説明

ワクチン及び遺伝子治療のための高力価組換えインフルエンザ・ウイルス

本発明は、例えば、高力価インフルエンザ・ウイルスからの配列を含む、ヘルパー・ウイルスの不存在下で、高力価インフルエンザ・ウイルスを製造するために有用な組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願は、米国特許出願第60/473,798(2003年5月28日提出)(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)の出願日の35U.S.C.§ 119(e)下での利益を主張する。
政府権利の陳述
本発明は、アメリカ合衆国政府からの補助金を用いてなされた(国立アレルギーおよび感染性疾患研究所・公衆衛生総局からの補助金AI-47446)。アメリカ合衆国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ネガティブ・センスRNAウイルスは、一般的ヒト病原体、例えば呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ・ウイルス、麻疹ウイルスおよびエボラウイルス、ならびに家禽および畜牛産業に及ぼす大きな経済的影響を有する動物ウイルス(例えばニューカッスル病ウイルスおよび牛疫ウイルス)を含む7つの科(ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、ボルナウイルス科、オルソミクソウイルス科、ブンヤウイルス科およびアレナウイルス科)に分類される。はじめの4つの科は非セグメント化ゲノムにより特性化され、一方、後者3つはそれぞれ6〜8、3または2つのネガティブ・センスRNAセグメントから成るゲノムを有する。ネガティブ・センスRNAウイルスの共通の特徴は、それらのRNAゲノムの負極性である;即ちウイルスRNA(vRNA)はmRNAと相補的であり、したがってそれ自体感染性でない。ウイルス転写および複製を開始するために、vRNAは、ウイルスポリメラーゼ複合体および核タンパク質により、それぞれプラスセンスmRNAまたはcRNAに転写されなければならない;A型インフルエンザウイルスに関しては、ウイルスポリメラーゼ複合体は3つのポリメラーゼタンパク質PB2、PB1およびPAで構成される。ウイルス複製中、cRNAは新しいvRNA分子の合成のための鋳型として役立つ。全てのネガティブ鎖RNAウイルスに関して、vRNAおよびcRNAの5’および3’末端の両方の非コード領域は、ウイルスゲノムの転写および複製に重要である。細胞またはウイルスmRNA転写体と違って、cRNAおよびvRNAはともに、5’末端にキャップ形成されず、あるいはまさに3’末端でポリアデニル化されない。
【0003】
多数のウイルスタンパク質の基本的機能は、生化学的におよび/またはウイルス感染の情況で解明されてきた。しかしながら逆遺伝学系は、それらのウイルス複製および病原性に関して、ならびに生弱毒化ウイルスワクチンに関して、ネガティブ鎖セグメント化および非セグメント化RNAウイルスについてのわれわれの知識を劇的に増大した。逆遺伝学は、当該用語が分子ウイルス学で用いられる場合、クローン化cDNA由来のゲノムを保有するウイルスの生成と定義される(再検討のためには、Neumann et al., 2002参照)。
【0004】
ネガティブ鎖RNAウイルスのウイルス複製を開始するためには、vRNA(単数または複数)またはcRNA(単数または複数)は、ポリメラーゼ複合体および核タンパク質と同時発現されなければならない。狂犬病ウイルスは、クローン化cDNAから完全に生成された最初の非セグメント化ネガティブ・センスRNAであった:Schnell等(1994)は、全長cRNAをコードするcDNA構築物、ならびにL、PおよびNタンパク質に関するタンパク質発現構築物(全てT7 RNAポリメラーゼプロモーターの制御下にある)の同時トランスフェクションにより、組換え狂犬病を生成した。T7ポリメラーゼを提供する組換えワクシニアウイルスによる感染は、感染性狂犬病ウイルスの生成を生じた。このT7ポリメラーゼ系では、T7 RNAポリメラーゼの制御下の全長cRNAの一次転写は、非キャップcRNA転写体を生じた。しかしながら、T7 RNAポリメラーゼのための最適開始配列を構成する3つのグアニジンヌクレオチドは、5’末端に結合された。増殖感染サイクルに不可欠であるcRNA転写体の確証的3’末端を作成するために、肝炎デルタリボザイム(HDVRz)配列が、cRNA転写体の3’末端での的確な自己触媒的切断のために用いられた。
【0005】
Schnell等(1994)による初期の報告以来、同様の技法を用いる逆遺伝学系は、多数の非セグメント化ネガティブ鎖RNAウイルスの生成をもたらした(Conzelmann, 1996; Conzelmann, 1998; Conzelmann et al., 1996; Marriott et al., 1999; Munoz et al., 2000; Nagai, 1999; Neumann et al., 2002; Roberts et al., 1998; Rose, 1996)。初めの救済手法は、安定的トランスフェクト化細胞株(Radecke et al., 1996)からの、またはタンパク質発現プラスミド(Lawson et al., 1995)からのT7 RNAポリメラーゼの発現を、あるいは救済効率を増大するための熱ショック手法(Parks et al., 1999)を包含した。T7ポリメラーゼ系を基礎にして、BridgenとElliott(1996)は、クローン化cDNAからブンヤムウエラBunyamweraウイルス(ブンヤウイルス科)を作製し、T7ポリメラーゼ系によりセグメント化ネガティブ・センスRNAウイルスを人工的に生成することの実現可能性を実証した。
【0006】
1999年に、完全にクローン化cDNAからのセグメント化A型インフルエンザ・ウイルスの生成のための細胞RNAポリメラーゼIを基礎にして、プラスミドベースの逆遺伝学技法が創造された(Fodor et al., 1999; Neumann and Kawaoka, 1999)。核小体酵素であるRNAポリメラーゼIは、インフルエンザ・ウイルスRNAと同様に5’キャップまたは3’ポリA構造を含有しないリボソームRNAを合成する。RNAポリメラーゼIプロモーターおよびターミネーター配列が隣接するインフルエンザ・ウイルスcDNAを含有する構築物のRNAポリメラーゼI転写は、インフルエンザvRNA合成を生じた(Fodor et al., 1999; Neumann and Kawaoka, 1999; Neumann and Kawaoka, 2001; Pekosz et al., 1999)。当該系は非常に効率的で、トランスフェクション後48時間に108個より多い感染性ウイルス粒子/プラスミドトランスフェクト化細胞の上清1 mlを産生した。
したがって必要とされるのは、完全にクローン化cDNAからのセグメント化ネイティブ鎖RNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス、例えばA型インフルエンザウイルスを調製するための改良型方法である。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、高力価、例えば、10/mlより高い力価、例えば、1010/mlより高い、インフルエンザ・ウイルスのタンパク質をコードする単離及び/又は精製核酸分子(ポリヌクレオチド)、又はその部分、又は当該核酸分子の相補体を提供する。一実施態様では、当該単離及び/又は精製核酸分子は、HA、NA、PB1、PB2、PA、NP、M、又はNS、又は配列番号1〜8の内の1つによりコードされる対応のポリペプチドと実質的に同じ活性を有するその部分をコードする。本明細書中に使用するとき、「実質的に同じ活性」とは、対応の全長ポリペプチドの、約0.1%、1%、10%、30%、50%、90%、例えば、100%までの又はそれを超える活性、又は約80%、90%又はそれを超える検出可能なタンパク質レベルである、それぞれ、活性又はタンパク質レベルを含む。一実施態様では、前記単離及び/又は精製核酸分子は、配列番号1〜8のいずれか1によりコードされるポリペプチドと実質的に同じ、例えば、少なくとも80%、例えば、90%、92%、95%、97%又は99%のそれに対する連続アミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、前記単離及び/又は精製核酸分子は、配列番号1〜8のいずれか1と実質的に同じ、例えば、少なくとも50%、例えば、60%、70%、80%又は90%又はそれを超える、それに対する連続核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列、又はその相補体を含み、そして一実施態様では、配列番号1〜8のいずれか1によりコードされるポリペプチドに、少なくとも80%、例えば、90%、92%、95%、97%又は99%の連続アミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、前記単離及び/又は精製核酸分子は、配列番号1〜8のいずれか1によりコードされるポリペプチドに対し、残基の、1以上の、例えば、2、5、10、15、20又はそれを超える、保存的アミノ酸置換、例えば、10%又は20%までの保存的置換をもつポリペプチドをコードする。「保存的アミノ酸置換」とは、類似の側鎖をもつ残基の交換可能性をいう。例えば、脂肪族側鎖をもつアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びソロイシンであり;脂肪族−水酸基側鎖をもつアミノ酸群は、セリンとトレオニンであり;アミド含有側鎖をもつアミノ酸群は、アスパラギンとグルタミンであり;芳香族側鎖をもつアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖をもつアミノ酸群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;そして硫黄含有側鎖をもつアミノ酸群は、システインとメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン;フェニルアラニン−チロシン;リジン−アルギニン;アラニン−バリン;グルタミン−アスパラギン;及びアスパラギン−グルタミンである。
【0008】
他の実施態様では、本発明の単離及び/又は精製核酸分子又はその相補体は、低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー又はストリンジェント条件下、配列番号1〜8のいずれか1のもの、又はその相補体にハイブリダイズする。例えば、以下の条件を使用しうる:7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTA、50℃、そして50℃で2X SSC、0.1% SDS中での洗浄(低ストリンジェンシー)、より望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTA、50℃、そして50℃で1X SSC、0.1% SDS中での洗浄(中ストリンジェンシー)、さらにより望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTA、50℃、そして50℃で0.5X SSC、0.1% SDS中での洗浄(ストリンジェント条件)、好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTA、50℃、そして50℃で0.1X SSC、0.1% SDS中での洗浄(より高いストリンジェント条件)、より好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTA、50℃、そして65℃で0.1X SSC、0.1% SDS中での洗浄(ひじょうに高いストリンジェント条件)。一実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜8のいずれか1と実質的に同じ、例えば、少なくとも50%、例えば、60%、70%、80%又は90%又はそれを超える、それに対する連続核酸配列同一性を有するポリペプチドをコードし、そして好ましくは、配列番号1〜8のいずれか1によりコードされる対応の全長ポリペプチドと実質的に同じである。
【0009】
本発明の核酸分子は、インフルエンザ・タンパク質を発現するために、例えば、他のインフルエンザ・ウイルス遺伝子を含む他のウイルス遺伝子とのキメラ遺伝子を作製するために、及び/又は組換えウイルスを作製するために、使用しうる。したがって、本発明は、単離ポリペプチド、組換えウイルス、及び本発明の核酸分子又は組換えウイルスと接触される宿主細胞をも提供する。
【0010】
本発明は、以下の単離及び/又は精製ベクターの内の少なくとも1をも提供する:転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター、ここで、少なくとも1つのベクターは、HA、NA、PB1、PB2、PA、NP、M、NS、又は配列番号1〜8のいずれか1によりコードされる対応のポリペプチドと実質的に同じ活性をもつその部分、をコードする配列、例えば配列番号1〜8のいずれか1によりコードされるポリペプチドに少なくとも80%のアミノ酸同一性をもつポリペプチドをコードする配列を、含む。場合により、転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターの代わりに、2つのベクター、例えば、転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター、及び転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターが、使用されうる。
【0011】
本発明は、インフルエンザ・ウイルス・タンパク質を発現するか若しくはコードする、又は天然であるか組換えvRNAであるかを問わず、インフルエンザvRNAを発現するか又はコードする、単離及び精製ベクター又はプラスミドを提供する。好ましくは、ベクターは、インフルエンザcDNA、例えばA型(例えば任意のA型インフルエンザ遺伝子、例えば15HAまたは9NA亜型のいずれか)、BまたはC型インフルエンザDNAを含む(Chapters 45 and 46 of Fields Virology (Fields et al. (eds.)), Lippincott-Raven Publ., Philadelphia, PA(1996)参照)(これらの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。ただし、任意の生物の遺伝子(単数または複数)が本発明のベクター又は方法に用いられ得ると予見される。cDNAは、プロモーターに対してセンスまたはアンチセンス配向であり得る。したがって、本発明のベクターは、インフルエンザ・ウイルス・タンパク質(センス)またはvRNA(アンチセンス)をコードし得る。任意の適切なプロモーターまたは転写終結配列を用いて、タンパク質、例えばウイルス・タンパク質、非ウイルス性病原体のタンパク質若しくはペプチド、または治療用タンパク質若しくはペプチドを発現し得る。
