説明

ワイヤロープ探傷装置

【課題】第1センサ部と第2センサ部とを、操作者の習熟度の如何に拘わらず、常に正規の磁気センサを形成し得る正しい位置関係に配置させるようにした。
【解決手段】本発明は、磁気センサの分割部分である第1センサ部12aが設けられる第1センサベース5と、磁気センサの分割部分である第2センサ部12bが設けられる第2センサベース6との接続手段が、ワイヤロープ1を挟んで互いに対向する第1突起3aと第2突起3b、及び第1延設部7と第2延設部8を含み、第1突起3aと第2突起3bとを左右非対称に配置し、第1延設部7と第2延設部8の形状を、互いに異ならせて設定してある。また本発明は、これらに対応するように、第1突起3aが係合する第1挿通孔7a、第2突起3bが係合する第2挿通孔8aの位置、及び第1延設部7が係合する第1係合溝5b、第2延設部8が係合する第2係合溝5cの形状をそれぞれ設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鋼線を撚り合わせて形成され、エレベータの乗かごや釣り合い重りの懸架等に用いられるワイヤロープの探傷に好適なワイヤロープ探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤロープを使用する機械にあっては一般に、ワイヤロープの端部に構造物が連結される。例えばエレベータでは、ワイヤロープの端部に乗かごや釣り合い重りが連結される。あるいは、ワイヤロープの端部と建屋とを固定するソケットが取り付けられる。
【0003】
このようにエレベータを含む各種機械に活用されるワイヤロープは、鋼線から成る素線を撚った構造となっている。このワイヤロープは、長期間使用されると、素線がシーブやプーリの巻き掛け部において曲げ、及び引っ張りの繰り返し荷重を受ける。このために磨耗し、破断に至ることがある。素線の破断数に基づくワイヤロープの交換基準がJISで定められている。この素線の損傷状態を調査する方法として漏洩磁束法がある。この漏洩磁束法は、ワイヤロープを長手方向に磁化して、破断した素線部分すなわち損傷部から漏洩した磁束を磁気センサで検出して、破断の有無を検査する方法である。したがって、この漏洩磁束法が適用されるワイヤロープ探傷装置は、ワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、漏洩磁束を検出する磁気センサを備えている。
【0004】
このようなワイヤロープ探傷装置として従来、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、複数の磁気センサをワイヤロープの全周に配置し、複数の磁気センサの出力を利用して、ワイヤロープ深部の損傷部を精度よく検出するようにしたものである。
【0005】
また、漏洩磁束法を用いたワイヤロープ探傷装置では、損傷部からの漏えい磁束を検出するために、磁気センサをワイヤロープの表面近傍に配置する必要がある。そのため、構造物にワイヤロープを連結した状態で前述した特許文献1に示されるワイヤロープ探傷装置を使用するに際しては、磁気センサを分割して、この分割されたセンサ部で互いにワイヤロープを挟み込むようにして、磁気センサをワイヤロープの表面近傍に配置することが必要になる。
【0006】
このように磁気センサを分割した構造の従来技術が特許文献2に開示されている。この特許文献2に示される従来技術は、ワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化されるワイヤロープの磁化部分の周方向を覆うように分割配置された第1センサ部と第2センサ部とから成る磁気センサと、第1センサ部が設けられる第1センサベースと、第2センサ部が設けられる第2センサベースとを備えている。第1センサベースと第2センサベースは、ワイヤロープを挟んで対向するように配置されている。第1センサベースは、固定棒等を介して所定位置に設置される治具に取り付けられている。また、この従来技術は、第1センサベースと第2センサベースとを接続する接続手段を備えている。この接続手段は、第1センサベース側に設けられ、ワイヤロープを挟んで対向するように配置される複数の接続具、すなわち一対のフックと、第2センサベースに取り付けた取付ベースに設けられ、前述したフックのそれぞれが係合する複数の係合部、すなわち一対の貫通孔とから成っている。この特許文献2に示される従来技術は、前述したエレベータにおけるように、複数のワイヤロープが隣接している場合でも取り付けることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−292213号公報
【特許文献2】特開2010−210272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した特許文献1に示される従来技術にあっては、ワイヤロープ深部の損傷部を精度よく検出するために、磁気センサとワイヤロープの相対位置を規定する具体的な構成が明らかにされていない。磁気センサとワイヤロープの相対位置が所定の関係に維持されていないと、正確な損傷部の測定ができなくなってしまう。
