ワイヤレス無線周波数信号を用いた光信号の符号化
【課題】半導体デバイスにおいて、光信号を変調する方法を提供する。
【解決手段】ワイヤレス無線周波数変調信号は半導体ナノ構造領域における時間依存電界を提供し、それは半導体デバイスにおいて吸収を変化させる。半導体デバイスにおいて伝搬する光信号はワイヤレス無線周波数変調信号の特性に従って変調され、そして情報をワイヤレス無線周波数信号から光キャリアへと符号化する方法を提供する。
【解決手段】ワイヤレス無線周波数変調信号は半導体ナノ構造領域における時間依存電界を提供し、それは半導体デバイスにおいて吸収を変化させる。半導体デバイスにおいて伝搬する光信号はワイヤレス無線周波数変調信号の特性に従って変調され、そして情報をワイヤレス無線周波数信号から光キャリアへと符号化する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスRF信号と実質的に同一量の情報を運ぶ光信号を供給するために、GHz(GHz)やTHz(THz)周波数信号といった、ワイヤレス無線周波数(RF)信号を使用することに関連する。RF信号によって運ばれる情報は、本発明に従った方法及びデバイスを用いることで、光信号に伝えられる。
【背景技術】
【0002】
近年の通信システム技術は、毎秒約1テラビット(Tbit/s)の伝送速度にすることを可能にしている。このようなシステムは、光信号に基づいている。複数のギガビット(Gbit/s)エミッタが合わさって、光時分割多重化(OTDM)を経由してこの速い伝送速度を生み出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1416316号明細書
【特許文献2】英国特許第2386965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つのエミッタを使用して高い伝送速度を生み出すために障害となっているのは、基本的な問題である。すなわち、例えば、半導体レーザーダイオードでの直接のTHz電流変調や、位相シフトベースのスイッチにおける電圧制御は、そのようなデバイスが本質的に有する「大きい」RC時定数に起因して、満足な効果を生むことがないということだ。ここでいう「大きい」とは、関連する充放電速度が、おそらく1THzよりは一桁小さい10GHzから40GHzに変調速度を制限するという意味である。レーザーダイオードの超高速光誘導スイッチングは可能だ。しかし、低温の電子群の復旧が遅いために、最終的にはTHz変調速度を達成することが困難である。このプロセスは、100GHz以上の変調速度を供給するには遅過ぎる。
【0005】
光時分割多重化は、それぞれでは(毎秒10ギガビットといった)「低い」反復速度のエミッタを組み合わせることで、高い光波長伝送速度を獲得することができるが、THz信号の光信号へのデジタル符号化は今のところ不可能である。
【0006】
特許文献1(欧州特許第1416316号明細書)及び特許文献2(英国特許第2386965号明細書)は、それぞれのブランチにおいて電気的に応答する光移相器又は変調器を使用することで、光信号を変調する干渉計を開示している。上記の移相器は、量子ドットを含む層を有する。変調信号は、電気配線を介して受信されるRFハードワイヤード電圧信号であり、蒸着された電極又は金属接触層によって移相器に印加される。
【0007】
移相器にハードワイヤ(有線)信号を供給する駆動回路が、移相器の変調速度を約100GHzに制限するRC定数をもたらすことは不利な点である。
【0008】
本発明の目的は、数百GHzからTHzに達する周波数のワイヤレス高周波無線(RF)信号のコヒーレント検出及び/又は光キャリア信号への瞬間的な符号化のための方法及びデバイスを供給することにある。
【0009】
また、本発明のもう一つの目的は、電気回路内のRC時定数によって得られる速度が制限されない、光信号を変調する方法及びデバイスを提供することである。さらに本発明のもう一つの目的は、ワイヤレス高周波RF信号から光信号へ(直接)符号化するための方法及びデバイスを提供することである。これによって、公知の方法で検出される光信号にワイヤレスRF信号を符号化することにより、ワイヤレスRF信号のコヒーレント検出が可能になる。
【0010】
したがって、本発明は、これらの目的に対応する先行技術の課題を解決する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様においては、第1周波数を有する光入力信号を変調する方法であって、
(a)半導体ナノ構造領域であって、前記半導体ナノ構造領域へと結合される前記光入力信号の一部を吸収できる複数の半導体ナノ構造部を有する前記半導体ナノ構造領域と、
(b)第1光インターフェイスと、
(c)変調光出力信号の形で、前記光入力信号の吸収されなかった部分が前記半導体ナノ構造領域から外に結合される第2光インターフェイスと、
(d)第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部と
を有する半導体構造における半導体ナノ構造領域に、前記第1光インターフェイスを通して前記光入力信号を結合する手段と、
前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記無線周波数受信部へと供給し、かつ、一時的に前記光入力信号とオーバーラップして前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域に結合させて、前記半導体ナノ構造領域を越えて時間依存電界を供給し、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって前記光入力信号の前記第1周波数における前記半導体ナノ構造領域における吸収を変化させる手段と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を、前記第2光インターフェイスを通して結合して前記変調光出力信号を供給する手段と
を備える方法を提供する。
【0012】
RF信号によって生じた第1周波数での吸収及び恐らく位相における変化は、RF信号から光入力信号へとデータを変調することに用いられうる。あるいは、光入力信号へこれらを転移させることで、光出力信号の検出によってRF信号の特性を検出することに用いられうる。
【0013】
本発明の第2態様においては、信号変調器又はRF−光符号化装置が提供される。信号変調器は、第1の周波数を有する光出力信号を、光入力信号と第2の周波数を有するワイヤレス無線周波数変調信号とに基づいて供給することができる。信号変調器は、前記光入力信号の一部を吸収する複数の半導体ナノ構造部を有する半導体ナノ構造領域と、前記光入力信号を前記半導体ナノ構造領域へと結合する第1光インターフェイスと、前記光入力信号の吸収されなかった部分を前記半導体ナノ構造領域から外に結合させて前記光出力信号を生成する第2光インターフェイスと、前記第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部と を有する半導体構造を備える。
【0014】
以下では、多数の望ましい、及び/又は任意の特性、要素、例示、実施、効果がまとめられる。ある実施形態又は態様に関連して記述された特性又は要素は、適用可能な他の実施形態や態様に結合されたり、適用されたりする場合がある。例えば、実施の方法に関連して適用される構造的、機能的特性はまた、デバイスに関する特性としても使用され、逆の場合も同様である。また、発明者によって理解されるような本発明の基本的なメカニズムに関する説明は、説明の目的のために存在するのであり、発明を推論するための事後的な分析に用いられるべきではない。
【0015】
例えば量子井戸、量子細線、量子ドット等といった、量子閉じ込めシステムへの量子閉じ込めの方向に沿った電界の印加は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られる効果につながる。電界Fを印加した結果、電子と正孔の電荷キャリアの閉じ込めポテンシャルは、バンド構造の傾きによって、光遷移エネルギーの確率が減少する方向へと修正される。そして、電子と正孔の間の波動関数に空間的に大きな乖離が生じた結果、光遷移の確率は減少する。光遷移の確率は、概ね光吸収係数と比例する。
【0016】
本願発明の動作原理に基づけば、量子閉じ込めの方向に沿っての半導体ナノ構造領域への電界印加は、とりわけ、光入力信号の波長におけるナノ構造の光吸収係数の減少をもたらすことになる。
【0017】
そして、仮に電界が静的にではなく、むしろ時間によって変化するように印加されるならば、それに応じた半導体ナノ構造の閉じ込めポテンシャルの変更は、時間変化する電界に瞬時に追随することになる。
【0018】
したがって、例えば時間によって変化する電界の影響を受けて閉じ込めポテンシャルが変化し、それに応じて光吸収係数が時間によって変化する。
【0019】
本発明によれば、時間変化する電界が、ワイヤレス高周波数無線信号によって半導体ナノ構造を含む構造に供給されることで、特に、入射RF信号における電界の変化に応じた割合で、半導体ナノ構造領域の光吸収係数が変化する。我々はそこで、RFワイヤレス信号によって誘導されるQCSEの瞬間的な性質を用いて、半導体ナノ構造領域を通じて伝送される、又はそこから反射する光入力信号の変調を提供する。
【0020】
この方法によって、RF信号によって伝送された情報は、光入力信号に伝えられる。RF信号の変調が光信号に伝えられることによる効果はほとんど瞬間的であり、変調はサブピコ秒のタイムスケール又はそれより長いタイムスケールで変化し、その結果として光入力信号へと伝えられる。
【0021】
他の方法においては、QCSEの効果は以下のように説明することができる。すなわち、変調RF信号が無線周波数受信部に供給されるとき、変調RF信号は第1半導体ナノ構造部を越えて時間依存性がある電界を供給する。その結果、第1価電子帯状態(Eh,Ψh)から第2価電子帯状態(E’h,Ψ’h)までの第1半導体ナノ構造部の価電子帯状態の変化、第一伝導帯状態(Ee,Ψe)から第2伝導帯状態(E’e,Ψ’e)までの第1半導体ナノ構造部の伝導帯状態の変化をもたらす。
【0022】
それによって、半導体ナノ構造部の波動関数オーバーラップが<Ψh|Ψe>から<Ψ’h|Ψ’e>へと変化する。そして、この変化は、結果として半導体ナノ構造領域における光入力信号の第1周波数における吸収の変化となる。したがって、光入力信号に生じた吸収を変化させるには、第1周波数は第1価電子帯状態から第1伝導帯状態へ、又は、第2価電子帯状態から第2伝導帯状態へと電荷キャリアを励起させるために十分な光子エネルギーに対応しなければならない。
【0023】
したがって、この方法及び変調器は入射RF信号と同じ情報を持った光信号データを提供するのに使用されうる。そして、この方法は光通信システムの中では非常に有利なものである。なぜなら、対応する光信号へ変換することでワイヤレス無線周波数信号を受信する方法を提供するからである。
【0024】
本発明は入射されたワイヤレスRF信号を、電子回路が介在することなく直接光入力信号へ変調するという効果を奏する。その結果、変調は瞬間的で、より高い変調速度を提供しうる。
【0025】
この方法及び変調器は、無線信号及び光信号の両方の偏向状態に関係なく、同様に、無線周波数信号及び光信号の互いの偏向方向、並びに半導体ナノ構造部の方向にも関係なく、無線周波信号を光信号へ符号化することを可能にする。光信号の互いの偏向方向や半導体ナノ構造部の方向に関して比較的弱い偏向依存性が、半導体ナノ構造の光吸収の異方性の結果として存在するかもしれないが、光信号の瞬間的な変調の効果が全くなくなるというわけではない。また、半導体ナノ構造の空間的な異方性に起因する、瞬間的な変調の効果の比較的弱い依存性も存在するかもしれないが、これもまた変調の効果が全くないというわけではない。変調方法が偏向に依存しないことは、光伝導検出や自由空間電気光学サンプリングといった他の方法に比べて有利な点である。そこでは、RF信号検出又は光信号へのRF信号の符号化をできないRFと光信号のお互いの偏向方向及びRF受信部の方向を見つけることが常に可能である。
【0026】
通信システムでの利用とは異なるが、RFから光へのコヒーレント符号化と同じ原理が、高周波数RF分光法や検出/イメージングシステムにおいて非常に効果的に用いられている。そこでは、分光法/検出/イメージングシステム(又はほかのRF信号ソース)からのRF信号と入力する光入力信号とで、センサーの一部を形成しうる。本発明を用いることで得られる光出力信号は、RF信号からの特性を含み、RF信号自体を分析する代わりに分析されうる。THz周波数における様々なイメージング、センシングそして分光法が、例えば以下の著作物で議論されている。B.ファーグソン/X.C.チャン著「THzサイエンスのマテリアルとテクノロジー」、ネイチャーマテリアル第1号、26-33ページ、2002年。
【0027】
本発明はRF分光出力信号のスペクトル特性に対応するスペクトル特性を持つ光出力信号を作る。そのため、適切な装置を用いた光出力信号の検出は、RF信号の中に含まれる分光情報を明らかにするために用いられる。
【0028】
半導体ナノ構造は本発明の核心部である。本発明で使われている半導体ナノ構造は、1マイクロメーターより小さな次元を少なくとも1つ持つ半導体素子である。電子と正孔はこの次元に沿って制限された動きをすることになる。それが、量子閉じ込めである。光遷移エネルギーや光遷移確率といった、量子閉じ込め電子及び正孔に関連のある光学的特性は、量子閉じ込めポテンシャル並びに電子及び正孔の質量(しばしば「有効質量」と言われる)の影響を受ける。そのような半導体ナノ構造では、量子閉じ込めのこの次元に沿って印加された外部電界によって、基本的に瞬時に、例えば光遷移エネルギーや光遷移確率といった電子及び正孔の光遷移パラメータが修正される。
【0029】
このようにして、光遷移に関連する半導体構造の光学的特性は、外部電界の印加を受けて基本的に瞬時に変化する。入射されたワイヤレス電磁RF信号の電界成分によって外部電界が供給されると、半導体部の光学的特性は入射RF信号の電界強度の関数として変調される。光入力信号が半導体構造を通じて入射RF信号と同時に伝送されると、光入力信号の伝送は入射RF信号によって変調され、入射RF信号によって伝送された情報を光入力信号へ符号化することになる。これは、GHzやTHzといった非常に高い周波数を持ったRF信号からの情報を光信号へ符号化する手段をもたらす。
【0030】
半導体ナノ構造は、「量子井戸」(1次元での量子閉じ込め)及び/又は「量子細線」(2次元での量子閉じ込め)、及び/又は「量子ドット」(三次元での量子閉じ込め)を含む。しかしながら、半導体ナノ構造は、さらに複雑な他の形状を有してもよい。本発明の基本原理は、どの種類の半導体ナノ構造に対しても同じである。
【0031】
以下では、本発明の原理を、半導体ナノ構造の一例として量子ドットに基づいて説明する。
【0032】
半導体構造は、有利なことに、半導体構造の第1導波路インターフェイスから第2導波路インターフェイスへ光入力信号を誘導するように適合された導波路構造を備え、光入力信号の少なくとも一部が導波路構造にて誘導された際に半導体ナノ構造領域とのオーバーラップを有するべく、導波路構造と半導体ナノ構造領域とは光学的に結合されている。
【0033】
有利なことに、変調無線周波数信号は、無線周波数遠隔通信又はデータ伝送プロセス、無線周波数分光プロセス、無線周波数検出プロセス、無線周波数イメージングプロセスといった、光入力信号へ符号化されるべき情報を含む信号である。他の応用例も想定することができる。RF信号へ変調され、そこで光信号へと伝送されるデータは、アナログ及び/又はデジタルのいずれであってもよい。
【0034】
ワイヤレスRF信号の周波数、つまり、第2周波数は、5GHzから20THzの範囲といったように、5GHzから50THzの間の範囲にあるのが好ましい。この範囲の最も高域の周波数は、電気有線(ハードワイヤード)信号では不可能なため、RF信号が電磁放射信号であることは当業者には明らかである。
【0035】
量子ドットは、バンドギャップの狭い半導体の3次元片で、バンドギャップが大きい半導体、誘導体又は真空空間に取り囲まれている。量子ドットの寸法は、通常は100ナノメートルを超えない。量子ドットは、球体、円盤状、レンズ状、ピラミッド状、立方体などの異なる形をしていてもよい。円盤状の量子ドットの概略図が図4に示されおり、円盤状の量子ドットでの重要な寸法である、半径(R)と高さ(d)が示されている。量子ドットでの電荷キャリアは3次元に閉じ込められ、その結果、キャリアの加熱や量子ドットからのキャリアの離脱に関連する効果の影響を受けないか、又は少なくとも非常に限られた影響しか受けない。例えばGHz又はTHz周波数での電界になり得る入射RF信号は、量子ドットにおいて、基本的に瞬時に量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を引き起こす。RF信号の電界は電子と正孔の波動関数の変位を引き起こし、そして今度は電子-正孔の波動関数オーバーラップ(重なり積分)の(動作環境に依存する減少のような)変化を生む。電子を価電子帯から伝導帯へ励起させる(それによって電子-正孔のペアを作り出す)遷移確率は、この光遷移に関わる光子の吸収確率(つまり吸収強度)に影響し、又は生成された電子−正孔のペアの組み換え効率に影響し、重なり積分の2乗に比例する。このように、光入力信号の吸収を変化させるのは、直接的にはキャリアの供給ではなく、むしろQCSEを通してもたらされる光遷移確率(つまり吸収強度)の変化である。QCSEは、(基本的に)瞬間的な効果であり、一時的にRF信号とコヒーレントであるので、本発明は直接RF変調を光キャリアへTHzのレートで符号化することを可能にし、したがって例えば遠隔通信システムにおいてテラビット/秒のデータ伝送速度にすることを可能にする。
【0036】
ここで、いくつかの例において、非常に短い自由キャリアの寿命を有し、入射信号の電界に依存し、量子井戸層と平行に偏向している量子井戸は、量子ドットの代わりに用いられうる。非常に短い自由キャリアの寿命は、バンドギャップの下での数多いトラップ状態を導くことによってもたらされる。このような配置はまた、結果として、フランツ・ケルデシュ効果又はバルク・シュタルク効果によって、入射ワイヤレスRF信号の電界によって量子井戸吸収のほぼ瞬間的な変調を引き起こす。吸収リカバリ速度は、量子井戸において光励起された電子及び/又は正孔が、十分に効率的に早くトラップ状態にキャプチャーされることによって決まる。
【0037】
半導体構造に導波路構造(120)を含めることで、光出力信号の変調は増加しうる。なぜなら光信号と半導体ナノ構造領域の間のオーバーラップが増加するからである。導波路構造は第1導波路インターフェイス(121)から第2導波路インターフェイス(122)へ光入力信号を少なくとも部分的に導くことに適合されており、少なくとも光入力信号の一部は、導波路構造(120)に誘導されたときに半導体ナノ構造領域(112)とのオーバーラップを有するべく、導波路構造(120)と半導体ナノ構造領域(112)は光学的に結合されている。
【0038】
上述したように、本発明は、変調が、主として量子状態を満たしたり空にしたりすることを通じてもたらされるのではなく、RF信号が引き起こす波動関数オーバーラップの変化を通じてもたらされるという点で優位性を有する。
【0039】
