説明

ワイヤーハーネス配索構造部

【課題】ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略すること。
【解決手段】ワイヤーハーネスWHと、ドア6の骨格部分を構成し、第1部分72を有するドアインナーパネル7と、ドア6の内装部分を構成し、第2部分82を有するトリム8とを備え、第1部分72と前記第2部分82とは、ワイヤーハーネスWHが挿入される導入開口部42を有し、導入開口部42を通じて挿入されるワイヤーハーネスWHを迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する収容部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイヤーハーネスを車体とドアとの間で配索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボディ本体のフロントピラーにプロテクタホルダを介して固定されるハーネスプロテクタにドア側ハーネスが挿通され、該ハーネスプロテクタをスライド自在に収容するプロテクタ収容部と、ハーネスプロテクタに挿通されたドア側ハーネスを格納するハーネス収容部とが連結されて構成されたスライドガイドがドアインナパネルとドアトリムとの間に設けられた車両用ドアハーネスの配索構造が開示されている。そして、ハーネス収容部内で、ドア側ハーネスを輪部を作って格納し、ドアの開閉に対応して輪部が拡径又は縮径することでドア側ハーネスの余長を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−263165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の配索構造によると、ドア内でワイヤーハーネスを余長吸収可能に収容するためには専用部品としてのスライドガイド用の樹脂成形プロテクタが必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、車体と、該車体に連結されたドアとの間でワイヤーハーネスを配索するワイヤーハーネス配索構造部であって、前記ワイヤーハーネスと、前記ドアの骨格部分を構成し、第1部分を有するドアインナーパネルと、前記ドアの内装部分を構成し、第2部分を有するトリムとを備え、前記第1部分と前記第2部分とは、前記ワイヤーハーネスが挿入される導入開口部を有し、前記導入開口部を通じて挿入される前記ワイヤーハーネスを、該ワイヤーハーネスが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する収容部を構成する。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記第1部分は、前記余裕空間を形成する凹形状に形成され、前記第2部分は、前記第1部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている。
【0008】
第3の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記第2部分は、前記余裕空間を形成する凹形状に形成され、前記第1部分は、前記第2部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている形成されている。
【0009】
第4の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記第1部分及び前記第2部分の両方が、前記余裕空間を形成する凹形状に形成されている。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記収容部の前記導入開口部で前記ドアインナーパネルに固定され、前記外装部材の他方の端部寄りの一部分をスライド移動可能に支持する溝状又は筒状のガイドクランプをさらに備えている。
【0011】
第6の態様は、第5の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記ガイドクランプは、開口を通じて前記外装部材を内部に配置可能な断面視C字状の溝状に形成されている。
【0012】
第7の態様は、第5又は第6の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部であって、前記ガイドクランプは、前記外装部材のスライド方向両側の端部を含む各部分が、各端部に向けて外周側に拡がる形状に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、ドアの骨格部分を構成するドアインナーパネルの第1部分と、ドアの内装部分を構成するトリムの第2部分とが、導入開口部を通じて挿入されるワイヤーハーネスを、迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する収容部を構成する。このため、ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略することができる。
【0014】
第2の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、第1部分が余裕空間を形成する凹形状に形成され、第2部分が第1部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されているため、トリムに凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部を確保して、ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略することができる。
【0015】
第3の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、第2部分が余裕空間を形成する凹形状に形成され、第1部分が第2部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されているため、ドアインナーパネルに凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部を確保して、ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略することができる。
