説明

ワクチンとしての、組換えマイコバクテリウムおよび生物学的に活性な作用剤の組合せ

本発明は、第1の構成要素および第2の構成要素を含み組合せであって、第1の構成要素が、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞であり;かつ第2の構成要素が、生物学的に活性な作用剤である組合せに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の構成要素を含む組合せ、薬学的組成物としてのそのような組合せの使用、薬剤の製造のためのその使用、そのような組合せを用いて患者を治療するための方法、およびそのような組合せを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の分子医薬品は、患者を治療するために、免疫原性化合物または患者の免疫系を調節する化合物を使用することに強く焦点を当てている。それぞれの疾患は、とりわけ、腫瘍および感染性疾患である。
【0003】
どちらの場合も、抗原性化合物、すなわち免疫応答を誘発し、または免疫応答を強化するのに適した化合物が患者の身体に投与される。しかしながら、それぞれの化合物の有用性は多くの場合において限定されており、臨床的に意義のあるレベルの効率および有効性に到達するためには免疫応答の増強を要する。このような増強は、それぞれの作用剤を繰り返し投与することによって、またはアジュバントを使用することによって実施することができる。
【0004】
先行技術により、ミネラルオイル、不活化マイコバクテリア、アルミニウム化合物などいくつかのアジュバントが提供されている。
【0005】
しかしながら、当技術分野において公知のアジュバントは、特に、例えば国際特許出願PCT/US94/01631(特許文献1)において記載されているようなサイトカイン発現細胞の使用のような新しい治療計画と関連して医学的必要を満たすのに十分な様式で常に機能とするとは限らない。
【0006】
【特許文献1】国際特許出願PCT/US94/01631
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明の根本的な課題は、少なくとも第1の構成要素および第2の構成要素を含み、第1の構成要素がアジュバントであり、かつ第2の構成要素が生物学的に活性な作用剤である組成物、より具体的には薬学的組成物を提供することである。
【0008】
この課題は、第1の構成要素および第2の構成要素を含む組合せであって、第1の構成要素が、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞であり;かつ第2の構成要素が、生物学的に活性な作用剤である組合せによって、第1の局面において解決される。
【0009】
ある態様において、細菌細胞はウレアーゼを欠損している。
【0010】
別の態様において、細菌細胞は、マイコバクテリウム細胞である。
【0011】
好ましい態様において、細胞は、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)細胞である。
【0012】
好ましい態様において、細菌細胞のウレアーゼサブユニットをコードしている少なくとも1つの細胞核酸が不活性化される。
【0013】
より好ましい態様において、少なくとも、細菌ウレアーゼのCサブユニットをコードしている配列が不活性化される。
【0014】
ある態様において、ファゴリソソーム脱出ドメインは、リステリアのファゴリソソーム脱出ドメインである。
【0015】
ある態様において、ファゴリソソームドメインは、
a)配列番号1において示されるヌクレオチド211〜1,722を含むヌクレオチド配列;b)a)に由来する配列と同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
c)a)またはb)に由来する配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
を含む群より選択される核酸分子によってコードされる。
【0016】
ある態様において、細菌細胞は、哺乳動物において免疫応答を誘発することができるペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む。
【0017】
好ましい態様において、このペプチドまたはポリペプチドは、自己抗原、腫瘍抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、およびそれらの免疫原性の断片より選択される。
【0018】
さらに好ましい態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、融合ポリペプチドの一部分である。
【0019】
ある態様において、融合ポリペプチドは、
a)哺乳動物において免疫応答を誘発することができる、ポリペプチドに由来する少なくとも1つのドメイン、および
b)ファゴリソソーム脱出ドメイン
を含む。
【0020】
好ましい態様において、このポリペプチドは、請求項9記載のポリペプチドまたはその一部分である。
【0021】
さらに好ましい態様において、このファゴリソソーム脱出ドメインは、請求項1〜11のいずれか一項記載のファゴリソソーム脱出ドメインのドメインである。
【0022】
好ましい態様において、細菌細胞は、rBCG:HlyまたはrBCGΔureC:Hlyである。
【0023】
ある態様において、生物学的に活性な作用剤は、真核細胞、およびより好ましくは、サイトカインを発現する遺伝子操作された真核細胞である。
【0024】
好ましい態様において、サイトカインは、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-12、およびインターフェロン-γを含む群より選択される。
【0025】
より好ましい態様において、細胞は、2種またはそれ以上のサイトカインを共発現する。
【0026】
さらにより好ましい態様において、細胞は、IL-2およびインターフェロン-γを共発現する。
【0027】
好ましい態様において、細胞は、細胞および/もしくは組成物が投与されるか、または投与される予定の対象に対して自己由来(autologue)である。
【0028】
好ましい代替の態様において、細胞は、細胞および/もしくは組成物が投与されるか、または投与される予定の対象に対して同種異系である。
【0029】
好ましい態様において、細胞は、非プロフェッショナル抗原提示細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、腫瘍細胞、および樹状細胞を含む群より選択される。
【0030】
より好ましい態様において、腫瘍細胞は免疫原性腫瘍の細胞であり、かつ腫瘍細胞は、好ましくは、黒色腫細胞、腎癌細胞、乳房腫瘍細胞、脳腫瘍細胞、前立腺腫瘍細胞、非小細胞肺癌、結腸癌、頭頸部の扁平上皮腫瘍を含む群より選択される。
【0031】
好ましい態様において、細胞は、同種異系細胞であり、かつHLAクラスIが一致している。
【0032】
他の好ましい態様において、細胞は、サイトカイン、接着分子、共刺激因子、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、および寄生虫抗原を含む群より選択される別の免疫分子を発現する。
【0033】
より好ましい態様において、寄生虫抗原は、マラリア原虫(Plasmodium)、好ましくは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である。
【0034】
好ましい態様において、生物学的に活性な作用剤は、マラリア原虫、好ましくは熱帯熱マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である。
【0035】
ある態様において、生物学的に活性な作用剤は、ヒトサイトメガロウイルスである。
【0036】
好ましい態様において、生物学的に活性な作用剤は、好ましくはヒトサイトメガロウイルスによる哺乳動物細胞の感染後に放出される、1つのウイルス粒子または多数のウイルス粒子であり、その際、粒子は、(a)ウイルスの糖タンパク質が埋め込まれている脂質膜によって取り囲まれており、かつ(b)ウイルスDNAもキャプシドも含まない。
【0037】
好ましい態様において、粒子は、T細胞抗原pp65(UL83)の1つまたは複数の部分、およびpp65ではない1種または複数種のタンパク質の1つもしくは複数の部分を含む融合タンパク質を含む。
【0038】
好ましい態様において、T細胞抗原pp65は、ヒトサイトメガロウイルスの糖タンパク質の1つまたは複数の部分に融合されており、その糖タンパク質は、HCMV糖タンパク質gH、HCMVタンパク質IE1(ppUL123)、およびHCMV糖タンパク質gBを含む群より選択される。
【0039】
好ましい態様において、T細胞抗原は、HCMV以外のヒト病原体の一部分であるタンパク質の1つまたは複数の部分に融合される。
【0040】
好ましい態様において、病原体は、HIV-1、HBV、HCV、およびインフルエンザを含む群より選択される。
【0041】
好ましい態様において、粒子は、異なるHCMV株に由来する特定の糖タンパク質の変異体である少なくとも2種の糖タンパク質の一部分を含む。
【0042】
さらに好ましい態様において、特定のHCMV糖タンパク質の2種の変異体のうちの一方は、HCMV Towne株の変異体であり、もう一方は、HCMV Ad169株の変異体である。
【0043】
好ましい態様において、哺乳動物細胞は、繊維芽細胞、好ましくは包皮繊維芽細胞である。
【0044】
好ましい態様において、粒子は、デンスボディ(dense body)である。
【0045】
好ましい態様において、生物学的に活性な作用剤は、デンスボディ、好ましくはHCMVのデンスボディ、または本明細書において定義するデンスボディである。
【0046】
ある態様において、生物学的に活性な作用剤は、マイコバクテリウム、好ましくはマイコバクテリウム亜種に由来する抗原である。
【0047】
好ましい態様において、マイコバクテリウムは、M.ツベルクローシス(M. tuberculosis)、M.ボビス(M. bovis)、M.カネッティ(M. canettii)、M.アフリカヌム(M. africanum)、およびM.パラツベルクローシス(M. paratuberculosis)を含む群より選択される。
【0048】
好ましい態様において、抗原は、抗原85である。
【0049】
第2の局面において、本発明の根本的な課題は、本発明の第1の局面による組合せおよび任意で薬学的に許容される担体を含む組成物、好ましくは薬学的組成物によって解決される。
【0050】
第3の局面において、本発明の根本的な課題は、薬剤を製造するために、本発明の第1の局面による組合せもしくは本発明の第2の局面による組合せ、またはそのような組合せの構成要素のそれぞれを使用することによって解決される。
【0051】
ある態様において、薬剤は、癌および感染性疾患を含む群より選択される疾患の予防用および/または治療用である。
【0052】
本発明の組成物およびその構成要素はまた、単独でまたは組み合わせて、疾患の予防用にも好ましく使用され得ることが当業者には認識されると考えられる。好ましい態様において、これは、本発明による組合せの第1の構成要素が、免疫応答、およびより具体的には、疾患の症状発現前、より具体的には疾患の臨床的または医学的に関連した症状の発現前にその疾患と闘う個々のヒトまたは動物の身体を提供することを可能にする特異的な免疫応答を誘発するのに適しているという事実に基づいている。
【0053】
好ましい態様において、癌は免疫原性の腫瘍であり、その際、腫瘍は、好ましくは、前立腺癌、黒色腫、腎癌、乳房腫瘍、脳腫瘍、非小肺癌、結腸癌、および頭頸部の扁平上皮腫瘍を含む群より選択される。
【0054】
代替の態様において、感染性疾患はマラリアである。
【0055】
好ましい態様において、生物学的に活性な作用剤は、マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である。
【0056】
代替の態様において、感染性疾患は、HCMV感染症、好ましくはヒトHCMV感染症である。好ましい態様において、生物学的に活性な作用剤は、本明細書において開示するデンスボディである。
【0057】
代替の態様において、感染性疾患は、結核である。好ましい場合において、生物学的に活性な作用剤は、マイコバクテリウム、好ましくはマイコバクテリウム亜種に由来する抗原である。より好ましくは、マイコバクテリウムは、M.ツベルクローシス、M.ボビス、M.カネッティ、M.アフリカヌム、およびM.パラツベルクローシスを含む群より選択される。さらにより好ましくは、抗原は、抗原85である。
【0058】
第4の局面において、本発明の根本的な課題は、ワクチンを製造するために、本発明の第1の局面による組合せまたはそのような組合せの構成要素のそれぞれを使用することによって解決される。
【0059】
第5の局面において、本発明の根本的な課題は、疾患に罹患しており、かつそのような治療を必要としている患者を治療するための方法であって、本発明の第1の局面による組合せまたは本発明の第2の局面による薬学的組合せを投与する段階を含む方法によって解決される。
【0060】
第6の局面において、本発明の根本的な課題は、薬学的組合せ、好ましくは本発明の第2の局面による薬学的組成物を製造するための方法であって、
-ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞を第1の構成要素として提供する段階;
-生物学的に活性な作用剤を第2の構成要素として提供する段階;ならびに
-第1の構成要素および第2の構成要素を1つの薬学的組成物に製剤化する段階
を含む方法によって解決される。
【0061】
第7の局面において、本発明の根本的な課題は、薬学的組合せ、好ましくは本発明の第2の局面による薬学的組成物を製造するための方法であって、
-ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞を第1の構成要素として提供する段階;
-生物学的に活性な作用剤を第2の構成要素として提供する段階;ならびに
-第1の構成要素および第2の構成要素を別々に製剤化する段階
を含む方法によって解決される。
【0062】
ある態様において、製剤化された第1の構成要素および製剤化された第2の構成要素は、単一のパッケージ中に包装される。
【0063】