【0009】
これに対して、特許文献2に示される従来技術は、磁気センサの分割部分である第1センサ部を有する第1センサベース側に設けた一対のフックと、磁気センサの分割部分である第2センサ部を有する第2センサベース側に設けた一対の貫通孔とから成る接続手段を備えており、また、第1センサベースが固定棒、治具等を介して所定位置に設置されることから、磁気センサとワイヤロープの相対位置を所定の関係に維持することができる。しかしながら、この特許文献2に示される従来技術では、操作者の習熟度が低いような場合に、第1センサベースと第2センサベースを正規の接続形態でない誤った形態(例えば一方を逆方向に配置するなど)に接続してしまう虞がある。このような場合には、第1センサベースに設けられる第1センサ部と、第2センサベースに設けられる第2センサ部とから成る磁気センサが、正規の形態に形成されなくなる。しかし、このような場合でも計測は可能となる。したがって、操作者は磁気センサが正規の形態に形成されていないにも拘わらず、そのことに気付かず、結果として不適切な計測が実施されてしまうことになる。
【0010】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、第1センサベースに設けられ磁気センサの一方の分割部分を形成する第1センサ部と、第2センサベースに設けられ磁気センサの他方の分割部分を形成する第2センサ部とを、操作者の習熟度の如何に拘わらず、常に正規の磁気センサを形成し得る正しい位置関係に配置させることができるワイヤロープ探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係るワイヤロープ探傷装置は、ワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化される前記ワイヤロープの磁化部分の周方向を覆うように配置され、前記ワイヤロープの磁化部分に生じる損傷部から漏洩する磁束を検出する磁気センサと、この磁気センサが設けられるセンサベースとを備え、前記センサベースは、前記ワイヤロープを挟んで対向する第1センサベースと第2センサベースとを含み、前記磁気センサは、前記第1センサベースに設けられる第1センサ部と、前記第2センサベースに設けられる第2センサ部とに分割形成され、これらの第1センサ部と第2センサ部を、前記ワイヤロープを挟んで対向するように配置し、前記第1センサベースと前記第2センサベースとを接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ワイヤロープを挟んで互いに対向する複数の接続具と、これらの接続具がそれぞれ係合する複数の係合部とから成るワイヤロープ探傷装置において、前記複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具との配設形態を互いに異ならせて設定し、前記複数の係合部のうちの前記一方の接続具が係合する係合部を、前記一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記複数の係合部のうちの前記他方の接続具が係合する係合部を、前記他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記配設形態は、形状、及び取付位置の少なくとも一方を含むことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、第1センサベースと第2センサベースとを接続する際には、接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具を、接続手段に含まれる複数の係合部のうちの一方の接続具に相応する係合部に係合させるとともに、接続手段に含まれる複数の接続具のうちの前述した一方の接続具とは配設形態が異なる他方の接続具を、接続手段に含まれる複数の係合部のうちの他方の接続具に相応する係合部に係合させたときだけ、第1センサベースと第2センサベースとの接続が可能となる。すなわち、第1センサベースと第2センサベースの接続が可能な接続形態は1つのみであり、第1センサベースと第2センサベースとが、接続具のそれぞれと、係合部のそれぞれを介して接続された状態では、第1センサベースに設けられる第1センサ部と、第2センサベースに設けられる第2センサ部とが正しい位置関係に保たれる。したがって本発明は、第1センサベースに設けられ磁気センサの一方の分割部分を形成する第1センサ部と、第2センサベースに設けられ磁気センサの他方の分割部分を形成する第2センサ部とを、操作者の習熟度の如何に拘わらず、常に正規の磁気センサを形成し得る正しい位置関係に配置させることができる。
【0013】