【0016】
第4の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、第1部分及び第2部分の両方が余裕空間を形成する凹形状に形成されているため、ドアインナーパネル及びトリムに比較的大きな凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部を確保して、ワイヤーハーネスをドア内で収容する専用部品を省略することできる。
【0017】
第5の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、外装部材の他方の端部寄りの一部分をスライド移動可能に支持する溝状又は筒状のガイドクランプが、収容部の導入側開口部でドアインナーパネルに固定されている。ドアインナーパネルにトリムを取り付ける際に、車体取付部とハーネスクランプとの間で外装部材を車両に対して保持することができるため、トリムの取付作業性を向上させることができる。
【0018】
第6の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、ガイドクランプが、開口を通じて外装部材を内部に配置可能な断面視C字状の溝状に形成されているため、ガイドクランプの外装部材に対する取付作業性を向上させることができる。
【0019】
第7の態様に係るワイヤーハーネス配索構造部によると、ガイドクランプが、外装部材のスライド方向両側の端部を含む各部分が、各端部に向けて外周側に拡がる形状に形成されているため、ガイドクランプに対する外装部材のスライド移動をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ドアの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部の展開図である。
【図3】第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部の断面視図である。
【図4】車体取付部材の分解斜視図である。
【図5】変形例に係る収容部の展開図である。
【図6】ハーネスクランプの正面図である。
【図7】ハーネスクランプの平面図である。
【図8】ガイドクランプの正面図である。
【図9】ガイドクランプの平面図である。
【図10】変形例に係るガイドクランプの正面図である。
【図11】第2実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部の展開図である。
【図12】第3実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部10について説明する(図2参照)。このワイヤーハーネス配索構造部10は、自動車の車体2とドア6との間にワイヤーハーネスWHを配索するための構成である。
【0022】
ワイヤーハーネスWHは、ドア6に設置されるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロックモータ、サイドミラーモータ及びスピーカー等の電気機器に対して電源供給又は信号伝達するための複数の電線が、配索経路に対応して適宜束ねられて構成されている。ここで、ワイヤーハーネスWHにおける車体2からドア6に架け渡される部分は、上記複数の電線が1本に束ねられて構成されている。また、ワイヤーハーネスWHは、ドア6内で分岐されて各種電気機器に接続される(図示省略)。
【0023】
説明の便宜上、車体2及びドア6について説明しておく。ドア6は、車体2に形成されている乗降口を開閉可能に、車体2に対してドアヒンジ5及びドア6を所定の開度に維持する開度規制部(ドアチェックリンクともいう)により連結されている(図3参照)。なお、車体2とは、金属部材で形成されたフレーム部分を言うものとする。ここでは、ドア6は、フロントサイドドアであり、説明の便宜上、鉛直方向に沿った軸(ドアヒンジ5の回転軸)周りに姿勢変更するように車体2に対して連結されているものとする。また、ドア6について、閉状態において車両の前方側に位置する端部(連結される側の端部)を前端部、後方側に位置する端部を後端部という。
【0024】
ドア6は、骨格部分を構成するドアインナーパネル7及びその車外側に取り付けられてドア6の外装部分を構成するドアアウターパネルと、ドアインナーパネル7の車内側に取り付けられてドア6の内装部分を構成するトリム8とを有している(図1参照)。ドアアウターパネル及びドアインナーパネル7は、金属板をプレス成型、打抜き等して形成され、トリム8は合成樹脂材料等を金型により射出成型して形成される。また、ドア6は、車体2との連結側(前端側)の縁部(ドア6における後述する車体取付部材30の取り付け位置側の縁部)で開口する導入開口部42を通じて内外にワイヤーハーネスWHを配索可能に構成されている。ここでは、ドア6の導入開口部42は、後述するドアインナーパネル7に形成された第1部分72とトリム8に形成された第2部分82とにより構成される収容部40におけるドア6の前端側の開口部である(図3参照)。
【0025】
また、車体2には、内外にワイヤーハーネスWHを挿通配索するための貫通孔部2hが形成されている。この貫通孔部2hは、平面視において、乗降口の開口縁部において、ドア6の閉状態における導入開口部42と対向する部位に形成されている。なお、導入開口部42及び貫通孔部2hは、ドア6を閉めた状態では、車体2に取り付けられる内装部材及びドア6のトリム8等により車内に対して遮られて隠れる。
【0026】
また、ドア6には、その周縁部に沿って防水用のウェザーストリップ6wが設けられている(図3参照)。このウェザーストリップ6wは、ドア6を閉めた状態で、車体2の乗降口の開口縁部に密着して、車内外において水密状態を保持可能なゴム等で形成された弾性部材である。そして、本ワイヤーハーネス配索構造部10は、ウェザーストリップ6wより車内側にワイヤーハーネスWHを配索するように構成されている。
【0027】
ここでは、ワイヤーハーネスWHが車体2とドア6との間でウェザーストリップ6w(複数設けられる場合には少なくとも最も車外側の1つ)より車内側に配索されるため、導入開口部42及び貫通孔部2hは、該ウェザーストリップ6wより車内側に形成されている。