または、製剤化された第1の構成要素および製剤化された第2の構成要素は、別々のパッケージ中に包装される。
【0064】
より好ましい態様において、パッケージは、単回投薬単位であるか、または複数の単回投薬単位を含む。
【0065】
本発明者らは、驚くべきことに、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドを発現するグラム陽性細菌細胞またはグラム陰性細菌細胞のいずれかであり得る細菌細胞が、生物学的に活性な作用剤と組み合わせて使用することができる特に有用なアジュバントであることを発見した。より具体的には、本発明者らは、マイコバクテリウム・ボビス、好ましくはマイコバクテリウム・ボビス・カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette-Guerin)(BCG)、およびより好ましくは、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードまたは発現するBCGのようなマイコバクテリウムが、免疫応答を誘発するのに、または、生物学的に活性な作用剤およびより具体的には免疫を誘発する他の生物学的に活性な作用剤を使用する場合に特に媒介される免疫応答を強化するのに適した手段であることを確認した。免疫応答を誘発する特に好ましいタイプの生物学的に活性な作用剤は、少なくとも1種のサイトカインもしくは寄生虫抗原を発現する細胞、または腫瘍抗原もしくは寄生虫抗原、またはウイルス抗原である。
【0066】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、このようなファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドにより、細菌細胞または生物学的に活性な作用剤に由来し、かつ免疫応答を誘発するのに適した任意の抗原が、このようなファゴリソソーム脱出ペプチドが利用可能になった後に、より効率的にその働きをすることが可能になるという意見である。言い換えると、ファゴリソソーム中に細菌細胞が閉じ込められる際に作り出される抗原をそこから脱出させ、それによって免疫系に対して提示させることによって、BCGに特異的な抗原の接近容易性が増加し、それによって本発明に関連して使用される優れたアジュバント効果が生じる。
【0067】
MHCクラスI提示経路中へのこのようなペプチド送達は、既に存在しているBCGに特異的な免疫応答およびそのアジュバント活性を増強し得る。
【0068】
BCG、およびより具体的には、ファゴリソソーム脱出ペプチドもしくはポリペプチドをコードもしくは発現する、BCGまたは任意の微生物、好ましくは任意のマイコバクテリウム生物のアジュバント効果は、本発明者らのさらに驚くべき発見であり、この発見は、このようなアジュバント効果を引き起こす微生物が別のもしくは第2の生物学的に活性な作用剤と組み合わされるか、または同時投与される場合に好ましくは使用され得る。TH2免疫応答を刺激する他のアジュバントとは異なり、前述のアジュバント、すなわち微生物は、TH1免疫応答を誘発するのに使用され得る。このようなTH1免疫応答は、細胞性免疫応答を誘導する際に、有用である。したがって、さらなる局面において、本発明は、ファゴリソソーム脱出ペプチドをコードおよび/または発現する微生物であって、好ましくはBCG、およびより好ましくは本明細書において説明するBCG、および最も好ましくはureC欠損BCGである微生物の、アジュバントとしての使用に関する。
【0069】
さらにより驚くべきことに、本発明者らは、ファゴリソソーム脱出ペプチドをコードおよび/または発現する微生物、好ましくはBCGまたはその派生体、ならびにより好ましくは、限定されるわけではないがrBCG:Hlyを含む、様々な態様において本明細書で説明するBCG、ならびに最も好ましくは、BCG:rBCGΔureC:Hlyおよびその派生体などのureC欠損BCGは、それらが、マイコバクテリウムのような各微生物に対して特異的である顕著なCD8応答、ならびに加えて、本明細書において開示および/または定義する生物学的に活性な作用剤によって示されるか、または生物学的に活性な作用剤として与えられる抗原に特異的である顕著なCD8応答も誘導することができる範囲において、ファゴリソソーム脱出ペプチドを有さないBCGより優れていることを発見した。言い換えると、本態様において本明細書第1の構成要素として使用され、または言及される微生物、すなわち、ファゴリソソーム脱出ペプチドを含む微生物、およびより好ましくはさらにureC陰性である微生物は、当業者が予想したであろうことと対照的に、微生物に特異的なCD8免疫応答を誘発することに限定されない。
【0070】
好ましい態様において、このようなファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドは、L.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)のファゴリソソーム脱出ポリペプチドであるリステリオリシン(Hly)である。リステオリシンは、小孔を形成させるスルフヒドリル活性化細胞溶解素であり、ファゴリソソーム小胞から宿主細胞の細胞質ゾル中へのL.モノサイトゲネス微生物の放出に関与している。この脱出機能は、国際特許出願PCT/EP2004/004345において記載されているように、枯草菌(Bacillus subtilis)、弱毒化されたサルモネラ(Salmonella)亜種株、および同様にマイコバクテリウムなど様々な細菌細胞に導入することができる。また、国際特許出願WO99/101496は、生物学的に活性なリステオリシン融合タンパク質を分泌する組換えマイコバクテリウム・ボビス株を開示している。したがって、本発明による組成物の第1の構成要素を形成する細菌細胞は、優れた免疫防御能力をもたらすエンドソーム膜に穴を開けるための小孔形成メカニズムを提示する。
【0071】
いくつかのファゴリソソーム脱出ドメインがあり、例えばUS5,733,151において記載されているリステリアのファゴリソソーム脱出ドメインが好ましいことが当業者には認識されると考えられる。より好ましくは、ファゴリソソーム脱出ドメインは、生物L.モノサイトゲネスに由来し、最も好ましくは、ファゴリソソーム脱出ドメインは、a)配列番号1において示されるヌクレオチド211〜1,722を含むヌクレオチド配列、b)a)に由来する配列と同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、およびc)a)またはb)に由来する配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列より選択される核酸分子によってコードされる。このような目的のために使用することができる他のファゴリソソーム脱出ポリペプチドは、とりわけ、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)に由来するヘモリシン(パーフリンゴリジン)(O'Brien DK, et al. Infect Immun. 2004 Sep;72(9):5204-15);ビブリオ(Vibrio)、より具体的にはビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)に由来するヘモリシン(Lee SE et al., Biochem BiophysRes Commun. 2004 Nov 5; 324(1): 86-91);B群連鎖球菌(group B streptococcus)に由来するヘモリシン/細胞溶解素 (Liu GY et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Oct 5;101(40):14491-14496. Epub 2004 Sep 20);バチルス(Bacillus)、より具体的にはバチルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来するヘモリシンBL(Moravek M et al., FEMS Microbiol Lett. 2004 Sep 1;238(1):107-13);ボルデテラ(Bordetella)、より具体的には百日咳菌(Bordetella pertusis)に由来するヘモリシン(Bassinet L et al., Infect Immun. 2004 Sep;72(9):5530-3);大腸菌(Escherichia coli)に由来するヘモリシン(Wyborn NR et al., Microbiology. 2004 May;150(Pt5):1495-505)、および赤痢菌(Shigella)に由来するヘモリシン(Sharma K et al., Microbios. 2001;106(413):31-8)である。
【0072】
配列番号1において示すヌクレオチド配列以外に、本発明はまた、それらとハイブリダイズする核酸配列も含む。本発明において、「ハイブリダイゼーション」という用語は、Sambrook et al.(Molecular Cloning. A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989), 1.101-1.104)において定義されているように使用される。本発明によれば、「ハイブリダイゼーション」という用語は、55℃、好ましくは62℃、およびより好ましくは68℃で、1×SSCおよび0.1%SDSで1時間洗浄した後に、陽性のハイブリダイゼーションシグナルをなお認めることができる場合に使用される。このような洗浄条件下で配列番号1によるヌクレオチド配列とハイブリダイズする配列が、本発明において好ましい、ファゴリソソーム脱出ドメインをコードするヌクレオチド配列である。
【0073】
前述のファゴリソソーム脱出ドメインをコードするヌクレオチド配列は、リステリア生物から、または任意の組換え供給源、例えば前述したような対応するリステリアの核酸分子もしくはその変異体を含む組換え大腸菌細胞から、直接得ることができる。
【0074】
ファゴリソソーム脱出ペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含むこのような細菌細胞、およびより具体的にはHlyを含むマイコバクテリウム細胞であるこのような細菌細胞は、本発明による組成物のために特に好ましいことが認識されるべきである。さらに好ましい態様において、該細菌細胞は、さらにウレアーゼ欠損、より具体的にはureC欠損である。このような生物は、BCG:rBCGΔureC:HlyまたはBKGとも呼ばれる。
【0075】
マイコバクテリウム、およびより具体的にはマイコバクテリウム・ボビス・カルメット・ゲラン杆菌(BCG)は、結核予防のための生ワクチンとして広く使用されているが、その有効性は今なお疑わしい。それでもなお、BCGは、小児においていくつかの形態の全身性結核から保護し、または少なくともそれらを寛解させ得るという意見の一致がある。
【0076】
しかしながら、新しい形態のBCGを以下に開発した。本発明者らは、これら新規の形態のBCGが、生物学的に活性な作用剤と共に投与された場合にアジュバントとして特に有用であり、したがって、本発明による組合せの第1の構成要素として使用され得ることを発見した。
【0077】
本発明による組合せの第1の構成要素として使用される細菌細胞は、好ましくはウレアーゼを欠損している。この形質により、マイコバクテリア細胞は、尿素の欠乏が原因となって、ファゴリソソーム中のようなこのような酵素活性が必要とされる環境において生き残らないと思われるため、安全性が高まる。
【0078】
ウレアーゼ欠損は、ウレアーゼサブユニットをコードしている1つまたはいくつかの細胞核酸分子、特にウレアーゼサブユニットAをコードしているureA、ウレアーゼサブユニットBをコードしているureB、および/またはウレアーゼサブユニットCをコードしているureCを部分的にまたは完全に不活性化することによって実現し得る。マイコバクテリア、特にM.ボビスおよびM.ツベルクローシスにおけるureA、ureB、およびureCの配列、ならびにそれらによってコードされるタンパク質は、参照により本明細書に組み入れられるReyratら(1995)およびClemensら(1995)によって記載されている。
【0079】
好ましくは、ウレアーゼ欠損細菌株は、ウレアーゼサブユニットをコードしている核酸配列および/または発現制御配列中の1つまたはいくつかのヌクレオチドの欠失および/または挿入によって得られる。欠失および/または挿入は、相同組換え、トランスポゾン挿入、または他の適切な方法によって発生させることができる。
【0080】
特に好ましい態様において、ureC配列は、Reyratら(前記)によって説明されたように、例えば選択マーカー遺伝子によって破壊されたureC遺伝子を含む自殺ベクターを構築し、そのベクターで標的細胞を形質転換し、かつウレアーゼ陰性の表現型を有する選択マーカー陽性細胞をスクリーニングすることによって、不活性化される。
【0081】
本発明によれば、マイコバクテリウムの様々な種、すなわち、M.ボビス、M.ツベルクローシス、M.ミクロティ(M. microti)、M.スメグマチス(M. smegmatis)、M.カネッティ、M.マリナム(M. marinum)、またはM.フォーチュイタム(M. fortuitum)が、本発明による組成物の第1の構成要素を形成する細菌細胞として使用され得る。前述した特徴、すなわちファゴリソソーム脱出ペプチドもしくはポリペプチドをコードもしくは発現すること、およびウレアーゼ陰性、より具体的にはureC陰性であることの一方または両方を示す、他の微生物、好ましくは細胞内微生物が使用され得ることもまた、本発明の範囲内である。
【0082】
別の態様において、各細菌細胞は、弱毒化される。より好ましい態様において、細菌細胞は弱毒化されているが、なお生きており、かつより具体的には、TH1応答を誘発するのに適している。
【0083】
より好ましい態様において、各細菌細胞は、生きた細菌細胞である。
【0084】
別の態様において、細菌細胞は、哺乳動物において免疫応答を誘発することができるペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子をさらに含む。本明細書において使用される場合、「哺乳動物において免疫応答を誘発する」という用語は、哺乳動物の免疫系またはその一部分にそのようなペプチドまたはポリペプチドを曝露した際に、B細胞媒介性免疫応答である免疫応答が引き起こされ得ることを意味する。しかしながら、または、免疫応答は、T細胞媒介性免疫応答、より好ましくはMHCクラス1拘束性のCD8 T細胞応答である。
