説明

ワクチン

本発明は、少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原とを含み、該抗原と該抗原送達粒子とが中間リンカーを用いて結合されている、免疫原性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、中間リンカーを用いて抗原に結合された粒子抗原送達系を含む、ワクチンおよび免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
免疫原性を高めた新たな組成物またはワクチンは常に必要とされている。1つの戦略として、任意の所与の抗原に対して免疫応答を惹起することを試み、それを高めるためにアジュバントが使用されてきた。
【0003】
WO05/014110は、a)リポソーム b)リポソームに結合し、またはリポソームに封入されている少なくとも1つのA型CpGを含む組成物を開示している。Shahum & Therin [Immunology (1988) 65:315-317]は、遊離しているか、リポソーム中にカプセル化されているか、またはヘテロ二官能性試薬N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)を用いてリポソーム表面に共有結合されているウシ血清アルブミンを含む組成物を開示している。この古典的なコンジュゲーション法を用いて、製剤の初期段階で、抗原をリポソームに直接的に共有結合させる。この結合は、酵素的または化学的に分解されない限り、可逆的ではない。他方、カプセル化法は、抗原の変性および/または分解のリスクを伴う。
【0004】
代替方法は、抗原の、イオン的に帯電したリポソームへの静電相互作用による結合で構成される。HSV抗原gBをカチオン性脂質DOTAPに複合体化し、首尾良く用いてワクチン接種したマウスに免疫応答(特にCTL応答)を誘導した(Walkerら 1992- PNAS, 89: 7915-7918)。カチオン性脂質DC-cholと組み合わせたHBsAgは、高められ且つ均衡のとれた免疫を生成し、B型肝炎ワクチンに対するマウスの不応答を克服することができた(Brunelら 1999.Vaccine 17: 2192-2203)。
【0005】
好適な免疫応答を与える改善されたワクチンおよび免疫原性組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の明示
本発明者らは、粒子抗原送達系と抗原を含み、該抗原と粒子が中間リンカーを用いて結合されているワクチンまたは免疫原性組成物が、粒子と抗原が中間リンカーを用いて結合されていない組成物と比較して高められた免疫応答である免疫応答を誘導することを示した。特に本発明の免疫原性組成物は、高められたCD8+T細胞免疫応答を誘導する。
【0007】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含み、該抗原と抗原送達粒子が中間リンカーを用いて結合されている免疫原性組成物を提供する。
【0008】
特に、本発明の1つの実施形態において、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つが抗原送達粒子に結合し、その相補的リンカー成分が抗原に結合し;該抗原送達粒子と抗原が、それらが結合している相補的成分のハイブリダイゼーションおよび/または結合を介して実質的に結合している免疫原性組成物が提供される。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、リンカーは、相補的一本鎖オリゴヌクレオチドで形成される。オリゴヌクレオチド介在性結合は、オリゴヌクレオチドの長さおよび配列を変えることにより調整され得る強度を有する可逆的結合を可能とする。これにより、その後、細胞によって取り込まれた後に抗原を放出させることができる。さらに抗原は、B細胞に認識させ得るある程度の長さのリンカーを有する抗原送達粒子の表面にある。
【0010】
本発明は、粒子抗原送達系と抗原を梱包および輸送のため別々のままとし得る2バイアルのコンセプトも可能とし、例えば、これらを適切な時点で(恐らく投与の直前に)混合することができる。本発明は、関心のある任意の抗原と組み合わせ得る包括的な粒子抗原送達系の概念をさらに可能とする。さらに、粒子抗原送達系に結合させた様々なオリゴを用いて、様々な抗原(必要であれば様々な比で)を同粒子に結合させることができる。
【0011】
従って、本発明の第1の態様において、中間リンカーを用いて結合された抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物が提供される。
【0012】
本発明の1つの態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、リンカー成分の1つが粒子に結合し、他の相補的リンカー成分が抗原に結合する、上記免疫原性組成物が提供される。
【0013】
本発明の他の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、リンカー成分の1つが粒子に結合し、他の相補的リンカー成分が抗原に結合し、且つ2つの相補的リンカー成分がハイブリダイズしている、上記免疫原性組成物が提供される。
【0014】
本発明の1つの態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、該中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む、上記免疫原性組成物が提供される。
【0015】
本発明の他の態様において、感染および/または疾患の予防のための免疫原性組成物の製造における、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含むワクチンまたは免疫原性組成物の使用であって、該中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む、上記使用が提供される。
【0016】
本発明の他の態様において、感染および/または疾患の予防および/または治療のための免疫原性組成物の製造における、本明細書に記載のワクチンまたは免疫原性組成物の使用が提供される。
【0017】
他の態様において、免疫原性組成物中の抗原が由来する病原体の変異体である病原体によって引き起こされる感染または疾患に対する防御のための、本明細書で定義されるワクチンまたは免疫原性組成物の方法または使用が提供される。
【0018】
別の実施形態において、免疫原性組成物中の抗原の変異体である抗原を含む病原体によって引き起こされる感染または疾患に対する防御のための、本明細書で定義されるワクチンまたは免疫原性組成物の方法または使用が提供される。
【0019】
本発明の他の実施形態において、患者に対する本発明の免疫原性組成物を用いた投与を含んでなる、抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を惹起するための本明細書で定義される免疫原性組成物の方法または使用が提供される。
【0020】
本発明の他の態様において、哺乳動物における疾患の治療のための、本明細書で定義されるワクチンまたは免疫原性組成物の方法または使用が提供される。
【0021】
本発明の他の態様において、i) オリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子と、ii) i)のオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原とを含むキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】異なる溶出画分のSDS-PAGE/クーマシー分析。
【図2】異なる溶出画分のSDS-PAGE/BET分析。
【図3A】ハイブリダイゼーション反応混合物の超遠心分離後のペレットおよび上清のSDS-PAGE分析。
【図3B】ハイブリダイゼーション反応混合物の超遠心分離後のペレットおよび上清のSDS-PAGE分析。
【図4】研究設計。
【図5】サイトカイン産生CD8+T細胞頻度(CD8+集団中の%)。
【図6】サイトカイン産生CD4+T細胞頻度(CD4+集団中の%)。
【図7】in vivoで検出された細胞介在性細胞毒性。
【図8】抗p27抗体力価(全IgG-プールされた血清)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本明細書における用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、全ての例において、それぞれ、用語「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」と、場合により置換可能であることが本発明者らにより意図される。
【0024】
本発明の「ワクチン組成物」に関する本明細書に記載の実施形態はまた、本発明の「免疫原性組成物」に関する実施形態にも適用することが可能であり、逆の場合も同じである。
【0025】
本発明者らは、本明細書に記載の本発明のワクチンまたは免疫原性組成物が、抗原送達粒子と抗原が中間リンカーを用いて結合されていない組成物と比較して高められた免疫応答を誘発することを示した。「高められた免疫応答」により、以下の方法の1つ以上によって免疫応答が改変されることが意味される:エフェクター細胞(例えばCD8+および/またはCD4+T細胞、B細胞)の数の増加;エフェクター細胞型の1つ以上の有効性の増加;1つ以上の細胞型による1種以上のサイトカインの産生の増加;および全サイトカインプロファイルの一部としての1種以上のサイトカインの産生の増加。特に、本発明の免疫原性組成物は、高められたCD8+T細胞免疫応答を誘導する。高められたCD8+T細胞応答は、標的細胞が細胞内細菌またはウイルス(例えばHIV)に感染され得るまたは標的細胞が腫瘍細胞であり得る、特定の疾患の予防および/または治療のために重要である。
【0026】
従って、本発明の第1の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物が提供される。
【0027】
相補的成分を有する中間リンカーを用いることの他の利点は、異なるバルクの粒子/抗原を、異なる抗原(1つまたは複数)/抗原送達粒子(1つまたは複数)とそれぞれ容易に結合させ得ることである。これは、直接共有結合を超える他の利点である。
【0028】
特に、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つは抗原送達粒子に結合し、その相補的リンカー成分は抗原に結合し;抗原送達粒子と抗原が、それらが結合している相補的成分のハイブリダイゼーションおよび/または結合を介して実質的に結合している、免疫原性組成物が提供される。
【0029】
従って、本発明の特定の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、当該中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む、上記免疫原性組成物が提供される。
【0030】
本発明の特定の態様において、本発明の免疫原性組成物は、第1のオリゴヌクレオチドが抗原送達粒子に結合し、第1のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のオリゴヌクレオチドが抗原に結合する少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む中間リンカーを用いて結合された、少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物を包含する。
【0031】
本発明の他の態様において、1対以上の相補的オリゴヌクレオチドを介して1つ以上の抗原に結合した少なくとも1つの抗原送達粒子を含む免疫原性組成物が提供される。他の実施形態において、免疫原性組成物は、1つ以上の抗原に結合した少なくとも1つの抗原送達粒子を含む;抗原は全て同じであってもよく、または抗原の1つ以上が異なっていてもよい。本発明の他の実施形態において、抗原送達粒子の1つ以上が異なっている、抗原送達粒子組成物を含む免疫原性組成物が提供される。本発明の他の実施形態において、1つ以上の異なる抗原送達粒子と1つ以上の異なる抗原を含む免疫原性組成物が提供される。
【0032】
粒子抗原送達系
粒子送達系は、当技術分野で周知であり(例えばSingh and O’Hagan 2002 Pharmaceutical Research 19(6): 715- 727参照)、水中油型エマルション、マイクロ粒子(O’Hagen & Singh 2003 Expert Rev. Vaccines 2(2): 269-283参照)、免疫刺激複合体(ISCOM)、プロテオソーム、油滴およびリポソームが挙げられる。本明細書で使用される用語「抗原送達粒子」は、粒子抗原送達系の単一粒子を指し、例えば、限定するものではないが、水中油型エマルションの油滴、単一マイクロ粒子またはナノ粒子、単一プロテオソーム、単一油滴、単一リポソーム、ミセル、プロテオソーム、または単一ISCOMが挙げられる。
【0033】
リポソーム
本発明の特定の実施形態は、中間リンカーを用いて抗原と結合されたリポソーム製剤を含む免疫原性組成物に関する。
【0034】
本発明の1つの態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのリポソームと少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つがリポソームに結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合している、上記免疫原性組成物が提供される。
【0035】