【0028】
ワイヤーハーネス配索構造部10は、上記ワイヤーハーネスWHと、外装部材20と、車体取付部材30と、収容部40と、ハーネスクランプ50と、ガイドクランプ55とを備えている(図2参照)。
【0029】
ワイヤーハーネスWHにおける車体2からドア6に架け渡される部分を含む部分は、外装部材20に覆われている。この外装部材20は、ワイヤーハーネスWHを、外部から保護すると共に、車体2とドア6との間における屈曲、垂れ下がり等を抑制して支持する部材である。
【0030】
外装部材20は、筒状に形成され、その内部に挿通されたワイヤーハーネスWHを保護する。より具体的には、外装部材20は、ドア6の開閉動作に対応して車体2とドア6との間で曲がるように可撓性を(延在方向全体的に)有すると共に、車体2とドア6との間で屈曲及び垂れ下がりを抑制してワイヤーハーネスWHを支持可能な剛性、すなわち、少なくともワイヤーハーネスWHより高い剛性を有する部材である。ここでは、外装部材20は、合成樹脂(例えば、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)等)を押出成型すると共にブロー成型或いはバキューム成型して製造されたコルゲートチューブである。そして、ワイヤーハーネスWHより高い剛性を有する外装部材20としてのコルゲートチューブに挿通された該ワイヤーハーネスWHは、外装部材20の剛性により曲げ規制されて屈曲が抑制される。
【0031】
また、この外装部材20は、扁平な形状(例えば、断面視略楕円形、略長方形等の扁平な形状)に形成されている。ここでは、断面視において、角を丸めた長方形状に形成されている。すなわち、外装部材20は、断面視における長手方向に曲がり難く(剛性が高く)、短手方向に曲がりやすい(可撓性が高い)形状である。より具体的には、コルゲートチューブの軸方向の(形状による)伸縮可能量は通常周方向どの部分でも変わらないため、曲げ変形時における内周側端部と外周側端部との距離が長いほど角度変化量が小さく曲がり難い。なお、外装部材20に挿通されるワイヤーハーネスWHは、断面視円形に形成されていても、外装部材20の内部形状に対応した断面形状に形成されていてもよい。
【0032】
もっとも、外装部材20は、ワイヤーハーネスWHより高い剛性を有していればよく、上述したコルゲートチューブに限定されるものではない。例えば、外装部材は、比較的硬質なゴム(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、エラストマー等)により形成された扁平な筒状であってもよい。
【0033】
上記外装部材20は、一方の端部がワイヤーハーネスWHにおける車体2内に配索される部分に対してテープ90巻き等されて固定されると共に、該一方の端部寄りの一部分に後述する車体取付部材30が固定されている(図3参照)。また、外装部材20の他方の端部は、ワイヤーハーネスWHにおけるドア6内(ここでは後述する収容部40内)に配索される部分にテープ90巻き等されて固定され、該ワイヤーハーネスWHと共にドア6内に進退移動可能とされている。
【0034】
車体取付部材30(エッジプロテクタとも言う)は、貫通孔部2hに挿通されるワイヤーハーネスWH(外装部材20)を貫通孔部2hの周縁部(エッジ)から保護する部材である(図4参照)。また、車体取付部材30は、外装部材20における一方の端部寄りの一部分に固定され、車体2の貫通孔部2hの周縁部に取り付けられる。より具体的には、車体取付部材30は、車体2に形成されている貫通孔部2hに対して押し付けることにより、車体2に対して取り付け可能に形成されている。なお、説明の便宜上、貫通孔部2hは、車体2の前後方向に略直交する平面に沿って扁平な板状の部分に形成され、該前後方向に貫通しているものとする。この車体取付部材30は、挿入部34と、複数の係止部35と、押え部36と、凹凸嵌合部38とを有している。
【0035】
挿入部34は、車体2の貫通孔部2h内に挿入可能な筒状に形成されている。より具体的には、挿入部34の外周部は、貫通孔部2hに対応した外形(断面視角を丸めた長方形)で、該貫通孔部2hより僅かに小さく設定されている。ここでは、挿入部34は、貫通孔部2hに対して、車体2の前方(以下、挿入方向S)に向けて挿入される。なお、以下の説明において、車体取付部材30自体の方向として挿入方向Sを用いることがある。また、挿入部34の内周部は、内側に外装部材20を配置可能に、外装部材20の外形(山部の外周形状)に対応した形状で、外装部材20の外形より僅かに大きいサイズに設定されている。
【0036】
挿入部34の先端側の部分には、挿入部34を貫通孔部2h内に挿入した状態で貫通孔部2hの周縁部に対して挿入方向S前方側から係止可能な係止部35が設けられている。この係止部35は、挿入部34の周方向複数位置(ここでは等間隔に4箇所)から外周側に突出するように形成され、それぞれ、貫通孔部2hの周縁部に対して挿入方向S前方側から接触可能な係止面を有している。より具体的には、係止部35は、挿入部34の先端側から基端側に向けて徐々に突出寸法が大きくなるように形成されている。そして、各係止部35は、挿入部34が貫通孔部2hに挿入される際に、係止部35が貫通孔部2hの周縁部に当接して挿入部34又は係止部35自身が挿入部34の内周側に弾性変形し、貫通孔部2hを乗り越えた位置で外周側に弾性復帰して貫通孔部2hの周縁部に係止するようになっている。
【0037】
押え部36は、挿入部34の基端部に連続して設けられ、その外周側に張り出す鍔状に形成されている。この押え部36の外周形状は、貫通孔部2hより大きく形成されている。
【0038】
そして、挿入部34が貫通孔部2hに挿入されると、係止部35が貫通孔部2hの周縁部に対して挿入方向S前方側から係止すると共に、押え部36が貫通孔部2hの周縁部に対して挿入方向S後方側から当接する。すなわち、車体取付部材30は、貫通孔部2hの周縁部が係止部35と押え部36とで挟まれた状態で車体2に対して固定される。
【0039】
凹凸嵌合部38は、挿入部34(及び押え部36)内に配置される外装部材20に対して、該外装部材20の軸方向に相対移動不能に位置決めする部分である。ここでは、凹凸嵌合部38は、外装部材20としてのコルゲートチューブの凹凸外形に対して嵌合可能に形成されている。より具体的には、凹凸嵌合部38は、挿入部34の内周面から内周側に突出する周方向に沿った凸条に形成され、挿入部34の貫通方向において外装部材20の谷部に対応する間隔で複数設けられている。