【0085】
より好ましくは、このようなペプチドまたはポリペプチドは、自己抗原、腫瘍抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、およびそれらの免疫原性の断片を含む群より選択される。好ましくは、免疫原性断片は、免疫応答をなお誘発することができる、このような抗原の一部分である。特に好ましい抗原は、本明細書においてより詳細に説明する、マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質である。さらに特に好ましいウイルス抗原は、本明細書においてより詳細に説明する、HCMVのデンスボディである。さらに別の抗原は、結核、ならびにより具体的にはマイコバクテリウム・ツベルクローシス、M.ボビス、M.カネッティ、M.アフリカヌム、およびM.パラツベルクローシスに対する免疫応答を誘発するのに適した抗原である。特に好ましい抗原は、抗原85である。このような抗原は、好ましい態様において、第2の構成要素である。
【0086】
本明細書において抗原に言及する時は常に、この用語はそれらの断片および変異型も含むことが、当業者には認識される。それらの断片および変異型は、完全長または野生型の抗原の少なくとも1種の特徴をそのようなそれらの変異型または断片が示す限り、それぞれの抗原とみなされる。好ましくは、このような特徴は、免疫応答、より好ましくは本明細書において説明する第1の構成要素またはアジュバントと共にまたは組み合わせて使用される場合に免疫応答を誘発する能力である。さらにより好ましい態様において、このような免疫応答は特異的なCD8免疫応答である。これは、それぞれポリペプチドおよびタンパク質にも当てはまる。
【0087】
核酸、およびポリペプチドまたはタンパク質をそれぞれコードする核酸に言及する時は常に、この用語は、遺伝コードの縮重を考慮すると、またはそれぞれの宿主もしくは産生生物のコドン使用法に配列を適合させる必要を考慮すると、本明細書において好ましくは定義されるようなそれらの断片または変異型でもよいポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸も含み得ることが、当業者にはさらに認識されると考えられる。
【0088】
「ポリペプチド、タンパク質、または抗原が生物に由来する」という用語は、好ましくは、それぞれのポリペプチド、タンパク質、または抗原のアミノ酸配列が、それぞれの生物のものであることを意味し、その際、その配列、およびしたがってそれをコードする対応する核酸もまた、それらの断片および変異型であり得る。
【0089】
哺乳動物において免疫応答を誘発することができるペプチドまたはポリペプチドが、組成物の第2の構成要素であり得るということが認識されるべきである。このペプチドまたはポリペプチドが、融合ポリペプチドの一部分であることは、本発明の範囲内である。好ましくは、このような融合ポリペプチドは、哺乳動物において免疫応答を誘発することができるペプチドもしくはポリペプチド、またはこの形質をなお有するそのドメインを含み、かつこの融合ポリペプチドは、ファゴリソソーム脱出ドメイン、好ましくは、本発明の第1の構成要素の態様に関連して前述したファゴリソソーム脱出ドメインをさらに含む。哺乳動物において免疫応答を誘発することができるポリペプチドのドメインは、このようなペプチドが細菌抗原である場合、微生物、好ましくはマイコバクテリウム属、およびより好ましくはマイコバクテリウム・ツベルクローシスまたはマイコバクテリウム・ボビスに由来してよい。このドメインは、少なくとも6アミノ酸長、好ましくは少なくとも8アミノ酸長を有する。免疫原性ドメインは、好ましくは天然のマイコバクテリウムポリペプチドの一部分である。しかしながら、1つもしくはいくつかのアミノ酸を置換、欠失、および/または付加させることによって天然の免疫原性ドメインに由来することができる改変された免疫原性ドメインもまた、本発明の範囲内である。好ましい態様において、このドメインは、マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質のドメインである。
【0090】
ある態様において、融合タンパク質は、組換え核酸分子、すなわち配列番号1による核酸分子によってコードされる。この核酸分子は、シグナルペプチドコード配列(ヌクレオチド1〜120)、免疫原性ドメインをコードする配列(ヌクレオチド112〜153)、ペプチドリンカーコード配列(ヌクレオチド154〜210)、ファゴリソソームドメインをコードする配列(ヌクレオチド211〜1722)、別のペプチドリンカーコード配列(ヌクレオチド1723〜1800)、およびランダムペプチドをコードする配列(ヌクレオチド1801〜1870)を含む。対応するアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0091】
特に好ましい態様において、より具体的には、第1の構成要素がrBCG:HlyまたはrBCGΔureC:Hlyのいずれかである場合、第2の構成要素は、生物学的に活性な作用剤、およびより具体的には遺伝子操作された細胞である。好ましくは、遺伝子操作された細胞は、真核細胞である。より好ましくは、このような遺伝子操作された細胞は、少なくとも1種のサイトカインを発現する。本明細書において使用されるサイトカインは、他の細胞の挙動および特徴に影響する分泌タンパク質である。好ましいサイトカインは、インターロイキン、ケモカイン、リンフォカイン、モノカイン、および増殖因子である。特に好ましいサイトカインは、インターロイキンおよびインターフェロンであり、好ましいインターロイキンは、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-12、好ましくはインターロイキン-2であり、かつインターフェロンは、好ましくはインターフェロン-α、インターフェロン-β、またはインターフェロン-γ、より好ましくはインターフェロン-γである。
【0092】
本明細書において好ましく使用されるように、遺伝子操作された細胞は、外来性の遺伝物質を挿入することによって、細胞中に存在する遺伝子構成に関して改変された細胞である。遺伝子構成のこのような改変は、真に外来の核酸であるために、または内在性遺伝物質の一部分を活性化するために、細胞中にまだ存在していない遺伝物質の導入を含み、その際、このような内在性遺伝物質は、該外来性遺伝物質が存在しない場合は存在もせず活性でもなく、外来性遺伝物質は必ずしも遺伝物質ではないが、その範囲において活性である任意の物質でよい。このような改変を実現する方法は、当技術分野において周知である。例えば、外来性DNA物質は、リン酸カルシウム沈殿技術、ウイルスベクター技術、エレクトロポレーション、リポフェクション、アデノ随伴ウイルス系のようなウイルスベクター系、マイクロインジェクション、または遺伝子銃アプローチによって細胞中に導入することができる。このような遺伝子操作の結果は、遺伝子操作された細胞が、以前は発現されなかった特定の遺伝子産物を発現できるようになることである。
【0093】
本発明者らは、インターロイキン、ならびにより具体的にはインターロイキン-2、およびインターフェロン-γの、本発明による組合せの第1の構成要素として説明した細菌細胞と組み合わせた共発現により、生物の免疫応答、より具体的にはTH1応答を増大させる非常に効果的な方法が提供されることを発見した。個々の細胞は、非プロフェッショナル抗原提示細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、腫瘍細胞、および樹状細胞など様々な細胞から選択され得る。これらの細胞型のうちで、腫瘍細胞が特に好ましい。このような腫瘍細胞を投与すると、このような腫瘍細胞を導入された癌患者は、腫瘍ワクチン接種アプローチの有効性に対する効果の増大を経験する。好ましくは、このようなワクチン接種プロセスのために使用される細胞は、本発明による組合せを用いて治療される予定の腫瘍と同じまたは類似した腫瘍実体から採取される。したがって、とりわけ国際特許出願WO 94/18995において記載されている、遺伝子操作された細胞を使用する有益な効果は、本発明による組合せの第1の構成要素を形成するものとして細菌細胞を使用することによってさらに増大される。
【0094】
プロフェッショナル抗原提示細胞は、本明細書において定義する生物学的に活性な作用剤として次いで使用されるか、またはその生物学的に活性な作用剤のさらなる成分である樹状細胞であり、その際、好ましくは、このような態様において、生物学的に活性な作用剤は、遺伝子操作された細胞、より好ましくは本明細書において説明するサイトカイン発現細胞であり、この細胞は、さらにより好ましくは、2種のサイトカインおよび最も好ましくはインターロイキン-2およびインターフェロン-γを共発現することは、本発明の範囲内である。樹状細胞は、好ましくは、腫瘍に由来する抗原を負荷されており、その際、この腫瘍は、好ましくは、本発明において説明するアジュバントおよび/またはアジュバントと例えば該サイトカイン共発現細胞のような生物学的に活性な作用剤との組合せと組み合わせて、樹状細胞が治療のために使用されるものである。樹状細胞への負荷は、当業者には公知であり、例えばVariおよびHart((2004), Cytotherapy: 6(2): 111-121.)において記載されている。このような樹状細胞は、単独で、または本明細書において説明するアジュバント、特にBCGおよびBKGのうちのいずれか、もしくは本明細書において説明する第1および第2の構成要素の任意の組合せと組み合わせて、好ましくは、本明細書において説明する疾患のうちのいずれかを治療するために使用される。好ましくは、このような疾患は、本明細書において説明する任意の腫瘍疾患である。
【0095】
この種のアプローチを用いて取り組むことができる好ましい腫瘍および癌は、それぞれ、特に、免疫原性の腫瘍または癌、とりわけ、黒色腫、腎癌、乳房腫瘍、脳腫瘍、前立腺癌、非小肺癌、結腸癌、および頭頸部の扁平上皮腫瘍などである。
【0096】
サイトカインの発現、ならびにより具体的にはインターロイキン-2およびインターフェロン-γの共発現により、遺伝子操作された細胞によって提示される腫瘍抗原の有効性を高めることが可能になる。抗腫瘍応答の改善は、同じ方向に向かって作動する2種の異なるメカニズムによって実現される。求心性の側面では、IFNγ分泌が、細胞表面でのMHCおよび接着分子の発現を増大させて、MHC I分子によるCD8+T細胞に対する腫瘍特異的抗原のより優れた提示をもたらし、したがって、T細胞による腫瘍細胞のより優れた認識をもたらす。遠心性の側面では、腫瘍細胞の極めて近くでのIL-2分泌により、CD8+T細胞の活性が増大される。その範囲において、好ましくは、少なくとも1種のサイトカインを発現する遺伝子操作された細胞は、好ましい態様において、治療のためにそれが使用される腫瘍実体に少なくともある程度関連している。他の細胞株がその範囲において使用され得、その際、該細胞が、本明細書において説明するように遺伝子操作されていることに加えて、そのように治療される予定の腫瘍実体に特徴的な特定の抗原も発現することがより好ましいことが、当然、理解されると考えられる。
【0097】
原則的に、遺伝子操作された細胞は自己由来細胞であり得ることが、当業者によって認識されると考えられる。これは、細胞が、本発明による組合せによる組合せを用いて治療する予定の患者から採取され、その際、これらの細胞は、治療する予定の腫瘍から通常採取され、かつこれらの細胞は、本明細書において定義する遺伝子操作された細胞となるように操作されることを意味する。続いて、この種の細胞は、本発明による組合せの一部分として再び患者に投与される。
【0098】
遺伝子操作された細胞の有効性を高めるために、これらの細胞は別の免疫分子をさらに発現し得る。本明細書において使用される場合、免疫分子は、免疫系に影響を及ぼすのに適する任意の分子を含む。免疫分子は、とりわけ、サイトカイン、接着分子、共刺激因子、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、および寄生虫抗原を含む。
【0099】
別の態様において、遺伝子操作された細胞は、同種異系細胞である。同種異系細胞は、好ましい態様において、同じ種に由来するが、全く同じ個体には由来しない細胞である。同種異系細胞は、同じ種に由来するが、抗原的に異なる細胞である。特に好ましい態様において、同種異系細胞は、治療される腫瘍のそれぞれの細胞集団にマッチしている。より好ましくは、このマッチは、本発明による組合せを用いて治療される患者の一部またはすべてのヒトリンパ球抗原(HLA)クラスに関係していると思われる。しかしながら、様々な程度のマッチングが使用され得る。より具体的には、マッチングは、HLAクラスIマッチングである。HLAクラスIは、サブクラスA、BおよびCを含む。HLAクラスIマッチは、本発明による組成物の第2の構成要素として使用される細胞と該組成物を用いて治療される患者の腫瘍を構成する細胞との間にマッチが存在する場合に与えられる。
【0100】
マッチングおよび必要とされるこのようなマッチングの程度は、当業者の技能の範囲内であることが認識されるであろう。1つの考え得る実験的アプローチは、様々な程度のマッチングを有する様々な動物/患者群に接種し、次いで効果を検査するために腫瘍を攻撃接種することである。または、試験は、腫瘍患者に直接実施してもよい。
【0101】
特に好ましい細胞株は、インターロイキン-2およびインターフェロン-γを共発現し、かつ本発明による組合せに関連して第2の構成要素として、より具体的には、前立腺癌の治療のために使用され得るLNCaPであり、その際、第1の構成要素は、rBCG:HlyまたはrBCGΔureC:Hlyである。
【0102】
別の態様において、生物学的に活性な作用剤は、寄生虫抗原、より具体的にはマラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質である。好ましくは、各抗原は、熱帯熱マラリア原虫に由来する。好ましくは、各抗原は、マラリア原虫MSP-1タンパク質のアミノ酸配列、好ましくは熱帯熱マラリア原虫MSP-1タンパク質に由来する。本明細書において使用される「寄生虫抗原」という用語は、完全長の抗原、ならびに、好ましくは哺乳動物において、さらにより好ましくは本発明による組成物に関連して、免疫応答、より好ましくはTH1応答またはTH1を介した応答を誘発するのに適する限りにおいてその断片を意味し、その際、第1の構成要素は、最も好ましくはそれぞれrBCG:HlyおよびrBCGΔureC:Hlyである。