本発明の他の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのリポソームと少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つがリポソームに結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合し、且つ2つの相補的リンカー成分がハイブリダイズしている、上記免疫原性組成物が提供される。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、中間リンカーは、少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む。
【0037】
用語「リポソーム」は通常、水性内部を取り囲む単層または多層(特に、形成される脂質膜の数に応じて2、3、4、5、6、7、8、9、または10層)脂質構造を指す。リポソームおよびリポソーム製剤は、当技術分野で周知である。リポソームを形成し得る脂質としては、脂肪または脂肪様特性を有する全ての物質が挙げられる。リポソーム中の脂質を構成し得る脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロフォスフィノリピド、グリセロホスフォノリピド、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、アルケオリピド(archeolipid)、合成カチオン性脂質および炭水化物含有脂質を含む群から選択することができる。
【0038】
1つの実施形態において、リポソームはリン脂質を含む。好適なリン脂質として(限定するものではないが):ホスファチジルコリンの合成の中間体であるホスホコリン(PC);天然リン脂質誘導体:卵ホスホコリン、卵ホスホコリン、大豆ホスホコリン、水素添加大豆ホスホコリン、天然リン脂質としてのスフィンゴミエリン;および合成リン脂質誘導体:ホスホコリン(ジデカノイル-L-α-ホスファチジルコリン[DDPC]、ジラウロイルホスファチジルコリン[DLPC]、ジミリストイルホスファチジルコリン[DMPC]、ジパルミトイルホスファチジルコリン[DPPC]、ジステアロイルホスファチジルコリン[DSPC]、ジオレオイルホスファチジルコリン[DOPC]、1-パルミトイル,2-オレオイルホスファチジルコリン[POPC]、ジエライドイルホスファチジルコリン[DEPC])、ホスホグリセロール(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DMPG]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DPPG]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DSPG]、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[POPG])、ホスファチジン酸(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸[DMPA]、ジパルミトイルホスファチジン酸[DPPA]、ジステアロイル-ホスファチジン酸[DSPA])、ホスホエタノールアミン(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DMPE]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DPPE]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DSPE]、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DOPE])、ホスホセリン、ポリエチレングリコール[PEG]リン脂質(mPEG-リン脂質、ポリグリセリン-リン脂質、官能化リン脂質、末端活性化リン脂質)が挙げられる。1つの実施形態において、リポソームは、1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む。1つの実施形態において、高純度ホスファチジルコリンが用いられ、ホスファチジルコリン(卵)、水素添加ホスファチジルコリン(卵)、ホスファチジルコリン(大豆)、水素添加ホスファチジルコリン(大豆)を含む群から選択することができる。他の実施形態において、リポソームは、ホスファチジルエタノールアミン[POPE]またはそれらの誘導体を含む。
【0039】
リポソームサイズは、リン脂質組成およびその調製に用いられる方法に応じて、30nmから数μmまで変化し得る。本発明の特定の実施形態において、リポソームサイズは50nm〜500nmの範囲内であり、また他の実施形態においては、50nm〜200nmの範囲内である。動的レーザー光散乱法は、リポソームのサイズを測定するために用いられる当業者に周知の方法である。
【0040】
本発明の他の実施形態において、本発明のリポソームは、2つ以上のオリゴヌクレオチド、例えば1〜10,000、1〜15,000、1〜25,000、1〜50,000、1〜90,000、1〜100,000個、あるいはそれ以上のオリゴヌクレオチドに結合する。抗原に結合するオリゴヌクレオチドは、全て同じであってもよいし、または1つ以上が異なっていてもよい。
【0041】
他の実施形態において、本発明のリポソームは、ステロールをさらに含む。好適なステロールとして、β-シトステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロールおよびコレステロールが挙げられる。1つの特定の実施形態において、リポソームはステロールとしてコレステロールを含む。これらのステロールは、当技術分野で周知であり、例えばコレステロールは、動物性脂肪中で見出された天然のステロールとしてMerck Index, 第11版、341頁に開示されている。
【0042】
本発明の免疫原性組成物は、2つ以上の種類のリポソームを含み得る。リポソームはその組成において異なっていてよく、このため本発明の1つの実施形態において、1つ以上の異なるリポソームを含む免疫原性組成物が提供される。リポソームは、異なる成分で構成されまたは異なる成分を含み、さらなる成分を含み、特定の成分を欠くという点で、またはリポソームを構成する成分の1つ以上が異なる割合で存在するという点で異なり得る。リポソームは、その組成が(すなわちそれらが誘導されるリン脂質が)異なり得る。他の実施形態において、リポソームは、リポソーム中に存在するステロールの量が異なっていてよく、例えば1つの実施形態において、免疫原性組成物は、ステロールを含むリポソーム部分とステロールを含まない部分を含み、またはリポソームはステロールの量が異なり得る。他の実施形態において、免疫原性組成物は、存在する免疫刺激剤が異なるリポソームを含み得る;例えば、1つの実施形態において、免疫原性組成物は、サポニンおよび/またはTLRリガンドなどの免疫刺激剤を含むリポソーム部分と、付加的な免疫刺激剤を含まないリポソームを含み得る。他の実施形態において、結合しているオリゴヌクレオチドが異なるリポソームを含む免疫原性組成物が提供される。例えば、本発明の免疫原性組成物は、特定のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのセットに結合した一部のリポソームを含んでいてよく、一方で、残りのリポソームは別のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのセットを含み得る。免疫原性組成物は、任意数の異なる種類のリポソーム、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30個またはそれ以上の異なるリポソームを含み得る。当然、一部のリポソームは1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合することができないが、他のリポソームは1つ以上の異なる種類のオリゴヌクレオチドに結合する。
【0043】
水中油型エマルション
本発明の1つの実施形態において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの水中油型エマルション中の油滴と少なくとも1つの抗原を含む本発明の免疫原性組成物が提供される。
【0044】
本発明の1つの態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの水中油型エマルション中の油滴と少なくとも1つの抗原を含み、該リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つが油滴に結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合している免疫原性組成物が提供される。
【0045】
本発明の他の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの水中油型エマルション中の油滴と少なくとも1つの抗原を含み、該リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つが油滴に結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合し、且つ該2つの相補的リンカー成分がハイブリダイズしている、免疫原性組成物が提供される。
【0046】
本発明の特定の実施形態において、中間リンカーは、少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む。
【0047】
本発明の水中油型エマルションは、代謝可能な油と乳化剤を含む。任意の水中油型組成物をヒトへの投与に適したものとするため、エマルション系の油相は代謝可能な油を含んでいなければならない。用語「代謝可能な油」の意味は、当技術分野で周知である。「代謝可能な」は、「代謝によって変換され得る」と定義することができる(Dorland’s Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company, 第25版(1974))。この油は、受容者にとって毒性がなく、代謝によって変換することができる任意の植物油、魚油、動物油または合成油であってよい。木の実、種子、および穀物は、植物油の一般的な源である。合成油も本発明の一部であり、NEOBEE(登録商標)などの市販油を包含し得る。
【0048】
特に好適な代謝可能油はスクアレンである。スクアレン(2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサエン)は、サメの肝油中に大量に認められ、オリーブ油、小麦胚芽油、ぬか油、および酵母中には比較的少量に認められる不飽和の油であり、本発明において用いるのに特に好ましい油である。スクアレンは、それがコレステロール生合成の中間体であるという事実により、代謝可能な油である(Merck index, 第10版, 登録番号8619)。本発明の他の実施形態において、代謝可能油は、免疫原性組成物中に組成物の全量の0.5%〜10%(v/v)の量で存在する。
【0049】
水中油型エマルションは、乳化剤をさらに含む。この乳化剤は、好適には、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。さらに、上記乳化剤は、好適には、ワクチンまたは免疫原性組成物中に、組成物の全量の0.125〜4%(v/v)の量で存在する。
【0050】
本発明の水中油型エマルションは、必要に応じてトコールを含む。トコールは、当技術分野で周知であり、EP0382271に記載されている。好適には、トコールは、アルファトコフェロールまたはそれらの誘導体、例えばアルファトコフェロールスクシネート(ビタミンEスクシネートとしても知られる)であってよい。上記のトコールは、好適には、アジュバント組成物中に、免疫原性組成物の全量の0.25%〜10%(v/v)の量で含まれる。
【0051】
水中油型エマルションの製造方法は、当業者に周知である。一般的に、この方法は、油相(必要に応じてトコールを含む)とPBS/TWEEN80TM溶液などの界面活性剤とを混合した後、ホモジナイザーを用いて均質化することを含んでなり、当業者には、少量の液体を均質化するには、シリンジ針を通して混合物を2回通過させることを含む方法が好適であることが明らかであろう。同様に、マイクロフルイダイザー(M110S Microfluidics装置、最大50回通過、6バールの最大圧入力(約850バールの出力圧)で2分間)での乳化プロセスを当業者により適合させ、少量または大量のエマルションを製造することができる。この適合化は、所要の直径の油滴を有するように調製が達成されるまで、結果として得られるエマルジョンの測定を含む日常的な実験により達成することができる。
【0052】
水中油型エマルジョンでは、油と乳化剤は水性担体中になければならない。水性担体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であってよい。
【0053】
特に、本発明の水中油型エマルジョン系は、サブミクロン範囲の小さい油滴サイズを有する。好適には、液滴サイズは直径で120〜750nm、より特に120〜600nmのサイズの範囲にあるだろう。さらにより特に、水中油型エマルジョンは、強度が少なくとも70%の油滴が直径500nm未満であり、より特に、強度が少なくとも80%の油滴が直径300nm未満であり、より特に強度が少なくとも90%の油滴が直径120〜200nmの範囲にある、当該油滴を含有する。
【0054】
本発明による油滴サイズ、すなわち直径は、強度により与えられる。油滴サイズの直径を強度により決定するいくつかの方法がある。強度を、サイズ決定装置の使用、好適には、Malvern Zetasizer 4000または好ましくはMalvern Zetasizer 3000HSなどの動的光散乱法により測定する。第1の可能性は、動的光散乱法によりz平均直径ZADを決定することである(PCS-光子相関分光法);この方法はさらに、多分散性指数(PDI)を与え、ZADおよびPDIは共にキュムラントアルゴリズムを用いて算出される。これらの値は粒子屈折率の知識を必要としない。第2の手段は、別のアルゴリズム、ContinもしくはNNLS、または自動「Malvern」のもの(サイズ決定装置により提供されるデフォルトアルゴリズム)により全粒子サイズ分布を決定することにより、油滴の直径を算出することである。多くの場合、複合体組成物の粒子屈折率は未知であるので、強度分布のみを考慮に入れ、必要に応じて、この分布に由来する強度平均も考慮に入れる。