【0012】
本発明は、本発明の複数のインフルエンザ・ウイルス・ベクターを含む組成物を提供する。本発明の一実施形態では、組成物は:a)転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;及び転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、少なくとも1つのベクターが、転写終結配列に連結された本発明の核酸分子に操作可能的に連結されたプロモーターを含み;並びにb)インフルエンザ・ウイルスPAをコードするベクター;インフルエンザ・ウイルスPB1をコードするベクター;インフルエンザ・ウイルスPB2をコードするベクター;及びインフルエンザ・ウイルスNPをコードするベクターからから選択される少なくとも2つのベクターを、含む。任意に、b)のベクターは、NP、NS、M、例えばM1およびM2、HAまたはNAをコードする1つまたは複数のベクターを含む。好ましくは、ウイルス・タンパク質をコードするベクターは、転写終結配列をさらに含む。
【0013】
別の実施形態では、組成物は:a)転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNAおよびNB cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;および転写終結配列に連結されるインフルエンザ・ウイルスBM2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、少なくとも1つのベクターが、転写終結配列に連結さらた本発明の核酸配列に操作可能的に連結されたプロモーターを含み;並びにb)インフルエンザ・ウイルスPAをコードするベクター;インフルエンザ・ウイルスPB1をコードするベクター;インフルエンザ・ウイルスPB2をコードするベクター;及びインフルエンザ・ウイルスNPをコードするベクターからから選択される少なくとも2つのベクターを含む。任意に、b)のベクターは、NP、NS、M、HAまたはNAをコードする1つまたは複数のベクターを含む。好ましくは、ウイルス・タンパク質をコードするベクターは、転写終結配列をさらに含む。
【0014】
本発明の組成物は、着目の遺伝子又はオープン・リーディング・フレーム、例えば、ワクチンとして有用な免疫原性ペプチド又はタンパク質をコードする外来遺伝子をも含みうる。したがって、本発明の他の態様は、上記ベクターの内の1つが、転写終結配列に連結された、3’インフルエンザ・ウイルス・コーディング配列又はその部分を場合により含む3’インフルエンザ・ウイルス配列に連結された、所望の核酸配列、例えば、所望のcDNAに連結された、5’インフルエンザ・ウイルス・コーディング配列又はその部分を場合により含む5’インフルエンザ・ウイルス配列に連結されたプロモーターを含むベクターで、置き換えられ、又はそれをさらに含むような上記の本発明の組成物を含む。好ましくは、上記所望の核酸配列、例えば、cDNAは、アンチセンスは移行にある。インフルエンザ・ウイルス複製を許容する宿主細胞への上記組成物の導入は、当該ベクターの配列に相当するvRNAを含む組換えウイルスをもたらす。vRNA製造のためのこのようなベクター内のプロモーターは、RNAポリメラーゼIプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T7プロモーター、及びT3プロモーターであることができ、そして場合により、当該ベクターは、転写終結配列、例えば、RNAポリメラーゼI転写終結配列、RNAポリメラーゼII転写配列、RNAポリメラーゼIII転写配列、又はリボザイムを含む。一実施態様では、所望の核酸配列を含むベクターは、着目のcDNAを含む。着目のcDNAは、vRNAかタンパク質製造のためのベクターであるかを問わず、免疫原性エピトープ、例えば、癌治療又はワクチンにおいて有用なエピトープ、又は遺伝子治療において有用なペプチド又はポリペプチドをコードすることができる。ウイルスを製造するとき、着目の遺伝子又はcDNAを含むベクター又はプラスミドは、インフルエンザ・ウイルス遺伝子のためのベクター又はプラスミドを置き換わり、又は全てのインフルエンザ・ウイルス遺伝子のためのベクター又はプラスミドに追加して、存在しうる。
【0015】
本発明の複数のベクターは、物理的に連結され、又は各ベクターは、個々のプラスミド又は他の、例えば、線形の、核酸デリバリー・ビヒクル上に存在することができる。
【0016】
vRNA又はウイルス・タンパク質発現ベクター内のプロモーター又は転写終結配列は、当該プロモーター又はいずれかの他のベクターに対して同一又は相違することができる。好ましくは、インフルエンザvRNAを発現するベクター又はプラスミドは、少なくとも1の特定の宿主細胞、例えば、トリ又は哺乳動物宿主細胞、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、又はヒト細胞を含む霊長類細胞内での発現、又は好ましくは2以上の宿主内での発現のために好適なプロモーターを含む。
【0017】
一実施形態では、vRNA産生のための1以上のベクターは、RNAポリメラーゼIプロモーター、例えば、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T7プロモーターおよびT3プロモーターを非制限的に含むプロモーターを含む。vRNAベクターのための好ましい転写終結配列は、非制限的に、RNAポリメラーゼI転写終結配列、RNAポリメラーゼII転写終結配列、RNAポリメラーゼIII転写終結配列またはリボザイムを含む。本発明の範囲内におけるリボザイムは、非制限的に、テトラヒメナ・リボザイム、RNaseP、ハンマーヘッド・リボザイム、ヘアピン・リボザイム、肝炎リボザイム、並びに合成リボザイムを含む。
【0018】
一実施形態では、vRNA産生のための少なくとも1つのベクターは、場合によりRNAポリメラーゼII転写終結配列に連結された、他のリボザイム配列に連結されたウイルス・コーディング配列に連結されたリボザイム配列に連結されたRNAポリメラーゼIIプロモーターを含む。一実施形態では、vRNA産生のための少なくとも2つの、好ましくはそれ以上の、例えば3、4、5、6、7または8つのベクターは、RNAポリメラーゼIIプロモーター、一次リボザイム配列(これは、転写終結配列に対して5’である二次リボザイム配列に対して5’であるウイルスコード配列を含むウイルス配列に対応する配列に対して5’である)を含む。各vRNAベクター中の各RNAポリメラーゼIIプロモーターは、任意のその他のvRNAベクター中のRNAポリメラーゼIIプロモーターと同一であるかまたは異なり得る。同様に、各vRNAベクター中の各リボザイム配列は、任意のその他のvRNAベクター中のリボザイム配列と同一であるかまたは異なり得る。一実施形態では、単一ベクター中のリボザイム配列は同一ではない。
【0019】
本発明は、インフルエンザ・ウイルスの製造方法も提供する。本方法は、本発明の複数のベクターと細胞を、例えば逐次的にまたは同時に、例えば感染性インフルエンザ・ウイルスを産生するのに有効な量で本発明の組成物を用いて、接触させることを包含する。本発明は、組成物と接触させられた細胞からウイルスを単離することも包含する。したがって本発明はさらに、単離ウイルス、ならびに本発明の組成物またはウイルスと接触された宿主細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は、他のベクター(vRNAまたはタンパク質産生ベクター)の前に、1つまたは複数のベクター(vRNAまたはタンパク質産生ベクター)と細胞を接触させることを包含する。
【0020】
本発明の方法は、例えばウイルスゲノム中への弱毒性突然変異の導入により、インフルエンザ・ウイルスの容易な操作を可能にする。さらに、インフルエンザ・ウイルスは強力な体液性および細胞性免疫を誘導するため、本発明は、特に逐次的に用いられて遺伝子療法のための反復使用を可能にするウイルスの天然変異体の利用可能性にかんがみて、ワクチンベクターとしてこれらのウイルスを大いに強化する。
【0021】
ヘルパーウイルス感染を必要としない本明細書中に記載したウイルスの製造方法は、ウイルス突然変異誘発研究において、そしてワクチン(例えばAIDS、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、ライノウイルス、フィロウイルス、マラリア、ヘルペスならびに手足口病のための)、ならびに遺伝子療法ベクター(例えば癌、AIDS、アデノシンデアミナーゼ、筋ジストロフィー、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損および中枢神経系腫瘍のための)の製造において有用である。したがって医学療法(例えばワクチンまたは遺伝子療法)に用いるためのウイルスが提供される。
【0022】
本発明は、病原体、例えば細菌、ウイルスまたは寄生生物、あるいは悪性腫瘍に対して個体を免疫感作するための方法も提供する。本方法は、個体を免疫監査するのに有効な量の少なくとも1つの本発明の単離ウイルスを、任意にアジュバントと組合せて、個体に投与することを包含する。ウイルスは、病原体によりコードされるポリペプチドまたは腫瘍特異的ポリペプチドを含むvRNAを含む。
【0023】
内因性タンパク質の量の低減または欠如により特性化される適応症または疾患を有する哺乳類における内因性タンパク質の発現を増強または増大するための方法も提供される。本方法は、哺乳類における内因性タンパク質の量を増強または増大するのに有効な量の本発明の単離ウイルスを哺乳類に投与することを包含する。好ましくは哺乳類はヒトである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の詳細な説明
定義
本明細書中で用いる場合、「単離されたおよび/または精製された」という用語は、それがin vivo物質に関連しない、あるいは実質的にin vitro物質から精製されるような本発明のベクター、プラスミドまたはウイルスのin vitro調製、単離および/または精製を指す。単離ウイルス調製物は一般にin vitro培養および増殖により得られ、そして他の感染性作因を実質的に含有しない。
【0025】
本明細書中で用いる場合、「実質的に含有しない」とは、その作因に関して、標準検出方法を用いた特定の感染性作因に関する検出レベルより低いことを意味する。
【0026】
「組換え体」ウイルスは、ウイルスゲノムに変更を導入するために、例えば組換えDNA技術を用いてin vitroで操作されたものである。
【0027】
本明細書中で用いる場合、「組換え核酸」または「組換えDNA配列またはセグメント」という用語は、その配列が天然に存在しないか、あるいはネイティブゲノム中にそれらが位置するように位置されない天然配列に対応するよう、供給源から得られるかまたは単離され、その後、in vitroで化学的に変更され得る核酸、例えばDNAを指す。供給源から「得られる」DNAの一例は、有用な断片として同定されるDNA配列であり、これはその後、本質的に純粋形態で化学的に合成される。供給源から「単離される」このようなDNAの一例は、それが、遺伝子工学処理の方法により、本発明で用いるためにさらに操作され、例えば増幅され得るよう、化学的手段により、例えば制限エンドヌクレアーゼの使用により、上記供給源から切断されるかまたは除去される有用なDNA配列である。
【0028】
インフルエンザ・ウイルス複製
A型インフルエンザウイルスは、10個のタンパク質の全体をコードする8つの一本鎖ネガティブ・センスウイルスRNA(vRNA)のゲノムを保有する。インフルエンザ・ウイルス生活環は、宿主細胞の表面のシアル酸含有受容体へのヘマグルチニン(HA)の結合と、その後の受容体媒介性エンドサイトーシスにより開始する。後期エンドソーム中の低pHがHAの立体配座シフトを誘発し、それによりHA2サブユニット(いわゆる融合ペプチド)のN末端を曝露する。融合ペプチドは、ウイルスおよびエンドソーム膜の融合を開始し、そしてマトリックスタンパク質(M1)およびRNP複合体が細胞質中に放出される。RNPは、vRNAをキャプシド形成する核タンパク質(NP)ならびにPA、PB1およびPB2タンパク質により形成されるウイルスポリメラーゼ複合体からなる。RNPは核中に輸送され、ここで転写および複製が起こる。RNAポリメラーゼ複合体は、3つの異なる反応を触媒する:5’キャップおよび3’ポリA構造を有するmRNAの合成、全長相補的RNA(cRNA)の合成、ならびに鋳型としてcDNAを用いたゲノムvRNAの合成。新規に合成されたvRNA、NPおよびポリメラーゼタンパク質は次に、RNPに集合され、核から輸出され、そして形質膜に輸送され、ここで子孫ウイルス粒子の出芽が起こる。ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質は、シアリルオリゴ糖からシアル酸を除去し、したがって細胞表面から新規集合ビリオンを放出して、ウイルス粒子の自己凝集を防止することにより、感染において後期に重要な役割を演じる。ウイルス集合体はタンパク質−タンパク質およびタンパク質−vRNA相互作用を包含するが、しかしこれらの相互作用の性質はほとんど未知である。
【0029】
BおよびC型インフルエンザ・ウイルスはA型インフルエンザウイルスと構造的および機能的に類似するが、しかしいくつかの差異が存在する。例えばB型インフルエンザウイルスは、イオンチャンネル活性を有するM2タンパク質を有さない。同様にC型インフルエンザ・ウイルスは、イオンチャンネル活性を有するM2タンパク質を有さない。しかしながらCM1タンパク質はこの活性を有すると思われる。イオンチャンネルタンパク質の活性は、当該技術分野で周知の方法により測定され得る(例えばHolsinger et al. (1994)およびWO 01/79273参照)。
【0030】
本発明に用いられ得る細胞株およびインフルエンザ・ウイルス
本発明によれば、インフルエンザ・ウイルスの効率的複製を支持する任意の細胞、例えばインフルエンザウイルスの受容体である1つまたは複数のシアル酸のレベル低減または減少を発現する突然変異体細胞が本発明で用いられ得る。本方法により得られるウイルスは、再集合株ウイルスに作製され得る。