また本発明は、前記発明において、前記接続手段は、第1接続手段と第2接続手段とを含み、前記第1接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定するとともに、前記第2接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定し、前記第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第1接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第1接続手段に含まれる他方の接続具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる他方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定したことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、接続手段が、第1接続手段と第2接続手段を含むことから、これらの第1接続手段と第2接続手段の双方を介して、より確実に第1センサベースと第2センサベースとを正しい接続形態に接続させることができる。
【0015】
また本発明は、前記発明において、前記第1接続手段に含まれる前記一方の接続具は、前記第1センサベース側に設けられる第1突起から成り、前記第1接続手段に含まれる前記他方の接続具は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第1突起とは配設形態が異なる第2突起から成り、前記第1接続手段に含まれる前記一方の係合部は、前記第2センサベース側に設けられ、前記第1突起が係合する第1挿通孔から成り、前記第1接続手段に含まれる前記他方の係合部は、前記第2センサベース側に設けられ、前記第2突起が係合する第2挿通孔から成り、前記第2接続手段に含まれる一方の接続具は、前記第2センサベース側に設けられ、前記ワイヤロープの伸長方向に対して直交する方向に延設される第1延設部から成り、前記第2接続手段に含まれる他方の接続具は、前記第2センサベース側に設けられ、前記ワイヤロープの伸長方向に対して直交する方向に延設され、前記第1延設部とは配設形態が異なる第2延設部から成り、前記第2接続手段に含まれる前記一方の係合部は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第1延設部が係合する第1係合溝から成り、前記第2接続手段に含まれる前記他方の係合部は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第2延設部が係合する第2係合溝から成ることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、前記発明において、前記第1センサベースの上面から立設されるロッドと、このロッドに移動可能に取り付けられるブロックとを備え、前記ブロックの一方の側面に前記第1突起を設け、前記ブロックの前記一方の側面に対向する他方の側面に前記第2突起を設け、前記第1延設部及び前記第2延設部を、前記第2センサベースの上端部に設け、前記第1センサベースの一方の側面に前記第1延設部が係合する前記第1係合溝を設けるとともに、前記第1センサベースの前記一方の側面に対向する他方の側面に前記第2延設部が係合する前記第2係合溝を設け、前記第1延設部に前記第1突起が係合する前記第1挿通孔を設けるとともに、前記第2延設部に前記第2突起が係合する前記第2挿通孔を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、磁気センサの一方の分割部分である第1センサ部が設けられる第1センサベースと、磁気センサの他方の分割部分である第2センサ部が設けられる第2センサベースとを接続する接続手段が、ワイヤロープを挟んで互いに対向する複数の接続具を含み、これらの複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定する構成にしてある。また本発明は、接続手段が、前述の一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定され、一方の接続具が係合する係合部と、前述の他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定され、他方の接続具が係合する係合部とを備えた構成にしてある。この構成に伴って本発明は、第1センサベースと第2センサベースの接続が可能な接続形態は1つのみとなる。これにより本発明は、第1センサベースに設けられ磁気センサの一方の分割部分を形成する第1センサ部と、第2センサベースに設けられ磁気センサの他方の分割部分を形成する第2センサ部とを、操作者の習熟度の如何に拘わらず、常に正規の磁気センサを形成し得る正しい位置関係に配置させることができ、従来技術におけるような不適切な計測を生じる虞がなく、常時正しい計測を実現させることができ、信頼性の高い実用性に優れたワイヤロープ探傷装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るワイヤロープ探傷装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】本実施形態に備えられる第1突起及び第2突起の配設位置を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図である。