本発明に係る変調器は、半導体光増幅器又は電気吸収変調器に類似しているかもしれないが、RF変調信号の構造への低損失結合を提供することで、できるだけ多くのRF変調信号を半導体ナノ構造領域へ入らせるように適合されている。この理由は、多くの応用例や実際的事例において、RF変調信号がすでにきわめて弱いからである。いくつかの実施形態では、本発明の第2態様に係る変調器は、特定の半導体光増幅器に用いられるものと同じ装置を使って製作されうる。当該製造方法は、半導体ナノ構造領域へのRF変調信号の低損失結合を達成できるよう適合されていることだけが必要である。
【0040】
入射無線変調信号のナノ構造領域への低損失結合は、入射無線RF信号の電界による半導体ナノ構造において量子閉じ込めシュタルク効果の発生の高い効率をもたらす点で重要な役割を果たしている。低損失結合は、好ましくは入射RF信号にとって効率的なインピーダンス整合を提供することで、RFから光への符号化デバイスの表面で入射無線RF信号の反射損失を低減又は除外するために重要である。RF変調信号の低損失結合への適応方法はいくつかの異なる方法でなされるかもしれない。
【0041】
比較的損失が低い結合は、半導体ナノ構造領域とRF受信部との間に、十分に低い1つの(又は複数の)ドーピングレベルを持つ層のみを設けることで得られうる。ドーピングレベルがRF信号のインピーダンス整合を提供するように選択されない限り、自由キャリア吸収効果及びドープされた半導体のインターフェイス反射率の増加によって、半導体構造でのRF信号の吸収を減らす。通常、ドーピング密度は、わずか1立方センチメートルあたり約1015キャリアしか供給しない。この数字は使われている素材の種類や層の厚みに強く依存する。
【0042】
しかしながら、下記で述べるが、特定の最適なドーピングレベルはその構造の表面でRF信号結合の強化を促す場合がある。当業者は、RF変調信号が低損失で半導体ナノ構造領域へ結合されるべきであるという知識を与えられて、そのような層を適切に設計することが可能だ。
【0043】
RF信号の低損失結合は無線周波数受信部での反射防止コーティング及び/又はインピーダンス整合層を供給することで強化される。
【0044】
ワイヤレスRF信号の偏向が広い範囲で線形である場合に、ワイヤレスRF信号のこの装置への入射角度が、RFから光符号化装置の表面に入るブリュースター角であるという一般的な形態が使用される。
【0045】
上述したように、半導体構造は、有利なことに、第1導波インターフェイスから第2導波インターフェイスへ光入力信号を少なくとも部分的に導くことに適合しており、少なくとも光入力信号の一部が、導波路構造に誘導されたときに半導体ナノ構造領域とのオーバーラップを生じるように、導波路構造と半導体ナノ構造領域は光学的に結合された導波路構造を有する。
【0046】
有利なことには、光入力信号と無線周波数変調信号とはともに伝搬する。このことは、オーバーラップと、そして変調効率、つまり無線周波数変調信号からの情報が光入力信号に伝えられる効率とを増加させる。
【0047】
有利なことには、光入力信号と無線周波数変調信号が半導体構造の中でともに伝搬するとき、空間的及び時間的なオーバーラップを最適化し、それによって変調効率を増加させるために、それらの群速度は同一であるか又は少なくとも非常に似ている。
【0048】
第3の実施態様においては、第2の態様に従った半導体変調器が、光入力信号をワイヤレス無線周波数変調信号で符号化する干渉計光符号器の一部として使用される。符号器は、第2実施態様の信号変調器を有する第1の干渉計アームと、内部で光信号の大きさを調整することができる光減衰器又は光増幅器に結合され、内部で光信号の位相を調整することができる光移相器を有する第2の干渉計アームと、入力信号を第1信号部及び第2信号部に分割して、それぞれを第1アーム及び第2アームに入力させる入力ポート及びスプリッターと、第1アームからの出力と第2アームからの出力と結合させる光出力ポートとを備える。
【0049】
このような符号器は無線周波数変調信号を用いて光入力信号の、(ほぼ)バックグラウンドフリーな符号化を可能にする。
【0050】
信号変調器に適用されるのと同じ考察が、干渉器に基づく光符号器に対してもあてはまる。例えば、無線周波数変調信号の結合が有利なことに低損失で起こる。同様に、光入力信号と無線周波数変調信号がともに伝搬することで、変調効率を増加しうる、等が挙げられる。
【0051】
ここで留意すべきは、本発明が光入力信号の吸収の増減に依存しないということである。本発明は、(変化がないことの反対に)とにかく変化があるという事実に依存する。上述の議論は、価電子帯及び伝導帯の両方における基底状態及び励起状態の両方にあてはまる。そして、光入力信号の吸収において変化をもたらすことに関与する状態は、基底状態である必要はなく、好ましくは励起状態である方がよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、本発明に使われる半導体構造の概略図を示す。
【図2】図2A〜図2Dは、本発明に関する方法を実現するための配置を概略的に示す。
【図3】図3A及び図3Bは、電界が領域を越えて印加される場合の量子閉じ込め領域における波動関数の変化を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の一部として用いられる、半導体ナノ構造部及び量子ドットを概略的に示す。
【図5】図5は、z座標方向に電界が印加されていない場合の、図4で示した量子ドットのz座標に沿った電子及び正孔の基底状態の波動関数の大きさを示す。
【図6】図6A及び図6Bは、x軸方向に電界が印加されていない場合の、図4における量子ドットのx−y平面において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさを示す。
【図7】図7A及び図7Bは、x軸に沿って100kV/cmの強度の電界が存在する場合の、図4におけるx−y平面において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさを表す。
【図8】図8は、図4で示される量子ドットに対する、電子及び正孔の波動関数の重なり積分と、x軸に沿って印加された電界における電子及び正孔の波動関数の重なり積分の2乗との依存性を示している。
【図9】図9は、図4で示される量子ドットに対する、x軸に沿って印加された電界における、電子及び正孔の波動関数の重なり積分の2乗の微分を示す。
【図10】図10Aは、図4で示される量子ドットに対する、x軸に沿って印加された電界へのシュタルクシフトの依存性を示す。図10Bは、図4で示される量子ドットがx軸に沿って印加した電界における、シュタルクシフトの微分係数を示す。
【図11】図11は量子閉じ込めシュタルク効果の影響を示す。
【図12】図12は、RF−光符号器を示す。ここでは、干渉器を含む形態でのRF−光符号器を示す。
【図13】図13A〜図13Cは、RF−光符号器のプレバイアス電界を半導体ナノ構造領域へ印加するさまざまな電極の形態、例えば、図12で示した形態を示す。
【図14】図14は、RFパルス単体とパルス列を表したRF信号を示す。
【図15】図15は、図12で示されるRF−光符号器を用いて、図14の上部及び下部からRFパルス及びパルス列をそれぞれ光キャリアに符号化することで得られた出力信号を示す。
【図16】図16は、図15で示される計算に用いられる光キャリアの一部を示す。図16の上部は、図15の上部(単一パルス)から符号化された光信号の対応する一部を表している。
【図17】図17は、図16の下部で示される光キャリアのパワースペクトルと図15で示される光出力信号を表している。
【図18】図18は、図14で示される単独のRFパルスに対応するスペクトルの大きさを示し、それは図14で示されるパルス列に対応するスペクトルの大きさを示す。
【図19】図19から図25は、本発明に関する実施形態と同様に原理を証明する実験に関連する。図19は、原理証明実験の設備を概略的に描いた図である。
【図20】図20は、原理証明実験における半導体構造を示すサンプルの概略図である。
【図21】図21は、(上のグラフは)サンプルでの、QDによってもたらされたRF信号の電界のグラフを示しており、(下のグラフは)入力結合されたRF信号の電界によってサンプルのQD領域において吸収の変調による光反射性における変化を示す。シーケンスでの個々のRF信号パルスと関連する個々の反射性変調信号は、示されている大きさである必要はない。
【図22】図22は、サンプルの小信号反射性スペクトルと、サンプルに入射RF信号によって入射されたときのサンプルの反射性の変化を調べるために用いられる光パルスのスペクトルを示す。
【図23】図23(a)及び図23(b)は、入射RF信号の電界と、レーザーパルスによってもたらされるサンプルのナノ構造領域の反射性ΔRにおける変化とを示す。
【図24】図24は、この実験でサンプルとして使用されたQDデバイスにおけるRFパルスの多重反射によって引き起こされたQDデバイスの反射性における測定された変化を示す。
【図25】図25は、図23及び図24で示された時間領域データのフーリエ変換の結果としてのスペクトル応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例は、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲に制限を課すと解されるものではない。
【0054】
図1(a)は、本発明に用いられる半導体構造110の概略図を示す。半導体構造110は、半導体ナノ構造部112a及び112bを含む半導体ナノ構造領域112を有する材料領域131及び132を備える。図1(a)に示す半導体構造は、当該構造を伝搬する光入力信号と、吸収を生じさせるナノ構造領域との間に相互作用を及ぼす。構造110は、光入力信号を当該構造に結合させるための第1の光入力インターフェイス121と、光入力信号のうち吸収されなかった部分を当該構造の外部に結合させるための光出力インターフェイス122とを有する。当該構造は、ここでは平面状の部材として示されている、無線周波数信号を受信してナノ構造領域112にRF信号を低損失で結合させやすくするための受信部114をも有する。受信部114は、半導体構造の残りの部分とともに、少なくとも1つの波長において無線周波数信号を効率的に受信するように設計されており、受信した信号をナノ構造領域に結合してRF信号によって生じる電界をナノ構造領域112又は少なくともその一部に供給する。第1の光入力インターフェイス121及び第2の光出力インターフェイス122は、同一の部材であってよく、後述の原理証明実験で用いられるように、光信号が当該インターフェイスを通って構造110に入ると、構造110内で反射して、同じインターフェイスを通って出ていく。
【0055】
図1(a)の部材は、112a及び112bのようなナノ構造部を表出させることを目的の一部として、透明に示されている。図1(b)は図1(a)に示した構造を側面から描いた図である。
【0056】
受信部114は分離された部材である必要はない。半導体構造自身が受信部として機能してもよい。プリズム又は他の適切な光学部材が受信部として用いられてもよい。半導体構造の表面にコーティングが施されてもよい。これは設計事項である。
【0057】
受信部114は、全ての実施形態において、入射ワイヤレスRF信号に対する効率的なインピーダンス整合を提供することで、入射ワイヤレスRF信号の反射損失を低減又は除去する役割を有する。以下に、半導体構造110の表面に特殊なコーティングを用いた受信部114の好ましい実施形態を示す。
・クレール等の著作「高性能THz電子的光学的検出器」エレクトロンレター、第40巻、763−764ページ(2004年)にあるような、特殊な金属性反射防止コーティング
・フェケテ等の著作「高抵抗半導体のTHz反射性のアクティブ光制御」光学レター、第30巻、1992−1994ページ(2005年)にあるような、ドーピングによる供給又は光励起による自由キャリアが最適に集中している半導体層
・トゥチノーヴィチ等の著作「THz範囲でのフレキシブルなオールプラスティックミラー」材料科学とプロセス、第74巻、291−293ページ(2002年)及び米国特許第6954309号公報(B2)における高反射性を示すものと同様であるが、反射防止コーティングにより実現しているインターフェイスをベースにした誘電コーティング層又は複合層構造。
【0058】
場合によっては、光入力信号と同じ方向又は実質的に同じ方向に、無線周波数信号を半導体構造に結合することが望ましいかもしれない。そのような実施形態においては、第1の光インターフェイスが、受信部114として機能するべく適合されてもよい。受信部として、例えば第1光インターフェイスに形成された、半導体構造上の適切なコーティング又は構造が用いられてもよい。
【0059】
RF信号と光信号とを同じ方向に入力する利点は、RFと光信号が、図2Bに示した半導体ナノ構造を含む構造を伝搬する間に相互作用を及ぼす長さを大きくすることができることである。この場合、受信部114は最適化された導波路又はその一部となり得る。導波路は、光信号及びRF信号の強度の十分な部分が半導体ナノ構造領域に閉じ込められるようにして、両信号が半導体ナノ構造に沿って誘導されることを確実にする。RF信号及び光信号が同一の又は十分に近い群速度で、より長い距離を伝搬されればされるほど、相互作用の効率の向上が達成される。デュアル導波構造が用いられてもよく、例えば、そこでは光信号及びRF信号は、互いに重なり合い、それぞれがRF信号又は光信号の伝搬に最適化された個別の導波路によって同じ方向に誘導される。そのようなデュアル導波路構造は図2Cに示される。ここでは、115a及び115bはRF信号202及び光信号201を伝搬する導波路の境界である。
【0060】
図2Aは構造110に入る光入力信号201、及び、光入力信号が当該構造を伝搬した結果である光出力信号(203)を示す。202a又は202bのような無線周波数信号は受信部114によって受信され、それぞれ信号210a及び210bとして示されるように、半導体構造に結合される。それは、既に述べたように、ナノ構造領域に到達し、ナノ構造領域の少なくとも一部において光の吸収に変化を及ぼす。光入力信号201(本例においては誘導された信号205としても示されている)は、入力インターフェイス121から出力インターフェイス122へと伝搬し、RF信号210a及び210bの電界の影響がある中で当該構造への吸収の変化がもたらされる。
【0061】
図2Bはナノ構造領域で信号210cとなる光入力信号201と同じ方向に、半導体構造へ入力されるRF信号202cを示す。
【0062】
半導体ナノ構造部に印加された入射ワイヤレスRF信号の電界は、半導体ナノ構造において局部的な電界の集中を生じさせるために、少なくとも1つの金属製ナノスリットを含み、半導体ナノ構造の十分に近くに設けられた受信部114によって局部的に強められてもよい。この原理はセオ等の著作「スキン深度限界を超えて作用する金属製ナノスリットを用いたTHz界の強化」、ネイチャーフォトニクス、第3巻、152−165ページ(2009年)に示されている。この場合、我々のワイヤレスRF信号の電界による半導体ナノ構造の光特性を変調する方法の効率がさらに向上し、より弱い無線RF信号によって、半導体ナノ構造の光特性のより大きな変調を提供することができる。金属製ナノスリットを有する結合部114を用いた1つの可能な実施形態が、図2Dに示される。ここでは、半導体構造は図1と同じである。入射無線RF信号202は、少なくとも1つの金属製ナノスリットを有する受信部114によって局部的に強められ、ナノスリットに十分に近い位置に設けられた半導体ナノ構造112a及び112bは、より強いRF信号202dにされる。
【0063】
図3Aは、電界が存在しない場合、すなわちF=0の場合のx軸に沿った半導体ナノ構造の伝導帯のポテンシャルEc(x)、半導体ナノ構造の価電子帯のポテンシャルEν(x)を示す。これらのポテンシャルEc(x)及びEν(x)によって、x軸に沿って、それぞれ電子及び正孔の量子閉じ込めがなされる。図3Bは非ゼロ電界、F≠0における対応するポテンシャルEc(x)及びEν(x)を示す。図3aの条件下において、波動関数Ψe及び固有エネルギーEeの量子ドット伝導帯状態があり、波動関数Ψh及び固有エネルギーEhの量子ドット価電子帯状態がある。前者は(Ee,Ψe)として示され、後者は(Eh,Ψh)として示される。対応する遷移エネルギーはEe−Ehである。このエネルギーを有するフォトンは量子ドット価電子帯状態(Eh,Ψh)から量子ドット伝導帯状態(Ee,Ψe)へと電子を励起することができて、波動関数Ψe及びΨhの重なり積分の2乗に比例する確率で吸収される。
【0064】
図3Bは非ゼロ電界、F≠0の状態を示す。x軸に沿った伝導帯エネルギーはE’c(x)であり、x軸に沿った価電子帯エネルギーはE’ν(x)である。量子ドット伝導帯状態は波動関数Ψ’e及び固有エネルギーE’eを有し、量子ドット価電子帯状態は波動関数Ψ’h及び固有エネルギーE’hを有する。対応する遷移エネルギーはE’e−E’hである。このエネルギーを有するフォトンは量子ドット価電子帯状態(E’h,Ψ’h)から量子ドット伝導帯状態(E’e,Ψ’e)へと電子を励起することができ、波動関数Ψ’e及びΨ’hの重なり積分の2乗に比例する確率で吸収される。
【0065】
図3A及び図3Bは概略図であり、量子ドットは1次元ポテンシャル井戸として描かれている。以前述べたように、量子ドットは材料の一部が、量子ドットのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーを有する材料で完全に囲まれているという特徴を有しており、ポテンシャル井戸は3次元である。必要な特徴は、ナノ構造の少なくとも1つの量子閉じ込め次元を越えて印加された電界が変化による(電子及び正孔の波動関数間のオーバーラップの変化によって生じる)電子−正孔遷移エネルギーのシフト及び/又は光遷移確率のシフトである。
【0066】
以下では、円盤状の量子ドットについて量子閉じ込めシュタルク効果が示される。量子ドット材料は、バンドギャップエネルギーが0.74eVのIn0.54Ga0.46Asであり、障壁材料は、バンドギャップエネルギーが1.42eVのGaAsである。量子ドットは円筒形であり、半径7.5nm及び高さ5nmを有する。量子ドット内の電子及び正孔の実効質量は、それぞれ0.045m0から0.38m0だと推定され、ここでm0は電子の残りの質量である。障壁材料の実効質量は、電子に対しては0.067m0であり、正孔に対しては0.51m0であると推定される。量子ドット材料及び障壁材料の間の、伝導帯オフセットと価電子帯オフセットとの間の比は、60:40であると推定される。
【0067】
図4は、そのような量子ドットの概略図を示す。円筒は量子ドット材料を示し、その外周は障壁材料を示す。印加された電界は量子ドット平面上、すなわち方向dに垂直に存在すると推定される。以下では、直交するx座標及びy座標にこの平面を割り当てる。図4において電界Fと示されるように、電界はx軸に沿って印加される。
【0068】
