込む部分の少なくとも一部であると捉えることもできる。
【0026】
面状部材4の一辺部40bで熱プレスが施された部分は、接着樹脂により重ね合せ状態で接合されると共に、熱プレスが施されない部分と比較して圧縮されて密な構造となっている。図1の場合は、電線2が1本だけ一辺部40bに向かって配設されており、電線2が配設された一辺部40bの周囲は、熱プレスが施されていない状態である。つまり、熱プレスが一辺部40bの両端のみに施されている。このため、電線2が配設された一辺部40bの周囲は、隣り合う熱プレスされた部分の面状部材4と比較して厚みを有する。なお、熱プレスは、電線2を挟み込んでいる面状部材4の位置を必ずしも避ける必要はなく、一辺部40b全体に対して行われる形態であっても構わない。以下において、このような不織材料の熱プレスされた部分を熱プレス部41と称し、熱プレスが施されない部分を非熱プレス部42と称する。非熱プレス部42は加熱されないため緩衝性を有する。従って、電線束3は振動などの周囲の衝撃から保護される。また、面状部材4の非熱プレス部42は、基本繊維によって仕切られた微細空間を多数有する状態である。このため、非熱プレス部42は防音性も有しており、ワイヤハーネス1が備える電線束3は防音性を有する部材で囲まれている。もっとも、熱プレス部41についても、その加熱及び圧縮の程度によっては、基本繊維によって仕切られた微細空間を多数有する状態を維持することができる。このため、熱プレス部41についても防音性を呈する構成とすることができる。
【0027】
続いて、熱プレス工程について説明する。面状部材4に熱プレスを施す熱プレス装置8は、一例として図2に示されるような構造である。このように、熱プレス装置8は下型ユニット81と上型ユニット85とを備えている。
【0028】
下型ユニット81は、下型部材82とヒータ83とを備える。下型部材82は、熱伝導性に優れた金属などの材料によって形成された長尺部材である。下型部材82は、上方に向かって突設するとともに長手方向に沿って形成された突部821を有している。突部821を構成する面のうち、上型ユニット85との接触面の形状は矩形状である。ヒータ83は、図2に示されるように、下型部材82に埋設されている。
【0029】
上型ユニット85は、上型部材86とヒータ87とを備える。上型部材86は、下型部材82を反転させた構造をしており、下型部材82と同様に熱伝導性に優れた金属などの材料によって形成された長尺部材である。上型部材86は、下方に向かって突設するとともに長手方向に沿って形成された突部861を有している。突部861を構成する面のうち、下型ユニット81との接触面の形状は、突部821と同様に、矩形状である。ヒータ87は、図2に示されるように、上型部材86に埋設されている。
【0030】
なお、突部821及び突部861が面状部材4に接する面を熱するヒータ83,87は、必ずしも上型部材86及び下型部材82に埋設されている必要はなく、突部821,861に対して伝熱可能であるならば、ヒータ83,87はどのような設置形態であっても構わない。
【0031】
熱プレス装置8が備える上型部材86及び下型部材82の長手方向と、面状部材4の熱プレスが施される外縁部の一辺部の方向とを沿わせて、突部821と突部861との間に、面状部材4の熱プレスが行われる一辺部がセットされる。そして、ヒータ83,87によって熱せられた突部821と突部861とが面状部材4の一辺部を挟み込む。このように、突部821,861が面状部材4に押し当てられることで、熱プレス部41が面状部材4に形成される。
【0032】
突部821と突部861とに挟み込まれた不織材料は、ヒータ83,87により、不織材料に含まれる基本繊維の融点よりも低く、かつ不織材料に含まれる接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱される。加熱温度、加熱時間及びプレスの圧力は、熱プレス部41に要求される硬さに応じて適宜設定される。一般に熱プレス工程では、加熱の温度が高い程、加熱の時間が長い程、また、加える圧力が高い程、不織材料は、より固く、形状保持の性能の高い部材に成型される。
【0033】
接合された面状部材4から延び出た電線束3には、位置決め部材5が取り付けられる。これにより、位置決め部材5は電線束3の一部分を支持する。なお、位置決め部材5を電線束3に取付けた後に、電線束3を面状部材4で挟むようにしてもよい。位置決め部材5は、非熱プレス部42よりも硬質な材料で構成される。図1では、位置決め部材5が、面状部材4の外縁部を構成する4辺のうち、一辺部40a、一辺部40cから延び出た電線2に取り付けられている。また、本実施の形態では、位置決め部材5は面状部材4に接する構造である。つまり、位置決め部材5は、電線束3を面状部材4で挟込んだ状態で当該面状部材4に接触する位置で、電線束3に取付けられる。この状態では、位置決め部材5と面状部材4とが一続きにつながり、電線2が位置決め部材5と面状部材4との間で露出しない状態となっている。
