説明

ワイヤーハーネス用クランプ

【課題】バンドがワイヤーハーネス径に適合しない場合でも、またワイヤーハーネスを強く締め付けなくても、ワイヤーハーネスを確実に固定することのできるワイヤーハーネス用クランプを提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネス22を締め付けるバンド12と、このバンドの基端に一体に形成されたバンドロック部14と、このバンドロック部のワイヤーハーネス側の面と反対側の面に一体に形成されたアンカー部16とを有するワイヤーハーネス用クランプにおいて、前記バンドロック部14の側面にワイヤーハーネス22に沿って伸び出すようにテープ止め部20を一体に形成する。バンド12でワイヤーハーネス22を締め付けると共に、テープ止め部20にワイヤーハーネス22と一緒にテープ24を巻き付けて、ワイヤーハーネス22を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスを自動車のボディ等に取り付けるのに使用するワイヤーハーネス用クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスを自動車内に配索する際に、ワイヤーハーネスの所要箇所を自動車のボディやパネル等に取り付けるときは通常、種々のワイヤーハーネス用クランプが用いられる。これらのワイヤーハーネス用クランプのうちバンドタイプと呼ばれるものは、ワイヤーハーネスを締め付けるバンドと、このバンドの基端に一体に形成されたバンドロック部と、このバンドロック部のワイヤーハーネス側の面と反対側の面に一体に形成されたアンカー部とを有している(特許文献1)。
【0003】
このワイヤーハーネス用クランプでワイヤーハーネスをボディ等に取り付けるときは、ワイヤーハーネスを配索する前に、バンドをワイヤーハーネスの所要箇所に巻き付け、バンドの先端部をバンドロック部に挿通してワイヤーハーネスを締め付けることにより、クランプをワイヤーハーネスに固定しておく。この状態でワイヤーハーネスを配索し、ボディ等に形成された穴にアンカー部を挿入すれば、ワイヤーハーネスをボディ等に取り付けることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−322129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のワイヤーハーネス用クランプは、バンドによりワイヤーハーネスを締付け固定する方式であるので、バンドがワイヤーハーネス径に適合しない場合には、ワイヤーハーネスを確実に締付け固定することができず、ワイヤーハーネスがずれるおそれがある。またバンドがワイヤーハーネス径に適合している場合でも、しっかり固定するために締付け力を強くしすぎて、ワイヤーハーネスの外装を潰してしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、バンドがワイヤーハーネス径に適合しない場合でも、またワイヤーハーネスを強く締め付けなくても、ワイヤーハーネスを確実に固定することのできるワイヤーハーネス用クランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明は、ワイヤーハーネスを締め付けるバンドと、このバンドの基端に一体に形成されたバンドロック部と、このバンドロック部のワイヤーハーネス側の面と反対側の面に一体に形成されたアンカー部とを有するワイヤーハーネス用クランプにおいて、前記バンドロック部の側面にワイヤーハーネスに沿って伸び出すようにテープ止め部を一体に形成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、前記テープ止め部は、ワイヤーハーネスを屈曲する方向に屈曲成形されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤーハーネス用クランプは、バンドでワイヤーハーネスを締め付けると共に、ワイヤーハーネスに沿って伸び出しているテープ止め部にワイヤーハーネスと一緒にテープを巻き付けて、ワイヤーハーネスを固定するものである。このようにすれば、バンドによる締付けとテープ巻きによる固定の2方式でワイヤーハーネスを固定することができるので、バンドがワイヤーハーネス径に適合せずバンドによる締付けが不十分な場合でもテープ巻きでワイヤーハーネスの固定を確実なものとすることができる。またバンドを強く締め付ける必要がないので、バンドの締めすぎでワイヤーハーネスの外装を潰してしまうようなことがなくなる。
【0010】
また、テープ止め部を屈曲成形しておけば、バンドによる締付けとテープ巻きによる固定で、ワイヤーハーネスを所定の方向に屈曲した状態に保持することができるので、ワイヤーハーネスを所定の経路に沿って正確に配索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔実施形態1〕図1(A)は本発明の一実施形態を示す。このワイヤーハーネス用クランプ10は、ワイヤーハーネスを締め付けるバンド12と、このバンド12の基端に一体に形成されたバンドロック部14と、このバンドロック部14のワイヤーハーネス側の面と反対側の面に一体に形成されたアンカー部16とを有している。
【0012】
アンカー部16は、バンドロック部14から突出する軸部16aと、その軸部16aの先端から軸部の両側に広がりながらバンドロック部14側へ折り返すように形成された弾性係止片16bとを有している。このアンカー部16を自動車のボディ等に形成された穴に挿入すると、弾性係止片16bの先端部が穴の裏側の縁に引っ掛かり、クランプ10は引き抜けなくなる。
【0013】
このワイヤーハーネス用クランプ10には、軸部16aの基部から両側に広がるように弾性押さえ片18が形成されている。この弾性押さえ片18は、弾性係止片16bの先端部が穴の裏側の縁に引っ掛かったときに、穴の表側に周囲に押し当てられて、クランプ10の取付け状態を安定化させるものである。弾性押さえ片18は必要に応じ設けられるもので、省略される場合もある。
【0014】
以上の構成は従来のワイヤーハーネス用クランプと同じである。このワイヤーハーネス用クランプ10の特徴は、バンドロック部14の側面にワイヤーハーネスに沿って伸び出すように平板状のテープ止め部20を一体に形成した点にある。
【0015】
以上のように構成されたワイヤーハーネス用クランプ10は図1(B)のように使用される。まず、バンド12をワイヤーハーネス22に巻き付け、バンド12の先端部をバンドロック部14に挿入して、バンド12でワイヤーハーネス22を締め付ける。なお、バンドロック部14内には係止爪が形成され、バンド12にはその係止爪に引っ掛かるギザギザ(又は多数のスリット等)が形成されているが、いずれも図示を省略してある。バンド12でワイヤーハーネス22を締め付けると、テープ止め部20がワイヤーハーネス22に沿うようになるので、このテープ止め部20にワイヤーハーネス22を含めてテープ(粘着テープ)24を巻き付ける。この状態で、アンカー部16をボディ等に形成された穴に挿入して、クランプ10をボディ等に固定する。