電界がない場合と電界が存在する場合とにおける量子ドット内の電子及び正孔の基底状態の波動関数及び固有エネルギーは、シュレーディンガー方程式を解くことで求められる。シュレーディンガー方程式を解く方法はシュン・リエン・シュアンの「オプトエレクトロニクス・デバイスの物理」ジョン・ウィリー&サン株式会社、94−95ページ(1995年)に記載されている。電子及び正孔の波動関数が障壁にまで貫通することが、以下の近似によって考慮に入れられている。電子と正孔とで異なる量子ドットの実効半径が導入され、無限のポテンシャル障壁を持っているが、より大きな実効寸法を有する量子ドットに対してシュレーディンガー方程式が解かれる。このように計算するアプローチのために特別な選択をすることは、本発明の範囲において必須ではない。計算は単に基礎になっている原理をわかりやすく説明するために用いられたに過ぎない。
【0069】
図5は、z座標方向に電界が存在しない場合の、z座標に沿った電子及び正孔の基底状態の波動関数の大きさ(単位は任意)を示す。現状の近似と配置のもとでは、これらの大きさはx−y座標平面、すなわちz方向に垂直な平面における電界とは独立しており、量子ドットのバンドオフセット、電子及び正孔に対する実効質量、及び高さdによってのみ定められる。
【0070】
図6A及び図6Bは、x軸方向に電界が印加されていない場合において算出されたx−y平面における電子及びホールの波動関数の大きさ(単位は任意)を表す。図7A及び図7Bは、図4に示されるようにx軸に沿って100kV/cmの強度の電界(バイアス電界Fbias)が存在する場合において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさ(単位は任意)を表す。電界が印加されると、電子及び正孔の波動関数の変位が観測される(電界がゼロの場合の図6A及び図6Bと比較のこと)。
【0071】
電子及び正孔の波動関数の重なり積分は
である。これは電界が印加されると、電子及び正孔の波動関数の変位によって減少する。ゼロ電界及び非ゼロ電界における波動関数は、それぞれ2つの場合について重なり積分を計算するために上記の等式に挿入される。
【0072】
吸収及び再結合速度が強く依存する光遷移強度は、重なり積分Mの2乗M2に比例する。図8は、上記の量子ドットに印加された電界にM及びM2が依存することを示している。電界は、上記の構成において印加される。明らかにわかるように、M及びM2は印加電界の増加に伴って減少する。
【0073】
図9は、重なり積分の2乗M2を電界について微分したd(M2)/dFbiasを示す。この微分はM2に比例する光遷移強度の変化を表し、印加電界の関数として印加電界の変化によって導出される。図9に見られるように、微分d(M2)/dFbiasは印加電界の値が24kV/cmである場合に最小値を有する。量子ドットがこのレベル(「プレバイアスされた」レベル)にあるならば、(プレバイアスされた電界とともに偏向された)電界を持つさらなる小さな外部RF信号を付加することにより、光遷移強度の可能な範囲で最強の変調がなされる。そのようなプレバイアスは、エネルギーEe−Eh及びE’e−E’hに対応する周波数付近の周波数を有する光信号に対してRF信号が引き起こす変調を最適化することを手助けする。プレバイアスは、静的であってもよく時間によって変化してもよい。
【0074】
もう1つQCSEを明白に示すのは、電界が印加されることによる変化(通常は減少)である。電界がない場合における光遷移エネルギーに対する印加電界に伴う光遷移エネルギーのこのシフトは、シュタルクシフトと称される。図10Aは、シュタルクシフトの印加電界への依存性を示す。図10Bは、印加された電界の関数として、印加された電界についてのシュタルクシフトの微分を示す。これらの計算は上記の量子ドットシステムに対して行われた。シュタルクシフトは印加電界に対して単調増加する。印加電界におけるシュタルクシフトの微分もまた、印加電界の関数として単調増加する。これは、量子ドットシステムが、既に、RF信号と同じに偏向されている強電界でプレバイアスされているならば、量子ドットシステムのシュタルクシフトのより強い変化が得られる(少なくとも弱いRF信号に対して)ことを意味している。
【0075】
図11は量子ドットシステムへのQCSEの影響を示す。簡単にするために、この例において存在する唯一の2つの状態である価電子帯グランド状態及び伝導帯グランド状態の間での遷移という1つの電子遷移のみが存在すると仮定されている。量子ドットシステムにおいて実際に常に存在する、量子ドットシステムの内の均質及び不均質な広がりによって、半導体構造の光吸収スペクトラムが広がる。これは、RF信号及び/又は光入力信号がスペクトラム的に広いときの変調にとって有利な点である。光吸収スペクトラムの広がりは、例えば近くに存在する電子的遷移、温度、光励起強度、ナノ構造領域内の量子ドットの大きさのばらつき等が原因となり得る。
【0076】
一般に、量子ドットシステムにおける光遷移強度を変調するRF信号210a、210b、210cは、図2A及び図2Bにおいて(202a、202b、202cとして)示される、自由空間を伝搬してきて入射するRF変調信号として印加されうる。発明の主な応用例は、半導体ナノ構造と受信部114とを有する構造に自由空間から入射されるRFワイヤレス信号の直接的な符号化である。しかし、RF信号は、並列な板状の導波路、ストリップライン、ファイバー等のような何らかの種類のRF導波路から印加された、時間によって変化する電界として上記の構造に供給されてもよい。これらのいずれかで誘導されるRF信号は、RF信号の電磁波が内部反射又は同様のメカニズムによって導波路で誘導されるだけなので、本発明の意味においてはワイヤレスであると考えられる。先行技術文献において用いられているような電気信号は、電荷の移動によって伝搬し、導電材料内での伝搬に制限されている。したがって、これらはワイヤレスではなく、ハードワイヤード信号と称される。他方、電磁気信号は電荷の移動によって放出されるが、ワイヤーに閉じ込められることなく、どのような誘電性媒体内であっても伝搬する。つまり、無線RF信号は変動している電界又は変動している磁界を含む電磁気信号でなければならない。電磁気信号は、電圧又は電気的に伝導性がある材料を伝搬する電流信号が内在している(RC定数のような)制限の影響を受けない。しかし、電気的に伝導性がある材料は、より良い電力伝送を実現するために、電磁波の誘導に用いられてもよい。
【0077】
光半導体構造のような構造にワイヤレス信号を印加する方法と有線(ハードワイヤード)信号を印加する方法との間には基本的な違いもある。欧州特許1416316号公報及び英国特許2836965号公報等に示されているように、有線(ハードワイヤード)信号の印加は半導体構造を挟む2つの電極を必要とし、設計と半導体構造の材料選択における制約があることを示唆する。
【0078】
無線信号の印加は、受信部114によって半導体構造110に信号が、なるべく低損失で入射されることを必要とする。既に受信部114のいくつかの実施形態を記載しており、それらの中には、半導体構造110におけるワイヤレスRFを受信する側に設けられた金属製の反射防止コーティングを含む。
【0079】
さらなる実施形態においては、半導体ナノ構造領域における受信部114の反対側に位置する導電性材料からなる反射体を含むことが好ましい。そのような反射体は、ナノ構造領域を既に横断したRF放射をナノ構造領域に向けて反射することができる。表面と反射体との間の距離は非常に小さくすることができるので、RF信号と(表面と反射体との間に配置される)QDとの間の相互作用は、相互作用間の十分な時間遅延につながることはなく、効果的に「一点相互作用」に類似している。そのような反射体は、RF信号がナノ構造領域に入力結合する効果の増大をもたらす。
【0080】
したがって、受信部114に含まれるどの金属層も、好ましくは低損失で無線変調RF信号を受信して半導体構造110に入力する機能を果たすだけであることが好ましい。同様に、受信部114の反対側の金属反射体は、RF放射をナノ構造領域に反射する機能を果たすだけであることが好ましい。したがって、そのようなどの導電性層も、有線変調信号を供給するための電気回路に有線(ハードワイヤ)で接続されていないことが好ましい。当業者であれば、制御できない電気的なバイアスを回避するために、そのような導電性層をグランドに接続するか、代わりに、他の箇所で記述した直流バイアス電界の印加に用いる2個又はそれ以上の電極の1つとして用いられるかが必要であるということを知っているであろう。しかしながら、そのようなグランド又はバイアス接続は、変調信号を供給するための電気回路への接続を表しているわけではない。量子ドットシステムは、上述のようにプレバイアスされてもよい。プレバイアス電界は、他の入射RF信号又はそれ以外に(例えば、電極、RF導波路などを通じて)供給される電界のようなRF変調信号とちょうど同じように、静的に又は時間変化をさせて供給されることができる。これらのアプローチの組み合わせは、より複雑なプレバイアス電界が引き起こされる非線形ミキシングに用いることができる。
【0081】
プレバイアス電界もRF変調信号も、半導体ナノ構造領域において、吸収条件を変化させるので、RF変調信号の非線形ミキシング及びプレバイアス電界(静的又は時間変化するもの両方)が得られ、それに伴う光入力信号の変調を可能にする。
【0082】
量子閉じ込めシステムに電界を印加する他の効果は、電気屈折効果であり、電界が印加されたときに発生する局部的な屈折率の変化である。この効果は、QCSEのようにほとんど瞬間的であり、印加された電界に非常に短時間(多分、数フェムト秒)で追随する。これは、半導体構造110を伝搬する光入力信号の位相シフトに寄与する。このようにして、伝送される光信号は、外部から印加された電界(RF変調信号又はプレバイアス電界)によって位相変調もされ、光入力信号のさらなる変調に寄与する。
【0083】
図12は信号変換器の一例を示し、より具体的には、上述の原理を用いるRF−光符号器1201の一例を示す。この符号器は、ほぼ光信号のバックグラウンドフリー変調を可能にする。この場合、(不完全な変調の場合には)入力信号の変調されていない部分がデバイスを通って伝搬することを許さない。入力ポート1211から入った光入力信号1231は、2つの部分に分割される。第1の部分は、本発明の第1の態様に係る半導体変調器1202を有する第1アーム1212を通って伝送される。第2の部分は、光移相器1206及び光減衰器/増幅器1204を有する第2アーム1213を通して伝送される。
【0084】
この並びにおける位相器と変調器との相対的位置(つまり、どのデバイスが最初に位置し、どのデバイスが2番目に位置するか)は任意の設計事項であり、最適化の目的の一例に過ぎない。第1アーム及び第2アーム(1212、1213)は、デバイスの出力ポート1214(第1アーム及び第2アームの結合点)で一緒に結合されて、出力信号1232を生成する。
【0085】
RF−光符号器1201はワイヤレスRF変調信号が第1アームにおいて半導体変調器1202へ印加する前に最初に調整されるべきである。移相器1206は光信号の第1の部分と第2の部分との間の位相差が結合ポイント1214において180度(又は現実に可能な限りこれに近い角度)だけ異なるようにするために、光信号の第2の部分の調整可能な位相変化を提供できる。光減衰器/増幅器は、(ほぼ完璧に近い)相殺的干渉によって結合ポイント1214での(ほぼ完璧に近い)信号消滅を得ることを可能にするために、2つのアーム1212、1213の出力における光信号の強度をできるだけ近くに持ってくることに用いられる。この場合、第1アームでのワイヤレスRF変調信号の半導体変調器1202への印加の前に、符号器1201を通じた光キャリアの全伝送がゼロ(若しくは限りなくゼロに近い状態)になる。光アイソレータ(図示していない)は、反射光1233が入力ポートを通じて反対の方向へ脱出するのを防ぐことができる。
【0086】
さて、上記の説明にしたがって、RF変調信号1222が第1アームの半導体変調器に印加されるとき、第1アームを通じた伝送は、前述したように得られる変調によって変化する。これは、第1光信号と第2光信号(第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)を通過する信号)の間の強度差の一因となる。第1アームの光信号と第2アームの光信号の間の光位相差は、依然として180度(又はもっと近い)であるが、半導体変調器による吸収のために、第1アームと第2アームの出力において信号間の不完全な相殺的干渉が起こるだろう。このようにして、入力された光信号の強度の一部は、たとえ相殺的干渉が一番高まった時であってもそのデバイスを通じて伝送される。伝送のレベルは、印加されたRF変調信号に起因する半導体変調器における光信号の変調強度と関連がある。だから、ワイヤレスRF変調信号は第1アームでの半導体変調器1202へ印加されるのみであり、第2アーム内の光移相器1206や減退器/増幅器1204にはRF変調信号が印加されない。
【0087】
光入力信号の吸収における変化は、本来屈折率の変化に関連しているため、本発明は修正されうる。この場合、半導体ナノ構造領域は光入力信号の位相を変化させ、光入力信号の強度をそれほど変化させない。RF変調信号はナノ構造領域部のバンドギャップの下方ですら、屈折率の変化をもたらす。それゆえ、この場合、第1周波数が第1価電子帯状態と第1伝導帯状態の間のエネルギー差より低く、また第2価電子帯状態と第2伝導帯状態の間のエネルギー差よりも低くなりうる。このことは、光入力信号の変調が主に位相の変調であって、圧倒的に強度の変調ではないということを意味している。たとえ電子屈折効果が支配的であったとしても、同様のアレンジメントが用いられうる。この場合、変調するRF信号が存在しない場合には、出力ポート1232を通じた伝送は、減衰器/増幅器1204を用いて第1アーム1212及び第2アーム1213を通じて伝送された伝送強度の適切な等化によってゼロ又は限りなくゼロに近い状態へもたらされなければならない。そして、第1アーム1212及び第2アーム1213における信号の位相は、移相器1206による適切な調整によって、位相差が180度(又は限りなくそれに近い状態)にもたらされなければならない。この場合に、第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)を通じて伝搬する信号には、完璧な(又は限りなくそれに近い)相殺的干渉が生じる。そして、出力ポート1232を通じたすべての伝送が限りなくゼロに近い状態になる。そして、変調RF信号が変調器1212へ印加される場合、電子屈折効果によって第1アーム1212を通じた光信号の位相が、RF変調信号によって供給された電界強度に応じて変位する。この場合、第1アーム1212及び第2アーム1213を通じた光信号の相殺的干渉は不完全となり、光強度が出力ポート1232を通じて伝搬することを可能にする。この光信号は、RF信号によって時間変調され、そして再びゼロ又はゼロに近いバックグラウンドを持つ。
【0088】
一般に、QCSEと電子屈折効果の組み合わせは、デバイス全体及び/又はその構成要素の最適化を用いて、出力ポート1232での伝送された光信号における望ましいRF変調強度を得るために用いられうる。
【0089】
減衰器/増幅器1204は半導体変調器と同じ材料で作られてもよい。第2アームにおける第1光信号の減衰(又は増幅)は印加された電界によって調整されてもよい。これは、公知であり、半導体電子吸収変調器又は半導体光増幅器はこの目的に適っている。移相器1206としては、ニオブ酸リチウム移相器、又は他の適当な移相器が用いられてもよい。当業者は、他の減衰器(増幅器)及び移相器が適していることを容易に理解するであろう。
【0090】
導波路、移相器、そして減衰器は同じ基板の上に実現されてもよく(図12にて、概略的に示されている)、又は他の方法で光学的に統合されてもよい。あるいは、パーツが分割され、個々のコンポーネンツは、それらの間の必要な光結合を供給する中間の導波路に組み込むことができる。当業者は、このような様々な方法を心得ているであろう。
【0091】
図12は、概略図のみである。干渉器アーム、半導体変調器、位相器、減衰器等は、個々に及び相互の関係を測るためのものではない。
【0092】
図13A〜図13Cは、上述したように変調器の最適化を可能にする、図12の信号変調器1202の半導体ナノ構造領域にプレバイアスをかける可能性について概略的に示している。プレバイアスをかけることに用いられる電極は、ワイヤレス変調RF信号を受信する受信部114とは関連しないことを理解することは重要だ。プレバイアスに用いられる電極は、ハードワイヤでDCバイアス信号を受信するように適合され、RF信号を受信するのではない。
【0093】
図13Aにおいては、プレバイアス電界の、図12からの変調器1202の半導体ナノ構造領域への印加のため、2つの電極1312及び1314が示されている。光信号は、図2A及び2Bで示された半導体ナノ構造領域を通じて伝搬され、インターフェイス121に入り、インターフェイス122において出て行く。この場合、電界は変調器の半導体ナノ構造領域の全ての長さに沿って印加される。
【0094】
図13Bでは、変調器の半導体ナノ構造領域へのプレバイアス電界の印加のための一連の電極1322及び1324が示されている。この場合、プレバイアス電界は、バイアス電圧(又は異なるバイアス電圧)をいくつかの、又は全ての電極1322及び1324に印加することで、変調器の異なる部分へ局部的に印加することが可能となる。
【0095】
図13Cでは、電極1332の円形パターンが、変調器の半導体ナノ構造領域の周りに配置されている。円形パターンは、電極1332の中から適した一組の電極を選択することで、RF変調電界の方向についてプレバイアス電界偏向の最適な方向をもたらす。したがって、プレバイアス電界の偏向をRF変調電界の偏向に一致させることができるだろう。
【0096】
図14〜18は本発明の数値計算について示している。図14は(0.33Tbit/秒の伝送速度で送られたデータに対応した)単一のRFパルス及びパルス列を表すRF信号を示している。最大の電界強度は、10V/cmである。
【0097】
図15は、図12で示されたデバイスを用いて、それぞれ1300nmの中心波長(およそ233THzの光周波数に対応)の光キャリアに図14の上部と下部に描かれたシングルRFパルス及RFパルス列を符号化したことで得られる出力信号を示している。バックグラウンドフリー信号はこのデバイスによって生み出される。量子ドットパラメータは、上述したものと同一である。RF電界は、24kV/cmのプレバイアスDC電界(詳細については図2Bとその説明を参照)と同じに偏向している。
【0098】
図16の下部は、図15で示された計算に用いられた光キャリアの一部を示す。図16の上部は、図15の上部(単一パルス)の符号化された光信号の対応する一部を示す。
【0099】
図17は、図16の下部で示された光キャリアと、図15で示された光出力信号のパワースペクトル(単位は任意)を示す。
【0100】
図18の実線は、図14で示された単一RFパルスに対応した振幅スペクトルを示す。そして、図18の破線は、図14で示されたパルス列に対応した振幅スペクトルを示す。これらのRF振幅スペクトルのスペクトル特性は、明らかに図17でのバックグラウンドフリーの光出力信号のパワースペクトルに反映されている。
以下では、原理証明実験の説明と結果について述べる。
【0101】