【0031】
好ましくは細胞は、WHO認証または認証可能連続細胞株である。このような細胞株を認証するための要件としては、系統、増殖特性、免疫学的マーカー、ウイルス感受性、腫瘍形成能および貯蔵条件のうちの少なくとも1つに関する、ならびに動物、卵および細胞培養を試験することによる特性化が挙げられる。このような特性化は、細胞が検出可能な外因性作用物質を含有しないことを確証するために用いられる。いくつかの国では、核学も必要とされ得る。さらに腫瘍形成能は、好ましくは、ワクチン製造のために用いられるものと同一継代レベルである細胞で試験される。ウイルスは好ましくは、ワクチン製造のために不活性化または弱毒化される前に、一貫した結果を生じることが示された方法により精製される(例えばWorld Health Organization, 1982参照)。
【0032】
最終生成物の純度に関する適切な試験が含まれ得るよう、用いられるべき細胞株の完全特性化を確立することが好ましい。本発明に用いられるべき細胞の特性化のために用いられ得るデータとしては、(a)その起源、誘導および継代歴に関する情報;(b)その増殖および形態学的特質に関する情報;(c)外因性作用物質の試験の結果;(d)細胞を他の細胞株の間で明らかに認識させる生化学的、免疫学的および細胞遺伝学的パターンといった特徴の識別;ならびに(e)腫瘍形成能に関する試験の結果が挙げられる。用いられる宿主細胞の継代レベル、または集団倍加は、できるだけ低いのが好ましい。
【0033】
細胞中で産生されるウイルスは、ワクチンまたは遺伝子療法処方前に高度に精製されるのが好ましい。一般に精製手法は、細胞DNA、その他の細胞構成成分および外因性作用物質の広範な除去を生じる。DNAを広範に分解するかまたは変性する手法も用いられ得る(例えばMizrahi, 1990参照)。
【0034】
ワクチン
本発明のワクチンは、免疫原性タンパク質、例えば任意の病原体の糖タンパク質、例えば1つまたは複数の細菌、ウイルス、酵母または真菌からの免疫原性タンパク質を含み得る。したがって一実施形態では、本発明のインフルエンザ・ウイルスは、インフルエンザ・ウイルスまたはその他のウイルス性病原体、例えばレンチウイルス、例えばHIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、例えばCMVまたはHSV、あるいは手足口病ウイルス(これらに限定されない)のためのワクチンベクターであり得る。
【0035】
完全ビリオンワクチンは限外濾過により濃縮され、次にゾーン遠心分離により、またはクロマトグラフィーにより精製される。それは、例えばホルマリンまたはβ−プロピオラクトンを用いて、精製の前または後に不活性化される。
【0036】
サブユニット・ワクチンは、精製糖タンパク質を含む。このようなワクチンは、以下のように調製され得る:洗剤を用いた処理により断片化されたウイルス懸濁液を用いて、例えば超遠心分離により、表面抗原が精製される。したがってサブユニット・ワクチンは、主としてHAタンパク質を、そしてNAも含有する。用いられる洗剤は、例えば陽イオン性洗剤、例えば臭化ヘキサデシル・トリメチル・アンモニウム(Bachmeyer, 1975)、陰イオン性洗剤、例えばデオキシコール酸アンモニウム(Laver & Webster, 1976; Webster et al., 1977)、または非イオン性洗剤、例えばトリトンX100の名称で市販されているものであり得る。ヘマグルチニンも、プロテアーゼ、例えばブロメリンでビリオンを処理後に単離され、次に、Grand and Skehel (1972)により記載されたような方法により精製され得る。
【0037】
スプリット・ワクチンは、脂質を溶解する作用物質による処理に付されたビリオンを含む。スプリット・ワクチンは、以下のように調製され得る:(不活性化された場合またはされない場合の)上記のようにして得られた精製ウイルスの水性懸濁液は、洗剤と会合される脂質溶媒、例えばエチルエーテルまたはクロロホルムにより、撹拌下で、処理される。ウイルスエンベロープ脂質の溶解は、ウイルス粒子の断片化を生じる。主にヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼからなるスプリット・ワクチンを含有し、除去されたそれらの元の脂質環境ならびにコアまたはその分解産物を伴う水性相が回復される。次に、これがすでに実行されていない場合、残留感染性粒子が不活性化される。
【0038】
不活性化ワクチン。本発明の不活性化インフルエンザ・ウイルス・ワクチンは、既知の方法、例えばホルマリンまたはβ−プロピオラクトン処理(これらに限定されない)を用いて、本発明の複製ウイルスを不活性化することにより提供される。本発明に用いられ得る不活性化ワクチン型は、全ウイルス(WV)ワクチンまたはサブビリオン(SV)(スプリット)ワクチンを包含し得る。WVワクチンは、無傷の不活性化ウイルスを含有し、一方、SVワクチンは、脂質含有ウイルスエンベロープを可溶化し、その後、残留ウイルスを化学的に不活性化する洗剤で崩壊された精製ウイルスを含有する。
【0039】
さらに、用いられ得るワクチンとしては、表面抗原またはサブユニット・ワクチンと呼ばれる単離HAおよびNA表面タンパク質を含有するものが挙げられる。概して、SVおよび表面抗原(即ち精製HAまたはNA)ワクチンに対する応答は類似する。流行病ウイルスに免疫学的に関連するNA抗原および非関連HAを含有する実験的不活性化WVワクチンは、慣用的ワクチンより低有効性であると思われる(Ogra et al., 1977)。両関連表面抗原を含有する不活性化ワクチンが好ましい。
【0040】
生弱毒化ウイルスワクチン。生弱毒化インフルエンザ・ウイルス・ワクチンも、既知の方法過程に従って、インフルエンザ・ウイルス感染を予防または治療するために用いられ得る。弱毒化は好ましくは、既知の方法に従って、複製単離物または再集合ウイルスに弱毒化供与体から弱毒化遺伝子を移入することにより、単一段階で達成される(例えばMurphy, 1993参照)。A型インフルエンザ・ウイルスに対する耐性は、HAおよびNA糖タンパク質に対する免疫応答の発現により媒介されるため、これらの表面抗原をコードする遺伝子は再集合ウイルスまたは高増殖臨床単離株から得られなければならない。弱毒化遺伝子は、弱毒化親に由来する。このアプローチでは、弱毒化を付与する遺伝子は、好ましくはHAおよびNA糖タンパク質をコードしない。別の情況では、これらの遺伝子は、臨床ウイルス単離株の表面抗原を保有する再集合株に移入され得ない。
【0041】
多数の供与体ウイルスは、インフルエンザ・ウイルスを再現可能的に弱毒化するそれらの能力に関して評価された。非限定例として、A/Ann Arbor(AA)/6/60(H2N2)寒冷順応(ca)供与体ウイルスは、弱毒化ワクチン製造のために用いられ得る(例えばEdwards, 1994; Murphy, 1993参照)。さらに生弱毒化再集合株ウイルスワクチンは、ca供与体ウイルスを本発明の有毒複製ウイルスと交配することにより生成され得る。次に、弱毒化A/AA/6/60(H2N2)ca供与体ウイルスの表面抗原を保有するウイルスの複製を抑制するH2N2抗血清の存在下で、再集合株子孫が25℃で(有毒ウイルスの複製に限定的)選択される。
【0042】
大型シリーズのH1N1およびH3N2再集合株がヒトにおいて評価され、申し分なく:(a)感染性、(b)血清陰性小児および免疫学的に感作された成人に対して弱毒化され、(c)免疫原性、ならびに(d)遺伝子安定性であることが判明した。ca再集合株の免疫原性は、それらの複製レベルと平行する。したがって新規の野生型ウイルスによるca供与体ウイルスの6つの移入可能遺伝子の獲得は、感染しやすい成人および小児にワクチン接種するのに用いるために、これらのウイルスを再現可能的に弱毒化した。
【0043】
その他の弱毒性突然変異は、これらの突然変異体遺伝子を保有する感染性ウイルスを救済するための部位特異的突然変異誘発によりインフルエンザ・ウイルス遺伝子中に導入され得る。弱毒性突然変異は、ゲノムの非コード領域に、ならびにコード領域に導入され得る。このような弱毒性突然変異は、HAまたはNA以外の遺伝子、例えばPB2ポリメラーゼ遺伝子中にも導入され得る(Subbarao et al., 1993)。したがって部位特異的突然変異誘発により導入された弱毒性突然変異を保有する新規の供与体ウイルスも生成され、そしてこのような新規の供与体ウイルスは、A/AA/6/60ca供与体ウイルスに関して上記されたものと同様の方法で、生弱毒化再集合株H1N1およびH3N2ワクチン候補の低減に用いられ得る。同様に、その他の既知のならびに適切な弱毒化供与体株は、本発明のインフルエンザ・ウイルスと再集合されて、哺乳類のワクチン接種に用いるのに適した弱毒化ワクチンを生成し得る(Enami et al., 1990; Muster et al., 1991; Subbarao et al., 1993)。
【0044】
このような弱毒化ウイルスは、元の臨床単離株のものと実質的に同様の抗原決定基をコードするウイルスからの遺伝子を保持するのが好ましい。これは、弱毒化ワクチンの目的が、ワクチン接種哺乳類における重篤な病原性状態を誘導する最小変化をワクチンが引き起こす程度に感染性を同時に欠きながら、ウイルスの元の臨床単離株と実質的に同一の抗原性を提供することであるためである。
【0045】
したがってウイルスは、動物、例えば哺乳類における免疫応答を誘導するためのワクチンとして、既知の方法に従って、弱毒化されるかまたは不活性化され、処方され、そして投与され得る。このような弱毒化または不活性化ワクチンが臨床的単離株またはそれに由来する高増殖株のものと類似の抗原性を保持したか否かを確定するための方法が、当該技術分野で周知である。このような既知の方法としては、供与体ウイルスの抗原決定基を発現するウイルスを排除するための抗血清または抗体の使用;化学的選択(例えばアマンタジンまたはリマンチジン);HAおよびNA抗体活性および抑制;ならびに抗原決定基をコードする供与体遺伝子(例えばHAまたはNA遺伝子)が弱毒化ウイルス中に存在しないことを確証するためのDNAスクリーニング(例えばプローブハイブリダイゼーションまたはPCR)が挙げられる(例えばRobertson et al., 1988; Kilbourne, 1969; Aymard-Henry et al., 1985; Robertson et al., 1992参照)。
【0046】
医薬(製剤)組成物
接種に、あるいは非経口または経口投与に適した本発明の製剤組成物は、弱毒化または不活性化インフルエンザ・ウイルスを含み、任意に滅菌水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液をさらに含む。組成物は、当該技術分野で既知のような助剤または賦形剤をさらに含み得る(例えばBerkow et al., 1987; Goodman et al., 1990; Avery’s Drug Treatment, 1987; Osol, 1980; Katzung, 1992参照)。本発明の組成物は一般に、個々の用量(単位用量)の形態で存在する。
【0047】
慣用的ワクチンは、一般にそれらの組成物中に入り込む株の各々からの約0.1〜200 μg、好ましくは10〜15 μgのヘマグルチニンを含有する。本発明のワクチン組成物の主要構成成分を構成するワクチンは、A、BまたはC型のウイルス、あるいはそれらの任意の組合せ、例えば3つの型のうちの少なくとも2つ、異なる亜型のうちの少なくとも2つ、同一型のうちの少なくとも2つ、同一亜型のうちの少なくとも2つ、あるいは異なる単離株(単数または複数)または再集合株(単数または複数)を含み得る。ヒトA型インフルエンザ・ウイルスとしては、H1N1、H2N2およびH3N2亜型が挙げられる。
【0048】
非経口投与のための調製物としては、当該技術分野で既知の助剤または賦形剤を含有し得る滅菌水性または非水性溶液、懸濁液および/または乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。担体または閉鎖包帯は、皮膚浸透性を増大し、抗原吸収を増強するために用いられ得る。経口投与のための液体剤形は一般に、液体剤形を含有するリポソーム溶液を含む。リポソームを懸濁するための適切な形態としては、当該技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤、例えば精製水を含有する乳濁液、懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。不活性希釈剤のほかに、このような組成物は、アジュバント、湿潤剤、乳化剤および沈殿防止剤、あるいは甘味剤、風味剤または香料も包含し得る(例えばBerkow et al., 1992; Goodman et al., 1990; Avery’s, 1987; Osol, 1980;およびKatzung, 1992参照)。
【0049】
本発明の組成物が個体への投与のために用いられる場合、それはさらに、塩、緩衝剤、アジュバントまたは組成物の効力を改善するために望ましいその他の物質を含み得る。ワクチンのために、アジュバント、即ち特定の免疫応答を増大し得る物質が用いられ得る。普通は、アジュバントおよび組成物は、免疫系への提示前に混合され、あるいは別個に、しかし免疫感作されている生物体の同一部位に提示される。ワクチン組成物に用いるのに適した物質の例は、Osol (1980)に提示されている。
【0050】
ワクチンの不均質性は、その中の2〜50株または任意の範囲または値のような少なくとも2つのインフルエンザ・ウイルス株に関する複製インフルエンザ・ウイルスを混合することにより提供され得る。現代の抗原性組成物を有するA型またはB型インフルエンザ・ウイルス株が好ましい。本発明によれば、ワクチンは、当該技術分野で既知の技法を用いて、インフルエンザ・ウイルスの単一株における変異のために提供され得る。
【0051】
本発明の製剤組成物は、さらにまたは付加的に、例えば遺伝子療法、免疫抑制剤、抗炎症剤または免疫増強剤のための、ならびにワクチンのための少なくとも1つの化学療法化合物を含み、化学療法剤としては、ガンマグロブリン、アマンタジン、グアニジン、ヒドロキシベンズイミダゾール、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、腫瘍壊死因子−アルファ、チオセミカルバルゾン、メチサゾン、リファムピン、リバビリン、ピリミジン類似体、プリン類似体、フォスカルネット、ホスホノ酢酸、アシクロビル、ジデオキシヌクレオシド、プロテアーゼ阻害剤またはガンシクロビルが挙げられるが、これらに限定されない(例えばKatzung (1992)ならびにその中のそれぞれ798-800および680-681ページに引用された参考文献参照)。