【0103】
この態様は、マラリアの治療において特に有用である。
【0104】
このような寄生虫抗原は、本発明による第1の構成要素もしくは組合せとして作用する細菌細胞、または本発明による組成物の第2の構成要素として作用する真核細胞によって発現され得ることは、本発明の範囲内である。しかしながら、寄生虫抗原が、本発明の様々な態様のために指定されるような、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞によって発現されることもまた、本発明の範囲内である。
【0105】
gp190/MSPが、いくつかの天然のドメインからなること、およびこのようなドメインが、単独でまたは組み合わせて、本明細書において好ましくは使用される寄生虫抗原であり得るということが認識されるべきである。gp190/MSP1は、かなり長くの間、マラリアに対するワクチンの潜在的な候補としてみなされてきた。しかしながら、その調製は、極めて困難であると考えられており、この抗原の大量生産は可能ではない。このことを考慮すると、潜在的なマラリアワクチンは、利用可能になっていない。しかしながら、国際特許出願WO98/14583の技術的教示に基づいて、現在では、マラリア原虫のこの抗原を大量に利用可能にすることができる。このような寄生虫抗原はgp190/MSP1抗原に限定されず、三日熱マラリア原虫(P.vivax)のような、熱帯熱マラリア原虫以外の他のマラリア原虫種において見出されるそれらの相同体も含むことが認識される。該国際特許出願の技術的教示は、参照により本明細書に組み入れられ、かつ、当業者が、本発明による組成物中に第2の構成要素として組み入れるために必要な任意の量のこの抗原を調製することを可能にする。例えば、DNAワクチンは、Grode L, Mollenkopf HJ, Mattow J, Stein M, Mann P, Knapp B, Ulmer J, Kaufmann SH. Application of mycobacterial proteomics to vaccine design: improved protection by Mycobacterium bovis BCG prime-Rv3407 DNA boost vaccination against tuberculosis. Infect Immun. 2004 Nov;72(11):6471-9において記載されている。
【0106】
別の態様において、生物学的に活性な作用剤は、好ましくは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)による哺乳動物細胞の感染後に放出される、ウイルス粒子の1つの粒子もしくは群、または多数のウイルス粒子であり、その際、これらの粒子は、(a)ウイルスの糖タンパク質が埋め込まれている脂質膜によって取り囲まれており、かつ(b)ウイルスDNAもキャプシドも含まないか、またはデンスボディ、好ましくはヒトサイトメガロウイルスのデンスボディである。本明細書においてより詳細に説明されるこのような粒子は、好ましくは、βヘルペスウイルスであるヒトサイトメガロウイルスによる感染症の予防および/または治療のために使用される。本発明のこの局面による組合せを用いて治療され得る対象の特に適切な群は、骨髄移植を受けなければならない患者である。
【0107】
免疫適格性の人において、HCMV感染症は、通常は気づかれず、最も軽度かつ非特異的な症状を有する。それに反して、AIDS患者または移植レシピエントなど免疫抑制された患者、および出生前感染後のような、特定のリスク群において、HCMV感染症は重篤な症状を示し、したがって、アジュバントおよび各粒子の組合せを用いて治療され得るさらなる患者群が構成される。
【0108】
国際特許出願PCT/EP 00/01794の技術的教示によれば、HCMVのいわゆるデンスボディが、免疫応答、および最終的にHCMV感染に対する免疫防御を誘導するという点で効率的であることが判明した。その範囲において、該デンスボディは、複数の株に共通してHCMV感染から防御する中和抗体の長期に渡る誘導を提供する。これは、HCMVに対抗するいわゆる「ヘルパー細胞応答(CD4-陽性Tリンパ球)」を効率的に誘導して、抗体を分泌するBリンパ球の成熟を補助することによって提供される。さらに、該デンスボディは、HCMVに対抗する細胞障害性T細胞の形成を誘導するのに適しており、その際、このタイプのリンパ球は、発生したHCMV感染を終結させるために非常に重要であり、身体におけるウイルスの拡散を制限する。最終的に、このようなデンスボディは、ワクチンの副作用を最小化するのに適する。
【0109】
デンスボディは、HCMV感染によって誘導され、かつ感染した初代ヒト線維芽細胞培養物の培地中に放出される。これらは、電子顕微鏡下で可視である構造体であり、そのタンパク質質量の90%超は、pp65からなる。これらは、ウイルス糖タンパク質によって修飾された細胞脂質膜と共に提供され、かつ細胞から放出されるという点でウイルス粒子と類似している。ウイルス糖タンパク質は、このエンベロープにおいて天然の立体構造にある可能性が非常に高い。デンスボディは、ウイルスDNAもウイルスキャプシドも含まないため、非感染性である。これらは、確立された方法によって、細胞培養物上清から大量に濃縮することができる。予防的ワクチン適用および治療的ワクチン適用のどちらも、特に本明細書において説明するアジュバントと組み合わせて、このようなデンスボディを用いて実現することができる。
【0110】
デンスボディは脂質膜によって取り囲まれており、これにより、これらの粒子が特定の哺乳動物細胞に融合し、その結果、それらの内容物がその細胞の細胞質に移行することが可能になる。これらの粒子の膜は、ウイルス中和抗体に対する主要抗原に相当するウイルス糖タンパク質を含む。これらの粒子はまた、ウイルスDNAもウイルスキャプシドも含まないことを特徴とする。さらに、これらは、Tヘルパー細胞の形成も刺激し、かつHCMVに対抗する細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導するために不可欠な抗原でもある、ウイルスのT細胞抗原pp65(ppUL83)を含む。
【0111】
これらの特性、特に、中和抗体および適切な細胞応答の双方を誘導することができる抗原の組合せにより、これらの粒子は、HCMVに対するワクチンとして適切になる。
【0112】
同様に、デンスボディは、投与経路とは無関係に、Th1型のTヘルパー細胞応答を誘導するため、HCMVに対するワクチンとして適格である。
【0113】
別の態様において、デンスボディ、または、1つの部分に、ウイルスのT細胞抗原pp65(ppUL83)もしくはそのタンパク質の1つもしくは複数の断片、および別の部分に、1種もしくは複数種の他のタンパク質の1つもしくは複数の断片を含む融合タンパク質を含む各粒子が説明される。
【0114】
この融合タンパク質は粒子中に大量に存在するため、これにより、粒子の抗原性を最適化することが可能になる。1つの分子における細胞性免疫応答および体液性免疫応答の抗原の発現が、抗原性を明確に高め得ることもさらに公知である。pp65および他のタンパク質の様々な断片を直接一緒に融合させることができるが、例えば、様々な断片の間に存在し得る、関与するタンパク質のうちの1つの天然構成要素でない4つのリンカー配列に融合させることも可能である。このタイプの配列は、クローニングによって生じてもよく、または抗原の特性に影響するように故意に組み入れてもよい。しかしながら、融合タンパク質は、好ましくは、融合相手の1つの構成要素ではない外来の配列を含まない。このような態様において、融合タンパク質は、pp65の1つまたは複数の部分、および1種または複数種の他のタンパク質の1つもしくは複数の部分からなる。
【0115】
完全なpp65またはその1つもしくは複数の部分が融合タンパク質中に存在し得ることは、以下に言及するすべての態様に当てはまる。「pp65の(からなる)融合タンパク質」という記載は、本出願が完全なpp65に限定されるものとして理解されることを目的としない。融合タンパク質中に存在するタンパク質の「部分」または「断片」は、由来元であるタンパク質の少なくとも6個、好ましくは少なくとも8個、最も好ましくは少なくとも9個、15個、または20個の連続したアミノ酸を含む。
【0116】
好ましい態様は、pp65(ppUL83)およびウイルス糖タンパク質gBまたはgHの1つもしくは複数の中和エピトープの融合タンパク質を含む。このタイプの粒子は、国際特許出願PCT/EP 00/01794において記載されているように作製することができる。融合タンパク質は、抗原特異的な取込みによって、糖タンパク質に特異的なB細胞に入ることができ、その結果として、これらのB細胞は、MHCクラスIIを介して、糖タンパク質およびpp65の双方のエピトープを提示することができる。さらに、融合タンパク質のいくつかの部分は、MHCクラスIIを介して、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によって提示されることも可能である。どちらの場合においても、結果は、pp65およびウイルス糖タンパク質の双方に対するTH応答の効率的な刺激である。これらのTH細胞は、MHCクラスIIを介してpp65およびウイルス糖タンパク質のペプチドを提示する糖タンパク質に特異的なB細胞を刺激して、同種的にも異種的にも中和抗体を形成させることができる。さらに、このタイプの粒子は、感染性ビリオンと同様に、細胞中に取り込まれ、かつpp65のペプチドは、外部からの添加によってMHCクラスI経路中に導入され得る。これは、死菌ワクチンとしては珍しく、HCMVに対するCTL応答の刺激を実現する。
【0117】
さらに好ましい態様において、粒子は、pp65およびHCMVの別のタンパク質であるIE1タンパク質(ppUL123)の1つまたは複数の部分からなる融合タンパク質を含む。特に存在しているべきIE1タンパク質の部分は、自然な感染の進行中に、それに対抗する細胞障害性T細胞がヒトにおいて形成される部分である。IE1タンパク質のペプチドは、いくつかの場合において、pp65のペプチドとは異なるMHCクラスI分子によって提示される。IE1に由来するこのようなさらなる「CTL」エピトープの追加は、免疫化後に、異なるMHCクラスI分子を発現する接種された対象が、可能な限り包括的な様式でHCMVに対抗するCTLを生成することができるよう徹底することを意図する。
【0118】
さらに好ましい態様において、粒子は、pp65、HCMV糖タンパク質の1つまたは複数の中和エピトープ、およびIE1の1つまたは複数のCTLエピトープからなる融合タンパク質を含む。pp65と、中和エピトープおよびCTLエピトープとの融合は、接種された対象によって、可能な限り包括的な様式で、すなわちMHCクラスIパターンの異なる、最大数の人々によって、中和抗体およびCTLの両方が同時に形成されることが可能になるよう徹底することを意図する。
【0119】
さらに好ましい態様において、粒子は、pp65および別のヒト病原体の1つまたは複数のエピトープの融合タンパク質を含む。他のヒト病原体の適切な部分は、それに対抗する中和抗体がヒトにおいて形成される抗原である。このような「中和抗原」とT細胞抗原pp65との融合により、単独の「中和抗原」の使用と比較して、免疫応答(抗体反応)の著しい増大を予想することが可能である。言及すべきこのような「中和抗原」の例は、B型肝炎ウイルスの表面タンパク質(HBsAG領域に由来)、C型肝炎ウイルスの表面タンパク質(例えばE2)、ヒト免疫不全ウイルスの表面タンパク質(HIV、Env領域に由来)、インフルエンザウイルスの表面タンパク質(ヘマグルチニン、ノイラミニターゼ、核タンパク質)、または他のウイルス病原体の表面タンパク質である。さらなる適切なヒト病原体は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、百日咳菌、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)などの細菌である。最後に、マラリア原虫(マラリア)のような真核性病原体に由来する抗原が、pp65に融合され得る。
【0120】
さらに好ましい態様において、粒子は、pp65、および他の病原体であって、これらの病原体への自然感染時にヒトにおいてそれに対抗するCTLが生成される病原体のタンパク質の1つまたは複数の部分からなる融合タンパク質を含む。言及し得るこのようなCTLエピトープの例は、HIV-1、HBV、HCV、またはインフルエンザウイルスのタンパク質の一部分である。このような処置の意図は、ヒトにおいて異種病原体に対抗する防御的CTLを生成させるためにデンスボディの独特な免疫原性特性を利用することである。
【0121】
さらに好ましい態様において、粒子は、pp65、異種病原体の1つまたは複数の中和エピトープ、および同じ病原体の1つまたは複数のCTLエピトープからなる融合タンパク質を含む。この融合は、接種された対象が、この病原体に対する防御的抗体およびCTLの両方を形成することができるよう徹底することを意図する。
【0122】
本発明はさらに、異なるHCMV株に由来する同じ糖タンパク質の変異体である少なくとも2種の異なる糖タンパク質を含むウイルス粒子にも関する。
【0123】
好ましい態様は、厳密に2種の変異体を含み、一方の変異体はHCMV Towne株に対応し、かつもう一方の変異体は、HCMV Ad169株に対応する。好ましい態様は、 Towne株およびAd169株の双方の糖タンパク質gBを含む。
【0124】
これら2種のタンパク質は、感染細胞中の組換えデンスボディの膜中に同じ効率で組み入れられ得る。このような組換えデンスボディは、2種のプロトタイプのHCMV株に対して、複数の株に共通なものだけでなく、株に特異的な中和免疫応答も誘導するのに適している。
【0125】
最後に、本発明はさらに、感染性ウイルスを全く含まないウイルス粒子を調製する方法に関する。本明細書において好ましくは使用されるように、「感染性ウイルスを含まない」という用語は、そのようにして得られた調製物が、検出レベルを基準にして非感染性であることを意味する。HCMVに感染した細胞集団から粒子が作製される場合、これらの粒子の精製中に、感染性ウイルス粒子が一緒に持ち込まれるリスクがある。これは、ワクチンの不都合な点である。
【0126】
