説明

ワイヤーハーネス

【課題】モータを駆動源とする車両に搭載される場合に放熱性を高めて、通電時における電線の温度上昇を抑えることが可能なワイヤーハーネスを提供すること。
【解決手段】複数本の電線12と、複数本の電線12の外周を覆う電線保護材16とを備え、電線保護材16の周面に複数の通気孔を有するワイヤーハーネス10とする。複数本の電線12の外周にはシールド層14が形成されていても良い。電線保護材16としては、網目状シートが好適である。電線12としてはフラットケーブルが好ましい。複数本の電線12は、電線保護材16の内側で互いに重ならないように横並びに配置されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、電気自動車やハイブリッド車などのモータを駆動源に用いる車両に用いて好適なワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両には複数本の電線が用いられている。複数本の電線は、通常、束ねられて配索されている。束ねられた複数本の電線は、車載部品等の外部干渉から保護するために、電線保護材で覆われることがある。
【0003】
このような電線保護材としては、例えば特許文献1には、円環状の山部と谷部とが軸線方向に交互に設けられてなるコルゲート状のチューブが開示されている。複数本の電線は、このチューブ内に挿通される。また、特許文献2には、保護材としてテープ材が開示されている。テープ材は、束ねられた複数本の電線の外周面に巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−336754号公報
【特許文献2】特開2003−272447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気自動車やハイブリッド車などのモータを駆動源に用いる車両の開発が進められている。これらの車両に配策される電力線などの電線は、モータの高出力化に伴い、通電時の発熱が大きく、高温になりやすくなっている。また、複数本の電線は束ねられて配索されるため、互いに密着していると電線表面からの放熱が妨げられやすい。そのため、より一層、電線は高温になりやすい。そうすると、電線の絶縁体や電線保護材の耐熱性の観点から、通電可能な許容電流値が低下する問題が生じる。
【0006】
この問題に対し、例えば電線の絶縁体や電線保護材の耐熱性を向上させる対策も考えられるが、これには材料の改良が必要である。また、導体断面積を大きくして発熱を抑えるとすれば、電線の省スペース化・軽量化が図りにくい。したがって、これらとは別の観点から、通電時における電線の温度上昇を抑える対策が必要である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、放熱性を高めて通電時における電線の温度上昇を抑えることが可能なワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るワイヤーハーネスは、モータを駆動源とする車両に搭載されるワイヤーハーネスであって、複数本の電線と、前記複数本の電線の外周を覆う電線保護材とを備え、前記電線保護材はその周面に複数の通気孔を有することを要旨とするものである。
【0009】
本発明に係るワイヤーハーネスにおいては、複数本の電線の外周にシールド層が形成されていても良い。複数の通気孔を有する電線保護材の空孔率は10%以上であることが好ましい。電線保護材としては網目状シートが好ましい。複数本の電線としてはフラットケーブルが好ましい。電線の導体断面積は5mm以上が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るワイヤーハーネスは、複数本の電線よりなる電線束の外周を覆う電線保護材が複数の通気孔を有するものである。電気自動車やハイブリッド車などのモータを駆動源とする自動車等の車両に搭載されたワイヤーハーネスは、走行中に外部からの風を受けることができる。外部からの風は電線保護材に設けられた通気孔を通って電線表面に当たることができる。これにより、電線表面からの放熱性を高めることができるため、通電時における電線の温度上昇を抑えることができる。また、これにより、通電時の発熱が大きく、高温になりやすい電気自動車やハイブリッド車の電力線などの電線において、通電可能な許容電流が低下するのを抑えることができる。
【0011】
この際、前記電線保護材の空孔率が10%以上である場合には、通電時の放熱性に優れる。
【0012】
また、前記複数本の電線がフラットケーブルである場合には、丸線と比較して同じ導体断面積でも表面積が大きいため、さらに通電時の放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態に係るワイヤーハーネスを表す斜視図である。
【図2】第一実施形態に係るワイヤーハーネスの変形例を表す斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係るワイヤーハーネスを表す斜視図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係るワイヤーハーネスを表す斜視図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係るワイヤーハーネスを表す斜視図である。
【図6】風を当てたときの許容電流値の変化を表わすグラフである。