【0055】
本発明の免疫原性組成物は、1種以上の油滴を含み得る。水中油型エマルション中の油滴は、その組成が異なっていてよく、このため本発明の1つの実施形態において、1つ以上の異なる油滴を含む免疫原性組成物が提供される。油滴は、異なる成分で構成されまたは異なる成分を含み、さらなる成分を含み、特定の成分がないという点で、または油滴を構成する成分の1つ以上が異なる割合で存在するという点で異なり得る。油滴は、その組成が(すなわちそれらが誘導される脂質が)異なっていてよい。他の実施形態において、結合しているオリゴヌクレオチドが異なる油滴を含む免疫原性組成物が提供される。例えば、本発明の免疫原性組成物は、特定のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのセットに結合した油滴を一定割合含んでいてよく、残りの油滴は代替的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのセットを含み得る。免疫原性組成物は、任意数の異なる種類の油滴、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30個またはそれ以上の異なる油滴を含み得る。
【0056】
ISCOM
本発明のある実施形態において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのISCOMと少なくとも1つの抗原を含む本発明の免疫原性組成物が提供される。
【0057】
本発明の1つの態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのISCOMと少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、該リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つがISCOMに結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合している、上記免疫原性組成物が提供される。
【0058】
本発明の他の態様において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのISCOMと少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、該リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、該リンカー成分の1つがISCOMに結合し、他方の相補的リンカー成分が抗原に結合し、且つ該2つの相補的リンカー成分がハイブリダイズしている、上記免疫原性組成物が提供される。
【0059】
本発明の特定の実施形態において、中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む。
【0060】
ISCOMは、当技術分野で周知である(Kersten & Crommelin [1995] Biochimica et Biophysica Acta 1241:117-138を参照)。ISCOMはサポニン、コレステロールおよびリン脂質を含み、典型的にはサイズが40nmのオープンケージ様構造を形成する。ISCOMは、サポニン、コレステロールまたさらにリン脂質の相互作用から生じる。ISCOMを調製するための典型的な反応混合物は、5mg/mlのサポニンと、それぞれ1mg/mlのコレステロールおよびリン脂質である。
【0061】
本発明のISCOMにおける使用に適したリン脂質としては、例えば、限定するものではないが、ホスホコリン(ジデカノイル-L-α-ホスファチジルコリン[DDPC]、ジラウロイルホスファチジルコリン[DLPC]、ジミリストイルホスファチジルコリン[DMPC]、ジパルミトイルホスファチジルコリン[DPPC]、ジステアロイルホスファチジルコリン[DSPC]、ジオレオイルホスファチジルコリン[DOPC]、1-パルミトイル、2-オレオイルホスファチジルコリン[POPC]、ジエライドイルホスファチジルコリン[DEPC])、ホスホグリセロール(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DMPG]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DPPG]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DSPG]、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[POPG])、ホスファチジン酸(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸[DMPA]、ジパルミトイルホスファチジン酸[DPPA]、ジステアロイル-ホスファチジン酸[DSPA])、ホスホエタノールアミン(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DMPE]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DPPE]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DSPE]、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DOPE])、ホスホセリン、ポリエチレングリコール[PEG]、リン脂質(mPEG-リン脂質、ポリグリセリン-リン脂質、官能化リン脂質、末端活性化-リン脂質)が挙げられる。本発明の1つの実施形態において、ISCOMは、1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む。他の実施形態では、高純度ホスファチジルコリンが用いられ、ホスファチジルコリン(卵)、水素添加ホスファチジルコリン(卵)、ホスファチジルコリン(大豆)、水素添加ホスファチジルコリン(大豆)を含む群から選択することができる。他の実施形態において、ISCOMは、ホスファチジルエタノールアミン[POPE]またはそれらの誘導体を包含する。
【0062】
多数のサポニンが、本発明のISCOMにおける使用に適している。個々のサポニンのアジュバント活性および溶血活性は、当技術分野で広く研究されている(Lacaille-Dubois and Wagner, 前掲)。例えば、Quil A(南米の木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から誘導される)およびその画分は、US 5,057,540および"Saponins as vaccine adjuvants", Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55;およびEP 0 362 279 B1に記載されている。
【0063】
ワクチン製造において、Quil Aの画分を含むISCOMが用いられてきた(Morein, B., EP 0 109 942 B1)。これらの構造は、アジュバント活性を有すると報告されている(EP 0 109 942 B1; WO 96/11711)。
【0064】
Quil Aの画分、Quil Aの誘導体および/またはそれらの組み合わせは、本発明のISCOMにおいて使用するためのサポニンの調製に適している。溶血性サポニンQS21およびQS17(HPLC精製されたQuil Aの画分)は、強力なアジュバントとして報告されており、それらの製造方法は、米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。これらの参考文献には、全身ワクチン用の強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil-Aの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)にさらに記載されている。QS21と、ポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組み合わせも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7などのQuil Aの画分を含む粒子アジュバント系はWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されており、これらは本明細書に組み込まれる。QH-A、QH-B、QH-Cと呼ばれる他の特定のQuil A画分およびQH-703と呼ばれるQH-AとQH-Cとの混合物は、ISCOMの形態でWO1996011711に開示されており、本明細書に組み込まれる。
【0065】
マイクロ粒子
本発明のある実施形態において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのマイクロ粒子と少なくとも1つの抗原を含む本発明の免疫原性組成物が提供される。
【0066】
マイクロ粒子、マイクロ粒子を含む組成物、およびマイクロ粒子の製造方法は、当技術分野で周知である(Singhら [2007 Expert Rev. Vaccines 6(5):797-808]およびWO/1998/033487参照)。本明細書で使用される「マイクロ粒子」という用語は、様々な分子量、またPLGなどのコポリマーの場合には様々なラクチド:グリコリド比を有するポリマー材料から誘導される直径約1000nm〜約150μmの粒子を指す。特に、マイクロ粒子は、針およびキャピラリーを閉塞することなく非経口投与を可能とする直径である。マイクロ粒子は、マイクロスフェアとしても知られている。マイクロ粒子サイズは、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査電子顕微鏡法などの当技術分野で周知の技術によって容易に決定される。
【0067】
本明細書において使用するためのマイクロ粒子は、滅菌可能、非毒性且つ生分解性の材料から形成される。このような材料としては、限定するものではないが、ポリ(a-ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物が挙げられる。
【0068】
特に、本発明のマイクロ粒子は、ポリ(u-ヒドロキシ酸)、特に、ポリ(ラクチド)("PLAII)あるいはD,L-ラクチドとグリコリドもしくはグリコール酸とのコポリマー(例えばポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)("PLGIIもしくは"PLGAII))、またはD,L-ラクチドとカプロラクトンとのコポリマーから誘導される。
【0069】
本発明のマイクロ粒子を製造するための生分解性ポリマーは、例えばBoehringer Ingelheim(Germany)およびBirmingham Polymers, Inc.,(Birmingham, AL)から容易に商業的に入手することができる。例えば、本明細書におけるマイクロ粒子を形成するための有用なポリマーとしては、ポリヒドロキシ酪酸;ポリカプロラクトン;ポリオルトエステル;ポリ酸無水物;ならびにポリ(ヒドロキシ酸)(例えばポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,Lラクチド)(いずれも本明細書において"PLAII"として知られる)、ポリ(ヒドロキシブチレート))、D,L-ラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えばポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(本明細書において「PLG」もしくは「PLGA」と呼ばれる))またはD,L-ラクチドとカプロラクトンとのコポリマーから誘導されるものが挙げられる。特定のポリマーは、PLAポリマーおよびPLGポリマーである。これらのポリマーは様々な分子量で入手することが可能であり、所与の抗原用の適切な分子量は、当業者により容易に決定される。このため、例えばPLAについては、好適な分子量は、約2000〜5000である。PLGについては、好適な分子量は、通常、約10,000〜約200,000、特に約15,000〜約150,000、またさらにより特に約50,000〜約100,000である。マイクロ粒子を形成するためにPLGなどのコポリマーを用いる場合、様々なラクチド:グリコリド比を使用することができる。
【0070】
様々なラクチド:グリコリド比を有するマイクロ粒子の混合物は、所与の抗原について所望の放出動態を達成し、また一次免疫応答および二次免疫応答の両方を与えるための製剤における用途が見出される。本発明のマイクロ粒子の分解速度は、ポリマー分子量およびポリマー結晶化度のような因子によって制御することもできる。様々なラクチド:グリコリド比および分子量を有するPLGコポリマーは、Boehringer Ingelheim(Germany)およびBirmingham Polymers, Inc.,(Birmingham, AL)などの多数の源から容易に商業的に入手することができる。これらのポリマーは、Tabataら, J. Biomed. Mater.Res. (1988) 22:837-858に記載されるような当技術分野で周知の技術を用いた乳酸成分の単純重縮合によって合成することもできる。
【0071】
ナノ粒子
本発明のある実施形態において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つのナノ粒子と少なくとも1つの抗原を含む本発明の免疫原性組成物が提供される。
