説明

ワクチンとしてまたは結合体ワクチンとしてタンパク質に連結して使用するための細菌莢膜多糖の抽出および単離法

【課題】莢膜多糖の抽出方法と抽出した莢膜多糖を提供する。
【解決手段】グラム陰性菌及びグラム陽性菌の細菌細胞に加えてその培養上清から塩基抽出を用いて多量の莢膜多糖(CPS)を単離する。この方法は単純で、迅速で、再現性があり、かつ様々な細菌種に適用可能である。また、この方法は、外来性ペプチドグリカンに共有結合しないことによって特徴付けられる新規CPSも生じる。該莢膜多糖は細菌感染に対するワクチンに利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に援用される、1997年12月23日に提出された米国仮特許出願第60/068,608号から優先権が請求される。
発明の分野
本発明は、グラム陰性およびグラム陽性細菌両方から、莢膜多糖(capsular polysaccharides:CPS)を抽出し、そして単離するための方法に関する。抽出された多糖は、多糖を単独で含むまたはタンパク質と結合している(conjugated)ワクチンを産生するのに有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
発明の背景
連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、腸球菌属(Enterococcus)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、リステリア属(Listeria)、エリジペロトリックス属(Erysipelothrix)、およびクロストリジウム属(Clostridium)などのグラム陽性菌、ならびにヘモフィルス属(Haemophilus)、赤痢菌属(Shigella)、コレラ菌(Vibro cholerae)、ナイセリア属(Neisseria)および特定の種類の大腸菌(Escherichia coli)などのグラム陰性細菌により引き起こされる細菌感染は、世界中に深刻な罹患率(morbidity)を引き起こしている。これは、細菌が示す抗生物質に対する耐性が明らかになりつつあることと合わせ、細菌ワクチン開発の必要性を示唆する。例えば、連鎖球菌属は、グラム陽性細菌の大きくそして多様な属であり、抗原性およびその細胞壁多糖の構造に基づき、いくつかの群に分けられてきている(26、27)。これらの群のうち2つは、深刻なヒト感染と関連付けられてきている。A群連鎖球菌は、「連鎖球菌咽頭炎(strep throat)」、リウマチ熱、連鎖球菌膿痂疹(impetigo)、および敗血症を含む、多様な感染性障害を引き起こす。
【0003】
B群連鎖球菌は、1970年代初期まで、標準的医学教科書ではヒト病原体とされていなかった。その後、B群連鎖球菌は、発展途上国と共に米国でも周産期の重要な病原体であることが、研究により示されてきている(37)。生命の最初の2か月の間に全身性B群連鎖球菌感染を起こすのは、誕生1000当たりおよそ3であり(12)、その結果、米国では年間11,000の症例がある。これらの感染は、先天性肺炎、敗血症および髄膜炎の症状を引き起こす。これらの幼児のかなりの数が死ぬかまたは永続的な神経学的後遺症を有する。さらに、B群連鎖球菌感染は、年間50,000近くの女性で発生する、妊娠に関連した高い罹患率に関連している可能性がある。B群連鎖球菌感染の危険性がある他のものは、先天的にまたは化学療法により、あるいは他の手段により、改変された免疫応答を有するものである。
【0004】
B群連鎖球菌は、該細菌の莢膜多糖に基づき、さらに、いくつかの異なる型に分類することが可能である。Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIII型は、大部分のB群感染による病原性の原因となり、B型連鎖球菌Ia、Ib、II、III、およびVが、報告されるすべての症例の90%以上に相当する。これらの多様な型の多糖各々の構造が性質決定されてきている(19−22、44)。他の多くのヒト細菌病原体での発見同様、B群連鎖球菌の莢膜多糖は、ワクチン中で使用すると、これらの細菌での感染に対し、有効な防御を提供する可能性がある。4、6、24、29、30、42、43、45を参照されたい。
【0005】
グラム陰性細菌もまた、疾患の重大な原因である。インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型細菌(Hib)に対して向けられる多糖−タンパク質ワクチンが最近開発されそして使用されるまで、Hib細菌感染は、幼児の精神遅滞の多くの症例に責任を負っていた。髄膜炎菌(N. meningitidis)および大腸菌K1感染は、新生児髄膜炎に責任を負う。グラム陰性細菌株、大腸菌は、大腸菌株で汚染された肉を食べることによる死を含む、深刻な病気に関連付けられてきている。
【0006】
莢膜多糖ワクチンおよび莢膜多糖結合体ワクチン(conjugate vaccines)の大規模産生には、精製莢膜多糖を適切に供給することが必要である。細菌細胞から莢膜多糖を単離する、先行技術の方法(40、42)は、酵素ミュータノリシン(mutanolysin)で細胞を処理することに頼る。ミュータノリシンは、細菌細胞壁を切断し、それにより細胞構成要素を遊離させる。本法は、細胞溶解物をさらなる酵素で処理し、タンパク質および核酸を除去し、そして沈澱およびクロマトグラフィーで区別することにより精製することを伴う。精製莢膜多糖を得るには、より効率的でより高い収率の、そしてより単純な手段が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、グラム陰性およびグラム陽性細菌両方の細胞構成要素から、莢膜多糖(CPS)を抽出するための方法を提供する。CPSは、本発明にしたがい、細菌上清または細菌細胞のどちらからでも、CPSを他の細胞構成要素に連結している塩基不安定性結合の加水分解により、抽出することが可能である。本発明により提供される抽出法の利点は、抽出されるCPSが大部分損なわれていない(intact)ことである。
【0008】
本発明の別の態様は、塩基抽出中にCPSのN−アセチル基の一部を脱アセチル化し、CPSの他の細胞構成要素からの分離を容易にすることにより、精製莢膜多糖を得るための方法を提供する。アセチル基の一部を再導入し、N−アセチル基に関し、天然多糖と同じ反復単位構造を有する精製CPSを得てもよいし、あるいは、修飾アルキル基でのアシル化を用い、修飾CPSを得てもよい。
【0009】
好ましい態様において、CPSはB群連鎖球菌(GBS)から抽出される。最も好ましい態様において、CPSはGBS Ia、Ib、II、III、VおよびVIII型から抽出される。
【0010】
別の好ましい態様において、CPSは肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)から抽出される。最も好ましい態様において、CPSは肺炎連鎖球菌III、IVおよびXIV型から抽出される。
【0011】
別の好ましい態様において、CPSはナイセリア属またはエシャリキア属(Escherichia)細菌から抽出される。最も好ましい態様において、CPSは髄膜炎菌B、C、Y、またはW135型あるいは大腸菌K1から抽出される。
【0012】
細菌上清または細菌細胞のどちらかから、本発明にしたがい、莢膜多糖を精製する方法は、他の方法に対し、以下の利点を有する:(a)簡単(最小の段階数)、(b)有効(高収率および純度)、(c)安全(例えば、可燃性有機溶媒使用の減少または排除)、および(d)すべてのグラム陰性およびグラム陽性細菌に一般的に適用可能。