本発明の方法は、このリスクを最小化する。このために、最初に、極めて重要な遺伝子に欠失を有するHCMV株を作製する。これは、その遺伝子の機能の欠失を意味する。たいていの場合、これは、機能的な遺伝子産物の欠如に基づいているが、HCMVがもはや生存可能ではないような方法で、調節遺伝子配列の機能を混乱させることも可能である。これは、例えば点突然変異、実際の欠失、挿入、または他の変異によってHCMVの核酸配列を改変することによって実施され得る。この欠損ウイルスは、HCMV中の欠失した遺伝子を発現する細胞においてのみ複製することができ、したがって、その遺伝子をビリオンの組立て用に利用可能にできる。現在のところ、初代線維芽細胞が、HCMVのインビトロ複製用の合理的に許容される唯一の系である。このような細胞の安定なトランスフェクションは、これまで、レトロウイルス導入法を用いてのみ可能であった。しかしながら、これは、ワクチンを作製するためにこのような細胞が使用される場合には、重大な不都合である。本発明の方法により、レトロウイルス遺伝子導入を用いずに作製され得るが、HCMVもその中で複製され得る、安定にトランスフェクトされた細胞が利用可能になる。
【0127】
好ましい態様は、主要キャプシドタンパク質遺伝子UL86で安定にトランスフェクトされたヒト包皮繊維芽細胞を含む。トランスフェクションは、好ましくは、極めて高いトランスフェクション効率をもたらす脂質含有補助物質を用いて実施される。好ましい態様において、Roche Diagnostics, Mannheimから購入可能な「Fugene試薬」が、トランスフェクション用に使用される。
【0128】
主要キャプシドタンパク質遺伝子UL86が欠失している欠損ウイルスは、これらの細胞において複製され得る。「非相補性」線維芽細胞がこの欠損ウイルスに感染した場合には、次いで、感染性ウイルス粒子を含まないウイルスワクチン粒子をそれから単離することが可能である。
【0129】
感染のリスクを伴わずに本発明の粒子を作製するための別の実行可能な手段は、HCMVに感染させずに細胞中で粒子を再構成することである。このためには、粒子の構成要素をコードするすべての遺伝子が、これらの細胞において発現されなければならない。これらの遺伝子は、この目的のために細胞中に挿入されなければならない。
【0130】
バキュロウイルスに感染した昆虫細胞が、この目的のために好ましくは使用される。粒子のポリペプチド構成要素をコードする遺伝子が、バキュロウイルス発現ベクター中にクローニングされる。組換えバキュロウイルスを作製した後に、様々なウイルスによって、昆虫細胞、好ましくはSf9細胞を共感染させる。これらの遺伝子は昆虫細胞において発現され、かつ結果として生じるポリペプチドが組み合わさって所望の粒子を生じる。最後に、これらの粒子は昆虫細胞によって放出される。これは、ワクチンとして使用され得る非感染性粒子を作製するための1つの実行可能な手段に相当する。
【0131】
代替の実行可能な手段は、HCMV主要IEプロモーター/エンハンサー(MIEP)の制御下で、デンスボディを再構成するために必要な構成要素を組換えバキュロウイルス中にクローニングすることである。組換えバキュロウイルスは、例えば哺乳動物細胞のような高等真核細胞に感染できること、およびMIEPのような強力な真核細胞プロモーターの制御下の外来遺伝子は、このような細胞において強く発現されることが示されている。このような手順の利点は、デンスボディの抗原タンパク質のグリコシル化など任意の重要な修飾が、昆虫細胞においてよりも哺乳動物細胞において、より自然な様式で起こり得ることであると考えられる。さらに、ワクチン作製のために既に認可されているいくつかのこのような細胞株がある。
【0132】
別の態様において、生物学的に活性な作用剤は抗原提示細胞であり、このような抗原提示細胞は、結核、ならびにより具体的にはマイコバクテリウム・ツベルクローシス、M.ボビス、M.カネッティ、M.アフリカヌム、およびM.パラツベルクローシスに対する免疫応答を誘発するのに適した抗原を提示する。好ましい態様において、抗原提示細胞は、微生物、より好ましくは、M.ツベルクローシス、M.ボビス、M.カネッティ、M.アフリカヌム、およびM.パラツベルクローシスを含む群より選択される微生物である。第1の構成要素としての細菌細胞、および第2の構成要素または生物学的に活性な作用剤としてのそのような抗原提示細胞またはそのような抗原自体を含む本発明による組成物は、好ましくは、結核の予防用および/または治療用に使用され得る。好ましくは、この抗原は、抗原85である。
【0133】
本明細書において開示される様々な形態の、本発明による組成物の第1の構成要素、ならびに特に、rBCG:HlyおよびrBCGΔureC:Hlyのような、様々な態様におけるファゴリソソーム脱出ドメインを有する微生物は、作用性であり、したがってアジュバントとして使用され得ること、すなわち治療される患者または治療を必要とする患者の免疫状態の増強に関与していることは、本発明の範囲内であり、より好ましくはこの免疫状態は、TH1に関係しており、かつさらにより好ましくは、この免疫状態はTH1応答の増大を特徴とし、その際、このようなTH1応答は、未治療の個体と比べて増大している。
【0134】
本明細書において開示されるように、第2の構成要素は、それが患者の特異的な生物学的、生化学的、生理学的、または医学的応答を提供する作用剤である限りにおいて、好ましくは、第1の構成要素と物理的に異なり、または物理的に離れている。第1および第2の構成要素が物理的に離れていることにより、該2種の構成要素の独立した、または別々の投与が可能になる。生物学的に活性な作用剤が、サイトカインを発現する遺伝子操作された細胞である場合、およびより好ましくはこのような細胞が癌細胞である場合、特異的免疫応答は、このような遺伝子操作された細胞によって導入される抗原を対象としている。それでもなお、サイトカインは、その作用様式の寄与により、第1の構成要素によって既に提供されているようなアジュバント効果とみなされ得る全般的な有益な効果も提供することが認識されなければならない。
【0135】
別の局面において、本発明は、本発明による組合せ、および任意で、薬学的に許容される担体、希釈剤もしくはアジュバント、または他のビヒクルを含む、薬学的組成物に関する。好ましくは、このような担体、希釈剤、アジュバント、およびビヒクルは、不活性かつ非毒性である。薬学的組成物は、その様々な態様において、様々な方法で投与用に適合される。このような投与は、全身投与および局所投与、ならびに経口、皮下、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、イントラテグラル、および眼内である。好ましい薬学的組成物は、第1および第2の構成要素の両方を含む水性または生理学的緩衝液である。
【0136】
投与すべき薬学的組成物の量は、個々の患者の臨床状態、投与部位および投与方法、投与のスケジューリング、患者の年齢、性別、体重、ならびに医者に公知の他の因子に依存することが当業者には認識される。したがって、予防および/または治療のために薬学的に有効な量は、医術分野において公知であるこのような考慮すべき事柄によって決定される。好ましくは、この量は、限定されるわけではないが、病的状態を改善することを含む改善を実現するため、またはより迅速な回復、すなわち症状および医術分野の当業者によって適切な基準として選択される他の指標の改善もしくは消失を実現するために効果的である。
【0137】
好ましい態様において、本発明による薬学的組成物は、他の薬学的に活性な化合物を含み得る。
【0138】
薬学的組成物は、好ましくは、単回投与量の投与または複数回投与量の投与を提供するように製剤化される。
【0139】
ある態様において、それ自体としての、または薬学的組成物の一部分としてもしくは薬学的組成物としての第1の構成要素および第2の構成要素は、単一の製剤として、またはそれぞれ別々の製剤として、同時に提供される。別々の製剤の場合、第1の製剤は第1の構成要素を含み、かつ第2の製剤は、第2の構成要素を含む。該第1および該第2の製剤はそれぞれ、好ましい態様において、本明細書において説明する薬学的製剤のうちのいずれかとして製剤化される。
【0140】
第1および第2の構成要素がそれぞれ別々に投与されることも、本発明の範囲内である。好ましくは、第1および第2の構成要素の間の時間間隔は、それぞれ約1時間または1時間未満、好ましくは約30分またはそれ未満、およびより好ましくは約15分またはそれ未満である。
【0141】
本明細書において説明する様々な形態の、第1もしくは第2の構成要素のいずれか、または両方の構成要素が、本明細書において説明する疾患のうちのいずれかを予防するのに使用され得ることも本発明の範囲内であることが認識される。
【0142】
本発明は、図面および実施例を参照することによりさらに例示され、これらから、本発明のさらなる特徴、態様、および利点が理解され得る。
【0143】
実施例1:腫瘍ワクチンに対するアジュバントとしてのBKGの使用
本実施例において、腫瘍ワクチンに対するアジュバントとしてのBKGの適性を判定するための実験を説明する。本明細書において言及するBKGは、リステリア・モノサイトゲネスに由来するファゴリソソーム脱出ペプチド(Hly)を発現し、かつさらに、ureCを欠損している。このような改変BCGは、本明細書においてrBCG:ΔureC:Hlyとも呼ばれる。
【0144】
基本的には、患者および動物モデルをそれぞれ、プライムブーストプロトコールともよばれる標準的なワクチン接種プロトコールによってワクチン接種しなければならない。続いて、動物を腫瘍攻撃接種に供する。このような条件下で、BKG/腫瘍細胞をワクチン接種された動物は、腫瘍攻撃接種後、腫瘍をまったく発現しないか、またはアジュバントとしてのBKG無しで腫瘍ワクチン接種を受けた動物よりも長期間、腫瘍攻撃接種に抵抗することができる。BKG/腫瘍細胞をワクチン接種された患者は、アジュバントとしてのBKG無しで腫瘍ワクチン接種を受けた患者と比べて、より長期間、腫瘍に抵抗することができる。
【0145】
そうでないという記載が無い限り、以下の材料および方法を使用した。
【0146】
細胞:
以下の細胞株を使用した:J558mOVA(OVAを発現し、かつ細胞膜にそれが結合しているJ558細胞)、J558sOVA(OVAを発現し、かつ環境中にそれを分泌するJ558細胞)、およびEL-4OVA(OVAを発現しているEL-4細胞)。最初に、細胞培養物をG418選択圧下で14日間維持した。マイコプラズマ試験は陰性であった。初期継代培養により細胞数を増加させた後、これら3種の細胞株をDMSOと共に10×106個ずつ凍結し、かつ、動物内で最初に使用する前に少なくとも7日間、液体窒素中で保存した。
【0147】
細菌
使用する細菌は、BKG(rBCG ΔureC:Hly)と呼び、さらに「BKG」と記載する。BKGを7H9完全培地中で増殖させ、かつ10%グリセロール/PBS中で凍結した。これらの細菌は、解凍し、かつ一度再凍結することができた(ただし、先に希釈をしていない場合のみ再凍結することができた)。
【0148】
初回ワクチン接種およびそれに続く2回の追加免疫ワクチン接種について、19.3μl=BKG 1×106個をマウスに注射した。
【0149】
ワクチン調製:
凍結細胞を解凍し、かつ滅菌DMEM培地中で2回洗浄した。続いて、細胞を滅菌DMEM中に再懸濁し、かつ計数した。注射液の総体積は、100μlであった(表1に従って調製)。注射前に、滅菌シリンジ中で細胞に放射線照射した(150Gyγ放射線)。インビトロの対照:それぞれ放射線照射前および放射線照射後の解凍細胞から、細胞株あたり1つのアリコートを取り出し、細胞培養物中に入れた。これらの対照は、解凍後良好な回復を示し(非放射線照射細胞)、および、放射線照射後14日を超える期間、細胞増殖はまったく示さなかった。
【0150】
マウス:
12週齢の雌C57/B6(6週齢の時点で引き渡され、試験を実施する実験室に6週間順応させられた);ワクチン皮下接種100μl;25Gの針;尾の基部;7日後に免疫モニタリング(OVAに対するテトラマー)のために血液0.3mlを全身麻酔下で採取。マウスの使用法は、それぞれの管轄官庁によって承認された。
【0151】
BKG実験1のスケジュール
0日目 初回ワクチン接種(初回抗原刺激)
7日目 1回目の血液採取
28日目 1回目の追加免疫ワクチン接種(1回目の追加免疫)
35日目 2回目の血液採取
53日目 2回目の追加免疫ワクチン接種(2回目の追加免疫)
60日目 3回目の血液採取
74日目 腫瘍攻撃接種
【0152】
使用するマウスは2つの実験群および1つの対照群に分ける:
・ワクチン群(+BKG)(n=9):サブグループ1.1番、1.3番、および1.5番(表1を参照されたい)
・ワクチン群(-BKG)(n=9):サブグループ1.2番、1.4番、および1.6番
・対照群(n=2):サブグループ1.7番
【0153】
(表1)サブグループおよび注射したワクチン

【0154】
動物の飼育:
S2条件、IVCケージ、2ケージ;3〜4日間隔で変更。
【0155】
FACS解析
盲検様式でSIINFEKELに特異的なT細胞の量を検出するために、FACS試験を実施した。細胞成分を選別した後、血漿を凍結し、かつさらなる評価のために-80℃で保存した。
【0156】
インビトロ並行実験:
細胞培養
ワクチン接種および腫瘍攻撃接種のための細胞を作製
動物実験の範囲内で使用される細胞のインビトロの対照
テトラマーを生成する、FACS実験において対照として使用される細胞の細胞培養物
ベクター学(Vectorology)
IL-2、IFNγ、およびOVAの組換え用のベクター(SINベクター)を設計した。このベクターは、LNCaP-IL-2-IFNγ細胞に対応するマウス腫瘍細胞株を作製するために使用する。
【0157】
結果:
免疫学的モニタリングの第1の結果は、図1に示すように、アジュバント無しの動物群においてよりも、アジュバントとしてBKGを有するマウスの群において、より大量のT細胞がOVAペプチドを認識できる傾向があることを示す。これは、BKGが、ワクチンに対する免疫学的応答を増強する、腫瘍ワクチン接種に対するアジュバントであることを裏付ける。
【0158】
実施例2:BKGを使用する腫瘍ワクチン接種のための治療計画の最適化
以下は、本明細書において開示する基本的な治療計画を当業者が最適化できるようにするための、実施例1で概説した治療概念の投与計画を最適化するためのプロトコールである。材料および方法は、そうではないという記載が無い限り、上記の実施例1に関連して概説したとおりである。
【0159】
治療計画1:
