説明

ワイヤロープ固定金具

【課題】凹溝の内周に設けた先鋭突起をワイヤロープのストランド間に食い込ませ、受け金具又は押さえ金具とワイヤロープの固定力を大幅に向上させ、ワイヤロープの長さ方向の荷重に対して必要とする固定力が得られるワイヤロープ固定金具を提供する。
【解決手段】受け金具2と押さえ金具3をボルトで締結することにより、この受け金具2と押さえ金具3の間に挟みこんだワイヤロープAを固持するようにしたワイヤロープ固定金具1であり、前記受け金具2と押さえ金具3の対向面における何れか一方にワイヤロープAが収まる凹溝12と、同他方に凹溝12内へワイヤロープAを押圧するワイヤ押さえ突部13を形成し、前記凹溝12の内周面にワイヤロープAのストランド間に食い込む先鋭突起14を設け、ワイヤロープAを挟圧することで先鋭突起14をワイヤロープAのストランド間に食い込ませるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープを地面に固定したり、2本のワイヤロープをその交差部で相互に結合するために用いるワイヤロープ固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、傾斜地の安定を図って斜面の崩壊や浮き石の落下を防ぐための斜面安定化工法として、傾斜地に多数のワイヤロープを縦横に張り巡らす工法が知られている。
【0003】
上記のようなワイヤロープを用いた斜面安定化工法は、ワイヤロープの端部を地面に固定化すると共に、ワイヤロープの交差部分を相互に結合したり、この結合部分を地面に固定化する必要があり、このため、ワイヤロープ固定金具が使用されている。
【0004】
このようなワイヤロープ固定金具は、斜面安定化のために、地面に対して安定的に固定することができ、しかも、固持したワイヤロープの荷重に対して強固な固定力が要求される。
【0005】
従来、ワイヤロープの交差部分を相互に結合するワイヤロープ固定金具は、平面的に略等しい形状とした受け金具と押さえ金具からなり、受け金具と押さえ金具の両端にボルト孔を設け、前記受け金具と押さえ金具の対向面にワイヤロープが収まる凹溝をクロスする配置で形成し、前記受け金具と押さえ金具の対向面で相手の凹溝と対向する位置にワイヤ押さえ突部を形成し、受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを、両端のボルト孔に挿通したボルトとナットの締め付けで固持するようになっている。
【0006】
このようなワイヤロープ固定金具を地面に固定するには、一端側のボルトが地面に埋設したアンカーボルトになる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−30039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来のワイヤロープ固定金具において、受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープとワイヤロープ固定金具の固定力は、ボルトとナットの締め付け力により、溝と突部で上下から挟まれることで得られるが、ワイヤロープが収まる凹溝が断面コ字形や台形の浅い溝になっているため、受け金具又は押さえ金具とワイヤロープの凹溝における固定力は、凹溝に対するワイヤロープの接触力のみとなり、このため、ボルトとナットの締め付け力が十分でないと前記固定力が低下し、特にワイヤロープの長さ方向の荷重に対して滑りか発生し、ワイヤロープの必要とする固定力が得られない事態が発生するという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、凹溝の内周に設けた先鋭突起をワイヤロープのストランド間に食い込ませるようにすることで、受け金具又は押さえ金具とワイヤロープの固定力を大幅に向上させることができ、ワイヤロープの長さ方向の荷重に対して必要とする固定力が得られるワイヤロープ固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するため、この発明は、受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面における何れか一方又は両方に、ワイヤロープが収まる凹溝を形成し、この凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けた構成を採用したものである。
【0010】
このような構成のワイヤロープ固定金具は、ワイヤロープを凹溝の部分において受け金具と押さえ金具間で挟み、受け金具と押さえ金具の両端部をボルトの締め付けで締結してワイヤロープを挟圧すると、先鋭突起がワイヤロープのストランド間に食い込むことで、ワイヤロープの必要とする固定力が得られることになる。
【0011】
また、受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面における何れか一方にワイヤロープが収まる凹溝と、同他方に凹溝内にワイヤロープを押圧するワイヤ押さえ突部を形成し、前記凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けた構成を採用したものである。
【0012】
上記のように、ワイヤ押さえ突部を設けると、受け金具と押さえ金具の締結によってワイヤロープを確実に凹溝内に押し込むことができ、先鋭突起をワイヤロープのストランド間に確実に食い込ませることができる。
【0013】