【0013】
本発明にしたがった方法は、濃縮抽出物および/または単離細菌細胞の、塩基性溶液での処理を含む。CPSを抽出するのに加え、塩基抽出はまた、N−アセチル基の脱アセチル化も生じる。脱アセチル化の度合いは反応条件を調整することにより、変化させることが可能である。抽出したCPSをその後、好ましくはクロマトグラフィー分離により、細胞構成要素から分離し、CPSを得る。アセチル基のいくつかまたは大部分を再導入し、CPSまたは修飾CPSを得てもよい。CPSの最終精製は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより達成してもよい。さらなる態様において、本発明は、塩基性抽出条件の結果として、ワクチンまたは結合体ワクチンとして使用するのに適した、新規の、所望により修飾されているCPSを提供する。
【0014】
哺乳動物において、殺菌性でありそして該動物を感染から防御する抗体の産生を引き出すことが可能な、実質的に純粋なCPSを提供するための方法を提供するのが本発明の態様である。
【0015】
これらのCPSをワクチン中で、単独でまたはポリペプチドに結合して使用し、ヒトまたは動物を、典型的には該CPSが単離された細菌株による感染に対し防御することが、本発明の別の態様である。特定の場合では、本発明に用いられる多糖は、他の病原性細菌に交差反応性である抗体の産生を誘導し、それによりこれらの他の細菌による感染に対する防御を生じてもよい。
【0016】
グラム陰性およびグラム陽性細菌上清あるいはグラム陰性またはグラム陽性細菌細胞のどちらかに含まれる、グラム陰性およびグラム陽性細胞構成要素両方から、莢膜多糖を単離するための方法を提供するのが、本発明の目的である。これらの莢膜多糖をその後、ワクチンとして使用し、またはポリペプチドに結合し、ワクチンとして有用な結合体分子を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】D2O中、50℃で記録された、B群連鎖球菌Ia型由来の莢膜多糖のNMRスペクトル(500 MHz)。
【図2】D2O中、50℃で記録された、B群連鎖球菌Ib型由来の莢膜多糖のNMRスペクトル(500 MHz)。
【図3】D2O中、50℃で記録された、B群連鎖球菌II型由来の莢膜多糖のNMRスペクトル(500 MHz)。
【図4】D2O中、50℃で記録された、B群連鎖球菌III型由来の莢膜多糖のNMRスペクトル(500 MHz)。
【図5】D2O中、50℃で記録された、B群連鎖球菌V型由来の莢膜多糖のNMRスペクトル(500 MHz)。
【図6】GBSPIa−HSA被覆プレート上でのウサギ抗GBSPIa抗血清の阻害。
【図7】GBSPIb−HSA被覆プレート上でのウサギ抗GBSPIb抗血清の阻害。
【図8】GBSPII−HSA被覆プレート上でのウサギ抗GBSPII抗血清の阻害。
【図9】GBSPIII−HSA被覆プレート上でのウサギ抗GBSPIII抗血清の阻害。
【図10】GBSPV−HSA被覆プレート上でのウサギ抗GBSPV−TT抗血清の阻害。
【図11】ペプチドグリカンと共に群下位莢膜(subcapsular)抗原(ポリラムノース)および莢膜多糖(Michonら, Biochemistry 1988, 27:5341−5351)を表すGBS構造集合。XおよびYはそれぞれ、N−アセチルグルコサミンおよびN−アセチルムラミン酸残基を表す。白い矢印は:リゾチーム(A)、ミュータノリシン(B)、リソスタフィン(lysostaphin)(C)または塩基による、莢膜多糖およびポリラムノースをペプチドグリカンに連結するホスホジエステル結合の加水分解による、予測される切断部位を示す。
【図12】ペプチドグリカンと共に群下位莢膜抗原(ポリラムノース)および莢膜多糖(Michonら, Biochemistry 1988, 27:5341−5351)を表すGBS構造集合。XおよびYはそれぞれ、N−アセチルグルコサミンおよびN−アセチルムラミン酸残基を表す。白い矢印は:リゾチーム(A)、ミュータノリシン(B)、リソスタフィン(C)または塩基による、莢膜多糖をペプチドグリカンに連結するホスホジエステル結合の加水分解による、およびポリラムノースをペプチドグリカンに連結するホスホジエステル結合の加水分解による、予測される切断部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、グラム陰性およびグラム陽性細菌から、CPSを細胞構成要素に付着させる塩基不安定性結合の塩基加水分解を用いることにより、莢膜多糖を得るための方法を提供する。本発明の方法は、グラム陽性およびグラム陰性細菌両方のCPSを、細菌または細菌断片を含む溶液を塩基と接触させることにより、抽出することを含む。CPSをその後、多様な方法により塩基から回収してもよい。本発明にしたがい使用するための限定されないグラム陽性細菌の例は、連鎖球菌属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、コリネバクテリウム属、リステリア属、エリジペロトリックス属、およびクロストリジウム属である。特に、連鎖球菌の使用がより好ましく、そしてB群連鎖球菌Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIII型の使用が最も好ましい。本発明に使用するための限定されないグラム陰性細菌の例には、インフルエンザ菌、髄膜炎菌および大腸菌が含まれる。特に、インフルエンザ菌b型、髄膜炎菌B、C、YおよびW135型ならびに大腸菌K1の使用がより好ましい。
【0019】
本発明にしたがい、水性または有機溶媒中で塩基不安定性結合を加水分解するのに、多様な条件を用いてもよい。炭水化物のN−アセチル結合もまた加水分解されるが、この度合いを、反応条件により調節することが可能である。N−アセチル結合が切断される度合いが増せば、残りの細胞構成要素に比べ、CPSがより疎水性になるため、N−アセチル基の加水分解は、CPSを他の細胞構成要素から分離するのに都合がよい。この極性の相違を利用し、効果的なクロマトグラフィー分離を達成してもよい。極性の相違に基づいた、混合物の2つまたはそれ以上の構成要素の分離は、当業者に周知である。
【0020】
例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いると、比較的疎水性の高い化合物は、より親水性である化合物に比べ、カラムにより長く保持される。逆に、親水性相互作用クロマトグラフィーを用いると、親水性化合物は、より疎水性である化合物に比べ、カラムにより長く保持される。両方法を連続して用いると、目的の化合物に比べ、より極性が低い不純物およびより極性が高い不純物を両方除去することが可能になる。
【0021】
あるいは、CPS上に存在する未結合(free)アミノ基またはカルボン酸基を利用し、効果的なクロマトグラフィー分離を容易にしてもよい。電荷の相違に基づいた、混合物の2つまたはそれ以上の構成要素の分離は、当業者に周知である。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いると、ほとんどまたはまったく陽性荷電を持たず、カラムを比較的迅速に通過する化合物よりも、陽性に荷電した基を含む化合物、例えばプロトン付加アミンは、カラムにより長く保持される。逆に、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いると、陰性に荷電した化合物、例えばカルボン酸は、カラムに保持される一方、ほとんどまたはまったく陰性荷電を持たない化合物は、カラムを比較的迅速に通過する。
【0022】