【0016】
このようにすれば、バンド12とテープ24により2箇所でワイヤーハーネス22を固定することができるので、バンド12の締付けが多少ゆるくても、またバンド12を無理に締め付けなくても、ワイヤーハーネス22をしっかりと固定することができる。
【0017】
〔実施形態2〕図2(A)は本発明の他の実施形態を示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出した板状のテープ止め部20が、途中から同一平面内でバンドロック部14のバンド出口側へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、図2(B)に示すように、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿って屈曲した状態に保持することができる。
【0019】
〔実施形態3〕図3(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出した板状のテープ止め部20が、途中から同一平面内でバンドロック部14のバンド入口側へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0020】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、図3(B)に示すように、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿って図2(B)とは反対側に屈曲した状態に保持することができる。
【0021】
〔実施形態4〕図4(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出す板状のテープ止め部20が、その付け根から斜め下方(アンカー部16と反対側)へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、図4(B)に示すように、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿って斜め下方に屈曲した状態に保持することができる。
【0023】
〔実施形態5〕図5(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出す板状のテープ止め部20が、その付け根から斜め上方(アンカー部16側)へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、図5(B)に示すように、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿って斜め上方に屈曲した状態に保持することができる。
【0025】
〔実施形態6〕図6は本発明のさらに他の実施形態を使用状態で示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出した板状のテープ止め部20が、途中からアンカー部16と反対側へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿ってアンカー部16と反対側に屈曲した状態に保持することができる。
【0027】
〔実施形態7〕図7は本発明のさらに他の実施形態を使用状態で示す。このワイヤーハーネス用クランプ10が、図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と異なる点は、バンドロック部14から側方に伸び出した板状のテープ止め部20が、途中からアンカー部16側へ折れ曲がるように形成されていることである。それ以外の構成は図1(A)に示したワイヤーハーネス用クランプ10と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
このようなワイヤーハーネス用クランプ10を使用すれば、ワイヤーハーネス22をバンド12とテープ24で固定することにより、ワイヤーハーネス22をテープ止め部20に沿ってアンカー部16側に屈曲した状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)は本発明に係るワイヤーハーネス用クランプの一実施形態を示す斜視図、(B)は同クランプの使用状態を示す斜視図。
【図2】(A)は本発明の他の実施形態を示す斜視図、(B)はその使用状態を示す斜視図。
【図3】(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図、(B)はその使用状態を示す斜視図。
【図4】(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図、(B)はその使用状態を示す斜視図。
【図5】(A)は本発明のさらに他の実施形態を示す斜視図、(B)はその使用状態を示す斜視図。
【図6】本発明のさらに他の実施形態を使用状態で示す斜視図。
【図7】本発明のさらに他の実施形態を使用状態で示す斜視図。
【符号の説明】
【0030】
10:ワイヤーハーネス用クランプ
12:バンド
14:バンドロック部
16:アンカー部
18:弾性押さえ部
20:テープ止め部
22:ワイヤーハーネス
24:テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを締め付けるバンドと、このバンドの基端に一体に形成されたバンドロック部と、このバンドロック部のワイヤーハーネス側の面と反対側の面に一体に形成されたアンカー部とを有するワイヤーハーネス用クランプにおいて、前記バンドロック部の側面にワイヤーハーネスに沿って伸び出すようにテープ止め部を一体に形成したことを特徴とするワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項2】
前記テープ止め部が、ワイヤーハーネスを屈曲する方向に屈曲成形されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤーハーネス用クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−166781(P2007−166781A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359688(P2005−359688)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】