【0040】
上記車体取付部材30は、一対の略U字部材(ここでは、対向片の長さが異なるU字形状)を合体させることにより構成される(図4参照)。すなわち、外装部材20を間に配置した状態で一対の略U字部材を合体させることにより、凹凸嵌合部38が外装部材20の外周部に対して嵌合し、車体取付部材30は、外装部材20に対して該外装部材20の軸方向に相対移動不能に装着される。そして、外装部材20に装着された車体取付部材30を貫通孔部2hに取り付けることにより、ワイヤーハーネスWHが貫通孔部2hを通じて車体2の内外に配索される。
【0041】
車体取付部材30は、一対の略U字部材の突き合わせ部分の各一方の端部から突出する係止部31と、各他方の端部に形成され、該係止部31が係止可能な被係止部32とを有している。より具体的には、係止部31は、U字部材の一方の端部から突出する挿入部の先端部からU字部材の内周側に突出し、先端側から基端側に向けて徐々に突出寸法が大きくなる断面視略三角形状に形成された係止爪を有する部分である。この係止爪は、基端側に面する係止面を有している。また、被係止部32は、U字部材の他方の端面と内周面との2箇所で開口する凹形状に形成され、U字部材の他方の端面で開口する開口部を通じて係止部31を内部に挿入可能に設定されている。そして、一対のU字部材が突き合わされて係止部31が被係止部32内に挿入されると、係止爪の係止面が、被係止部32における内周側の開口部の開口縁部と対向して当接する。これにより、係止部31は被係止部32に係止し、一対の略U字部材が合体される。なお、車体取付部材30は、一対の略U字部材が、開閉可能なようにヒンジにより一方の突き合せ端部同士が連結され、他方の突き合せ端部同士が係合可能に形成されていてもよい。
【0042】
そして、車体取付部材30は、外装部材20が上下方向に沿って扁平となる姿勢で貫通孔部2hの周縁部に対して取り付けられる。これにより、外装部材20の剛性がより高い断面視長手方向が鉛直方向に略沿って、より確実に垂れ下がりが抑制され、外装部材20に覆われているワイヤーハーネスWHの鉛直方向における屈曲を抑制することができる。
【0043】
もっとも、車体取付部材30は、上記形状に限られるものではない。例えば、車体取付部材30は、係止部31及び被係止部32が省略され、一対の略U字部材が突き合わされた状態で貫通孔部2hに嵌合されることにより合体状態を維持されるものでもよい。また、外装部材20を位置決めする部分(上記凹凸嵌合部38の代替部)が、押え部36の基端部から突出する扁平な細長矩形状に形成され、外装部材20と一緒にテープ巻き又はタイバンドで締め付ける等して固定することにより、位置決めするものでもよい。なお、タイバンドとは、段階的に環状体の周方向寸法を調節し保持可能な部材をいう。このような位置決め部を採用する場合、車体取付部材は、全体として射出成型により一体に形成されてもよい。
【0044】
収容部40は、ドアインナーパネル7の第1部分72とトリム8の第2部分82とが突き合わされて構成される部分である(図1〜図3参照)。以下、収容部40の全体としての形状の説明をした後で、第1部材72と第2部材82との組み合わせについて説明する。
【0045】
この収容部40は、案内部41と該案内部41に連なるハーネス収容部45とを有し、全体として、側面視略L字形を成している。より具体的には、収容部40は、案内部41により導入開口部42を通じて該案内部41内に挿入される外装部材20をハーネス収容部45に向けて案内し、その外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHをハーネス収容部45の収容空間内に収容すると共に引出口部48を通じてその外方に配索する部分である。
【0046】
案内部41は、一方の端部に、ワイヤーハーネスWHを覆う外装部材20の他方の端部を含む一部分が挿入される導入開口部42を有し、該外装部材20の一部分の変位経路を案内する中空の部分である。より具体的には、ドア6の前端部と後端部とを結ぶ方向に沿って略直線状に延在する断面視長方形に形成されると共に、外装部材20を挿入可能な断面サイズに設定されている。そして、案内部41は、挿入される外装部材20を、その外周部に接触することにより、該外装部材20の中心軸に対する放射方向、主としてドア6の車内外方向において位置規制して、ドア6の前端部と後端部とを結ぶ方向に沿った略直線状の進退経路に案内する。もっとも、案内部41は、外装部材20を挿通案内可能であればよく、断面視略楕円形、円形或いは多角形等の筒状に形成されていてもよい。
【0047】
ここで、外装部材20との関係で案内部41の延在方向の寸法について説明しておく。外装部材20は、ドア6の開状態において、少なくとも他方の端部を含む一部分が案内部41内に挿入される程度に長い延在寸法に設定されている。一方、案内部41は、ドア6が開閉動作される際に、ドア6内で進退される外装部材20の他方の端部を含む部分を、主として車内外方向に位置規制できればよい。ここでは、案内部41は、ドア6の閉状態において、外装部材20の他方の端部を収容部40内に僅かに突出させる程度の延在寸法に設定されている。もっとも、案内部41は、上記寸法より長く、ドア6の閉状態で外装部材20の他方の端部まで収容可能な寸法に設定されていてもよい。
【0048】
また、導入開口部42は、一方の端部に向けて徐々に外周側に拡開するように形成されている(図2、図3参照)。ここでは、導入開口部42は、全周に亘って拡がっている。
【0049】
ハーネス収容部45は、案内部41の他方の端部に連なって形成され、導入開口部42を通じて案内部41内に挿入される外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを、該ワイヤーハーネスWHが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する部分である。このハーネス収容部45は、内部に余裕空間を含む収容空間を有している。そして、ハーネス収容部45は、収容空間内において、ワイヤーハーネスWHを、第1経路R1と、側面視において第1経路R1に対して中間部分が離間するように膨らんだ第2経路R2との間で曲げることにより、迂回させて余長吸収可能に収容する(図2参照)。