この実験では、RF放射(RF信号)の単一サイクルに近いパルスが、光−RF変換段階においてパルス状レーザーによって供給される、中心波長800nmの80−fs長のレーザーパルスの変換によって、0.1−3THzの範囲をカバーする周波数スペクトルで生成された。RF信号の持続期間は3psより短かった。パルス状レーザーは1kHzの繰り返し率で動作した。レーザー出力の一部は、光学的パラメトリック増幅器を使用して概ね1040nmの中心波長(光信号)に周波数変換された。光信号の持続期間は、100fsより短かった。RF信号は、半導体構造110を示すサンプルの上へ垂直入射で入射された。光信号は、小さい角度でサンプルへと入射され、サンプルに入射されて反射された光信号のパワーは、RFと光信号との間の遅延時間の関数として測定された。RFと光信号との間の制御された遅延時間は、可変光ディレイラインを用いて導入された。サンプルの上に入射して反射した光信号のパワーの絶対値は、2つの光検出器、すなわち、サンプルへ向かう途中の光信号伝送損失を考慮に入れた、基準光検出器とサンプル光検出器とを用いて測定された。実験の装置の概略が図19で示される。実験は室温で行われ、RF信号はその環境を通じて伝搬した。例えば、サンプルは入射ワイヤレス周波数信号によって供給された電界以外のほかの電界以外は受けないといったように、プレバイアスはサンプルに印加されていなかった。また、例えば、受信部がサンプルの表面そのものであるといった、入射RF信号にとって特別な受信部は用いられなかった。
【0102】
この実験でのサンプルは、図20に示されたQD(量子ドット)構造であった。サンプルのすべての半導体部分はドープされていない。InAs/GaAs量子ドットのいくつかの層から構成されるサンプルは、誘電体反射鏡の上部に位置させた。誘電体反射鏡は、バルクGaAsウェハの上部に成長させた。そして、そのウェハは、RF信号の反射材として役割を果たす研磨金属のバルク片に取り付けられた。誘電体反射鏡は、そのように成長し、ほぼ100%の効率で、概ね1040nmの中心波長で光信号を反射する。翻って、量子ドットは、光信号がサンプル表面から誘導体反射鏡に向かって、及びその逆で誘導体反射鏡からサンプルの表面に向かって伝搬する間に、光信号の一部を吸収する。サンプルの表面は光信号が反射しないようコーティングされており、そのためサンプル表面では反射損失がなかった。サンプル表面と誘導体反射鏡の間の構造の部分、例えば量子ドットを含む部分の厚みは光信号の波長と同程度であった。したがって、誘導体反射鏡に向けて、及び、誘導体反射鏡からの往復における量子ドットでの光信号の相互作用は、1点での相互作用として考えられうる。つまり、サンプルにおける光信号の伝搬時間は無視できるほど小さい。
【0103】
自由空間からサンプルに入射するRF信号は、サンプルの表面で反射損失を生じて、量子ドット領域を通じて伝搬し、誘導体反射鏡を通じて伝搬し(RF周波数とは共鳴しない)、厚いGaAsウェハを通じて伝搬し、最終的にはサンプルの終端で金属反射器に反射し、そしてそこに及んだ後に、再び量子ドット領域を通じて伝搬し、そしてサンプル表面でサンプルへ部分的に反射して戻る。サンプル表面の反射係数が1よりも少ないので、この反射が起きると、その構造に再び入るRF信号の電界は、小さくなる。RF信号はまた、その構造を通じて伝搬するときに分散したり、散乱したり、減衰したりしうる。同様に、デバイスの表面が光パルスの波長のために反射コーティングされていないので、光パルスがデバイスへ入り、QD領域を通過して、誘導体反射鏡に反射し(RF信号に影響はしない)、QD領域を通過して、そしてデバイスを離れる。QD領域と誘導体反射鏡の間の距離は、光信号波長と同程度であり、その結果、構造を出入りする道中のQDでの光パルス相互作用(1点の相互作用)に対しては無視できるほど小さな遅延時間しか生じない。図21は、光信号の周波数における、QDでの吸収の変化に結びつくRF信号とQDとの間の相互作用のタイミングを示している。
【0104】
図22においては、QDサンプルの小信号反射スペクトル及び光信号の強度スペクトルが示されている。1040nmの波長付近における反射でのくぼみは、QDにおける光吸収によるものである。我々の実験において、1040nmの波長付近でのQDサンプルの反射性は、QDがRF信号の電界の影響下にあるときに増加することを示す。言い換えると、QD吸収は、RF信号での電界とQDの相互作用の結果として減少する。
【0105】
我々の原理証明実験の第1の結果は、図23に示されている。持続期間が概ね2.8psの単一サイクルに近いRFパルスの電界の一時的な依存状態が図23(a)に示されている。1040nmの波長付近の光信号に生じる、QDの最大吸収波長付近におけるQDデバイスの反射性の変調ΔRが、時間の関数として図23(b)に示されている。ここで強調したいのは、RF信号が存在する状態における光反射性の変化は正であるということだ。つまり、QDでの光吸収は、電界が印加されない時の状況と比べて減少している。図23(a)からのRF信号の電界の絶対値もまたこのグラフに示されている。QDサンプルの光反射の時間的な動特性は、明確に入射RF信号の電界の絶対値の主な特性を再生しており、反射変調信号は入射RF信号とほぼ同じ持続期間を持つ。上記で、我々は初期の電気的プレバイアスがない場合(つまり入射RF信号の電界を除くほかの電界がQDに印加されない場合)のQDサンプルにおける光吸収の変調は、光吸収の減少をもたらし、そしてその光吸収はRF信号における電界強度の極性によってではなく、その絶対値にのみ依存することの概要を説明した。そのため、RF信号の電界の一時的な依存状態における図23(a)と異なる極性の特性は、図23(b)で示される、サンプルの反射性における正の変化(つまりQD光吸収の減少)をもたらす。我々はここで、高周波RF無線信号の光信号への符号化の瞬間的な特性を、QDサンプルの光学的特性における対応する変調を導き出すことで示した。効果は、予見されたように、RF信号の電界とコヒーレントであり、RF信号の時間的なダイナミックスにおけるサブpsという長さの特徴は、QDにおける光信号吸収の変調に関連した信号によって再生されうる。この実験において、我々が示したRF−光符号化効果は、RF信号及び光信号の電界の相互の方向とは実質的には無関係であり、サンプルの結晶軸に関連した光信号の偏向の相互の方向において、QDの光吸収の小さな異方性を反映して、とても弱い依存性を持つことを確認した。
【0106】
図24においては、図23で表示したものと同じ測定を示しているが、より長いタイムスケールが採用されており、サンプルのQD領域は、図20と図21で示されるような構造でのRF信号の多重反射の結果として、QDデバイスの中で概ね11.3psの時間の間隔のRFパルスの多重反射を受けている。我々は、図21の略図のような相互作用タイミングに従った、RF信号がデバイスのQD領域を通過するたびに生じるQDサンプルの光反射における明らかな変調に気づく。11.3psの時間間隔が置かれた、個々の反射性変調パルスは、RF信号がその構造の中で受けた分散、散乱、減衰の結果として、わずかに形が変わるという特徴を有する。しかしながら、反射性変調信号のおおよその持続期間は常に2.8psのオーダーである。図24で示された結果は、それぞれのデータビットが単一のRF信号パルスで表される(シーケンスにRFパルスが存在する時は「1」、シーケンスにRFパルスが存在しない時は「0」)シリアルデジタルデータストリームの符号化は、「1111」のシーケンスが伝送されたと仮定すると、11.3psのデータパルスの間の時間間隔に対応して、少なくとも89Gbit/秒のビットレートで可能であるという証拠をもたらす。11.3psのパルス間隔の、2.8psの個々の反射性変調パルスのおおよその持続時間に対する比率は、11.3÷2.8=4.03となり、このことは、RFデータシーケンスにおけるデータビットを表す光反射性信号間のクロストークがない状態において、実証したビットレートの89Gbit/秒の4倍の速さ、つまり356Gbit/秒=0.356Tbit/秒でのデータの光信号への符号化の可能性を示唆する。
【0107】
最後に、図25において、我々は図23(a)からの個別のRF電界信号、図23(b)からの単一RF信号によるQDサンプルの光反射性の変調、及び、同じ変調だが図24からのRF信号シーケンスによって引き起こされた光反射性の変調の周波数スペクトル(時間領域信号のフーリエ変換の結果)を示す。我々の実験で用いられた個々のRFパルスの周波数スペクトルは、上で述べた符号化方法を使用した情報の光信号への符号化に対して、概ね3THzのバンド幅が用いられうることを示唆している。一連のRFパルスによって生成された反射性変調スペクトルにおいて、この実験で示された89Gbit/秒のビットレートの可能性に対応する概ね90GHzの間隔で、複数の頂点が明確に確認できる。単一RFパルス及びRFパルスのシーケンスによって引き起こされた反射性変調の周波数スペクトルは、図18で示された振幅スペクトルのRF信号によって生み出された、図17で示された光信号の周波数スペクトルにおけるモデル化されたサイドバンドに相当する。
【0108】
本発明の好ましい実施形態による変調器又はRF−光符号化デバイスは、THzレンジまでの範囲の高周波放射のための超高速コヒーレント検出器として用いられうる。このデバイスは室温で動作し、そのデバイスを伝送する又は反射した(又はデバイスをプローブする)入射THz信号の光信号への瞬間的な符号化を可能にする。そして、この光信号は、従来通りに分析され又は扱われ、検出されたTHz信号の情報/特性を運ぶ。
【0109】
自由空間電気光学サンプリング(FEOS)や光伝導性サンプリング(PCS)といった他のコヒーレント検出方法と比べて、光学的信号及びTHz信号の偏向の相互の方向、及び、半導体の結晶軸とは実質的には無関係であるという利点をもたらす。それゆえに、本発明に係るデバイスは、実質的に偏向に関係がない。
【0110】
本発明は、多くの異なるアプリケーションのために有利に適用されうる。そしてそれぞれのアプリケーションにおいて適用できる的確な設定は、当業者の能力の範囲内である。想定されるいくつかのアプリケーションを以下に示す。
(1)Tbit/秒及びサブTbit/秒の自由空間RFシリアル通信
サブTbit/秒又は数Tbit/秒のビットレートのデジタルデータストリームは、一連のRF信号として伝送され、そしてシーケンスにおけるそれぞれの信号は単一のデータビットを示す。本発明は、ワイヤレス信号によるデジタルデータシリアルストリームキャリアを光信号へ検出/コヒーレント符号化することを可能にする。そしてそれは、公知の方法で扱われ、そのためデータはこの光信号から読み出される。
(2)高周波数光通信
一般に、THzの範囲までの高周波ワイヤレスRF信号は直接光信号へ符号化されてよく、それらはファイバーでの有線ネットワークにおいて伝送される。通信プロトコルはアナログであってもデジタルであってもよい。このように、中間での信号変換が必要ない。
(3)THz分光法及び検出
THz分光情報は、THzスペクトルに簡単に変換して分析できる「サイドバンド」の形の光「プローブ」信号に符号化される。
(4)軍事的利用
秘密通信やTHzソースの検出等。
(5)THz放射の汎用室温検出器
本発明に基づいて、汎用THz検出器は簡単に製造されうる。そして、内部構成のクリティカルな配置を必要としない。
(6)THz信号移相検出器
プレバイアスの印加によって、入力されるTHz信号の絶対値だけではなく、位相をも検出することができる(が、そのときは偏向依存となる)。ここで、デバイスは、入力されるTHz信号の偏向を測定することにも用いられうる。図13Cに関して記述された実施形態の説明を参照のこと。
(7)THzソースへの光ソースの同期
提案された方法は、例えばモードロックされたレーザー(固体レーザー、ガスレーザー、ファイバーレーザー等)の半導体可飽和吸収体における、例えば自由電子レーザー(FEL)やシンクロトロン(マスターソース)といったTHzソースからのTHz入力による損失の瞬間的な変調に用いられてもよい。
【0111】
このように、効果はモードロックされたレーザーの「モード引抜き」によるモードロックレーザーのFEL又はシンクトロンへの同期(スレーブ化)に用いられる。それゆえ、FEL又はシンクトロンからのTHzパルスは、THzマスターソースの与えられた繰り返し率によって、時間同期される。そして、スレーブのモードロックレーザーは十分に同一に近くなる。このような時間同期は、FELとシンクロトロンの多くの科学的な実験にとって重要である。
【0112】
望ましい実施形態において、本発明は、これらのアプリケーションの一つ以上に適合された信号変調器を提供すると同様に、これらのアプリケーションの一つ以上の目的の発明に係る信号変調器の使用を提供する。
【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0114】
110・・・半導体構造、112・・・半導体ナノ構造部、114・・・無線周波数受信部、120・・・導波路構造、121・・・第1光入力インターフェイス、122・・・第2光入力インターフェイス、201・・・光信号、202・・・RF信号、203・・・光出力信号、205・・・光信号、210・・・RF信号、1201・・・光符号器、1202・・・変調器、1204・・・増幅器、1206・・・光移相器、1211・・・入力ポート、1212・・・第1アーム、1213・・・第2アーム、1214・・・結合ポイント、1222・・・RF変調信号、1231・・・光入力信号、1232・・・出力ポート、1233・・・反射光、1312・・・電極、1322・・・電極、1332・・・電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスRF信号と実質的に同一量の情報を運ぶ光信号を供給するために、GHz(GHz)やTHz(THz)周波数信号といった、ワイヤレス無線周波数(RF)信号を使用することに関連する。RF信号によって運ばれる情報は、本発明に従った方法及びデバイスを用いることで、光信号に伝えられる。
【背景技術】
【0002】
近年の通信システム技術は、毎秒約1テラビット(Tbit/s)の伝送速度にすることを可能にしている。このようなシステムは、光信号に基づいている。複数のギガビット(Gbit/s)エミッタが合わさって、光時分割多重化(OTDM)を経由してこの速い伝送速度を生み出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1416316号明細書
【特許文献2】英国特許第2386965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つのエミッタを使用して高い伝送速度を生み出すために障害となっているのは、基本的な問題である。すなわち、例えば、半導体レーザーダイオードでの直接のTHz電流変調や、位相シフトベースのスイッチにおける電圧制御は、そのようなデバイスが本質的に有する「大きい」RC時定数に起因して、満足な効果を生むことがないということだ。ここでいう「大きい」とは、関連する充放電速度が、おそらく1THzよりは一桁小さい10GHzから40GHzに変調速度を制限するという意味である。レーザーダイオードの超高速光誘導スイッチングは可能だ。しかし、低温の電子群の復旧が遅いために、最終的にはTHz変調速度を達成することが困難である。このプロセスは、100GHz以上の変調速度を供給するには遅過ぎる。
【0005】
光時分割多重化は、それぞれでは(毎秒10ギガビットといった)「低い」反復速度のエミッタを組み合わせることで、高い光波長伝送速度を獲得することができるが、THz信号の光信号へのデジタル符号化は今のところ不可能である。
【0006】
特許文献1(欧州特許第1416316号明細書)及び特許文献2(英国特許第2386965号明細書)は、それぞれのブランチにおいて電気的に応答する光移相器又は変調器を使用することで、光信号を変調する干渉計を開示している。上記の移相器は、量子ドットを含む層を有する。変調信号は、電気配線を介して受信されるRFハードワイヤード電圧信号であり、蒸着された電極又は金属接触層によって移相器に印加される。
【0007】
移相器にハードワイヤ(有線)信号を供給する駆動回路が、移相器の変調速度を約100GHzに制限するRC定数をもたらすことは不利な点である。
【0008】
本発明の目的は、数百GHzからTHzに達する周波数のワイヤレス高周波無線(RF)信号のコヒーレント検出及び/又は光キャリア信号への瞬間的な符号化のための方法及びデバイスを供給することにある。
【0009】
また、本発明のもう一つの目的は、電気回路内のRC時定数によって得られる速度が制限されない、光信号を変調する方法及びデバイスを提供することである。さらに本発明のもう一つの目的は、ワイヤレス高周波RF信号から光信号へ(直接)符号化するための方法及びデバイスを提供することである。これによって、公知の方法で検出される光信号にワイヤレスRF信号を符号化することにより、ワイヤレスRF信号のコヒーレント検出が可能になる。
【0010】
したがって、本発明は、これらの目的に対応する先行技術の課題を解決する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様においては、第1周波数を有する光入力信号を変調する方法であって、
(a)半導体ナノ構造領域であって、前記半導体ナノ構造領域へと結合される前記光入力信号の一部を吸収できる複数の半導体ナノ構造部を有する前記半導体ナノ構造領域と、
(b)第1光インターフェイスと、
(c)変調光出力信号の形で、前記光入力信号の吸収されなかった部分が前記半導体ナノ構造領域から外に結合される第2光インターフェイスと、
(d)第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部と
を有する半導体構造における半導体ナノ構造領域に、前記第1光インターフェイスを通して前記光入力信号を結合する手段と、
前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記無線周波数受信部へと供給し、かつ、一時的に前記光入力信号とオーバーラップして前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域に結合させて、前記半導体ナノ構造領域を越えて時間依存電界を供給し、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって前記光入力信号の前記第1周波数における前記半導体ナノ構造領域における吸収を変化させる手段と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を、前記第2光インターフェイスを通して結合して前記変調光出力信号を供給する手段と
を備える方法を提供する。
【0012】
RF信号によって生じた第1周波数での吸収及び恐らく位相における変化は、RF信号から光入力信号へとデータを変調することに用いられうる。あるいは、光入力信号へこれらを転移させることで、光出力信号の検出によってRF信号の特性を検出することに用いられうる。
【0013】
本発明の第2態様においては、信号変調器又はRF−光符号化装置が提供される。信号変調器は、第1の周波数を有する光出力信号を、光入力信号と第2の周波数を有するワイヤレス無線周波数変調信号とに基づいて供給することができる。信号変調器は、前記光入力信号の一部を吸収する複数の半導体ナノ構造部を有する半導体ナノ構造領域と、前記光入力信号を前記半導体ナノ構造領域へと結合する第1光インターフェイスと、前記光入力信号の吸収されなかった部分を前記半導体ナノ構造領域から外に結合させて前記光出力信号を生成する第2光インターフェイスと、前記第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部と を有する半導体構造を備える。