IL-2、IFNγ、および卵白アルブミンを発現する、安定に三重にトランスフェクトされたJ558(H2Kb)細胞株を用いて、これらの細胞の3種の異なる用量、すなわち5×106個の細胞、10×106個の細胞、および15×106個の細胞をマウス(C57BL/6(H2Kb))に注射する。各投与量に対して、マウスの群は5匹の動物からなり、かつそれらの注射スキームは以下のとおりである:初回免疫処置および30日毎に3回の追加免疫;この際、注射はBKG(1×106CFU)を併用して、または併用せずに実施する。これらの動物が、卵白アルブミンに特異的な免疫応答、および特にBKGによって媒介される免疫応答の増加を示すか否か、免疫学的に検査する。
【0160】
治療計画2
この試験は、一連の予備実験(「予備実験1〜7」)および4つの主要な実験(「実験1〜4」)からなる。
【0161】
予備実験1:アジュバントとしてBKGを併用する場合および併用しない場合のワクチン接種用腫瘍の投与量調査
マウス(C57BL/6(H2Kb))5匹からそれぞれなるマウス群合計14群を、投与量を段階的に上げたワクチン接種用腫瘍で免疫化する(14群の各2匹に同じ投与量のワクチン接種用腫瘍を与える)。ワクチン接種用腫瘍は、卵白アルブミンを発現する放射線照射された同種異系J558腫瘍細胞(H2Kb)からなり、これらは皮下注射される。7つの群において、腫瘍細胞と共にBKGを1×106CFUの投与量で注射する。1週間後、ならびに5週、9週、および13週間後、これらの動物から血液0.5mlを採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色を用いて卵白アルブミンに特異的な免疫反応を試験する。BKGを併用する、または併用しない、合計7種の異なる細胞投与量のワクチン接種用腫瘍を使用する。各投与量は、0.1×106、0.5×106、1.0×106、5.0×106、10.0×106、50.0×106、100×106であり、ヒトにおける臨床試験での対応する使用投与量の好ましい範囲は、10×106〜300×106細胞である。合計2つの対照群のマウスには、ワクチン接種用腫瘍を与えない。対照群の1つにはBKG注射を施す。
【0162】
予備実験2:試験腫瘍(B16OVA黒色腫)の投与量調査
この試験では、マウス(C57BL/6(H2Kb))4群に、投与量を段階的に上げた試験腫瘍(B16OVA黒色腫、皮下注射)を与える。腫瘍体積が2cmに達するまで腫瘍増殖をモニターする。この腫瘍体積に到達したら、マウスを安楽死させ、インビトロ解析のために血液材料および腫瘍材料を回収し、かつ保存する。腫瘍増殖が認められない場合には、12週後にマウスを屠殺する。この場合も、各群は5匹のマウスからなり、その際、試験腫瘍の4種の異なる細胞投与量、すなわち1.0×106個の細胞、5×106個、10.0×106個、および50.0×106個の細胞を使用する。
【0163】
予備実験3:アジュバント投与量の決定
予備実験1において特定した投与量に基づいて、BKGの投与量を変動させ、その際、アジュバントの投与量は、予備実験1において使用される投与量と比べて、10倍、100倍、および1000倍、ならびに0.1倍、0.01倍、および0.001倍変動させる。1週間後、ならびに5週、9週、および13週間後、これらの動物から血液0.5mlを採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色を用いて卵白アルブミンに特異的な免疫反応を試験する。
【0164】
予備実験4:投与様式に関する研究
予備実験1で決定されるワクチン接種用腫瘍細胞の投与量および予備実験3で決定されるBKG投与量は、投与様式に応じて変動する。投与様式は、静脈内、皮内、腹腔内、および同側の皮下である。各投与様式に対して、BKGの投与量は、予備実験3で定義される投与量の1倍、0.1倍、または0.01倍のいずれかである。本明細書において試験する投与様式は、ヒトでの潜在的な臨床使用に類似しており、かつアジュバントと最初に接触する免疫系の区画に関しては異なっている。1週間後、ならびに5週、9週、および13週間後、これらの動物から血液0.5mlを採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色を用いて卵白アルブミンに特異的な免疫反応を試験する。
【0165】
予備実験5:免疫化スキームに関する研究
予備実験1で定義されるワクチン接種用腫瘍細胞の投与量および予備実験3で決定されるBKG投与量を用いて、以下の免疫化スキームを検討する:
1.免疫化スキーム1:ワクチン接種用腫瘍およびアジュバントを1回同時注射(対照群)
2.免疫化スキーム2:このスキームは、麻疹のようないくつかの疾患の予防的免疫化に相当する。3回の基本的な免疫化および追加免疫を実施し、その際、基本的な免疫化は開始時、2週間後、および4週間後に実施し、かつ追加免疫は、さらに6週間後に投与される。
3.免疫化スキーム3:このスキームは、ワクチン接種間隔の異なるワクチンの現行の適用に付随する治療的ワクチン接種のために極めて重要であることが判明したスキームに相当する。より具体的には、以下の3つのサブスキームを定義することができる。
免疫化スキーム3a:3週間毎にワクチン接種(12週間後に最終の血液試料採取および安楽死)
免疫化スキーム3b:6週間毎にワクチン接種(25週間後に最終の血液試料採取および安楽死)
免疫化スキーム3c:12週間毎にワクチン接種(43週間後に最終の血液試料採取および安楽死)
【0166】
3つの免疫化スキームすべてが繰り返され、その際、アジュバントBKGの投与量は、予備実験3で決定される投与量、またはその10倍もしくは0.1倍の投与量である。
【0167】
予備実験6:BKGを併用する場合および併用しない場合のワクチン接種用腫瘍(TRAMP)の投与量調査
合計12群のTRAMPマウス(Jackson Laboratory株番号003135)に、説明書で定義されているTRAMP-C1ワクチン接種用腫瘍細胞の投与量(5×106細胞)の0.1倍、1倍、および10倍をワクチン接種する。ワクチン接種用腫瘍細胞は、まったく遺伝子改変をせずに(wtTRAMP)、またはIL-2/IFNγトランスフェクト細胞として使用する。5×105個、5×106個、および5×107個のTRAMP細胞を用いて皮下注射によりマウスを免疫化する。6つの群には、腫瘍細胞と共に活性なアジュバントとして1×106CFUのBKGを与える。免疫化後1週間目、および続いて6週毎に、血液0.5mlを試料採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色によってTRAMP-C1に特異的な免疫反応を測定する。12週毎に、疾患の進行をモニターするためにCTを実施する。不必要な苦痛を回避するために、影響を受けていない前立腺癌疾患を示すTRAMPマウスは32〜35週齢で屠殺しなければならない。ワクチン接種によって、疾患の進行に変化が観察され得るかどうかを調査するために、第40週目までマウスを観察すべきである。
【0168】
予備実験7:アジュバント投与量に関する研究
予備実験6で決定したワクチン接種用腫瘍細胞の投与量は、BKG投与量(予備実験6で決定したBKG投与量の0.1倍、1倍、および10倍)に応じて変動する。予備実験6と同様に、wtTRAMP-C1ならびに遺伝子改変されたIL-2/IFNγ-TRAMP-C1細胞の両方を試験する。免疫化後1週間目、および続いて6週毎に、血液0.5mlの試料を動物から採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色によってTRAMP-C1に特異的な免疫反応を測定する。12週毎に、疾患の進行をモニターするためにCTを実施する。40週目に最終の血液試料採取および安楽死を実施する。
【0169】
実験1:卵白アルブミン系を使用する予防的腫瘍ワクチン接種
ワクチン接種用腫瘍細胞、すなわち卵白アルブミンを発現する放射線照射された同種異系J558腫瘍細胞(H2Kb)を予備実験1で定義した投与量で用いて、C57BL/6マウス(H2Kb)を免疫化する。これらの動物の一部には、ワクチン接種用腫瘍と共に活性なアジュバントBKG(予備実験3で定義する投与量)を与える。1週間後、血液0.5mlを動物から採取し、かつELISA、細胞内サイトカイン染色、またはテトラマー染色によって卵白アルブミンに特異的な免疫反応を測定する。さらに4週間後、卵白アルブミンを発現するB16腫瘍細胞および腫瘍増殖の通常の対照を予備実験2で決定した投与量に相当する腫瘍細胞の投与量で皮下注射することによって、生きた腫瘍細胞に対する免疫系の反応性を測定する。
【0170】
さらに、腫瘍に特異的な免疫反応の増大に対するBKGの効果を野生型BCG細菌と比較する。投与様式としては、予備実験4で決定した最善の様式を、最善のプライムブーストスキームおよび最善の持続的適用スキームを含む、予備実験5で決定した2つの最適免疫化スキームと組み合わせて使用する。
【0171】
実験2:卵白アルブミン系を使用する治療的腫瘍ワクチン接種
実験1で報告する予防的腫瘍免疫化とは対照的に、放射線照射されていない試験腫瘍細胞を予備実験2で特定した投与量を用いて皮下注射することによって、C57BL/6マウス(H2Kb)において腫瘍増殖を発生させる。腫瘍の直径が0.5cmになったら、実験1で説明したワクチン接種スキームを試験する。腫瘍の直径が2cmに達したら、これらの試験を終了する。しかしながら、これらの動物は最長1年間モニターする。存在する免疫学的プロセスを考察するために、4週間毎にマウスから血液0.5mlを試料採取して、実験1で定義したように免疫応答を測定する。
【0172】
実験3:予防的腫瘍ワクチン接種(TRAMP)
TRAMPマウスは、第6〜7週に初めて上皮内新生物を示し、かつ第15週から前立腺癌の顕著な臨床像を示し始める。このような前立腺癌は、最初は限局しているが、24週目から約10%の動物が転移を示し始め、かつ32〜35週目からは、重度の疾患状態が予想され得る。予防的腫瘍ワクチン接種は、第5週から開始する。アジュバントを併用しないワクチン接種用腫瘍細胞およびアジュバントを併用するワクチン接種用腫瘍細胞の単回注射を使用する。ワクチン接種用腫瘍細胞として、TRAMPマウスに由来する前立腺癌細胞株であるTRAMP-C1細胞を致死的に放射線照射したものを使用する。ワクチン接種用腫瘍細胞は、遺伝子改変をせずに(wtTRAMP)、またはIL-2/IFNγトランスフェクト細胞として使用する。さらに、予備実験で決定した2つの最善の免疫化スキーム(プライムブーストスキームおよび長期スキーム)を試験する。PCa発症の対照として、動物を12週毎にCTに供する。以下の群が定義され得る:
HV3.1 ワクチン接種無(対照群)
HV3.2 ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP-C1細胞)皮下
HV3.3 BKGワクチン(wtTRAMP-C1細胞+BKG)皮下
HV3.4 BCGワクチン(wtTRAMP-C1細胞+BCG)皮下
HV3.5 予備実験5で決定したプライムブーストとして、ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP)
HV3.6 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BKGワクチン(wtTRAMP)
HV3.7 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BCGワクチン(wtTRAMP)
HV3.8 予備実験5で決定した長期免疫化として、ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP)
HV3.9 予備実験5で決定した長期免疫化として、BKGワクチン(wtTRAMP)
HV3.10 予備実験5で決定した長期免疫化として、BCGワクチン(wtTRAMP)
HV3.11 ワクチン接種用腫瘍のみ(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞)皮下
HV3.12 BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞+BKG)皮下
HV3.13 BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞+BCG)皮下
HV3.14 予備実験5で決定したプライムブーストとして、ワクチン接種用腫瘍のみ(TL2/IFNγ-TRAMP)
HV3.15 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV3.16 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV3.17 予備実験5で決定した長期免疫化として、ワクチン接種用腫瘍のみ(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV3.18 予備実験5で決定した長期免疫化として、BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV3.19 予備実験5で決定した長期免疫化として、BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
【0173】
HV3.2〜HV3.4の群およびHV3.11〜HV3.13の群の免疫化スキームを図2に示す。各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生;第-5週
2:ワクチン接種;時間0(5週齢のマウス)
3:1週間後に血液試料採取
4:7週間後に血液試料採取
5:13週間後に血液試料採取およびCT
6:19週間後に血液試料採取
7:25週間後に血液試料採取およびCT
8:31週間後に血液試料採取
9:37週間後に血液試料採取およびCT
10:40週間後に血液試料採取およびマウスの安楽死
【0174】
HV3.5〜HV3.7の群およびHV3.14〜HV3.16の群の免疫化スキームを図3に示す。各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生;第-2週
2:ワクチン接種;時間0(初回抗原刺激I)
3:1週間後に血液試料採取
4:2週間後にワクチン接種(初回抗原刺激II)
5:4週間後にワクチン接種(初回抗原刺激III)(6週齢の時点)
6:5週間後に血液試料採取
7:10週間後にワクチン接種(追加免疫ワクチン接種)(12週齢の時点)