【0052】
組成物は、可変量のしかし少量の内毒素無含有ホルムアルデヒド、そして安全で且つ組成物が投与される生物体中での望ましくない作用に関与しないことが判明した防腐剤も含有し得る。
【0053】
医薬(薬学的)目的
組成物(またはそれが引き出す抗血清)の投与は、「予防的」または「治療的」目的のためであり得る。予防的に提供される場合、ワクチンである本発明の組成物は、病原体感染の任意の症候が症状発現するようになる前に提供される。組成物の予防的投与は、任意のその後の感染を防止するかまたは弱毒化するために役立つ。予防的に提供される場合、本発明の遺伝子療法組成物は、疾患の任意の症候が症状発現するようになる前に提供される。組成物の予防的投与は、疾患に関連した1つまたは複数の症候を防止するかまたは弱毒化するために役立つ。
【0054】
治療的に提供される場合、弱毒化または不活性化ウイルスワクチンは、実際の感染の症候の検出時に提供される。化合物(単数または複数)の治療的投与は、任意の実際の感染を弱毒化するのに役立つ(例えばBerkow et al., 1992; Goodman et al., 1990; Avery, 1987;およびKatzung, 1992参照)。治療的に提供される場合、遺伝子療法組成物は、疾患の症候または適応症の検出時に提供される。化合物(単数または複数)の治療的投与は、その疾患の症候または適応症を弱毒化するのに役立つ。
【0055】
したがって、本発明の弱毒化または不活性化ワクチン組成物は、感染の開始前に(予測される感染を防止するかまたは弱毒化するために)、あるいは実際の感染の開始後に提供され得る。同様に、遺伝子療法に関しては、組成物は、障害または疾患の任意の症候が症状発現される前に、あるいは1つまたは複数の症候が検出された後に提供され得る。
【0056】
組成物は、その投与がレシピエント患者により耐容され得る場合、「薬理学的に許容可能」であるといわれる。このような作用物質は、投与される量が生理学的に十分である場合、「治療的有効量」で投与されると言われる。本発明の組成物は、その存在がレシピエント患者の生理学における検出可能な変化を生じる、例えば感染製インフルエンザ・ウイルスの少なくとも1つの株に対する少なくとも1つの一次または二次体液性または細胞性免疫応答を増強する場合、生理学的に十分である。
【0057】
提供される「防御」が絶対というわけではない、即ちインフルエンザ感染は、患者の対照集団または組と比較して、統計学的に有意の改善が存在する場合、全体的に防止されるかまたは根絶される必要はない。防御は、インフルエンザ・ウイルス感染の症候の開始の重症度または急速度を緩和するよう制限され得る。
【0058】
製剤投与
本発明の組成物は、受動免疫法または能動免疫法により、1つまたは複数の病原体、例えば、1つまたは複数のインフルエンザ・ウイルス株に耐性を付与し得る。能動免疫法では、不活性化または弱毒化生ワクチン組成物が宿主(例えば哺乳類)に予防的に投与され、そして投与に対する宿主の免疫応答が感染および/または疾患に対して防御する。受動免疫法に関しては、引き指された抗血清が回収され、そして少なくとも1つのインフルエンザ・ウイルス株により引き起こされる感染を有することが疑われるレシピエントに投与される。本発明の遺伝子療法(治療)組成物は、能動免疫法により、予防的または治療的レベルの所望の遺伝子産物を産生し得る。
【0059】
一実施形態では、ワクチンは、雌および胎児または新生児をともに防御するのに役立つ免疫応答の生成を引き起こす(胎盤を通してまたは母親の乳汁中に抗体を受動混入することによる)のに十分な時間および量の条件下で、哺乳類雌に(妊娠または分娩時またはその前に)提供される。
【0060】
したがって、本発明は、障害または疾患、例えば病原体のうちの少なくとも1つの株による感染を防止するかまたは弱毒化するための方法を包含する。本明細書中で用いる場合、ワクチンは、その投与が疾患の症候または状態の全体的または部分的弱毒化(即ち抑制)を、あるいは疾患に対する個体の全体的または部分的免疫を生じる場合、疾患を防止または弱毒化すると言われる。本明細書中で用いる場合、遺伝子療法組成物は、その投与が疾患の症候または状態の全体的または部分的弱毒化(即ち抑制)を、あるいは疾患に対する個体の全体的または部分的免疫を生じる場合、疾患を防止または弱毒化すると言われる。
【0061】
本発明の少なくとも1つの不活性化または弱毒化インフルエンザ・ウイルス、あるいはその組成物は、上記のような製剤組成物を用いて、意図された目的を達成する任意の手段により投与され得る。
【0062】
例えば、このような組成物の投与は、種々の非経口経路、例えば皮下、静脈内、皮膚内、筋肉内、腹腔内、鼻内、蛍光または皮膚経路によるものであり得る。本発明の製剤組成物を用いる好ましい方式は、筋肉内または皮下適用によるものである(例えばBerkow et al., 1992; Goodman et al., 1990; Avery, 1987;およびKatzung, 1992参照)。
【0063】
インフルエンザ・ウイルス関連病態を予防し、抑制しまたは治療するための典型的レジメンは、単一治療として投与されるか、あるいは1週間〜約24ヶ月、あるいはその中の任意の範囲または数値までの期間に亘って、強化または追加投与量として反復される本明細書中に記載されるような有効量のワクチン組成物の投与を包含する。
【0064】
本発明によれば、組成物の「有効量」は、所望の生物学的作用を達成するのに十分である量である。有効投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあれば、共存的治療の種類、治療の頻度、ならびに望まれる作用の性質によっている、と理解される。以下に提示される有効用量の範囲は、本発明を限定するものではなく、好ましい用量範囲を表す。しかしながら最も好ましい投与量は、当業者に理解され、確定されるように、個々の被験者に適応される(例えばBerkow et al., 1992; Avery’s, 1987; Katzung, 1992参照)。
【0065】
哺乳類(例えばヒト)または鳥類成体生物体のための弱毒化ウイルスワクチンの投与量は、約103〜107プラーク形成単位(PFU)/kg、またはその中の任意の範囲または値からであり得る。不活性化ワクチンの用量は、約0.1〜200 μgの範囲、例えば50 μgのヘマグルチニンタンパク質であり得る。しかしながら投与量は、出発点として先在ワクチンを用いて慣用的方法により確定した場合に、安全且つ有効な量であるべきである。
【0066】
複製ウイルスワクチンの各用量での免疫反応性HAの投与量は、適量の、例えば1〜50 μg、またはその中の任意の範囲または値、あるいは米国公衆衛生局(PHS)により推奨される量(通常は3歳児以上の年長小児用:15 μg/構成成分;3歳未満の小児用:7.5 μg/構成成分)を含有するよう標準化され得る。しかしながらNAの量も標準化され、この糖タンパク質はプロセッサー精製および貯蔵中は不安定であり得る(Kendal et al., 1980)。各々0.5 ml用量のワクチンは、好ましくは約1〜500億個のウイルス粒子、好ましくは100億個の粒子を含有する。
【実施例】
【0067】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
実施例1
材料および方法
細胞およびウイルス。293Tヒト胚腎細胞およびマディン・ダービーイヌ腎細胞(MDCK)を、それぞれ10%ウシ胎仔血清を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、および5%ウシ新生仔血清を含有する変法イーグル培地(MEM)中に保持した。全ての細胞を、37℃で5%CO2中に保持した。インフルエンザ・ウイルスA/WSN/33(H1N1)およびA/PR/8/34(H1N1)を、10日齢卵中で増殖させた。
【0068】
プラスミドの構築。RNAポリメラーゼI構築物を生成するために、A/WSN/33またはA/PR/8/34ウイルスRNA由来のクローン化cDNAを、RNAポリメラーゼIのプロモーターおよびターミネーター配列間に導入した。要するに、BsmBIで消化されたBsmBIを含有するプライマーを用いたPCRにより、クローン化cDNAを増幅し、そしてBsmBI部位により分離されるヒトRNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターを含有するpHH21ベクターのBsmBI部位中にクローン化した(図2)。A/WSN/33株のPB2、PB1、PA、HA、NP、NA、MおよびNS遺伝子を、以下のプラスミドの使用によりPCR増幅した:それぞれpSCWPB2、pGW−PB1およびpSCWPA(全てDr. Debi Nayak at the University of California Los Angelesから得られる)、ならびにpWH17、pWNP152、pT3WNA15(Castrucci et al., 1998)、kPT3WMおよびpWNS1。鋳型としてpcDNA774(PB1)(Perez et al., 1998)を用いて、インフルエンザウイルスA/PR/8派34ウイルスのPB1遺伝子を増幅した。プライマーの配列に関しては図6を参照されたい。遺伝子が望ましくない突然変異を含有しないことを保証するためには、PCR由来断片は、メーカーに推奨されたプロトコールに従ってオートシークエンサー(Applied Biosystems Inc., CA, USA)を用いた配列であった。A/WSN/33ウイルスのHA、NP、NAおよびM1遺伝子をコードするcDNAを記載された(Huddleston et al., 1982)とおりにクローン化して、真核生物発現ベクターpCAGGS/MCS(ニワトリβアクチンプロモーターにより制御)(Niwa et al., 1991)中にサブクローニングして、それぞれpEWSN−HA、pCAGGS−WSN−NP0−14、pCAGGS−WNA15およびpCAGGS−WSN−M1−2/1を生じた。PCRによりA/PR/8/34ウイルスからのM2およびNS2遺伝子を増幅し、pCAGGS/MCS中にクローン化して、pEP24cおよびpCA−NS2を産生した。最後に、pcDNA774(PB1)、pcDNA762(PB2)およびpcDNA787(PA)を用いて、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下でPB2、PB1およびPAタンパク質を発現した(Perez et al., 1998)。
【0069】
感染性インフルエンザ粒子の生成。メーカーの使用説明書に従って、トランスIT LT−1(Panvera, Madison, Wisconsin)の使用により、異なる量で最大17のプラスミドを用いて、293T細胞(1×106)をトランスフェクトした。要するに、DNAおよびトランスフェクション試薬を混合し(2 μlトランスIT−LT−1/DNA1 μg)、室温で45分間インキュベートし、細胞に付加した。6時間後、DNAトランスフェクション試薬混合物を、0.3%ウシ血清アルブミンおよび0.01%ウシ胎仔血清を含有するオプチ−MEM(Gibco/BRL, Gaithersburg, Maryland)に入れ換えた。トランスフェクション後異なる時間に、ウイルスを上清から収穫し、MDCK細胞に関して滴定した。ヘルパーウイルスはこの手法に必要とされなかったため、回収されたトランスフェクト体ウイルスを、プラーク精製を伴わずに分析した。
【0070】
ウイルスを産生するプラスミドトランスフェクト化細胞のパーセンテージの確定。トランスフェクション後24時間に、293T細胞を、単一細胞中に0.02%EDTAとともに分散した。次に細胞懸濁液を10倍に希釈し、24ウエルプレート中のMDCK細胞の集密的細胞単層に移した。血球凝集検定により、ウイルスを検出した。
【0071】
免疫染色検定。インフルエンザウイルス感染後9時間目に、細胞をリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、室温で20分間、3.7%パラホルムアルデヒド(PBS中)で固定した。次にそれらを0.1%トリトンX−100で処理し、Neumann等(1997)が記載したように加工処理した。
【0072】
結果
ウイルスRNAセグメント、3つのポリメラーゼサブユニットおよびNPタンパク質のプラスミド駆動発現による感染性ウイルスの生成。精製ビリオンから抽出されたRNPの混合物を用いた細胞のトランスフェクションは感染性インフルエンザ粒子を生じるが、しかしこの戦略は、8つの異なるin vitro生成RNPとともに用いられる場合、効率的であるとは思われない。完全にcDNAから感染性インフルエンザ・ウイルスを産生するために、8つのウイルスRNPをin vivoで生成した。したがって、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターに隣接されたA/WSN/33ウイルスの全長ウイルスRNAに関するcDNAを含有するプラスミドを調製した。原則として、真核生物細胞中へのこれら8つのプラスミドのトランスフェクションは、8つのインフルエンザvRNA全ての合成を生じるべきである。タンパク質発現プラスミドの同時トランスフェクションにより生成されるPB2、PB1、PAおよびNPタンパク質は次に、機能性vRNP中にvRNAを集合させ、これらは複製され、転写されて、最終的に感染性インフルエンザ・ウイルスを生成する(図3)。1×106個の293T細胞をタンパク質発現プラスミド(pcDNA762(PB2)1 μg、pcDNA774(PB1)1 μg、pcDNA787(PA)0.1 μg、およびpCAGGS−WSN−NP0/141 μg)、ならびに以下のRNAポリメラーゼIプラスミドの各々1 μg(pPolI−WSN−PB2、pPolI−WSN−PB1、pPolI−WSN−PA、pPolI−WSN−HA、pPolI−WSN−NP、pPolI−WSN−NA、pPolI−WSN−MおよびpPolI−WSN−NS)でトランスフェクトした。低減量のpcDNA787(PA)を用いることの決定は、過去の観察(Mena et al., 1996)、ならびにウイルス様粒子(VLP)の生成に関する最適条件に関するデータ(示されていない)を基礎にした。293T細胞のトランスフェクション後24時間目に、7×103 pfuのウイルス/mlが上清中に見出された(実験1、表1)が、これは、完全にプラスミドからA型インフルエンザ・ウイルスを産生する逆遺伝子学の能力を初めて実証した。
【0073】
【表1】