【0050】
また、ハーネス収容部45は、収容されたワイヤーハーネスWHが引き出される引出口部48を有している。この引出口部48は、上方に向けてワイヤーハーネスWHを引出し可能に開口している。
【0051】
このハーネス収容部45は、側面視において、収容空間を挟んで対向する第1壁部46と第2壁部47とを有している。より具体的には、第1壁部46は、側面視略L字形の収容部40の内周側で、案内部41の他端部とハーネス収容部45の引出口部48とを結んで延在している。また、第2壁部47は、第1壁部46に対してワイヤーハーネスWHを曲げ変形可能な間隔をあけて、側面視略L字形の収容部40の外周側で、案内部41の他端部と引出口部48とを結んで延在している。そして、ハーネス収容部45内に収容されるワイヤーハーネスWHは、第1経路R1を通る際に第1壁部46に近接し、第2経路R2を通る際に第2壁部47に近接して配置される。すなわち、第1経路R1を通るワイヤーハーネスWHの第2壁部47側に余裕空間が存在し、この余裕空間内にワイヤーハーネスWHが押し込まれて曲げられることにより、第1経路R1に対して迂回した第2経路R2を通って余長吸収できる。
【0052】
ドア6の開閉動作に関連付けて説明すると、収容部40は、ドア6の開状態では、外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを、第2壁部42側に余裕空間をあけた第1経路R1を通る形態で収容する(図1参照)。また、収容部40は、ドア6の閉状態では、ワイヤーハーネスWHを、第2経路R2を通る形態で収容する(図3参照)。すなわち、収容部40は、ドア6が開姿勢から閉姿勢に閉動作されることによりワイヤーハーネスWHのうち収容空間内に押し込まれる部分を収容空間内に収容して余長吸収する。
【0053】
上述したように、収容部40は、第1部分72と第2部分82とが突き合わされて構成されている。ここでは、第1部分72は、ドアインナーパネル7において、ドア6の前端側及び車内側に向けて開口し、余裕空間を形成する凹形状に形成されている。この第1部分72は、ドアインナーパネル7の車内側の一面から、車外側に向けて凹ませて形成されている。また、第2部分82は、ドアインナーパネル7に取り付けられるトリム8において、第1部分72の車内側の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている。ここで、第1部分72の開口縁部が延在する面に対応した面とは、トリム8がドアインナーパネル7に取り付けられる際に全体として該開口縁部が延在する面に沿う面のことを言う。ここでは、第2部分82は、第1部分72の車内側の開口形状と同形状且つ同じ大きさの平坦面状に形成されている。なお、第2部分82は、トリム8がドアインナーパネル7に取り付けられた際に第1部分72に突き合わされる位置に配置されるように、トリム8の裏面(ドア6の車外側面)から突出した凸部の先端部に形成されている。
【0054】
そして、ドア6の前端部側の第1部分72及び第2部分82の端縁部を含む部分により、ドア6の導入開口部42が構成されている。また、ここでは、ハーネス収容部45の第1壁部46及び第2壁部47は、第1部分72の内壁部で構成されている。
【0055】
もっとも、第2部分82は、平坦面状に形成されるものに限られない。例えば、図5に示すワイヤーハーネス配索構造部110のように、収容部140が、トリム108の裏面から突出する格子状のリブの先端部により形成されている第2部分182と第1部材72とにより構成されてもよい。この第2部分182は、第1部分72の開口縁部が延在する面に対応した一平面上に位置する格子状のリブの先端部により平坦部分として形成されている。なお、第2部分182を構成するリブ同士の間隔は、収容部140内に収容される外装部材20及びワイヤーハーネスWHが引っ掛からない程度に狭く設定されているとよい。
【0056】
また、第2部分は、第1部分の開口縁部が延在する面が湾曲面、屈曲面等である場合にも、第1部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されていればよい。
【0057】
また、収容部40は、導入開口部42から挿入されるワイヤーハーネスWHを、余裕空間を有して収容可能であればよく、上記形状に限られるものではない。例えば、ワイヤーハーネスWHを輪状に巻いた輪部の径を変化させて迂回可能に収容する形状、引出口部が下方を向いた形状等の種々の形状の収容部を採用することができる。
【0058】
ハーネスクランプ50は、収容部40の引出口部48で、ワイヤーハーネスWHをドアインナーパネル7に固定する部材である(図6、図7参照)。このハーネスクランプ50は、ハーネス保持部52と、固定部54とを有している。
【0059】
ハーネス保持部52は、ワイヤーハーネスWHのうち引出口部48内に配置される部分に取り付けられる部分である。例えば、ハーネス保持部52は、ワイヤーハーネスWHに巻き付けられる帯状部分と、該帯状部分をワイヤーハーネスWHに巻き付けた状態を維持するロック部(図示省略)とを有しているとよい。ロック部としては、帯状部分において長尺方向に並んで形成された複数の被係止部と、帯状部分の一方の端部に連なって設けられ、複数の被係止部に対して選択的に係止可能な係止部を有する構成を採用することができる。そして、ハーネス保持部52は、ワイヤーハーネスWHに対して、帯状部分が締め付けるように巻き付けられた状態で係止部が複数の被係止部の1つに係止することにより、環状に維持され、ワイヤーハーネスWHの延在方向に相対移動不能に取り付けられる。
【0060】
固定部54は、ハーネス保持部52の周方向一部分に設けられ、引出口部48の位置で、ドアインナーパネル7の第1部分72の底部に形成された孔部に対して嵌合可能に形成されている(図6参照)。この固定部54は、ドアインナーパネル7に対して車外側に向けて(ワイヤーハーネスWHを第1部分72内に収容する向き)に押し付けることにより、孔部に嵌合する形状に形成されている。ここでは、固定部54は、柱状の基軸部と、該基軸部の先端部からその外周側に拡がるように形成され、内周側に弾性変形可能な係止部とを有する構成を採用することができる。より具体的には、ワイヤーハーネスWHに取り付けられるハーネス保持部52の外周部の一部分から外周側に向けて基軸部が突出している。そして、この固定部54をドアインナーパネル7に形成された孔部に挿入することにより、係止部が、孔部の周縁部に当接して内周側に弾性変形し、孔部を越えると外周側に弾性復帰して孔部の周縁部に対して車外側から係止する。