脱アセチル化CPSを他の細胞構成要素から分離した後、未結合アミノ基を再アセチル化してもよい。アセチル化試薬および反応条件を変化させることにより、アミノ基が再アセチル化される度合いを調節することが可能になる。アシル化段階で取り込まれた不純物は、再アシル化CPSに比べ、大きさが小さく、そしてしたがって、ゲル浸透クロマトグラフィーによりCPSから分離することが可能である。
【0023】
例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、比較的大きなCPSの効率的な分離が可能になる。あるいは、極性または電荷の相違を利用し、残存不純物からCPSを精製してもよい。
A. 莢膜多糖の調製
細菌多糖の細胞構成要素からの単離および精製は、本発明にしたがい、4つの段階:塩基抽出、クロマトグラフィー分離、N−アシル化、およびクロマトグラフィー精製で達成してもよい。
【0024】
1. 出発物質
CPSを抽出するための材料は、ホモジナイズした細菌細胞からの濃縮細菌上清または馴化培地(conditioned medium)由来であってもよい。細胞を、遠心分離または微量濾過により分離してもよく、そして上清(supernate)は典型的には10−15倍に濃縮される。好ましくは、細菌上清および馴化培地は、CPSが約5−20mg/mlの濃度で存在するよう濃縮される。さらに、沈澱細胞から直接抽出してもよい。
【0025】
2.塩基抽出
濃縮細菌上清または馴化培地を、多様な塩基と接触させ、CPSを抽出してもよい。あるいは、単離細菌細胞をさらに、多様な塩基と接触させ、CPSを抽出してもよい。本発明にしたがい用いてもよい塩基の、限定されない例は、NaOH、KOH、LiOH、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、KCN、Et3N、NH3、H222、NaH、NaOMe、NaOEt、またはKOtBuである。NaOH、KOH、LiOH、NaH、NaOMeまたはKOtBuなどの塩基は、0.5 N−5.0 Nの範囲で用いるのが最も効果的である。NaHCO3、Na2CO3、K2CO3およびKCNなどの塩基は、溶解度が許す限り高い濃度で用いてもよい。Et3Nなどの有機塩基は、加水分解を達成する水またはアルコールなどの剤が存在する限り、中程度の濃度ないし高濃度(50−100%)で用いてもよい。NH3、H222などの塩基は、100%を含め、ほとんどいかなる濃度で使用してもよい。水、アルコール(好ましくはC1−C4)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物などの溶媒および他の有機溶媒を使用してもよい。水を含む塩基抽出溶液が最も好ましい。
【0026】
CPSを細胞構成要素から抽出するのに最も効果的なpH範囲は、約9ないし14であり、最適pHは12前後である。抽出は約4℃以上の温度で達成することが可能であるが、好ましくは約40ないし100℃の間に温度を増加させ、および/または反応混合物を攪拌することが、収率を増加させると期待される。細胞ペーストおよそ1−20gに対し塩基試薬約1リットルを使用するのが好ましい。あるいは、濃縮上清を10N NaOHで希釈し、反応混合物中の最終濃度を2N NaOHとする。
【0027】
3. クロマトグラフィー分離
塩基抽出試薬中に存在する抽出CPSを、クロマトグラフィーにより、細胞構成要素から生じた不純物から分離してもよい。クロマトグラフィー分離法の限定されない例は、イオン交換(陽イオン性または陰イオン性)、親水性相互作用、疎水性相互作用またはゲル浸透クロマトグラフィーである。好ましい方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。より好ましいのは、フェニル・セファロース上の疎水性相互作用クロマトグラフィーであり、該クロマトグラフィーは、塩基抽出物から高分子量のUV活性がある(uv−active)汚染物質のほとんどを除去するであろう。莢膜多糖は、高pH(pH 10ないしpH 8)高塩(2 Nないし1 N)溶出の始めに溶出するであろうが、より疎水性であるタンパク質および核酸は保持されるであろう。疎水性相互作用クロマトグラフィー法の限定されない例は、アルキルアガロースまたはセファロース樹脂であり、フェニル・セファロースHP(Pharmacia Biotech;ニュージャージー州ピスカタウェイ)が好ましい樹脂である。カラムは、0.5−5.0 N NaHCO3であらかじめ平衡化し、そして0.5−50 ml/分の流速で1カラム体積で溶出してもよい。約1カラム体積のNaHCO3で溶出した後、水約1ないし10カラム体積を用い、カラムから溶出してもよい。分画をその後、当業者に知られる手段により、多糖に関しアッセイしてもよい。シアル酸含有多糖を検出するための好ましい方法は、実施例に記載される微量規模オルシノールアッセイである。
【0028】
4. N−アセチル化
塩基性条件下での抽出莢膜多糖の分離は、抽出中、そうでなければ塩基安定性である莢膜多糖の、シアル酸およびアミノ糖残基からN−アセチル基を除去することにより促進される。
【0029】
プールした莢膜多糖含有HIC分画は、所望により、多様なアセチル化剤を用い、望ましい度合いに再アセチル化してもよい。アセチル化剤の限定されない例は、無水酢酸、塩化アセチル、酢酸ペンタフルオロフェニル、4−酢酸ニトロフェニルである。Theodora W. GreeneおよびPerer G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Syntheses,第2版(1991)を参照されたい。好ましい方法は、約0.5 Mないし約2 Mの濃度で、好ましくは約0.7 Mないし約1 Mの濃度で、無水酢酸と混合し、莢膜多糖の未結合アミノ基を再アセチル化し、こうして天然多糖構造を再生成するものである。
【0030】
5. クロマトグラフィー精製
再アセチル化CPSの精製を、その後達成し、抗原、およびワクチンなどの免疫学的試薬を調製するのに使用するCPSを得てもよい。クロマトグラフィー精製の多様な例が、本発明で使用するのに適している。たとえば、イオン交換(陽イオン性または陰イオン性)、疎水性相互作用、親水性相互作用、またはゲル浸透クロマトグラフィーはすべて、再アセチル化CPSの反応構成要素からの分離を達成するのに用いてもよい。好ましい方法は、スーパーデックス(Superdex)(アガロースおよびデキストランを架橋したもの)上のゲル浸透クロマトグラフィーの使用であり、該クロマトグラフィーは、残渣汚染物質を除去し、そして精製CPSを生じるであろう。特に好ましいのは、1,000−100,000のデキストランに関する分画範囲(MW)を有するスーパーデックス200 PGである。PBSを溶離液として用いた流速は、好ましくは約0.1ないし10 ml/分である。
【0031】
本発明の塩基抽出法により産生される莢膜多糖は新規であり(図11および12を参照されたい)、そしてその天然構造上のエピトープを維持する(図5−10)。したがって、本発明にしたがい調製されたCPSは、天然CPSおよび該CPSを発現している細菌に交差反応性である抗体産生を引き出す。本発明の方法によりCPSを得るのは、(a)本発明の方法を行うことが比較的容易であり、(b)単離収率が増加し、そして(c)結合収率が増加するため、先行技術の方法より優れている。さらに、細菌DNAおよびRNAは、塩基抽出段階で分解され、そしてしたがって、本発明にしたがい産生される最終産物には、容易に感知できる量は存在しない。
B. 抽出CPSの構造