【0074】
全てのウイルス構造タンパク質の同時発現を伴うインフルエンザ・ウイルス産生の効率。ウイルスNPおよびポリメラーゼタンパク質の発現はインフルエンザ・ウイルスのプラスミド駆動性生成のために十分であるが、しかし効率は改善され得る可能性もあった。過去の研究では、全てのインフルエンザ・ウイルス構造タンパク質(PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M1、M2およびNS2)の発現は、レポーター・クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子をコードする人工vRNAを含有するVLPを生じた(Mena et al., 1996)。したがってウイルスRNA複製および転写に必要とされるものだけの代わりの構造タンパク質の全相補体の利用可能性は、ウイルス産生の効率を改善し得る。この目的のために、293T細胞を最適量のウイルスタンパク質発現プラスミド:pcDNA762(PB2)およびpcDNA774(PB1)1 μg;pcDNA787(PA)0.1 μg;pPolI−WSN−HA、pCAGGS−WSN−NP0/14およびpCAGGS−WNA15 1 μg;pCAGGS−WSN−M1−2/1 2 μg;pCA−NS2 0.3 μg;ならびにpEP24c(M2)0.03 μg(VLP産生により判定;未発表データ)を、各RNAポリメラーゼIプラスミド1 μgと一緒に用いて、トランスフェクトした(実験2、表1)。同一組のRNAポリメラーゼIプラスミド(PB1遺伝子を除く:これは再集合株ウイルスを生成しようと努力してpPolI−PR/8/34−PB1に置換された)を、PA、PB1、PB2およびNPのみを発現するプラスミド(実験3、表1)あるいは全てのインフルエンザ構造タンパク質を発現するプラスミド(実験4、表1)と一緒に用いて、第二組の細胞をトランスフェクトした。WSNウイルスの産生は、トランスフェクション後24時間(実験1および2、表1)でまたは36時間(データは示されていない)で感知可能程度に異ならなかった。しかしながら、全てのインフルエンザ・ウイルス構造タンパク質が提供された場合、PR/8/34−PB1による10倍より大きいウイルス産生増大が見出された(実験3および4、表1)。PA、PB1、PB2またはNPタンパク質の発現のためのプラスミドのうちの1つを欠くネガティブ対照は、いかなるウイルスも産生しなかった(実験5〜8、表1)。したがって、生成されるウイルスによって、A型インフルエンザ・ウイルス構造タンパク質の発現は、逆遺伝学方法の効率を容易に評価可能程度に改善した。
【0075】
次に、A/PR/8/34−PB1遺伝子を有するウイルスを生成するために用いられるプラスミド組を用いて、細胞のトランスフェクション後のウイルス産生の動態を確定した。3つの実験のうち2つにおいて、トランスフェクション後24時間に、最初にウイルスを検出した。その時間に測定された力価>103 pfu/mlは、トランスフェクション後48時間では>106 pfu/mlに増大した(表2)。ウイルスを産生しているプラスミドトランスフェクト化細胞のパーセンテージを概算するために、トランスフェクションの24時間後にEDTA(0.02%)で293T細胞を処理して、細胞を分散し、次に限定希釈試験を実施した。この実験では、この時点での培養上清中に遊離ウイルスは見出されなかった。結果は、103.3細胞中の1つが感染性ウイルス粒子を生成中である、ということを示した。
【0076】
【表2】