更に、受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面にワイヤロープが収まる凹溝をクロスする配置で形成し、前記受け金具と押さえ金具の対向面で相手の凹溝と対向する位置にワイヤ押さえ突部を形成し、前記凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けた構成を採用したものである。
【0014】
このようにすると、ワイヤロープの交差部分を固定化することができ、しかも、ワイヤ押さえ突部の高さによって、ワイヤロープの交差部分が直接挟圧されることがないので、ワイヤロープに損傷を生じさせることがない。
【0015】
上記先鋭突起が凹溝の内周面にこの凹溝の長さ方向に沿って複数が設けられ、各先鋭突起は、凹溝の長さ方向に対して径方向に位置を違えた配置になっているようにすることができる。
【0016】
ここで、上記受け金具と押さえ金具は、平面的に等しい略長円形に形成され、この受け金具と押さえ金具の一端側は、一端側に設けたボルト挿通孔を無ねじとして地中に打ち込んだアンカーボルトに挿通し、受け金具と押さえ金具の上下に位置するようアンカーボルトに螺合したナットの締め付けにより結合し、地面に対する固定部分とする。
【0017】
また、受け金具と押さえ金具の他端側は、押さえ金具に無ねじのボルト挿通孔を設け、受け金具にねじ孔を設け、ボルト挿通孔からねじ孔にボルトをねじ込むことにより、受け金具と押さえ金具の他端側を結合するようになっている。
【0018】
上記受け金具と押さえ金具の対向面で相手の凹溝と対向する位置に設けたワイヤ押さえ突部の先端面は少し凹入し、この凹入底面はワイヤロープのストランドの傾斜に沿うような凹凸面になっている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、ボルトの締結でワイヤロープを固持する受け金具と押さえ金具の対向面における何れか一方又は両方に、ワイヤロープが収まる凹溝を形成し、この凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けたので、ワイヤロープを挟圧することで先鋭突起がワイヤロープのストランド間に食い込み、受け金具又は押さえ金具とワイヤロープの固定力を大幅に向上させることで、ワイヤロープの長さ方向の荷重に対して必要とする固定力が得られ、ワイヤロープの地面への固定が確実に行える。
【0020】
また、凹溝と対向する位置にワイヤ押さえ突部を設けることにより、ワイヤロープの交差部分を直接挟圧することがないので、ワイヤロープに損傷を生じさせることがなくワイヤロープの交差部分を固定化することができ、しかも、複数の先鋭突起を凹溝の長さ方向に対して径方向に位置を違えた配置にすれば、ワイヤロープの挟圧時に先鋭突起がワイヤロープの異なった位置のストランド間に食い込み、受け金具又は押さえ金具とワイヤロープの固定力を一段と向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0022】
図示のように、ワイヤロープ固定金具1は、受け金具2と押さえ金具3をボルトで締結することにより、この受け金具2と押さえ金具3の間に挟みこんだワイヤロープAを固持するものであり、受け金具2と押さえ金具3は平面的に等しい略長円形に形成され、この受け金具2と押さえ金具3の一端側は、それぞれの一端側に設けたボルト挿通孔4、5を無ねじとし、これを地中に打ち込んだアンカーボルト6に挿通し、受け金具2と押さえ金具3の上下に位置するようアンカーボルト6に螺合したナット7、8の締め付けにより結合し、ワイヤロープ固定金具1の地面に対する固定部分となっている。
【0023】
また、受け金具2と押さえ金具3の他端側は、押さえ金具3に無ねじのボルト挿通孔9を設け、受け金具2にねじ孔10を設け、ボルト挿通孔9からねじ孔10にボルト11をねじ込むことにより、受け金具2と押さえ金具3の他端側を結合するようになっている。
【0024】
上記受け金具2と押さえ金具3の対向面のそれぞれに、この受け金具2と押さえ金具3の長さ方向に対して傾斜する凹溝12がクロスする配置で形成され、更に、相手の凹溝12と対向する位置にワイヤ押さえ突部13が突設されている。
【0025】
上記凹溝12は、図4のように、断面略半円形に凹入してワイヤロープAが収まるように形成され、この凹溝12の内周面にワイヤロープAのストランド間に食い込む先鋭突起14が設けられている。
【0026】
この先鋭突起14は、先端が受け金具2又は押さえ金具3の表面と略等しい高さの略円錐形に形成され、凹溝12の長さ方向に対して径方向に位置を違えた配置で長さ方向に所定の間隔で複数が設けられている。
【0027】
上記ワイヤ押さえ突部13は、相手凹溝12と同程度の幅を有し、同じ側の凹溝12で両側に分断された状態で相手凹溝12の長さ方向に沿った配置となり、このワイヤ押さえ突部13の先端面は少し凹入し、この凹入底面はワイヤロープAのストランドの傾斜に沿うような凹凸面13aになっている。
【0028】
このワイヤ押さえ突部13の高さは、相手凹溝12とでワイヤロープAを挟んだ時、クロスするワイヤロープAの交差部が接触しないか、接触しても大きな圧縮力が加わらない程度に設定されている。
【0029】