【0072】
ナノ粒子は、当技術分野で周知である。ナノ粒子を含む組成物およびナノ粒子の調製は、WO/2008/051245およびSinghら(2007 Expert Rev. Vaccines 6(5):797-808)に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本明細書で使用される用語「ナノ粒子」は、ポリマー材料から誘導される直径1000nm未満の粒子を指す。ナノ粒子は、マイクロ粒子の組成(上記参照)と同じ/類似の組成を有し、サイズにおいてのみ異なる。ナノ粒子は、ナノスフェアとしても知られている。本発明の組成物中のナノ粒子は、典型的には、Z平均および/またはD(v,0.5)値が250nm未満であり、より典型的には150nm未満の、またZ平均および/またはD(v,0.9)が350nm未満であり、より典型的には200nm未満のサイズ分布を有する。
【0074】
粒子サイズは、当技術分野で利用可能な方法を用いて決定(測定)することができる。例えば、粒子サイズは、光子相関分光法、動的光散乱法または準弾性光散乱法を用いて決定することができる。これらの方法は、粒子サイズと、ブラウン運動の測定から得られる粒子の拡散特性との相関関係に基づくものである。ブラウン運動は、粒子を囲む溶媒分子による衝撃に起因する粒子のランダム運動である。粒子が大きいほどブラウン運動が遅いであろう。速度は、移動拡散係数(D)によって規定される。測定値は、粒子が液体中でどのように動くか(流体力学直径)を示す。求められる直径は、当該粒子と同じ移動拡散係数を有する粒子の直径である。粒子サイズは、溶液中の粒子によって散乱される光の強度を単回測定する静的光散乱を用いて決定することもできる。静的光散乱は、光強度を散乱角と溶質濃度の関数として測定する。光源(例えばレーザー光)を通過する粒子は、それらのサイズに反比例する角度で光を散乱する。大きな粒子は高強度で低散乱角の回折パターンを生じるが、小さな粒子は広角低強度シグナルを生じる。粒子サイズ分布は、サンプルから散乱される光の強度が、角度の関数として測定される場合に計算することができる。この角度情報は、サイズ分布を計算するため散乱モデル(例えばMie理論)と比較される。
【0075】
通常、粒子サイズは室温で測定され、問題となっているサンプルの複合分析(例えば、同じサンプルについての少なくとも3回の反復測定)を含み、粒子直径の平均値を生成する。
【0076】
光子相関分光法について、Z平均(キュムラント平均または流体力学直径とも呼ばれる)は、典型的には、キュムラント(単峰性)分析から計算される。静的光散乱測定については(また幾つかの実施形態における光子相関分光法についても)、体積に基づくサイズ変数を測定することができる。
【0077】
例えば、D(v,0.5)(vは体積を意味する)は、その値が、測定される組成物中の粒子の50%(体積基準)がD(v,0.5)値未満のサイズを有し、組成物中の粒子の50%がD(v,0.5)値を超えるサイズを有する点として定義されるサイズ変数である。同様に、D(v,0.9)は、その値が、組成物中の粒子の90%(体積基準)がD(v,0.9)値未満のサイズを有し、組成物中の粒子の10%がD(v,0.9)値を超えるサイズを有する点として定義されるサイズ変数である。
【0078】
オリゴヌクレオチド
本発明の他の実施形態において、中間リンカーを用いて少なくとも1つの抗原に結合された本明細書に記載の少なくとも1つの抗原送達粒子を含む組成物であって、当該中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む上記組成物が提供される。
【0079】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、当技術分野で周知である。「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書において、任意の一本鎖オリゴヌクレオチド配列を意味するために用いられる。オリゴヌクレオチドは、RNAもしくはDNAオリゴヌクレオチドであってよく、またはオリゴヌクレオチドはペプチド核酸であってもよく、あるいは代替的な実施形態において、三重DNAへリックスを形成してもよい。このように、本発明による「オリゴヌクレオチド」は、相補的核酸にハイブリダイズし得る一本鎖オリゴヌクレオチド配列を指す。オリゴヌクレオチドの設計(長さおよび特異的配列)は、抗原送達粒子および/または抗原の性質ならびにオリゴヌクレオチドの使用条件(例えば温度およびイオン強度)によって決まるだろう。オリゴヌクレオチドの設計は、結合される抗原送達粒子または抗原の種類によって決定することができる。オリゴヌクレオチドの長さは、結合の特異性および強度を決定することが可能であり、また抗原とリポソーム表面間の望ましい距離に応じて変えてよい。オリゴヌクレオチドの配列は、そのオリゴヌクレオチドの所望の免疫刺激効果に応じて変えることができる。オリゴヌクレオチドは任意の長さであってよく、そのハイブリダイズする能力および/またはその合成の容易さによってのみ限定される。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは8〜250塩基(例えば10〜200、12〜75、13〜50、10〜45、14〜40塩基)であり、具体的には、オリゴヌクレオチドは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40塩基の長さであり得る。
【0080】
相補的オリゴヌクレオチドの対は、これらが相互の結合に適していて、リポソームおよび/または抗原のいずれかに結合することができれば、任意の配列の相補的オリゴヌクレオチドの対であってよい。1つの実施形態において、第1オリゴヌクレオチド配列の配列は、配列番号1〜6のいずれかの配列であり、または配列番号1〜6の配列を含むもしくは配列番号1〜6の配列に含まれる、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100個またはそれ以上の塩基であってよい。オリゴヌクレオチド対の第2塩基は、第1塩基に相補的である。必要とされる場合、任意の所与の環境下で求められる特異性および感度を維持するためにオリゴヌクレオチドの長さおよび/または配列に微修正を加えてよい。本明細書中で挙げられるオリゴヌクレオチドは、例えば、いずれかの方向に1〜40または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10ヌクレオチド伸ばすことができる。
【0081】
本発明の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書において、免疫系の成分を活性化させ得るオリゴヌクレオチドを意味するために用いられる。本発明の1つの実施形態において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1つ以上の非メチル化シトシン-グアノシン(CpG)モチーフを含む。他の実施形態において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1つ以上の非メチル化チミジン-グアノシン(TG)モチーフを含むか、またはTリッチであってよい。「Tリッチ」により、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド組成が50、60、70または80%超のチミジンを含むことが意味される。本発明の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは免疫刺激性オリゴヌクレオチドではなく、非メチル化CpGモチーフを含まない。他の実施形態において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドはTリッチではなく、および/または非メチル化TGモチーフを含まない。
【0082】
オリゴヌクレオチドは、in vitroおよび/またはin vivo安定性を改善するために修飾することができる。例えば、本発明の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格、すなわちヌクレオチド間結合を含むように修飾される。当業者には、オリゴヌクレオチドに対する、ジホスホロチオエート、ホスホロアミデートおよびメチルホスホネート修飾などの他の好適な修飾ならびに代替的ヌクレオチド間結合が周知であり、本発明に包含される。
【0083】
他の実施形態において、オリゴヌクレオチドを、抗原送達粒子および/または抗原のいずれかにコンジュゲーションすることができるように修飾することができる。オリゴヌクレオチドを修飾する方法は当業者に周知である。1つの実施形態において、遊離スルフヒドリル基(SH)を含むように修飾されたオリゴヌクレオチドが提供される。特定の実施形態において、3'末端に遊離スルフヒドリル基を含むオリゴヌクレオチドが提供される。「遊離スルフヒドリル基」は、この基が化学的コンジュゲーションに利用し得ることを意味する。
【0084】
本発明の1つの実施形態において、免疫原性組成物の抗原送達粒子が1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合している本発明の免疫原性組成物が提供される。単一の抗原送達粒子上のオリゴヌクレオチドは全て同じであってもよいし、あるいは、1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドが単一の抗原送達粒子に結合していてもよい。免疫原性組成物中のオリゴヌクレオチドは全て同じであってよく、または他の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを含む。
【0085】
本発明の他の実施形態において、2つ以上の抗原送達粒子を含む免疫原性組成物であって、送達粒子の一部が1種類のオリゴヌクレオチドに結合し、また一部が1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドに結合している、上記免疫原性組成物が提供される。
【0086】
本発明の他の実施形態において、1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドに結合している抗原(1つまたは複数)を含む免疫原性組成物が提供される。すなわち、本発明の抗原は、任意数の異なるオリゴヌクレオチド(例えば1、2、3、4、5、6つまたはそれ以上の異なるオリゴヌクレオチド配列)に結合し得る。本発明の他の実施形態において、2つ以上の異なる抗原を含む免疫原性組成物であって、1つの抗原が1種類のオリゴヌクレオチドに結合し、1つ以上の異なる抗原(1つまたは複数)が1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドに結合している、上記免疫原性組成物が提供される。
【0087】
他の実施形態において、抗原が1つ以上の異なるオリゴヌクレオチド配列に結合している免疫原性組成物が提供される。これにより、単一の抗原分子は1つまたは2つ以上の異なる配列のオリゴヌクレオチドに結合され得るが、本発明の代替的な実施形態においては、抗原集団中の互いに同じ抗原が異なるオリゴヌクレオチドに結合することが意味される。
【0088】
コンジュゲーション
本発明の1つの実施形態は、中間リンカーを用いて抗原送達粒子が抗原に結合された免疫原性組成物に関する。特定の実施形態において、中間リンカーは、少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、当業者に公知の任意の方法により抗原および/またはリポソームに結合させることができる。
【0089】
本発明の特定の実施形態において、本明細書に記載の本発明の免疫原性組成物であって、オリゴヌクレオチドが化学的コンジュゲーションにより少なくとも1つの抗原送達粒子に結合し、且つ少なくとも1つの抗原送達粒子に結合している当該オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドが化学的コンジュゲーションにより少なくとも1つの抗原に結合している、上記免疫原性組成物が提供される。
【0090】
抗原は、1つ以上の、例えば1〜10、1〜15、1〜25、1〜50、1〜200、2〜100個、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の、化学的コンジュゲーションにより結合したオリゴヌクレオチドを有し得る。オリゴヌクレオチドは、当業者に周知の化学的性質を用いて抗原にコンジュゲートさせることができる。
【0091】
1つの実施形態において、二官能性リンカー(例えばS-GMBS[N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル])を用いて抗原をオリゴヌクレオチドにコンジュゲートさせてマレイミド基をタンパク質に導入し、その後このタンパク質に付加的スルフヒドリル基を有するオリゴヌクレオチドをコンジュゲートさせる。マレイミド基を付加するための他の好適な試薬は、N-[α-マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル(AMAS)、N-[β-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル(BMPS)、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(EMCS)、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]-シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロエート](LC-SMCC)、スクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、マレイミド(ポリエチレンオキシド)2,4,6,8または12N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SM(PEG)2,4,6,8または12)、スクシンイミジル 4-[p-マレイミドフェニル]ブチレート(SMPB)、スクシンイミジル6-[β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N--[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(スルホ-EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)、スルホスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)およびスルホスクシンイミジル4-[p-マレイミドフェニル]ブチレート(スルホ-SMPB)(Pierce; Bioconjugate techniques Greg T. Hermanson Academic Press 1996)からなる群から選択することができる。
