説明

ワイヤ成形装置

【課題】成形途中におけるワイヤの切断加工や切断部位を選択する際の自由度を高めることができるワイヤ成形装置を実現する。
【解決手段】複数の動作の異なる成形ツールと1つの切断ツールとが着脱自在に放射状に配置され、当該複数の成形ツールと前記1つの切断ツールの中から所定のツールを選択できるように、ワイヤ軸線Lと所定の角度をなす駆動軸を中心に回転するツール選択テーブル210と、前記ツール選択テーブルを回転させる選択テーブル駆動手段211とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワイヤを送り出しながら、成形ツールにより強制的にワイヤを折曲、湾曲あるいは捲回させると共に、切断ツールにより切断して多様な形状の部品を成形するワイヤ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数種類の成形ツール(切断ツール以外)を放射状に支持するツール選択テーブルを回転させて任意のツールを選択できるスプリング製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3026793号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、切断ツールをツール選択テーブルに装着することはできないので、ベース上に別途固定された補助ツール装置450,460にスライド可能に装着している。よって、常に同じ位置でワイヤを切断しなければならず、加工の自由度が制限されてしまう。
【0005】
また、従来はワイヤガイド415のワイヤが送り出される先端部に対して切断ツールTaを上方から下方へスライドさせて、ワイヤガイド415との協働によりせん断力を発生させてワイヤを切断していたが、直径5mm以上のワイヤを切断する場合、ワイヤガイドがワイヤを切断するために必要なせん断力に耐えられず変形や破損してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、成形途中におけるワイヤの切断加工や切断部位を選択する際の自由度を高めることができるワイヤ成形装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明のワイヤ成形装置は、ワイヤガイド(402)の先端部からワイヤ(W)を送り出し、当該ワイヤガイドの先端付近のワイヤ成形空間において当該ワイヤを成形ツール(T1〜T5)により強制的に折曲、湾曲あるいは捲回させると共に、切断ツール(T0)により切断して所望の形状の部品に成形するワイヤ成形装置において、前記ワイヤを前記ワイヤ成形空間に向けて送り出すワイヤフィード手段(400)と、複数の動作の異なる前記成形ツールと1つの前記切断ツールとが着脱自在に放射状に配置され、当該複数の成形ツールと前記1つの切断ツールの中から所定のツールを選択できるように、ワイヤ軸線(L)と所定の角度をなす駆動軸を中心に回転するツール選択テーブル(210)と、前記ツール選択テーブルを回転させる選択テーブル駆動手段(211)と、前記選択された成形ツール又は切断ツールをワイヤ成形空間の所定の位置に位置決めするために前記ツール選択テーブルを3次元方向に移動させる移動テーブル(203、206、208)と、前記移動テーブルを移動させるテーブル駆動手段(213、216、218)と、前記部品の成形手順に応じて前記ワイヤフィード手段、前記選択テーブル駆動手段及び前記テーブル駆動手段を制御するコントローラ(601〜607)とを具備し、前記成形ツールは、ワイヤを巻き軸に巻き付けるために当該巻き軸を回転中心として回転する巻き軸ツールを含み、前記ツール選択テーブル(210)には、ワイヤを巻き付ける巻き軸ツールを回転可能に支持する巻き軸ツールユニット(T1、T2)が取り付けられると共に、前記切断ツールを構成する切り刃と受け部を相対的に往復動作可能に支持する切断ツールユニット(T0)が取り付けられ、前記巻き軸ツールと前記切断ツールを駆動するために、前記ツール選択テーブル上に取り付けられた前記巻き軸ツールユニットと前記切断ツールユニットに駆動力を付与する共通の駆動源が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形途中におけるワイヤの切断加工や切断部位を選択する際の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施形態のスプリング製造装置の外観斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1のツール選択装置を取り出した斜視図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】ツール選択装置に切断ツールユニットのみを取り付けた状態での異なる方向から見た斜視図である。
