説明

ワクチン

本発明は、改良された、カルボジイミド縮合反応の実施方法に関する。特に、本発明は、カルボジイミド縮合を用いた糖類(特にチフス菌(Salmonella typhi)由来のVi莢膜糖類)とタンパク質とのコンジュゲート化に関する。本発明はさらに、本発明の糖類−タンパク質コンジュゲートを含むように作製できる免疫原性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボジイミド縮合反応を行う改良法に関する。具体的には、本発明はカルボジイミド縮合を用いた糖類およびタンパク質のコンジュゲート化に関する。本発明はまた、本発明の糖類−タンパク質コンジュゲートを含むように作製できる免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌莢膜多糖の使用は、細菌性疾患の予防のため、長年にわたり免疫学において広く使われてきた。しかしながら、そのような使用に関連する問題は、免疫応答のT非依存性の性質である。これらの抗原はすなわち、幼児において免疫抗原性が低い。この問題は多糖抗原をタンパク質キャリア(Tヘルパーエピトープの供給源)にコンジュゲート化することによって克服されており、これを用いて、生後1年でさえも、T依存性免疫応答を誘発することができる。
【0003】
さまざまなコンジュゲート化技術は当技術分野において公知である。コンジュゲートは米国特許第4365170号(Jennings)および米国特許第4673574号(Anderson)に記述の直接還元的アミノ化法によって調製することができる。その他の方法は欧州特許第0−161−188号、欧州特許第208375号および欧州特許第0−477508号に記述されている。または、コンジュゲート化法は1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いた糖類のヒドロキシル基の活性化に依って、シアン酸エステルを形成させてもよい。活性化糖類をこのように直接的にまたはスペーサー(リンカー)基を介してキャリアタンパク質のアミノ基にカップリングさせることができる。例えば、シアン酸エステルをヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(ADHまたはAH)とカップリングさせることができ、アミノ誘導体化された糖類を、タンパク質キャリアのカルボキシル基を介したカルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)化学反応によってキャリアタンパク質にコンジュゲート化する。そのようなコンジュゲートはPCT公開出願の国際公開公報第93/15760号(Uniformed Services University)ならびに国際公開公報第95/08348号および国際公開公報第96/29094号に記述されている。Chu C. et al Infect. Immunity, 1983 245 256も参照されたい。
【0004】
一般に、以下のタイプのタンパク質キャリアの化学基を、カップリング/コンジュゲート化に使用することができる:
(A)カルボジイミド化学反応を用いて糖類成分の天然のまたは誘導体化されたアミノ基にコンジュゲート化できる、カルボキシル(例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸による);
(B)カルボジイミド化学反応を用いて糖類成分の天然のまたは誘導体化されたカルボキシル基にコンジュゲート化できる、アミノ基(例えばリジンによる);
(C)スルフヒドリル(例えばシステインによる);
(D)ヒドロキシル基(例えばチロシンによる);
(E)イミダゾリル基(例えばヒスチジンによる);
(F)グアニジル基(例えばアルギニンによる);および
(G)インドリル基(例えばトリプトファンによる)。
【0005】
糖類では、一般に以下の基:OH、COOHまたはNH2をカップリングに使用することができる。アルデヒド基は過ヨウ素酸塩、酸加水分解、過酸化水素などの当技術分野において公知の異なる処理の後に作出することができる。
【0006】
直接的カップリング法
糖類−OH + CNBrまたはCDAP −−−−−> シアン酸エステル + NH2−タンパク質 −−−−> コンジュゲート
糖類−アルデヒド + NH2−タンパク質 −−−−> シッフ塩基 + NaCNBH3 −−−−> コンジュゲート
糖類−COOH + NH2−タンパク質 + EDAC −−−−> コンジュゲート
糖類−NH2 + COOH−タンパク質 + EDAC −−−−> コンジュゲート。
【0007】
スペーサー(リンカー)を介した間接的カップリング法
糖類−OH + CNBrまたはCDAP −−−> シアン酸エステル + NH2 −−−−NH2 −−−−> 糖類−−−−NH2 + COOH−タンパク質 + EDAC −−−−−> コンジュゲート
糖類−OH + CNBrまたはCDAP −−−−> シアン酸エステル + NH2−−−−−SH −−−−−> 糖類−−−−SH + SH−タンパク質(露出したシステインを有する天然タンパク質または例えばSPDPによるタンパク質のアミノ基の修飾後に得られる)−−−−−> 糖類−S−S−タンパク質
糖類−OH + CNBrまたはCDAP −−−> シアン酸エステル + NH2−−−−SH −−−−−−−> 糖類−−−−SH + マレイミド−タンパク質(アミノ基の修飾)−−−−> コンジュゲート
糖類−OH + CNBrまたはCDAP −−−> シアン酸エステル + NH2−−−−SH −−−−−−−> 糖類−−−−SH + ハロアセチル化−タンパク質−−−−> コンジュゲート
糖類−COOH + EDAC + NH2−−−−−NH2 −−−> 糖類−−−−−−NH2 + EDAC + COOH−タンパク質 −−−−> コンジュゲート
糖類−COOH + EDAC + NH2−−−−SH −−−−−> 糖類−−−−SH + SH−タンパク質(露出したシステインを有する天然タンパク質または例えばSPDPによるタンパク質のアミノ基の修飾後に得られる)−−−−−> 糖類−S−S−タンパク質
糖類−COOH + EDAC + NH2−−−−SH −−−−−> 糖類−−−−SH + マレイミド−タンパク質(アミノ基の修飾)−−−−> コンジュゲート
糖類−COOH + EDAC + NH2−−−−SH −−−>糖類−SH + ハロアセチル化−タンパク質 −−−−> コンジュゲート
糖類−アルデヒド + NH2−−−−−NH2 −−−−> 糖類−−−NH2 + EDAC + COOH−タンパク質 −−−−> コンジュゲート。
【0008】
本明細においてEDACを記載する場合、任意の適切なカルボジイミドを代わりに使用できることに留意されたい。
【0009】
見て分かるとおり、カルボジイミド化学反応(例えば、EDACを用いる)は、天然に存在しうるかまたは誘導体化によって容易に挿入されうる糖類および/またはタンパク質の基を利用するので、コンジュゲート化反応にとって非常に都合が良い。それはまた、好都合なことに、ペプチド結合を通じて成分を連結する。
【0010】
カルボジイミド(RN=C=NR’)は、アレン構造を有する不飽和化合物である(Nakajima and Ikada 1995 Bioconjugate Chem. 6 :123-130;Hoare and Koshland 1967 JBC 242:2447-2453)。この化合物はその反応pH(4.5〜6.5)で比較的不安定であり、それ故に糖類/タンパク質/カルボジイミドコンジュゲート化反応の全成分は当技術分野において一緒に加えられる傾向がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、コンジュゲート化の対象となる糖類およびタンパク質の性質に応じ、ある種の反応成分を混合物にゆっくり加えることで、ワクチン用に最終コンジュゲートの良好な特性を達成できることを見出した。そうすることで、コンジュゲート中の糖類収量、コンジュゲートの滅菌濾過性、コンジュゲート化の良好な制御、再現性の容易さ、および/または成分内架橋の阻止などの、1以上の利益/改善を実現することができる。
【0012】
したがって、1つの実施形態ではカルボジイミド縮合化学反応を用いてタンパク質キャリアに糖類をコンジュゲート化する方法であって、該糖類が(例えばその反復単位の一部として)アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、またはアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むように誘導体化されており、該タンパク質キャリアがアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、またはアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むように誘導体化されており、該方法は以下のステップ:
(I)該タンパク質キャリアがアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該糖類がアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
(a)該糖類と、コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートとを混合するステップ、および
(b)必要なタンパク質キャリアのアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ;
(II)該糖類がアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該タンパク質キャリアがアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
(a)該タンパク質キャリアと、コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートとを混合するステップ、および
(b)必要な糖類のアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ;
(III)該糖類がアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該タンパク質キャリアがアミノ基とカルボキシル基の両者を含む場合、
(a)該タンパク質キャリアと該糖類とを混合するステップ、および
(b)コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水性媒体中で糖類およびタンパク質をコンジュゲート化できる限り、任意の適切なカルボジイミドを使用することができる。1つの実施形態では、カルボジイミドはEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド)[EDCとしても知られる]であることができ、またはそれはEDAC以外のカルボジイミドであることができる。任意の実施態様において本明細書でEDACまたはEDCに言及する場合、任意のカルボジイミドを代わりに使用できることが想定される。
【0014】
本明細書の全体を通して「糖類」という用語は、多糖またはオリゴ糖を示すことができ、この両者を含む。それはリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)を示すことができる。使用前に、多糖(細菌多糖などの)を供給源の菌株(例えば、細菌の)から単離してもよく、または供給源の菌株から単離し、公知の方法(例えば欧州特許第497524号および欧州特許第497525号;Shousun Chen Szu et al. - Carbohydrate Research Vol 152 p7-20 (1986)を参照のこと)により、例えばマイクロ流動化によりある程度までサイズ分類(sized)してもよい。多糖は多糖サンプルの粘性を低減するためおよび/またはコンジュゲート化生成物の濾過性を向上するためサイズ分類されてもよい。オリゴ糖は反復単位の数が少なく(典型的には5〜30の反復単位)、典型的には加水分解された多糖である。
【0015】
「タンパク質キャリア」という用語は、小さなペプチドと大きなポリペプチド(>10kDa)の両者を網羅するよう意図される。明らかに大きなポリペプチドは、何の修飾もなしに反応性アミノ基と反応性カルボキシル基の両者を含む可能性がいっそう高い。
【0016】
本発明の目的で、「天然の(native)多糖」とは、糖類のサイズを低減することが目的のプロセスに供されていない糖類をいう。多糖は、通常の精製手順の間にサイズがわずかに減るようになることがある。そのような糖類は依然として天然である。多糖がサイズ分類技術に供されている場合に限り、多糖は天然であると見なされないであろう。
【0017】
本発明の目的で、「×2倍以下にサイズ分類される」とは、糖類のサイズを減らすが天然多糖のサイズの半分以上のサイズを保持するよう意図される工程に、糖類が供されることを意味する。×3、×4などは同じように解釈されるべきである。すなわち、多糖のサイズを減らすが天然多糖のサイズの3分の1以上、4分の1以上などのサイズを保持するよう意図される工程に、糖類が供される。
【0018】
最終成分の全アリコートの添加のための方法ステップ(b)における35秒間〜6時間は、50秒間〜5時間、1分間〜4時間、2分間〜3時間、3分間〜2時間、4〜60分間、5〜50分間、6〜40分間、7〜30分間または8〜20分間とすることができる。それは1分間〜5時間、10分間〜4時間、20分間〜3時間、30分間〜2時間、40〜90分間、または50〜70分間であってもよい。この時間は、コンジュゲート化される正確な糖類およびタンパク質に準じて調整することができる。
【0019】
1つの実施形態では、(例えば、カルボジイミド、糖類またはタンパク質の)最終成分のアリコートを前記時間の間に一定速度で反応混合物に添加する(これは一定速度で作動するポンプを用いて達成されることが好都合である)。または、それは前記時間にわたって段階的に添加されてもよい。これはさまざまな形で行うことができるが、一般にアリコートの一部分が前記時間の全体を通して添加されるべきである。例えば、アリコートの少なくとも4分の1を前記時間の前半にわたって添加し、アリコートの少なくとも4分の1を前記時間の後半にわたって添加してもよい。例えば、mLまたはmgで測定されるアリコート「a」の総量が前記時間の全体を通して4〜100の段階(「s」)において添加されてもよい。1つの実施形態では、均一な量(a/s)が全ての段階で導入されるように、前記段階は設定される。1つの実施形態では、前記段階は前記時間「p」の全体を通して(秒で)均一に間隔をあけられる。すなわち、1つの段階が前記時間「p」のゼロ時点に行われる場合、続く各段階はp/(s−1)の時点で行われうる。ステップ(b)において添加される最終成分のアリコートの量は、所望の時間内での反応物へのアリコートの添加の容易さという観点で調整することができる。カルボジイミドは水溶液(反応物に添加される前に典型的にはpH7.5に緩衝化されている)としてまたは固体粉末(EDACは例えば、水媒体に高溶解性である)として添加されてもよい。もちろん、カルボジイミドが反応物に添加される最後の成分である場合(状況III、ステップ(b))、ゆっくりと溶解するカルボジイミドが使用されてもよく、したがって粉末のアリコート全体が反応物に一度に添加されるが、しかしそれは、アリコートが反応に利用可能とされる所望の時間と一致する速度で溶解する。
【0020】
タンパク質および/または糖類がアミノまたはカルボキシル基を持っていない(あるいはこれらのうちの一方を持っているにすぎない)場合、それを誘導体化して、一方をそれに与えても(またはそれがまだ持っていないもう一方をそれに与えても)よい。例えば、反応性ヒドロキシル基のみを含む糖類(例えば、髄膜炎菌(meningococcal)血清型A莢膜糖類)の場合、そのような基はEDAC縮合を実行できるように、アミノまたはカルボキシル基に対する誘導体化に使用されるはずである。これは反復サブユニット内で行われてもよく、または糖類分子の末端にのみ存在する基であってもよい。
【0021】
誘導体化が行われる場合、その成分を部分的にだけ誘導体化することが有益でありうることに留意されたい。反復サブユニットを有する糖類の場合、標的エピトープは各反復の中に存在しうる。それ故に、部分的誘導体化が行われる場合(この場合、例えば標的とされる反応性基の0.5〜20、1〜15、3〜12、または5〜10%が実際に誘導体化されることを意味する)、これはエピトープの大部分を保存しているという利点、および過度の架橋結合を阻止するという利点を有しうる。
【0022】
糖類またはタンパク質がアミノまたはカルボキシル基だけを既に持っている場合(例えば、本来、カルボキシル基を持っているが、アミノ基を持っていないチフス菌(Salmonella typhi)由来のVi糖類)、誘導体化を行って、もう一方の種の基(すなわち、Viの場合にはアミノ基)をそれに与えることができる。しかしながら、誘導体化は部分的でありうるので、この行為はI型からIII型までの本発明の好ましい反応を変えうることに留意されたい。例えば、Vi糖類がアミノ基とカルボキシル基の両者を含んだタンパク質キャリアにコンジュゲート化される場合、状況Iではステップ(b)においてゆっくりタンパク質のアリコートを添加する。Vi糖類のカルボキシル基がアミノ基で部分的に誘導体化されている場合、それはカルボキシル基とアミノ基の両者を持っているはずであり、したがってステップ(b)においてゆっくりカルボジイミドのアリコートを添加する状況IIIが最も適切になる。
【0023】
誘導体化はヘテロまたはホモ二官能性リンカーの付加を介して行われてもよい。それは糖類−タンパク質コンジュゲート化ステップについて上述したのと同様の化学反応(例えば、CDAPまたはカルボジイミド化学反応)によって行われてもよい。リンカーは4〜20、4〜12、または5〜10炭素原子を有することができる。それは2つの反応性アミノ基、2つの反応性カルボキシル基、または各々の1つ(例えば、ヘキサンジアミン、6−アミノカプロン酸、またはアジピン酸ジヒドラジド)を有することができる。典型的には、誘導体化は、誘導体化の対象となる糖類および/またはタンパク質キャリアに大過剰のリンカーを反応させることにより行われる。これにより最小限の成分内架橋結合で誘導体化を行うことが可能になる(これはそれ以外には、例えば、糖類のカルボキシル基がカルボジイミド縮合によってアミノ基で誘導体化されている場合に可能であるかもしれない)。過剰なリンカーはダイアフィルトレーション法などの技術を用いて容易に除去される。
【0024】
1つの実施形態では、糖類はその反復単位の一部分として反応性ヒドロキシル基を有し、リンカー上のアミノ基により(例えば、CDAP化学反応を用いて)部分的に誘導体化されている。別の実施形態では、糖類はその反復単位の一部分として反応性アミノ基を有し、リンカー上のカルボキシル基により(例えば、カルボジイミド化学反応を用いて)部分的に誘導体化されている。さらなる実施形態では、糖類はその反復単位の一部分として反応性カルボキシル基を有し、リンカー上のアミノ基により(例えば、カルボジイミド化学反応を用いて−例えば、部分的誘導体化ステップにおいてカルボジイミドは0.01〜0.5、0.015〜0.1、0.02〜0.075、または0.025〜0.05 mgカルボジイミド/mg糖類で存在する)部分的に誘導体化されている。
【0025】
コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートは(本発明の反応のステップ(a)または(b)にあろうとも)、0.01〜3、0.05〜2、または0.09〜1mgカルボジイミド/mg糖類(例えば0.07〜0.25、または0.1〜0.2 mg/mg糖類)である。これらの数(および本明細書に挙げるカルボジイミドの量)はカルボジイミドであるEDACに関して計算されるが、これらの数はその他任意のカルボジイミドが使用される場合、その範囲の数に(その他のカルボジイミドの分子量)/(EDACの分子量)を乗じることによって適宜調整されてもよい。
【0026】
一般に、糖類は本発明の方法のなかでステップ(b)において最終濃度0.5〜50mg/mLで存在することができる。これは糖類のサイズおよび性質、ならびに任意の誘導体化の程度に依るであろう。例えば、オリゴ糖の場合にはいっそう高い濃度が必要とされるが、大きな多糖の場合にはずっと低い濃度がいっそう適しているであろう。それがアミノまたはカルボキシル基で誘導体化されているうちの高い側(high end)に向けられるならば、任意の架橋結合の可能性を減らすため、いっそう低い濃度が適しているかもしれない。タンパク質キャリアはステップ(b)において最終濃度1〜50mg/mLで存在することができる。
【0027】
本発明の方法のなかでタンパク質キャリアと糖類との当初比率は、5:1〜1:5、4:1〜1:1、または3:1〜2:1(w/w)とすることができる。この場合もやはり、これは糖類のサイズおよび性質、ならびに任意の誘導体化の程度に依るであろう。
【0028】
塩条件(例えば、NaCl)も糖類/タンパク質の性質によって変えられてもよい。通常、およそ0.2M NaClが本発明の方法のステップ(b)において存在してもよいが、これは0〜2M、0.1〜1Mまたは0.2〜0.5Mであってもよい。
【0029】
本発明の方法のステップ(b)におけるpHという観点で、反応pHは、カルボジイミドが活性化される任意のpH、例えば、pH 4.5〜6.5、pH 4.7〜6.0、またはpH 5〜5.5であってよい。このpHは典型的には、必要に応じて酸/塩基の添加により反応の全体を通して維持される。EDACは、通常、pH 7.5で安定であるけれども、コンジュゲート化がさらに高いpHで行われる必要がある場合、反応中間体を安定に保つことが知られている化合物(N−ヒドロキシスクシンイミドなど)がステップ(b)において反応物の中に存在してもよく、その場合にはステップ(b)における反応pHはpH 4.5〜7.5に維持されうる。
【0030】
