説明

ワイヤレス送信用カテーテル無線周波アダプタ

【課題】電気生理学的(EP)マッピングシステムとのワイヤレス交信のためのカテーテルシステムを提供する。
【解決手段】カテーテルシステムは、カテーテル、カテーテルアダプタ、および無線周波受信モジュールを含む。カテーテルは、細長い本体の遠位部分に配置された先端電極を含めて心電計(ECG)信号を検出する複数個のマッピング電極と、心電計の信号を実質上検出しないように複数個のマッピング電極から離れてその細長い本体上に配置されている基準電極とを含む。カテーテルはハンドル部を含む。カテーテルアダプタがそのハンドル部に取り付けられる。カテーテルアダプタは、検出されたECG信号を受信し、処理し、送信するためのRF送信モジュールを含む。基準電極は、無線周波(RF)送信モジュールに基準信号を与える。RF受信モジュールは、送信されたECG信号を受信する。RF受信モジュールはEPマッピングシステムに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年7月23日出願の「カテーテル無線周波アダプタ(Catheter radio frequency adapter)」という名称の米国仮特許出願第61/135,837号に関する特典を請求し、この仮特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、全般的には電気生理学的(EP)マッピングシステムおよびカテーテル装置に関し、より具体的にはカテーテルと電気生理学的マッピングシステムとの間のワイヤレス交信を行うための無線周波(RF)アダプタに関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、体の内部の領域にアクセスするための医療処置を行う医師によって広く使用される可撓性管状装置である。診断の目的の場合、一般にカテーテルはケーブルによってEPマッピングシステムに接続されている。カテーテルは、その遠位域に複数個の電極を含む。カテーテルの電極は、カテーテルの遠位域を取り囲む組織由来の信号を検出し、その検出された信号をEPマッピングシステムに送る。EPマッピングシステムは、その検出された信号を使用してカテーテルの遠位域を取り囲む組織のマップを作成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のところ、カテーテルはワイヤレスでEPマッピングシステムと交信することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、電気生理学的(EP)マッピングシステムとのワイヤレス交信のためのカテーテルシステムである。このカテーテルシステムは、カテーテル、カテーテルアダプタ、および無線周波受信モジュールを含む。このカテーテルは、遠位端および近位端を有する細長い本体と、その細長い本体の遠位部分に配置されている先端電極を含む、心電計(ECG)の信号を検出する複数個のマッピング電極と、心電計(ECG)の信号を実質上検出しないようにその複数個のマッピング電極から離れてその細長い本体上に配置されている基準電極とを含む。カテーテルはハンドル部を含む。そのハンドル部にカテーテルアダプタが取り付けられる。カテーテルアダプタは、その検出されたECG信号を受信し、処理し、送信するためのRF送信モジュールを含む。基準電極は、無線周波(RF)送信モジュールに基準信号を与える。RF受信モジュールは、送信されたECG信号を受信する。RF受信モジュールは、EPマッピングシステムに結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明のシステム100を示すブロック図である。
【図2】本発明のRF送信モジュール120の一実施形態のブロック図である。
【図3】本発明のRF受信モジュール130の一実施形態のブロック図である。
【図4】本発明の自己創出性基準方式を示すブロック図である。
【図5】カテーテル110の実施形態の外観図を示している。
【図6】幾つかのそれぞれ異なるRF受信モジュールを含む単一の受信ユニット602が、幾つかの個別の送信ユニットと交信する本発明のシステムの実施形態600を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のカテーテルRFアダプタは、診断用カテーテルがEPマッピングシステムとワイヤレスで交信することを可能にする。診断用カテーテルをEPマッピングシステムに取り付けるケーブルなしに医師はカテーテルをより容易に操作し、制御することができることになる。
【0008】
本発明のカテーテルRFアダプタは、RF送信モジュールおよびRF受信モジュールを含む。RF送信モジュールは、カテーテルのハンドル部にしっかり取り付けられるように構成されている。RF受信モジュールは、EPマッピングシステムの前端部に結合されている。
【0009】
図1は、本発明のシステム100を示すブロック図である。システム100は、カテーテル110、RF送信モジュール120、RF受信モジュール130、およびEPマッピングシステム140を含む。
【0010】
カテーテル110は遠位域を含む。カテーテル遠位域は、その遠位域の長手方向の異なる区画中に間隔をおいて位置決めされた電極の帯域を含む。カテーテルの先端もまた、電極を含むことができる。カテーテルの先端電極とカテーテルの電極の帯域とは、心電計(ECG)信号をRF送信モジュール120へ送る。この先端電極と電極の帯域の数とがRF送信モジュール120に出力される信号の数を決め、そして次にワイヤレス送信に使用されるRFチャンネルの数を決める。本発明の一実施形態ではカテーテル110は、20個の信号をRF送信モジュール120に出力する。そのRF送信モジュール120はこの20個の信号を処理し、その処理された信号を20個の対応するRFチャンネルに送信する。カテーテル110はまた、ECG信号を検知する電極の最後の帯域から遠く離れて位置する基準帯状電極、すなわちカテーテルの遠位端から最も遠い帯状電極を含む。