【図7】ツール選択装置に切断ツールユニットのみを取り付けた状態での異なる方向から見た斜視図である。
【図8】図6の正面図である。
【図9】本実施形態の切断ツールユニットの切断動作前の状態を異なる方向から見た斜視図である。
【図10】(a)は図9(a)の正面図、(b)は(a)のi−i断面図である。
【図11】本実施形態の切断ツールユニットの切断動作後の状態を異なる方向から見た斜視図である。
【図12】(a)は図11(a)の正面図、(b)は(a)のii−ii断面図である。
【図13】本実施形態の切断ツールユニットにより実現可能な切断処理を例示する斜視図である。
【図14】本実施形態の切断ツールユニットにより実現可能な切断処理を例示する斜視図である。
【図15】本実施形態のスプリング製造装置の制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本発明のワイヤ成形装置を、ワイヤを所望の形状のスプリングに成形するスプリング製造装置に適用した例を説明するが、スプリング以外の部品を成形する装置にも適用可能である。
【0011】
[スプリング製造装置の全体構成]
図1は、本発明に係る実施形態のスプリング製造装置の外観斜視図である。図2は図1の正面図である。図3は図1の平面図である。
【0012】
図1乃至図3に示すように、本実施形態のスプリング製造装置は、箱体状のベース100と、このベース100の上端面に取り付けられる第1ツール選択装置200及び第2ツール選択装置300と、これら第1、第2ツール選択装置200、300の間に配置されるワイヤフィード装置400と、これら各装置を統括制御するコントローラ(図15で後述する。)とを備える。
【0013】
第1、第2ツール選択装置200、300は、ワイヤフィード装置400を中心として左右対称に配置され、複数の動作の異なる成形ツールと1つの切断ツール(以下、成形ツールと切断ツールを、ツールと総称する場合もある。)を支持する第1、第2ツール選択テーブル210、310を円周方向に回転させることにより所望のツールをスプリング成形空間に対して選択できる。
【0014】
ワイヤフィード装置400は、ベース100上から上方に延設されたフレーム401を有し、ワイヤを挟持する上下1対のフィードローラ(カバー406の下方に配置されているため不図示)を少なくとも1組、ワイヤ軸線Lの周りに回動可能に軸支する。また、フレーム401は、その上下方向の中央部付近においてワイヤガイド402をワイヤ軸線Lまわりに回動可能に軸支する。ワイヤガイド402は、ワイヤフィード装置400によりワイヤ軸線Lに沿って送り出されるワイヤをスプリング成形空間に向けて案内しつつ、その先端部からワイヤを送り出す。
【0015】
ワイヤガイド402を回動させるのは、ワイヤガイド402の傾斜面側の空間を変化させることでスプリング成形空間を変化させ、ツールの位置に関係無く所望形状のスプリングを成形できるようにするためである。フィードローラは、フィードローラ駆動モータ404によりワイヤの送出方向に回転駆動され、更にフィードローラ転動モータ405によりワイヤを挟持しつつ捻るようにワイヤ軸線Lまわりに回転駆動される。
【0016】
スプリング成形空間として機能するのは、ワイヤガイド402と、第1及び第2ツール選択装置200、300により作業位置に移動されたツールとで囲まれたスペースである。
【0017】
[ツール選択装置の構成]
次に、本実施形態のスプリング製造装置に搭載されるツール選択装置について説明する。尚、第1ツール選択装置200と第2ツール選択装置300は、互いに略左右対称な構造のため、以下の説明では第1ツール選択装置200の構成についてのみ説明する。よって、図1乃至3では、第2ツール選択装置300の構成(一部省略している要素もある)を、第1ツール選択装置200の各要素の符号を300番台に置き換えて示すものとする。
【0018】
図4は図1のツール選択装置を取り出した斜視図である。図5は図4の正面図である。図6及び図7はツール選択装置に切断ツールユニットのみを取り付けた状態での異なる方向から見た斜視図である。図8は図6の正面図である。
【0019】