【0092】
タンパク質が1つ以上の遊離スルフヒドリル基を含む他の実施形態において、マレイミド活性化の前に、遊離スルフヒドリル基をN-エチルマレイミドなどで遮断する。
【0093】
当業者が利用できる多数の他の化学的性質があり、このため1つの実施形態において、遊離スルフヒドリル基を含む抗原は、例えばN-スクシンイミジル3-[2-ピリジルチオ]プロピオネート(SPDP)などの試薬を用い、DTT処理後に遊離アミノ基をスルフヒドリル基に変換するために修飾することができる。他の試薬は、スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルチオ]プロピオンアミド]ヘキサノエート LC-SPDP、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルエン(SMPT)、LC-SMPT、スルホスクシンイミジル 3-[2-ピリジルチオ]プロピオネート(スルホ-SPDP)、スルホスクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルエン(スルホ-SMPT)、スルホスクシンイミジル 6-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルアミドヘキサノエート(スルホ-LC-SMPT)、スルホスクシンイミジル 6-[3'-2-ピリジルチオ]プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ-LC-SDPD)およびN-アセチルホモシステインチオールアクトンからなる群から選択することができる:
オリゴヌクレオチド-SH + 抗原-SH → オリゴヌクレオチド-S-S-抗原
代替的な実施形態において、スルフヒドリル基を含む抗原を、ビスマレイミド試薬(例えばBM[PEO]2もしくは3またはDTME)を用いて修飾し、スルフヒドリル(チオール)修飾されたオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーションに適したマレイミド活性化抗原を生じさせることができる:
抗原-SH + ビスマレイミド試薬 → マレイミド活性化抗原 + オリゴヌクレオチド-SH
代替的な実施形態において、SBAP、NHS-BA、SIA、SIABおよびスルホ-SIABなどの試薬と反応させることにより、ハロアセチル抗原を得ることができる。その後、結果として得られたハロアセチル抗原を、チオール修飾されたオリゴヌクレオチドにコンジュゲートさせることができる:
オリゴヌクレオチド-SH + 抗原-Br → オリゴヌクレオチド-S-抗原 + HBr
リポソームは、当該リポソームのサイズおよび他の制約(例えば、リポソーム表面のオリゴヌクレオチドの立体障害)に応じて、1つ以上の、例えば1〜100,000個のオリゴヌクレオチドに結合され得る。オリゴヌクレオチドは、当業者に周知の化学的性質を用いてリポソームにコンジュゲートさせることができる。リポソームコンジュゲートおよび誘導体の調製はよく知られている(Bioconjugate techniques. G T. Hermanson: preparation of liposome conjugates and derivatives 528-569頁 (1996)を参照)。ホスファチジルエタノールアミン基を含むリポソームを、ヘテロ二官能性クロスリンカーを用いて活性化し、マレイミド、ヨードアセチルまたはピリジルジスルフィド基を付加することができる。
【0094】
オリゴヌクレオチドは、リポソームの成分のいずれか1つ(例えばリン脂質)に結合され得る。1つの実施形態において、リポソームは、マレイミド修飾したリン脂質を含む。1つの実施形態において、リポソームは、POPE-MAL(N-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)L-α-ホスファチジルエタノールアミン、1-パルミトイル-2-オレイル[NOF American corporation]を含み、例えば、これにチオール修飾されたオリゴヌクレオチドをコンジュゲートさせることができる。
【0095】
リポソームは、0.5%〜50%(モル)の割合で修飾リン脂質を含むように調製し得る。特に、修飾リン脂質の割合は1〜20%であり、さらにより特に1〜10%である。オリゴヌクレオチドに共有結合する修飾リン脂質の割合は、実験条件および反応収率によって決まる。
【0096】
オリゴヌクレオチドは、ISCOMの成分のいずれか1つ(例えばリン脂質)に結合され得る。1つの実施形態において、ISCOMは、マレイミド修飾されたリン脂質を含む。1つの実施形態において、ISCOMはPOPE-MALを含み、例えば、これにチオール修飾されたオリゴヌクレオチドをコンジュゲートさせることができる。
【0097】
ISCOMは、修飾リン脂質を含むように調製することができる。オリゴヌクレオチドに共有結合する修飾リン脂質の割合は、実験条件および反応収率によって決まる。他の実施形態において、本発明のISCOMは、修飾したコレステロールを含む。
【0098】
オリゴヌクレオチドは、水中油型エマルション中の油滴にコンジュゲートされ得る。本発明の水中油型エマルションの油滴は、1つ以上のオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションし得る修飾界面活性剤を含み得る。1つの実施形態において、修飾界面活性剤を含む本発明の油滴であって、該界面活性剤が本明細書で定義される修飾リン脂質である、上記油滴が提供される。本発明の特定の実施形態において、修飾リン脂質は、全界面活性剤量の約0.1〜10%(v/v)である。
【0099】
オリゴヌクレオチドは、マイクロ粒子および/またはナノ粒子にコンジュゲートされ得る。本発明のマイクロ粒子/ナノ粒子は、1つ以上のオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションすることができる修飾リン脂質を含み得る。1つの実施形態において、本明細書で定義される修飾リン脂質を含む本発明のマイクロ粒子/ナノ粒子が提供される。
【0100】
本発明の1つの実施形態は、免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 第1のオリゴヌクレオチドを抗原にコンジュゲートさせるステップ;
b. ステップa)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のオリゴヌクレオチドを抗原送達粒子にコンジュゲートさせるステップ;
c. オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、該抗原と抗原送達粒子とを混合するステップ
を含んでなる、上記方法を提供する。
【0101】
他の実施形態において、免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 好適な試薬を用いて抗原上の任意の遊離スルフヒドリル基を遮断するステップ;
b. 該抗原にマレイミド基を付加するステップ;
c. 第1のチオール活性化オリゴヌクレオチドを該抗原にコンジュゲートさせるステップ;
d. ステップc)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のチオールオリゴヌクレオチドを、マレイミド活性化リン脂質を含むリポソームにコンジュゲートさせるステップ;
e. 該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、抗原とリポソームとを混合するステップ
を含んでなる、上記方法が提供される。
【0102】
他の実施形態において、免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 好適な試薬を用いて抗原上の任意の遊離スルフヒドリル基を遮断するステップ;
b. 該抗原にマレイミド基を付加するステップ;
c. 第1のチオール活性化オリゴヌクレオチドを該抗原にコンジュゲートさせるステップ;
d. ステップc)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のチオールオリゴヌクレオチドを、マレイミド活性化リン脂質を含むISCOMにコンジュゲートさせるステップ;
e. 該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、抗原とISCOMとを混合するステップ
を含んでなる、上記方法が提供される。
【0103】
他の実施形態において、免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 好適な試薬を用いて抗原上の任意の遊離スルフヒドリル基を遮断するステップ;
b. 該抗原にマレイミド基を付加するステップ;
c. 第1のチオール活性化オリゴヌクレオチドを該抗原にコンジュゲートさせるステップ;
d. ステップc)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のチオールオリゴヌクレオチドを、マレイミド活性化リン脂質を含む油滴にコンジュゲートさせるステップ;
e. 該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、抗原と油滴とを混合するステップ
を含んでなる、上記方法が提供される。
【0104】
他の実施形態において、免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 好適な試薬を用いて抗原上の任意の遊離スルフヒドリル基を遮断するステップ;
b. 該抗原にマレイミド基を付加するステップ;
c. 第1のチオール活性化オリゴヌクレオチドを該抗原にコンジュゲートさせるステップ;
d. ステップc)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のチオールオリゴヌクレオチドを、マレイミド活性化リン脂質を含むマイクロ粒子および/またはナノ粒子にコンジュゲートさせるステップ;
e. 該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、抗原とマイクロ粒子および/またはナノ粒子とを混合するステップ
を含んでなる、上記方法が提供される。
【0105】
本発明の特定の実施形態において、ステップb)が、二官能性リンカー/抗原のモル比約6を用いて実施される、本明細書に記載の免疫原性組成物の製造方法が提供される。
【0106】
抗原
本発明のワクチンまたは免疫原性組成物は、ヒトまたは動物の病原体および/またはヒトまたは動物における病変形成を引き起こす物質に対する免疫応答を誘発し得る抗原を含む。本発明の他の実施形態において、本発明のワクチンまたは免疫原性組成物は、ヒトまたは動物における腫瘍および/もしくは腫瘍抗原または新生物に対する免疫応答を誘発し得る抗原を含む。
【0107】
用語「抗原」は、当業者に周知である。抗原は、ヒトまたは動物において免疫応答を惹起し得るタンパク質、多糖、ペプチド、核酸、タンパク質-多糖コンジュゲート、分子またはハプテンであり得る。抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、原生動物または真菌から誘導され、これらに類似し、またはこれらから誘導される分子を模倣するように合成される。本発明の代替的な実施形態において、抗原は、腫瘍細胞または新生物から誘導され、これらに類似し、またはこれらから誘導される分子を模倣するように合成される。本発明の他の実施形態において、抗原は、アレルギー、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化、肥満およびニコチン依存症に関与する物質から誘導され、これらに類似し、またはこれらから誘導される分子を模倣するように合成される。
【0108】
本発明の1つの実施形態において、1つ以上の抗原送達粒子を含む免疫原性組成物であって、該抗原送達粒子(1つまたは複数)が中間リンカーを介して1つ以上の抗原に結合している、上記免疫原性組成物が提供される。本発明の他の実施形態において、1つ以上の抗原送達粒子を含む免疫原性組成物であって、該抗原送達粒子がリンカーを介して1つ以上の抗原に結合し、該リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含む、上記免疫原性組成物が提供される。本発明の抗原送達粒子は、任意数の抗原(例えば1〜200,000個の抗原分子;この数は特定の抗原送達粒子によって決まる)に結合している。抗原は全て同じであってもよいし、または代替的な実施形態において、1つ以上の異なる抗原であってもよく、このように本発明の抗原送達粒子は、任意数の異なる抗原(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60個またはそれ以上の異なる抗原)と結合され得る。
【0109】