【0034】
位置決め部材5が、プラスチックなどの樹脂材料で構成されている場合は、所望の位置決め部材5の形状に応じた金型を作製し、当該金型を用いて射出成型が行われることによって、位置決め部材5が作製される。位置決め部材5は単一の筒状形状に形成されていてもよいし、縦割状に分割可能な筒状形状に形成されていてもよい。前者の場合、電線2を、形成された位置決め部材5内に挿通することによって、電線2が位置決め部材5によって支持された構成とするとよい。後者の場合、筒状形状の位置決め部材5を縦割状に分割した状態で間に電線2を挟込んだ後、縦割状に分割した位置決め部材5を合体させてロック構造或は粘着テープ等で合体状態を維持することで、電線2が位置決め部材5によって支持された構成とするとよい。
【0035】
また、位置決め部材5は不織材料を熱プレスすることによっても得られる。このような不織材料製の位置決め部材5を作製するための熱プレス装置9の一例が、図3に示される。
【0036】
熱プレス装置9は、熱プレス装置8と同様に、下型ユニット91及び上型ユニット95で構成されている。下型ユニット91は、下型部材92とヒータ93とを備える。下型部材92は、熱伝導性に優れた金属などによって構成された長尺状の部材である。下型部材92の上方及び長手方向の両端が開口する溝状に形成され、その断面形状は矩形である。この下型部材92が位置決め部材5を熱プレスする際の下方部分を形作る型枠である。
【0037】
上型ユニット95は、上型部材96とヒータ97とを備える。上型部材96は、熱伝導性に優れた金属などの材料からなる長尺部材である。上型部材96は、下型部材92の溝状部分に嵌り込む形状で突設されている。つまり、上型部材96が、位置決め部材5を熱プレスする際の上方部分を形作る型枠である。
【0038】
ヒータ93,97は、それぞれ上型部材96及び下型部材92に埋設されている。ヒータ93,97が下型部材92及び上型部材96を介して、不織材料を基本繊維の融点よりも低く、かつ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱する加熱装置である。なお、ヒータ93,97は必ずしも上型部材96及び下型部材92に埋設されていなくてもよい。上型部材96及び下型部材92の外面に熱伝達可能であれば、ヒータ93,97は、どのような設置形態であっても構わない。
【0039】
図3に示されるように、不織材料はU字型に折り曲げられた状態で、電線2を覆い、下型部材92の溝状の部分に嵌め込まれる。このとき、不織材料の端部は、面状部材4に接した状態である。そして、上型部材96が下型部材92に嵌めこまれることにより、熱プレスが行われる。加熱温度、加熱時間及びプレス圧力は、位置決め部材5に要求される硬さに応じて適宜設定される。
【0040】
上述のように位置決め部材5が不織材料を熱プレスすることで形成されている場合は、位置決め部材5の形成と位置決め部材5の電線束3への取り付けとが、熱プレスによって一度に行うことが可能である。従って、作業の手間を軽減することができる。
【0041】
また、上記実施形態に限らず、位置決め部材5を、不織材料を熱プレスすることによって予め作製しておき、作製された位置決め部材5の中空部内に電線2を配設することで、位置決め部材5が電線2に取り付けられる形態であっても構わない。
【0042】
また、電線2に取り付けられた位置決め部材5は、電線束3が配設される車両の設置スペースである立体形状の部材(例えば、センターコンソール100)の斜面に沿わせて配設される。そして、このような配設対象の部位に、位置決め部材5の嵌め込みが可能な凹部形状、例えば溝部200が設けられている。位置決め部材5が溝部200に嵌め込まれることによって、車両に対する位置決め部材5と電線2との位置が決まる。
【0043】
図4は、本発明に係るワイヤハーネス1が車両、具体的には運転席の下方に設置された状態を示している。ワイヤハーネス1は、ドア部110とセンターコンソール100とに挟まれた位置に設けられており、一辺部40dが、ブレーキペダル120、アクセルペダル130が設けられた側に向いている。面状部材4の形状は、防音材が取り付けられる車両のスペースの形状に応じて形成されている(つまり、設置スペース内になるべく広範囲に広がった状態で収まるように形成されている)。なお、図4において、面状部材4の斜線領域は熱プレス部41を表している。センターコンソール100側、及びドア部110側の電線2には、位置決め部材5が取り付けられており、この位置決め部材5は溝部200内に嵌め込まれている。位置決め部材5から延出する電線2(電線束3)は車体に沿って配設され、他の電装機器に接続される。このように、面状部材4を備えたワイヤハーネス1がフロア部材を構成する鉄板の上に配設されてから、フロアカーペットがワイヤハーネス1上に敷かれることで、車室のフロア部分が構成される。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、所定の面領域を有する面状部材4が、電線束3を挟み込んだ構造である。電線束3を面状部材4に挟み込んだ状態で、車両の設置スペースに設置することができるため、防音材及び電線の車両への組み付け作業の作業性が向上する。それとともに、電線束3は、防音性を有する加熱されない状態の不織材料で挟み込まれており、この不織材料で構成された面状部材が設置対象部位であるフロアを覆うため、車両の内部に音が伝わることを十分に抑えることができる。