本発明の方法のステップ(b)の間の反応温度は、4〜37℃、10〜32℃、17〜30℃、または22〜27℃とすることができ、典型的には反応の全体を通して維持される。
【0031】
本発明の方法のなかで、ステップ(b)においてアリコート全体が添加されたら、反応は典型的には、さらに10分間〜72時間、20分間〜48時間、30分間〜24時間、40分間〜12時間、50分間〜6時間、または1〜3時間、例えば10〜120、10〜80、10〜50、20〜40、または25〜30分間維持される。反応が完了したら、pHを7.5〜9に(N−ヒドロキシスクシンイミドが存在する場合にはこの高い方の側に)調整して、カルボジイミドの安定なpH域に戻す。
【0032】
コンジュゲート化されたら、糖質−タンパク質コンジュゲートを未反応成分、遊離糖類などから、そのコンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィーカラム(例えばSephacryl S400HR, Pharmacia)に注入することによって精製することができる。これは典型的には、2〜8℃で行われる。コンジュゲートを滅菌濾過し、その後で保存してもよい。最終的に、有効用量(例えば1〜20、2〜15、または3〜10μg糖類/用量)の糖質−タンパク質コンジュゲートを製薬上許容される賦形剤(例えば塩またはアジュバント)とともに製剤化して、免疫原性組成物またはワクチンを製造することができる。
【0033】
本発明の糖類に関して、ウイルス、真菌、細菌または真核生物供給源のいずれの糖類が本発明の方法を用いてコンジュゲート化されてもよい。それはチフス菌(Salmonella typhi)由来のVi糖類、またはVi以外の糖類であってもよい。それはインフルエンザ菌(H. influenzae)b型由来の莢膜糖類Hibであってもよく、またはHib以外の糖類であってもよい。1つの実施形態では、糖類は細菌莢膜糖類であり、例えば以下のもの:髄膜炎菌(N. meningitidis)血清型A(MenA)、B(MenB)、C(MenC)、W135(MenW)もしくはY(MenY)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fもしくは33F、B群連鎖球菌Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型もしくはVII型、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型、黄色ブドウ球菌8型、チフス菌(Salmonella typhi)(Vi糖類)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、またはインフルエンザ菌(H. influenzae)b型からなるリストより選択される細菌由来のものである。
【0034】
糖類の重量平均分子量は1000〜2000000、5000〜1000000、10000〜500000、50000〜400000、75000〜300000または100000〜200000とすることができる。本明細書において糖類の分子量または平均分子量は、コンジュゲート化の前に測定された糖類の重量平均分子量(Mw)をいい、MALLSによって測定される。MALLS技術は当技術分野において周知であり、典型的には、実施例2に記述されているように行われる。糖類のMALLS分析の場合、2つのカラム(TSKG6000および5000PWxl)が併せて使用されてもよく、糖類は水の中に溶出される。糖類は光散乱検出器(例えば488nmの10mWアルゴンレーザーを備えたWyatt Dawn DSP)ならびに干渉屈折計(inferometric refractometer)(例えばP100セルおよび498nmの赤色フィルターを備えたWyatt Otilab DSP)を用いて検出される。1つの実施形態では、糖類の多分散性は1〜1.5、1〜1.3、1〜1.2、1〜1.1または1〜1.05であり、キャリアタンパク質とのコンジュゲート化の後、コンジュゲートの多分散性は1.0〜2.5、1.0〜2.0、1.0〜1.5、1.0〜1.2、1.5〜2.5、1.7〜2.2または1.5〜2.0である。多分散性測定は全てMALLSによる。
【0035】
糖類は天然の多糖であっても、または2倍、4倍、6倍、8倍、10倍もしくは20倍以下にサイズ分類されてもよい(例えばマイクロ流動化により[例えばEmulsiflex C−50機器により]もしくはその他公知の技術[例えば加熱法、化学法、酸化法、超音波処理法]により)。オリゴ糖がさらに実質的にサイズ分類されていてもよい[例えば公知の加熱法、化学法、または酸化法により]。
【0036】
これらの糖類の大部分の構造は公知である(それ故にそれらがカルボジイミド化学反応のための任意のアミノもしくはカルボキシル基、またはアミノもしくはカルボキシル基で誘導体化できるその他任意の反応性基をもともと有するかどうかは公知である)(下記表参照)。
【表1】

【0037】
糖類は細菌リポオリゴ糖またはリポ多糖(上記表参照)であっても、例えば以下のもの:髄膜炎菌(N. meningitides)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、大腸菌、サルモネラ菌(Salmonella)またはカタラリス菌(M. catarrhalis)からなるリストより選択される細菌に由来してもよい。LOSは髄膜炎菌(meningococcal)免疫型L2、L3またはL10であってもよい。LOSはその脂質A成分のアルカリ処理によって解毒されてもよい。
【0038】
1つの実施形態では、MenA莢膜糖類は、反復単位の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%が少なくとも1つの位置でO−アセチル化されているように、少なくとも部分的にO−アセチル化されている。O−アセチル化は、例えば、反復単位の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%のO−3の位置に少なくとも存在している。1つの実施形態では、MenC莢膜糖類は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%の(α2→9)−連結NeuNAc反復単位が少なくとも1つまたは2つの位置でO−アセチル化されているように、少なくとも部分的にO−アセチル化されている。O−アセチル化は、例えば、反復単位の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%のO−7および/またはO−8の位置に存在している。1つの実施形態では、MenW莢膜糖類は、反復単位の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%が少なくとも1つまたは2つの位置でO−アセチル化されているように、少なくとも部分的にO−アセチル化されている。O−アセチル化は、例えば、反復単位の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%のO−7および/またはO−9の位置に存在している。1つの実施形態では、MenY莢膜糖類は、反復単位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%が少なくとも1つまたは2つの位置でO−アセチル化されているように、少なくとも部分的にO−アセチル化されている。O−アセチル化は反復単位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%の7位および/または9位に存在している。O−アセチル化の割合は、O−アセチル化を有する反復単位の割合をいう。これはコンジュゲート化する前におよび/またはコンジュゲート化後に糖類において測定することができる。
【0039】
タンパク質キャリアは任意のペプチドまたはタンパク質とすることができる。それは1以上のTヘルパーエピトープを含んでもよい。本発明の1つの実施形態では、タンパク質キャリアは以下のもの:TT、DT、CRM197、TTのCフラグメント、インフルエンザ菌のプロテインD、肺炎球菌のPhtD、および肺炎球菌のPneumolysinからなる群より選択される。タンパク質キャリアは、破傷風トキソイド(TT)、破傷風トキソイドフラグメントC、破傷風毒素の無毒性突然変異体[TTのそのような全ての変種は、本発明の目的では同種のキャリアタンパク質であると見なされることに留意されたい]、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、ジフテリア毒素の他の無毒性突然変異体[例えばCRM176、CRM 197、CRM228、CRM 45(Uchida et al J. Biol. Chem. 218; 3838-3844, 1973);CRM 9、CRM 45、CRM102、CRM 103およびCRM107ならびにNicholls and YouleによりGenetically Engineered Toxins, Ed: Frankel, Maecel Dekker Inc, 1992のなかで記述されている他の突然変異;欠失あるいは148位のGlu(Glu−148)のAsp、GlnもしくはSerへの突然変異および/または158位のAla(Ala 158)のGlyへの突然変異ならびに米国特許第4709017号もしくは米国特許第4950740号に開示されている他の突然変異;少なくとも1以上の残基Lys 516、Lys 526、Phe 530および/またはLys 534の突然変異ならびに米国特許第5917017号または米国特許第6455673号に開示されている他の突然変異;あるいは米国特許第5843711号に開示されているフラグメント](DTのそのような全ての変種は、本発明の目的では同種のキャリアタンパク質であると見なされることに留意されたい)、肺炎球菌のPneumolysin(Kuo et al (1995) Infect Immun 63; 2706-13)、OMPC(髄膜炎菌(meningococcal)外膜タンパク質−通常は髄膜炎菌(N. meningitidis)血清型Bから抽出される−欧州特許
第0372501号)、合成ペプチド(欧州特許第0378881号、欧州特許第0427347号)、熱ショックタンパク質(国際公開公報第93/17712号、国際公開公報第94/03208号)、百日咳タンパク質(国際公開公報第98/58668号、欧州特許第0471177号)、サイトカイン、リンホカイン、成長因子もしくはホルモン(国際公開公報第91/01146号)、N19タンパク質(Baraldoi et al (2004) Infect Immun 72; 4884-7)のような種々の病原体由来抗原の複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質(Falugi et al (2001) Eur J Immunol 31; 3816-3824)、肺炎球菌の表面タンパク質PspA(国際公開公報第02/091998号)、鉄取込みタンパク質(iron uptake proteins)(国際公開公報第01/72337号)、偏性嫌気性有芽胞グラム陽性桿菌(C. difficile)の毒素AもしくはB(国際公開公報第00/61761号)、インフルエンザ菌のプロテインD(欧州特許第594610号および国際公開公報第00/56360号)、肺炎球菌のPhtA(国際公開公報第98/18930号、Sp36ともいわれる)、肺炎球菌のPhtD(国際公開公報第00/37105号に開示されており、Sp036Dともいわれる)、肺炎球菌のPhtB(国際公開公報第00/37105号に開示されており、Sp036Bともいわれる)、またはPhtE(国際公開公報第00/30299号に開示されており、BVH−3といわれる)であってもよい。
【0040】
本発明のさらなる態様では、本発明の方法により取得することができるまたは取得された糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート(または免疫原性組成物もしくはワクチン)が提供される。従って、本発明の方法は、本発明のコンジュゲート化方法を行い、得られた糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートを免疫原性組成物またはワクチン中に製剤化する(例えばコンジュゲートを製薬上許容される賦形剤とともに製剤化することにより)ことによる、本発明の免疫原性組成物またはワクチンの作製方法に包含され得る。
【0041】
疾患の予防もしくは治療のための医薬の製造における本発明の免疫原性組成物またはワクチンの使用、および有効用量の本発明の免疫原性組成物またはワクチンを、そのような処置が必要な患者に投与するステップを含む、疾患の予防方法もしくは治療方法がさらに提供される。前記の使用または方法は、疾患が以下のもの:髄膜炎菌(N. meningitidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、カタラリス菌(M. catarrhalis)、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、チフス菌(Salmonella typhi)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、大腸菌およびインフルエンザ菌(H. influenzae)からなるリストより選択される細菌により引き起こされるものでありうる。
【0042】
本発明の免疫原性組成物はDTPaまたはDTPwワクチン(例えばDT、TT、および全細胞百日咳(Pw)ワクチンまたは無細胞百日咳(Pa)ワクチン(例えば百日咳トキソイド、FHA、ペルタクチン、ならびに任意で、アグルチノーゲン2および3を含む)のいずれかを含有するもの)を含んでもよい。そのような組合せにはB型肝炎に対するワクチンが含まれてもよい(例えばそれには、リン酸アルミニウムに吸着されていてもよいB型肝炎表面抗原[HepB]が含まれてもよい)。1つの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、少なくとも1つ、2つもしくは全ての糖類コンジュゲートが本発明の方法によって作製されているHib、MenAおよびMenC糖類コンジュゲート、またはHibおよびMenC糖類コンジュゲート、またはHib、MenCおよびMenY糖類コンジュゲート、またはMenA、MenC、MenWおよびMenY糖類コンジュゲートを含む。
【0043】
本発明の免疫原性組成物は任意で、麻疹および/または流行性耳下腺炎および/または風疹および/または水痘により引き起こされる疾患に対する防御を与える追加のウイルス抗原を含む。例えば、本発明の免疫原性組成物は、麻疹、流行性耳下腺炎および風疹(MMR)または麻疹、流行性耳下腺炎、風疹および水痘(MMRV)の抗原を含有する。1つの実施形態では、これらのウイルス抗原は、組成物の中に存在している髄膜炎菌(meningococcal)のおよび/またはHibの糖類コンジュゲートと同じ容器の中に存在していてもよい。1つの実施形態では、これらのウイルス抗原は凍結乾燥されている。
【0044】
1つの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、髄膜炎菌(N. meningitidis)血清型Bの抗原をさらに含む。この抗原は任意で、欧州特許第301992号、国際公開公報第01/09350号、国際公開公報第04/14417号、国際公開公報第04/14418号および国際公開公報第04/14419号に記述の髄膜炎菌(N. meningitidis)血清型Bの外膜小胞調製物である。
【0045】
一般に、本発明の免疫原性組成物は、糖類0.1〜20μg、2〜10μg、2〜6μgまたは4〜7μgの各糖類コンジュゲートの用量を含むことができる。
【0046】
「およそ」または「約」は、本発明の目的で所与の数量の10%くらいの範囲内と定義される。
【0047】
1つの実施形態では、本発明の免疫原性組成物はpH 7.0〜8.0、pH 7.2〜7.6またはおよそもしくは正確にpH 7.4に調整されもしくはそれらのpHで緩衝化され、またはそれらのpHに調整されている。
【0048】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは任意で、安定化剤、例えばスクロースまたはトレハロースなどの多価アルコールの存在下で凍結乾燥されてもよい。
【0049】
任意で、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、免疫原に対する免疫応答を増強するのに十分な量のアジュバントを含んでもよい。適当なアジュバントはアルミニウム塩(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、スクアレン混合物(SAF−1)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調製物、モノホスホリル脂質A、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、ならびにTakahashi et al. (1990) Nature 344:873-875によって記述されているものなどの免疫刺激複合体(ISCOM)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0050】
髄膜炎菌(N. meningitidis)またはHibMenの組合せの場合、どのアルミニウム塩アジュバントもまたはどのアジュバントも全く使用しないことが好都合であるかもしれない。
【0051】
全ての免疫原性組成物またはワクチンと同様に、免疫学的に有効な量の免疫原は実験的に決定されなければならない。考慮されるべき要因としては、免疫原性、免疫原がアジュバントまたはキャリアタンパク質もしくはその他のキャリアと複合体形成されるかまたはそれらに共有結合されるか否か、投与経路、および投与される免疫量の数が挙げられる。
【0052】
本発明の医薬組成物またはワクチンの中にさまざまな濃度で活性な作用物質が存在していてもよい。典型的には、この物質の最小濃度はその目的の用途を達成するのに必要な量であり、その一方で最大濃度は、溶解状態のままでいられるか、または最初の混合物のなかで均一に懸濁されていられる最大量である。例えば、治療薬の最小量は任意で、単回の治療的に有効な投与量を与えられるものであってもよい。生物活性物質の場合、最小濃度は再構成時の生物活性に必要な量であり、最大濃度は均一な懸濁液を維持することができないポイントである。単回用量単位の場合には、その量は単回の治療的投与のものである。一般に、各用量はタンパク質抗原を1〜100μg、任意で5〜50μgまたは5〜25μg含むものと予想される。例えば、細菌糖類の用量はコンジュゲート中にて糖類10〜20μg、5〜10μg、2.5〜5μgまたは1〜2.5μgである。
【0053】
本発明のワクチン調製物は、全身経路または粘膜経路を介して該ワクチンを投与することによって、感染を受けやすい哺乳動物(例えばヒト患者)を防御するためにまたは治療するために使用することができる。ヒト患者は任意で、乳児(月齢12ヵ月未満の)、幼児(月齢12〜24ヵ月、12〜16ヵ月もしくは12−14ヵ月)、小児(2〜10歳、3〜8歳もしくは3〜5歳)、青年(12〜21歳、14〜20歳もしくは15〜19歳)または成人であってもよい。これらの投与としては、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下の経路による注入、または口腔/消化管、気道、尿生殖路への粘膜投与による注入を挙げることができる。肺炎または中耳炎の治療のためのワクチンの鼻腔内投与が好ましい(肺炎球菌の鼻咽頭保菌をいっそう効果的に予防し、したがってその最も初期段階で感染を弱められるからである)。本発明のワクチンは単回用量として投与することができるが、その成分を同時にまたは異なった時間に共投与することもできる(例えば、ワクチンの中に糖類が存在する場合、相互に免疫応答の最適な協調性を得るため、これらを同時にまたは細菌タンパク質ワクチンの投与から1〜2週間後に別々に投与することができる)。単一の投与経路に加えて、2つの異なる投与経路を使用することができる。例えば、ウイルス抗原をID(皮内)投与することができ、一方で細菌タンパク質をIM(筋肉内)またはIN(鼻腔内)投与することができる。糖類が存在する場合、それらをIM(またはID)投与することができ、細菌タンパク質をIN(またはID)投与することができる。さらに、本発明のワクチンを初回投与ではIM投与、および追加投与ではIN投与することができる。
【0054】
ワクチン調製物はVaccine Design (The subunit and adjuvant approach (Powell M.F. & Newman M.J.編) (1995) Plenum Press New York)に広く記述されている。リポソーム内の封入はFullerton、米国特許第4,235,877号に記述されている。
【0055】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって作製された本発明のMenAおよびMenC糖類を、本発明によって作製されていないMenWおよびMenY、ならびに製薬上許容される賦形剤と混合するステップを含む、本発明の免疫原性組成物またはワクチンを作製する方法である。
【0056】
本発明のチフス菌(Salmonella typhi)免疫原性組成物/ワクチン
1つの実施形態では、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、本発明の方法により作製されたVi糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートおよび製薬上許容される賦形剤を含む。Vi糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートは、ヒト用量あたり0.5〜15、1〜10、2.0〜7.5または2.5〜5 μgのVi糖類を含んでいてもよい。