図4乃至図8に示すように、第1ツール選択装置200は、ワイヤ軸線Lと平行な駆動軸Dを中心に円周方向に回転可能な円盤状のツール選択テーブル210を有する。ツール選択テーブル210は、ワイヤ径やコイル内径等の様々なスプリング寸法に応じて先端形状や動作(スライド或いは回転)の異なる複数種類の成形ツールや切断ツールを着脱自在に支持する。ツール選択テーブル210は、回転選択されたツールをスプリング成形空間に向けて移動させると共に、ツール位置の微調整を行うためにツール選択テーブル210を三次元的に移動させる移動テーブル上に設置されている。なお、駆動軸Dはワイヤ軸線Lと平行な場合に限らず、所定の角度をなすように構成してもよい。
【0020】
また、第1ツール選択装置200には、ストッパー機構220が設けられている。このストッパー機構220は、エアシリンダ221と、このエアシリンダ221により往復動作するストッパー222とを有し、ストッパー222の凹部がツール選択テーブル210上の複数のツール取付部に対応する外周面に設けられた位置決めピン223に係合することで、ツール選択テーブル210が所定の選択位置で回転しないように保持する。また、ストッパー222の位置決めピン223への係合が解かれることで、ツール選択テーブル210は回転可能となる。
【0021】
移動テーブルは、図1乃至図3にも示すように、ベース100の上端面に取り付けられる前後レール202に沿って前後(X)方向に移動可能な前後テーブル203と、前後テーブル203上にフレーム204を介して固定される左右レール205に沿って左右(Y)方向に移動可能な左右テーブル206と、左右テーブル206上に固定される上下レール207に沿って上下(Z)方向に移動可能な上下テーブル208とから構成されている。
【0022】
前後テーブル203は前後駆動モータ213を駆動源としてボール付き送りネジ機構等により前後レール202に沿って移動可能となっている。左右テーブル206はその背面に設けられた左右駆動モータ216を駆動源としてボール付き送りネジ機構等により左右レール205に沿って移動可能となっている。上下テーブル208は上下駆動モータ218を駆動源としてボール付き送りネジ機構等により上下レール207に沿って移動可能となっている。
【0023】
ツール選択テーブル210は、上下テーブル208に取り付けられたテーブル駆動モータ211を駆動源としてワイヤ軸線Lと平行な駆動軸Dを中心に回転可能とされる。
【0024】
ツール選択テーブル210には、後述する切断ツールユニットT0、巻き軸ツールユニットT1、T2又は当接ツールT3〜T5が取り付け可能である。図示の例では、1つの切断ツールユニットT0と、2種類の巻き軸ツールT1、T2とが互いに120°をなし、各々のツールの間に3種類の当接ツールT3〜T5がそれぞれ配置され、所望のツールがツール選択テーブル210の回転により選択される。また、ワイヤガイド402は、フレーム401に設けられたガイド駆動モータ403によりワイヤ軸線Lを中心に回動可能とされる。
【0025】
当接ツールT3〜T5は、ワイヤガイド402から送り出されるワイヤに当接する溝部を有し、この溝部が形成された方向に強制的にワイヤを湾曲させてコイリングや曲げ加工等を行う。
【0026】
また、後述するように、ツール選択テーブル210には、切断ツールユニットT0や巻き軸ツールユニットT1、T2を駆動するために、各ツールユニットに駆動力を付与する共通の駆動源として駆動軸Dを中心に回転する傘ギヤ212が設けられている。
【0027】
本実施形態のように、複数種類のツールをツール選択テーブル210により回転選択可能に支持し、このツール選択テーブル210を3次元方向に移動可能な移動テーブル20203,206,208により3次元方向に数値制御にて移動可能としたことで、ツールの選択、ツールの駆動及びツール位置の微調整を数値制御により完全に自動化できる。
【0028】
[切断ツールユニットの構成]
図9(a)、(b)は本実施形態の切断ツールユニットの切断動作前の状態を異なる方向から見た斜視図である。図10(a)は図9(a)の正面図、図10(b)は図10(a)のi−i断面図である。図11(a)、(b)は本実施形態の切断ツールユニットの切断動作後の状態を異なる方向から見た斜視図である。図12(a)は図11(a)の正面図、図12(b)は図12(a)のii−ii断面図である。
【0029】
図9乃至図12に示すように、切断ツールユニットT0は、ツール選択テーブル210に取り付けられるベース部501と、ベース部501に軸受を介して回動自在に軸支される回転軸502と、ベース部501にスライド可能に支持されるスライダ503と、ベース部501に回動可能に軸支されると共にスライダ503に摺接するアーム部504と、を有する。