【図7】網目状シートの空孔率と許容電流値との関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るワイヤーハーネス10は、複数本のフラットケーブル12と、複数本のフラットケーブル12の外周を覆ってフラットケーブル12の導体18を電磁的にシールドするシールド層14と、シールド層14の外周に配置され、複数本のフラットケーブル12を束ねてこれらを保護する網目状シート16とを備えている。
【0016】
本発明に係るワイヤーハーネスは、駆動源にモータを用いる自動車等の車両に搭載されるものであり、モータの高出力化による大電流化によって電線の発熱が無視できないほど高いところに用いられるものである。駆動源にモータを用いる自動車としては、例えば電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車などを挙げることができる。ワイヤーハーネスは、例えば、これらの車両のモータに接続され、比較的大電流が通電される電力線などとして用いられる。
【0017】
フラットケーブル12は、導体18と、導体18の外周を覆う絶縁体20とを備えている。導体18は、複数本の撚線22が同一平面上に並行に並べられたものから構成されている。撚線22は、複数本の素線24が撚り合わされて形成されている。複数本の撚線22は、隣り合う撚線22同士が互いに接触する部分を有している。隣り合う撚線22同士の接触する部分は、長手方向において、全長にわたっていても良いし、一部分であっても良い。隣り合う撚線22同士が接触していることにより、一つの導体として機能していれば良いため、隣り合う撚線22同士は、長手方向において接触していない部分が生じていても良い。
【0018】
導体18の許容電流値は、使用条件や導体18を覆う絶縁体20の耐熱性等により異なるものであり、一概に定めることはできないが、大電流を通電するところに用いられるものであることから、好ましくは50A、より好ましくは100A、さらに好ましくは150Aである。導体18の断面積は、導体18の許容電流値との関係で定めることになるため、一概に定めることはできないが、例えば、許容電流値50Aにおいては5mm以上であることが好ましい。また、例えば、許容電流値100Aおいては20mm以上であることが好ましい。さらに、例えば、許容電流値150Aおいては30mm以上であることが好ましい。
【0019】
素線24の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などを例示することができる。銅、銅合金としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、リン青銅などを例示することができる。素線24は、軟質のものでも良いし、硬質のものでも良い。素線24には、スズやニッケルなどの金属めっきが施されていても良い。
【0020】
絶縁体20の材料は、特に限定されるものではないが、大電流を通電するところに用いられるものであることから、高耐熱性を有する材料であることが好ましい。絶縁体20の材料としては、例えば、ポリプロピレン・ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を例示することができる。絶縁体20の材料は、耐熱性を高めるために、架橋処理が施されていても良い。
【0021】
複数本のフラットケーブル12は、配索される際には、互いに積み重ならないように配置されることが好ましい。フラットケーブル12の大口面20aが他のフラットケーブル12によって覆われないほうが放熱性に優れるからである。また、配索スペースを考慮するときには、複数本のフラットケーブル12は、フラットケーブル12の大口面20aが他のフラットケーブル12によって部分的に覆われるように重ねられて配置されていても良いし、図2に示すように、フラットケーブル12の大口面20aが他のフラットケーブル12によって全面的に覆われるように積層配置されていても良い。第一実施形態に係るワイヤーハーネス10は、電線保護材が網目状シート16で形成されているため、配策スペースに合わせて種々の束ね方を採用することができる。
【0022】
シールド層14は、複数本の金属素線を編み込んで形成された編組よりなる。シールド層14としては、フラットケーブル12の導体18を電磁的にシールドするものであれば特に限定されないため、例えば箔状の金属テープであっても良いし、フラットケーブル12全体の外周に金属素線を螺旋状に巻き付けてなる構成のものであっても良い。また、フラットケーブル12全体の外周を覆う構成だけでなく、各フラットケーブル12の外周をそれぞれ別個に覆う構成であっても良い。
【0023】
網目状シート16は、複数本のフラットケーブル12全体を包み込むように複数本のフラットケーブル12全体に巻き付けられてその外側に配置されており、車載部品等の外部干渉から電線を保護する電線保護材として機能する。また、網目状シート16の網目は通気孔として機能するため、網目状シート16は通気性に優れる構成になっている。なお、複数本のフラットケーブル12全体に巻き付けされた網目状シート16は、包みが解けないようにテープ等により固定されていても良い。
【0024】
電気自動車等に搭載されたワイヤーハーネスは、配索場所の構造上、走行中に外部からの風を受けることができるようになっている。外部からの風は、網目状シート16の網目を通ってフラットケーブル12の表面に当たることができる。これにより、フラットケーブル12の表面からの放熱性を高めることができるため、通電時におけるフラットケーブル12の温度上昇を抑えることができる。したがって、通電時に通電可能な許容電流値が低下するのを抑えることができる。
【0025】