【0061】
このように、ハーネス保持部52をワイヤーハーネスWHに取り付けた状態で、固定部54が孔部に嵌合されることにより、ワイヤーハーネスWHが引出口部48でドアインナーパネル7に対して固定される。これにより、ハーネス収容部45内で余長吸収されるワイヤーハーネスWHが引出口部48を通じて進退することが抑制され、ドア6内で各種電気機器に接続されるワイヤーハーネスWHに引張り及びたるみが発生することができる。
【0062】
ガイドクランプ55は、ドア6にワイヤーハーネスWHを配索する際に、収容部40の案内部41内に収容される外装部材20の他方の端部を含む部分について、車内側に膨らんでドアインナーパネル7から離間すること、及び、案内部41内に収容される位置より垂れ下がることを抑制する部材である。すなわち、トリム8が取り付けられない状態では、外装部材20は、自身の剛性により車体2の前後方向に沿った直線状の形態を維持しようとすると共に、重力により垂れ下がろうとする。そして、一般的に、ドア6にワイヤーハーネスWHが配索されるのはドア6が開状態のときであるため、開状態のドア6は車外側に姿勢変更され、外装部材20の他方の端部を含む部分は、第1部分72内から抜け出してしまうと共に、上下方向に支えられない状態で垂れ下がってしまう。このため、トリム8をドアインナーパネル7に取り付ける際の作業性を向上させるためにガイドクランプ55を設けている。
【0063】
このガイドクランプ55は、収容部40の導入開口部42でドアインナーパネル7に固定され、外装部材20の他方の端部寄りの一部分をスライド移動可能に支持する部材である(図8、図9参照)。ガイドクランプ55は、ガイド部56と、固定部58とを有している。
【0064】
ガイド部56は、開口を通じて外装部材20を内部に配置可能な断面視C字形の溝状に形成されている。より具体的には、ガイド部56は、断面視略長方形の辺のうち一辺(ここでは一方の長辺)の中間部分が開口した形状である。そして、この開口部を通じて、ガイド部56内に外装部材20を配置することができる。ガイド部56の開口部は、内部に配置される外装部材20が抜け出ることを防ぐため、該外装部材20の断面視における長手方向の寸法より小さい開口幅に設定されている。なお、ガイド部56における断面視長方形の辺のうち他方の長辺の外周部には、後述する固定部58が設けられている。また、ガイド部56は、外装部材20をスライド移動可能に内部に配置可能(ここでは、外装部材20の外周部より僅かに大きい内部形状)に設定されていると共に、案内部41内に配置可能(すなわち、案内部41の内部形状より小さい外部形状)に設定されている。
【0065】
また、ガイド部56は、外装部材20のスライド方向両側の端部を含む各部分が、各端部に向けて外周側に拡がる(ここでは徐々に拡がる)形状に形成されている(図9参照)。これにより、ガイド部56を通ってスライド移動される外装部材20が、ガイド部56の各端部に引っ掛かることを抑制でき、ドア6の開閉動作に伴う外装部材20のドア6内における進退動作をスムーズにすることができる。なお、ガイド部の端部は、外周部がスライド方向に沿った略平面状に形成され、内周部が外周部に近接するように外周側に拡がる形状でもよい。
【0066】
固定部58は、導入開口部42の位置で、ドアインナーパネル7の第1部分72の底部に形成された孔部に対して嵌合可能に形成されている。この固定部58は、ハーネスクランプ50の固定部54と同様の形状である。ここでは、固定部58は、ガイド部56において断面視長方形の辺のうち他方の長辺の外周部の一部分から基軸部が突出し、その基軸部の先端部から外周側に拡がる形状で係止部が設けられている。そして、ガイド部56の断面視長方形の辺のうち長辺が上下方向に沿う姿勢で、孔部に対して車外側に向けて押し付けることにより、固定部58がドアインナーパネル7に固定される。
【0067】
もっとも、ガイド部56は、上記形状に限られるものではない。例えば、図10に示すガイドクランプ155のように、ガイド部156が、断面視長方形の辺のうち短辺(ここでは、固定部58が孔部に嵌合した状態における上側の短辺)の中間部分が切り欠かれた形状に形成されていてもよい。この場合、ガイド部156において断面視長方形の辺のうち車内側に位置する長辺全部が存在するため、固定部58をドアインナーパネル7に嵌合させる際に、ドアインナーパネル7に向けて押し付ける力を加え易く、ガイドクランプ55のドア6に対する取り付け作業性を向上させることができる。また、外装部材20がドアインナーパネル7から車内側に向けて離間する移動をより確実に規制することができる。
【0068】
また、ガイド部は、溝状に形成されるものに限られず、例えば、筒状に形成されていてもよい。なお、筒状に形成されるガイド部は、外装部材20を挿通して内部に配置するものでもよいし、2部材で構成されて外装部材20を挟むようにして内部に配置するものでもよい。
【0069】
上記ワイヤーハーネス配索構造部10は、車体2からドア6内に配索されるワイヤーハーネスWH、外装部材20、車体取付部材30、ハーネスクランプ50及びガイドクランプ55をモジュール化して、車両組付け前に組み立てておくとよい。すなわち、ワイヤーハーネスWHに外装部材20を被せるとともに、外装部材20の一方の端部寄りの一部分に車体取付部材30を装着し、該外装部材20の一方の端部及び他方の端部を各部から延び出たワイヤーハーネスWHにテープ90巻きして固定する。また、ワイヤーハーネスWHにおける引出口部48の位置に配置する部分にハーネスクランプ50を取り付けると共に、外装部材20の他方の端部寄りの部分にガイドクランプ55を取り付けておくとよい。
【0070】
そして、車両取付時には、車体取付部材30を車体2に取り付ける。また、ハーネスクランプ50を引出口部48の位置でドアインナーパネル7に固定すると共に、ガイドクランプ55を導入開口部42の位置でドアインナーパネル7に固定した後に、トリム8をドアインナーパネル7に取り付けることにより収容部40を構成して、ワイヤーハーネス配索構造部10が構成される。