本発明の他の実施形態において、抗原は、2つ以上のオリゴヌクレオチド(例えば1〜200、2〜100、1〜50、1〜25、1〜15、1〜10個、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上のオリゴヌクレオチド)に結合している。抗原に結合するオリゴヌクレオチドは全て同じであってもよく、あるいは、該オリゴヌクレオチドの1つ以上が互いに異なっていてもよい。
【0110】
本発明の免疫原性組成物は、リンカー成分に結合した抗原送達粒子と、相補的リンカー成分に結合した抗原とを含む。好適には、組成物中で、少なくとも30%以上の抗原分子が抗原送達粒子に結合している。本発明の他の実施形態において、少なくとも約40%以上の抗原分子が抗原送達粒子に結合している。本発明の他の実施形態において、過半数の抗原が抗原送達粒子に結合しており、すなわち、組成物中の抗原分子の50%超が抗原送達粒子に結合している。本発明の他の実施形態において、組成物中の実質的に全ての抗原分子が組成物の抗原送達粒子に結合する。「実質的に全て」という用語により、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の抗原分子が抗原送達粒子に結合していることが意味される。本発明の1つの実施形態において、組成物中で、本発明の免疫原性組成物中に存在する全て(約100%)の抗原が抗原送達粒子に結合している。任意の過剰な非結合抗原分子は、当業者に公知の様々な方法によって組成物から除去することが可能であり、例えば、本免疫原性組成物を遠心分離(抗原送達粒子に結合した抗原はペレット化し、リポソームに結合していない抗原は上清中に残る)に供することができる。
【0111】
キット
本発明の利点は、オリゴヌクレオチドに結合した抗原を、その後、相補的オリゴヌクレオチドに結合した抗原送達粒子に簡単に結合することができる点である。本発明の範囲内には、相補的リンカー成分に結合した抗原送達粒子および抗原を含むキットがある。特定の実施形態において、相補的オリゴヌクレオチドに結合した抗原送達粒子および抗原を含むキットが提供される。本発明のキット中の、相補的オリゴヌクレオチドにコンジュゲートした抗原送達粒子および抗原は、互いにハイブリダイズしていてもよいし、または別々であってもよい(このため宿主への投与前にハイブリダイゼーションを必要とする)。
【0112】
本発明の特定の態様において、i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子を含むキットが提供される。本発明の他の態様において、i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原を含むキットが提供される。
【0113】
本発明の1つの実施形態において、i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子と、ii) i)のオリゴヌクレオチドに相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原とを含むキットが提供される。本発明の他の実施形態において、i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子と、ii) i)のオリゴヌクレオチドに相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した2つ以上の異なる抗原とを含むキットが提供される。本発明の他の実施形態において、i) オリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の抗原送達粒子、ii) i)のオリゴヌクレオチドまたは異なるオリゴヌクレオチドのいずれかに結合した1つ以上の異なる種類の抗原送達粒子;またiii) i)および/またはii)のオリゴヌクレオチドに相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の抗原;また場合によりiv) i)および/またはii)のオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドに結合した1つ以上の異なる抗原を含むキットが提供される。
【0114】
本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つの抗原送達粒子が相補的オリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションを介して少なくとも1つの抗原に結合し、または少なくとも1つの抗原が相補的オリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションを介して少なくとも1つの抗原送達粒子に結合している、キットが提供される。
【0115】
本発明の代替的な実施形態において、抗原送達粒子(1つまたは複数)と抗原(1つまたは複数)とが異なるバイアルに入っているため相補的オリゴヌクレオチドによりハイブリダイズしておらず、投与前の適切な時点でハイブリダイズさせることができるキットが提供される。
【0116】
キットは、任意数の異なる種類の抗原送達粒子(例えば、1〜100個の異なる種類の抗原送達粒子)を含み得る。1つの実施形態において、1種類の抗原送達粒子は同一のオリゴヌクレオチドに結合し、代替的な実施形態において、それぞれ異なる種類の抗原送達粒子を異なるオリゴヌクレオチドに結合させることができる。他の実施形態において、本発明のキットは、任意数の異なる抗原(例えば1〜100個の異なる抗原)を含み得る。キット中の抗原は、好適には、キット中の少なくとも1セットのリポソームに結合しているオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドに結合している。
【0117】
他の実施形態において、i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子と、ii) 該オリゴヌクレオチドに相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原;およびiii) 他の免疫刺激剤を含むキットが提供される。
【0118】
免疫刺激剤
本発明の他の実施形態において、少なくとも1つの免疫刺激剤または免疫刺激剤の組み合わせをさらに含む、本明細書に実質的に記載されるワクチンまたは免疫原性組成物が提供される。
【0119】
本発明の1つの実施形態において、中間リンカーを用いて結合された少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物であって、当該中間リンカーが、少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチドを含み、1種以上の免疫刺激剤をさらに含む、上記免疫原性組成物が提供される。免疫刺激剤は、リポソーム(脂質二重層中に入れるかもしくは内部水層中に封入する)、ISCOMまたは液滴中に入れて、水溶液中で抗原送達粒子と混合することが可能であり、あるいは他の実施形態において、組成物の成分を付加的な免疫刺激剤に吸着させてもよい。
【0120】
任意の免疫刺激剤は、以下の群:サポニン、リピドAまたはそれらの誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、アルキルグルコサミニドホスフェート、金属塩、Toll様受容体アゴニストまたはそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態において、免疫刺激剤/アジュバントは、Toll様受容体アゴニスト(特にToll様受容体2、3、4、7、8もしくは9アゴニストまたはサポニン)である。特定の組み合わせは、サポニン(特にQS21)アジュバントおよび/またはToll様受容体4アゴニスト(例えば3D-MPL)もしくはToll様受容体9アゴニスト(例えばCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチド)を含む。他の組み合わせは、サポニン(特にQS21)ならびにToll様受容体4アゴニスト(例えばサポニン(特にQS21))およびToll様受容体4リガンド(例えば3D-MPLまたはアルキルグルコサミニドホスフェート)を含む。
【0121】
ある実施形態において、免疫刺激剤は、Toll様受容体(TLR)4リガンド、特に、リピドA誘導体(特にモノホスホリルリピドA、またはより特に3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))などのアゴニストである。3D-MPLは、GlaxoSmithKline Biologicals N.A.によりMPLの名称で販売されており、文献全体を通してMPLまたは3D-MPLと称される(例えば、米国特許第4,436,727号;第4,877,611号;第4,866,034号および第4,912,094号を参照)。3D-MPLは、主としてIFN-g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞応答を促進する。3D-MPLは、GB 2 220 211 Aに開示される方法に従って製造することができる。化学的には、3脱アシル化モノホスホリルリピドAと、3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。特定の実施形態において、本発明の組成物中では、小粒子3D-MPLが用いられる。小粒子3D-MPLは、0.22μmのフィルターを通して滅菌濾過し得るような粒子サイズを有する。このような調製物はWO 94/21292に記載されている。
【0122】
免疫原性組成物は、リポ多糖、好適にはリピドAの非毒性誘導体、特にモノホスホリルリピドA、またはさらに特に3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である免疫刺激剤をさらに含み得る。本発明の1つの実施形態において、免疫原性組成物は3D-MPLを含む。
【0123】
リピドAの合成誘導体は公知であり、限定するものではないが、
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)、(WO 95/14026)
OM 294 DP (3S,9R)-3--[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲノホスフェート) (WO 99/64301およびWO 00/0462 )
OM 197 MP-Ac DP (3S-,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲノホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート) (WO 01/46127)
などのTLR4アゴニストであると考えられる。
【0124】
使用し得る他のTLR4リガンドは、アルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)(例えばWO 9850399またはUS 6303347に開示されるAGP(AGPの製造方法も開示される))、またはUS 6764840に開示されるようなAGPの製薬上許容される塩である。一部のAGPはTLR4アゴニストであり、また一部のAGPはTLR4アンタゴニストである。いずれも有用な免疫刺激剤であると考えられている。
【0125】
TLR-4を通じてシグナル応答を引き起こし得る他の好適なTLR-4リガンド(Sabroeら, JI 2003 p1630-5)は、例えばグラム陰性細菌に由来するリポ多糖およびその誘導体、またはそれらの断片、特に、LPSの非毒性誘導体(例えば3D-MPL)である。他の好適なTLRアゴニストは:ヒートショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75または90;界面活性剤タンパク質A、ヒアルロン酸オリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノゲンペプチドおよびb-デフェンシン-2、ムラミルジペプチド(MDP)または呼吸器合胞体ウイルスのFタンパク質である。1つの実施形態において、TLRアゴニストはHSP60、70または90である。
【0126】
Toll様受容体(TLR)は、昆虫とヒトの間で進化的に保存されたI型膜貫通受容体である。今までのところ、10種のTLR(TLR 1-10)が確立されている(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。TLRファミリーのメンバーは類似する細胞外および細胞内ドメインを有する;その細胞外ドメインはロイシンリッチ反復配列を有することが示されており、その細胞内ドメインはインターロイキン-1受容体(IL-1R)の細胞内領域と類似している。TLR細胞は免疫細胞と他の細胞(血管上皮細胞、脂肪細胞、心筋細胞および腸上皮細胞など)との間で示差的に発現される。TLRの細胞内ドメインはアダプタータンパク質Myd88と相互作用することが可能であり、その細胞質領域中にIL-1Rドメインをも有し、サイトカインのNF-KB活性化をもたらす;このMyd88経路は一方向性であり、これによりTLR活性化によるサイトカイン放出が達成される。TLRは、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージなど)などの細胞種において主に発現される。
【0127】
TLRを通じた刺激による樹状細胞の活性化は、樹状細胞の成熟、およびIL-12などの炎症性サイトカインの産生をもたらす。今までに行われた研究により、TLRは異なる種類のアゴニストを認識するが、一部のアゴニストは幾つかのTLRに共通であることが見出された。TLRアゴニストは主に細菌またはウイルスから誘導され、フラゲリンまたは細菌リポ多糖(LPS)などの分子が挙げられる。
【0128】