網目状シート16の空孔率としては、通気性の向上によってフラットケーブル12の放熱性に優れるなどの観点から、10%以上であることが好ましい。より好ましくは30%以上、さらに好ましくは 50%以上である。一方、網目状シート16の材質や厚さにも関係するが、強度や成形性に優れるなどの観点からいえば、網目状シート16の空孔率は、90%以下であることが好ましい。より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0026】
網目状シート16の空孔率は、網の部分と網目の部分とを合わせた全体の体積(見かけ体積)に対する網目の部分の体積の割合で表わすことができる。網の部分の体積を真体積とすると、網目状シート16の空孔率は、以下の式(1)によって表わすことができる。見かけの体積は、厚さ×幅×長さにより算出できる。真体積は、水中に沈めたときの増加体積により求めることができる。
【0027】
空孔率=[1−{(真体積)/(見かけ体積)}]×100 (1)
【0028】
網目状シート16の網目の大きさは、通気性と強度とのバランスを考慮して適宜定めれば良い。また、網目状シート16の厚さは、材質、通気性、強度、巻きやすさ等のバランスを考慮して適宜定めれば良い。
【0029】
網目状シート16の材料としては、ポリプロピレン・ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、各種エラストマー等を例示することができる。
【0030】
次に、本発明の第二実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。図3に示すように、第二実施形態に係るワイヤーハーネス110は、複数本のフラットケーブル12と、複数本のフラットケーブル12の外周を覆ってフラットケーブル12の導体18を電磁的にシールドするシールド層14と、シールド層14の外周に配置され、複数本のフラットケーブル12を束ねてこれらを保護するコルゲートチューブ116とを備えている。
【0031】
第二実施形態に係るワイヤーハーネス110は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と比較して電線保護材の構成が相違するのみであり、これ以外の構成は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
複数本のフラットケーブル12を覆っているコルゲートチューブ116は、円環状の山部116aと谷部116bとが軸線方向(長手方向)に沿って交互に形成された蛇腹状の中空のチューブ体よりなるものである。そのため、その軸線を曲げつつ、自在に屈曲可能になっている。コルゲートチューブ116は、軸線方向(長手方向)に沿って全長にわたって切り込み116cが形成されている、いわゆる半割構造をしている。複数本のフラットケーブル12を覆う際には、切り込み116cを開いて複数本のフラットケーブル12を内部に収容した後、切り込み116cを閉じるようにする。なお、コルゲートチューブ116は、軸線方向に沿って切り込み116cが形成されていないものであっても良い。
【0033】
コルゲートチューブ116の周面には複数の貫通孔116dが形成されている。貫通孔116dは、コルゲートチューブ116の山部116a、谷部116b、あるいはその両方に形成されていても良い。この貫通孔116dは通気孔として機能するため、コルゲートチューブ116は通気性に優れる構成になっている。そのため、電気自動車等に搭載されると、走行中(通電中)に、この貫通孔116dを通ってフラットケーブル12の表面に外部からの風が当たることによってフラットケーブル12の表面が冷却されるため、フラットケーブル12の表面からの放熱性を高めることができる。これにより、通電時におけるフラットケーブル12の温度上昇を抑えることができるため、通電時に通電可能な許容電流値が低下するのを抑えることができる。
【0034】
貫通孔116dの孔径や個数は、特に限定されるものではない。コルゲートチューブ116の周面における空孔率としては、通気性に優れるなどの観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。また、強度、成形性に優れるなどの観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0035】
コルゲートチューブ116の材料としては、ポリプロピレン・ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル系エラストマー、フッ素系樹脂等を例示することができる。
【0036】
コルゲートチューブ116は、横断面が楕円形となる、いわゆる扁平形状に成形されても良い。この場合には、その内部に収容される複数本のフラットケーブル12が互いに重ならないように横並びに配置できる。
【0037】
次に、本発明の第三実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。図4に示すように、第三実施形態に係るワイヤーハーネス210は、複数本のフラットケーブル12と、複数本のフラットケーブル12の外周を覆ってフラットケーブル12の導体18を電磁的にシールドするシールド層14と、シールド層14の外周に配置され、複数本のフラットケーブル12を束ねてこれらを保護するチューブ体216とを備えている。
【0038】
第三実施形態に係るワイヤーハーネス210は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と比較して電線保護材の構成が相違するのみであり、これ以外の構成は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