この発明のワイヤロープ固定金具1は、上記のような構成であり、ワイヤロープAの交差部分を地面に固定するには、ワイヤロープAの交差部分を受け金具2と押さえ金具3で上下から挟みこみ、下位のワイヤロープAを受け金具2の凹溝12に納めて押さえ金具3のワイヤ押さえ突部13で上から押さえ、また、上位のワイヤロープAを押さえ金具3の凹溝12に納めて受け金具2のワイヤ押さえ突部13で下から支持し、図3(b)のように、この状態で受け金具2と押さえ金具3の一端側に設けたボルト挿通孔4、5を地中に予め打ち込んだアンカーボルト6に挿通し、受け金具2と押さえ金具3の上下に位置するようアンカーボルト6に螺合したナット7、8の締め付けにより結合し、ワイヤロープ固定金具1の地面に対する固定部分とする。
【0030】
また、受け金具2と押さえ金具3の他端側において、図2(b)で示したように、押さえ金具3のボルト挿通孔9から受け金具2のねじ孔10にボルト11をねじ込むことにより、受け金具2と押さえ金具3の他端側を結合する。
【0031】
上記のように、ワイヤロープAを挟み込んだ受け金具2と押さえ金具3の両端をボルト11及びアンカーボルト6とナット7、8によって締め付けると、ワイヤ押さえ突部13がワイヤロープAを凹溝12に押し込むことになり、ワイヤ押さえ突部13と凹溝12でワイヤロープAを挟圧してワイヤロープ固定金具1とワイヤロープAを固定化する。
【0032】
このとき、ワイヤロープAを挟圧することで先鋭突起14がワイヤロープAのストランド間に食い込み、同時にワイヤ押さえ突部13に設けた凹凸面13aがワイヤロープAのストランドをその傾斜に沿うように押圧して強固な圧接力が発生し、これにより、受け金具2又は押さえ金具3とワイヤロープAの固定力を大幅に向上させることで、ワイヤロープAの長さ方向の荷重に対して必要とする固定力が得られ、図5で示した使用例のように、傾斜地の安定を図って斜面の崩壊や浮き石の落下を防ぐために、斜面に縦横のクロス状に配置したワイヤロープAの地面への固定が確実に行えることになる。
【0033】
なお、ワイヤロープ固定金具1は、図示のようなワイヤロープAの交差部分を地面に固定する構造に限定されるものではなく、ワイヤロープAの交差部分を単に結合するだけのものや、単条のワイヤロープAの地面への固定用として形成することができる。
【0034】
ちなみに、ワイヤロープAの交差部分を単に結合する場合は、受け金具2と押さえ金具3の両端を図示のボルト11で結合する構造とすればよい。
【0035】
また、単条のワイヤロープAの地面への固定用としては、受け金具2と押さえ金具3の対向面の一方又は両方に図示のような一本の凹溝12を設け、凹溝12内のワイヤロープAを受け金具又2は押さえ金具3で押圧する構造としたり、受け金具2と押さえ金具3の対向面の一方に一本の凹溝12と他方にワイヤ押さえ突部13を対向するよう設け、凹溝12とワイヤ押さえ突部13でワイヤロープAを押圧する構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係るワイヤロープ固定金具の分解斜視図
【図2】(a)はワイヤロープ固定金具の組み立て状態を示す斜視図、(b)は同縦断正面図
【図3】(a)はワイヤロープ固定金具の使用状態を示す平面図、(b)は縦断正面図
【図4】図3(a)の矢印a−aに沿った縦断側面図
【図5】ワイヤロープ固定金具の使用状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0037】
1 ワイヤロープ固定金具
2 受け金具
3 押さえ金具
4、5 ボルト挿通孔
6 アンカーボルト
7、8 ナット
9 ボルト挿通孔
10 ねじ孔
11 ボルト
12 凹溝
13 ワイヤ押さえ突部
14 先鋭突起
A ワイヤロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面における何れか一方又は両方に、ワイヤロープが収まる凹溝を形成し、この凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けたことを特徴とするワイヤロープ固定金具。
【請求項2】
受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面における何れか一方にワイヤロープが収まる凹溝と、同他方に凹溝内にワイヤロープを押圧するワイヤ押さえ突部を形成し、前記凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けたことを特徴とするワイヤロープ固定金具。
【請求項3】
受け金具と押さえ金具をボルトで締結することにより、この受け金具と押さえ金具の間に挟みこんだワイヤロープを固持するようにしたワイヤロープ固定金具において、前記受け金具と押さえ金具の対向面にワイヤロープが収まる凹溝をクロスする配置で形成し、前記受け金具と押さえ金具の対向面で相手の凹溝と対向する位置にワイヤ押さえ突部を形成し、前記凹溝の内周面にワイヤロープのストランド間に食い込む先鋭突起を設けたことを特徴とするワイヤロープ固定金具。
【請求項4】
上記先鋭突起が凹溝の内周面にこの凹溝の長さ方向に沿って複数が設けられ、各先鋭突起は、凹溝の長さ方向に対して径方向に位置を違えた配置になっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のワイヤロープ固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8093(P2008−8093A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181617(P2006−181617)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(300003721)株式会社ニッタン (2)
【Fターム(参考)】