「TLRアゴニスト」とは、直接リガンドとして、または内因性もしくは外因性リガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナル経路を介してシグナル応答を引き起こすことができる成分を意味する(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。
【0129】
別の実施形態においては、TLR分子の他の天然または合成アゴニストを、任意の免疫刺激剤として用いる。これらのものとしては、限定されるものではないが、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9のアゴニストが挙げられる。
【0130】
本発明の1つの実施形態において、TLR-1を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-1を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、トリアシル化リポペプチド(LP);フェノール可溶性モジュリン;マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M. tuberculosis)LP;S-(2,3-ビス(パルミトイルオキシ)-(2-RS)-プロピル)-N-パルミトイル-(R)-Cys-(S)-Ser-(S)-Lys(4)-OH、細菌リポタンパク質のアセチル化アミノ末端を模倣するトリヒドロクロリド(Pam3Cys)LPおよびボレリア・ブルグドルフェリ(B. burgdorferi)に由来するOspA LPから選択される。
【0131】
代替的な実施形態において、TLR-2を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-2を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、1種以上のリポタンパク質、ペプチドグリカン、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ボレリア・ブルグドルフェリ、トレポネーマ・パリヅム(T. pallidum)に由来する細菌リポペプチド;スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)などの種に由来するペプチドグリカン;リポテイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリアポリン、細菌線毛、エルシニアビルレンス因子、CMVビリオン、麻疹血球凝集素、および酵母由来ザイモサンである。
【0132】
代替的な実施形態において、TLR-3を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-3を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、二本鎖RNA(dsRNA)、またはポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリIC)、ウイルス感染に関連する分子核酸パターンである。
【0133】
代替的な実施形態においては、TLR-5を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-5を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、細菌フラゲリンである。
【0134】
代替的な実施形態において、TLR-6を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-6を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、マイコバクテリアリポタンパク質、ジアシル化LP、およびフェノール可溶性モジュリンである。さらなるTLR6アゴニストはWO2003043572に記載されている。
【0135】
代替的な実施形態において、TLR-7を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-7を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、N7およびC8位でのグアノシン類似体、もしくはイミダゾキノリン化合物、またはその誘導体である。1つの実施形態において、TLRアゴニストはイミキモッドである。さらなるTLR7アゴニストはWO 02085905に記載されている。
【0136】
代替的な実施形態において、TLR-8を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストが用いられる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-8を介してシグナル応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を有するイミダゾキノリン分子、例えば、レシキモッド(R848)である;レシキモッドはTLR-7によっても認識され得る。使用し得る他のTLR-8アゴニストとしては、WO 2004071459に記載のものが挙げられる。
【0137】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは任意の他のToll様受容体(TLR)9アゴニストも(ハイブリダイゼーションに用いられるものに加えて)使用することができる。本発明のワクチンまたは免疫原性組成物において使用するための特定のオリゴヌクレオチドはCpG含有オリゴヌクレオチドであり、特に、少なくとも3つ、さらにより特に、少なくとも6つ以上のヌクレオチドにより分離された2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドの後にグアニンヌクレオチドが続く。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間は、ホスホロジチオエート、またはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内にある。また、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製造方法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0138】
本発明において使用するための特定のオリゴヌクレオチドの例は、以下の配列を有する。本発明の特定の実施形態において、この配列はホスホロチオエート修飾ヌクレオチド間結合を含む:
(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
(配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
(配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
(配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
(配列番号6): TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)
代替的CpGオリゴヌクレオチドは、重要でない欠失または付加を有する上記の配列を含み得る。本発明において用いられるCpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって合成することができる(例えばEP 468520参照)。好都合なことに、そのようなオリゴヌクレオチドは自動合成装置を利用して合成することができる。
【0139】
従って、別の実施形態において、本発明の組成物は、TLR-1アゴニスト、TLR-2アゴニスト、TLR-3アゴニスト、TLR-4アゴニスト、TLR-5アゴニスト、TLR-6アゴニスト、TLR-7アゴニスト、TLR-8アゴニスト、TLR-9アゴニスト、またはそれらの組合せからなる群より選択される免疫刺激剤をさらに含む。
【0140】
本発明の1つの実施形態において、免疫原性組成物は、サポニンをさらに含む。本発明において使用するための特に好適なサポニンは、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米の樹木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quilaja Saponaria Molina)から単離されたサポニン調製物であり、Dalsgaardら、1974(「サポニンアジュバント」、Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)によってアジュバント活性を有すると初めて記載された。Quil Aに伴う毒性を有することなくアジュバント活性を保持するQuil Aの精製画分、例えば、QS7およびQS21(QA7およびQA21としても知られる)は、HPLCにより単離された(EP 0 362 278)。QS-21は、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および主なIgG2a抗体応答を誘導するキラヤ・サポナリア・モリナの樹皮から誘導された天然サポニンであり、本発明における特定のサポニンである。
【0141】
本発明の免疫原性組成物中のサポニンアジュバントは特に、Quil Aの免疫学的に活性な画分(例えばQS-7またはQS-21)、好適にはQS-21である。1つの実施形態において、本発明の組成物は、免疫学的に活性な、実質的に純粋な形態のサポニン画分を含む。特に、本発明の組成物は、実質的に純粋な形態のQS21を含み、すなわち、該QS21は、少なくとも75%、80%、85%、90%純粋であり、例えば少なくとも95%純粋、または少なくとも98%純粋である。
【0142】
具体的な実施形態において、QS21は、例えばQS21が外因性ステロール(例えばコレステロール)でクエンチされている、QS21の反応性の低い組成物中で提供される。QS21が外因性コレステロールでクエンチされている反応性の低い組成物には、幾つかの特定の形態がある。1つの実施形態において、サポニンを含む本発明のリポソームは、好適には、適切には室温で非晶質のホスファチジルコリン(例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)またはジラウリルホスファチジルコリン)などの中性脂質を含む。リポソームは、飽和脂質で構成されるリポソームのリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質も含み得る。これらの場合、荷電脂質の量は、好適には1〜20% w/w、特に5〜10%である。リン脂質に対するステロールの比は、1〜50%(モル/モル)、好適には20〜25%である。
【0143】
QS21とステロール(特にコレステロール)を含む本発明の免疫原性組成物は、アジュバント効果は維持しているがステロールを含まない組成物と比較した場合、低下した反応性を示す。反応性研究は、WO 96/33739に開示される方法に従って評価することができる。本発明による「ステロール」は、外因性ステロール、すなわち、その抗原性調製物を採取した生物にとって内因性ではないが、抗原調製物に添加され、または後で製剤化の際に添加されるステロールを意味すると解される。
【0144】
活性サポニン画分がQS21である場合、QS21:ステロールの比は、典型的には約1:100〜1:1(w/w)、好適には1:10〜1:1(w/w)、また好ましくは1:5〜1:1(w/w)である。好適には過剰なステロールが存在し、QS21:ステロールの比は、少なくとも1:2(w/w)である。1つの実施形態において、QS21:ステロールの比は1:5(w/w)である。ステロールは、好適にはコレステロールである。
【0145】
他の有用なサポニンは、植物アエスクルス・ヒッポカスタヌム(Aesculus hippocastanum)またはジオフィラ・ストルシアム(Gyophilla struthium)に由来する。文献に記載された他のサポニンとしては、セイヨウトチノキ(ラテン語:アエスクルス・ヒッポカスタヌム(Aesculus hippocastanum))の種子中に生じるサポニンの混合物としてMerck index(第12版:登録3737)に記載されたエスシン(Escin)が挙げられる。その単離は、クロマトグラフィーおよび精製(Fiedler, Arzneimittel-Forsch. 4, 213 (1953))、ならびにイオン交換樹脂(Erbringら、US 3,238,190)により記載されている。エスシンの画分は精製されており、生物学的に活性であることが示されている(Yoshikawa Mら、(Chem Pharm Bull (Tokyo) 1996 Aug; 44(8):1454-1464))。ジオフィラ・ストルシアムに由来するサポアルビン(R. Vochtenら、1968, J. Pharm.Belg., 42, 213-226)も、例えば、ISCOM産生に関連して記載されている。
【0146】
特に、組成物は、上記のリストに挙げられる2種以上の免疫刺激剤を含み得る。1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、リポ多糖と、免疫学的に活性なサポニンの両方を含む。本発明の他の実施形態において、リポ多糖は、本発明のリポソーム中に組み込まれる。本発明の具体的な実施形態において、リポ多糖である3D-MPLと、免疫学的に活性なサポニンであるQS21は、本発明のリポソーム中に組み込まれる。
【0147】
ワクチン接種
本発明の免疫原性組成物を含むワクチン調製物を用いて、全身または粘膜経路を介して該ワクチンを投与することにより、感染に感受性の哺乳動物を防御または治療することができる。これらの投与としては、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路を介する注入;または口/消化管、呼吸器もしくは尿生殖器経路への粘膜投与が挙げられる。本発明のワクチンを単回用量として投与することができるが、その成分は同時に共投与してもよいし、または異なる時間に投与してもよい。さらに、本発明のワクチンを、初回(プライミング)用量についてはIM投与、追加用量についてはIN投与することができる。