チューブ体210は、その内部に収容される複数本のフラットケーブル12が互いに重ならないように配置可能な、横断面が楕円形となる、扁平形状に成形された樹脂製チューブで構成されている。その周面には複数の貫通孔216dが形成されており、この貫通孔216dは通気孔として機能するため、チューブ体210は通気性に優れる構成になっている。これにより、通電時には、その内部に収容されるフラットケーブル12の表面からの放熱性を高めることができる。なお、チューブ体210は、円筒形状や角筒形状等に成形されていても良い。角筒形状においては、断面が正方形よりも長方形であるほうが複数本のフラットケーブル12が互いに重ならないように配置しやすい。複数本のフラットケーブル12が互いに重ならないように配置されているほうが、より放熱性に優れる。
【0040】
貫通孔216dの孔径や個数は、特に限定されるものではない。チューブ体210の周面における空孔率としては、通気性に優れるなどの観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。また、強度、成形性に優れるなどの観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0041】
チューブ体210の材料としては、ポリプロピレン・ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を例示することができる。
【0042】
次に、本発明の第四実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。図5に示すように、第四実施形態に係るワイヤーハーネス310は、複数本の丸線312と、複数本の丸線312の外周を覆って導体318を電磁的にシールドするシールド層14と、シールド層14の外周に配置され、複数本の丸線312を束ねてこれらを保護する網目状シート16とを備えている。
【0043】
第四実施形態に係るワイヤーハーネス310は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と比較して電線の構成が相違するのみであり、これ以外の構成は、第一実施形態に係るワイヤーハーネス10と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
丸線312は、導体318と、導体318の外周を覆う絶縁体320とで構成されている。導体318は、複数本の素線24を撚り合わせて形成された撚線22よりなっている。素線24の材料や絶縁体320の材料は、上記するフラットケーブル12における各材料と同様のものを用いれば良い。なお、導体318は、撚線22ではなく素線であっても良い。
【0045】
複数本の丸線312は、放熱性の観点から、配索される際には、互いに積み重ならないように配置されることが好ましい。
【0046】
本発明に係るワイヤーハーネスは、第四実施形態に係るワイヤーハーネス310において、電線保護材として、網目状シート16に代えて、第二実施形態におけるコルゲートチューブ116を用いたものであっても良いし、第三実施形態におけるチューブ体216を用いたものであっても良い。さらに、各実施形態においては、シールド層14を有しているが、使用態様によってはシールド層14を有しない構成であっても良い。シールド層14を有しない構成の場合には、電線表面からの放熱性をより高めることができる。
【0047】
また、第一〜第三実施形態においては、導体18の構成が、複数本の撚線22を幅方向に一列に並行に配置してなる構成であるが、さらに厚み方向にも複数本の撚線22を配置しても良い。また、これ以外にも、導体18の構成が、複数本の金属素線を並行に配置してなる構成であっても良いし、平角状であっても良い。また、本発明に係るワイヤーハーネスにおけるフラットケーブル12や丸線312の本数は特に限定されなくても良い。
【0048】
フラットケーブル12は、例えば、複数本の撚線22を幅方向に複数本配置して導体18を形成し、導体18の外周を覆うように絶縁体20を形成することにより製造することができる。絶縁体20は、導体18の外周に樹脂等の絶縁材料を押出成形することにより形成することができるし、導体18を一対の絶縁性フィルム間に挟み込むことにより形成することもできる。要するに、導体18を所定形状に維持した状態で外部からの絶縁保護を図ることができる構成であれば良い。
【0049】
ワイヤーハーネス10は、例えば、複数本のフラットケーブル12を束ねるとともに、束ねられた複数本のフラットケーブル12の外周を編組などのシールド層14で覆った後、シールド層14の外周に網目状シート16を巻き付けることにより製造することができる。電線保護材がコルゲートチューブ116あるいはチューブ体216等の筒状体の場合には、例えば、シールド層14で覆われた複数本のフラットケーブル12を筒状体の内部に挿通することにより製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
下記構成の丸線およびフラットケーブルについて、許容電流値を測定した。許容電流値は、雰囲気温度80℃で各電線に通電し、温度上昇Δtが70℃になる電流値とした。併せて、電線の本数、電線の並べ方、編組の追加、電線保護材の追加、保護材の種類による許容電流値の影響を調べた。表1に結果を示す。本実施例においては、風を当てない条件で許容電流値の測定を行なっている。表1において、横並べとは、複数本の電線が重ならないように横並びに配置する並べ方である。編組は電線3本を束ねた電線束の外周を覆うように配置した。また、電線保護材は、編組の外周を覆うように配置した。