【0030】
回転軸502の外周面には、カムプロファイルとしての溝部502aが形成されている。溝部502は、回転軸502の回転による回転角の変化に応じて軸方向の位置が変位するように、当該回転軸502の軸方向に傾斜するように形成されている。また、回転軸502の一端部502bには傘ギヤ505が軸着されており、ツール選択テーブル210の駆動軸Dを中心に回転駆動される傘ギヤ212に噛合している。
【0031】
スライダ503には、上記回転軸502の溝部502aに摺動可能に係合する突起部503aが設けられており、この突起部503aが溝部502aに沿って摺動することにより回転軸502の回転動作が直線動作に変換される。また、スライダ503には、カムプロファイルとしてスライド方向に延びつつ上下に段差を有する穴部503bが形成されている。
【0032】
アーム部504の長手方向の一端部504aには、上記穴部503bに当接するローラ部504bが回転自在に軸支されると共に、他端部504cの近傍がベース部揺動軸504dを中心に回動自在に軸支されている。
【0033】
上記構成において、回転軸502が1回転する間にスライダ503がスライド方向に一往復する。また、スライダ503がスライド方向に往復動作することでアーム部504の一端部504aが穴部503bの段差に沿って上下に移動するのに伴い、アーム部504の他端部504cが揺動する。
【0034】
アーム部504の他端部504cには切り刃506が交換可能に取り付けられ、ベース部501にはこの切り刃506に隣接しワイヤの送出方向に摺接するように受け部507が交換可能に取り付けられている。これら切り刃506や受け部507は、例えば超硬合金からなり、ワイヤを案内する下方に開放する断面円弧状の溝部506a,507aがそれぞれ形成されている。そして、上記アーム部504がベース部501に対して揺動することで、切り刃506の溝部506aが受け部507の溝部507aに対して相対的にワイヤの送出方向に直交する下方に移動し、ワイヤにせん断力を付加して切断する(図11,12参照)。
【0035】
なお、図4,5に示すように、ワイヤの曲げや巻き加工を行う巻き軸ツールユニットT1、T2も、一端部に傘ギヤが軸着されたツール軸を有し、この傘ギヤがツール選択テーブル210の傘ギヤ212に噛合して回転駆動される。
【0036】
このように、切断ツールユニットT0や巻き軸ツールユニットT1、T2の傘ギヤがツール選択テーブル210の駆動軸Dに設けられた傘ギヤ212に噛み合うことによりツール選択テーブル210の回転位置によらずにどの位置でもツールを駆動可能となる。傘ギヤ212は、左右テーブル206の背面に取り付けられたツール駆動モータ(左右駆動モータ216の下方に配置されているため不図示)を駆動源としてツール選択テーブル210とは独立して回転可能に軸支されている。
【0037】
当接ツールT4、T5はツール支持部50に固定され、このツール支持部50がツール選択テーブル210に着脱可能に取り付けられるが、ツールの種類や配置等は任意に設定できる。
【0038】
従来のように切断ツールとワイヤガイドとがそれぞれの駆動機構も含めて分離した構成とは異なり、本実施形態では、切り刃506を受け部507に対して揺動可能に支持すると共に、互いに隣接して配置している。そして、切り刃506を受け部507に対して相対的に斜め上方から下方に移動させるので、ワイヤを切断する際に従来より大きいトルクが得られ、特に直径5mm以上のワイヤを切断する場合であっても切断ツールの変形や破損を低減し、耐久性を高めることができる。
【0039】
[ワイヤの成形方法]
次に、本実施形態のスプリング製造装置により達成されるワイヤ成形方法について説明する。
【0040】
図13(a)乃至(c)及び図14(a)、(b)は本実施形態の切断ツールユニットにより実現可能な成形途中での切断処理を例示する斜視図である。
【0041】
従来はワイヤガイドの先端部でしかワイヤを切断できなかったので、切断処理は全ての加工が終了するまで行われないのに対して、本実施形態では、成形途中での切断処理が実現できる。具体的には以下の通りである。
【0042】
先ずツール選択テーブルを回転駆動して所定の当接ツールを選択する。次にツール選択テーブルを3次元方向に必要な距離だけ移動させて、選択されたツールをスプリング成形空間においてワイヤガイドの先端部に対向する位置に移動させる。
【0043】