【0071】
これまで、ガイドクランプ55を備えるワイヤーハーネス配索構造部10について説明してきたが、ガイドクランプ55は省略されてもよい。
【0072】
また、これまで、ワイヤーハーネス配索構造部10を、フロントサイドドアとしてのドア6に適用する例で説明したが、車体2とヒンジで連結される他のドアに対しても適用可能である。例えば、リアサイドドアに適用する場合、センターピラー(フロントサイドドアとリアサイドドアとの間のピラー)とリアサイドドアとの間にワイヤーハーネスWHが架け渡される。すなわち、センターピラーに孔部が形成され、ここに車体取付部材30が取り付けられる。
【0073】
第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部10によると、ドア6の骨格部分を構成するドアインナーパネル7の第1部分72と、ドア6の内装部分を構成するトリム8の第2部分82とが、導入開口部42を通じて挿入されるワイヤーハーネスWHを、迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する収容部40を構成する。このため、ワイヤーハーネスWHをドア6内で収容する樹脂成形プロテクタ等の専用部品を省略することができる。これにより、ドア6全体としての軽量化、前記専用部品の設計、製造等にかかるコストの削減を図ることができる。
【0074】
また、ワイヤーハーネスWHより高い剛性を有する筒状の外装部材20がワイヤーハーネスWHにおける車体2とドア6との間に架け渡される部分を覆うと共に、外装部材20の一方の端部寄りの一部分が車体取付部材30により車体2に取り付けられる。このため、車体2とドア6との間におけるワイヤーハーネスWHを、その垂れ下がり及び屈曲を抑制して案内部41内にスムーズに導入することができる。また、収容部40の案内部41により、導入開口部42を通じて挿入される外装部材20の他方の端部を含む一部分の変位経路を案内すると共に、ハーネス収容部45により外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを迂回可能な余裕空間を有する状態で収容するため、ドア6の開閉動作に伴うワイヤーハーネスWHのドア6内における進退動作をスムーズに行うことができる。
【0075】
また、第1部分72が余裕空間を含む収容空間を有する凹形状に形成され、第2部分82が第1部分72の車外側の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されているため、トリム8に凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部40を確保して、ワイヤーハーネスWHを収容するための樹脂成形プロテクタ等の専用部品を省略することができる。
【0076】
また、導入開口部42の位置でドアインナーパネル7に固定されるガイドクランプ55により、外装部材20の他方の端部寄りの一部分がスライド移動可能に支持されるため、ワイヤーハーネスWHのドア6内配索時に容易に外装部材20を位置決めして配置することができる。これにより、トリム8をドアインナーパネル7に取り付ける作業もスムーズに行うことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0077】
また、上記ガイドクランプ55は、開口を通じて外装部材20を内部に配置可能な断面視C字形状の溝状に形成されているため、ガイドクランプ55の外装部材20に対する取付作業性がよい。
【0078】
また、ガイドクランプ55における外装部材20のスライド方向両側の端部を含む各部分が、各端部に向けて外周側に拡がる形状に形成されているため、ガイドクランプ55内をスライド移動する外装部材20のドア6内における進退動作をよりスムーズにすることができる。
【0079】
また、車体取付部材30は、凹凸嵌合部38によりワイヤーハーネスWHを覆う外装部材20の一端側部分を位置決めして、貫通孔部2hに対して一方側から押し付けるだけで嵌合するように構成されているため、ワイヤーハーネスWHを容易に車体2側に配索することができる。
【0080】
また、ワイヤーハーネス配索構造部10は、ワイヤーハーネスWHをドアインナーパネル7とトリム8との間に配索しているため、ワイヤーハーネスWHを貫通孔に挿通して配索する手間を省けると共に露出した作業スペースで組み付け作業ができ、組付性の向上及び作業の効率化が図れる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部210について説明する(図11参照)。なお、ワイヤーハーネス配索構造部210のうち、第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部10と異なる構成は、収容部240を構成する第1部分272と第2部分282との組み合わせだけであり、同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。また、収容部240の全体としての形状は、第1実施形態に係る収容部40と同様であるため、全体形状に関する符号(41〜48)については同符号を付している。
【0082】
第2部分282は、トリム208において、ドア6の前端側及び車外側に向けて開口し、余裕空間を含む収容空間を形成する凹形状に形成されている。より具体的には、第2部分282は、トリム208の裏面から収容部40の側面視形状と同形状に突出するリブを側壁として有する凹部である。また、第1部分272は、ドアインナーパネル207において、第2部分282の車外側の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている。この第1部分272は、第2部分282の車外側の開口を塞ぐように、該開口縁部と同じかそれより大きい(ここでは大きい)平坦面状に形成されている。
【0083】
そして、ドア6の前端部側の第1部分272及び第2部分282の端縁部を含む部分により、ドア6の導入開口部42が構成されている。ここでは、ハーネス収容部45の第1壁部46及び第2壁部47は、第2部分282の内壁部で構成されている。