【図4】本実施形態に適用可能な第1突起及び第2突起の配設形状を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るワイヤロープ探傷装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係るワイヤロープ探傷装置の一実施形態を示す斜視図、図2は図1の分解斜視図、図3は本実施形態に備えられる第1突起及び第2突起の配設位置を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤロープ探傷装置は、例えばエレベータの乗かご及び釣り合い重りを懸架するワイヤロープ1を長手方向に磁化する図示しない磁化手段と、この磁化手段によって磁化されるワイヤロープ1の磁化部分の周方向を覆うように配置され、ワイヤロープ1の磁化部分に生じる損傷部から漏洩する磁束を検出する磁気センサと、この磁気センサが設けられるセンサベースとを備えている。
【0022】
前述したセンサベースは、ワイヤロープ1を挟んで対向する第1センサベース5と第2センサベース6とを含み、前述した磁気センサは、第1センサベース5に設けられる第1センサ部12aと、第2センサベース6に設けられる第2センサ部12bとに分割形成され、これらの第1センサ部12aと第2センサ部12bを、ワイヤロープ1を挟んで対向するように配置してある。
【0023】
第1センサベース5の下端部には、ワイヤロープ1を案内するガイド面5aを形成してある。ガイド面5aの断面形状は、ワイヤロープ1の上半分に対応する半円形状となっている。同様に、第2センサベース6の上端部には、ワイヤロープ1を案内するガイド面6aを形成してある。ガイド面6aの断面形状は、ワイヤロープ1の下半分に対応する半円形状となっている。第1センサ部12aの下端は、ワイヤロープ1の上半分に対応する半円形状に形成してあり、第2センサ部12bの上端は、ワイヤロープ1の下半分に対応する半円形状に形成してある。
【0024】
ワイヤロープ1の進入方向となる第1センサベース5の側端部には、第1センサベース5のガイド面5aに相応する半円形状を下端に有する切り欠き部材10aを設けてある。同様に、ワイヤロープ1の進入方向となる第2センサベース6の側端部には、第2センサベース6のガイド面6aに相応する半円形状を上端に有する切り欠き部材10b設けてある。これらの切り欠き部材10a,10bは、計測対象のワイヤロープ1の損傷を防止するために、このワイヤロープ1を構成する素線一本の強度より低い強度であることが好ましく、例えば樹脂から成っている。
【0025】
また本実施形態は、第1センサベース5と第2センサベース6とを接続する接続手段を備え、この接続手段は、ワイヤロープ1を挟んで互いに対向する複数の接続具と、これらの接続具がそれぞれ係合する複数の係合部とを備えている。本実施形態は、前述した複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具との配設形態を互いに異ならせて設定してある。また本実施形態は、前述の複数の係合部のうちの前述の一方の接続具が係合する係合部を、前述の一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前述の複数の係合部のうちの前述の他方の接続具が係合する係合部を、前述の他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定してある。前述した配設形態は、形状、及び配設位置の少なくとも一方を含んでいる。
【0026】
前述した接続手段は、例えば第1接続手段と第2接続手段とを含み、第1接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定するとともに、第2接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を異ならせて設定してある。
【0027】
また、前述の第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの第1接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第1接続手段に含まれる他方の係合具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定してある。
【0028】
また、前述の第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる他方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定してある。
【0029】