【0057】
コンジュゲート中のチフス菌(Salmonella typhi)由来のVi糖類は、登録された製品であるTypherix(登録商標)(GlaxoSmithKline Biologicals s.a.)中のVi糖類と同じであってもよく、これは欧州特許第1107787号に記載されている。1つの実施形態では、本発明のVi糖類コンジュゲートは、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、または水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。1つの実施形態では、Vi糖類コンジュゲートは、アジュバント、例えばアルミニウムアジュバント塩に吸着されていなくてもよい。
【0058】
1つの態様では、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、Hib莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートをさらに含む。これは、本発明の方法により、または当技術分野において公知の任意の方法により作製することができる。例えばこれは、GlaxoSmithKline Biologicals s.a.のHiberix(登録商標)製品であってもよい。インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)PRP多糖のTTとの共有結合は、Chuら(Infection and Immunity 1983, 40 (1); 245-256)により開発されたカップリング化学反応により行うことができる。CNBrを添加し、pH10.5で6分間インキュベートすることにより、Hib PRP多糖を活性化する。pHをpH8.75に下げ、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加し、インキュベーションをさらに90分間続ける。1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を用いたカルボジイミド縮合により、活性化されたPRPを、例えば、精製された破傷風トキソイドにカップリングすることができる。最終比率0.6mg EDAC/mg活性化PRPに達するように、活性化されたPRPにEDACを添加する。pHを5.0に調整し、2mg TT/mg活性化PRPに達するように、精製された破傷風トキソイドを添加する。得られた溶液を穏やかに撹拌しながら3日間放置する。0.45μmのメンブレンを通した濾過の後、0.2M NaClで平衡化されたsephacryl S500HR(Pharmacia, Sweden)カラムにてコンジュゲートを精製する。
【0059】
Hib抗原コンジュゲートは、任意で国際公開公報第97/00697号に記載されているようにリン酸アルミニウムに吸着されていても、または国際公開公報第02/00249号に記載されているように吸着されていなくても、または吸着させるための特別な工程に付されていなくてもよい。本明細書において「アルミニウムアジュバント塩に吸着されていない」抗原は、新鮮なアルミニウムアジュバント塩上での抗原の発現または特定の吸着ステップが、組成物を製剤化する方法に含まれないことを意味する。1つの実施形態では、Hibは、国際公開公報第02/00249号に記載されているように、低用量(例えば1〜6μg、2〜4μgまたは約もしくは正確に2.5μgの糖類)で存在する。
【0060】
1つの実施形態では、Hib糖類コンジュゲートは、Vi糖類コンジュゲートの糖類用量よりも低い糖類用量で存在する。例えば、Hib糖類コンジュゲートは、ヒト用量(通常0.5 mL)あたり0.1〜9、1〜5、または2〜3 μgの糖類を含んでいてもよい。Hib糖類は、本明細書に記載される任意のタンパク質キャリア、例えばTT、DT、CRM197、TTのCフラグメント、プロテインD、OMPCおよびPneumolysinからなる群より選択される1つにコンジュゲート化されていてもよい。1つの態様では、同一のタンパク質キャリアが、Hib糖類コンジュゲートおよびVi糖類コンジュゲート中に(例えば独立に)使用される(例えばTT)。Hib糖類コンジュゲート中のHib糖類とタンパク質キャリアとの比率は、1:5〜5:1(w/w)、例えば1:1〜1:4、1:2〜1:3.5または約1:3(w/w)であってもよい。Hib糖類は、典型的には二官能性(ホモまたはヘテロ二官能性)であるリンカーを介してタンパク質キャリアにコンジュゲート化されていてもよい。リンカーは、2つの反応性アミノ基(各末端に1つ)、または2つの反応性カルボン酸基、または一方の末端に反応性アミノ基および他方の末端に反応性カルボン酸基を有していてもよい。リンカーは4〜12炭素原子を有していてもよい。1つの態様では、リンカーはADHである。Hib糖類は、CNBrまたはCDAPを用いてタンパク質キャリアまたはリンカーにコンジュゲート化されていてもよい。タンパク質キャリアは、カルボジイミド化学反応、任意でEDAC化学反応を用いてHib糖類またはリンカーにコンジュゲート化されていてもよい。本発明のViコンジュゲートを使用することができる、Viおよび/またはHibコンジュゲート抗原を含むさらなるワクチンの組み合わせは、PCT/EP2006/006210、PCT/EP2006/006188、PCT/EP2006/006269、PCT/EP2006/006268、またはPCT/EP2006/006220に記載されている。
【0061】
さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物またはワクチン中のViまたはVi + Hibコンジュゲートはさらなる抗原と混合されている。例えば以下のリストからの1以上を、単独でまたは任意に組み合わせて添加することができる(以下にさらに詳細に記載する):DTP(DTPaまたはDTPw)ワクチン、B型肝炎表面抗原などのB型肝炎ワクチン/抗原(任意でリン酸アルミニウムに吸着されている)、不活化A型肝炎ウイルス調製物などのA型肝炎ワクチン/抗原、不活化ポリオウイルス(IPV)調製物(任意で1、2および3型を含む)などのポリオウイルスワクチン/抗原、1以上の髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート[ここで、該莢膜糖類は、以下の髄膜炎菌(meningococcal)血清型:A型、C型、W135型、Y型、AおよびC型、AおよびW135型、AおよびY型、CおよびW135型、CおよびY型、W135およびY型、AおよびCおよびW135型、AおよびCおよびY型、AおよびW135およびY型、CおよびW135およびY型、AおよびCおよびW135およびY型由来のものである]、RTS,Sなどのマラリアワクチン/抗原。
【0062】
さらなる態様では、ViおよびHib莢膜糖類コンジュゲートは、任意で安定化剤、例えばスクロースおよび/またはトレハロースなどの多価アルコールの存在下で、共凍結乾燥(co-lyophilised)されている。凍結乾燥製剤は、1以上の髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート(ここで、該莢膜糖類は、以下の髄膜炎菌(meningococcal)血清型:A型、C型、W135型、Y型、AおよびC型、AおよびW135型、AおよびY型、CおよびW135型、CおよびY型、W135およびY型、AおよびCおよびW135型、AおよびCおよびY型、AおよびW135およびY型、CおよびW135およびY型、AおよびCおよびW135およびY型由来のものである)をさらに含んでいてもよい。本発明の凍結乾燥組成物は、投与前に水性媒体により再構成されてもよい。水性媒体は緩衝化されていてもよい。水性媒体は、例えば上に挙げられ、凍結乾燥組成物中にまだ含まれていないさらなる抗原[例えば以下のリストからの1以上が、単独でまたは任意の組み合わせで(以下にさらに詳細に記載する)水性媒体に存在していてもよい:DTP(DTPaまたはDTPw)ワクチン、B型肝炎表面抗原などのB型肝炎ワクチン/抗原(任意でリン酸アルミニウムに吸着されている)、不活化A型肝炎ウイルス調製物などのA型肝炎ワクチン/抗原、不活化ポリオウイルス(IPV)調製物(任意で1、2および3型を含む)などのポリオウイルスワクチン/抗原、1以上の髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート[ここで、該莢膜糖類は、以下の髄膜炎菌(meningococcal)血清型:A型、C型、W135型、Y型、AおよびC型、AおよびW135型、AおよびY型、CおよびW135型、CおよびY型、W135およびY型、AおよびCおよびW135型、AおよびCおよびY型、AおよびW135およびY型、CおよびW135およびY型、AおよびCおよびW135およびY型由来のものである]、RTS,Sなどのマラリアワクチン/抗原)を有していてもよい。
【0063】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは両方の混合物を含んでいてもよい。あるいは、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、アルミニウム塩を含んでいなくても、またはアジュバント化されていなくてもよい。本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、pH7.0〜8.0に緩衝化されていてもよい。
【0064】
本発明のさらなる態様では、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、チフス菌(Salmonella typhi)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)により引き起こされる疾患に対する防御を宿主に付与するための2種の多価免疫原性組成物を含む同時または連続投与のためのワクチンキットが提供され、前記キットは:
破傷風トキソイド(TT)、
ジフテリアトキソイド(DT)、および
全細胞または無細胞百日咳成分(PwまたはPa)
を含む第1容器と、
本発明の免疫原性組成物またはワクチンを含む第2容器
とを含む。第1容器は、任意でリン酸アルミニウムに吸着されている、B型肝炎表面抗原をさらに含んでいてもよい。第1容器または第2容器は、不活化ポリオウイルス(IPV)をさらに含んでいてもよい。
【0065】
疾患の予防または治療のための医薬の製造における、本発明の免疫原性組成物またはワクチンあるいはキットの使用も提供され、これは、有効用量の本発明の免疫原性組成物またはワクチンをそのような処置が必要な患者に投与するステップを含む疾患の予防または治療方法である。本発明の使用または方法は、以下のもの:髄膜炎菌(N. meningitidis)、チフス菌(Salmonella typhi)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、およびジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)からなるリストより選択される1以上の細菌により引き起こされる疾患に関するものであってもよい。
【0066】
本発明の組成物/ワクチンに追加するさらなる抗原/ワクチン
DTPワクチン/抗原成分
DTPワクチンは、ジフテリア、破傷風および百日咳(B. pertussis)疾患を予防または治療するためのよく知られているワクチンである。本発明のワクチンは、ジフテリア、破傷風および/または百日咳成分を含んでいてもよい。
【0067】
ジフテリア抗原は、典型的にはジフテリアトキソイドである。ジフテリアトキソイド(DT)の調製物は多く報告されている。任意の適切なジフテリアトキソイドを使用することができる。例えば、DTは、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の培養物からの毒素を精製し、次いで化学的に解毒することにより製造することができるが、代わりに、組み換え、または遺伝子操作により解毒された毒素の類似体(例えば、CRM197、または米国特許第4,709,017号、米国特許第5,843,711号、米国特許第5,601,827号、および米国特許第5,917,017号に記載されているような他の突然変異体)を精製することにより製造する。1つの実施形態では、本発明のジフテリアトキソイドは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明のジフテリアトキソイドは、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、ジフテリアトキソイドは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。
【0068】
本発明の破傷風抗原は、典型的には破傷風トキソイドである。破傷風トキソイド(TT)の調製方法は当技術分野において周知である。1つの実施形態では、TTは、破傷風菌(Clostridium tetani)の培養物から毒素を精製し、次いで化学的に解毒することにより製造されるが、代わりに、組み換え、または遺伝子操作により解毒された毒素の類似体(例えば、欧州特許第209281号に記載されているような)を精製することにより製造される。任意の適切な破傷風トキソイドを使用することができる。「破傷風トキソイド」には、全長タンパク質の免疫原性フラグメント(例えばCフラグメント−欧州特許第478602号を参照)が含まれ得る。1つの実施形態では、本発明の破傷風トキソイドは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明の破傷風トキソイドは、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、破傷風トキソイドは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。
【0069】
本発明の百日咳成分は、精製された百日咳抗原を使用する無細胞(Pa)であっても、死滅全細胞百日咳菌を百日咳成分として使用する全細胞(Pw)のどちらであってもよい。Pwは、水銀を使用しない方法を含むいくつかの方法により不活化されていてもよい。このような方法には、熱不活化(例えば55〜65℃または56〜60℃、5〜60分間または10〜30分間、例えば60℃で30分間)、ホルムアルデヒド不活化(例えば37℃で0.1%、24時間)、グルタルアルデヒド不活化(例えば室温で0.05%、10分間)、アセトン−I不活化(例えば室温で3回処理)およびアセトン−II不活化(例えば室温で3回処理および37℃で4回処理)(例えばGupta et al., 1987, J. Biol. Stand. 15:87; Gupta et al., 1986, Vaccine, 4:185を参照)が含まれ得る。本発明に適切な死滅全細胞百日咳菌(Bordetella pertussis)(Pw)の調製方法は、国際公開公報第93/24148号に開示されており、これはDT-TT-Pw-HepBワクチンの製造に適切な製剤化方法である。チオメルサールは、過去において死滅全細胞百日咳菌(Bordetella pertussis)の調製に使用されてきた。しかしながら、1つの実施形態では、本発明のワクチンの製剤化方法において、チオマーサルは使用されない。
【0070】
典型的には、5〜50 IOU、7〜40 IOU、9〜35 IOU、11〜30 IOU、13〜25 IOU、15〜21 IOUまたは約もしくは正確に20 IOUのPw用量が使用される。
無細胞Paワクチンも周知であり、以下のものからの2以上の抗原を含んでいてもよい:百日咳トキソイド[または公知の百日咳毒素の解毒化された遺伝子突然変異体](PT)、線維状赤血球凝集素(FHA)、ペルタクチン(PRN)、アグルチノーゲン2および3。1つの実施形態では、PaワクチンはPT、FHAおよびPRNを含む。
【0071】
1つの実施形態では、本発明の百日咳成分は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明の百日咳成分は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、百日咳成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。
【0072】
B型肝炎抗原/ワクチン
B型肝炎表面抗原(HBsAg)の調製は、多数報告されている。例えば、Hartford et al., 1983, Develop. Biol. Standard 54:125、Gregg et al., 1987, Biotechnology 5:479、欧州特許第0226846号、欧州特許第0299108号を参照されたい。HBsAgは以下のように調製することができる。一つの方法は、多量のHBsAgは肝臓において合成されHBV感染中血流中に放出されるため、慢性B型肝炎キャリアの血漿から粒子形態の抗原を精製することを含む。別の方法は、組み換えDNA法によりタンパク質を発現させることを含む。HBsAgは、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母、ピキア属、昆虫細胞(例えばHi5)または哺乳動物細胞において発現させることにより調製することができる。HBsAgはプラスミドに挿入することができ、またプラスミドからのHBsAgの発現を「GAPDH」プロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子由来)などのプロモーターにより制御することができる。酵母菌は合成培地中で培養することができる。次に、HBsAgは、沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、および限外ろ過などのステップを含む方法により精製することができる。精製後、HBsAgは、(例えばシステインに関する)透析に供することができる。HBsAgは粒子形態で使用することができる。
【0073】
本明細書において使用される表現「B型肝炎表面抗原」または「HBsAg」は、HBV表面抗原の抗原性を示す任意のHBsAg抗原またはその断片を含む。HBsAg S抗原の226アミノ酸配列(Tiollais et al., 1985, Nature 317:489およびその中の参考文献を参照されたい)に加えて、本明細書に記載されるHBsAgは、所望により、上記文献および欧州特許第0278940号に記載されているように、プレ−S配列の全部又は一部を含んでいてもよいと理解されるであろう。特に、HBsAgは、ad血清型のB型肝炎ウイルス上のオープン・リーディング・フレームに対応するHBsAgのL−タンパク質の残基133〜145、その後の残基175〜400を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド(このポリペプチドをL*と呼ぶ;欧州特許第0414374号参照)を含んでいてもよい。本発明の範囲のHBsAgは、欧州特許第0198474号(Endotronics)に記載されるプレS1−プレS2−Sポリペプチドまたは欧州特許第0304578号(McCormickおよびJones)に記載されるようなこれらの類似体を含んでいてもよい。本明細書に記載されるHBsAgは、突然変異体、例えば国際公開公報第91/14703号またはEP0511855A1号に記載される「エスケープ突然変異体(escape mutant)」、特に145位におけるアミノ酸がグリシンからアルギニンに置換されているHBsAgも指し得る。
【0074】
HBsAgは粒子形態にあってもよい。粒子は例えばSプロテインを単独で含んでいてもよく、また複合粒子、例えば(L*、S)(ここで、L*は上に定義した通りであり、SはHBsAgのS−プロテインを表す)であってもよい。前記粒子は有利には、HBsAgが酵母中に発現されている形態である。
【0075】
1つの実施形態では、HBsAgはEngerixB(商標)(GlaxoSmithKline Biologicals S.A.)中に使用される抗原であり、これは国際公開公報第93/24148号にさらに記載されている。
【0076】
B型肝炎表面抗原はリン酸アルミニウムに吸着されていてもよく、これを他の成分と混合する前に行ってもよい(国際公開公報第93/24148号に記載されている)。B型肝炎成分は実質的にチオメルサール不含であるべきである(チオメルサールを含まないHBsAgの調製方法は欧州特許第1307473号において既に公開されている)。
【0077】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)A、C、WまたはY型抗原
本発明のワクチン/組成物は、髄膜炎菌(N. meningitidis)A型(MenA、任意でキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている)、髄膜炎菌(N. meningitidis)C型(MenC、任意でキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている)、髄膜炎菌(N. meningitidis)W型(MenW、任意でキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている)、および髄膜炎菌(N. meningitidis)Y型(MenY、任意でキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている)からなる群より選択される細菌の莢膜糖類をさらに含んでいてもよい。
【0078】
本発明のワクチンは、髄膜炎菌(N. meningitidis)の異種菌株由来の1以上の抗原を含んでいてもよく、以下に詳述するように、これらは単独で使用されても、または2、3もしくは4成分の任意の組み合わせで使用されてもよい:MenA、MenC、MenW、MenY、またはMenA+MenC、MenA+MenW、MenA+MenY、MenC+MenW、MenC+MenY、MenW+MenYまたはMenA+MenC+MenW、MenA+MenC+MenY、MenA+MenW+MenY、MenC+MenW+MenYまたはMenA+MenC+MenW+MenY。