【0011】
図2は、本発明のRF送信モジュール120の一実施形態のブロック図である。この実施形態ではRF送信モジュール120は、マルチプレクサ210、増幅器230、アナログ−デジタル(A/D)変換器240、マイクロコントローラ250、およびRF送信器260を含む。RF送信モジュール120はカテーテル110のハンドル部にしっかり取り付けられる。RF送信モジュール120は、マルチプレクサ210への入力信号およびカテーテル110の基準電極への入力信号のそれぞれにDC電圧を与えるためのバッファ270をさらに含む。このバッファ270により、マルチプレクサ210への入力信号および基準電極からの信号は、それぞれ事実上同一のDC電圧成分を有する。
【0012】
マルチプレクサ210は、その20個の入力部においてカテーテル110から並行して20個のECGアナログ信号を受信し、単一ECGアナログ信号を出力する。
【0013】
増幅器230は、その入力部において単一ECGアナログ信号および基準電極からの信号を受信する。増幅器230は、ECGアナログ信号と基準電極からの信号との差をワイヤレス送信に適したレベルまで増幅し、その増幅したアナログ信号をA/D変換器240に出力する。
【0014】
A/D変換器240は、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をマイクロコントローラ250に出力する。
【0015】
マイクロコントローラ250は、デジタル信号を符合化してワイヤレス送信に適したフォーマットにする。一実施形態ではデジタル信号を符合化する際に誤り訂正符合もまた使用される。マイクロコントローラ250は、その符合化されたデジタル信号をRF送信器260に出力する。マイクロコントローラ250はまた、マルチプレクサ210のオペレーションを制御するためにマルチプレクサ制御インターフェイス信号252を出力する。
【0016】
RF送信器260は、符合化されたデジタル信号を受信し、それを対応するRFチャンネルにRF信号として空気媒体を通じて送信する。
【0017】
図3は、本発明のRF受信モジュール130の一実施形態のブロック図である。この実施形態ではRF受信モジュール130は、RF受信器310、マイクロコントローラ320、マルチチャンネルデジタル−アナログ(D/A)変換器330を含む。RF受信モジュール130はまた、状況と、もしあればエラーとを表示するための一組のインジケータ328を含む。
【0018】
RF受信器310は、空気媒体を通じてRF信号を、その対応するRFチャンネルから受信し、このデジタル信号をマイクロコントローラ320に出力する。
【0019】
マイクロコントローラ320はこのデジタル信号を復号化し、その復号化したデジタル信号をマルチチャンネルD/A変換器330に出力する。
【0020】
マルチチャンネルD/A変換器330は、このデジタル信号をアナログ信号に変換する。マルチチャンネルD/A変換器330はまた、このアナログ信号を逆多重化して20個のアナログ信号にし、次いでEPマッピングシステムに出力する。
【0021】
ECG信号を測定するには基準信号が必要である。ケーブルによりカテーテルをEPシステムに接続する既存のカテーテルシステムでは、EPシステムにケーブルにより直接に接続されたパッチを介しての患者の体表面から測定される信号を基準信号として使用する。EPシステムとの交信がワイヤレスである本発明では、新規な自己創出性基準方式(self-creating reference scheme)を用いて基準信号を得る。
【0022】
図4は、本発明の自己創出性基準方式を示すブロック図である。電圧フォロアとして構成される演算増幅器を含むバッファ270は、カテーテルの電極のそれぞれにDC電圧Vbiasを与え、この電極にはカテーテル上にその他の電極の最後尾のものから遠い距離に位置する基準電極も含まれる。この距離は、カテーテルの遠位部分が心臓の内部に置かれる場合、その基準電極が心臓の外側に心臓から離れて位置するような十分大きな距離である。一実施形態ではこの距離は24センチメートルである。一実施形態ではVbiasは約1.5ボルトである。組織のインピーダンスは約100オームから120オームであるので、10キロオームの抵抗器を使用してECG信号のそれぞれを20個の電極から絶縁する。
【0023】
バッファ270が基準電極へDC電圧Vbiasを送りだすせいで、基準電極からの信号は事実上DC電圧Vbiasに等しく、それは仮想基準として働く。
【0024】
マルチプレクサ210は、その20個の入力部においてカテーテル110から並行して20個のECGアナログ信号を受信し、単一ECGアナログ信号を出力する。
【0025】
増幅器230は差動増幅器を含む。差動増幅器は、そのプラス入力部において単一ECGアナログ信号を受信し、またそのマイナス入力部において基準電極からの信号を受信する。増幅器230は2つの信号の差を増幅し、DC成分を実質上有さない増幅されたECGアナログ信号を出力する。
【0026】