【0084】
第2実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部210によると、第2部分282が余裕空間を含む収容空間を有する凹形状に形成され、第1部分272が第2部分282の車外側の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されているため、トリム208に凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部240を確保して、ワイヤーハーネスWHを収容するための専用部品を省略することができる。
【0085】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部310について説明する(図12参照)。なお、ワイヤーハーネス配索構造部310のうち、第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部10と異なる構成は、収容部340を構成する第1部分372と第2部分382との組み合わせだけであり、同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。また、収容部340の全体としての形状は、第1実施形態に係る収容部40と同様であるため、全体形状に関する符号(41〜48)については同符号を付している。
【0086】
第1部分372は、ドアインナーパネル307において、ドア6の前端側及び車内側に向けて開口し、余裕空間を含む収容空間を形成する凹形状に形成されている。より具体的には、第1部分372は、ドアインナーパネル307の車内側の一面から、車外側に向けて凹ませて形成されている。また、第2部分382は、トリム308において、ドア6の前端側及び車外側に向けて開口し、余裕空間を含む収容空間を形成する凹形状に形成されている。より具体的には、第2部分382は、トリム308の裏面から第1部分372の周縁部と対応する形状に突出するリブを側壁として有する凹部である。すなわち、第1部分372と第2部分372は、両方が余裕空間を含む収容空間を形成する凹形状に形成され、突き合わされた状態で各開口縁部が対向して互いに沿うように設定されている。
【0087】
そして、ドア6の前端部側の第1部分372及び第2部分382の端縁部を含む部分により、ドア6の導入開口部42が構成されている。ここでは、ハーネス収容部45の第1壁部46及び第2壁部47は、第2部分382の内壁部で構成されている。
【0088】
第3実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造部310によると、第1部分372及び第2部分382の両方が余裕空間を含む収容空間を形成する凹形状に形成されているため、ドアインナーパネル307及びトリム308に比較的大きな凹形状の部分を形成することが困難な場合でも、収容部340を確保して、ワイヤーハーネスWHを収容するための専用部品を省略することができる。
【符号の説明】
【0089】
2 車体
6 ドア
7、207、307 ドアインナーパネル
8、108、208、308 トリム
10、110、210、310 ワイヤーハーネス配索構造部
20 外装部材
30 車体取付部材
40、140、240、340 収容部
42 導入開口部
48 引出口部
50 ハーネスクランプ
55、155 ガイドクランプ
WH ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体に連結されたドアとの間でワイヤーハーネスを配索するワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記ワイヤーハーネスと、
前記ドアの骨格部分を構成し、第1部分を有するドアインナーパネルと、
前記ドアの内装部分を構成し、第2部分を有するトリムと、
を備え、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記ワイヤーハーネスが挿入される導入開口部を有し、前記導入開口部を通じて挿入される前記ワイヤーハーネスを、該ワイヤーハーネスが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する収容部を構成する、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記第1部分は、前記余裕空間を形成する凹形状に形成され、
前記第2部分は、前記第1部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記第2部分は、前記余裕空間を形成する凹形状に形成され、
前記第1部分は、前記第2部分の開口縁部が延在する面に対応した面に沿って延在する形状に形成されている形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記第1部分及び前記第2部分の両方が、前記余裕空間を形成する凹形状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記収容部の前記導入開口部で前記ドアインナーパネルに固定され、前記外装部材の他方の端部寄りの一部分をスライド移動可能に支持する溝状又は筒状のガイドクランプをさらに備えている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記ガイドクランプは、開口を通じて前記外装部材を内部に配置可能な断面視C字状の溝状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のワイヤーハーネス配索構造部であって、
前記ガイドクランプは、前記外装部材のスライド方向両側の端部を含む各部分が、各端部に向けて外周側に拡がる形状に形成されている、ワイヤーハーネス配索構造部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−192821(P2012−192821A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57751(P2011−57751)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】