【0079】
1つの実施形態では、本発明の髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)成分は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明の髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)成分は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。1つの実施形態では、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)成分は、アジュバント、例えばアルミニウムアジュバント塩に吸着されていなくてもよい。コンジュゲートは任意の方法で作製することができ、1つの実施形態では、PCT/EP2006/006210、PCT/EP2006/006188、PCT/EP2006/006269、PCT/EP2006/006268、またはPCT/EP2006/006220に記載の方法が利用される。コンジュゲートは、本発明のコンジュゲート化方法を用いて作製することができる。
【0080】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)B型ブレブ(bleb)または抗原
本発明のワクチンは、国際公開公報第01/09350号、国際公開公報第03/105890号、国際公開公報第04/014417号、または国際公開公報第04/014418号に記載されるような外膜小胞またはブレブ(bleb)などのMenB成分またはコンジュゲート化されたMenB莢膜糖類(またはその誘導体)抗原(例えば国際公開公報第96/40239号参照)を含んでいてもよい。1つの実施形態では、本発明のMenB成分は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明のMenB成分は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、MenB成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。1つの実施形態では、MenB成分は、アジュバント、例えばアルミニウムアジュバント塩に吸着されていなくてもよい。
【0081】
A型肝炎抗原/ワクチン
A型肝炎に対する防御を与える成分は、A型肝炎ウイルス(HAV)のHM−175菌株由来の死滅弱毒化ワクチンであるHavrix(商標)(GlaxoSmithKline Biologicals S.A.の登録商標)として知られている製品であってもよい(F.E. Andreらによる「Inactivated Candidate Vaccines for Hepatitis A」、1980, Prog. Med. Virol. 37:72 およびSmithKline Beecham Biologicals 1991により刊行された製品モノグラフ「Havrix」を参照されたい)。Flehmigら(1990, Prog. Med Virol. 37:56)には、A型肝炎の臨床面、ウイルス学、免疫学および疫学が総論としてまとめられており、またこの一般的なウイルス感染に対するワクチンの開発アプローチについて議論されている。本明細書において使用される表現「HAV抗原」または「HAVワクチン」または「A型肝炎ワクチン」は、ヒトにおいてHAVに対する中和抗体を刺激することができる任意の抗原を指す。1つの実施形態では、HAV抗原は不活化弱毒化ウイルス粒子を含み、あるいは別の実施形態では、HAV抗原は、組み換えDNA技術により好都合に取得できるHAVカプシドまたはHAVウイルスタンパク質であり得る。1つの実施形態では、本発明のA型肝炎成分は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明のA型肝炎成分は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、A型肝炎成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。1つの実施形態では、A型肝炎ワクチンを含む本発明の組成物はフェノールを含まない。
【0082】
マラリア抗原/ワクチン
本発明のワクチンは、マラリア抗原をさらに含んでいてもよい。マラリア抗原は、RTS,S(米国特許第6,306,625号および欧州特許第0614465号に記載されるCSおよびHBsAgのハイブリッドタンパク質)であってもよい。1つの実施形態では、RTS,SをHBsAgの代わりに本発明のワクチン中に使用してもよい。他のマラリア抗原を本発明のワクチン中に使用してもよく、これには、CSタンパク質、RTS、TRAP、B2992の16kDタンパク質、AMA-1、MSP1が含まれ、任意でCpGが含まれる(国際公開公報第2006/029887号、国際公開公報第98/05355号、国際公開公報第01/00231号)。
【0083】
1つの実施形態では、本発明のマラリア抗原は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明のマラリア抗原は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、マラリア抗原は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。1つの実施形態では、マラリア抗原は、水中油型乳剤および/または脂質A誘導体(MPLなど)および/またはステロール(コレステロールなど)および/またはトコール(α-トコフェロールなど)でアジュバント化されている。別の実施形態では、マラリア抗原は、アジュバント、例えばアルミニウムアジュバント塩に吸着されていなくてもよい。
【0084】
ポリオウイルス抗原/ワクチン
本発明のワクチンは、ポリオウイルスに対する防御を与える抗原をさらに含んでいてもよい。1つの実施形態では、不活化ポリオウイルス(IPV)が含まれる。本発明のワクチン/組成物は、IPV1型(例えばMahoneyまたはBrunhilde)またはIPV2型(例えばMEF−1)またはIPV3型(例えばSaukett)、あるいはIPV1および2型、またはIPV1および3型、またはIPV2および3型、あるいはIPV1、2および3型を含んでよい。
【0085】
不活化ポリオウイルス(IPV)の調製方法は当技術分野において周知である。1つの実施形態では、IPVはワクチンの分野において一般的であるように1、2および3型を含むべきであり、またホルムアルデヒドで不活化されているソークポリオワクチンであってもよい(例えば、Sutter et al., 2000, Pediatr. Clin. North Am. 47:287;Zimmerman & Spann 1999, Am Fam Physician 59:113;Salk et al., 1954, Official Monthly Publication of the American Public Health Association 44(5):563;Hennesen, 1981, Develop. Biol. Standard 47:139; Budowsky, 1991, Adv. Virus Res. 39:255を参照されたい)。
【0086】
1つの実施形態では、(例えば他の成分と混合する前に)IPVは吸着されていない。別の実施形態では、本発明のIPV成分は、(例えば他の成分と混合する前または後に)水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。別の実施形態では、本発明のIPV成分は、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩に吸着されていてもよい。さらなる実施形態では、IPV成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物に吸着されていてもよい。吸着されている場合、1以上のIPV成分は、別個にまたは混合物として一緒に吸着されていてもよい。IPVは、国際公開公報第2004/039417号に記載されているような特別な乾燥工程により安定化されていてもよい。
【0087】
ポリオウイルスは、細胞培養物中で増殖させることができる。細胞培養物は、サル腎臓由来の継代細胞株であるVERO細胞株またはPMKCであってよい。VERO細胞は、好都合にはマイクロキャリア上で培養することができる。ウイルス感染前および感染中のVERO細胞の培養には仔ウシ血清などのウシ由来物質の使用が含まれてよく、またこの物質はウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から得るべきである。培養物はラクトアルブミン加水分解物などの物質を含んでいてもよい。増殖させた後、ビリオンは、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、およびクロマトグラフィーなどの技術を用いて精製することができる。患者への投与の前に、ウイルスを不活化しなければならず、またこれはホルムアルデヒドで処理することにより達成することができる。
【0088】
ウイルスは、個別に増殖、精製、そして不活化でき、次いで組み合わされて、IPVワクチンに使用するまたは他の抗原に加えるためのバルク混合物(bulk mixture)を与えることができる。
【0089】
本発明のワクチン中の抗原は、「免疫学的に有効な量」で存在する、すなわちその量の個体への投与が、単回用量においてまたは一連の部分として、疾患の治療または予防に有効である。投薬処置は、単回投与計画または複数回投与計画(例えば追加投与を含む)であってもよい。
【0090】
入手可能なポリオワクチンの標準的な用量は、不活化ポリオウイルス1型の40D抗原ユニット、不活化ポリオウイルス2型の8D抗原ユニットおよび不活化ポリオウイルス3型の32D抗原ユニットを含む(例えばInfanrix−IPV(商標))。
【0091】
アジュバント
本発明のワクチン/組成物は、適切なアジュバントなどの製薬上許容される賦形剤を含んでいてもよい。適切なアジュバントには水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が含まれるが、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化チロシン、またはアシル化糖の不溶性懸濁液であってもよく、またはカチオンもしくはアニオンで誘導体化された糖類、ポリホスファゼン、生分解性ミクロスフェア、モノホスホリル脂質A(MPL)、脂質A誘導体(例えば毒性が低減されている)、3−O−脱アシル化MPL[3D-MPL]、quil A、サポニン、QS21、フロイントの不完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI)、メルクアジュバント65(Merck and Company, Inc., Rahway, NJ)、AS−2(Smith-Kline Beecham, Philadelphia, PA)、CpGオリゴヌクレオチド、生体接着剤および粘膜付着剤、微粒子、リポソーム、ポリオキシエチレンエーテル製剤、ポリオキシエチレンエステル製剤、ムラミルペプチドもしくはイミダゾキノロン化合物(例えばイミクアモド(imiquamod)およびそのホモログ)であってもよい。本発明においてアジュバントとしての使用に適切なヒト免疫調節剤にはサイトカインが含まれ、例えばインターロイキン(例えばIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12等)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)もアジュバントとして使用することができる。
【0092】
本発明の1つの実施形態では、製剤のアジュバント組成物は、主にTH1型の免疫応答を誘発する。高レベルのTH1型サイトカイン(例えばIFN−γ、TNFα、IL−2およびIL−12)には、投与された抗原に対する細胞性免疫応答の誘発を促進する傾向がある。応答が主にTH1型である1つの実施形態においては、TH1型サイトカインのレベルは、TH2型サイトカインのレベルを超える程度に増加するであろう。これらのサイトカインのレベルは、標準的なアッセイを用いて容易に評価することができる。サイトカインのファミリーの総論については、Mosmann and Coffman, 1989, Ann. Rev. Immunol. 7:145を参照されたい。
【0093】
従って、主にTH1応答を促進する適切なアジュバント系には、脂質Aの誘導体(例えば毒性が低減されている)、モノホスホリル脂質A(MPL)またはその誘導体、特に3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)、およびモノホスホリル脂質A、任意で3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A、とアルミニウム塩との組み合わせが含まれる。強化された系には、モノホスホリル脂質Aとサポニン誘導体の組み合わせ、特に国際公開公報第94/00153号に開示されているようなQS21と3D-MPLとの組み合わせ、または国際公開公報第96/33739号に開示されているようなQS21がコレステロールでクエンチされている反応性の低い(less reactogenic)組成物が含まれる。水中油型乳剤中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤は、国際公開公報第95/17210号に記載されている。ワクチンは、サポニン(QS21でもよい)をさらに含んでいてもよい。製剤は、水中油型乳剤およびトコフェロールを含んでいてもよい(国際公開公報第95/17210号)。オリゴヌクレオチドを含む非メチル化CpG(国際公開公報第96/02555号)もTH1応答の優先的誘導剤であり、また本発明における使用に適切である。
【0094】
本発明のワクチンは、上に特定した1以上のアジュバントの態様の組み合わせを含んでいてもよい。
【0095】
Al(OH)/AlPO比率は、0/115、23/92、69/46、46/69、92/23または115/0であり得る。
【0096】
一方、本発明のワクチンの特定の成分は、アジュバント、特にアルミニウム塩に明確に吸着されていなくてもよい。
【0097】
IPVは吸着されていなくてもまたはAl(OH)に吸着されていてもよく、DTはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもよく、TTはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもよく、PwはAlPOに吸着されていてもまたはこれと混合されていてもよく、PRNはAl(OH)に吸着されていてもよく、FHAはAl(OH)に吸着されていてもよく、PTはAl(OH)に吸着されていてもよく、HB(HepB表面抗原)はAlPOに吸着されていてもよく、HibはAlPOに吸着されていてもまたは吸着されていなくてもよく、Men ACWYはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもまたは吸着されていなくてもよく、MenBはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもまたは吸着されていなくてもよく、ViはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもまたは吸着されていなくてもよく、HepAはAl(OH)もしくはAlPOに吸着されていてもよい。
アルミニウム塩に予め吸着されている抗原は、混合前に個別に予め吸着させることができる。別の実施形態では、抗原の混合物は、さらなるアジュバントとの混合の前に予め吸着させてもよい。1つの実施形態では、IPVは、個別にまたはIPV1、2および3型の混合物として吸着されてもよい。
【0098】
「吸着されている抗原」は、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を超えて吸着されていることを意味すると解される。
【0099】
本明細書に使用される用語「リン酸アルミニウム」および「水酸化アルミニウム」の意味には、ワクチンをアジュバント化するのに適切な水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムの全ての形態が含まれる。例えば、リン酸アルミニウムは不溶性リン酸アルミニウム(非晶質、半結晶性または結晶性)の沈殿物であり得、これは、任意でしかしこれに限定されることなく、可溶性アルミニウム塩およびリン酸塩を混合することにより調製することができる。「水酸化アルミニウム」は不溶性(非晶質、半結晶性または結晶性)水酸化アルミニウムの沈殿物であり得、これは、任意でしかしこれに限定されることなく、アルミニウム塩の溶液を中和することにより調製することができる。商業的供給源から入手可能な水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムゲルの種々形態、例えば、Brenntag Biosector(Denmark)により供給されているAlhydrogel(水酸化アルミニウム、水中の3%懸濁液)およびAdjuphos(リン酸アルミニウム、生理食塩水中の2%懸濁液)が特に適切である。
【0100】
本発明のワクチンの非免疫学的成分
本発明のワクチンは、典型的には、上記の抗原性成分およびアジュバント成分に加えて、1以上の「製薬上許容される担体または賦形剤」を含み、これには、それ自体は組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導しない、任意の賦形剤が含まれる。適切な賦形剤は、典型的には、大きく、代謝が遅い巨大分子、例えばタンパク質、糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース(Paoletti et al., 2001, Vaccine, 19:2118)、トレハロース(国際公開公報第00/56365号)、ラクトースおよび脂質凝集物(油滴またはリポソームなど)である。このような担体は当業者に周知である。ワクチンは、水、生理食塩水、グリセロール等などの希釈剤を含んでいてもよい。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在していてもよい。無菌の発熱性物質を含まないリン酸緩衝化生理食塩水が典型的な担体である。製薬上許容される賦形剤についての詳細な議論は参考文献Gennaro, 2000, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, ISBN:0683306472で得られる。
【0101】
本発明の組成物は、凍結乾燥されていても、または水性形態、すなわち溶液もしくは懸濁液であってもよい。このタイプの液体製剤は、水性媒体中で再構成する必要なしにパッケージングされた形態から組成物を直接投与することができ、よって注射に理想的である。組成物はバイアル中に存在させることができ、またはこれらは既充填(ready-filled)シリンジ中に存在させることができる。シリンジには針があってもなくてもよい。バイアルが単回用量または複数回用量(例えば2回用量)を含むことができるのに対し、シリンジは単回用量の組成物を含むであろう。
【0102】
本発明の液体ワクチンは、凍結乾燥された形態から他のワクチンを再構築するのにも適切である。ワクチンをこのように即座に再構成するのに使用する場合、本発明はキットを提供するが、これは2つのバイアルを含むことができるか、または1つの既充填(ready-filled)シリンジおよび1つのバイアルを含むことができ、このシリンジの内容物が注射前にバイアルの内容物の再構築に使用される。
【0103】
本発明のワクチンは、単回用量形態または複数回用量形態(例えば2回用量)にパッケージングすることができる。複数回用量形態については、バイアルは予め充填されたシリンジが好ましい。有効な投与体積は、慣用的に確立することができるが、注射用組成物の典型的なヒト用量は0.5mLの体積を有する。
【0104】
1つの実施形態では本発明のワクチンはpH6.0〜8.0を有し、別の実施形態では本発明のワクチンはpH6.3〜6.9、例えば6.6±0.2を有する。ワクチンはこのpHに緩衝化されていてもよい。安定なpHは緩衝液の使用により維持することができる。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することができる(国際公開公報第03/009869号)。組成物は無菌であるべきでありおよび/または発熱性物質を含まないべきである。
【0105】
本発明の組成物は、ヒトに対して等張性であってもよい。
【0106】
本発明のワクチンは、特に複数回用量形態にパッケージングする場合、抗菌剤を含んでいてもよい。チオメルサールは、IPV成分の効力を損失させるので避けるべきである。2-フェノキシエタノールまたはパラベン(メチル、エチル、プロピルパラベン)などの他の抗菌剤を使用することができる。任意の防腐剤を低いレベルで存在させることが好ましい。防腐剤は外から加えられたものでもよく、および/または混合されて組成物を形成するバルク抗原の成分であってもよい(例えば 百日咳抗原中に防腐剤として存在する)。
【0107】