ワイヤガイド402からワイヤWを送り出して当接ツールに押し当てて曲げ加工を施す(図13(a))。
【0044】
次にツール選択テーブルを回転駆動して切断ツールユニットT0を選択し、ツール選択テーブルを3次元方向に必要な距離だけ移動させて、曲げ加工を施した部分W1を切り刃506及び受け部507の溝部506a,507aに沿わせる。この状態で切断ツールユニットT0を駆動して上記曲げ加工を施した部分W1を所定の長さだけ切断する(図13(b)→図13(c))。
【0045】
その後、ツール選択テーブルを回転駆動して所定の当接ツールを選択する。次にツール選択テーブルを3次元方向に必要な距離だけ移動させて、選択されたツールをスプリング成形空間においてワイヤガイド402の先端部に対向する位置に移動させる。
【0046】
ワイヤガイド402からワイヤWを送り出しながら当接ツールに押し当てて所定のコイル長になるまでコイル部W2を成長させる(図14(a))。
【0047】
再びツール選択テーブルを回転駆動して切断ツールユニットT0を選択し、ツール選択テーブルを3次元方向に必要な距離だけ移動させて、コイル部W2からワイヤガイド402に延びるワイヤWの所定の箇所を切り刃506及び受け部507に沿わせる。この状態で切断ツールユニットT0を駆動してワイヤWを切断する(図14(b))。
【0048】
以上述べたほうに、スプリング加工途中での切断処理を実現することができる。
【0049】
なお、上述の例では、1つのツール選択装置による成形方法を説明したが、第1ツール選択装置200と第2ツール選択装置300とを同期させ、例えば、一方のツール選択装置では成形ツールによる成形加工を行い、他方のツール選択装置では切断処理を行うように制御してもよい。
【0050】
[コントローラの構成]
次に、本実施形態のスプリング製造装置のコントローラの構成について説明する。
【0051】
図15は本実施形態のスプリング製造装置のコントローラの構成示すブロック図である。図15に示すように、CPU601はコントローラの全体を統括制御する。ROM602はCPU601の動作処理内容(プログラム)及び各種フォントデータを記憶している。RAM603はCPU601のワークエリアとして使用される。表示部604は各種設定を行ったり、その内容の表示、更には製造の過程等をグラフ表示したりするために設けられる。外部記憶装置605はメモリカード等であり、外部からプログラムを供給したり、或いはワイヤ成形加工のための各種設定内容を保存するために使用される。この結果、例えば、ある成形加工(例えばスプリングであればその自由長や径等)のためのパラメータを記憶しておくことで、いつでもそのメモリカードをセットして実行することで、同じ形状のスプリングを製造することが可能になる。
【0052】
キーボード606は各種パラメータを設定するために設けられ、センサ群607はワイヤの送り出し量や、スプリングの自由長等を検知するために設けられる。
【0053】
各モータ608−1〜608−nは、テーブル駆動モータ211、前後駆動モータ213、左右駆動モータ216、上下駆動モータ218、ツール駆動モータ219、ガイド駆動モータ403、フィードローラ駆動モータ404、フィードローラ転動モータ405に相当し、各モータ608−1〜608−nは、夫々に対応するモータドライバ609−1〜609−nにより駆動される。また、ストッパー機構220のエアシリンダ221がエアバルブを開閉するドライバ610により駆動される。
【0054】
なお、本例では、CPU601は、キーボード606から入力された指示に従い、例えば、各種モータをそれぞれ独立して駆動したり、外部記憶装置605との入出力、更には表示部604を制御することになる。
【0055】
本実施形態によれば、ツール選択テーブル210,310に対して1つの切断ツールユニットT0と複数種類の成形ツールT1〜T5とを選択可能に搭載でき、成形途中におけるワイヤの切断加工や切断部位を選択する際の自由度を高めることができる。
【0056】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0057】
例えば、本実施形態の第1、第2ツール選択装置200,300やワイヤフィード装置400を、単体で異なる形式のスプリング製造装置に搭載してもよい。
【0058】
また、本実施形態において、第1、第2ツール選択装置200,300のいずれか一方のみを搭載してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100 ベース
200,300 ツール選択装置