【0045】
また、電線2に取り付けられた位置決め部材5は、配設対象に設けられた溝部200に嵌め込まれることによって、配設対象部位に対する位置決め部材5と電線2との位置が決まる。これにより、電線2を配設対象部位であるフロアに対して一定位置に位置決めすることができる。また、位置決め部材5は、電線2を挟み込む面状部材4に接しているため、面状部材4を配設対象部位であるフロア上の一定位置に配設すると、電線2が面状部材4に対しても一定位置に配設された状態となる。このため、電線2を配設対象部位であるフロア及び面状部材4に対して位置決めすることが可能となる。
【0046】
また、面状部材4の外縁部の少なくとも一部が熱プレスされた熱プレス部41が形成されているため、面状部材4のめくれ上がりを抑制することができる。
【0047】
しかも、熱プレス部41は、電線を挟み込む部分の少なくとも一部に形成されているため、面状部材が電線を挟み込んだ状態を維持することができるとともに、面状部材に対する電線の位置決めも行うことができる。
【0048】
また、電線束3(電線2)を不織材料40で構成された面状部材に挟込んだ構成としているため、別途電線束3(電線2)を配索するスペースが不要となり、省スペース化に貢献する。
【0049】
<2.第2の実施形態>
次に、図5を参照しつつ、第2の実施形態に係るワイヤハーネス1bについて説明する。なお、以下の実施形態で、第1の実施形態にて示された構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されており、第1の実施形態のワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明するものとする。
【0050】
図5に示されるワイヤハーネス1bの構成は、ワイヤハーネス1よりも簡略化されており、面状部材4が電線束3を斜めに挟み込んだ形態である。第2の実施形態でのワイヤハーネス1bは、熱プレスにより接合される面状部材4の位置が第1の実施形態とは異なる。具体的には、図5に示されるように、熱プレスは、面状部材4のうち、電線束3を挟み込む位置の全体、又はその一部に行われる。図5に示される面状部材4の斜線領域が、面状部材4のうち、電線束3を挟み込む位置の全体を表している。なお、面状部材4のうち、電線束3を挟み込む位置の一部とは、必ず電線束3を中心にした面状部材4の両側の位置であって、一方の斜線領域のみの場合を含まない。
【0051】
電線束3を挟み込む位置が熱プレスにより接合されるため、電線束3の動きは規制されるため、面状部材4に対する電線束3の位置ずれを抑えることができる。特に、一辺部40b又は一辺部40d側への電線束3の位置ずれについても抑えることができる。また、面状部材4が接合されることにより、面状部材4が電線束3を挟み込んだ状態を維持することもできる。
【0052】
このように、第2の実施形態に係るワイヤハーネス1bは、面状部材4に対する電線束3の位置ずれをより確実に防ぐことができる。そして、面状部材4が電線束3を挟み込んだ状態を維持することもできる。
【0053】
もっとも、面状部材4を、電線束3を挟込む位置で熱プレスにより接合することは必須ではない。また、面状部材4を、電線束3を挟込む位置で熱プレスにより接合する場合であっても、上記第1実施形態のように、面状部材4のうち電線束3を挟み込む一部(第1実施形態では面状部材4の外縁部で)の部分で熱プレスしてもよい。
【0054】
<3.第3の実施形態>
次に、図6を参照しつつ、第3の実施形態に係るワイヤハーネス1cの構造について説明する。なお、以下の実施形態で、第1の実施形態、第2の実施形態にて示された構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されており、第1の実施形態、第2の実施形態のワイヤハーネス1,1bとは異なる点についてのみ説明するものとする。
【0055】
第3の実施形態に係るワイヤハーネス1cは、重ね合わされた面状部材4が、面状部材4の外縁部のいずれの位置においても、折り返し又は接合によりつながった構造である。つまり、一枚の不織材料が折り返されることによって面状部材4を形成する場合は、折り返しの部分である一辺部40dを除く3辺(一辺部40a,40b,40c)が熱プレスされる。また、2枚の面状部材4が重ね合わされて接合されている場合は、面状部材4の外縁部を構成する4辺すべてで熱プレスによる接合が行われる。図6では、外縁部を構成する4辺が熱プレスされている状態が示されている。熱プレスは、面状部材4のうち、電線2を挟み込む位置も含めて一辺部ずつ行ってもよい。