【0014】
以下では、多数の望ましい、及び/又は任意の特性、要素、例示、実施、効果がまとめられる。ある実施形態又は態様に関連して記述された特性又は要素は、適用可能な他の実施形態や態様に結合されたり、適用されたりする場合がある。例えば、実施の方法に関連して適用される構造的、機能的特性はまた、デバイスに関する特性としても使用され、逆の場合も同様である。また、発明者によって理解されるような本発明の基本的なメカニズムに関する説明は、説明の目的のために存在するのであり、発明を推論するための事後的な分析に用いられるべきではない。
【0015】
例えば量子井戸、量子細線、量子ドット等といった、量子閉じ込めシステムへの量子閉じ込めの方向に沿った電界の印加は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られる効果につながる。電界Fを印加した結果、電子と正孔の電荷キャリアの閉じ込めポテンシャルは、バンド構造の傾きによって、光遷移エネルギーの確率が減少する方向へと修正される。そして、電子と正孔の間の波動関数に空間的に大きな乖離が生じた結果、光遷移の確率は減少する。光遷移の確率は、概ね光吸収係数と比例する。
【0016】
本願発明の動作原理に基づけば、量子閉じ込めの方向に沿っての半導体ナノ構造領域への電界印加は、とりわけ、光入力信号の波長におけるナノ構造の光吸収係数の減少をもたらすことになる。
【0017】
そして、仮に電界が静的にではなく、むしろ時間によって変化するように印加されるならば、それに応じた半導体ナノ構造の閉じ込めポテンシャルの変更は、時間変化する電界に瞬時に追随することになる。
【0018】
したがって、例えば時間によって変化する電界の影響を受けて閉じ込めポテンシャルが変化し、それに応じて光吸収係数が時間によって変化する。
【0019】
本発明によれば、時間変化する電界が、ワイヤレス高周波数無線信号によって半導体ナノ構造を含む構造に供給されることで、特に、入射RF信号における電界の変化に応じた割合で、半導体ナノ構造領域の光吸収係数が変化する。我々はそこで、RFワイヤレス信号によって誘導されるQCSEの瞬間的な性質を用いて、半導体ナノ構造領域を通じて伝送される、又はそこから反射する光入力信号の変調を提供する。
【0020】
この方法によって、RF信号によって伝送された情報は、光入力信号に伝えられる。RF信号の変調が光信号に伝えられることによる効果はほとんど瞬間的であり、変調はサブピコ秒のタイムスケール又はそれより長いタイムスケールで変化し、その結果として光入力信号へと伝えられる。
【0021】
他の方法においては、QCSEの効果は以下のように説明することができる。すなわち、変調RF信号が無線周波数受信部に供給されるとき、変調RF信号は第1半導体ナノ構造部を越えて時間依存性がある電界を供給する。その結果、第1価電子帯状態(Eh,Ψh)から第2価電子帯状態(E’h,Ψ’h)までの第1半導体ナノ構造部の価電子帯状態の変化、第一伝導帯状態(Ee,Ψe)から第2伝導帯状態(E’e,Ψ’e)までの第1半導体ナノ構造部の伝導帯状態の変化をもたらす。
【0022】
それによって、半導体ナノ構造部の波動関数オーバーラップが<Ψh|Ψe>から<Ψ’h|Ψ’e>へと変化する。そして、この変化は、結果として半導体ナノ構造領域における光入力信号の第1周波数における吸収の変化となる。したがって、光入力信号に生じた吸収を変化させるには、第1周波数は第1価電子帯状態から第1伝導帯状態へ、又は、第2価電子帯状態から第2伝導帯状態へと電荷キャリアを励起させるために十分な光子エネルギーに対応しなければならない。
【0023】
したがって、この方法及び変調器は入射RF信号と同じ情報を持った光信号データを提供するのに使用されうる。そして、この方法は光通信システムの中では非常に有利なものである。なぜなら、対応する光信号へ変換することでワイヤレス無線周波数信号を受信する方法を提供するからである。
【0024】
本発明は入射されたワイヤレスRF信号を、電子回路が介在することなく直接光入力信号へ変調するという効果を奏する。その結果、変調は瞬間的で、より高い変調速度を提供しうる。
【0025】
この方法及び変調器は、無線信号及び光信号の両方の偏向状態に関係なく、同様に、無線周波数信号及び光信号の互いの偏向方向、並びに半導体ナノ構造部の方向にも関係なく、無線周波信号を光信号へ符号化することを可能にする。光信号の互いの偏向方向や半導体ナノ構造部の方向に関して比較的弱い偏向依存性が、半導体ナノ構造の光吸収の異方性の結果として存在するかもしれないが、光信号の瞬間的な変調の効果が全くなくなるというわけではない。また、半導体ナノ構造の空間的な異方性に起因する、瞬間的な変調の効果の比較的弱い依存性も存在するかもしれないが、これもまた変調の効果が全くないというわけではない。変調方法が偏向に依存しないことは、光伝導検出や自由空間電気光学サンプリングといった他の方法に比べて有利な点である。そこでは、RF信号検出又は光信号へのRF信号の符号化をできないRFと光信号のお互いの偏向方向及びRF受信部の方向を見つけることが常に可能である。
【0026】
通信システムでの利用とは異なるが、RFから光へのコヒーレント符号化と同じ原理が、高周波数RF分光法や検出/イメージングシステムにおいて非常に効果的に用いられている。そこでは、分光法/検出/イメージングシステム(又はほかのRF信号ソース)からのRF信号と入力する光入力信号とで、センサーの一部を形成しうる。本発明を用いることで得られる光出力信号は、RF信号からの特性を含み、RF信号自体を分析する代わりに分析されうる。THz周波数における様々なイメージング、センシングそして分光法が、例えば以下の著作物で議論されている。B.ファーグソン/X.C.チャン著「THzサイエンスのマテリアルとテクノロジー」、ネイチャーマテリアル第1号、26-33ページ、2002年。
【0027】
本発明はRF分光出力信号のスペクトル特性に対応するスペクトル特性を持つ光出力信号を作る。そのため、適切な装置を用いた光出力信号の検出は、RF信号の中に含まれる分光情報を明らかにするために用いられる。
【0028】
半導体ナノ構造は本発明の核心部である。本発明で使われている半導体ナノ構造は、1マイクロメーターより小さな次元を少なくとも1つ持つ半導体素子である。電子と正孔はこの次元に沿って制限された動きをすることになる。それが、量子閉じ込めである。光遷移エネルギーや光遷移確率といった、量子閉じ込め電子及び正孔に関連のある光学的特性は、量子閉じ込めポテンシャル並びに電子及び正孔の質量(しばしば「有効質量」と言われる)の影響を受ける。そのような半導体ナノ構造では、量子閉じ込めのこの次元に沿って印加された外部電界によって、基本的に瞬時に、例えば光遷移エネルギーや光遷移確率といった電子及び正孔の光遷移パラメータが修正される。
【0029】
このようにして、光遷移に関連する半導体構造の光学的特性は、外部電界の印加を受けて基本的に瞬時に変化する。入射されたワイヤレス電磁RF信号の電界成分によって外部電界が供給されると、半導体部の光学的特性は入射RF信号の電界強度の関数として変調される。光入力信号が半導体構造を通じて入射RF信号と同時に伝送されると、光入力信号の伝送は入射RF信号によって変調され、入射RF信号によって伝送された情報を光入力信号へ符号化することになる。これは、GHzやTHzといった非常に高い周波数を持ったRF信号からの情報を光信号へ符号化する手段をもたらす。
【0030】
半導体ナノ構造は、「量子井戸」(1次元での量子閉じ込め)及び/又は「量子細線」(2次元での量子閉じ込め)、及び/又は「量子ドット」(三次元での量子閉じ込め)を含む。しかしながら、半導体ナノ構造は、さらに複雑な他の形状を有してもよい。本発明の基本原理は、どの種類の半導体ナノ構造に対しても同じである。
【0031】
以下では、本発明の原理を、半導体ナノ構造の一例として量子ドットに基づいて説明する。
【0032】
半導体構造は、有利なことに、半導体構造の第1導波路インターフェイスから第2導波路インターフェイスへ光入力信号を誘導するように適合された導波路構造を備え、光入力信号の少なくとも一部が導波路構造にて誘導された際に半導体ナノ構造領域とのオーバーラップを有するべく、導波路構造と半導体ナノ構造領域とは光学的に結合されている。
【0033】
有利なことに、変調無線周波数信号は、無線周波数遠隔通信又はデータ伝送プロセス、無線周波数分光プロセス、無線周波数検出プロセス、無線周波数イメージングプロセスといった、光入力信号へ符号化されるべき情報を含む信号である。他の応用例も想定することができる。RF信号へ変調され、そこで光信号へと伝送されるデータは、アナログ及び/又はデジタルのいずれであってもよい。
【0034】
ワイヤレスRF信号の周波数、つまり、第2周波数は、5GHzから20THzの範囲といったように、5GHzから50THzの間の範囲にあるのが好ましい。この範囲の最も高域の周波数は、電気有線(ハードワイヤード)信号では不可能なため、RF信号が電磁放射信号であることは当業者には明らかである。
【0035】
量子ドットは、バンドギャップの狭い半導体の3次元片で、バンドギャップが大きい半導体、誘導体又は真空空間に取り囲まれている。量子ドットの寸法は、通常は100ナノメートルを超えない。量子ドットは、球体、円盤状、レンズ状、ピラミッド状、立方体などの異なる形をしていてもよい。円盤状の量子ドットの概略図が図4に示されおり、円盤状の量子ドットでの重要な寸法である、半径(R)と高さ(d)が示されている。量子ドットでの電荷キャリアは3次元に閉じ込められ、その結果、キャリアの加熱や量子ドットからのキャリアの離脱に関連する効果の影響を受けないか、又は少なくとも非常に限られた影響しか受けない。例えばGHz又はTHz周波数での電界になり得る入射RF信号は、量子ドットにおいて、基本的に瞬時に量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を引き起こす。RF信号の電界は電子と正孔の波動関数の変位を引き起こし、そして今度は電子-正孔の波動関数オーバーラップ(重なり積分)の(動作環境に依存する減少のような)変化を生む。電子を価電子帯から伝導帯へ励起させる(それによって電子-正孔のペアを作り出す)遷移確率は、この光遷移に関わる光子の吸収確率(つまり吸収強度)に影響し、又は生成された電子−正孔のペアの組み換え効率に影響し、重なり積分の2乗に比例する。このように、光入力信号の吸収を変化させるのは、直接的にはキャリアの供給ではなく、むしろQCSEを通してもたらされる光遷移確率(つまり吸収強度)の変化である。QCSEは、(基本的に)瞬間的な効果であり、一時的にRF信号とコヒーレントであるので、本発明は直接RF変調を光キャリアへTHzのレートで符号化することを可能にし、したがって例えば遠隔通信システムにおいてテラビット/秒のデータ伝送速度にすることを可能にする。
【0036】
ここで、いくつかの例において、非常に短い自由キャリアの寿命を有し、入射信号の電界に依存し、量子井戸層と平行に偏向している量子井戸は、量子ドットの代わりに用いられうる。非常に短い自由キャリアの寿命は、バンドギャップの下での数多いトラップ状態を導くことによってもたらされる。このような配置はまた、結果として、フランツ・ケルデシュ効果又はバルク・シュタルク効果によって、入射ワイヤレスRF信号の電界によって量子井戸吸収のほぼ瞬間的な変調を引き起こす。吸収リカバリ速度は、量子井戸において光励起された電子及び/又は正孔が、十分に効率的に早くトラップ状態にキャプチャーされることによって決まる。
【0037】
半導体構造に導波路構造(120)を含めることで、光出力信号の変調は増加しうる。なぜなら光信号と半導体ナノ構造領域の間のオーバーラップが増加するからである。導波路構造は第1導波路インターフェイス(121)から第2導波路インターフェイス(122)へ光入力信号を少なくとも部分的に導くことに適合されており、少なくとも光入力信号の一部は、導波路構造(120)に誘導されたときに半導体ナノ構造領域(112)とのオーバーラップを有するべく、導波路構造(120)と半導体ナノ構造領域(112)は光学的に結合されている。
【0038】
上述したように、本発明は、変調が、主として量子状態を満たしたり空にしたりすることを通じてもたらされるのではなく、RF信号が引き起こす波動関数オーバーラップの変化を通じてもたらされるという点で優位性を有する。
【0039】
本発明に係る変調器は、半導体光増幅器又は電気吸収変調器に類似しているかもしれないが、RF変調信号の構造への低損失結合を提供することで、できるだけ多くのRF変調信号を半導体ナノ構造領域へ入らせるように適合されている。この理由は、多くの応用例や実際的事例において、RF変調信号がすでにきわめて弱いからである。いくつかの実施形態では、本発明の第2態様に係る変調器は、特定の半導体光増幅器に用いられるものと同じ装置を使って製作されうる。当該製造方法は、半導体ナノ構造領域へのRF変調信号の低損失結合を達成できるよう適合されていることだけが必要である。
【0040】
入射無線変調信号のナノ構造領域への低損失結合は、入射無線RF信号の電界による半導体ナノ構造において量子閉じ込めシュタルク効果の発生の高い効率をもたらす点で重要な役割を果たしている。低損失結合は、好ましくは入射RF信号にとって効率的なインピーダンス整合を提供することで、RFから光への符号化デバイスの表面で入射無線RF信号の反射損失を低減又は除外するために重要である。RF変調信号の低損失結合への適応方法はいくつかの異なる方法でなされるかもしれない。
【0041】
比較的損失が低い結合は、半導体ナノ構造領域とRF受信部との間に、十分に低い1つの(又は複数の)ドーピングレベルを持つ層のみを設けることで得られうる。ドーピングレベルがRF信号のインピーダンス整合を提供するように選択されない限り、自由キャリア吸収効果及びドープされた半導体のインターフェイス反射率の増加によって、半導体構造でのRF信号の吸収を減らす。通常、ドーピング密度は、わずか1立方センチメートルあたり約1015キャリアしか供給しない。この数字は使われている素材の種類や層の厚みに強く依存する。
【0042】
しかしながら、下記で述べるが、特定の最適なドーピングレベルはその構造の表面でRF信号結合の強化を促す場合がある。当業者は、RF変調信号が低損失で半導体ナノ構造領域へ結合されるべきであるという知識を与えられて、そのような層を適切に設計することが可能だ。
【0043】
RF信号の低損失結合は無線周波数受信部での反射防止コーティング及び/又はインピーダンス整合層を供給することで強化される。
【0044】
ワイヤレスRF信号の偏向が広い範囲で線形である場合に、ワイヤレスRF信号のこの装置への入射角度が、RFから光符号化装置の表面に入るブリュースター角であるという一般的な形態が使用される。
【0045】
上述したように、半導体構造は、有利なことに、第1導波インターフェイスから第2導波インターフェイスへ光入力信号を少なくとも部分的に導くことに適合しており、少なくとも光入力信号の一部が、導波路構造に誘導されたときに半導体ナノ構造領域とのオーバーラップを生じるように、導波路構造と半導体ナノ構造領域は光学的に結合された導波路構造を有する。
【0046】
有利なことには、光入力信号と無線周波数変調信号とはともに伝搬する。このことは、オーバーラップと、そして変調効率、つまり無線周波数変調信号からの情報が光入力信号に伝えられる効率とを増加させる。
【0047】
有利なことには、光入力信号と無線周波数変調信号が半導体構造の中でともに伝搬するとき、空間的及び時間的なオーバーラップを最適化し、それによって変調効率を増加させるために、それらの群速度は同一であるか又は少なくとも非常に似ている。
【0048】
第3の実施態様においては、第2の態様に従った半導体変調器が、光入力信号をワイヤレス無線周波数変調信号で符号化する干渉計光符号器の一部として使用される。符号器は、第2実施態様の信号変調器を有する第1の干渉計アームと、内部で光信号の大きさを調整することができる光減衰器又は光増幅器に結合され、内部で光信号の位相を調整することができる光移相器を有する第2の干渉計アームと、入力信号を第1信号部及び第2信号部に分割して、それぞれを第1アーム及び第2アームに入力させる入力ポート及びスプリッターと、第1アームからの出力と第2アームからの出力と結合させる光出力ポートとを備える。
【0049】
このような符号器は無線周波数変調信号を用いて光入力信号の、(ほぼ)バックグラウンドフリーな符号化を可能にする。
【0050】
信号変調器に適用されるのと同じ考察が、干渉器に基づく光符号器に対してもあてはまる。例えば、無線周波数変調信号の結合が有利なことに低損失で起こる。同様に、光入力信号と無線周波数変調信号がともに伝搬することで、変調効率を増加しうる、等が挙げられる。
【0051】
ここで留意すべきは、本発明が光入力信号の吸収の増減に依存しないということである。本発明は、(変化がないことの反対に)とにかく変化があるという事実に依存する。上述の議論は、価電子帯及び伝導帯の両方における基底状態及び励起状態の両方にあてはまる。そして、光入力信号の吸収において変化をもたらすことに関与する状態は、基底状態である必要はなく、好ましくは励起状態である方がよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、本発明に使われる半導体構造の概略図を示す。
【図2】図2A〜図2Dは、本発明に関する方法を実現するための配置を概略的に示す。
【図3】図3A及び図3Bは、電界が領域を越えて印加される場合の量子閉じ込め領域における波動関数の変化を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の一部として用いられる、半導体ナノ構造部及び量子ドットを概略的に示す。
【図5】図5は、z座標方向に電界が印加されていない場合の、図4で示した量子ドットのz座標に沿った電子及び正孔の基底状態の波動関数の大きさを示す。
【図6】図6A及び図6Bは、x軸方向に電界が印加されていない場合の、図4における量子ドットのx−y平面において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさを示す。
【図7】図7A及び図7Bは、x軸に沿って100kV/cmの強度の電界が存在する場合の、図4におけるx−y平面において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさを表す。
【図8】図8は、図4で示される量子ドットに対する、電子及び正孔の波動関数の重なり積分と、x軸に沿って印加された電界における電子及び正孔の波動関数の重なり積分の2乗との依存性を示している。
【図9】図9は、図4で示される量子ドットに対する、x軸に沿って印加された電界における、電子及び正孔の波動関数の重なり積分の2乗の微分を示す。
【図10】図10Aは、図4で示される量子ドットに対する、x軸に沿って印加された電界へのシュタルクシフトの依存性を示す。図10Bは、図4で示される量子ドットがx軸に沿って印加した電界における、シュタルクシフトの微分係数を示す。
【図11】図11は量子閉じ込めシュタルク効果の影響を示す。
【図12】図12は、RF−光符号器を示す。ここでは、干渉器を含む形態でのRF−光符号器を示す。
【図13】図13A〜図13Cは、RF−光符号器のプレバイアス電界を半導体ナノ構造領域へ印加するさまざまな電極の形態、例えば、図12で示した形態を示す。