210,310 ツール選択テーブル
203,303 前後テーブル
206,306 左右テーブル
208,308 上下テーブル
T0 切断ツールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤガイド(402)の先端部からワイヤ(W)を送り出し、当該ワイヤガイドの先端付近のワイヤ成形空間において当該ワイヤを成形ツール(T1〜T5)により強制的に折曲、湾曲あるいは捲回させると共に、切断ツール(T0)により切断して所望の形状の部品に成形するワイヤ成形装置において、
前記ワイヤを前記ワイヤ成形空間に向けて送り出すワイヤフィード手段(400)と、
複数の動作の異なる前記成形ツールと1つの前記切断ツールとが着脱自在に放射状に配置され、当該複数の成形ツールと前記1つの切断ツールの中から所定のツールを選択できるように、ワイヤ軸線(L)と所定の角度をなす駆動軸を中心に回転するツール選択テーブル(210)と、
前記ツール選択テーブルを回転させる選択テーブル駆動手段(211)と、
前記選択された成形ツール又は切断ツールをワイヤ成形空間の所定の位置に位置決めするために前記ツール選択テーブルを3次元方向に移動させる移動テーブル(203、206、208)と、
前記移動テーブルを移動させるテーブル駆動手段(213、216、218)と、
前記部品の成形手順に応じて前記ワイヤフィード手段、前記選択テーブル駆動手段及び前記テーブル駆動手段を制御するコントローラ(601〜607)とを具備し、
前記成形ツールは、ワイヤを巻き軸に巻き付けるために当該巻き軸を回転中心として回転する巻き軸ツールを含み、
前記ツール選択テーブル(210)には、ワイヤを巻き付ける巻き軸ツールを回転可能に支持する巻き軸ツールユニット(T1、T2)が取り付けられると共に、前記切断ツールを構成する切り刃(506)と受け部(507)を相対的に往復動作可能に支持する切断ツールユニット(T0)が取り付けられ、
前記巻き軸ツールと前記切断ツールを駆動するために、前記ツール選択テーブル上に取り付けられた前記巻き軸ツールユニットと前記切断ツールユニットに駆動力を付与する共通の駆動源が設けられていることを特徴とするワイヤ成形装置。
【請求項2】
前記駆動源は回転駆動される傘ギヤ(212)を有し、
前記切断ツールユニットは、前記傘ギヤに噛合して回転駆動されると共に、外周面に軸方向に傾斜する溝部(502a)が形成された回転軸(502)と、前記回転軸を軸支すると共に、前記ツール選択テーブルに取り付けられるベース部(501)と、前記ベース部にスライド可能に支持され、当該回転軸の溝部に係合して当該回転軸の回転動作を直線動作に変換するスライダ(503)と、前記ベース部に回動可能に軸支され、前記スライダの直線動作を所定の回転軸を中心とした回転動作に変換するアーム部(504)と、を備え、
前記切り刃が前記アーム部の先端部に設けられ、前記受け部(507)が当該切り刃に隣接するように前記ベース部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ成形装置。
【請求項3】
前記切り刃及び前記受け部にはワイヤを案内する下方に開放する断面円弧状の溝部(506a,507a)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ成形装置。
【請求項4】
前記移動テーブルは、前記ワイヤ軸線に平行な前後方向に移動可能な前後テーブル(203)と、当該前後方向に直交する左右方向に移動可能な左右テーブル(206)と、当該前後方向及び左右方向に直交する上下方向に移動可能な上下テーブル(208)とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワイヤ成形装置。
【請求項5】
前記ツール選択テーブル及び前記移動テーブルは、前記ワイヤ軸線(L)を中心に左右対称に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のワイヤ成形装置。

【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−16150(P2011−16150A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162177(P2009−162177)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(392020026)株式会社板屋製作所 (4)
【Fターム(参考)】