1つの実施形態では、本発明のワクチンはチオメルサールを含まないかまたは実質的に含まない。チオメルサールを含まないまたは実質的に含まないとは、IPV成分の効力に負の影響を与えるのに十分なチオメルサールが最終製剤中に存在しないことを意味する。例えば、チオメルサールをPwまたはB型肝炎表面抗原精製工程中に使用する場合、IPVと混合する前にチオメルサールは実質的に除去されるべきである。最終ワクチン中のチオメルサール含有量は0.025μg/μgタンパク質未満、0.02μg/μgタンパク質未満、0.01μg/μgタンパク質未満または0.001μg/μgタンパク質未満、例えば0μg/μgタンパク質であるべきである。1つの実施形態では、チオメルサールはいずれの成分の精製においても添加も使用もされない。例えばB型肝炎については欧州特許第1307473号を、チオメルサールの非存在下で死滅が達成されるPwの工程については上記を参照されたい。
【0108】
本発明のワクチンは、界面活性剤、例えばTween 80などのTween(ポリソルベート)を含んでいてもよい。界面活性剤は一般に、例えば<0.01%の低いレベルで存在する。
【0109】
本発明のワクチンは、張度を与えるためにナトリウム塩(例えば塩化ナトリウム)を含んでいてもよい。組成物は塩化ナトリウムを含んでいてもよい。1つの実施形態では、本発明の組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、0.1〜100 mg/mL(例えば1〜50mg/mL、2〜20mg/mL、5〜15mg/mL)の範囲にあり、さらなる実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は10±2mg/mL NaCl例えば約9mg/mLである。
【0110】
本発明のワクチンは一般に緩衝液を含むであろう。リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液が典型的である。
【0111】
本発明のワクチンは、抗原が吸着されないようにするために、(例えばリン酸緩衝液を使用することにより)溶液中に遊離したリン酸を含んでいてもよい。本発明の組成物中の遊離したリン酸イオンの濃度は、1つの実施形態では0.1〜10.0mM、または別の実施形態では1〜5mM、またはさらなる実施形態では約2.5mMである。
【0112】
ワクチン製剤
1つの実施形態では、本発明のワクチンは、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして、各抗原の成分の血清防御がヒト被験者の許容割合の基準を超える抗体力価を付与するように製剤化される。これは、集団全体におけるワクチン効力の評価において重要な試験である。それを超えると宿主が抗原に対して血清変換されたとみなされる関連抗体力価を有する抗原は周知であり、このような力価はWHOなどの機関により公表されている。1つの実施形態では、80%を超える統計学的に有意な被験者サンプルが血清変換され、別の実施形態では、90%を超える統計学的に有意な被験者サンプルが血清変換され、さらなる実施形態では、93%を超える統計学的に有意な被験者サンプルが血清変換され、さらに別の実施態様では、96〜100%の統計学的に有意な被験者サンプルが血清変換される。
【0113】
各ワクチン用量中の抗原の量は、典型的なワクチン中で顕著な副作用なしに免疫保護応答を誘導する量として選択される。このような量は、どの特定の免疫原を用いるかによって変化するであろう。一般に、各用量は、1〜1000μgの総免疫原、または1〜100μg、または1〜40μg、または1〜5μgを含むことが予想される。特定のワクチンに最適な量は、被験者における抗体力価および他の応答の監視を含む研究により確定することができる。初回ワクチン接種コースは、例えばDTP予防接種についてのWHOの勧告に従い1〜2ヶ月の間隔で与えられる、2〜3回のワクチン投与を含み得る。
【0114】
本発明のワクチンのパッケージング
本発明のワクチンは、例えばバイアル、シリンジ等の種々のタイプの容器にパッケージングすることができる。複数回投与バイアルは、典型的には、1用量のワクチンを取り出すために消毒針を挿入することができ、針を取り出した時点で再密封する、再密封可能なプラスチックポートを有するであろう。
【0115】
ワクチンは、種々の容器(例えば2または3個)に供給することができる。容器の内容物は、宿主に単回注射で投与する前に即座に混合することができ、または異なる部位に同時に投与することができる。ワクチンの用量は、典型的には0.5mLであろう。
【0116】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、ポリオウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)および任意で1以上のB型肝炎、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)B型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)A型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)W型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Y型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)B型、チフス菌(Salmonella typhi)、A型肝炎またはマラリアにより引き起こされる疾患に対する防御を宿主に与えるための2種の多価ワクチンを含むキットが提供される。
【0117】
キットは、
(1)(a)任意で不活化されたポリオウイルス(IPV)、
(b)ジフテリアトキソイド(DTまたはD)、
(c)破傷風トキソイド(TTまたはT)、
(d)死滅全細胞百日咳菌(Bordetella pertussis)(Pw)または2以上の無細胞百日咳成分(Pa)(上記)、
(e)任意でB型肝炎表面抗原(HepBまたはHB)、
(f)任意でキャリアタンパク質とインフルエンザ菌(H. influenzae)B型(Hib)の莢膜糖類のコンジュゲート、
(g)任意でキャリアタンパク質と髄膜炎菌(N. meningitidis)A型(MenA)または髄膜炎菌(N. meningitidis)C型(MenC)の莢膜糖類のコンジュゲートのいずれかまたは両方[例えば本発明のコンジュゲート化方法により作製される]
を含む第1容器と、
(2A)(a)キャリアタンパク質と髄膜炎菌(N. meningitidis)A型(MenA)、髄膜炎菌(N. meningitidis)C型(MenC)、髄膜炎菌(N. meningitidis)W型(MenW)および/または髄膜炎菌(N. meningitidis)Y型(MenY)の莢膜糖類(本発明の種々のMen糖類の組み合わせについては上記参照)のコンジュゲート[例えば本発明のコンジュゲート化方法により作製される]、および
(b)任意でキャリアタンパク質とインフルエンザ菌(H. influenzae)B型(Hib)の莢膜糖類のコンジュゲート;または
(2B)(a)キャリアタンパク質とインフルエンザ菌(H. influenzae)B型(Hib)の莢膜糖類のコンジュゲート、および
(b)キャリアタンパク質とチフス菌(Salmonella typhi)のVi糖類のコンジュゲート(本発明のコンジュゲート化方法により作製される)
を含む第2容器
を含む。
【0118】
容器は、いずれの場合にも、HepA抗原および/またはMenB抗原および/またはRTS,Sおよび/または肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)抗原をさらに含んでいてもよい。
【0119】
いずれの場合にも、同一の抗原を両方の容器に存在させるべきではない。
【0120】
1つの実施形態では、第1容器成分は、b)、c)、d)に加えて、a)、e)、f)、g)、e)+f)、e)+g)、f)+g)またはe)+f)+g)、a)+e)、a)+f)、a)+g)、a)+e)+f)、a)+e)+g)、a)+f)+g)、a)+e)+f)+g)をさらに有する。
【0121】
1つの実施形態では、第1容器のワクチンは液体であってもよく、第2容器のワクチンは液体であっても凍結乾燥されていてもよい(例えばスクロースまたはトレハロースなどの公知の安定化賦形剤の存在下)。
【0122】
キットの容器は、別個にパッケージングすることができ、または任意で、一緒にパッケージングすることもできる。1つの実施形態では、キットは2以上の容器内のワクチンを投与するための説明書のリストと共に提供される。
【0123】
1つの実施形態では、キット中の容器が特定の糖類コンジュゲートを含む場合、キットの他方の容器中には同一のコンジュゲートは存在しない。
【0124】
1つの実施形態では、第1容器および第2容器のワクチンは、(「本発明のワクチンの投与」で以下に記載するように)同時に異なる部位に投与され、代替の実施態様では、本発明者らは、第1容器および第2容器の内容物を投与前に単独のワクチンとして(任意で即座に)混合できることを想定している。
【0125】
本発明のワクチンの調製
本発明は、ワクチンの成分を製薬上許容される賦形剤と混合するステップを含むワクチン製剤の製造方法も提供する。
【0126】
本発明の1つの実施形態では、1以上のポリオウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)A型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)W型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Y型、チフス菌(Salmonella typhi)またはA型肝炎による感染により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬において使用するための、本明細書に記載されるワクチンが提供される。
【0127】
本発明の別の実施形態では、1以上のポリオウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)A型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)W型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Y型、チフス菌(Salmonella typhi)またはA型肝炎による感染により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬の製造における、本発明のワクチンの使用が提供される。
【0128】
さらに、1以上のポリオウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)A型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)W型、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Y型、チフス菌(Salmonella typhi)またはA型肝炎により引き起こされる疾患に対してヒト宿主を免疫する方法であって、宿主に免疫保護用量の本発明のワクチンを投与することを含む前記方法が提供される。
【0129】
各ワクチン用量中の抗原の量は、典型的なワクチン中で顕著な副作用なしに免疫保護応答を誘導する量として選択される。このような量はどの特定の免疫原を用いるか、および特定の免疫原をどのように存在させるかによって変化するであろう。1つの実施形態では、各用量は0.1〜100μgの糖類を含み、別の実施形態では、各用量は0.1〜50μgを含み、さらなる実施形態では、各用量は0.1〜10μgを含み、さらに別の実施形態では、各用量は1〜5μg糖類を含むであろう。
【0130】
1つの実施形態では、ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は1〜100μgの範囲にあり、別の実施形態では、ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は5〜50μgの範囲にあり、さらなる実施形態では、ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は5〜25μgの範囲にあるであろう。
【0131】
ワクチン調製物は一般に、Vaccine Design[The subunit and adjuvant approach(Powell M.F. & Newman M.J.編) (1995) Plenum Press New York]に記載されている。リポソーム内へのカプセル化はFullerton、米国特許第4,235,877号により記載されている。タンパク質の巨大分子へのコンジュゲート化は、例えばLikhite、米国特許第4,372,945号およびArmorら、米国特許第4,474,757号により開示されている。Quil Aの使用は、Dalsgaardら、1977, Acta Vet Scand. 18:349により開示されている。3D-MPLはRibi immunochem, USAから入手でき、英国特許出願公開第2220211号および米国特許第4,912,094号に開示されている。QS21は米国特許第5,057,540号に開示されている。
【0132】
1つの実施形態では、0.5mL用量のバルクワクチンあたりの糖類コンジュゲートの量は、10μg未満(のコンジュゲート中の糖類)であり、別の実施形態では、コンジュゲートの量は1〜7であり、別の実施形態では、コンジュゲートの量は2〜6μg、またはさらなる実施形態では、約2.5、3、4または5μgである。
【0133】
特定の成分、例えばDTPw成分を、吸着されているHBsAgまたは他の成分を添加する前に別個に混合できることが理解されよう。
【0134】
一般に、本発明の任意の態様に係る混合ワクチン組成物は以下のように調製することができる:IPV、DTPw、HepB、MenA、MenC、MenW、MenY、MenB、Vi、A型肝炎または他の成分を、適切なアジュバント、特に水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムまたはその両方の混合物に予め吸着させる。それぞれの成分を完全かつ安定に吸着させた後、異なる成分を適切な条件下で混合する。Hib、Vi、MenA、MenC、MenWおよび/またはMenYコンジュゲートは、DTPwワクチンと混合する前に、アルミニウムアジュバント塩に吸着されても、吸着されていなくてもよい。
【0135】
1つの実施形態では、本発明のワクチンを15℃〜30℃(例えば19℃〜27℃、または23±4℃)で調製する。
【0136】
本発明のワクチンの投与
本発明は、有効量の本発明のワクチンを投与するステップを含む、哺乳動物において免疫応答を引き起こす方法を提供する。ワクチンは、予防的に(すなわち感染を予防するために)または治療的に(すなわち感染後に疾患を治療するために)投与することができる。免疫応答は防御的であることが好ましく、また抗体が関与することが好ましい。本方法は、既往反応を引き起こすこともできる。
【0137】
初回ワクチン接種の後、被験者は適切な間隔を空けて1または数回の追加免疫接種を受けてもよい。投薬処置は、単回投与計画または複数回投与計画であり得る。複数回投与は、初回免疫接種計画および/または追加免疫接種計画において使用することができる。初回投与計画(生後1年以内でありうる)に続いて、追加投与計画を行うことができる。初回投与間の適切なタイミング(例えば4〜16週間)、ならびに初回投与および追加投与間の適切なタイミングは、慣用的に決定することができる。
【0138】
1つの実施形態では、哺乳動物はヒトである。ワクチンが予防的に使用される場合、ヒトは、好ましくは子供(例えば幼児および乳児)または十代の若者であり;ワクチンを治療的に使用する場合、ヒトは好ましくは成人である。子供を対象とするワクチンは、例えば安全性、投与量、免疫原性等を評価するために成人に投与してもよい。
【0139】
本発明のワクチン調製物は、前記ワクチンを患者に直接投与することにより、感染しやすい哺乳動物を防御または治療するために使用することができる。直接的な送達は、非経口注射(筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、静脈、または組織の間質腔)により;あるいは直腸投与、経口投与、膣内投与、局所投与、経皮投与、鼻腔内投与、眼内投与、耳内投与、肺内投与または他の粘膜投与により達成することができる。1つの実施形態では、投与は腿または上腕への筋肉注射による。注射は、針(例えば皮下注射針)を用いて行うことができるが、代わりに無針注射を使用することもできる。典型的な筋肉投与量は0.5mLである。
【0140】
細菌感染は体の種々の領域に影響を与えるため、本発明の組成物は種々の形態に調製することができる。例えば、本組成物は、注入物質として、溶液または懸濁液のいずれかで調製することができる。本組成物は、微粉末またはスプレーを用いて例えば吸入器として、肺内投与用に調製することができる。本組成物は、坐薬またはペッサリーとして調製することができる。本組成物は、例えばスプレー、点眼薬(drops)、ゲルまたは粉末として鼻腔投与、耳内投与または眼内投与用に調製することができる(例えばAlmeida & Alpar, 1996, J Drug Targeting, 3:455;Bergquist et al., 1998, APMIS, 106:800を参照)。DTPワクチンの成功した鼻腔内投与は報告されている(Ryan et al., 1999, Infect. Immun., 67:6270;Nagai et al., 2001, Vaccine, 19:4824)。
【0141】
1つの実施形態では、第1容器および第2容器(および適用可能な場合には第3容器)のワクチンは異なる部位に同時に投与され、代替の実施態様では、本発明者らは第1容器および第2容器の内容物を投与前に単独のワクチンとして(任意で即座に)混合できることを想定している。
【0142】
本発明は、全身および/または粘膜免疫を誘発するために使用することができる。
【0143】
治療上の処置の効力を確認する一つの方法には、本発明の組成物の投与後に細菌感染をモニタリングすることが含まれる。予防的処置の効力を確認する一つの方法には、組成物の投与後に抗原に対する免疫応答をモニタリングすることが含まれる。本発明の組成物の免疫原性は、試験被験者(例えば12〜16月齢の子供、または動物モデル−国際公開公報第01/30390号)にこれらを投与し、次いで標準的な免疫学的パラメーターを測定することにより判定することができる。これらの免疫応答は一般に、組成物の投与後約4週間に測定し、組成物の投与前に測定した値と比較する。患者における実際の予防効力を評価するよりも、DTPワクチンの効力を評価するための標準的な動物およびin vitroモデル並びに保護の相関がよく知られている。
【0144】
本明細書において「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」という用語は本発明者らによれば、あらゆる場合において、それぞれ「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」という用語と任意で置き換え可能であることが意図される。「免疫原性組成物」という用語は、本明細書において「ワクチン」という用語と置き換え可能であり、逆もまた同様である。
【0145】
この特許明細書のなかで引用される参考文献または特許出願は全て、参照により本明細書に組み入れられる。
【0146】
本発明を添付の実施例のなかで例示する。以下の実施例は、他に詳細に記述されている場合を除き、当業者には周知かつ慣用的である標準的な技術を用いて行われる。これらの実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0147】
実施例1−多糖コンジュゲートの調製
実施例1a−本発明による髄膜炎菌(meningococcal)MenAおよびMenC莢膜多糖コンジュゲートの調製
MenC−TTコンジュゲートを、天然の多糖(MALLSで測定したところ150kDa以上の)を用いて作出するか、またはわずかにマイクロ流動化するかした。MenA−TTコンジュゲートを、天然の多糖または実施例2のMALLS法で測定したところ60kDa以上のわずかにマイクロ流動化された多糖のいずれかを用いて作出した。サイズ分類はホモジナイザーEmulsiflex C−50機器を用いたマイクロ流動化によった。この多糖を次いで、0.2μmのフィルターを通して濾過した。
【0148】
スペーサーを介して破傷風トキソイドにMenA莢膜多糖をコンジュゲート化するために、以下の方法を用いた。多糖およびスペーサー(ADH)の共有結合は、多糖がシアニル化剤(cyanylating agent)の1−シアノ−4−ジメチルアミノ−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)により、制御された条件の下で活性化されるカップリング化学反応で行われる。スペーサーはシアニル化(cyanylated)PSとそのヒドラジノ基を通じて反応して、スペーサーと多糖との間に安定なイソ尿素結合を形成する。
【0149】
10mg/mLのMenA(pH 6.0)[3.5g]溶液を新たに調製した100mg/mLのCDAPのアセトニトリル/水(50/50(v/v))溶液で処理して、CDAP/MenA比率0.75(w/w)を得た。1.5分後に、pHをpH 10.0に上げた。3分後に、ADHを添加してADH/MenA比率8.9を得た。溶液のpHを8.75に下げ、このpHを維持しながら(温度を25℃に保持して)2時間反応を進めた。
【0150】
PSAAH溶液をその当初容量の4分の1に濃縮し、その後、カットオフ10kDaのFiltron Omegaメンブレンを用い30容量の0.2M NaClでダイアフィルトレーション(diafilter)し、保持物(retentate)を濾過した。
【0151】
コンジュゲート化(カルボジイミド縮合)反応の前に、精製されたTT溶液およびPSAAH溶液をPSAAHの場合10mg/mLおよびTTの場合10mg/mLの濃度に達するよう希釈した。
【0152】