【図14】図14は、RFパルス単体とパルス列を表したRF信号を示す。
【図15】図15は、図12で示されるRF−光符号器を用いて、図14の上部及び下部からRFパルス及びパルス列をそれぞれ光キャリアに符号化することで得られた出力信号を示す。
【図16】図16は、図15で示される計算に用いられる光キャリアの一部を示す。図16の上部は、図15の上部(単一パルス)から符号化された光信号の対応する一部を表している。
【図17】図17は、図16の下部で示される光キャリアのパワースペクトルと図15で示される光出力信号を表している。
【図18】図18は、図14で示される単独のRFパルスに対応するスペクトルの大きさを示し、それは図14で示されるパルス列に対応するスペクトルの大きさを示す。
【図19】図19から図25は、本発明に関する実施形態と同様に原理を証明する実験に関連する。図19は、原理証明実験の設備を概略的に描いた図である。
【図20】図20は、原理証明実験における半導体構造を示すサンプルの概略図である。
【図21】図21は、(上のグラフは)サンプルでの、QDによってもたらされたRF信号の電界のグラフを示しており、(下のグラフは)入力結合されたRF信号の電界によってサンプルのQD領域において吸収の変調による光反射性における変化を示す。シーケンスでの個々のRF信号パルスと関連する個々の反射性変調信号は、示されている大きさである必要はない。
【図22】図22は、サンプルの小信号反射性スペクトルと、サンプルに入射RF信号によって入射されたときのサンプルの反射性の変化を調べるために用いられる光パルスのスペクトルを示す。
【図23】図23(a)及び図23(b)は、入射RF信号の電界と、レーザーパルスによってもたらされるサンプルのナノ構造領域の反射性ΔRにおける変化とを示す。
【図24】図24は、この実験でサンプルとして使用されたQDデバイスにおけるRFパルスの多重反射によって引き起こされたQDデバイスの反射性における測定された変化を示す。
【図25】図25は、図23及び図24で示された時間領域データのフーリエ変換の結果としてのスペクトル応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例は、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲に制限を課すと解されるものではない。
【0054】
図1(a)は、本発明に用いられる半導体構造110の概略図を示す。半導体構造110は、半導体ナノ構造部112a及び112bを含む半導体ナノ構造領域112を有する材料領域131及び132を備える。図1(a)に示す半導体構造は、当該構造を伝搬する光入力信号と、吸収を生じさせるナノ構造領域との間に相互作用を及ぼす。構造110は、光入力信号を当該構造に結合させるための第1の光入力インターフェイス121と、光入力信号のうち吸収されなかった部分を当該構造の外部に結合させるための光出力インターフェイス122とを有する。当該構造は、ここでは平面状の部材として示されている、無線周波数信号を受信してナノ構造領域112にRF信号を低損失で結合させやすくするための受信部114をも有する。受信部114は、半導体構造の残りの部分とともに、少なくとも1つの波長において無線周波数信号を効率的に受信するように設計されており、受信した信号をナノ構造領域に結合してRF信号によって生じる電界をナノ構造領域112又は少なくともその一部に供給する。第1の光入力インターフェイス121及び第2の光出力インターフェイス122は、同一の部材であってよく、後述の原理証明実験で用いられるように、光信号が当該インターフェイスを通って構造110に入ると、構造110内で反射して、同じインターフェイスを通って出ていく。
【0055】
図1(a)の部材は、112a及び112bのようなナノ構造部を表出させることを目的の一部として、透明に示されている。図1(b)は図1(a)に示した構造を側面から描いた図である。
【0056】
受信部114は分離された部材である必要はない。半導体構造自身が受信部として機能してもよい。プリズム又は他の適切な光学部材が受信部として用いられてもよい。半導体構造の表面にコーティングが施されてもよい。これは設計事項である。
【0057】
受信部114は、全ての実施形態において、入射ワイヤレスRF信号に対する効率的なインピーダンス整合を提供することで、入射ワイヤレスRF信号の反射損失を低減又は除去する役割を有する。以下に、半導体構造110の表面に特殊なコーティングを用いた受信部114の好ましい実施形態を示す。
・クレール等の著作「高性能THz電子的光学的検出器」エレクトロンレター、第40巻、763−764ページ(2004年)にあるような、特殊な金属性反射防止コーティング
・フェケテ等の著作「高抵抗半導体のTHz反射性のアクティブ光制御」光学レター、第30巻、1992−1994ページ(2005年)にあるような、ドーピングによる供給又は光励起による自由キャリアが最適に集中している半導体層
・トゥチノーヴィチ等の著作「THz範囲でのフレキシブルなオールプラスティックミラー」材料科学とプロセス、第74巻、291−293ページ(2002年)及び米国特許第6954309号公報(B2)における高反射性を示すものと同様であるが、反射防止コーティングにより実現しているインターフェイスをベースにした誘電コーティング層又は複合層構造。
【0058】
場合によっては、光入力信号と同じ方向又は実質的に同じ方向に、無線周波数信号を半導体構造に結合することが望ましいかもしれない。そのような実施形態においては、第1の光インターフェイスが、受信部114として機能するべく適合されてもよい。受信部として、例えば第1光インターフェイスに形成された、半導体構造上の適切なコーティング又は構造が用いられてもよい。
【0059】
RF信号と光信号とを同じ方向に入力する利点は、RFと光信号が、図2Bに示した半導体ナノ構造を含む構造を伝搬する間に相互作用を及ぼす長さを大きくすることができることである。この場合、受信部114は最適化された導波路又はその一部となり得る。導波路は、光信号及びRF信号の強度の十分な部分が半導体ナノ構造領域に閉じ込められるようにして、両信号が半導体ナノ構造に沿って誘導されることを確実にする。RF信号及び光信号が同一の又は十分に近い群速度で、より長い距離を伝搬されればされるほど、相互作用の効率の向上が達成される。デュアル導波構造が用いられてもよく、例えば、そこでは光信号及びRF信号は、互いに重なり合い、それぞれがRF信号又は光信号の伝搬に最適化された個別の導波路によって同じ方向に誘導される。そのようなデュアル導波路構造は図2Cに示される。ここでは、115a及び115bはRF信号202及び光信号201を伝搬する導波路の境界である。
【0060】
図2Aは構造110に入る光入力信号201、及び、光入力信号が当該構造を伝搬した結果である光出力信号(203)を示す。202a又は202bのような無線周波数信号は受信部114によって受信され、それぞれ信号210a及び210bとして示されるように、半導体構造に結合される。それは、既に述べたように、ナノ構造領域に到達し、ナノ構造領域の少なくとも一部において光の吸収に変化を及ぼす。光入力信号201(本例においては誘導された信号205としても示されている)は、入力インターフェイス121から出力インターフェイス122へと伝搬し、RF信号210a及び210bの電界の影響がある中で当該構造への吸収の変化がもたらされる。
【0061】
図2Bはナノ構造領域で信号210cとなる光入力信号201と同じ方向に、半導体構造へ入力されるRF信号202cを示す。
【0062】
半導体ナノ構造部に印加された入射ワイヤレスRF信号の電界は、半導体ナノ構造において局部的な電界の集中を生じさせるために、少なくとも1つの金属製ナノスリットを含み、半導体ナノ構造の十分に近くに設けられた受信部114によって局部的に強められてもよい。この原理はセオ等の著作「スキン深度限界を超えて作用する金属製ナノスリットを用いたTHz界の強化」、ネイチャーフォトニクス、第3巻、152−165ページ(2009年)に示されている。この場合、我々のワイヤレスRF信号の電界による半導体ナノ構造の光特性を変調する方法の効率がさらに向上し、より弱い無線RF信号によって、半導体ナノ構造の光特性のより大きな変調を提供することができる。金属製ナノスリットを有する結合部114を用いた1つの可能な実施形態が、図2Dに示される。ここでは、半導体構造は図1と同じである。入射無線RF信号202は、少なくとも1つの金属製ナノスリットを有する受信部114によって局部的に強められ、ナノスリットに十分に近い位置に設けられた半導体ナノ構造112a及び112bは、より強いRF信号202dにされる。
【0063】
図3Aは、電界が存在しない場合、すなわちF=0の場合のx軸に沿った半導体ナノ構造の伝導帯のポテンシャルEc(x)、半導体ナノ構造の価電子帯のポテンシャルEν(x)を示す。これらのポテンシャルEc(x)及びEν(x)によって、x軸に沿って、それぞれ電子及び正孔の量子閉じ込めがなされる。図3Bは非ゼロ電界、F≠0における対応するポテンシャルEc(x)及びEν(x)を示す。図3aの条件下において、波動関数Ψe及び固有エネルギーEeの量子ドット伝導帯状態があり、波動関数Ψh及び固有エネルギーEhの量子ドット価電子帯状態がある。前者は(Ee,Ψe)として示され、後者は(Eh,Ψh)として示される。対応する遷移エネルギーはEe−Ehである。このエネルギーを有するフォトンは量子ドット価電子帯状態(Eh,Ψh)から量子ドット伝導帯状態(Ee,Ψe)へと電子を励起することができて、波動関数Ψe及びΨhの重なり積分の2乗に比例する確率で吸収される。
【0064】
図3Bは非ゼロ電界、F≠0の状態を示す。x軸に沿った伝導帯エネルギーはE’c(x)であり、x軸に沿った価電子帯エネルギーはE’ν(x)である。量子ドット伝導帯状態は波動関数Ψ’e及び固有エネルギーE’eを有し、量子ドット価電子帯状態は波動関数Ψ’h及び固有エネルギーE’hを有する。対応する遷移エネルギーはE’e−E’hである。このエネルギーを有するフォトンは量子ドット価電子帯状態(E’h,Ψ’h)から量子ドット伝導帯状態(E’e,Ψ’e)へと電子を励起することができ、波動関数Ψ’e及びΨ’hの重なり積分の2乗に比例する確率で吸収される。
【0065】
図3A及び図3Bは概略図であり、量子ドットは1次元ポテンシャル井戸として描かれている。以前述べたように、量子ドットは材料の一部が、量子ドットのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーを有する材料で完全に囲まれているという特徴を有しており、ポテンシャル井戸は3次元である。必要な特徴は、ナノ構造の少なくとも1つの量子閉じ込め次元を越えて印加された電界が変化による(電子及び正孔の波動関数間のオーバーラップの変化によって生じる)電子−正孔遷移エネルギーのシフト及び/又は光遷移確率のシフトである。
【0066】
以下では、円盤状の量子ドットについて量子閉じ込めシュタルク効果が示される。量子ドット材料は、バンドギャップエネルギーが0.74eVのIn0.54Ga0.46Asであり、障壁材料は、バンドギャップエネルギーが1.42eVのGaAsである。量子ドットは円筒形であり、半径7.5nm及び高さ5nmを有する。量子ドット内の電子及び正孔の実効質量は、それぞれ0.045m0から0.38m0だと推定され、ここでm0は電子の残りの質量である。障壁材料の実効質量は、電子に対しては0.067m0であり、正孔に対しては0.51m0であると推定される。量子ドット材料及び障壁材料の間の、伝導帯オフセットと価電子帯オフセットとの間の比は、60:40であると推定される。
【0067】
図4は、そのような量子ドットの概略図を示す。円筒は量子ドット材料を示し、その外周は障壁材料を示す。印加された電界は量子ドット平面上、すなわち方向dに垂直に存在すると推定される。以下では、直交するx座標及びy座標にこの平面を割り当てる。図4において電界Fと示されるように、電界はx軸に沿って印加される。
【0068】
電界がない場合と電界が存在する場合とにおける量子ドット内の電子及び正孔の基底状態の波動関数及び固有エネルギーは、シュレーディンガー方程式を解くことで求められる。シュレーディンガー方程式を解く方法はシュン・リエン・シュアンの「オプトエレクトロニクス・デバイスの物理」ジョン・ウィリー&サン株式会社、94−95ページ(1995年)に記載されている。電子及び正孔の波動関数が障壁にまで貫通することが、以下の近似によって考慮に入れられている。電子と正孔とで異なる量子ドットの実効半径が導入され、無限のポテンシャル障壁を持っているが、より大きな実効寸法を有する量子ドットに対してシュレーディンガー方程式が解かれる。このように計算するアプローチのために特別な選択をすることは、本発明の範囲において必須ではない。計算は単に基礎になっている原理をわかりやすく説明するために用いられたに過ぎない。
【0069】
図5は、z座標方向に電界が存在しない場合の、z座標に沿った電子及び正孔の基底状態の波動関数の大きさ(単位は任意)を示す。現状の近似と配置のもとでは、これらの大きさはx−y座標平面、すなわちz方向に垂直な平面における電界とは独立しており、量子ドットのバンドオフセット、電子及び正孔に対する実効質量、及び高さdによってのみ定められる。
【0070】
図6A及び図6Bは、x軸方向に電界が印加されていない場合において算出されたx−y平面における電子及びホールの波動関数の大きさ(単位は任意)を表す。図7A及び図7Bは、図4に示されるようにx軸に沿って100kV/cmの強度の電界(バイアス電界Fbias)が存在する場合において算出された電子及び正孔の波動関数の大きさ(単位は任意)を表す。電界が印加されると、電子及び正孔の波動関数の変位が観測される(電界がゼロの場合の図6A及び図6Bと比較のこと)。
【0071】
電子及び正孔の波動関数の重なり積分は
である。これは電界が印加されると、電子及び正孔の波動関数の変位によって減少する。ゼロ電界及び非ゼロ電界における波動関数は、それぞれ2つの場合について重なり積分を計算するために上記の等式に挿入される。
【0072】
吸収及び再結合速度が強く依存する光遷移強度は、重なり積分Mの2乗M2に比例する。図8は、上記の量子ドットに印加された電界にM及びM2が依存することを示している。電界は、上記の構成において印加される。明らかにわかるように、M及びM2は印加電界の増加に伴って減少する。
【0073】
図9は、重なり積分の2乗M2を電界について微分したd(M2)/dFbiasを示す。この微分はM2に比例する光遷移強度の変化を表し、印加電界の関数として印加電界の変化によって導出される。図9に見られるように、微分d(M2)/dFbiasは印加電界の値が24kV/cmである場合に最小値を有する。量子ドットがこのレベル(「プレバイアスされた」レベル)にあるならば、(プレバイアスされた電界とともに偏向された)電界を持つさらなる小さな外部RF信号を付加することにより、光遷移強度の可能な範囲で最強の変調がなされる。そのようなプレバイアスは、エネルギーEe−Eh及びE’e−E’hに対応する周波数付近の周波数を有する光信号に対してRF信号が引き起こす変調を最適化することを手助けする。プレバイアスは、静的であってもよく時間によって変化してもよい。
【0074】
もう1つQCSEを明白に示すのは、電界が印加されることによる変化(通常は減少)である。電界がない場合における光遷移エネルギーに対する印加電界に伴う光遷移エネルギーのこのシフトは、シュタルクシフトと称される。図10Aは、シュタルクシフトの印加電界への依存性を示す。図10Bは、印加された電界の関数として、印加された電界についてのシュタルクシフトの微分を示す。これらの計算は上記の量子ドットシステムに対して行われた。シュタルクシフトは印加電界に対して単調増加する。印加電界におけるシュタルクシフトの微分もまた、印加電界の関数として単調増加する。これは、量子ドットシステムが、既に、RF信号と同じに偏向されている強電界でプレバイアスされているならば、量子ドットシステムのシュタルクシフトのより強い変化が得られる(少なくとも弱いRF信号に対して)ことを意味している。
【0075】
図11は量子ドットシステムへのQCSEの影響を示す。簡単にするために、この例において存在する唯一の2つの状態である価電子帯グランド状態及び伝導帯グランド状態の間での遷移という1つの電子遷移のみが存在すると仮定されている。量子ドットシステムにおいて実際に常に存在する、量子ドットシステムの内の均質及び不均質な広がりによって、半導体構造の光吸収スペクトラムが広がる。これは、RF信号及び/又は光入力信号がスペクトラム的に広いときの変調にとって有利な点である。光吸収スペクトラムの広がりは、例えば近くに存在する電子的遷移、温度、光励起強度、ナノ構造領域内の量子ドットの大きさのばらつき等が原因となり得る。
【0076】
一般に、量子ドットシステムにおける光遷移強度を変調するRF信号210a、210b、210cは、図2A及び図2Bにおいて(202a、202b、202cとして)示される、自由空間を伝搬してきて入射するRF変調信号として印加されうる。発明の主な応用例は、半導体ナノ構造と受信部114とを有する構造に自由空間から入射されるRFワイヤレス信号の直接的な符号化である。しかし、RF信号は、並列な板状の導波路、ストリップライン、ファイバー等のような何らかの種類のRF導波路から印加された、時間によって変化する電界として上記の構造に供給されてもよい。これらのいずれかで誘導されるRF信号は、RF信号の電磁波が内部反射又は同様のメカニズムによって導波路で誘導されるだけなので、本発明の意味においてはワイヤレスであると考えられる。先行技術文献において用いられているような電気信号は、電荷の移動によって伝搬し、導電材料内での伝搬に制限されている。したがって、これらはワイヤレスではなく、ハードワイヤード信号と称される。他方、電磁気信号は電荷の移動によって放出されるが、ワイヤーに閉じ込められることなく、どのような誘電性媒体内であっても伝搬する。つまり、無線RF信号は変動している電界又は変動している磁界を含む電磁気信号でなければならない。電磁気信号は、電圧又は電気的に伝導性がある材料を伝搬する電流信号が内在している(RC定数のような)制限の影響を受けない。しかし、電気的に伝導性がある材料は、より良い電力伝送を実現するために、電磁波の誘導に用いられてもよい。
【0077】
光半導体構造のような構造にワイヤレス信号を印加する方法と有線(ハードワイヤード)信号を印加する方法との間には基本的な違いもある。欧州特許1416316号公報及び英国特許2836965号公報等に示されているように、有線(ハードワイヤード)信号の印加は半導体構造を挟む2つの電極を必要とし、設計と半導体構造の材料選択における制約があることを示唆する。
【0078】
無線信号の印加は、受信部114によって半導体構造110に信号が、なるべく低損失で入射されることを必要とする。既に受信部114のいくつかの実施形態を記載しており、それらの中には、半導体構造110におけるワイヤレスRFを受信する側に設けられた金属製の反射防止コーティングを含む。
【0079】
さらなる実施形態においては、半導体ナノ構造領域における受信部114の反対側に位置する導電性材料からなる反射体を含むことが好ましい。そのような反射体は、ナノ構造領域を既に横断したRF放射をナノ構造領域に向けて反射することができる。表面と反射体との間の距離は非常に小さくすることができるので、RF信号と(表面と反射体との間に配置される)QDとの間の相互作用は、相互作用間の十分な時間遅延につながることはなく、効果的に「一点相互作用」に類似している。そのような反射体は、RF信号がナノ構造領域に入力結合する効果の増大をもたらす。