【0077】
NAタンパク質中のFLAGエピトープを含有するインフルエンザ・ウイルスの回収。新規の逆遺伝学系がA型インフルエンザ・ウイルスのゲノム中への突然変異の導入を可能にすることを立証するために、NAタンパク質中のFLAGエピトープを含有するウイルス(Castrucci et al., 1992)を生成した。NAタンパク質およびタンパク質頭部の底のFLAGエピトープの両方をコードするcDNAを含有するRNAポリメラーゼIプラスミド(pPolI−WSN−NA/FL79)を、必要なRNAポリメラーゼIおよびタンパク質発現プラスミドと一緒に用いて、293T細胞をトランスフェクトした。回収ウイルス(PR8−WSN−FL79)が実際にNA−FLAGタンパク質を発現しないことを確証するために、PR8−WSN−FL79またはA/WSN/33野生型ウイルスに感染させた細胞の免疫染色検定を実施した。FLAGエピトープに対するモノクローナル抗体はPR8−WSN−FL79に感染した細胞を検出したが、しかし野生型ウイルスに感染したものを検出しなかった。PR8−WSN−FL79ウイルスの回収は、非タグ化野生型ウイルスに関する場合と同様に効率的であった(データは示されていない)。これらの結果は、新規の逆遺伝学系がA型インフルエンザウイルスゲノム中への突然変異の導入を可能にする、ということを示す。
【0078】
PA遺伝子中に突然変異を含有する感染性インフルエンザ・ウイルスの生成。PA遺伝子中に突然変異を保有するウイルスを産生するために、2つのサイレント突然変異を導入して、制限エンドヌクレアーゼに関する新規の認識配列を作製した(mRNAの位置486にBsp1201および位置1284にPvuII)。従来は、信頼できる選択系の欠如のため、逆遺伝学によりこの遺伝子を修飾することはできなかった。トランスフェクト体ウイルスPA−T846CおよびPA−A1284を回収した。2連続限定希釈により、回収トランスフェクト体ウイルスを生物学的にクローン化した。回収ウイルスが実際にPA遺伝子中の突然変異を有するトランスフェクト体であることを立証するために、逆転写酵素−PCRにより、PA遺伝子に関するcDNAを得た。PA−T846CおよびPA−A1284Cウイルスは、新規導入制限部位の存在により実証されるように、PA遺伝子内に予期された突然変異を有した。同一ウイルス試料のPCRおよび逆転写段階を有さないプライマーは、いかなる生成物も産生できなかった(データは示されていない)が、このことは、PA cDNAが、ウイルスを生成するために用いられるプラスミドの代わりにvRNAに事実上由来することを示す。これらの結果は、ヘルパーウイルスの使用を伴わずに突然変異化遺伝子を有するウイルスが産生され、回収され得る方法を例証する。
【0079】
考察
本明細書中に記載した逆遺伝学系は、完全にクローン化cDNAからA型インフルエンザウイルスを効率的に産生するのを可能にする。BridgenとElliott(1996)も、逆遺伝学を用いて、ブンヤムウエラウイルス(ブンヤウイルス科)を生成しているが、しかしそれは、ネガティブ・センスRNAの3つのセグメントのみを含有し、そしてその産生効率は低く、102 pfu/107細胞であった。ウイルス収率は実験間で異なったが、しかし8つのセグメントを含有するインフルエンザウイルスに関して、一貫して>103 pfu/106細胞を得た。本明細書中に上記した逆遺伝学系の高効率に関しては、いくつかの解釈がある。in vitroでRNPを産生する(Luytjes et al., 1989)代わりに、RNAポリメラーゼIを用いたvRNAの細胞内合成により、そしてウイルスポリメラーゼタンパク質およびNPのプラスミド駆動性発現により、RNPをin vivoで生成した。さらにまた、プラスミドで容易にトランスフェクトされる293T細胞の使用(Goto et al., 1997)は、細胞の大集団がウイルス産生のために必要なプラスミドの全てを受容することを保証した。さらに、増殖中の細胞中で最も豊富に発現される酵素の1つであるRNAポリメラーゼIにより産生される多数の転写体は、当該系の全体的効率に寄与すると思われた。これらの特徴は、vRNAのキャプシド形成、核中のRNPの生成、ならびに新規のウイルスが集合され、放出される細胞膜へのこれらの複合体の輸出のための、それ相当に多数のvRNA転写体および適量のウイルスタンパク質をもたらした。
【0080】
従来確立された逆遺伝学系(Enami et al., 1990; Neumann et al., 1994; Lyutjes et al., 1989; Pleschka et al., 1996)は、ヘルパーウイルス感染を必要とし、したがって少数のトランスフェクト体を膨大な数のヘルパーウイルスから回収させる選択方法を必要とする。このような戦略は、以下のcDNA由来遺伝子のうちの1つを保有するインフルエンザウイルスを生成するために用いられてきた:PB2(Subbarao et al., 1993)、HA(Enami et al., 1991; Horimoto et al., 1994)、NP(Li et al., 1995)、NA(Enami et al., 1990)、M(Castrucci et al., 1995; Yasuda et al., 1994)およびNS(Enami et al., 1991)。選択方法のほとんどが、HAおよびNA遺伝子に適用可能なものを除いて、増殖温度、宿主範囲制限または薬剤感受性によっており、したがって遺伝子産物の機能性分析のための逆遺伝学の有用性を制限する。信頼できる抗体駆動性選択計が利用可能であるHAおよびNA遺伝子に関する場合でも、顕著な増殖欠陥を有するウイルスを産生することは難しい。これに対して、本明細書中に記載した逆遺伝学系は、ヘルパーウイルスを必要とせず、任意の遺伝子セグメント中に突然変異を有する、あるいはいくつかの増殖欠陥を有するトランスフェクト体の生成を可能にする。この利点は、図5で実証されている(突然変異化PA遺伝子を用いたトランスフェクト体ウイルスの回収)。A型インフルエンザウイルスゲノム中に任意の実行可能な突然変異を導入するための技法を有するならば、多数の積年の問題、例えばウイルスゲノムの非翻訳領域における調節配列の性質、ウイルスタンパク質の構造−機能関係、ならびに宿主範囲制限およびウイルス病原性の分子的基礎を処理することができる。
【0081】
不活性化インフルエンザワクチンが利用可能であるが、しかしそれらの効力は、一部は、局所的IgAおよび細胞傷害性T細胞応答を引き出すそれらの限定能力のため、最適以下である。目下進行中の寒冷順応生インフルエンザワクチンの臨床試験は、インフルエンザ症候を引き起こさないがしかし依然として防御免疫を誘導するよう、このようなワクチンが最適に弱毒化される、ということを示唆する(Keitel & Piedra, 1998で再検討)。しかしながら、予備的結果は、これらの生ウイルスワクチンが最良の不活性化ワクチン(Keitel & Piedra, 1998中にレビューされる)より有意に有効であるというわけではなく、さらなる改善の余地を残している、ということを示す。可能性の1つは、上記の逆遺伝学系を用いて寒冷順応ワクチンを修飾することである。あるいは内部タンパク質をコードする遺伝子中に多数の弱毒性突然変異を有する「マスター」A型インフルエンザ株を産生するために逆遺伝学を用いることにより、ゼロから出発し得る。本明細書中に記載した逆遺伝学系の最も興味をそそる用途は、新規のHAまたはNA亜型インフルエンザ・ウイルスを含めた汎発性流行が疑われる場合の弱毒化生ウイルスワクチンの迅速生産に見出され得る。
【0082】
この新規の逆遺伝学系は、ワクチンベクターとしてのインフルエンザ・ウイルスの使用を増強すると思われる。ウイルスは、インフルエンザウイルスタンパク質のほかに、外因性タンパク質または免疫原性エピトープを発現するよう工学処理され得る。例えば第九番目のセグメントとして外因性タンパク質を有するウイルスを生成し(Enami et al., 1991)、そしてそれらを生ワクチンとして用い得る。インフルエンザ・ウイルスは強力な細胞媒介性および体液性免疫応答を刺激するだけでなく、それらは広範な一連のビリオン表面HAおよびNAタンパク質(例えば15のHAおよび9つのNA亜型ならびにそれらの流行病性変異体)ももたらして、同一標的集団の反復免疫感作をも可能にする。
【0083】
ウイルス構造タンパク質およびワクシニア−T7ポリメラーゼ系を有するvRNAを発現することにより、レポーター遺伝子をコードする人工vRNAを保有するインフルエンザVLPが産生されている(Mena et al., 1996)。逆遺伝学を用いて、目下、vRNA転写および複製に必要とされるタンパク質をコードするvRNA(即ちPA、PB1、PB2およびNP)ならびに当該タンパク質をコードするvRNAを含有すVLPを生成し得る。このようなVLPは、有用な遺伝子送達ビヒクルであり得る。ウイルス構造タンパク質をコードする遺伝子のそれらの欠如は、感染性ウイルスがVLP−遺伝子療法後には産生されないことを保障する、ということは重要である。インフルエンザウイルスゲノムが宿主染色体中に組み込まれないため、VLP系は、細胞の短期間形質導入(例えば癌治療のため)のみを要する情況において遺伝子療法に適している。アデノウイルスベクター(Kovesdi et al., 1997)と対比して、インフルエンザVLPはHAおよびNA変異体の両方を含有して、標的集団の反復治療を可能にする。
【0084】
オルソミクソウイルス科は、A、BおよびC型インフルエンザ・ウイルス、ならびに近年分類されたトゴトウイルスを含む。本明細書中に記載したクローン化cDNAから完全に感染性A型インフルエンザ・ウイルスを生成するための戦略は、任意のオルソミクソウイルスに、そしておそらくはその他のセグメント化ネイティブ・センスRNAウイルス(例えばブンヤウイルス科、アレナウイルス科)にも同様に当てはまる。技術的制限なしにウイルスゲノムを操作する能力は、ウイルス生活環およびそれらの調節、ウイルスタンパク質の機能およびウイルス病原性の分子メカニズムの研究のための深い含蓄を有する。
【0085】
実施例2
インフルエンザA/Puerto Rico/8/34のための逆遺伝学系を開発するために、製造者のプロトコールに従って、RNeasy Mini kit (Qiagen)を用いて、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)、Madison高増殖変種(PR8HG)の尿膜液からウイルスRNAを抽出した。cDNAを、MMLV-RTase(Promega)とUni12プライマーを用いて合成した。このcDNAを以下を用いて、PCRにより一晩増幅した:
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
DNAポリメラーゼ:pfu ネーティブDNAポリメラーゼ(Stratagene)。
上記PCR産物を、ゲル電気泳動により分離し、そしてゲル抽出キット(Qiagen)を用いてアガロース・ゲルから抽出した。抽出した遺伝子をTakaraライゲーション・キットver.II(Takara)を用いてpT7Blueブラント・ベクター(Novagen)内にライゲートした。5時間後、ライゲートされた遺伝子を、JM109(PB2, M,及びNS遺伝子)又はDH5alpha(PA, PB1,及びNP)内に遺伝子移入した。各遺伝子について6つのコロニーを、8時間TB中で培養した。プラスミドを、細菌コロニーから抽出し、そして遺伝子当り4つのコロニーを配列決定した。
【0089】
PTBlue内のPA、NP、M、及びNS遺伝子を、Bsm BI酵素(New England Biolabs)により切り出した。PB1遺伝子を、Bsa I (New England Biolabs)により切り出した。切り出した遺伝子を、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターとマウスRNAポリメラーゼIターミネーターであってBsm BIで消化されたものを含むpPolIRベクターで一晩ライゲートした。PT7Blue内のPB2遺伝子の前断片を、Bsr GI (New England Biolabs)とBam HI (Roche)により切り出し、そして後断片を、Bsr GI (New England Biolabs)とSpe I (Roche)により切り出した。切り出した断片を混合し、そしてBsa Iで消化した。6時間後、消化された断片を、PCR増幅キット(Qiagen)を用いて精製し、そしてpPolIRベクターのBsm BI部位間に一晩ライゲートした。
【0090】
ライゲートされたPB1、PA、NP、M、及びNS-pPolIR遺伝子を、一晩、JM109 (M及びNS遺伝子)又はDH5alpha(PB1、PA、及びNP遺伝子)を形質転換するために使用した。形質転換された細菌のコロニーを、LB中で一晩培養した。ライゲートされたPB2-pPolIRを、一晩JM109を軽質転換しるために使用した。
【0091】
プラスミドを、細菌培養液から抽出し、そして遺伝子挿入物を酵素消化により確認した。PB2-PolIRにいり軽質転換された細菌のコロニーを。8時間LB中で培養した。次いで、プラスミドを、抽出し、そして遺伝子挿入を酵素消化により確認した。pPolI構築物の全てを、不所望の突然変異が含んでいないことを保証するために、配列決定した。
【0092】
PR8HGにためのpPolIR構築物を、A/WSN/33(WSN)-HA及びNA、A/Hong Kong/483/97(HK)-HAavir及びNA、又はA/Kawasaki/01(Kawasaki)-HA及びNA PolI構築物、及びポリメラーゼ・タンパク質及びA/WSN/33にNPのための4タンパク質-発現構築物により、293Tヒト胚性腎細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクトされた293T細胞からの上清を、(10−7まで薄めずに)逐次希釈し、そして9日齢の有胚ニワトリ卵の尿膜腔内に感染させた。感染した卵の尿膜液を収穫し、そしてそれらのウイルス力価をHAアッセイにより試験した(表3)。
【0093】
【表5】