最終比率0.9mg EDAC/mg PSAAHに達するように、EDAC(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド)をPSAH溶液(糖類2g)に添加した。pHを5.0に調整した。2mg TT/mg PSAAHに達するように、精製された破傷風トキソイドを蠕動ポンプにより(60分で)添加した。得られた溶液を撹拌しながら+25℃で60分間放置して、120分の最終カップリング時間を得た。1M Tris−HCl pH 7.5(最終容量の10分の1)の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間、次いで+2℃〜+8℃で終夜放置した。
【0153】
コンジュゲートを10μmのフィルターによって清澄化し、Sephacryl S400HRカラム(Pharmacia,Sweden)によって精製した。カラムを10mM Tris−HCl(pH 7.0)、0.075M NaClで平衡化し、コンジュゲート(約660mL)をカラムに充填した(+2℃〜+8℃)。溶出プールを280nmの光学密度に応じて選別した。吸光度が0.05に増大した時点で回収を始めた。Kdが0.30に達するまで収集を続けた。コンジュゲートを+20℃で濾過滅菌し、その後+2℃〜+8℃で保存した。得られたコンジュゲートは多糖:タンパク質比率が1:2〜1:4(w/w)であった。
【0154】
スペーサーを介して破傷風トキソイドにMenC莢膜多糖をコンジュゲート化するために、以下の方法を用いた。多糖およびスペーサー(ADH)の共有結合は、多糖がシアニル化剤(cyanylating agent)の1−シアノ−4−ジメチルアミノ−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)により、制御された条件の下で活性化されるカップリング化学反応で行われる。スペーサーはシアニル化(cyanylated)PSとそのヒドラジノ基を通じて反応して、スペーサーと多糖との間に安定なイソ尿素結合を形成する。
【0155】
20mg/mLのMenC(pH 6.0)[3.5g]溶液を新たに調製した100mg/mLのCDAPのアセトニトリル/水(50/50(v/v))溶液で処理して、CDAP/MenC比率1.5(w/w)を得た。1.5分後に、pHをpH 10.0に上げた。活性化pHで5M NaClを添加して、最終濃度2MのNaClを達成した。3分後に、ADHを添加してADH/MenC比率8.9を得た。溶液のpHを8.75に下げ、(25℃に維持して)2時間反応を進めた。
【0156】
PSCAH溶液を最小限の150mLに濃縮し、その後、カットオフ10kDaのFiltron Omegaメンブレンを用い30容量の0.2M NaClでダイアフィルトレーションし、保持物を濾過した。
【0157】
コンジュゲート化反応の前に、精製されたTT溶液およびPSCAH溶液(2gスケール)をPSCAHの場合15mg/mLおよびTTの場合20mg/mLの濃度に達するよう0.2M NaClに希釈した。
【0158】
2mg TT/mg PSCAHに達するように、精製された破傷風トキソイドをPSCAH溶液に添加した。pHを5.0に調整した。最終比率0.5mg EDAC/mg PSCAHに達するように、EDAC(Tris 0.1M pH 7.5中にて16.7mg/mL)を蠕動ポンプにより(10分で)添加した。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で110分間放置して、120分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 9.0(最終容量の10分の1)の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間、次いで+2℃〜+8℃で終夜放置した。
【0159】
コンジュゲートを10μmのフィルターによって清澄化し、Sephacryl S400HRカラム(Pharmacia,Sweden)によって精製した。カラムを10mM Tris−HCl(pH 7.0)、0.075M NaClで平衡化し、コンジュゲート(約460mL)をカラムに充填した(+2℃〜+8℃)。溶出プールを280nmの光学密度に応じて選別した。吸光度が0.05に増大した時点で回収を始めた。Kdが0.20に達するまで収集を続けた。コンジュゲートを+20℃で濾過滅菌し、その後+2℃〜+8℃で保存した。得られたコンジュゲートは多糖:タンパク質比率が1:2〜1:4(w/w)であった。
【0160】
EDACを10〜45分間かけて添加する種々の実験を行った。いずれの場合にも良質のMenCコンジュゲートが得られた。しかしながら、TTキャリアをMenC−ADH + EDAC混合物に最後にゆっくりと添加した場合、これはゲル、つまり精製できないコンジュゲートをもたらした。
【0161】
EDACを一度に反応物の中に添加する実験も行ったが、コンジュゲートのTT/PS最終比率(2.7/1)(w/w)は、EDACを10分間かけて添加する反応によって得られたコンジュゲートの場合(3.3/1)よりも低かった;さらに、αTTおよびαPS抗原性はともに、EDACを10分間かけて添加する反応によって作製されたコンジュゲートに関して測定されたものよりも低かった。
【0162】
多糖の%誘導体化近似値に関する注記
MenCAH:ADHでのCDAP処理後、約3.47%のヒドロキシル基をADHで誘導体化した(反復サブユニットあたり利用可能なヒドロキシル基は2つと推定される)。MenAの場合:約11.5%のヒドロキシル基をADHで誘導体化した(反復単位あたり利用可能なヒドロキシル基は1つしかないと考えられる)。
【0163】
実施例1b−肺炎球菌の莢膜PS 3多糖コンジュゲートの調製
1)PS03−TTAHプロセス:PS03−TTAH208
Emulsiflexによるサイズ分類
10%の理論的含水率に基づいてPSを秤量した。天然のPSを当初濃度3mg/mLで2M NaClに終夜溶解した。サイズ分類の前に、天然のPSの溶液を5μmのカットオフフィルターにて清澄化した。
【0164】
活性化ステップの前に多糖の分子量および粘性を低減するため、ホモジナイザーEMULSIFLEX C−50機器を使用した。サイズ分類の効率は回路圧(circuit pressure)、プランジャー補給圧(plunger alimentation pressure)に依存し、総サイクル数に依存する。サイズ分類の効率を向上するため(その結果としてサイクル総数を減らすため)、Emulsiflexのホモジナイジングセルを固定形状のセル(Microfluidics F20Y−0.75μmの相互作用チャンバ)と交換した。サイズ分類の目的はPSの分子量および粘性を、その抗原性の重大な低下なくして低減することであった。
【0165】
サイズ低減は6000±500 psiで行い、その後に製造プロセスのなかで粘性の測定を行った。サイズ分類は、2.0±0.2 cpの目標に達した時点で止めた。
【0166】
サイズ分類されたPSの0.22μmに対する濾過
サイズ分類されたPSを流速10mL/分でMillipak 40メンブレン(カットオフ0.22mm)に対して濾過した。
【0167】
TT誘導体化
誘導体化ステップはT°制御水浴内にて連続的に撹拌しながら25℃で行った。TTをNaCl 0.2Mに希釈して、TT最終濃度25mg/mLを得た。0.2Mの最終濃度に達するように、ADHをTT溶液に固体形態で添加した。完全なADH溶解の後、溶液をHClでpH 6.2+/−0.1に設定した。
【0168】
その後、最終濃度0.02Mに達するように、EDACをTT/ADH溶液に添加した。pHをHClで6.2+/−0.1に設定し、1時間の間pH調節下に保った。
【0169】
誘導体化ステップの後、pHをNaOHにより最大pH9.5まで上げて、反応を停止した。ダイアフィルトレーション(diafiltration)ステップの前に溶液を2時間の間pH調節下に置いた。
【0170】
ダイアフィルトレーション
未反応のADHおよびEDAC副生成物を除去するため、TTAH誘導体をダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーションはcentramateメンブレン(0.09m,カットオフ10kDa)にて行った。その溶液を20容量の0.2M NaClに対して透析した。
【0171】
ダイアフィルトレーションステップの追跡は5、10、15および20容量のダイアフィルトレーション後の透過物(permeate)におけるADHの定量化(TNBSアッセイ)によって行った。
【0172】
0.22μmに対する濾過
TTAHを最後に、流速10mL/分で0.22μmのカットオフメンブレン(Millipack 40)に対して濾過した。その後、濾過したTTAHを−70℃で保存した。
【0173】
PS3−TTAHコンジュゲート
プロセスの条件は以下のとおりとした。
【0174】
2M NaCl中のPS3当初濃度2mg/mL、TTAH/PS3当初比率1.5/1(w/w)、EDAC濃度0.5mg/mg PS、および0.15M NaCl中のTT濃度10mg/mL。
【0175】
PS3 50mgを2M NaClに希釈して、PS最終濃度2mg/mLを得た。濃度10mg/mLに達するように、精製TTAH溶液を0.2M NaClに希釈した。
【0176】
このPS3溶液をHClでpH5に調整した。
【0177】
最終濃度0.5mg EDAC/mg PSに達するように、EDACをPS3溶液に固体形態で添加した。pHをHClで5.0±0.05に調整し、TTAHを11分間(アリコート/分)で手動により添加した。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で109分間インキュベートして、120分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間放置した。最後に、コンジュゲートを5μmのメンブレンにて清澄化し、Sephacryl S400HRカラムに注入した。
【0178】
2)PS03−TTAHプロセス:PS03AH−TT215
Emulsiflexによるサイズ分類
上記と同様である。
【0179】
サイズ分類されたPSの0.22μmに対する濾過
上記と同様である。
【0180】
PS3誘導体化
誘導体化ステップはT°制御水浴内にて連続的に撹拌しながら25℃で行った。PS3をNaCl 2Mに希釈して、PS最終濃度3mg/mLを得た。CDAP(0.25mg/mg PS、アセトニトリル/WFI混合物中にて100mg/mLで溶解)の添加前にPS溶液をpH6.0に設定した。ADH(8.9mg ADH/mg PS、0.2M NaCl中にて100mg/mLで溶解)の添加前にpHをNaOHでpH9.5に増加させた。pHを9.5に保持し、60分の間、調節した。誘導体化の割合は2.4%(2.4mg ADH/100mg PS)に相当した。これは公知の技術で測定することができる:ADHの推定の場合にはTNBS;およびPS定量化の場合にはDMABまたはレゾルシノール(Monsigny et al (1988) Anal. Biochem. 175, 525-530)。この場合、TNBS投与量は228μg/mLで、PS投与量は5250μg/mLであった。
【0181】
ADHのMwが174.2であり、PS3の反復単位のMwが338.27である(1つのCOOH基および4つのOH基を有する)ことを考えれば、1.3μmoleのADH/15.52μmoleの反復単位、または1.3μmoleのADH/62.08μmoleの反応性ヒドロキシル基が存在する。2.09%のPS3ヒドロキシル基がADH修飾ヒドロキシル基であった。
【0182】
ダイアフィルトレーション
未反応のADHおよびCDAP副生成物を除去するため、PS3AH誘導体をダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーションはUFP−30−C−H24LAメンブレン(42cm,カットオフ30kDa)にて行った。その溶液を20容量の0.2M NaClに対して透析した。
【0183】
ダイアフィルトレーションステップの追跡は5、10、15および20容量のダイアフィルトレーション後の透過物におけるADHの定量化(TNBSアッセイ)によって行った。
【0184】
0.22μmに対する濾過
PSAHを最後に、流速10mL/分で0.22μmのカットオフメンブレン(Millipack 40)に対して濾過した。その後、濾過したPS3AHを4℃で保存した。
【0185】
PS3AH−TTコンジュゲート
プロセスの条件は以下のとおりとした。
【0186】
2M NaCl中のPS3当初濃度2mg/mL、TT/PS3AH当初比率1.5/1(w/w)、EDAC濃度0.5mg/mg PS、および0.15M NaCl中のTT濃度10mg/mL。
【0187】
PS3AH 50mgを0.2M NaClに希釈して、PS最終濃度2mg/mLを得た。濃度10mg/mLに達するように、精製TT溶液を0.2M NaClに希釈した。
【0188】
このPS3AH溶液をHClでpH5に調整した。
【0189】
最終濃度0.5mg EDAC/mg PSに達するように、EDACをPS3AH溶液に固体形態で添加した。pHをHClで5.0±0.05に調整し、TTを蠕動ポンプにより10分で添加した。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で110分間インキュベートして、120分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間放置した。最後に、コンジュゲートを5μmのメンブレンにて清澄化し、Sephacryl S400HRカラムに注入した。
【0190】
3)PS03AH−TTプロセス:PS3AH−TT217
Emulsiflexによるサイズ分類
上記と同様である。
【0191】
サイズ分類されたPSの0.22μmに対する濾過
上記と同様である。
【0192】
PS3誘導体化
215コンジュゲートの場合と同様である。
【0193】
ダイアフィルトレーション
215コンジュゲートの場合と同様である。
【0194】
0.22μmに対する濾過
215コンジュゲートの場合と同様である。
【0195】
PS3AH−TTコンジュゲート
プロセスの条件は以下のとおりとした。
【0196】
2M NaCl中のPS3当初濃度2mg/mL、TT/PS3AH当初比率1.5/1(w/w)、EDAC濃度0.5mg/mg PS、および0.15M NaCl中のTT濃度10mg/mL。
【0197】
PS3AH 50mgを0.2M NaClに希釈して、PS最終濃度2mg/mLを得た。濃度10mg/mLに達するように、精製TT溶液を0.2M NaClに希釈した。
【0198】
このPS3AHおよびTT溶液を混合し、HClでpH5に調整した。
【0199】
EDACをTris 1M pH 7.5緩衝液に溶解した。EDAC 40μLを毎分添加した(EDAC/PS比率(0.5mg EDAC/mg PS)に達するように10分間)。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で110分間インキュベートして、120分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間放置した。最後に、コンジュゲートを5μmのメンブレンにて清澄化し、Sephacryl S400HRカラムに注入した。
【0200】
4)PS03AH−TTプロセス:PS3AH−TT218
Emulsiflexによるサイズ分類
上記と同様である。
【0201】
サイズ分類されたPSの0.22μmに対する濾過
上記と同様である。
【0202】
PS3誘導体化
誘導体化ステップはT°制御水浴内にて連続的に撹拌しながら25℃で行った。PS3をNaCl 2Mに希釈して、PS最終濃度3mg/mLを得た。EDAC/PS比率0.1mg/mg PSに達するように、EDACを固体形態で添加した。完全な溶解後、溶液のpHを5に設定した。その後、ADH(8.9mg ADH/mg PS、0.2M NaCl中にて100mg/mLで溶解)を蠕動ポンプにより44分で添加した(したがって過剰のADHが存在していたが、直接的な添加も問題がなかった)。pHを5.0+/−0.1に保持し、120分(44秒+76秒)の間、調節した。水酸化ナトリウムを用いてpHを7.5に上昇させることにより、反応を停止した。誘導体化の割合は3.7%(mg ADH/mg PS)に相当した。TNBS投与量は220μg/mLで、PS投与量は5902μg/mLであった。すなわち1.26μmoleのADH/17.44μmoleの反復単位(=μmoleの反応性COOH基)が存在する。したがって、7.22%のPS3カルボキシル基がADH修飾COOH基であった。
【0203】
ダイアフィルトレーション
未反応のADHおよびEDAC副生成物を除去するため、PS3AH誘導体をダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーションはUFP−30−C−H24LAメンブレン(42cm,カットオフ30kDa)にて行った。その溶液を23容量の0.2M NaClに対して透析した。
【0204】
ダイアフィルトレーションステップの追跡は5、10、15および20容量のダイアフィルトレーション後の透過物におけるADHの定量化(TNBSアッセイ)によって行った。
【0205】
0.22μmに対する濾過
PSAHを最後に、流速10mL/分で0.22μmのカットオフメンブレン(Millipack 40)に対して濾過した。その後、濾過したPS3AHを4℃で保存した。
【0206】
PS3AH−TTコンジュゲート
プロセスの条件は以下のとおりとした。
【0207】
2M NaCl中のPS3AH当初濃度2mg/mL、TT/PS3AH当初比率1.5/1(w/w)、EDAC濃度0.5mg/mg PS、および0.15M NaCl中のTT濃度10mg/mL。
【0208】
PS3AH 50mgを0.2M NaClに希釈して、PS最終濃度2mg/mLを得た。濃度10mg/mLに達するように、精製TT溶液を0.2M NaClに希釈した。
【0209】
このPS3AHおよびTT溶液を一緒に混合した。
【0210】
pHをHClで5.0±0.05に調整し、EDACを10分間で手動により添加した(等量のアリコートを毎分添加した)。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で110分間インキュベートして、120分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間放置した。最後に、コンジュゲートを5μmのメンブレンにて清澄化し、Sephacryl S400HRカラムに注入した。
【0211】
結論
コンジュゲート化ステップのなかでカルボジイミド化学反応を用いて、異なるコンジュゲートを作製した。反応溶液に添加される最後の成分は、TTタンパク質またはEDAC試薬のいずれかとすることができる。添加の時間は、得られるコンジュゲートに影響を与えることがある。
【0212】
PS3AHTT215および217コンジュゲート
両コンジュゲートを調製するため、同じ成分および条件を使用した。最後の成分を添加した方法は異なっていた。PS3AHTT217コンジュゲートは、インビトロ(in-vitro)での判定基準に合った生成物をもたらした。この生成物はEDACを10分で添加することにより作製された。
【0213】
しかしながら、PS3AHTT215コンジュゲートは、滅菌メンブレンに対して濾過することができなかった。このコンジュゲートの場合、反応媒体に添加された最後の成分はTTであった(10分で)。
【0214】
TT/PS最終比率は両コンジュゲートでかなり異なっていた(0.98/1に対して0.50/1)。EDACがPSAH(反応性アミノ基とカルボキシル基の両者を有する)に最初に添加される場合、これは多糖に存在するヒドラジンおよびカルボン酸基の分子内架橋結合をもたらしうるので、いっそう架橋結合されたコンジュゲートを生じさせることになり、10分間でのTTの添加後の最終比率がずっと低くなるのかもしれない。
【0215】
この影響はPS3AHTT217コンジュゲートでは認められていない。TT取込みは、おそらくいっそう低い分子内架橋結合や、PS3AHのヒドラジン基と該タンパク質のカルボン酸基との間のいっそう良好な分子間架橋結合のため、10分間でのEDACの添加によっていっそう功を奏した。
【0216】
218コンジュゲートの場合、PS3 EDAC誘導体化は(多糖エピトープの大部分を保全するため)多糖を部分的に誘導体化するだけなので、反応性アミノ基とカルボキシル基の両者が存在しており、それ故に最終のコンジュゲート化ステップにおけるEDACの緩徐な添加が有益である理由も先と同様である。
【0217】
(しかしながら)TTはADH誘導体化され(かつアミノ基およびカルボキシル基を含む)、その一方でPS3はその反復サブユニットの一部としてその天然の反応性−OH基および−COOH基が残された208コンジュゲートの場合、最終のコンジュゲート化ステップにおける緩徐なTT添加が有益であった。PS 3へのEDACの添加は上記の架橋結合の影響がなく、誘導体化されたTTの緩徐な添加によってインビトロでの特性の良好なコンジュゲートが得られた。下記を参照されたい。
【0218】
インビトロでの特性決定
【表2】

【表3】

【表4】

【0219】
実施例1c−本発明のチフス菌(S. typhi)Vi多糖コンジュゲートの調製
Emulsiflexによるサイズ分類
15%の理論的含水率に基づいてPSを秤量した。天然のPSを当初濃度7mg/mLでWFIに終夜溶解した。サイズ分類の前に、天然のPSの溶液を流速50mL/分で10μmのカットオフフィルターにて清澄化した。
【0220】
活性化ステップの前に多糖の分子量および粘性を低減するため、ホモジナイザーEMULSIFLEX C−50機器を使用した。サイズ分類の効率は回路圧、プランジャー補給圧に依存し、総サイクル数に依存する。サイズ分類の効率を向上するため(その結果としてサイクル総数を減らすため)、Emulsiflexのホモジナイジングセルを固定形状のセル(Microfluidics F20Y−0.75μmの相互作用チャンバ)と交換した。サイズ分類の目的はPSの分子量および粘性を、その抗原性の重大な低下なくして低減することである。