本発明の方法により抽出された莢膜多糖は、先行技術の方法により抽出されたCPSに比べ、特有の構造を有する。該CPSは、莢膜多糖をポリラムノースに連結しているホスホジエステル結合の塩基触媒加水分解により、そしてポリラムノースをペプチドグリカンに連結しているホスホジエステル結合の塩基触媒加水分解により、得られる(図11を参照されたい)。細菌細胞壁構造の代替モデルにしたがい、同じく特有の構造を持つCPSが、莢膜多糖をペプチドグリカンに連結しているホスホジエステル結合の塩基触媒加水分解により、そしてポリラムノースをペプチドグリカンに連結しているホスホジエステル結合の塩基触媒加水分解により、得られる(図12を参照されたい)。先行技術の方法は、異なる結合を切断する酵素を使用する。例えば、N−アセチルグルコサミン/N−アセチルムラミン酸ポリマーを加水分解するのにリゾチームが用いられてきている。N−アセチルグルコサミン/N−アセチルムラミン酸ポリマーおよびペプチド部分の間の連結を加水分解するのにミュータノリシンが用いられてきており、そして細菌細胞壁のペプチド部分を加水分解するのにリソスタフィンが用いられてきている。
【0032】
本発明の莢膜多糖の、絶対分子量分布は、多分散値(polydispersity value)(Mw/Mn)が低いことにより示されるように、狭い(表2を参照されたい)。この均一性は、一定しそして有効なワクチン産物を産生するのに有益である。
C. ワクチン
本発明はまた、ワクチン調製にも向けられる。本発明にしたがい、上述の単離CPSを抗原として用い、CPSに対し反応性である、そしてしたがって該CPSが単離された生物に対し反応性である抗体を生成してもよい。
【0033】
本発明のワクチンは、能動または受動免疫を提供する可能性がある。能動免疫を提供するためのワクチンは、本発明の精製CPSを含む。好ましくは、本ワクチンは、少なくとも1つの免疫原性ペプチドに結合しているCPSを含む。
【0034】
6. 抗体
上述のCPS抽出および単離のための技術は、豊富な量の本発明のCPSを提供する。これは、該CPSに対し反応性である抗体生成を容易にする。
【0035】
別の態様において、CPSに対して向けられる抗体は、当業に周知のいかなる技術により生成してもよい。1つのアプローチにしたがい、単離CPS調製あるいはその誘導体または断片を宿主動物に投与することにより、抗体を生成してもよい。宿主動物は、限定されるわけではないが、ラット、マウス、非ヒト霊長類、またはヒトであってもよい。好ましくは、宿主はヒトである。当業に知られるアジュバントの使用により、免疫学的応答を高めてもよい。
【0036】
CPSに対して向けられるモノクローナル抗体もまた、当業に周知のいかなる技術により調製してもよい。1つの方法にしたがうと、ハイブリドーマ細胞株の培養を使用する(KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497)。CPSに対して向けられるモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体、当業に周知のいかなる技術により作成してもよい、キメラモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体であってもよい。1つのアプローチにしたがい、ヒト定常部と組み合わせた非ヒト(例えばマウス)抗原結合ドメインを有するキメラモノクローナル抗体を生成してもよい(Takedaら(1985)Nature 314:452)。ヒト化抗体は、Queenら、米国特許第5,585,089号の方法にしたがい、生成してもよい。
【0037】
CPSに対して向けられる抗体は、限定されるわけではないが、免疫吸収または免疫アフィニティークロマトグラフィー、あるいは他のクロマトグラフィー法(例えばHPLC)を含む、当業に周知のいかなる技術を用い、精製してもよい。抗体はまた、血清、血漿または細胞培地から免疫グロブリン分画として精製してもよい。
【0038】
本発明の抗体分子は、損なわれていない免疫グロブリン分子、実質的に損なわれていない免疫グロブリン分子、または抗原結合部位を含む、例えばFab断片などの免疫グロブリン分子の一部であってもよい。
【0039】
CPSに対して向けられる抗体の断片は、当業に周知のいかなる技術により生成してもよい(Campbell(1985)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,第13巻,Burdonら(監修),Elsevier Science Publishers,アムステルダム)。
【0040】
7. 結合体分子
本発明のCPSを、単独で、あるいはポリペプチドまたはタンパク質などの別の免疫原性分子に結合して用い、個体において、多様なグラム陰性およびグラム陽性細菌に対する抗体反応を引き出してもよい。CPSのポリペプチドへの結合は、典型的にはT細胞独立性であるCPSに対する免疫応答を、T細胞依存性の応答に変換する。したがって、ポリペプチドの大きさは、好ましくは、T細胞独立性からT細胞依存性の応答への変換を引き起こすのに十分なものである。第二の免疫原を提供する目的には、より小さいポリペプチドを使用するのが有用である可能性がある。
【0041】
いかなる結合様式を使用し、CPS構成要素をペプチドに結合してもよい。好ましい方法は、米国特許第4,356,170号に記載されるものである。該特許は、近接(vicinal)ジオールの酸化切断を介し、末端アルデヒド基を多糖に導入し、そして還元性アミノ化により該アルデヒド基をペプチドアミノ基にカップリングすることを記載する。
【0042】
しかし、本発明の結合体ワクチンは、還元性アミノ化を介し産生されるものに限定されないことを理解すべきである。したがって、該ワクチンはまた、Schneerson, R.ら(1980)J. Exp. Med. 1952:361−476および米国特許第4,644,059号に記載されるような、アジピン酸ジヒドラジドスペーサー、または、例えば、Marburg, S.ら(1986)J. Am. Chem. Soc. 108:5282−5287に記載されるようなバイナリー(binary)スペーサー技術をなど、当業者に知られるいかなる連結法を用い、CPSをペプチドに結合させることにより産生してもよい。
【0043】
本発明は、ペプチドがCPS上の1つまたはそれ以上の部位を通じCPSに連結される、結合体分子を産生する能力を提供する。したがって、タンパク質構成要素に関し、本発明にしたがい調製された結合体分子は、単量体、二量体、三量体およびCPSが共に複合タンパク質になるよう架橋している、より高次に架橋された分子であってもよい。
【0044】
本発明の別の態様において、本発明のCPSに対して向けられる抗体は、宿主個体から別の個体に受動免疫を与えるため(すなわち、グラム陰性またはグラム陽性細菌に対する固体の免疫応答を増大するため、あるいはAIDS患者を含む、免疫無防備状態(immuno−compromised)または免疫枯渇個体に応答を提供するため)、治療または予防適用において薬剤調製として用いてもよい。抗体の受動移植は、当業に知られ、そして、いかなる既知の方法により達成してもよい。1つの方法にしたがい、本発明のCPSまたはその結合体に対して向けられる抗体を、免疫適格(immunocompetent)宿主(「ドナー」)動物で生成し、該宿主動物から採取し、そしてレシピエント個体に輸注する。例えば、ヒトドナーを用い、本発明のCPSまたはCPS結合体に対し反応性である抗体を生成してもよい。該抗体をその後、治療または予防に有効な量で、処置が必要なヒトレシピエントに投与し、それにより多糖構成要素により引き出される抗体が結合する細菌に対する耐性を、レシピエントに与えることが可能である(Grossman, M.およびCohen, S. N.,"Basic and Clinical Immunology", 第7版中,(Stites, D. P.およびTerr, A. T.監修, Appleton & Lange 1991)第58章"Immunization"を参照されたい)。