【0080】
したがって、受信部114に含まれるどの金属層も、好ましくは低損失で無線変調RF信号を受信して半導体構造110に入力する機能を果たすだけであることが好ましい。同様に、受信部114の反対側の金属反射体は、RF放射をナノ構造領域に反射する機能を果たすだけであることが好ましい。したがって、そのようなどの導電性層も、有線変調信号を供給するための電気回路に有線(ハードワイヤ)で接続されていないことが好ましい。当業者であれば、制御できない電気的なバイアスを回避するために、そのような導電性層をグランドに接続するか、代わりに、他の箇所で記述した直流バイアス電界の印加に用いる2個又はそれ以上の電極の1つとして用いられるかが必要であるということを知っているであろう。しかしながら、そのようなグランド又はバイアス接続は、変調信号を供給するための電気回路への接続を表しているわけではない。量子ドットシステムは、上述のようにプレバイアスされてもよい。プレバイアス電界は、他の入射RF信号又はそれ以外に(例えば、電極、RF導波路などを通じて)供給される電界のようなRF変調信号とちょうど同じように、静的に又は時間変化をさせて供給されることができる。これらのアプローチの組み合わせは、より複雑なプレバイアス電界が引き起こされる非線形ミキシングに用いることができる。
【0081】
プレバイアス電界もRF変調信号も、半導体ナノ構造領域において、吸収条件を変化させるので、RF変調信号の非線形ミキシング及びプレバイアス電界(静的又は時間変化するもの両方)が得られ、それに伴う光入力信号の変調を可能にする。
【0082】
量子閉じ込めシステムに電界を印加する他の効果は、電気屈折効果であり、電界が印加されたときに発生する局部的な屈折率の変化である。この効果は、QCSEのようにほとんど瞬間的であり、印加された電界に非常に短時間(多分、数フェムト秒)で追随する。これは、半導体構造110を伝搬する光入力信号の位相シフトに寄与する。このようにして、伝送される光信号は、外部から印加された電界(RF変調信号又はプレバイアス電界)によって位相変調もされ、光入力信号のさらなる変調に寄与する。
【0083】
図12は信号変換器の一例を示し、より具体的には、上述の原理を用いるRF−光符号器1201の一例を示す。この符号器は、ほぼ光信号のバックグラウンドフリー変調を可能にする。この場合、(不完全な変調の場合には)入力信号の変調されていない部分がデバイスを通って伝搬することを許さない。入力ポート1211から入った光入力信号1231は、2つの部分に分割される。第1の部分は、本発明の第1の態様に係る半導体変調器1202を有する第1アーム1212を通って伝送される。第2の部分は、光移相器1206及び光減衰器/増幅器1204を有する第2アーム1213を通して伝送される。
【0084】
この並びにおける位相器と変調器との相対的位置(つまり、どのデバイスが最初に位置し、どのデバイスが2番目に位置するか)は任意の設計事項であり、最適化の目的の一例に過ぎない。第1アーム及び第2アーム(1212、1213)は、デバイスの出力ポート1214(第1アーム及び第2アームの結合点)で一緒に結合されて、出力信号1232を生成する。
【0085】
RF−光符号器1201はワイヤレスRF変調信号が第1アームにおいて半導体変調器1202へ印加する前に最初に調整されるべきである。移相器1206は光信号の第1の部分と第2の部分との間の位相差が結合ポイント1214において180度(又は現実に可能な限りこれに近い角度)だけ異なるようにするために、光信号の第2の部分の調整可能な位相変化を提供できる。光減衰器/増幅器は、(ほぼ完璧に近い)相殺的干渉によって結合ポイント1214での(ほぼ完璧に近い)信号消滅を得ることを可能にするために、2つのアーム1212、1213の出力における光信号の強度をできるだけ近くに持ってくることに用いられる。この場合、第1アームでのワイヤレスRF変調信号の半導体変調器1202への印加の前に、符号器1201を通じた光キャリアの全伝送がゼロ(若しくは限りなくゼロに近い状態)になる。光アイソレータ(図示していない)は、反射光1233が入力ポートを通じて反対の方向へ脱出するのを防ぐことができる。
【0086】
さて、上記の説明にしたがって、RF変調信号1222が第1アームの半導体変調器に印加されるとき、第1アームを通じた伝送は、前述したように得られる変調によって変化する。これは、第1光信号と第2光信号(第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)を通過する信号)の間の強度差の一因となる。第1アームの光信号と第2アームの光信号の間の光位相差は、依然として180度(又はもっと近い)であるが、半導体変調器による吸収のために、第1アームと第2アームの出力において信号間の不完全な相殺的干渉が起こるだろう。このようにして、入力された光信号の強度の一部は、たとえ相殺的干渉が一番高まった時であってもそのデバイスを通じて伝送される。伝送のレベルは、印加されたRF変調信号に起因する半導体変調器における光信号の変調強度と関連がある。だから、ワイヤレスRF変調信号は第1アームでの半導体変調器1202へ印加されるのみであり、第2アーム内の光移相器1206や減退器/増幅器1204にはRF変調信号が印加されない。
【0087】
光入力信号の吸収における変化は、本来屈折率の変化に関連しているため、本発明は修正されうる。この場合、半導体ナノ構造領域は光入力信号の位相を変化させ、光入力信号の強度をそれほど変化させない。RF変調信号はナノ構造領域部のバンドギャップの下方ですら、屈折率の変化をもたらす。それゆえ、この場合、第1周波数が第1価電子帯状態と第1伝導帯状態の間のエネルギー差より低く、また第2価電子帯状態と第2伝導帯状態の間のエネルギー差よりも低くなりうる。このことは、光入力信号の変調が主に位相の変調であって、圧倒的に強度の変調ではないということを意味している。たとえ電子屈折効果が支配的であったとしても、同様のアレンジメントが用いられうる。この場合、変調するRF信号が存在しない場合には、出力ポート1232を通じた伝送は、減衰器/増幅器1204を用いて第1アーム1212及び第2アーム1213を通じて伝送された伝送強度の適切な等化によってゼロ又は限りなくゼロに近い状態へもたらされなければならない。そして、第1アーム1212及び第2アーム1213における信号の位相は、移相器1206による適切な調整によって、位相差が180度(又は限りなくそれに近い状態)にもたらされなければならない。この場合に、第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)を通じて伝搬する信号には、完璧な(又は限りなくそれに近い)相殺的干渉が生じる。そして、出力ポート1232を通じたすべての伝送が限りなくゼロに近い状態になる。そして、変調RF信号が変調器1212へ印加される場合、電子屈折効果によって第1アーム1212を通じた光信号の位相が、RF変調信号によって供給された電界強度に応じて変位する。この場合、第1アーム1212及び第2アーム1213を通じた光信号の相殺的干渉は不完全となり、光強度が出力ポート1232を通じて伝搬することを可能にする。この光信号は、RF信号によって時間変調され、そして再びゼロ又はゼロに近いバックグラウンドを持つ。
【0088】
一般に、QCSEと電子屈折効果の組み合わせは、デバイス全体及び/又はその構成要素の最適化を用いて、出力ポート1232での伝送された光信号における望ましいRF変調強度を得るために用いられうる。
【0089】
減衰器/増幅器1204は半導体変調器と同じ材料で作られてもよい。第2アームにおける第1光信号の減衰(又は増幅)は印加された電界によって調整されてもよい。これは、公知であり、半導体電子吸収変調器又は半導体光増幅器はこの目的に適っている。移相器1206としては、ニオブ酸リチウム移相器、又は他の適当な移相器が用いられてもよい。当業者は、他の減衰器(増幅器)及び移相器が適していることを容易に理解するであろう。
【0090】
導波路、移相器、そして減衰器は同じ基板の上に実現されてもよく(図12にて、概略的に示されている)、又は他の方法で光学的に統合されてもよい。あるいは、パーツが分割され、個々のコンポーネンツは、それらの間の必要な光結合を供給する中間の導波路に組み込むことができる。当業者は、このような様々な方法を心得ているであろう。
【0091】
図12は、概略図のみである。干渉器アーム、半導体変調器、位相器、減衰器等は、個々に及び相互の関係を測るためのものではない。
【0092】
図13A〜図13Cは、上述したように変調器の最適化を可能にする、図12の信号変調器1202の半導体ナノ構造領域にプレバイアスをかける可能性について概略的に示している。プレバイアスをかけることに用いられる電極は、ワイヤレス変調RF信号を受信する受信部114とは関連しないことを理解することは重要だ。プレバイアスに用いられる電極は、ハードワイヤでDCバイアス信号を受信するように適合され、RF信号を受信するのではない。
【0093】
図13Aにおいては、プレバイアス電界の、図12からの変調器1202の半導体ナノ構造領域への印加のため、2つの電極1312及び1314が示されている。光信号は、図2A及び2Bで示された半導体ナノ構造領域を通じて伝搬され、インターフェイス121に入り、インターフェイス122において出て行く。この場合、電界は変調器の半導体ナノ構造領域の全ての長さに沿って印加される。
【0094】
図13Bでは、変調器の半導体ナノ構造領域へのプレバイアス電界の印加のための一連の電極1322及び1324が示されている。この場合、プレバイアス電界は、バイアス電圧(又は異なるバイアス電圧)をいくつかの、又は全ての電極1322及び1324に印加することで、変調器の異なる部分へ局部的に印加することが可能となる。
【0095】
図13Cでは、電極1332の円形パターンが、変調器の半導体ナノ構造領域の周りに配置されている。円形パターンは、電極1332の中から適した一組の電極を選択することで、RF変調電界の方向についてプレバイアス電界偏向の最適な方向をもたらす。したがって、プレバイアス電界の偏向をRF変調電界の偏向に一致させることができるだろう。
【0096】
図14〜18は本発明の数値計算について示している。図14は(0.33Tbit/秒の伝送速度で送られたデータに対応した)単一のRFパルス及びパルス列を表すRF信号を示している。最大の電界強度は、10V/cmである。
【0097】
図15は、図12で示されたデバイスを用いて、それぞれ1300nmの中心波長(およそ233THzの光周波数に対応)の光キャリアに図14の上部と下部に描かれたシングルRFパルス及RFパルス列を符号化したことで得られる出力信号を示している。バックグラウンドフリー信号はこのデバイスによって生み出される。量子ドットパラメータは、上述したものと同一である。RF電界は、24kV/cmのプレバイアスDC電界(詳細については図2Bとその説明を参照)と同じに偏向している。
【0098】
図16の下部は、図15で示された計算に用いられた光キャリアの一部を示す。図16の上部は、図15の上部(単一パルス)の符号化された光信号の対応する一部を示す。
【0099】
図17は、図16の下部で示された光キャリアと、図15で示された光出力信号のパワースペクトル(単位は任意)を示す。
【0100】
図18の実線は、図14で示された単一RFパルスに対応した振幅スペクトルを示す。そして、図18の破線は、図14で示されたパルス列に対応した振幅スペクトルを示す。これらのRF振幅スペクトルのスペクトル特性は、明らかに図17でのバックグラウンドフリーの光出力信号のパワースペクトルに反映されている。
以下では、原理証明実験の説明と結果について述べる。
【0101】
この実験では、RF放射(RF信号)の単一サイクルに近いパルスが、光−RF変換段階においてパルス状レーザーによって供給される、中心波長800nmの80−fs長のレーザーパルスの変換によって、0.1−3THzの範囲をカバーする周波数スペクトルで生成された。RF信号の持続期間は3psより短かった。パルス状レーザーは1kHzの繰り返し率で動作した。レーザー出力の一部は、光学的パラメトリック増幅器を使用して概ね1040nmの中心波長(光信号)に周波数変換された。光信号の持続期間は、100fsより短かった。RF信号は、半導体構造110を示すサンプルの上へ垂直入射で入射された。光信号は、小さい角度でサンプルへと入射され、サンプルに入射されて反射された光信号のパワーは、RFと光信号との間の遅延時間の関数として測定された。RFと光信号との間の制御された遅延時間は、可変光ディレイラインを用いて導入された。サンプルの上に入射して反射した光信号のパワーの絶対値は、2つの光検出器、すなわち、サンプルへ向かう途中の光信号伝送損失を考慮に入れた、基準光検出器とサンプル光検出器とを用いて測定された。実験の装置の概略が図19で示される。実験は室温で行われ、RF信号はその環境を通じて伝搬した。例えば、サンプルは入射ワイヤレス周波数信号によって供給された電界以外のほかの電界以外は受けないといったように、プレバイアスはサンプルに印加されていなかった。また、例えば、受信部がサンプルの表面そのものであるといった、入射RF信号にとって特別な受信部は用いられなかった。
【0102】
この実験でのサンプルは、図20に示されたQD(量子ドット)構造であった。サンプルのすべての半導体部分はドープされていない。InAs/GaAs量子ドットのいくつかの層から構成されるサンプルは、誘電体反射鏡の上部に位置させた。誘電体反射鏡は、バルクGaAsウェハの上部に成長させた。そして、そのウェハは、RF信号の反射材として役割を果たす研磨金属のバルク片に取り付けられた。誘電体反射鏡は、そのように成長し、ほぼ100%の効率で、概ね1040nmの中心波長で光信号を反射する。翻って、量子ドットは、光信号がサンプル表面から誘導体反射鏡に向かって、及びその逆で誘導体反射鏡からサンプルの表面に向かって伝搬する間に、光信号の一部を吸収する。サンプルの表面は光信号が反射しないようコーティングされており、そのためサンプル表面では反射損失がなかった。サンプル表面と誘導体反射鏡の間の構造の部分、例えば量子ドットを含む部分の厚みは光信号の波長と同程度であった。したがって、誘導体反射鏡に向けて、及び、誘導体反射鏡からの往復における量子ドットでの光信号の相互作用は、1点での相互作用として考えられうる。つまり、サンプルにおける光信号の伝搬時間は無視できるほど小さい。
【0103】
自由空間からサンプルに入射するRF信号は、サンプルの表面で反射損失を生じて、量子ドット領域を通じて伝搬し、誘導体反射鏡を通じて伝搬し(RF周波数とは共鳴しない)、厚いGaAsウェハを通じて伝搬し、最終的にはサンプルの終端で金属反射器に反射し、そしてそこに及んだ後に、再び量子ドット領域を通じて伝搬し、そしてサンプル表面でサンプルへ部分的に反射して戻る。サンプル表面の反射係数が1よりも少ないので、この反射が起きると、その構造に再び入るRF信号の電界は、小さくなる。RF信号はまた、その構造を通じて伝搬するときに分散したり、散乱したり、減衰したりしうる。同様に、デバイスの表面が光パルスの波長のために反射コーティングされていないので、光パルスがデバイスへ入り、QD領域を通過して、誘導体反射鏡に反射し(RF信号に影響はしない)、QD領域を通過して、そしてデバイスを離れる。QD領域と誘導体反射鏡の間の距離は、光信号波長と同程度であり、その結果、構造を出入りする道中のQDでの光パルス相互作用(1点の相互作用)に対しては無視できるほど小さな遅延時間しか生じない。図21は、光信号の周波数における、QDでの吸収の変化に結びつくRF信号とQDとの間の相互作用のタイミングを示している。
【0104】
図22においては、QDサンプルの小信号反射スペクトル及び光信号の強度スペクトルが示されている。1040nmの波長付近における反射でのくぼみは、QDにおける光吸収によるものである。我々の実験において、1040nmの波長付近でのQDサンプルの反射性は、QDがRF信号の電界の影響下にあるときに増加することを示す。言い換えると、QD吸収は、RF信号での電界とQDの相互作用の結果として減少する。
【0105】
我々の原理証明実験の第1の結果は、図23に示されている。持続期間が概ね2.8psの単一サイクルに近いRFパルスの電界の一時的な依存状態が図23(a)に示されている。1040nmの波長付近の光信号に生じる、QDの最大吸収波長付近におけるQDデバイスの反射性の変調ΔRが、時間の関数として図23(b)に示されている。ここで強調したいのは、RF信号が存在する状態における光反射性の変化は正であるということだ。つまり、QDでの光吸収は、電界が印加されない時の状況と比べて減少している。図23(a)からのRF信号の電界の絶対値もまたこのグラフに示されている。QDサンプルの光反射の時間的な動特性は、明確に入射RF信号の電界の絶対値の主な特性を再生しており、反射変調信号は入射RF信号とほぼ同じ持続期間を持つ。上記で、我々は初期の電気的プレバイアスがない場合(つまり入射RF信号の電界を除くほかの電界がQDに印加されない場合)のQDサンプルにおける光吸収の変調は、光吸収の減少をもたらし、そしてその光吸収はRF信号における電界強度の極性によってではなく、その絶対値にのみ依存することの概要を説明した。そのため、RF信号の電界の一時的な依存状態における図23(a)と異なる極性の特性は、図23(b)で示される、サンプルの反射性における正の変化(つまりQD光吸収の減少)をもたらす。我々はここで、高周波RF無線信号の光信号への符号化の瞬間的な特性を、QDサンプルの光学的特性における対応する変調を導き出すことで示した。効果は、予見されたように、RF信号の電界とコヒーレントであり、RF信号の時間的なダイナミックスにおけるサブpsという長さの特徴は、QDにおける光信号吸収の変調に関連した信号によって再生されうる。この実験において、我々が示したRF−光符号化効果は、RF信号及び光信号の電界の相互の方向とは実質的には無関係であり、サンプルの結晶軸に関連した光信号の偏向の相互の方向において、QDの光吸収の小さな異方性を反映して、とても弱い依存性を持つことを確認した。
【0106】
図24においては、図23で表示したものと同じ測定を示しているが、より長いタイムスケールが採用されており、サンプルのQD領域は、図20と図21で示されるような構造でのRF信号の多重反射の結果として、QDデバイスの中で概ね11.3psの時間の間隔のRFパルスの多重反射を受けている。我々は、図21の略図のような相互作用タイミングに従った、RF信号がデバイスのQD領域を通過するたびに生じるQDサンプルの光反射における明らかな変調に気づく。11.3psの時間間隔が置かれた、個々の反射性変調パルスは、RF信号がその構造の中で受けた分散、散乱、減衰の結果として、わずかに形が変わるという特徴を有する。しかしながら、反射性変調信号のおおよその持続期間は常に2.8psのオーダーである。図24で示された結果は、それぞれのデータビットが単一のRF信号パルスで表される(シーケンスにRFパルスが存在する時は「1」、シーケンスにRFパルスが存在しない時は「0」)シリアルデジタルデータストリームの符号化は、「1111」のシーケンスが伝送されたと仮定すると、11.3psのデータパルスの間の時間間隔に対応して、少なくとも89Gbit/秒のビットレートで可能であるという証拠をもたらす。11.3psのパルス間隔の、2.8psの個々の反射性変調パルスのおおよその持続時間に対する比率は、11.3÷2.8=4.03となり、このことは、RFデータシーケンスにおけるデータビットを表す光反射性信号間のクロストークがない状態において、実証したビットレートの89Gbit/秒の4倍の速さ、つまり356Gbit/秒=0.356Tbit/秒でのデータの光信号への符号化の可能性を示唆する。