【0221】
サイズ低減は15000±500 psiで達成し、その後に製造プロセスのなかで粘性の測定を行った。サイズ分類は、5.0±0.3 cpの目標に達した時点で止める。
【0222】
サイズ分類されたPSの0.22μmに対する濾過
サイズ分類されたPSを流速10mL/分でMillipak 40メンブレン(カットオフ0.22mm)に対して濾過する。濾過済のサイズ分類されたPSを−20℃で保存する。
【0223】
多糖Viの誘導体化
サイズ分類されたVi PS 1.5gを撹拌しながらEPIに25℃で溶解した(5mg/mL)。このPS溶液にADH 13.35g(8.9mg ADH/mg PS)を添加する。完全な溶解後、pHを1N HClでpH 5.0±0.05に調整した。EDAC(0.1mg/mg PS)を固体形態で添加した。この溶液を25℃で60分間放置した。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、25℃で少なくとも30分間放置した(最大2時間)。TNBS投与量(mg ADH/100mg PS)により、誘導体化のレベルは4.55%であると推定された。TNBS投与量は200μg/mLで、PS投与量は4034μg/mLであった;したがって0.0697μmoleのADH/16.46μmoleの反復単位(Mw245)であった。Viでの1.3μmoleのADH/16.46μmoleの反応性COOH基、したがってViのCOOH基の7%がADH修飾COOH基であった。
【0224】
ダイアフィルトレーション
未反応のADHおよびEDAC副生成物を除去するため、PSViAH誘導体をダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーションはcentramateメンブレン(0.09m,カットオフ10kDa)にて行った。その溶液を20容量の0.2M NaClに対して透析した。
【0225】
ダイアフィルトレーションステップの追跡は3、5、10および20容量のダイアフィルトレーション後の透過物におけるADHの定量化(TNBSアッセイ)によって行った。
【0226】
0.22μmに対する濾過
PSViAHを最後に、流速10mL/分で0.22μmのカットオフメンブレン(Millipack 40)に対して濾過した。濾過したPSViAHを最大4日間+2/+8℃で保存した。
【0227】
PSViAH−TTコンジュゲート
プロセスの条件は以下のとおりとした。
【0228】
0.2M NaCl中のPSViAH当初濃度2mg/mL、TT/PSViAH当初比率2.5/1(w/w)、EDAC濃度0.25mg/mg PSおよび0.2M NaCl中のTT濃度10mg/mL。
【0229】
PSViAH 1gを0.2M NaClに希釈して、PS最終濃度2mg/mLを得た(ウロン酸投与量)。濃度10mg/mLに達するように、精製TT溶液を0.2M NaClに希釈した。
【0230】
最終比率2.5mg TT/mg PSに達するように、TTをPSViAH溶液に添加した。pHを1N HClで5.0±0.05に調整する。その後、0.25mg EDAC/mg PSViAHに達するように、EDAC溶液(0.1M Tris pH 7.5中にて7.5 mg/mL)を添加した(蠕動ポンプにより10分で)。得られた溶液を撹拌およびpH調節しながら+25℃で50分間インキュベートして、60分の最終カップリング時間を得た。その後、1M Tris−HCl pH 7.5の添加によって溶液を中和し、+25℃で30分間放置した。クロマトグラフィーステップの前に、コンジュゲートを4℃に移し、連続的にゆっくり撹拌しながら終夜放置した。
【0231】
精製
Sephacryl S400HRに対する溶出の前に、10μm Kleenpakフィルターを用いてコンジュゲートを清澄化した。流速は100mL/分に固定した。その後、コンジュゲートをSephacryl S400HRに注入し、回収プールはKd値に基づいた。以下の判定基準をプール回収に用いた:280nmのOD=0.05から収集を開始し、Kd=0.22の時点で終了した。
【0232】
滅菌濾過
濾過の前に、バルクを室温に戻した。その後、コンジュゲートをOpticap 4’’滅菌用メンブレンに対して濾過した。流速は30mL/分に固定した。
【0233】
分析
得られたコンジュゲートはTT/PS最終比率(w/w)2.44/1、遊離PS含有率3.7%およびαPS/αPS抗原性58%であった。
【0234】
実施例1c(ii)−本発明のチフス菌(S. typhi)Vi多糖コンジュゲートの他の調製方法
コンジュゲート化は実施例1cに記載された条件と異なる条件で行うことができると考えられる。要するに、実施例1cを行うが、以下の条件は変更する。
【表5】

【0235】
実施例1d−その他の多糖コンジュゲートの調製
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)PRP多糖のTTとの共有結合は、Chuら(Infection and Immunity 1983, 40 (1); 245-256)により開発されたカップリング化学反応によって行った。CNBrを添加し、pH 10.5で6分間インキュベートすることにより、Hib PRP多糖を活性化した。pHをpH 8.75に下げ、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加し、インキュベーションをさらに90分間続けた。1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を用いたカルボジイミド縮合により、活性化されたPRPを精製された破傷風トキソイドにカップリングした。最終比率0.6mg EDAC/mg 活性化PRPに達するように、活性化されたPRPにEDACを添加した。pHを5.0に調整し、2mg TT/mg活性化PRPに達するように、精製された破傷風トキソイドを添加した。得られた溶液を穏やかに撹拌しながら3日間放置した。0.45μmのメンブレンを通した濾過の後、0.2M NaClで平衡化されたsephacryl S500HR(Pharmacia,Sweden)カラムにてコンジュゲートを精製した。
【0236】
MenC−TTコンジュゲートを、天然の多糖(MALLSで測定したところ150kDa以上の)を用いて作出するか、またはわずかにマイクロ流動化するかした。MenA−TTコンジュゲートを、天然の多糖または実施例2のMALLS法で測定したところ60kDa以上のわずかにマイクロ流動化された多糖のいずれかを用いて作出した。MenWおよびMenY−TTコンジュゲートを、MALLSで測定したところおよそ100〜200kDaのサイズ分類された多糖を用いて作出した(実施例2参照)。サイズ分類はホモジナイザーEmulsiflex C−50機器を用いたマイクロ流動化によった。この多糖を次いで、0.2μmのフィルターを通して濾過した。
【0237】
活性化および直接的カップリングは、国際公開公報第96/29094号および国際公開公報第00/56360号に記述されているように行った。手短に言えば、2M NaCl pH 5.5〜6.0中の濃度10〜20mg/mLの多糖をCDAP/多糖最終比率0.75/1または1.5/1までCDAP溶液(100mg/mL、アセトニトリル/WFI,50/50中にて新たに調製)と混合した。1.5分後に、pHを水酸化ナトリウムによりpH10.0に上げた。3分後、MenWの場合1.5/1、MenYの場合1.2/1、MenAの場合1.5/1またはMenCの場合1.5/1のタンパク質/多糖比率に達するように、破傷風トキソイドを添加した。反応を1〜2時間続けた。
【0238】
カップリングステップの後、グリシンをグリシン/PS(w/w)の最終比率7.5/1まで添加し、pHをpH9.0に調整した。この混合物を30分間放置した。10μm Kleenpakフィルターによってコンジュゲートを清澄化し、次に150mM NaCl,10mMまたは5mM Tris pH 7.5の溶出用緩衝液を用いてSephacryl S400HRカラムに充填した。臨床用ロット(Clinical lots)をOpticap 4滅菌用メンブレンに対して濾過した。得られたコンジュゲートは多糖:タンパク質の平均比率が1:1〜1:5(w/w)であった。
【0239】
実施例2−MALLSを用いた分子量の測定
サンプルが溶出されるHPLCサイズ排除カラムに検出器を連結した。一方では、レーザー光散乱検出器によって、高分子溶液により16の角度で散乱された光強度を測定し、他方では、オンラインで配置された干渉屈折計によって、溶出されたサンプル量の測定を可能にした。これらの強度から、溶液中の高分子のサイズおよび形状を測定することができる。
【0240】
重量平均分子量(M)は、全ての、種の重量×その各種分子量、の総和÷全ての種の重量の総和、と定義される。
【0241】
a)重量平均分子量:−Mw−
【数1】

【0242】
b)数平均分子量:−Mn−
【数2】

【0243】
c)二乗平均平方根半径(Root mean square radius):−Rw−およびRwは以下により定義される二乗半径である:
【数3】

【0244】
(−m−は散乱中心iの質量であり、−r−は散乱中心iと高分子の重心との間の距離である)。
【0245】
d)多分散性は比率−Mw/Mn−と定義される。
【0246】
髄膜炎菌(meningococcal)多糖を、併用で用いた2本のHPLCカラム(TSKG6000および5000PWxl)に充填することによってMALLSで分析した。多糖25μLをカラムに充填し、濾過水0.75mLで溶出した。糖類は光散乱検出器(488nmの10mWアルゴンレーザーを備えたWyatt Dawn DSP)ならびに干渉屈折計(inferometric refractometer)(P100セルおよび498nmの赤色フィルターを備えたWyatt Otilab DSP)を用いて検出される。
【0247】
全サンプルの分子量多分散性および回収率は、Astra 4.72ソフトウェアにおいて多項式適合度1を用いDebye法によって計算した。
【0248】
実施例3−MenACWYコンジュゲートワクチンにおけるMenA中のリンカーの影響を評価する臨床試験
MenACWYワクチンの異なる製剤の単回用量を1:1:1:1:1の無作為化試験において被験者25人からなる5群の15〜19歳の青年に投与した。試験した製剤は以下のものであった:
F1−AH(ADH)スペーサーを有するMenAコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−5/5/5/5μg
F2−AHスペーサーを有するMenAコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−2.5/5/2.5/2.5μg
F3−AHスペーサーを有するMenAコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−5/5/2.5/2.5μg
F4−任意のコンジュゲートにおいてスペーサーなしで破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY−5/5/5/5μg
対照群−Mencevax(商標) ACWY。
【0249】
接種後30日目に、血液サンプルを患者から採血した。
【0250】
ワクチン投与から1ヵ月後のSBA−MenA、SBA−MenC、SBA−MenW135およびSBA−MenY応答者の割合を評価するため、血液サンプルを使用した。ワクチン応答は(1)初期に血清反応陰性の被験者の場合−ワクチン接種後の抗体力価1ヵ月時点で1/32、または(2)初期に血清反応陽性の被験者の場合−抗体力価4倍のワクチン接種前の抗体力価、と定義された。
【0251】
結果
下記表に示されるように、MenAコンジュゲートでのスペーサーの使用によってMenAに対する免疫応答の増大がもたらされた。応答者の割合は、AHスペーサーを付加した場合、66%から90〜95%に上昇した。これはSBA GMTでの4335から10000の増大およびGMCでの5から20〜40の増大に反映されていた。意外にも、応答者の割合の増大およびSBA GMTでの増大から分かるとおり、AHスペーサーの使用によってMenCに対する免疫応答の増大も起こった。スペーサーが導入された場合、増大は同様にSBA−GMTにおいてMenY(6742〜7122)に対しておよびMenW(4621〜5418)に対して認めることができた。
【表6】

【0252】
実施例4−MenACWYコンジュゲートワクチンにおけるMenAおよびMenCコンジュゲート中のリンカーの影響を評価する臨床試験
MenACWYワクチンの異なる製剤の単回用量を1:1:1:1:1の無作為化試験において被験者25人からなる5群の15〜19歳の青年に投与した。試験した製剤は以下のものであった:
F1−AHスペーサーを有するMenAおよびMenCコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−2.5/2.5/2.5/2.5μg
F2−AHスペーサーを有するMenAおよびMenCコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−5/5/2.5/2.5μg
F3−AHスペーサーを有するMenAおよびMenCコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−5/5/5/5μg
F4−AHスペーサーを有するMenAコンジュゲートを用いて破傷風トキソイドにコンジュゲート化されているMenACWY(実施例1によって作製)−5/5/5/5μg
対照群−Mencevax(商標) ACWY。
【0253】
接種後30日目に、血液サンプルを患者から採血した。
【0254】
ワクチン投与から1ヵ月後のSBA−MenA、SBA−MenC、SBA−MenW135およびSBA−MenY応答者の割合を評価するため、血液サンプルを使用した。ワクチン応答は(1)初期に血清反応陰性の被験者の場合−ワクチン接種後の抗体力価1ヵ月時点で1/32、または(2)初期に血清反応陽性の被験者の場合−抗体力価4倍のワクチン接種前の抗体力価、と定義された。
【0255】
結果
下記表に示されるように、MenCコンジュゲートへのAHスペーサーの導入によってMenCに対する免疫応答の増大がもたらされた。これはSBA GMTでの1943から4329の増大および抗PSC GMCでの7.65から13.13の増大によって実証される。MenA、MenWおよびMenYに対する良好な免疫応答が維持されていた。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド縮合化学反応を用いてタンパク質キャリアに糖類をコンジュゲート化する方法であって、該糖類が(例えばその反復単位の一部として)アミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、またはアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むように誘導体化されており、該タンパク質キャリアがアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むか、またはアミノ基および/もしくはカルボキシル基を含むように誘導体化されており、該方法は以下のステップ:
(I)該タンパク質キャリアがアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該糖類がアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
(a)該糖類と、コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートとを混合するステップ、および
(b)必要なタンパク質キャリアのアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ;
(II)該糖類がアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該タンパク質キャリアがアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを含む場合、
(a)該タンパク質キャリアと、コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートとを混合するステップ、および
(b)必要な糖類のアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ;
(III)該糖類がアミノ基とカルボキシル基の両者を含み、かつ該タンパク質キャリアがアミノ基とカルボキシル基の両者を含む場合、
(a)該タンパク質キャリアと該糖類とを混合するステップ、および
(b)コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートを35秒間〜6時間かけて添加するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
ステップ(b)において、時間が50秒間〜5時間、1分間〜4時間、2分間〜3時間、3分間〜2時間、4〜60分間、5〜50分間、6〜40分間、7〜30分間または8〜20分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)において、時間が1分間〜5時間、10分間〜4時間、20分間〜3時間、30分間〜2時間、40〜90分間、または50〜70分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボジイミドがEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)またはEDAC以外のカルボジイミドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コンジュゲート化を行うために必要なカルボジイミドのアリコートが、0.01〜3mg/mg糖類、0.05〜2mg/mg糖類または0.09〜1mg/mg糖類、例えば0.07〜0.25mg/mg糖類または0.1〜0.2mg/mg糖類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記糖類および/もしくはタンパク質キャリアが、アミノ基またはカルボキシル基を含むように誘導体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記誘導体化が、ヘテロまたはホモ二官能性リンカーの付加を介するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカーが4〜12炭素原子を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リンカーが、2つの反応性アミノ基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーがADHである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記リンカーが、2つの反応性カルボン酸基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
前記リンカーが、一方の末端に反応性アミノ基を有し、他方の末端に反応性カルボン酸基を有する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項13】