【0045】
8. 薬剤組成物
本発明の薬剤組成物は、CPSまたは結合体分子を含んでもよく、CPSおよび薬理学的に許容しうるキャリアー、例えば生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたはそれらに匹敵するものを含む。別の態様において、該薬剤組成物は、例えばペプチドなどの別の免疫原性部分、または本発明のCPSの1つにより引き出される抗体を含む組成物を含む。該組成物はまた、レシピエントの免疫学的応答を亢進するため、アジュバントも含んでもよい。こうしたアジュバントは、アルミニウムに基づく、例えばミョウバン、または長鎖アルキルアジュバント、例えばステアリルチロシンであってもよい(9/17/90に提出された、米国特許出願第583,372号;欧州特許EP 0 549 617 B1;Moloneyら、米国特許第4,258,029号を参照されたい)。また、Jenningsら、米国特許第5,683,699号およびPaolettiら,J. Infectious Diseases 1997;175:1237−9も参照されたい。これらの薬剤組成物は、ワクチンとして特に有用である。
【0046】
受動免疫を引き出すため、薬剤組成物は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体あるいは上述のようなそれらの誘導体または断片を含んでもよい。抗体、断片または誘導体の量は、標準的臨床技術により決定されるように、治療または予防に有効な量である。
【0047】
本発明の薬剤調製は、有効であることが当業に知られる方法により、個体に導入してもよい。これらのみに限定されないが、皮内、腹腔内、静脈内、皮下、筋内、経口および鼻腔内が、導入経路の中に含まれる。
【0048】
本発明の組成物は、ワクチンに適していることが当業に知られる、標準的キャリアー、緩衝液または保存剤を含んでもよく、限定されるわけではないが、生理食塩水または他の注射可能液体などの薬学的に許容しうるいかなる適切なキャリアーをも含む。通例ワクチンに用いる添加物、例えばラクトースまたはソルビトールなどの安定化剤およびリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、または硫酸アルミニウムおよびステアリルチロシンなどの免疫応答を亢進するためのアジュバントもまた、存在してもよい。本発明にしたがい産生されるワクチンはまた、複数の感染性病原体に対する免疫応答を引き出す、多価ワクチンの構成要素として用いてもよい。
【0049】
本発明のワクチンを、免疫原性反応の一部として抗体産生を引き出すのに十分な量で投与する。投与量は、ワクチンを受ける個体の大きさ、体重または年齢に基づき調整してもよい。個体における抗体反応を、抗体力価または殺菌活性に関しアッセイすることによりモニターし、そして必要であれば反応を亢進するため追加免疫してもよい。典型的には、幼児に対する単回用量は用量あたり結合体ワクチン約10μgまたは約0.5μg−20μg/キログラムである。成人は、結合体ワクチン約0.5μg−20μg/キログラムの用量を受ける。CPSワクチンに関しては、典型的な用量は、用量当たり個々のCPS各約25μgである。すなわち、B群連鎖球菌に対するワクチンは、9つの血清型各々の各CPS型を25μg含む可能性がある。
D. 診断用キット
別の態様において、本発明のCPSあるいはその誘導体または断片を用い、肺剥離(pneumolysis)毒素などの毒素を含まないが、なおグラム陰性またはグラム陽性細菌に対して向けられる抗体の存在を示すことが可能である、より安全な診断用キットを産生することが可能である。こうした抗体の存在は、該病原体に以前曝露されたことを示し、そして感染に耐性である可能性がある個体を予測することが可能である。グラム陰性またはグラム陽性細菌に対して向けられる抗体を含む試料と、修飾CPSあるいは誘導体または断片が混合された際、抗体反応を検出するため、診断用キットは、少なくとも1つの本発明のCPSあるいはその誘導体または断片および適切な試薬を含んでもよい。抗体反応は、当業に記載されるいかなる方法により同定してもよく、限定されるわけではないが、ELISAアッセイを含む。こうした知識は重要であり、そして該知識により不必要なワクチン接種を避けることが可能である。
【0050】
あるいは診断用キットは、さらに、固体支持体あるいは磁気ビーズまたはプラスチックマトリックスおよび少なくとも1つの本発明のCPSあるいはその誘導体または断片を含んでもよい。
【0051】
ある場合では、CPSあるいは誘導体または断片が標識されていることが好ましい可能性がある。標識剤は当業に周知である。例えば、標識剤には、限定されるわけではないが、放射能、化学発光、生物発光、発光、または簡便な解析のための他の同定「タグ」が含まれる。体液または組織試料(例えば血液、血清、唾液)を収集し、そして精製し、そして診断用キットに適用してもよい。CPS、誘導体または断片は精製してもまたは精製しなくてもよく、そして分子カクテルを含んでもよい。
【0052】
固体マトリックスは当業に知られており、そして入手可能で、そして限定されるわけではないが、試験管、ビーズ、微小粒子、ディップスティック、プレートまたはそれらに匹敵する形状の、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、またはいかなる固体プラスチック成分をも含む。さらに、マトリックスには、限定されるわけではないが、膜、96ウェルマイクロタイタープレート、試験管およびエッペンドルフチューブが含まれる。一般的に、こうしたマトリックスは、リガンド結合剤が付着することが可能ないかなる表面も、またはそれ自体リガンド付着部位を提供する表面をも含む。
【0053】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および論文は、特に全体として本明細書に援用される。以下の実施例は、本発明を例示するために存在し、いかなる点でも本発明の範囲を限定すると見なしてはならない。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変化および置換を行ってもよいことが理解されるであろう。
【実施例】
【0054】
A.細菌株、成長培地、及び培養条件
Ib型B群連鎖球菌株H36b(ATCC12401)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(Rockville、MD)から入手した。用いた他の株、090(Ia型)、18RS21(II型)、M781(III型)、及び1169−NTI(V型)は、ハーバード医学校(Harvard Medical School)の D.L. Kasper のご厚意により提供を受けた。髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)B、C、Y及びW135型はFDA、CBERの Carl Frasch のご厚意により提供を受け、大腸菌(Escherichia coli)KlはFDA、CBERの Willie Vann のご厚意により提供を受けた。
【0055】