第1接続手段に含まれる一方の接続具は、例えば第1センサベース5側に設けられる第1突起3aから成り、第1接続手段に含まれる他方の接続具は、第1センサベース5側に設けられ、第1突起3aとは配設形態が異なる、すなわち左右非対称に配設された第2突起3bとから成っている。
【0030】
第1接続手段に含まれる一方の係合部は、第2センサベース6側に設けられ、第1突起3aが係合する第1挿通孔7aから成り、第1接続手段に含まれる他方の係合部は、第2センサベース6側に設けられ、第2突起3bが係合する第2挿通孔8aから成っている。
【0031】
第2接続手段に含まれる一方の接続具は、第2センサベース6側に設けられ、ワイヤロープ1の伸長方向に対して直交する方向に延設される第1延設部7から成り、第2接続手段に含まれる他方の接続具は、第2センサベース6側に設けられ、ワイヤロープ1の伸長方向に対して直交する方向に延設され、第1延設部7とは配設形態が異なる第2延設部8から成っている。
【0032】
第2接続手段に含まれる一方の係合部は、第1センサベース5側に設けられ、第1延設部7が係合する第1係合溝5bから成り、第2接続手段に含まれる他方の係合部は、第1センサベース5側に設けられ、第2延設部8が係合する第2係合溝5cから成っている。
【0033】
また本実施形態は、第1センサベース5の上面から立設されるロッド11と、このロッド11に移動可能に取り付けられるブロック3とを備えている。ブロック3と第1センサベース5の上面との間に位置するロッド11部分には、第1センサベース5及び第2センサベース6をワイヤロープ1方向に付勢するばね4を設けてある。また、ロッド11の上端には、ロッド11からのブロック3の脱落を防ぐ止め具2を設けてある。
【0034】
図3にも示すように、前述した第1接続手段の一方の接続具を構成する第1突起3aは、ブロック3の一方の側面に設けてあり、前述した接続手段の他方の接続具を構成する第2突起3bは、ブロック3の他方の側面に設けてある。第1突起3aと第2突起3bは例えば同じ径寸法に設定してある。図3の(a)図に示すように、平面方向の中心線から距離L3離れた一方の側に第1突起3aを配置してあり、同中心線から距離L4離れた他方の側に第2突起3aを配置してある。また、図3の(b)図に示すように、側面方向の中心線から距離L5下方の位置に第1突起3aを配置してあり、同中心線から距離L6上方の位置に第2突起3bを配置してある。すなわち、本実施形態では、ブロック3の中心位置に対して、第1突起3aと第2突起3bを左右非対称に配置してある。
【0035】
前述した第2接続手段の一方の接続具を構成する第1延設部7、及び前述した第2接続手段の他方の接続具を構成する第2延設部8のそれぞれを、第2センサベース6の上端部に設けてある。例えば、第1延設部7を幅寸法L1を有する長方形形状に設定し、第2延設部8を第1延設部7の幅寸法L1よりも小さな幅寸法L2を有する長方形形状に設定してある。
【0036】
第1延設部7が係合する前述の第2接続手段の一方の係合部を構成する第1係合溝5bを、第1センサベース5の一方の側面に設けてあり、第2延設部8が係合する前述の第2接続手段の他方の係合部を構成する第2係合溝5cを、第1センサベース5の前述の一方の側面に対向する他方の側面に設けてある。第1係合溝5bの幅寸法は、第1延設部7の幅寸法L1に相応する比較的大きな幅寸法に設定してあり、第2係合溝5cの幅寸法は、第2延設部8の幅寸法L2に相応する比較的小さな幅寸法に設定してある。
【0037】
また、前述した第1突起3aが係合する前述の第1接続手段の一方の係合部を構成する第1挿通孔7aを第1延設部7の上端付近に設けてあり、前述した第2突起3bが係合する前述の第1接続手段の他方の係合部を構成する第2挿通孔8aを第2延設部8の上端付近に設けてある。
【0038】
さらに本実施形態は、所定位置に固定される平面視がコ字形状のブラケット9を備えている。このブラケット9の互いに対向する一対の側板のうちの一方の側板に、第1延設部7に設けた第1挿通孔7aから突出する第1突起3aが挿入される挿通孔9aを形成してあり、ブラケット9の他方の側板に、第2延設部8に設けた第2挿通孔8aから突出する第2突起3bが挿入される挿通孔9bを形成してある。このブラケット9の側板間の寸法は、第1延設部7の厚さ寸法t1+第2延設部8の厚さ寸法t1+ブロック3の長さ寸法t2に、略等しく設定してある。このブラケット9により、第1突起3aと第1挿通孔7a、及び第2突起3bと第2挿通孔7bから成る第1接続手段の安定した接続強度と、第1延設部7と第1係合溝5b、及び第2延設部8と第2係合溝5cから成る第2接続手段の安定した接続強度が確保されている。
【0039】
このように構成した本実施形態に係るワイヤロープ探傷装置は、図示しない磁化手段によってワイヤロープ1を長手方向に磁化した際に磁気センサを構成する第1センサ部12a、第2センサ部12bによって検出される漏洩磁束により、ワイヤロープ1の損傷部の位置、すなわちワイヤロープ1を形成する素線の破断箇所を検出することができる。
【0040】