【0094】
HA陽性サンプル(10−2におけるWSN-HA NAをもつウイルス、及び非希釈HK-HAavir NAをもつウイルス)を、10−2から10−8まで逐次希釈し、そして100μlの各希釈液を、有胚ニワトリ卵内に感染させた。感染した卵の尿膜液を収穫し、そしてそれらのウイルス力価をHAアッセイにより試験した(表4)。プラスミドから調製したA/Puerto Rico/8/34(H1N1)の50%卵感染投与量(EID50)は、1010.33/mlであり、そしてHA力価は1:3200であった。
【0095】
A/Hong Kong/213/2003(H5N1)からのHA及びNA遺伝子、並びにPR8HGからのA型インフルエンザ・ウイルス遺伝子の残余を有する組換えウイルスを調製した。組換えウイルスの力価は1010.67EID50/mlであり、そしてHA力価は1:1600であった。
【0096】
【表6】

【0097】
PR8遺伝子の配列:
【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
【表11】

【0103】
【表12】

【0104】
【表13】

【0105】
【表14】

【0106】
【表15】

【0107】
【表16】

【0108】
【表17】

【0109】
【表18】

【0110】
【表19】

【0111】
【表20】

【0112】
【表21】

【0113】
【表22】

【0114】
【表23】

【0115】
【表24】

【0116】
インフルエンザ・ウイルスA/Hong Kong/213/2003(H5N1, HK213)は、ニワトリ内で全身で複製し、致死的感染を引き起こす。さらに、このウイルスは、ニワトリの胚に対して致死性である。したがって、その表面タンパク質は、最近広まっている病原性トリ・インフルエンザ・ウイルスに密接に関連するけれども、HK213は、ワクチン株としては使用できない。なぜなら、有胚ニワトリ卵内でそれを増殖させる試みは、低品質の羊膜液の生産をもたらすからである。さらに、ワクチン製造におけるこの高く有害なウイルスの使用は、ワクチン製造従事者にとって安全でない。マスター・ウイルス株としてA/PR/8/34を使用することの実行可能性を試験するために、(多数の塩基性アミノ酸を含有する)HK213のヘマグルチニン(HA)遺伝子の開裂部位を、毒性から無毒性表現型に(RERRRKKR(配列番号9)から−TETRまで)突然変異させた。突然変異したHA遺伝子を含むウイルスは、ニワトリにおいて非致死性の、局所的感染を作り出した。さらに、突然変異したウイルスは、ニワトリの胚に対して非致死性であった。したがって、有胚卵内での突然変異したウイルスの増殖は、高品質の尿膜液をもたらし、そしてこの弱毒型において、当該ウイルスはワクチン製造にとって安全である。
【0117】
ノイラミニダーゼ(NA)及びHK213からの突然変異HA遺伝子、並びに高力価A/PR/8/34(H1N1,HG-PR8)ウイルス(実施例2)からの残余遺伝子の全てを含む組換えウイルスであって、卵内で他のA/PR/8/34 PR8株よりも10倍良好に増殖する(1010EID50/ml;HA力価:1:8,000)ものを、有胚ニワトリ卵内で生成した。最近広まっている病原性トリ・インフルエンザ・ウイルスに関連する表面タンパク質を発現するこの組換えウイルスは、有胚ニワトリ卵内で高力価に増殖した(図4)。したがって。HG−PR8のHA及びNA遺伝子を、インフルエンザ・ウイルスの最近広まっている株のもとで置き換えることは、安全に製造されうるワクチン株をもたらし、そしてマスター・ワクチン株としてのPR8−HGのしようを実証する。
【0118】
参考文献
【表25】