【0107】
最後に、図25において、我々は図23(a)からの個別のRF電界信号、図23(b)からの単一RF信号によるQDサンプルの光反射性の変調、及び、同じ変調だが図24からのRF信号シーケンスによって引き起こされた光反射性の変調の周波数スペクトル(時間領域信号のフーリエ変換の結果)を示す。我々の実験で用いられた個々のRFパルスの周波数スペクトルは、上で述べた符号化方法を使用した情報の光信号への符号化に対して、概ね3THzのバンド幅が用いられうることを示唆している。一連のRFパルスによって生成された反射性変調スペクトルにおいて、この実験で示された89Gbit/秒のビットレートの可能性に対応する概ね90GHzの間隔で、複数の頂点が明確に確認できる。単一RFパルス及びRFパルスのシーケンスによって引き起こされた反射性変調の周波数スペクトルは、図18で示された振幅スペクトルのRF信号によって生み出された、図17で示された光信号の周波数スペクトルにおけるモデル化されたサイドバンドに相当する。
【0108】
本発明の好ましい実施形態による変調器又はRF−光符号化デバイスは、THzレンジまでの範囲の高周波放射のための超高速コヒーレント検出器として用いられうる。このデバイスは室温で動作し、そのデバイスを伝送する又は反射した(又はデバイスをプローブする)入射THz信号の光信号への瞬間的な符号化を可能にする。そして、この光信号は、従来通りに分析され又は扱われ、検出されたTHz信号の情報/特性を運ぶ。
【0109】
自由空間電気光学サンプリング(FEOS)や光伝導性サンプリング(PCS)といった他のコヒーレント検出方法と比べて、光学的信号及びTHz信号の偏向の相互の方向、及び、半導体の結晶軸とは実質的には無関係であるという利点をもたらす。それゆえに、本発明に係るデバイスは、実質的に偏向に関係がない。
【0110】
本発明は、多くの異なるアプリケーションのために有利に適用されうる。そしてそれぞれのアプリケーションにおいて適用できる的確な設定は、当業者の能力の範囲内である。想定されるいくつかのアプリケーションを以下に示す。
(1)Tbit/秒及びサブTbit/秒の自由空間RFシリアル通信
サブTbit/秒又は数Tbit/秒のビットレートのデジタルデータストリームは、一連のRF信号として伝送され、そしてシーケンスにおけるそれぞれの信号は単一のデータビットを示す。本発明は、ワイヤレス信号によるデジタルデータシリアルストリームキャリアを光信号へ検出/コヒーレント符号化することを可能にする。そしてそれは、公知の方法で扱われ、そのためデータはこの光信号から読み出される。
(2)高周波数光通信
一般に、THzの範囲までの高周波ワイヤレスRF信号は直接光信号へ符号化されてよく、それらはファイバーでの有線ネットワークにおいて伝送される。通信プロトコルはアナログであってもデジタルであってもよい。このように、中間での信号変換が必要ない。
(3)THz分光法及び検出
THz分光情報は、THzスペクトルに簡単に変換して分析できる「サイドバンド」の形の光「プローブ」信号に符号化される。
(4)軍事的利用
秘密通信やTHzソースの検出等。
(5)THz放射の汎用室温検出器
本発明に基づいて、汎用THz検出器は簡単に製造されうる。そして、内部構成のクリティカルな配置を必要としない。
(6)THz信号移相検出器
プレバイアスの印加によって、入力されるTHz信号の絶対値だけではなく、位相をも検出することができる(が、そのときは偏向依存となる)。ここで、デバイスは、入力されるTHz信号の偏向を測定することにも用いられうる。図13Cに関して記述された実施形態の説明を参照のこと。
(7)THzソースへの光ソースの同期
提案された方法は、例えばモードロックされたレーザー(固体レーザー、ガスレーザー、ファイバーレーザー等)の半導体可飽和吸収体における、例えば自由電子レーザー(FEL)やシンクロトロン(マスターソース)といったTHzソースからのTHz入力による損失の瞬間的な変調に用いられてもよい。
【0111】
このように、効果はモードロックされたレーザーの「モード引抜き」によるモードロックレーザーのFEL又はシンクトロンへの同期(スレーブ化)に用いられる。それゆえ、FEL又はシンクトロンからのTHzパルスは、THzマスターソースの与えられた繰り返し率によって、時間同期される。そして、スレーブのモードロックレーザーは十分に同一に近くなる。このような時間同期は、FELとシンクロトロンの多くの科学的な実験にとって重要である。
【0112】
望ましい実施形態において、本発明は、これらのアプリケーションの一つ以上に適合された信号変調器を提供すると同様に、これらのアプリケーションの一つ以上の目的の発明に係る信号変調器の使用を提供する。
【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0114】
110・・・半導体構造、112・・・半導体ナノ構造部、114・・・無線周波数受信部、120・・・導波路構造、121・・・第1光入力インターフェイス、122・・・第2光入力インターフェイス、201・・・光信号、202・・・RF信号、203・・・光出力信号、205・・・光信号、210・・・RF信号、1201・・・光符号器、1202・・・変調器、1204・・・増幅器、1206・・・光移相器、1211・・・入力ポート、1212・・・第1アーム、1213・・・第2アーム、1214・・・結合ポイント、1222・・・RF変調信号、1231・・・光入力信号、1232・・・出力ポート、1233・・・反射光、1312・・・電極、1322・・・電極、1332・・・電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数を有する光入力信号(201)を変調する方法であって、
(a)半導体ナノ構造領域であって、前記半導体ナノ構造領域へと結合される前記光入力信号の一部を吸収できる複数の半導体ナノ構造部(112a,112b)を有する前記半導体ナノ構造領域と、
(b)第1光インターフェイス(121)と、
(c)変調光出力信号(203)の形で、前記光入力信号の吸収されなかった部分が前記半導体ナノ構造領域から外に結合される第2光インターフェイス(122)と、
(d)第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号(202)を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部(114)と
を有する半導体構造(110)における半導体ナノ構造領域(112)に、前記第1光インターフェイス(121)を通して前記光入力信号を結合する手段と、
前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記無線周波数受信部へと供給し、かつ、一時的に前記光入力信号とオーバーラップして前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域に結合させて、前記半導体ナノ構造領域を越えて時間依存電界(210)を供給し、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって前記光入力信号の前記第1周波数における前記半導体ナノ構造領域における吸収を変化させる手段と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を、前記第2光インターフェイスを通して結合して前記変調光出力信号を供給する手段と
を備える方法。
【請求項2】
前記半導体構造110はハードワイヤードRF変調信号を受信するために接続された電極を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無線周波数受信部によって促進される低損失結合は、前記無線周波数受信部における反射防止コーティング又はインピーダンス整合層を設けることによって得られる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記変調無線周波数信号は、無線周波数分光プロセス、無線周波数センシングプロセス、又は、無線周波数イメージングプロセスからの出力である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2周波数は5GHzから50THzの範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2周波数は5GHzから20THzの範囲である請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光入力信号及び前記無線周波数変調信号は、前記半導体構造の中を共に伝搬する請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体構造における前記光入力信号の群速度は、前記無線周波数変調信号の群速度と同一又は実質的に同一である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1周波数を有する光出力信号(203)を、光入力信号(201)と第2周波数を有するワイヤレス無線周波数変調信号(202a,202b,202c)とに基づいて供給する信号変調器であって、
前記光入力信号の一部を吸収する複数の半導体ナノ構造部(112a,112b)を有する半導体ナノ構造領域(112)と、
前記光入力信号を前記半導体ナノ構造領域へと結合する第1光インターフェイス(121)と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を前記半導体ナノ構造領域から外に結合させて前記光出力信号を生成する第2光インターフェイス(122)と、
前記第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号(202)を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部(114)と
を有する半導体構造110を備える信号変調器。
【請求項10】
前記低損失結合は、前記半導体ナノ構造領域と前記無線周波数受信部との間に一の低ドーピングレベル又は複数の低ドーピングレベルを有する層のみを設けることで得られる請求項9に記載の信号変調器。
【請求項11】
前記低損失結合は、前記無線周波数受信部(114)に反射防止コーティング又はインピーダンス整合層を設けることによって得られる請求項9に記載の信号変調器。
【請求項12】
前記信号変調器の前記無線周波数受信部(114)に、前記第2周波数の前記ワイヤレス無線周波数変調信号を供給する無線周波数エミッタをさらに備える請求項9に記載の信号変調器。
【請求項13】
前記無線周波数エミッタは、光伝導スイッチ(オーストンスイッチ)、光励起非線形水晶、ガスレーザー、自由電子レーザー、光ミキサー又は無線周波数ミキサー、ガンダイオード、ショットキーダイオード、及び、量子カスケードレーザーの1つである請求項9に記載の信号変調器。
【請求項14】
光入力信号(1231)をワイヤレス無線周波数変調信号(1222)で符号化する干渉計光符号器(1201)であって、
請求項9に記載の信号変調器を有する第1の干渉計アーム(1212)と、
内部で光信号の大きさを調整することができる光減衰器又は光増幅器(1204)に結合されている光移相器(1206)であって、内部で光信号の位相を調整することができる光移相器(1206)を有する第2の干渉計アーム(1213)と、
前記入力信号1231を第1信号部及び第2信号部に分割して、それぞれを前記第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)に入力させる入力ポート及びスプリッター(1211)と、
前記第1アームからの出力と前記第2アームからの出力と結合させる光出力ポート(1214)と
を備える干渉計光符号器。
【請求項1】
第1周波数を有する光入力信号(201)を変調する方法であって、
(a)半導体ナノ構造領域であって、前記半導体ナノ構造領域へと結合される前記光入力信号の一部を吸収できる複数の半導体ナノ構造部(112a,112b)を有する前記半導体ナノ構造領域と、
(b)第1光インターフェイス(121)と、
(c)変調光出力信号(203)の形で、前記光入力信号の吸収されなかった部分が前記半導体ナノ構造領域から外に結合される第2光インターフェイス(122)と、
(d)第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号(202)を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部(114)と
を有する半導体構造(110)における半導体ナノ構造領域(112)に、前記第1光インターフェイス(121)を通して前記光入力信号を結合する手段と、
前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記無線周波数受信部へと供給し、かつ、一時的に前記光入力信号とオーバーラップして前記ワイヤレス変調無線周波数信号を前記半導体ナノ構造領域に結合させて、前記半導体ナノ構造領域を越えて時間依存電界(210)を供給し、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)によって前記光入力信号の前記第1周波数における前記半導体ナノ構造領域における吸収を変化させる手段と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を、前記第2光インターフェイスを通して結合して前記変調光出力信号を供給する手段と
を備える方法。
【請求項2】
前記半導体構造110はハードワイヤードRF変調信号を受信するために接続された電極を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無線周波数受信部によって促進される低損失結合は、前記無線周波数受信部における反射防止コーティング又はインピーダンス整合層を設けることによって得られる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記変調無線周波数信号は、無線周波数分光プロセス、無線周波数センシングプロセス、又は、無線周波数イメージングプロセスからの出力である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2周波数は5GHzから50THzの範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2周波数は5GHzから20THzの範囲である請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光入力信号及び前記無線周波数変調信号は、前記半導体構造の中を共に伝搬する請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体構造における前記光入力信号の群速度は、前記無線周波数変調信号の群速度と同一又は実質的に同一である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1周波数を有する光出力信号(203)を、光入力信号(201)と第2周波数を有するワイヤレス無線周波数変調信号(202a,202b,202c)とに基づいて供給する信号変調器であって、
前記光入力信号の一部を吸収する複数の半導体ナノ構造部(112a,112b)を有する半導体ナノ構造領域(112)と、
前記光入力信号を前記半導体ナノ構造領域へと結合する第1光インターフェイス(121)と、
前記光入力信号の吸収されなかった部分を前記半導体ナノ構造領域から外に結合させて前記光出力信号を生成する第2光インターフェイス(122)と、
前記第2周波数を有するワイヤレス変調無線周波数信号(202)を前記半導体ナノ構造領域へと低損失で結合させやすくする無線周波数受信部(114)と
を有する半導体構造110を備える信号変調器。
【請求項10】
前記低損失結合は、前記半導体ナノ構造領域と前記無線周波数受信部との間に一の低ドーピングレベル又は複数の低ドーピングレベルを有する層のみを設けることで得られる請求項9に記載の信号変調器。
【請求項11】
前記低損失結合は、前記無線周波数受信部(114)に反射防止コーティング又はインピーダンス整合層を設けることによって得られる請求項9に記載の信号変調器。
【請求項12】
前記信号変調器の前記無線周波数受信部(114)に、前記第2周波数の前記ワイヤレス無線周波数変調信号を供給する無線周波数エミッタをさらに備える請求項9に記載の信号変調器。
【請求項13】
前記無線周波数エミッタは、光伝導スイッチ(オーストンスイッチ)、光励起非線形水晶、ガスレーザー、自由電子レーザー、光ミキサー又は無線周波数ミキサー、ガンダイオード、ショットキーダイオード、及び、量子カスケードレーザーの1つである請求項9に記載の信号変調器。
【請求項14】
光入力信号(1231)をワイヤレス無線周波数変調信号(1222)で符号化する干渉計光符号器(1201)であって、
請求項9に記載の信号変調器を有する第1の干渉計アーム(1212)と、
内部で光信号の大きさを調整することができる光減衰器又は光増幅器(1204)に結合されている光移相器(1206)であって、内部で光信号の位相を調整することができる光移相器(1206)を有する第2の干渉計アーム(1213)と、
前記入力信号1231を第1信号部及び第2信号部に分割して、それぞれを前記第1アーム(1212)及び第2アーム(1213)に入力させる入力ポート及びスプリッター(1211)と、
前記第1アームからの出力と前記第2アームからの出力と結合させる光出力ポート(1214)と
を備える干渉計光符号器。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2013−502604(P2013−502604A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523203(P2012−523203)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050200
【国際公開番号】WO2011/015200
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509349897)デンマークス テクニスク ユニヴェルジテイト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050200
【国際公開番号】WO2011/015200
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509349897)デンマークス テクニスク ユニヴェルジテイト (2)
【Fターム(参考)】
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