図5は、カテーテル110の実施形態の外観図を示す。この実施形態ではカテーテル110は、ECG信号を検出するための先端電極502および3個の帯状電極504を有する。カテーテル110は、増幅器230に基準信号を与えるための基準帯域510をさらに含む。基準帯域は、最後の帯状電極504、すなわちカテーテル110の遠位端から最も遠い帯状電極から距離Lに位置する。一実施形態ではLは24cmに等しい。
【0027】
図6は、幾つかの個々のRF受信モジュールを含む単一の受信ユニット602が幾つかの個別の送信ユニットと交信する本発明のシステムの実施形態600を示す。単一の受信ユニット602は、受信した信号の源を、特定のRFチャンネル周波数、データアドレスパケット、送信ユニットの固有の識別に基づいて識別することができる。ソフトウェア環境設定を用いて送信カテーテルと受信ユニットを対にする。これら送受信器は、2.400GHzから2.525GHzの間の周波数で動作させることができる。
【0028】
本発明を幾つかの実施形態に関して述べてきたが、通常の当業熟練者は本発明が上記実施形態に限定されず、別添の特許請求の範囲の精神および範囲の内で修正および変更して実施することができることを認めるはずである。したがってこの記述は限定するものではなく、例示的なものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学的(EP)マッピングシステムとのワイヤレス交信のためのカテーテルシステムであって、
遠位端および近位端を有する細長い本体、
前記細長い本体の遠位部分上に配置されている先端電極を含む、心電計(ECG)信号を検出する複数個のマッピング電極、
心電計(ECG)の信号を実質上検出しないように前記複数個のマッピング電極から離れて前記細長い本体上に配置されている基準電極、および
ハンドル部
を含むカテーテルと、
前記検出されたECG信号を受信、処理、かつ送信するための無線周波(RF)送信モジュールを含む、前記ハンドル部に取り付けられたカテーテルアダプタと
を備え、
前記基準電極が前記無線周波(RF)送信モジュールに基準信号を与える、
カテーテルシステム。
【請求項2】
前記送信されたECG信号を受信するためのRF受信モジュールをさらに含み、前記RF受信モジュールが前記EPマッピングシステムに結合されている、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項3】
前記基準電極が、前記複数個のマッピング電極の最後尾のマッピング電極から約24センチメートルの距離をあけて前記細長い本体上に配置され、前記最後尾のマッピング電極が前記細長い本体の前記遠位端から最も遠いマッピング電極である、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項4】
前記RF送信モジュールが、複数個の入力部を有するマルチプレクサを含み、前記入力部のそれぞれが、前記複数個のマッピング電極の対応するマッピング電極からのマッピング電極信号を受信し、前記マルチプレクサがアナログ信号を出力する、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項5】
前記RF送信モジュールが、前記基準電極に、かつ前記マッピング電極信号のそれぞれに直流電圧を与えるためのバッファをさらに含む、請求項4に記載のカテーテルシステム。
【請求項6】
前記基準電極によって与えられる前記基準信号が実質的に前記直流電圧に等しい、請求項5に記載のカテーテルシステム。
【請求項7】
前記RF送信モジュールが、前記マッピング電極信号を前記バッファから絶縁するための高インピーダンスの複数個の抵抗器をさらに含む、請求項5に記載のカテーテルシステム。
【請求項8】
前記RF送信モジュールが増幅器をさらに含み、前記増幅器が、前記マルチプレクサからの前記アナログ信号と前記基準信号とを受信し、かつ実質的に直流成分を有さない増幅されたアナログ信号を出力する、請求項4に記載のカテーテルシステム。
【請求項9】
前記RF送信モジュールが、アナログ−デジタル変換器、マイクロコントローラ、およびRF送信器をさらに含む、請求項8に記載のカテーテルシステム。
【請求項10】
前記RF送信モジュールが、2.400GHzから2.525GHzの間の周波数で動作する、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項11】
前記RF受信モジュールが、受信ユニット中に含まれる複数個のRF受信モジュールの一つであり、前記複数個のRF受信モジュールが複数個の対応するRF送信モジュールと交信する、請求項2に記載のカテーテルシステム。
【請求項12】
前記受信ユニットが、受信した信号の源を、特定のRFチャンネル周波数と、データアドレスパケットと、前記複数個のRF送信モジュールの或るRF送信モジュールの固有の識別との少なくとも1つに基づいて識別することができる、請求項11に記載のカテーテルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−528955(P2011−528955A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520200(P2011−520200)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/051560
【国際公開番号】WO2010/011846
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(500232466)セント ジュード メディカル インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】