8:追加免疫ワクチン接種後1週目に血液試料採取およびCT
9:追加免疫ワクチン接種後7週目に血液試料採取
10:追加免疫ワクチン接種後13週目に血液試料採取およびCT
11:追加免疫ワクチン接種後19週目に血液試料採取
12:追加免疫ワクチン接種後25週目に血液試料採取およびCT
13:追加免疫ワクチン接種後28週目に(40週齢時点)血液試料採取およびマウスの安楽死
【0175】
HV3.8〜HV3.10の群およびHV3.17〜HV3.19の群の免疫化スキームを図4に示す。各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生;第-2週
2:1回目のワクチン接種;時間0
3:1週間後に血液試料採取
4:6週間後に2回目のワクチン接種(予備実験5で決定したワクチン接種の間隔)
5:1週間後に血液試料採取
6:12*週間後に3回目のワクチン接種
7:1週間後に血液試料採取およびCT
8:18*週間後に4回目のワクチン接種
9:1週間後に血液試料採取
10:24*週間後に5回目のワクチン接種
11:1週間後に血液試料採取およびCT
12:30*週間後に6回目のワクチン接種
13:1週間後に血液試料採取
14:6週間後に血液試料採取
15:40週間後に血液試料採取およびマウスの安楽死
*ワクチン接種の間隔は、予備実験5からの結果に依存する。
【0176】
実験4:治療的腫瘍ワクチン接種(TRAMP)
すべてのTRAMPマウスは15週齢で前立腺腫瘍を発症し、これは32週目に完全に発達し、これらの動物に臨床的問題を引き起こす。したがって、24週目にこれらの動物を免疫化する。中止判定基準のうちの1つが認識されたら、実験は中止する。最長で、40週間、これらの動物をモニターする。免疫学的プロセスをモニターするために、6週間毎にマウスから血液試料0.5mlを採取し、実験1に関連して説明したように免疫応答を調査し、かつ12週間毎にCTのような画像検査を使用する。実験3に関連して説明したのと同じ腫瘍細胞を使用する。
【0177】
以下の群を試験する。
HV4.1 ワクチン接種無(対照群)
HV4.2 ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP-C1細胞)皮下
HV4.3 BKGワクチン(wtTRAMP-C1細胞+BKG)皮下
HV4.4 BCGワクチン(wtTRAMP-C1細胞+BCG)皮下
HV4.5 予備実験5で決定したプライムブーストとして、ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP)
HV4.6 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BKGワクチン(wtTRAMP)
HV4.7 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BCGワクチン(wtTRAMP)
HV4.8 予備実験5で決定した長期免疫化として、ワクチン接種用腫瘍のみ(wtTRAMP)
HV4.9 予備実験5で決定した長期免疫化として、BKGワクチン(wtTRAMP)
HV4.10 予備実験5で決定した長期免疫化として、BCGワクチン(wtTRAMP)
HV4.11 ワクチン接種用腫瘍のみ(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞)皮下
HV4.12 BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞+BKG)皮下
HV4.13 BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP-C1細胞+BCG)皮下
HV4.14 予備実験5で決定したプライムブーストとして、ワクチン接種用腫瘍のみ(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV4.15 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV4.16 予備実験5で決定したプライムブーストとして、BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV4.17 予備実験5で決定した長期免疫化として、ワクチン接種用腫瘍のみ(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV4.18 予備実験5で決定した長期免疫化として、BKGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
HV4.19 予備実験5で決定した長期免疫化として、BCGワクチン(IL2/IFNγ-TRAMP)
【0178】
図5は、HV4.2〜HV4.4の群およびHV4.11〜HV4.13の群のための免疫化スキーム1を示し、各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生
2:6週間後に血液試料採取
3:12週間後に血液試料採取およびCT
4:18週間後に血液試料採取
5:24週間後にワクチン接種
6:25週間後に血液試料採取およびCT
7:30週間後に血液試料採取
8:36週間後に血液試料採取およびCT
9:40週間後に血液試料採取およびマウスの安楽死
【0179】
図6は、HV4.5〜HV4.7の群およびHV4.14〜HV4.16の群のための免疫化スキーム2を示し、各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生
2:6週間後に血液試料採取
3:12週間後に血液試料採取およびCT
4:18週間後に血液試料採取
5:24週間後にワクチン接種(初回抗原刺激I)
6:25週間後に血液試料採取およびCT
7:26週間後にワクチン接種(初回抗原刺激II)
8:28週間後にワクチン接種(初回抗原刺激III)
9:30週間後に血液試料採取
10:34週間後にワクチン接種(追加免疫ワクチン接種)
11:36週間後に血液試料採取およびCT
12:40週間後に血液試料採取およびマウスの安楽死
【0180】
図7は、HV4.8〜HV4.10の群およびHV4.17〜HV4.19の群のための免疫化スキーム3を示し、各数字は以下に相当する:
1:マウスの誕生
2:6週間後に血液試料採取
3:12週間後に血液試料採取およびCT
4:18週間後に血液試料採取
5:24週間後にワクチン接種(初回抗原刺激I)
6:25週間後に血液試料採取およびCT
7:30週間後にワクチン接種(初回抗原刺激II)
8:31週間後に血液試料採取
9:36週間後にワクチン接種(初回抗原刺激III)
10:37週間後に血液試料採取およびCT
11:42週間後にワクチン接種(初回抗原刺激IV)
12:43週間後に血液試料採取およびマウスの安楽死
ワクチン接種の間隔は、好ましくは、予備実験5の結果に依存する。
【0181】
実施例3:前立腺癌の治療用の組成物
前立腺癌の治療に適する組成物は、リステリア・モノサイトゲネスに由来するファゴリソソーム脱出ペプチド(Hly)を発現し、さらにureCを欠損している、BCGを第1の構成要素として含む。このような改変BCGは、本明細書においてrBCG:ΔureC:Hlyとも呼ぶ。この組成物は、遺伝子改変されたLNCaP細胞を第2の構成要素として含み、これらの細胞は組換えインターロイキン-2(IL2)およびインターフェロン-γ(IFNγ)を発現する前立腺癌細胞である。好ましくは、このようなLNCaP細胞は、ほぼ等モルの様式で両方のサイトカインを発現する。この種のLNCaP細胞は、例えば、国際特許出願WO94/18995において記載されている。使用前にそれらの複製能を消失させるために、このような組換え前立腺癌細胞にγ線を照射した。
【0182】
両方の構成要素をリン酸緩衝生理食塩水溶液中に懸濁し、患者への投与用に提供した。この組成物は、50μl中に含まれるBCG細胞1×106個およびLNCaP細胞1×106個を含む。組成物は静脈注射する。有効性を検査するために、ELISPOT解析を実施する。このようなELISPOT解析は、例えば、Mollenkopf H.J., Dietrich G., Fensterle J., Grode L., Diehl K.D., Knapp B., Singh M., O'Hagan D. T., Ulmer J.B., and Kaufmann S. H. Enhanced protective efficacy of a tuberculosis DNA vaccine by adsorption onto cationic PLG microparticles. Vaccine. 2004 Jul 29;22(21-22):2690-5において記載されている。
【0183】
代替の治療計画では、前述の組成物を1回投与し、続いて、LNCaP細胞のみをさらに投与する。その範囲において、第1および第2の構成要素が、異なる頻度で、かつ異なる時間パターンに従って投与され得ることは、本発明の一般的原則である。
【0184】
臨床試験では、組織像および腫瘍の臨床的病期、ならびにそのようにして治療される患者の健康状態を登録する。代用のパラメータは、PSAレベルの推移およびPSAレベルの推移が良好な患者の数である。
【0185】
患者に投与される特定の組合せによって、アジュバントを併用しない場合、すなわちLNCaP細胞のみを投与した際に認められる効果と比べてより優れた、PSAレベルならびに改善された生存率の両方の良好な推移が観察されると思われる。
【0186】
実施例4:HCMVワクチンに対するアジュバントとしてのBKGの使用
本実施例では、ヒトサイトメガロウイルスの感染に対する細胞性免疫を誘導するための、アジュバントとしてのBKG、および本明細書において説明するHCMVデンスボディの成功裡な組合せを報告する。より具体的には、短期間内に細胞性免疫を誘導できることを報告する。このようなHCMV免疫の迅速な誘導は、生命を脅かすHCMV感染をかなり頻繁に伴う、骨髄移植を受けている患者において特に重要である。骨髄移植を受けている患者において特に重要である。移植患者の場合、標準的な手法に従ってより長期間に渡ってワクチン接種をするための時間がないため、細胞性免疫を迅速に発生させる必要がある。
【0187】
以下のワクチン接種スキームを使用した:
抗原:
デンスボディ
投与量:20μg/動物
免疫化スキーム:
D:0/7/21日目
C:0/7日目
B:0日目
アジュバント:
投与量:1×106/動物
免疫化スキーム:0日目
【0188】
群の構成:

最後の免疫化後それぞれ各8日目および9日目に検査を実施する。
【0189】
これらの結果を図8および図9に示す。図9は、HCMVに特異的なペプチドミックス(JPT Peptide Technologies GmbH, Berlin, Germanyより)を用いて刺激した際のCD8+T細胞105個当たりのIFN-γ陽性細胞の数を表す図である。これらの配列は、HCMV pp65タンパク質に由来している。これは、11アミノ酸の配列重複を示す、138種のペプチド(それぞれ15アミノ酸)の混合物(Pepmix)である。図8は、図9のものに類似した図であり、非特異的な対照ペプチドで刺激した際のCD8+T細胞の数量がそれぞれ測定されている。該図面から理解し得るように、初回ワクチン接種でBKGをアジュバントとして使用した場合、各場合において、CD8 T細胞105個当たりのIFN-γ陽性CD8細胞の数は有意に増加した。最も顕著な増加は、B2群およびC2群で観察され得る。これは、0日目および7日後に投与されるデンスボディと組み合わせた、BKGを用いる基本的なワクチン接種が、IFN-γ-陽性細胞の数を有意に増加させるのに既に十分であることを意味する。これは、デンスボディおよびBKGの両方を組み合わせた場合に、HCMVに対する細胞性免疫を誘導することが可能であるという本発明の基礎を成す驚くべき発見を裏付ける。
【0190】
実施例5:マラリアを治療および予防するための組成物
マラリアを治療および予防するための組成物は、第1の構成要素としてrBCG:ΔureC:Hlyおよび第2の構成要素としてマラリア抗原gp190/MSP1を含む。抗原は、ペプチドとして存在し得ること、またはより大型のペプチド、ポリペプチド、もしくはさらにタンパク質の一部分であり得ることが認識される。
【0191】
この組成物は、PBS緩衝液50μl中にMSP1タンパク質50μgおよびrBCG:ΔureC:Hly約1×106個を含む。この組成物をマウスに皮下投与する。免疫化後、免疫化したマウスの脾臓および血液を採取し、かつ分析手法において使用する。
【0192】
ワクチン接種プロセスの進行を、ELISPOT技術(Mollenkopf H. J.、前記)およびメロゾイト(Merozoite)侵入阻害アッセイ法(Blackman et al. 1990 J.Exp. Med. Volume 172 P: 379-382)を用いてやはりモニターする。本発明者らは、免疫刺激の改善およびMSP-1特異的ペプチドによる刺激後のIFN-γ分泌を予想する。本発明者らはまた、免疫化マウスから採取した血清によって誘導される侵入阻害も予想する。IFN-γELISPOTおよびメロゾイト阻害の結果は、防御に相関している。
【0193】
本明細書、特許請求の範囲、配列表、および/または図面において開示される本発明の特徴は、別々およびそれらの任意の組合せの両方で、様々な形態の本発明を理解するための資料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】BKGおよびワクチンを組み合わせて投与した際にCD8+Tet+T細胞として発現される免疫応答を対照と比較して表す図を示す。
【図2】予防的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図3】予防的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図4】予防的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図5】治療的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図6】治療的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図7】治療的な腫瘍ワクチン接種のための免疫化スキームを示す。
【図8】様々なペプチドを用いて刺激した際のIFN-γ陽性CD8 T細胞の数に対する様々な免疫化スキームの効果を示す図である。