B群連鎖球菌株の各々を、透析液(10,000 の公称分子量限界(NMWL)膜)、6%グルコースを補足した3.5% Columbia ブロス(Difco Laboratories, Inc.、Detroit、MI)のPellicon カセットシステム(Millipore Corp.、Bedford、MA)において個別に成長させた。振盪三角フラスコにおいて37℃で8時間成長させた種培養物150mLを用いて、14リットルのブロス(上記参照)を充填した Bioflo IV 20リットル発酵槽(New Brunswick Scientific Co.、Edison、NJ)に接種した。この発酵培養を37℃に維持し、10N NaOHを添加することでpH7.1に連続的に調整して、1.5L/分で通気した。17時間後に、MiniKros 0.2μm孔中空繊維カートリッジ(Microgon, Inc.、Laguna Hills、CA)を通す微量濾過によって細胞を回収した。その培養上清を、さらに処理するまで4℃で無菌的に維持した。分離した細胞を Sorvall GSA ローター(DuPont Clinical & Instruments Div.、Wilmington、DE)において9000rpmで50分間遠心することにより最終細胞ペレットを得た。
B.莢膜多糖を生成するための一般的な方法
1.抽出及び疎水性相互作用クロマトグラフィー
ペレットを、グラム湿潤重量の細胞ペーストを1容積として用いて4容積の1N NaOHに懸濁させた。この懸濁液を37℃で一晩インキュベートした。Sorvall GSA ローターにおいて12,000rpmで30分間遠心することにより細胞残滓を除去した。濃HCl(J.T. Baker、Phillipsburg、NJ)で中和した後、上清を Pellicon 10,000 NMWL 膜を用いて2N NaHCO3(pH9.6)に対してダイアフィルトレート(diafiltered)した。次に、得られたリテンテート(retentate)を、Phenyl Sepharose HP(Pharmacia Biotech;Piscataway、NJ)を充填し、2N NaHCO3で予め平衡化した、下記 Pharmacia クロマトグラフィーシステムを用いる Pharmacia XK 26/60 カラムにかけた。このカラムをまず1カラム容積の2N NaHCO3を用いて、次に2カラム容積の水を用いて4ml/分で溶出した。画分を多糖について検定し(下記参照)、莢膜多糖を含むものをプールした。
【0056】
また、培養上清からも莢膜多糖を精製した。細胞を除去した後、ブロスを10−15倍に濃縮し(Pellicon、10,000 NMWL 膜を使用)、10容積の水に対してダイアフィルトレートした。得られたリテンテートに最終濃度1Mとなるまで10N NaOHを添加した。この溶液を37℃で一晩インキュベートし、濃HClで中和した。細胞抽出について上に記述される通りに処理を継続した。
【0057】
III型莢膜多糖のバッチの1つについては、細胞及び培養上清を以下のように一緒に抽出した。細胞から分離した培養上清を濃縮してダイアフィルトレートし、得られたリテンテートを上述の通りに処理した。細胞ペレットを4容積の塩基処理リテンテートに懸濁させ、細胞抽出について上に記述される通りにさらに処理した(前記参照)。
【0058】
2.再N−アセチル化
多糖を前に記述される抽出条件に晒すと多糖からN−アセチル基が放出されるため、無水酢酸(Aldrich Chemical Co.、Milwaukee、WI)をプールした画分に最終濃度0.8Mになるまで滴下により添加することによって多糖を再N−アセチル化した。この反応混合物を室温で1時間攪拌し、10N NaOHを添加することでpH9に維持した。次に、反応のpHを13に上昇させ、反応をさらに30分間継続した。再N−アセチル化莢膜多糖を含むその溶液を Minitan カセットシステム(10,000 NMWL 膜、Millipore)を用いて水に対してダイアフィルトレートし、リテンテートを凍結乾燥した。その凍結乾燥体をPBS(pH7.4)に溶解し、Superdex 200 PG でのゲル浸透クロマトグラフィーによって精製した(下記参照)。莢膜多糖を含む画分をプールし、水に対してダイアフィルトレートし(前記参照)、リテンテートを凍結乾燥して精製CPSを得た。
【0059】
3.ゲル浸透クロマトグラフィー
分析用ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、Pharmacia UV-1 紫外線検出器(280nmフィルター装備)、Waters 社(Milford、MA) R401 示差屈折計、及び Pharmacia Superose 6 HR 10/30 (高度に架橋したビーズ化アガロース)カラムを備える Pharmacia FPLC システムで行った。カラムはPBS、pH7.4を用いて0.5ml/分で溶出した。デキストラン(分子量約2×106;Sigma Chem Co.、St. Louis、MO)を空隙容積(Vo)を決定するのに用い、ナトリウムアジドを総床容積(Vt)を決定するのに用いた。相対溶出容積はKav=(Ve−Vo)/(Vt−Vo)で表し、ここでVeはRIプロフィールからの溶出容積である。分離用GPCは、上記検出器、P-50 ポンプ、FRAC-100 画分コレクター、GP-250 Plus コントローラー、及び Superdex 200 PG を充填した XK 26/100 カラム(Pharmacia)を含む Pharmacia システムで行った。カラムはPBSを用いて1ml/分で溶出した。
C.多糖の分析
1.モル質量の決定
多糖の絶対モル質量を、インライン多角度レーザー光散乱光度計及び示差屈折計による検出を備える分析用GPC(GPC−MALLS/RI)によって決定した。この方法は、Jasco PU-980 HPLC ポンプ(Easton、MD)、Rheodyne モデル7125注入弁(Cotati、CA)、及びPBSで平衡化した Superose 6 HR 10/30 カラムからなる液体クロマトグラフィーシステムを用いて、0.5ml/mlの流速で行った。移動相は超高純度水(Stephens Scientific、Riverdale、NJ)中に調製し、Millipore GV 型0.22mm膜を備える25mm径インラインフィルター(Millipore)を通して濾過した。多糖試料(1−2mg)を移動相中に10mg/mlの濃度で溶解し、注入する前に得られた溶液を微量遠心機において14,000rpmで2ないし3分間遠心して粒体を除去した。カラム流出液を、Hewlett-Packard モデル 1047A 示差屈折計に連結させたインライン miniDAWN 固定三角度レーザー光散乱光度計(Wyatt Technology Corp.、Santa Barbara、CA)で直接分析した。屈折計のアナログ信号出力は補助入力チャンネルを介して miniDAWN に連結した。光散乱データを得、Wyatt's ASTRette 及び EASI ソフトウェアで処理した。ピーク面積を Wyatt ソフトウェアにより、ピークの全範囲にわたる200−300の台形状区画、すなわち"スライス"の面積の合計として算出した。このようにして得られた面積から、所定のピークにおいて溶出した多糖の重量平均及び数平均モル質量(それぞれMw及びMn)を算出した。比屈折率増分(dn/dc)は、オンライン HP 1047A 屈折計を用いて、全ての多糖について0.140ml/gであると決定された。この値は他の多糖について従来得られている値(7、8、38)に匹敵した。
【0060】
2.NMR分光法
2O(Aldrich)中の多糖試料(4−5mg/ml)の一次元1H NMRスペクトルを、Bruker Instruments AMX 500 分光計(Billerica、MA)を用いて500MHzで記録した。スペクトルデータは50℃で得、化学シフトはD2O中の外部2,2,3,3−テトラジューテリオ−3−(トリメチルシリル)プロピオネート(Aldrich)を参照した。