【0052】
・丸線A:導体断面積20mm、電線外径8.7mm、絶縁体材料(架橋ポリオレフィン)、絶縁体の厚み1.1mm
・フラットケーブルB:導体断面積20mm、電線厚3.3mm、電線幅20mm、絶縁体材料(架橋ポリオレフィン)、絶縁体の厚み0.7mm
・フラットケーブルC:導体断面積14mm、電線厚3.3mm、電線幅14.4mm、絶縁体材料(架橋ポリオレフィン)、絶縁体の厚み0.7mm
・網目状シートD:ポリプロピレン(PP)製、15メッシュ、繊維径0.35mm、空孔率73%、厚み0.7mm
・コルゲートチューブE:ポリアミド(PA6)製、通気孔なし、内径25mm
【0053】
【表1】

【0054】
表1によれば、丸線A、フラットケーブルCのいずれを用いたときにも、電線本数の増加、編組の追加、電線保護材の追加にしたがって許容電流値が低下しており、放熱性が低下していることが分かる。丸線AとフラットケーブルCとを比較すれば、フラットケーブルの方が表面積が大きく、放熱性に優れるため、同じ許容電流値を得るに際し、フラットケーブルにすることにより断面積を小さくできることが分かる。フラットケーブルCにおいては、複数本のフラットケーブルを積層すると許容電流値が低下し、放熱性が低下することが分かる。
【0055】
(実施例2)
(実施例2−1)
丸線Aを3本横並べにした電線束の外周を編組で覆い、編組の外周を網目状シートDで覆って、実施例2−1に係るワイヤーハーネスを形成した。
【0056】
(実施例2−2)
丸線Aに代えてフラットケーブルCを用いた点以外は実施例2−1と同様にして、実施例2−2に係るワイヤーハーネスを形成した。
【0057】
(比較例2−1)
網目状シートDに代えてコルゲートチューブEを用いた点以外は実施例2−1と同様にして、比較例2−1に係るワイヤーハーネスを形成した。
【0058】
各ワイヤーハーネスについて、風を当てたときの許容電流値の影響を調べた。その結果を表2および図6に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2および図6によれば、丸線Aを含むワイヤーハーネスに風を当てると、通気孔を有していないコルゲートチューブで覆われた場合(比較例2−1)に比べて、通気孔を有する網目状シートで覆われた場合(実施例2−1)には許容電流値が大きく上昇していることが分かる。この結果から、電線保護材に通気孔を設けたことによって、風を当てたときの電線の放熱性の向上効果が格段に上がっていることが分かる。さらに、実施例2−1と実施例2−2とを比較すると、丸線よりもフラットケーブルを用いたときのほうが、風を当てたときの電線の放熱性の向上効果に優れていることも確認できた。
【0061】
(実施例3)
丸線Aを3本横並べにした電線束の外周を編組で覆い、編組の外周を網目状シートで覆ってワイヤーハーネスを形成した。当該構成のワイヤーハーネスにおいて、網目状シートの空孔率による許容電流値の影響を調べた。この際、風速を5m/sとした。その結果を表3および図7に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
表3および図7によれば、空孔率が10%以上のときには、許容電流値が大きく上昇しており、放熱性に優れることが確認できた。また、空孔率の上昇に伴って許容電流値が上昇し、空孔率が50%以上で放熱性向上効果が飽和していることが分かる。したがって、空孔率が50%以上のときには、特に放熱性に優れることが確認できた。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10、110、210、310 ワイヤーハーネス
12 フラットケーブル
312 丸線
14 シールド層
16 網目状シート
116 コルゲートチューブ
216 チューブ体
18 導体
20 絶縁体
22 撚線
24 素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動源とする車両に搭載されるワイヤーハーネスであって、
複数本の電線と、前記複数本の電線の外周を覆う電線保護材とを備え、
前記電線保護材は、その周面に複数の通気孔を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記複数本の電線の外周にはシールド層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記電線保護材の空孔率は10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記電線保護材は網目状シートであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記複数本の電線はフラットケーブルであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
前記電線の導体断面積は5mm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−287537(P2010−287537A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142471(P2009−142471)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】