また本実施形態は、第1センサベース5と第2センサベース6とを接続する際には、第1接続手段を構成する第1突起3aを第1延設部7の第1挿通孔7aに係合させ、また、第1接続手段を構成する第2突起3bを第2延設部8の第2挿通孔8aに係合させるとともに、第2接続手段を構成する第1延設部7を第1センサベース5の第1係合溝5bに係合させ、また、第2接続手段を構成する第2延設部8を第1センサベース5の第2係合溝5cに係合させたときだけ、第1センサベース5と第2センサベース6との接続が可能となる。すなわち、第1センサベース5と第2センサベース6の接続が可能な接続形態は1つのみであり、第1センサベース5と第2センサベース6とが、第1突起3aと第1挿通孔7a、第2突起3bと第2挿通孔8a、第1延設部7と第1係合溝5b、及び第2延設部8と第2係合溝5cを介して接続された状態では、第1センサベース5に設けられる第1センサ部12aと第2センサベース6に設けられる第2センサ部12bとが正しい位置関係に保たれる。したがって本実施形態は、第1センサベース5に設けられ磁気センサの一方の分割部分を形成する第1センサ部12aと、第2センサベース6に設けられ磁気センサの他方の分割部分を形成する第2センサ部12bとを、操作者の熟練度の如何に拘わらず、常に正規の磁気センサを形成し得る正しい位置関係に配置させることができる。これにより、不適切な計測を生じる虞がなく、常時正しい計測を実現させることができ、信頼性の高いワイヤロープ探傷装置が得られる。
【0041】
また、第1突起3aと第1挿通孔7a、及び第2突起3bと第2挿通孔8aから成る第1接続手段と、第1延設部7と第1係合溝5b、及び第2延設部8と第2係合溝5cから成る第2接続手段の双方を介して、より確実に第1センサベース5と第2センサベース6とを正しい接続形態に接続させることができる。
【0042】
なお、前述した実施形態では、第1接続手段を構成する第1突起3aと第2突起3bの位置をブロック3の中心に対して左右非対称に設定した構成にしてあるが、本発明は、このように構成することには限られない。例えば図4の(a)(b)図に示すように、第1突起3aと第2突起3bをブロック3の平面方向、側面方向のそれぞれの中心線に一致するように配置するとともに、第1突起3aを径寸法R1を有する形状に設定し、第2突起3bを第1突起3aの径寸法R1よりも大きな径寸法R2を有する形状に設定し、第1挿通孔7aを径寸法R1に相応する比較的小さな径寸法に設定し、また、第2挿通孔8aを径寸法R2に相応する大きな径寸法に設定してもよい。また径寸法の大きさはこの逆であってもよい。さらにはこれら径寸法の大きさと左右非対称、すなわち形状及び取付位置の両者を含む形態であってもよい。このように第1接続手段を構成したものも、前述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0043】
なお、前述した実施形態にあっては、第1突起3aと第1挿通孔7a、及び第2突起3bと第2挿通孔8aから成る第1接続手段と、第1延設部7と第1係合溝5b、及び第2延設部8と第2係合溝5cから成る第2接続手段を備えた構成にしてあるが、第1接続手段のみを、または第2接続手段のみを設けた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ワイヤロープ
3 ブロック
3a 第1突起(一方の接続具)〔第1接続手段〕
3b 第2突起(他方の接続具)〔第1接続手段〕
5 第1センサベース
5b 第1係合溝(一方の係合部)〔第2接続手段〕
5c 第2係合溝(他方の係合部)〔第2接続手段〕
6 第2センサベース
7 第1延設部(一方の接続具)〔第2接続手段〕
7a 第1挿通孔(一方の係合部)〔第1接続手段〕
8 第2延設部(他方の接続具)〔第2接続手段〕
8a 第2挿通孔(他方の係合部)〔第1接続手段〕
11 ロッド
12a 第1センサ部(磁気センサ)
12b 第2センサ部(磁気センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープを長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化される前記ワイヤロープの磁化部分の周方向を覆うように配置され、前記ワイヤロープの磁化部分に生じる損傷部から漏洩する磁束を検出する磁気センサと、この磁気センサが設けられるセンサベースとを備え、
前記センサベースは、前記ワイヤロープを挟んで対向する第1センサベースと第2センサベースとを含み、
前記磁気センサは、前記第1センサベースに設けられる第1センサ部と、前記第2センサベースに設けられる第2センサ部とに分割形成され、これらの第1センサ部と第2センサ部を、前記ワイヤロープを挟んで対向するように配置し、
前記第1センサベースと前記第2センサベースとを接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ワイヤロープを挟んで互いに対向する複数の接続具と、これらの接続具がそれぞれ係合する複数の係合部とから成るワイヤロープ探傷装置において、