【0061】
3.化学分析
分離用カラム流出液及び精製多糖中の多糖含量を、シアル酸についての Reuter 及び Schauer (35)のマイクロスケール・オルシノール検定を修正することによって決定した。簡単に述べると、1−1.5μgのNeuAc標準又は300μg/mlまでの精製莢膜多糖を含む試料又は対照100μlを1.5ml微量遠心管中のオルシノール試薬(35)100μlに添加した。試料を十分混合し、沸騰水浴中で15分間加熱した。試料を氷水中で5分間冷却した後、500μlのイソアミルアルコール(Fluka Chemical Co.、Ronkonkoma、NY)を各々の試料に添加した。その試料を完全に混合し、微量遠心機において3000rpmで2−3分間遠心した。この手順を繰り返し、アルコールへの発色団の完全な抽出を確実なものとした。各試料のアルコール相から200μlを96ウェル平底低結合性ポリスチレンマイクロタイタープレート(Coming Costar Corp.、Cambridge、MA)に移し、Molecular Devices Emax マイクロプレート・リーダー(Menlo Park、CA)において560nmで読み取った。最終多糖調製品の純度はシアル酸含量から以下の式量を用いて導き出した;末端NeuAc残基について314.3g/モル;Ia、Ib、又はIII型CPSの反復単位について1004g/モル;II又はV型CPSの反復単位について1328g/モル。
【0062】
タンパク質含量はPBS中にml当たり1−2mgの莢膜多糖を含む試料について Bradford 法(9)により Pierce (Rockford、IL) Coomassie Plus 試薬及び標準としてのウマIgGを用いて決定した。核酸含量は260nmでの直接UV光度測定によって決定した。これらの検定のための光度測定は Shimadzu モデル UV160U 分光光度計(Shimadzu Scientific Inst., Columbia, MD)を用いて行った。
D.収量
様々なB群連鎖球菌血清型から得られた莢膜多糖の収量を表1に示す。全ての血清型について、細胞ペレットから精製された多糖は培養上清から精製されたものを上回り、その範囲はII型についての4倍高い収量からIb型についての60倍までであった。比較のため、細胞からの収量の他に上清からの収量を培養のリットル当たりの多糖のミリグラム(mg/L)として表1に示す。したがって、14リットルの発酵を考えたとき、細胞からの総収量はIa型についての1.1gからII型についての0.6gまでの範囲をとり、これに対して上清からの総収量はII型についての150mgからIb型についての14mgまでの範囲をとっていた。III型の発酵からの細胞及び上清を一緒に処理したとき、その収量、合計63mg/L、すなわち0.9gは細胞ペレット単独から得られるものに類似していた。研究したB群連鎖球菌株の間での細胞に由来する莢膜多糖の分離収量対上清に由来するものの比における変動は、血清型の間での、本発明の成長条件下で莢膜多糖を放出する異なる傾向を示唆するものである。この手順によって精製した細胞関連莢膜多糖の量は、Hunoistein ら(39)によって報告されるように、(莢膜多糖のマーカーとして用いられる)細胞結合シアル酸のレベルから推定し得る、Ia、III、IV、V、及びVI型のB群連鎖球菌株のバッチ発酵から入手可能であることが見出されている量にほぼ等しい。より強力な抽出条件(例えば、より強い塩基、より高い温度、又は抽出混合物の攪拌)により細胞結合莢膜多糖の収量が改善されることが期待される。
【0063】
【表1】

【0064】
結果
A.精製多糖の分析
研究したB群連鎖球菌血清型の各々について、両源からの多糖調製品の一次元1H NMR分光法により、それぞれの型の多糖について従来公開されているスペクトルデータ(41、44)とのそれらの同一性が確認された。さらに、これらの調製品全てのNMRスペクトルデータは非常に低いレベルの汚染を示した。5つのB群連鎖球菌多糖の代表的なNMRスペクトルを図1−5に示す。260nmでの直接UV光度測定による検出で核酸レベルは1質量%を超えることがなく、これに対して Bradford 法(9)による検定でタンパク質はいかなる多糖調製品においてもこの検定の検出下限(1μg/ml)より上で検出することができなかった。修正マイクロスケール・オルシノール検定(35)によって推定されるシアル酸含量から算出される多糖の純度は、全て約100%であった。したがって、上述の手順によって得られる全ての多糖調製品について、スペクトル及び光度測定データはタンパク質又は核酸による汚染が最小に留まる非常に純粋な莢膜多糖と一致する。
B.多糖の分子サイズ
RI検出GPCプロフィールのピーク最大から得た、Superose 6 での精製多糖の(KAVとしての)相対溶出容積を表2に示す。
【0065】
別々の分析で、多糖の絶対モル質量分布をGPC−MALLS/RIによって決定した。この方法は、流速及び保持容積のようなクロマトグラフィーのパラメータとは無関係に、かつその水力学的特性が関心のある分析物から大きく変動する可能性のある二次標準を必要とすることなく、巨大分子のモル質量を直接推定することを可能にする。GPC−MALLS/RIを特徴付けの方法として利用することは薬学的に関心のある多糖について十分に確立されている(7、8、10、17、25)。モル質量分布は、通常、重量平均モル質量(Mw)及び多分散(Mw/MN)として提示され、後者は分散の幅を示すものである。多分散が単一に近づくに従ってモル質量分布が均一に近づく。
【0066】
精製B群連鎖球菌多糖のモル質量データを表2に示す。各々の血清型で、両源からの多糖調製品のモル質量分布は類似していた。これらの調製品の重量平均モル質量は、V型由来の細胞関連莢膜多糖についての92kg/モルから、培養上清から精製したIa型の莢膜多糖についての318kg/モルの範囲であった。それらの低い多分散性(MW/MN≦1.6)によって示されるように、全ての調製品の分布は狭かった。これらの値は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)及びb型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の幾つかの血清型の莢膜多糖を同様に分析することによって得られるものに匹敵した(7、17)。
【0067】
【表2】

【0068】
NMRスペクトルデータと併せて考えると、これらのモル質量分布は、各々の血清型について、上清又は細胞ペレットから(加えて、III型については両源を合わせたものから)精製された多糖の間での相違が些細なものであることを示す。各々の血清型の調製品に対するNMRスペクトルによってそれらが化学的に同一であることが示されるため、これらの調製品の免疫化学的挙動も同一であるものと予想される。したがって、抽出のために培養上清を細胞と組み合わせるかどうかの判断は、上清から期待される、収量に対する寄与(表1)にのみ基づく。したがって、II型の抽出物を合わせて用いることが好ましいものであり得る。
【0069】
免疫化学的分析
A.競合阻害ELISA
マイクロタイタープレート(NUNC Polysorp)を、PBS(50nMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH=7.4)で希釈したGBSPIa−HSA、GBSPIb−HSA、GBSPII−HSA、GBSPIII−HSA、又はGBSPV−HSA(各々のウェルに対して100μL中100ngの多糖)のいずれかを用いて37℃で1時間受動的にコートした。これらのプレートをPBS+0.05% Tween20(PBS−Tween、pH=7.4)で洗浄した後、150μL/ウェルのPBS+0.1%ウシ血清アルブミンでブロックした。後コートの後、プレートを再度洗浄して用いるまで4℃で保存した。