前記誘導体化が、誘導体化の対象となる糖類および/またはタンパク質キャリアに大過剰のリンカーを反応させることにより行われる、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記糖類が、その反復単位の一部分として反応性ヒドロキシル基を有し、リンカー上のアミノ基により部分的に誘導体化されている、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記糖類が、CDAP化学を用いて部分的に誘導体化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記糖類が、その反復単位の一部分として反応性アミノ基を有し、リンカー上のカルボキシル基により部分的に誘導体化されている、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記糖類が、カルボジイミド縮合化学反応を用いて部分的に誘導体化されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記糖類が、その反復単位の一部分として反応性カルボキシル基を有し、リンカー上のアミノ基を介して部分的に誘導体化されている、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記糖類が、カルボジイミド化学反応を用いて部分的に誘導体化されており、任意で該部分的誘導体化ステップにおいて該カルボジイミドが、0.01〜0.5、0.015〜0.1、0.02〜0.075、または0.025〜0.05 mgカルボジイミド/mg糖類で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)において、カルボジイミド、糖類またはタンパク質キャリアのアリコートをポンプを用いて一定速度で添加する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)において、カルボジイミド、糖類またはタンパク質キャリアのアリコートを前記の時間にわたって段階的に添加する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記アリコートの少なくとも4分の1を前記時間の前半にわたって添加し、前記アリコートの少なくとも4分の1を前記時間の後半にわたって添加する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アリコート「a」を4〜100の段階「s」において添加する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記アリコートのa/sを各段階において添加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1つの段階が前記時間「p」のゼロ時点に行われる場合、続く各段階はp/(s−1)の時点で行われる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記糖類が、ステップ(b)において最終濃度0.5〜50mg/mlで存在する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質キャリアと前記糖類との当初比率が、5:1〜1:5、4:1〜1:1、または3:1〜2:1(w/w)である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(b)において存在する塩、例えばNaClの濃度が、0〜2M、0.1〜1Mまたは0.2〜0.5Mである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質キャリアが、ステップ(b)において最終濃度1〜50mg/mLで存在する、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(b)において反応pHがpH4.5〜6.5、pH4.7〜6.0またはpH5〜5.5に維持される、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(b)の反応中にN−ヒドロキシスクシンイミドも存在し、かつステップ(b)での反応pHがpH4.5〜7.5に維持される、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(b)での反応温度が4〜37℃、10〜32℃、17〜30℃または22〜27℃に維持される、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(b)においてアリコートがすべて添加された後に、反応がさらに10分間〜72時間、20分間〜48時間、30分間〜24時間、40分間〜12時間、50分間〜6時間または1〜3時間、例えば10〜120、10〜80、10〜50、20〜40、または25〜30分間維持される、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
反応が完了した時点で、pHが7.5〜9に調整される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
糖類−タンパク質コンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィーカラムで精製する次なるステップ(c)を含む、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
糖類−タンパク質コンジュゲートを滅菌濾過する次なるステップ(d)を含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
有効用量の糖類−タンパク質コンジュゲートを製薬上許容される賦形剤とともに製剤化し、免疫原性組成物またはワクチンを製造する次なるステップ(e)を含む、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記糖類が細菌莢膜糖類であり、例えば髄膜炎菌(N. meningitidis)血清型A、B、C、W135もしくはY、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fもしくは33F、B群連鎖球菌Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型もしくはVII型、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型、黄色ブドウ球菌8型、チフス菌(Salmonella typhi)(Vi糖類)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、またはインフルエンザ菌(H. influenzae)b型からなるリストより選択される細菌由来のものである、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記糖類の重量平均分子量が1000〜2000000、5000〜1000000、10000〜500000、50000〜400000、75000〜300000または100000〜200000である、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記糖類が天然の(native)多糖であるか、または×10倍以下にサイズ分類されている(sized)(例えばマイクロ流動化により)、請求項1〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記糖類が細菌リポオリゴ糖またはリポ多糖であり、例えば髄膜炎菌(N. meningitidis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、大腸菌、サルモネラ菌(Salmonella)またはカタラリス菌(M. catarrhalis)からなるリストより選択される細菌に由来するものである、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質キャリアが1以上のTヘルパーエピトープを含む、請求項1〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質キャリアが、TT、DT、CRM197、TTのCフラグメント、インフルエンザ菌のプロテインD、肺炎球菌のPhtD、および肺炎球菌のPneumolysinからなる群より選択される、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法により取得することができる糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート。
【請求項45】
請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法により取得することができる免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項46】
疾患の予防もしくは治療のための医薬の製造における、請求項45に記載の免疫原性組成物またはワクチンの使用。
【請求項47】
有効用量の請求項45に記載の免疫原性組成物またはワクチンを、そのような処置が必要な患者に投与するステップを含む、疾患の予防方法もしくは治療方法。
【請求項48】
前記疾患が、髄膜炎菌(N. meningitidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、カタラリス菌(M. catarrhalis)、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、チフス菌(Salmonella typhi)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、大腸菌およびインフルエンザ菌(H. influenzae)からなるリストより選択される細菌により引き起こされるものである、請求項46または47に記載の使用または方法。
【請求項49】
糖類がチフス菌(Salmonella typhi)由来のVi莢膜糖類である、請求項1〜43に記載の方法により取得することができる糖類−タンパク質キャリアコンジュゲート。
【請求項50】
請求項49に記載のVi糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートおよび製薬上許容される賦形剤を含む免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項51】
前記Vi糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートが、ヒト用量あたり、0.5〜15、1〜10、2.0〜7.5または2.5〜5 μgのVi糖類を含む、請求項50に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項52】
Hib莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートをさらに含む、請求項50または51に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項53】
前記Hib糖類コンジュゲートが、Vi糖類コンジュゲートの糖類用量よりも低い糖類用量で存在する、請求項52に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項54】
前記Hib糖類コンジュゲートが、ヒト用量あたり、0.1〜9、1〜5、または2〜3 μgの糖類を含む、請求項52または53に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項55】
前記Hib糖類が、TT、DT、CRM197、TTのCフラグメント、プロテインD、OMPCおよびPneumolysinからなる群より選択されるタンパク質キャリアにコンジュゲート化されている、請求項52〜54のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項56】
同一のタンパク質キャリアがHib糖類コンジュゲートおよびVi糖類コンジュゲート中に使用されている、請求項52〜55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項57】
使用されている前記同一のタンパク質キャリアがTTである、請求項56に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項58】
前記Hib糖類コンジュゲート中のHib糖類とタンパク質キャリアとの比率が、1:5〜5:1(w/w)である、請求項52〜57のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項59】
前記Hib糖類コンジュゲート中のHib糖類とタンパク質キャリアとの比率が、1:1〜1:4、1:2〜1:3.5または約1:3(w/w)である、請求項58に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項60】
前記Hib糖類がリンカーを介してタンパク質キャリアにコンジュゲート化されている、請求項52〜59のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項61】
前記リンカーが二官能性である、請求項60に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項62】
前記リンカーが2つの反応性アミノ基を有する、請求項61に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項63】
前記リンカーが2つの反応性カルボン酸基を有する、請求項61に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項64】
前記リンカーが、一方の末端に反応性アミノ基を有し、他方の末端に反応性カルボン酸基を有する、請求項61に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項65】
前記リンカーが4〜12炭素原子を有する、請求項61〜64のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項66】
前記リンカーがADHである、請求項61または62に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項67】
前記Hib糖類が、CNBrまたはCDAPを用いてタンパク質キャリアまたはリンカーにコンジュゲート化されている、請求項52〜66のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項68】
前記タンパク質キャリアが、カルボジイミド化学反応、任意でEDAC化学反応を用いてHib糖類またはリンカーにコンジュゲート化されている、請求項52〜67のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項69】
DTP(DTPaまたはDTPw)ワクチンをさらに含む、請求項50〜68のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項70】
DTPワクチンが、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムまたはその両方の混合物に吸着されている、請求項69に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項71】
B型肝炎ワクチンをさらに含む、請求項50〜70のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項72】
前記B型肝炎ワクチンがB型肝炎表面抗原であり、任意でリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項71に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項73】
A型肝炎ワクチンをさらに含む、請求項50〜72のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項74】
前記A型肝炎ワクチンが不活化A型肝炎ウイルス調製物である、請求項73に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項75】
ポリオウイルスワクチンをさらに含む、請求項50〜74のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項76】
前記ポリオウイルスワクチンが不活化ポリオウイルス(IPV)調製物であり、任意で1、2および3型を含む、請求項75に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項77】
1以上の髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートをさらに含み、ここで、該莢膜糖類は、以下の髄膜炎菌(meningococcal)血清型:A型、C型、W135型、Y型、AおよびC型、AおよびW135型、AおよびY型、CおよびW135型、CおよびY型、W135およびY型、AおよびCおよびW135型、AおよびCおよびY型、AおよびW135およびY型、CおよびW135およびY型、AおよびCおよびW135およびY型由来のものである、請求項50〜76のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項78】
マラリアワクチンをさらに含む、請求項50〜77のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項79】
前記マラリアワクチンが、任意に3D-MPLなどの脂質A誘導体でアジュバント化されているRTS,Sである、請求項78に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項80】
前記ViおよびHib莢膜糖類コンジュゲートが共凍結乾燥(co-lyophilised)されている、請求項52〜68のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項81】
前記ViおよひHib莢膜糖類コンジュゲートが、任意で安定化剤、例えばスクロースおよび/またはトレハロースなどの多価アルコールの存在下で、共凍結乾燥(co-lyophilised)されている、請求項80に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項82】
1以上の髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートをさらに含み、ここで、該莢膜糖類は、以下の髄膜炎菌(meningococcal)血清型:A型、C型、W135型、Y型、AおよびC型、AおよびW135型、AおよびY型、CおよびW135型、CおよびY型、W135およびY型、AおよびCおよびW135型、AおよびCおよびY型、AおよびW135およびY型、CおよびW135およびY型、AおよびCおよびW135およびY型由来のものであり、該髄膜炎菌(meningococcal)莢膜糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートが、任意で安定化剤、例えばスクロースおよび/またはトレハロースなどの多価アルコールの存在下で、ViおよびHib莢膜糖類コンジュゲートと共凍結乾燥(co-lyophilised)されている、請求項81に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項83】
前記凍結乾燥組成物が投与前に水性媒体により再構成される、請求項80〜82のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項84】
前記水性媒体が、凍結乾燥組成物中にまだ含まれていない請求項69〜79に記載のさらなる抗原を含む、請求項83に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項85】
リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはその両方の混合物を含む請求項50〜84のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項86】
アルミニウム塩を含まない、請求項50〜84のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項87】
アジュバント化されていない、請求項50〜84のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項88】
pH7.0〜8.0に緩衝化されている、請求項50〜87のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項89】
請求項1〜43に記載の方法により糖類をコンジュゲート化するステップ、および得られた糖類−タンパク質キャリアコンジュゲートを製薬上許容される賦形剤とともに製剤化するステップを含む、請求項50〜88のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチンを作製する方法。
【請求項90】
百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、チフス菌(Salmonella typhi)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)により引き起こされる疾患に対する防御を宿主に付与するための2種の多価免疫原性組成物を含む同時または連続投与のためのワクチンキットであって、該キットが:
破傷風トキソイド(TT)、
ジフテリアトキソイド(DT)、および
全細胞または無細胞百日咳成分(PwまたはPa)
を含む第1容器と、
請求項52〜68、80または81に記載の免疫原性組成物またはワクチン
を含む第2容器
とを含むものである、上記ワクチンキット。
【請求項91】
前記第1容器が、任意でリン酸アルミニウムに吸着されている、B型肝炎表面抗原をさらに含む、請求項90に記載のワクチンキット。
【請求項92】
前記第1容器または第2容器が不活化ポリオウイルス(IPV)をさらに含む、請求項90または91に記載のワクチンキット。
【請求項93】
疾患の予防または治療のための医薬の製造における、請求項50〜88、90〜92のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチンまたはキットの使用。
【請求項94】
有効用量の請求項50〜88のいずれか1項に記載の免疫原性組成物またはワクチンを、そのような処置が必要な患者に投与するステップを含む、疾患の予防もしくは治療方法。
【請求項95】
前記疾患が、髄膜炎菌(N. meningitidis)、チフス菌(Salmonella typhi)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、およびジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)からなるリストより選択される1以上の細菌により引き起こされるものである、請求項93または94に記載の使用または方法。

【公表番号】特表2010−514818(P2010−514818A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544406(P2009−544406)
【出願日】平成20年1月2日(2008.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050021
【国際公開番号】WO2008/081022
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】