【図9】様々なペプチドを用いて刺激した際のIFN-γ陽性CD8 T細胞の数に対する様々な免疫化スキームの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構成要素が、ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞であり;かつ第2の構成要素が、生物学的に活性な作用剤である、第1の構成要素および第2の構成要素を含む組合せ。
【請求項2】
細菌細胞がウレアーゼを欠損している、請求項1記載の組合せ。
【請求項3】
細菌細胞がマイコバクテリウム細胞である、請求項1または2記載の組合せ。
【請求項4】
細胞がマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)細胞である、請求項3記載の組合せ。
【請求項5】
細菌細胞のウレアーゼのサブユニットをコードしている少なくとも1つの細胞核酸が不活性化される、請求項1〜4のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項6】
少なくとも、細菌ウレアーゼのCサブユニットをコードしている配列が不活性化される、請求項5記載の組合せ。
【請求項7】
ファゴリソソーム脱出ドメインが、リステリアのファゴリソソーム脱出ドメインである、請求項1〜6のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項8】
ファゴリソソームドメインが、
a)配列番号1において示されるヌクレオチド211〜1,722を含むヌクレオチド配列;b)a)に由来する配列と同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および
c)a)またはb)に由来する配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
を含む群より選択される核酸分子によってコードされる、請求項1〜7のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項9】
細菌細胞が、哺乳動物において免疫応答を誘発することができるペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項10】
ペプチドまたはポリペプチドが、自己抗原、腫瘍抗原、ウイルス抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、およびそれらの免疫原性の断片より選択される、請求項9記載の組合せ。
【請求項11】
ペプチドまたはポリペプチドが、融合ポリペプチドの一部分である、請求項9または10記載の組合せ。
【請求項12】
融合ポリペプチドが、
a)哺乳動物において免疫応答を誘発することができる、ポリペプチドに由来する少なくとも1つのドメイン、および
b)ファゴリソソーム脱出ドメイン
を含む、請求項11記載の組合せ。
【請求項13】
ポリペプチドが、請求項9記載のポリペプチドまたはその一部分である、請求項12記載の組合せ。
【請求項14】
ファゴリソソーム脱出ドメインが、請求項1〜11のいずれか一項記載のファゴリソソーム脱出ドメインのドメインである、請求項12または13記載の組合せ。
【請求項15】
細菌細胞が、rBCG:HlyまたはrBCGΔureC:Hlyである、請求項1〜13のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項16】
生物学的に活性な作用剤が、真核細胞、およびより好ましくはサイトカインを発現する遺伝子操作された真核細胞である、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項17】
サイトカインが、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-12、およびインターフェロン-γを含む群より選択される、請求項16記載の組合せ。
【請求項18】
細胞が、2種またはそれ以上のサイトカインを共発現する、請求項17記載の組合せ。
【請求項19】
細胞が、IL-2およびインターフェロン-γを共発現する、請求項18記載の組合せ。
【請求項20】
細胞が、細胞および/もしくは組成物が投与されるか、または投与される予定の対象に対して自己由来(autologue)である、請求項16〜19のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項21】
細胞が、細胞および/もしくは組成物が投与されるか、または投与される予定の対象に対して同種異系である、請求項16〜19のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項22】
細胞が、非プロフェッショナル抗原提示細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、腫瘍細胞、および樹状細胞を含む群より選択される、請求項16〜21のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項23】
腫瘍細胞が免疫原性の腫瘍であり、かつ該腫瘍細胞が、好ましくは、黒色腫細胞、腎癌細胞、乳房腫瘍細胞、脳腫瘍細胞、前立腺腫瘍細胞、非小細胞肺癌、結腸癌、および頭頸部の扁平上皮腫瘍を含む群より選択される、請求項22記載の組合せ。
【請求項24】
細胞が、同種異系細胞であり、かつHLAクラスIが一致している、請求項16〜23のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項25】
細胞が、サイトカイン、接着分子、共刺激因子、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、および寄生虫抗原を含む群より選択される別の免疫分子を発現する、請求項16〜24のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項26】
寄生虫抗原が、マラリア原虫(Plasmodium)、好ましくは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である、請求項25記載の組合せ。
【請求項27】
生物学的に活性な作用剤が、マラリア原虫、好ましくは熱帯熱マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項28】
生物学的に活性な作用剤がヒトサイトメガロウイルスである、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項29】
生物学的に活性な作用剤が、好ましくは、ヒトサイトメガロウイルスによる哺乳動物細胞の感染後に放出される、1つのウイルス粒子または多数のウイルス粒子であり、その際、該粒子は、(a)ウイルスの糖タンパク質が埋め込まれている脂質膜によって取り囲まれており、かつ(b)ウイルスDNAもキャプシドも含まない、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項30】
粒子が、T細胞抗原pp65(UL83)の1つまたは複数の部分およびpp65ではない1種または複数種のタンパク質の1つもしくは複数の部分を含む融合タンパク質を含む、請求項29記載の組合せ。
【請求項31】
T細胞抗原pp65が、ヒトサイトメガロウイルスの糖タンパク質の1つまたは複数の部分に融合されており、該糖タンパク質は、HCMV糖タンパク質gH、HCMVタンパク質IE1(ppUL123)、およびHCMV糖タンパク質gBを含む群より選択される、請求項30記載の組合せ。
【請求項32】
T細胞抗原が、HCMV以外のヒト病原体の一部分であるタンパク質の1つまたは複数の部分に融合される、請求項30記載の組合せ。
【請求項33】
病原体が、HIV-1、HBV、HCV、およびインフルエンザを含む群より選択される、請求項32記載の組合せ。
【請求項34】
粒子が、異なるHCMV株に由来する特定の糖タンパク質の変異体である少なくとも2種の糖タンパク質の一部分を含む、請求項29〜33のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項35】
特定のHCMV糖タンパク質の2種の変異体のうちの一方がHCMV Towne株の変異体であり、かつもう一方が、HCMV Ad169株の変異体である、請求項34記載の組合せ。
【請求項36】
哺乳動物細胞が、線維芽細胞、好ましくは包皮繊維芽細胞である、請求項29〜35のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項37】
粒子がデンスボディ(dense body)である、請求項29〜36のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項38】
生物学的に活性な作用剤が、デンスボディ、好ましくはHCMVのデンスボディ、または請求項37記載のデンスボディである、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項39】
生物学的に活性な作用剤が、マイコバクテリウム、好ましくはマイコバクテリウム亜種に由来する抗原である、請求項1〜15のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項40】
マイコバクテリウムが、M.ツベルクローシス(M. tuberculosis)、M.ボビス、M.カネッティ(M. canettii)、M.アフリカヌム(M. africanum)、およびM.パラツベルクローシス(M. paratuberculosis)を含む群より選択される、請求項39記載の組合せ。
【請求項41】
抗原が抗原85である、請求項39および40記載の組合せ。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか一項記載の組合せおよび任意で薬学的に許容される担体を含む、組成物、好ましくは薬学的組成物。
【請求項43】
薬剤を製造するための、請求項1〜41のいずれか一項記載の組合せ、請求項42記載の組合せ、またはそのような組合せの各構成要素の使用。
【請求項44】
薬剤が、癌および感染性疾患を含む群より選択される疾患の治療用および/または予防用である、請求項43記載の使用。
【請求項45】
癌が、免疫原性の腫瘍であり、かつより好ましくは、前立腺癌、黒色腫、腎癌、乳房腫瘍、脳腫瘍、非小肺癌、結腸癌、および頭頸部の扁平上皮腫瘍を含む群より選択される、請求項44記載の使用。
【請求項46】
感染性疾患がマラリアである、請求項44記載の使用。
【請求項47】
生物学的に活性な作用剤が、マラリア原虫のgp190/MSP1タンパク質、または哺乳動物において免疫応答を誘発することができるその断片である、請求項46記載の使用。
【請求項48】
感染性疾患がHCMV感染症である、請求項44記載の使用。
【請求項49】
生物学的に活性な作用剤が、前記請求項のいずれか一項記載のデンスボディである、請求項48記載の使用。
【請求項50】
感染性疾患が結核である、請求項44記載の使用。
【請求項51】
生物学的に活性な作用剤が、マイコバクテリウム、好ましくはマイコバクテリウム亜種に由来する抗原である、請求項50記載の使用。
【請求項52】
マイコバクテリウムが、M.ツベルクローシス、M.ボビス、M.カネッティ、M.アフリカヌム、およびM.パラツベルクローシスを含む群より選択される、請求項51記載の使用。
【請求項53】
抗原が抗原85である、請求項51または52記載の使用。
【請求項54】
治療ワクチンおよび/または予防ワクチンを製造するための、請求項1〜41のいずれか一項記載の組合せ、またはそのような組合せの各構成要素の使用。
【請求項55】
請求項1〜41のいずれか一項記載の組合せまたは請求項42記載の薬学的組合せを投与する段階を含む、疾患に罹患しており、かつそのような治療を必要としている患者を治療するための方法。
【請求項56】
薬学的組合せ、好ましくは請求項42記載の薬学的組成物を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法:
ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞を第1の構成要素として提供する段階;
生物学的に活性な作用剤を第2の構成要素として提供する段階;ならびに
第1の構成要素および第2の構成要素を薬学的組成物に製剤化する段階。
【請求項57】
薬学的組合せ、好ましくは請求項42記載の薬学的組成物を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法:
ファゴリソソーム脱出ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの組換え核酸分子を含む細菌細胞を第1の構成要素として提供する段階;
生物学的に活性な作用剤を第2の構成要素として提供する段階;ならびに
第1の構成要素および第2の構成要素を別々に製剤化する段階。
【請求項58】
製剤化された第1の構成要素および製剤化された第2の構成要素が単一のパッケージ中に包装される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
製剤化された第1の構成要素および製剤化された第2の構成要素が別々のパッケージ中に包装される、請求項57記載の方法。
【請求項60】
パッケージが、単回投薬単位であるか、または複数の単回投薬単位を含む、請求項58および59のいずれか記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−517013(P2008−517013A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537177(P2007−537177)
【出願日】平成17年10月16日(2005.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011127
【国際公開番号】WO2006/045468
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507132639)ワクチン プロジェクト マネジメント ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】