【0070】
GBSPIa、GBSPIb、GBSPII及びGBSPIIIに対するウサギ抗全細胞B群連鎖球菌抗血清(Dennis Kasper)を、それぞれ、GBSPIa−HSA、GBSPIb−HSA、GBSPII−HSA、及びGBSPIII−HSAでコートしたプレート上で別々に滴定した。同様に、ウサギ抗GBSPV−TT抗血清をGBSPV−HSAでコートしたプレート上で滴定した。最大信号の約50%に相当する希釈を阻害研究に適するものとして選択した。
【0071】
この抗血清をPBS−Tweenで希釈した。希釈した抗血清を含むバッファで阻害剤を連続的に5倍に希釈した。次に、これらの試料100μLをコートしたマイクロタイタープレートのウェルに二組ずつ添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄した後、製造者の指示に従ってPBS-Tweenで希釈したヤギ抗ウサギ免疫グロブリン−セイヨウワサビ結合体(Kirkegaard & Perry)100μLを各ウェルに添加した。それらのプレートを室温でインキュベートした後、再度洗浄した。100μLのTMBマイクロウェル基質(カタログ番号50−76−04、Kirkegaard & Perry)を各ウェルに添加した。5分後に100μLの一成分停止溶液(カタログ番号50−85−04、Kirkegaard & Perry)を添加することにより反応を停止させ、450nmでの吸光度を読み取った。阻害を、いかなる阻害剤も存在しない状態において希釈抗血清で達成される最大信号のパーセンテージとして決定した。
B.結果
特異的GBS抗血清Ia、Ib、II、III、Vの各々の、それらの相同莢膜PS抗原での結合阻害曲線をそれぞれ図5−10に表す。これらの曲線によって立証されるように、培養上清から抽出されたものであろうとブロスから抽出されたものであろうと、各々のPS抗原は同様の阻害特性を有し、これらはそれらの抗原的な等価性を示す。したがって、これらの莢膜多糖の生成に用いられる手順はそれらの抗原性に影響を与えない。
【0072】

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陰性およびグラム陽性細菌の細胞構成要素から莢膜多糖を抽出する方法であって、該細胞構成要素を塩基性条件下で塩基試薬と反応させ、そして該細胞構成要素から莢膜多糖を分離することを含む、前記方法。
【請求項2】
莢膜多糖上に存在し、抽出中に加水分解されるN−アセチル基の一部が、その後、該莢膜多糖の免疫原性特性を維持するのに十分な程度に再アシル化される、請求項1の方法。
【請求項3】
請求項1の、グラム陰性およびグラム陽性細菌の細胞構成要素から莢膜多糖を抽出する方法であって、さらに:
(a)所望により、クロマトグラフィーにより、他の細胞構成要素から莢膜多糖を分離し;
(b)段階(a)由来の莢膜多糖をアシル化剤と反応させ;
(c)段階(b)由来の莢膜多糖をクロマトグラフィーにより精製する
段階を含む、前記方法。
【請求項4】
塩基試薬のpHが約9および14の間である、請求項3の方法。
【請求項5】
塩基試薬のpHが約12である、請求項4の方法。
【請求項6】
細菌が連鎖球菌(Streptococci)属のいかなる細菌であってもよい、請求項3の方法。
【請求項7】
細菌がB群連鎖球菌である、請求項3の方法。
【請求項8】
細菌がB群連鎖球菌Ia、Ib、II、IIIまたはV型である、請求項3の方法。
【請求項9】
塩基試薬が有機塩基を含む、請求項3の方法。
【請求項10】
塩基試薬が無機塩基を含む、請求項3の方法。
【請求項11】
塩基試薬がNaOH、KOHまたはLiOHを含む、請求項3の方法。
【請求項12】
クロマトグラフィーにより分離する段階が、疎水性相互作用クロマトグラフィーである、請求項3の方法。
【請求項13】
アシル化剤が無水酢酸、塩化アセチル、酢酸ペンタフルオロフェニル、または4−酢酸ニトロフェニルである、請求項3の方法。
【請求項14】
クロマトグラフィーにより莢膜多糖を精製する段階が、ゲル浸透クロマトグラフィーである、請求項3の方法。
【請求項15】
塩基試薬が無機塩基を含み、クロマトグラフィーにより分離する段階が疎水性クロマトグラフィーであり、アシル化試薬が無水酢酸、塩化アセチル、酢酸ペンタフルオロフェニルまたは4−酢酸ニトロフェニルであり、そしてクロマトグラフィーにより莢膜多糖を精製する段階がゲル浸透クロマトグラフィーである、請求項3の方法。
【請求項16】
塩基試薬がNaOHを含み、クロマトグラフィーにより分離する段階がフェニル・セファロース(Sepharose)を伴い、アシル化試薬が無水酢酸であり、そしてクロマトグラフィーにより莢膜多糖を回収する段階がスーパーデックス(Superdex)を伴う、請求項3の方法。
【請求項17】
塩基を含む試薬を用い、グラム陰性またはグラム陽性細菌細胞構成要素を抽出することを含む方法により産生された、修飾莢膜多糖。
【請求項18】
このように得た莢膜多糖を、無水酢酸でアシル化し、そしてゲル浸透クロマトグラフィーを用いたクロマトグラフィーにより莢膜多糖を精製する、請求項17の修飾莢膜多糖。
【請求項19】
抽出細菌細胞構成要素が、連鎖球菌属から得られる、請求項18の修飾莢膜多糖。
【請求項20】
抽出細菌細胞構成要素が、B群連鎖球菌から得られる、請求項19の修飾莢膜多糖。
【請求項21】
請求項20の修飾莢膜多糖(CPS)であって:
Ia型CPSが: およそ0.010−0.005の範囲のKav
およそ318−311の範囲のMw(kg/mol)
およそ1.35−1.31の範囲のMw/Mnを有し
Ib型CPSが: およそ0.191−0.150の範囲のKav
およそ218−170の範囲のMw(kg/mol)
およそ1.61−1.20の範囲のMw/Mnを有し
II型CPSが: およそ0.152−0.115の範囲のKav
およそ289−246の範囲のMw(kg/mol)
およそ1.46のMw/Mnを有し
III型CPSが:およそ0.343−0.268の範囲のKav
およそ108−104の範囲のMw(kg/mol)
およそ1.24−1.22の範囲のMw/Mnを有し
V型CPSが: およそ0.257−0.156の範囲のKav
およそ179−92の範囲のMw(kg/mol)
およそ1.28−1.15の範囲のMw/Mnを有する
前記修飾莢膜多糖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−11862(P2010−11862A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206304(P2009−206304)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【分割の表示】特願2000−525570(P2000−525570)の分割
【原出願日】平成10年12月23日(1998.12.23)
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【復代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
【復代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
【Fターム(参考)】