【0119】
【表26】

【0120】
【表27】

【0121】
出版物、特許および特許出願は全て、参照により本明細書中で援用される。上記の明細書中で、そのある種の好ましい実施形態に関連して本発明を説明し、多数の詳細を例示の目的のために記述してきたが、本発明がさらなる実施形態を受け入れ可能であり、そして本明細書中に記載した詳細のあるものは、本発明の基本原理を逸脱しない限りかなり変更され得る、ということは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1. 確立された逆遺伝学系の模式図である。RNPトランスフェクション法(A)では、in vitro合成vRNAを用いて精製NPおよびポリメラーゼタンパク質をRNPに集合させる。細胞をRNPでトランスフェクトし、その後ヘルパーウイルス感染させる。RNAポリメラーゼI法(B)では、RNAポリメラーゼIプロモーター、救済されるべきvRNAをコードするcDNA、およびRNAポリメラーゼIターミネーターを含有するプラスミドを細胞中にトランスフェクトする。RNAポリメラーゼIによる細胞内転写は、合成vRNAを産生し、これはヘルパーウイルスによる感染時に子孫ウイルス粒子中に包装される。両方法を用いて、ヘルパーウイルス集団から、トランスファクタント・ウイルス(即ちクローン化cDNA由来のRNAを含有するもの)を選択する。
【図2】図2. RNAポリメラーゼI構築物の生成の模式図。インフルエンザウイルス由来のcDNAをPCRにより増幅し、BsmBIで消化し、そしてpHH21ベクターのBsmBI部位中にクローン化した(E. Hoffmann, Ph.D. thesis, Justus, Liebig-University, Giessen, Germany)が、これは、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター(P)およびマウスRNAポリメラーゼIターミネーター(T)を含有する。ターミネーター配列の上流のチミジンヌクレオチド(*T)は、インフルエンザウイルスRNAの3‘末端を表す。A型インフルエンザウイルス配列は、太字で示されている(配列番号29〜40)。
【図3】図3. セグメント化ネガティブ−センスRNAウイルスを生成するための提唱された逆遺伝学法。RNAポリメラーゼIプロモーター、8つのウイルスRNAセグメントの各々に関するcDNA、およびRNAポリメラーゼIターミネーターを含有するプラスミドを、タンパク質発現プラスミドと一緒に、細胞中にトランスフェクトする。感染性ウイルスはPA、PB1、PB2およびNPを発現するプラスミドを用いて精製し得るが、しかし残りの構造タンパク質(大括弧内に示される)全ての発現は、生成されるウイルスによってウイルス産生の効率を増大する。
【図4】図4. 各種インフルエンザ・ウイルスの力価。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜8のいずれか1によりコードされる対応のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する、インフルエンザ・ウイルスHA、NA、PB1、PB2、PA、NP、M、NSをコードする核酸セグメント若しくはその部分、又は当該核酸セグメントの相補体を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1〜8のいずれか1によりコードされる対応のポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有する、インフルエンザ・ウイルスHA、NA、PB1、PB2、PA、NP、M、又はNSをコードする核酸セグメント、又は当該核酸セグメントの相補体を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記単離ポリヌクレオチドが、配列番号1〜8のいずれか1と実質的に同一のヌクレオチド配列を有する、請求項1又は2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記単離ポリヌクレオチドが、中程度のストリンジェンシー条件下、配列番号1〜8のいずれか1又はその相補体にハイブリダイズする、請求項1又は2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
プロモーターをさらに含む、請求項1又は2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記プロモーターが、RNAポリメラーゼIプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T3プロモーター又はT7プロモーターである、請求項5に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜8のいずれか1によりコードされる対応のポリペプチドに対して1以上の保存的置換をもつポリペプチドをコードする、請求項1又は2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
複数のインフルエンザ・ウイルス・ベクターを含む組成物であって、以下の:
a)転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;又は転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、少なくとも1つのベクターは、転写終結配列に連結される請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドに連結されるプロモーターを含む;ならびに
b)インフルエンザウイルスPAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB1をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;又はインフルエンザウイルスNPをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから;そして任意に、インフルエンザウイルスHAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスNAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスM1をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスM2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;又はインフルエンザウイルスNS2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、場合により、少なくとも1つのベクターは、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドに操作可能的に連結されるプロモーターを含む;
を含む前記組成物。
【請求項9】
複数のインフルエンザ・ウイルス・ベクターを含む組成物であって、以下の:
a)転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるNBおよびNAに関するインフルエンザウイルスcDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;又は転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、少なくとも1つのベクターが、転写終結配列に連結される請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドに連結されたプロモーターを含む;ならびに
b)インフルエンザウイルスPAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB1をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスNPをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから;そして任意に、インフルエンザウイルスHAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスNAおよびNBをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスMをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;又はインフルエンザウイルスNS2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターから選択される少なくとも2つのベクター、ここで、場合により、少なくとも1のベクターは、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドに操作可能的に連結されるプロモーターを含む、
を含む前記組成物。
【請求項10】
前記HAがA型HAである、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記HAがB型HAである、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項12】
前記a)の複数のベクターがRNAポリメラーゼIプロモーター又はRNAポリメラーゼIIプロモーターを含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項13】
前記RNAポリメラーゼIプロモーターが、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記a)のベクターの全てがRNAポリメラーゼIIプロモーターを含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項15】
前記a)の各々のベクターが別個のプラスミド上に存在する、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項16】
前記b)の各々のベクターが別個のプラスミド上に存在する、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項17】
前記b)のベクターの各々がRNA転写終結配列をさらに含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項18】
転写終結配列に連結される3’インフルエンザ・ウイルス非コード配列を含む3’インフルエンザ・ウイルス配列に連結される着目のcDNAに連結される5’インフルエンザ・ウイルス非コード配列を含む5’インフルエンザ・ウイルス配列に連結されるプロモーターを含むベクターをさらに含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項19】
前記着目のcDNAがセンス配向で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記着目のcDNAがアンチセンス配向で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記着目のcDNAが病原体の免疫原性ポリペプチドまたはペプチド、あるいは治療用ポリペプチドまたはペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
感染性インフルエンザウイルスを産生するのに有効な量で請求項8〜21のいずれか一項に記載の組成物と細胞を接触させることを含む、インフルエンザ・ウイルスの製造方法。
【請求項23】
前記ウイルスを単離することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法により得られるウイルス。
【請求項25】
遺伝子デリバリー・ビヒクルの製造方法であって、インフルエンザウイルスを産生するのに有効な量で請求項18〜21のいずれか一項に記載の組成物と細胞を接触させ、そして当該ウイルスを単離することを含む前記方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法により得られるウイルス。
【請求項27】
請求項8〜21のいずれか一項に記載の組成物と接触される細胞。
【請求項28】
請求項24又は26に記載のウイルスに感染される細胞。
【請求項29】
プロモーター、及びインフルエンザ・ウイルス・タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸セグメントを含むベクターであって、当該インフルエンザ・ウイルス・タンパク質は、配列番号1によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスPA、配列番号2によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスPB1、配列番号3によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスPB2、配列番号4によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスNP、配列番号7によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスHA、配列番号8によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスNA、配列番号5によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザウイルスM、及び/又は配列番号6によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の活性を有するインフルエンザ・ウイルスNSである、前記ベクター。
【請求項30】
インフルエンザウイルスの製造方法であって、インフルエンザ・ウイルスを産生するために、転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB1 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスPB2 cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスHA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNP cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNA cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスM cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;転写終結配列に連結されるインフルエンザウイルスNS cDNAに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB1をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザウイルスPB2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;及びインフルエンザウイルスNPをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターと細胞を接触させることを含み、ここで、ウイルスcDNAを含む少なくとも1つのベクター内のプロモーターが、転写終結配列に連結される請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドに連結されるプロモーターを含む、前記方法。
【請求項31】
インフルエンザ・ウイルスHAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザ・ウイルスNAをコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザ・ウイルスM1をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;インフルエンザ・ウイルスM2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクター;及びインフルエンザ・ウイルスNS2をコードするDNAセグメントに操作可能的に連結されるプロモーターを含むベクターをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
転写終結配列に連結される3’インフルエンザ・ウイルス非コード配列を含む3’インフルエンザ・ウイルス配列に連結される着目のcDNA若しくはその断片に連結される5’インフルエンザ・ウイルス非コード配列を含む5’インフルエンザ・ウイルス配列に連結されるプロモーターを含むベクターをさらに含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記着目のcDNAが病原体の免疫原性ポリペプチドまたはペプチド、あるいは治療用ポリペプチドまたはペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記着目のcDNAがセンス配向で存在する、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記着目のcDNAがアンチセンス配向で存在する、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号7によりコードされるポリペプチドに相当するHAをコードするものではなく、そして/又は配列番号8によりコードされるポリペプチドに相当するNAをコードするものでもない、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
ウイルスを単離することをさらに含む、請求項30〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項30〜37のいずれか一項に記載の方法により得られるウイルス。
【請求項39】
請求項38記載のウイルスと接触される細胞。
【請求項40】
請求項38記載のウイルスに感染される細胞。
【請求項41】
病原体に対して個体を免疫感作するための方法であって、個体を免疫感作するために有効な量の請求項38記載のウイルスを個体に投与することを含む前記方法。
【請求項42】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに相当するポリヌクレオチドを含む単離インフルエンザ・ウイルス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−518395(P2007−518395A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533439(P2006−533439)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016680
【国際公開番号】WO2004/112831
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500484146)ウィスコンシン・アラムナイ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】