前記複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具との配設形態を互いに異ならせて設定し、
前記複数の係合部のうちの前記一方の接続具が係合する係合部を、前記一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記複数の係合部のうちの前記他方の接続具が係合する係合部を、前記他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、
前記配設形態は、形状、及び取付位置の少なくとも一方を含むことを特徴とするワイヤロープ探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤロープ探傷装置において、
前記接続手段は、第1接続手段と第2接続手段とを含み、
前記第1接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定するとともに、前記第2接続手段に含まれる複数の接続具のうちの一方の接続具と他方の接続具の配設形態を互いに異ならせて設定し、
前記第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第1接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記第1接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第1接続手段に含まれる他方の接続具が係合する係合部を、当該第1接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、
前記第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる一方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる一方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定し、前記第2接続手段に含まれる複数の係合部のうちの当該第2接続手段に含まれる他方の接続具が係合する係合部を、当該第2接続手段に含まれる他方の接続具の配設形態に相応する配設形態に設定したことを特徴とするワイヤロープ探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤロープ探傷装置において、
前記第1接続手段に含まれる前記一方の接続具は、前記第1センサベース側に設けられる第1突起から成り、前記第1接続手段に含まれる前記他方の接続具は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第1突起とは配設形態が異なる第2突起から成り、
前記第1接続手段に含まれる前記一方の係合部は、前記第2センサベース側に設けられ、前記第1突起が係合する第1挿通孔から成り、前記第1接続手段に含まれる前記他方の係合部は、前記第2センサベース側に設けられ、前記第2突起が係合する第2挿通孔から成り、
前記第2接続手段に含まれる一方の接続具は、前記第2センサベース側に設けられ、前記ワイヤロープの伸長方向に対して直交する方向に延設される第1延設部から成り、前記第2接続手段に含まれる他方の接続具は、前記第2センサベース側に設けられ、前記ワイヤロープの伸長方向に対して直交する方向に延設され、前記第1延設部とは配設形態が異なる第2延設部から成り、
前記第2接続手段に含まれる前記一方の係合部は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第1延設部が係合する第1係合溝から成り、前記第2接続手段に含まれる前記他方の係合部は、前記第1センサベース側に設けられ、前記第2延設部が係合する第2係合溝から成ることを特徴とするワイヤロープ探傷装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤロープ探傷装置において、
前記第1センサベースの上面から立設されるロッドと、このロッドに移動可能に取り付けられるブロックとを備え、
前記ブロックの一方の側面に前記第1突起を設け、前記ブロックの前記一方の側面に対向する他方の側面に前記第2突起を設け、
前記第1延設部及び前記第2延設部を、前記第2センサベースの上端部に設け、
前記第1センサベースの一方の側面に前記第1延設部が係合する前記第1係合溝を設けるとともに、前記第1センサベースの前記一方の側面に対向する他方の側面に前記第2延設部が係合する前記第2係合溝を設け、
前記第1延設部に前記第1突起が係合する前記第1挿通孔を設けるとともに、前記第2延設部に前記第2突起が係合する前記第2挿通孔を設けたことを特徴とするワイヤロープ探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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