【0056】
ワイヤハーネス1cは、上述のように、面状部材4の外縁部が接合されているため、面状部材4が、面状部材4の外縁部からめくれ上がることを確実に防止できる。また、面状部材4の外縁部の電線束3を挟み込む位置が熱プレスにより接合されるため、面状部材4に対する電線束3の位置ずれも確実に抑えることができる。
【0057】
このように、第3の実施形態に係るワイヤハーネス1cは、面状部材4がめくれ上がることを確実に防止できるため、面状部材4が電線束3を挟み込んだ状態を、より確実に維持することができる。また、面状部材4に対する電線束3の位置ずれも確実に抑えることができる。
【0058】
もっとも、面状部材4の外縁部が熱プレスによって接合されていることは必須ではない。また、面状部材4の外縁部を熱プレスによって接合する場合であっても、第1の実施の形態のように、面状部材4の外縁部の一部が熱プレスによって接合されているだけであってもよい。
【0059】
<4.変形例>
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
第1の実施形態に係るワイヤハーネス1は、位置決め部材5が電線2に取り付けられていない形態であっても構わない。第2の実施形態に係るワイヤハーネス1b、第3の実施形態に係るワイヤハーネス1cにおいても、位置決め部材5が電線2に取り付けられていなくともよい。つまり、ワイヤハーネス1は、不織材料製の面状部材4が電線2を挟み込んでいる構造であればよい。
【0061】
また、上記実施形態では、位置決め部材5は面状部材4と接する形態であったが、このような形態には限られない。位置決め部材5と面状部材4とが一体的に形成されていてもよい。例えば、面状部材4を構成する不織材料が電線2の端部に向かって部分的に延び出ており、この延び出た不織材料が電線2の周囲を覆うことで位置決め部材5が形成された形態であってもよい。また、位置決め部材5の端部が、重ね合わされた面状部材4の間に挟み込まれた形態であっても構わない。このように、位置決め部材5の端部が面状部材4間に挟み込まれた形態は、例えば、先に面状部材の幅よりも狭い間隔で位置決め部材5を電線束3に取り付けておき、面状部材4が、位置決め部材5の端部、及び位置決め部材5間の電線束3を挟み込むようにして取り付けられることで得られる。さらに、この場合、位置決め部材5の端部が面状部材4の間に挟み込まれた状態で、面状部材4が熱プレスされていても構わない。また、位置決め部材5が面状部材4と接着剤などで接合された形態であってもよい。このように、面状部材4と位置決め部材5とは一体的に形成されると、電線束3の位置ずれはより確実に抑えられる。
【0062】
また、上記実施形態では、面状部材4が取り付けられたワイヤハーネス1が運転席の下方に設けられた構造が示されているが、このような形態には限られない。車両の防音材が配設される領域であれば、いずれの位置にもワイヤハーネス1を配設することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ワイヤハーネス
2 電線
3 電線束
4 面状部材
5 位置決め部材
41 熱プレス部
42 非熱プレス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の両端が露出するように前記電線の一部を挟み込んで重ね合わされており、前記電線の周囲の領域に面状に広がる不織材料で構成された面状部材と、
を備えるワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
前記面状部材の外縁部の少なくとも一部が熱プレスにより接合されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
前記面状部材のうち、前記電線を挟み込む部分の少なくとも一部が熱プレスにより接合されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤハーネスであって、
前記面状部材と接して、又は一体的に形成されており、前記面状部材から延び出た前記電線を支持するとともに、配設対象部位に設けられた凹部形状に嵌め込み可能な位置決め部材を、
さらに備えるワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123974(P2012−123974A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272552(P2010−272552)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】