【0148】
ワクチン中のタンパク質抗原の含量は、典型的には1〜500μg、好ましくは5〜350μg、最も典型的には5〜300μgの範囲であろう。初回ワクチン接種後、被験体は十分に間隔を空けた1回または数回の追加免疫を受けてもよい。
【0149】
ワクチン調製物は、Vaccine Design (「サブユニットおよびアジュバント手法(The subunit and adjuvant approach)」)(Powell M.F. & Newman M.J.(編)) (1995) Plenum Press New York)に一般的に記載されている。リポソーム内への封入は、Fullerton, 米国特許第4,235,877号により記載されている。
【0150】
各ワクチン用量中の各抗原の量は、一般的なワクチン接種受容者において重大な副作用を伴わずに免疫防御応答を誘導する量として選択される。このような量は、どの特定の免疫源を用いるか、またそれがどのように提示されるかによって変わるだろう。
【0151】
他の実施形態において、本明細書に実質的に記載される組成物の投与による、疾患に感受性のまたは罹患している個体の治療方法が提供される。
【0152】
また、個体が、感染性細菌およびウイルス疾患、寄生生物疾患、特に細胞内病原性疾患、増殖性疾患(例えば前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌または黒色腫);非癌慢性疾患、アレルギーを含む群から選択される疾患にかかるのを予防する方法であって、本明細書に実質的に記載される組成物を当該個体に投与することを含んでなる、上記方法も提供される。
【0153】
他の実施形態において、予防的治療または状態もしくは疾患の治療において使用するためのワクチン組成物であって、少なくとも1つのリポソームと少なくとも1つの抗原とを複合体の形態で含み、該抗原とリポソームが中間リンカーを用いて結合されている、上記ワクチン組成物が提供される。
【0154】
他の実施形態において、予防的治療または状態もしくは疾患の治療において使用するための医薬の製造におけるワクチンの使用であって、該ワクチンが、本明細書に実質的に記載される組成物を含む、上記使用が提供される。
【0155】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0156】
実施例
I- 中間リンカーを介して抗原に結合したリポソームの製剤化。
【0157】
I.1. p27抗原の、GpC-SH一本鎖ODN(デオキシオリゴヌクレオチド)へのコンジュゲーション。
【0158】
方法:
I.1.1. N-エチルマレイミド(NEM)を用いた抗原(Ag)の-SH基の遮断
p27抗原は、マレイミドと反応し得る内在性SHを含む。このSHとマレイミドとの早期反応を回避するため、これを化学的に遮断した。
【化1】

【0159】
このように、P27(SIV)を、25倍モル過剰のN-エチルマレイミド(Sigma、分子量125.12)と共に、室温にて攪拌下で1時間インキュベートした。過剰な試薬は、100mMリン酸塩(pH6.8)を溶出バッファーとして用いてPD10カラム(Amersham)上で除去した。1mlの画分を回収し、280nmの吸光度でモニターした。NEM修飾されたp27を含む画分をプールし、ローリー法(Lowry)で分析した(タンパク質含量)。反応の有効性は、エルマン法(Ellman)の用量で測定した。
【0160】
精製抗原を含む画分2〜4を回収してプールした。
【0161】
プールした画分上で直接エルマンアッセイを行い、全てのSH基が遮断されていることを確認した。
【0162】
I.1.2. p27の活性化
8.7mlのSH遮断したp27(NEM修飾したp27)(1.1mg/ml以下)を1時間インキュベートした(室温(RT)、磁気攪拌)(N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、Pierce)(S-GMBS/p27のモル比6)。副生成物と過剰な試薬は、PD10カラム(Amersham)と、溶出バッファーとしての100mMリン酸塩(pH6.8)を用いて除去した。1mlの画分を回収し、280nmの吸光度でモニターした。マレイミド活性化したp27を含む画分をプールした。タンパク質含量は、ローリー法によって測定した。p27上のマレイミド基の数は、間接エルマン法の用量で測定した(2.4個のマレイミド基が検出された)。S-GMBS N-(ガンマ-マレイミドブチリルオキシ-スクシンイミドエステル)は、一方にスクシンイミド基を、また他方にマレイミド基を含む二官能性試薬である。スクシンイミドは-NH基(例えばタンパク質のアルカリ性アミノ酸の-NH基)と反応し、マレイミドはスルフヒドリル基(-SH)と反応する。
【0163】
ローリー法アッセイを用いてプール中のp27を定量すると、(全量5.6mlについて)1.33mg/mlであることが明らかになった。間接エルマンアッセイを用いて活性収率を確認した。データは、S-GMBS/p27の比6が、タンパク質当たり平均2個の官能基の活性化をもたらしたことを示した。ゲル電気泳動は、この比が、p27集団の比較的均一な活性化を与えたことを示した。より高い比(7.5および15)を用いると高分子量バンドにスメアパターンが生じ、幾つかのタンパク質の架橋が生じた可能性があることを示唆した(データ示さず)。このため、さらなる実験についてはモル比6を選択した。
【0164】
I.1.3. p27抗原とGpC-SH ODNとのコンジュゲーション
【化2】

【0165】
リン酸塩バッファー(pH6.8)中で、マレイミド活性化させたp27を、3.6倍モル過剰のGpC-SH(Eurogentecから入手可能、マレイミド基の数で比較すると1.5倍過剰モル;3'末端にチオール基を有する、配列番号4に示される配列に相補的な配列のホスホジエステルオリゴヌクレオチド)と共にインキュベートした。室温にて1時間後、システイン(Merck、4mg/ml)を加えて反応をクエンチした。すなわち、反応していないマレイミド基を、過剰なシステインを用いて中和した。GpC過剰は、2mMリン酸塩バッファー(150mM NaCl、pH6.8)に対する透析によって除去した。しかし、SDS-PAGEによる分析は、遊離タンパク質と遊離GpCが、ゲル濾過(Superdex 75)によって精製されたコンジュゲート中に依然として存在することを示す。2mMリン酸塩(150mM NaCl、pH6.8)中で溶出を行った。1mlの画分を回収し、260nmおよび280nmの吸光度でモニターした。このコンジュゲートのみを含む画分をプールした。
【0166】
図1(クーマシーブルー染色)は、画分21〜23がp27-GpCコンジュゲートを含み、画分24、25はコンジュゲートしていないp27とp27-GpCコンジュゲートとの混合物を含むが、他の画分はコンジュゲートしていないp27のみを含むことを示す。図2(エチジウムブロマイドまたはBET染色)は、遊離GpCが画分24〜29に出現することを示す。
【0167】
その後、画分24〜26を、Superdex 75カラムを用いた第2精製ステップに供した。次いで、コンジュゲートのみを含む画分をプールし、画分21〜23と混合した。最終プールは、SDS-PAGEおよびクーマシー染色によって分析した。ゲル上に42kDaのバンドが観察され、各p27タンパク質に平均2個のGpCオリゴが結合していることを示していた。
【0168】
コンジュゲートは、使用まで-20℃で保存した。
【0169】
I.2. 相補的CpG-SHオリゴへのリポソームのコンジュゲーション
CpG-SHオリゴ(3'末端にチオール基を有する、配列番号4に示される配列のホスホジエステルCpG)をリポソームの表面上に共有結合させるため、POPE-MAL脂質誘導体(極性頭部基に結合したマレイミド基を有するPOPE)を組み込んだ修飾リポソームを調製した。使用した方法(脂質膜水和法)を以下に記載する。
【0170】
DOPC(8.7mg)、コレステロール(2.5mg)、3D-MPL(0.5mg)およびPOPE-MAL[N-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)L-α-ホスファチジルエタノールアミン、1-パルミトイル-2-オレイル、NOF American corporation](1.3mg、10%モル以下のDOPCを示す)を、2mlクロロホルム中に可溶化した。クロロホルムはその後窒素流下で蒸発させ、減圧下で3時間乾燥させた。乾燥脂質膜に、7.5mgのCpG-SH(POPE-MALより1.5倍モル過剰のCpG-SHを示す)を含む1mlの10mM PO4(150mM NaCl、pH7.2)を加えた。
【0171】
このように形成された脂質膜を、その後脂質膜が完全に再懸濁されるまで水和媒体中でボルテックスした。水和媒体中にCpG-SHが存在することにより、かなり不安定なマレイミド基が分解する前にSHとマレイミドとの間の反応を起こすことが可能となった。この溶液を、プローブソニケーター(50W)を用いて2分間超音波処理し、SUV(単一単層小胞)を得て、その後磁気攪拌下に40℃で1時間インキュベートした。
【0172】
インキュベーションの最後に、遊離CpG-SHから超遠心分離(4℃にて200,000g、1時間)によってCpG組込みリポソームを精製した。上清(遊離CpGを含む)を除去し、ペレット(リポソーム-CpGを含む)を、100μlのバッファー中に再懸濁した。
【0173】
最終ステップとして、リポソームの表面の非反応マレイミド基を、システイン(25モル過剰)を用いて室温(RT)で30分間クエンチした。リポソームを再度ペレット化し、過剰なシステインを除去して100μlバッファー中に再懸濁した。
【0174】
2回の超遠心法で得られたペレットおよび上清を、3%アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロマイドを用いた染色によって分析し、CpGの存在を検出した(データ示さず)。
【0175】
I.3. リポソームとp27のハイブリダイゼーション
GpCにコンジュゲートしたp27をリポソーム上に結合させ得るようにするため、ハイブリダイゼーションステップは、典型的には以下のとおりに行った。この目的のため、1.5 mlのリポソーム-CpGコンジュゲート(15mg/mlのDOPC)と3mlのp27-GpCコンジュゲート(0.5mg/mlのp27)を、PBSバッファー(pH7.4)中で混合し、37℃で30分間インキュベートした。p27-GpCがDNAハイブリダイゼーションを介してリポソーム-CpG上に特異的結合したことを確認するための対照として、p27-GpCを、表面にCpGオリゴがないリポソームと並行してインキュベートした。
【0176】
その後、試験と対照を超遠心し、p27結合リポソーム(ペレット)と遊離p27-GpC(上清)を分離することが可能となった。次いで、ペレットと上清を、SDS-PAGEおよびクーマシー染色によって分析した。2つの代表的な実験のデータを、図3Aおよび3Bに示す。p27の大部分は、試験の場合はペレット中で検出されたが、対照の場合には検出されず、リポソームの表面にCpGオリゴが存在することにより、p27がリポソームへ効率的に結合することが可能となったことを示していた。
【0177】
ハイブリダイゼーション後、QS21を、濃度100μgになるまで免疫原性組成物に加えた。この製剤を、表1および付属の囲みにおいて説明される「P27--GpCCpG--ASA*」として表す。
【0178】
免疫付与実験について注目すべきことに、ハイブリダイゼーションから生じた混合物は、結合していないp27-GpCを除去することなく注射された。
【0179】
オリゴヌクレオチドリンカーによって抗原に結合したリポソームのIN VIVO試験
材料および方法
試薬および培地
以下に要約および記載される製剤を使用して、6〜8週齢のC57BL/B6(H2Kb)、雌マウス(10匹/群)にワクチン接種した。このマウスは、14日間の間隔を空けて2回の注射を受け、第4、5および6週目に出血させた(実際の出血日については図4を参照)。マウスの筋肉に、ex-tempo製剤をワクチン接種した(左腓腹筋に最終容量50μlを注射)。SIV-p27タンパク質とアジュバント化p27をコーディングする組換えアデノウイルスを用いた異種プライムブーストを対照群として使用し、このアデノウイルスを5 x 108VPの用量で注射した。この研究設計は図4に示される。
【0180】
In vivoで試験した製剤の概要
下記の表(表1)は、対照製剤を含む全ての試験製剤についてまとめている。本発明の組成物は強調表示されている。
【表1】

【0181】
アジュバントと抗原の組み合わせ戦略、および特に、対照群の設計の明確化のため、当業者が各製剤の内容物を簡単に決定し且つ文中の記載と図とを結びつけることができるように下記に説明文を提供する。この説明文は、表1(上記)で言及される製剤、下記の文章および図を明確化する。
【表2】

【0182】
II-1.1 対照製剤の調製
II-1.1.1 ASA含有製剤
有機溶媒中の脂質(卵黄由来または合成ホスファチジルコリンなど)とコレステロールおよび3D-MPLとの混合物を、減圧下(あるいは不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームサイズが約100nmに減少するまで微小流動化した後、0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過した。典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水溶液を加えて5〜50mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。リポソームは100nmの規定サイズを有し、これをSUV(小単層小胞)と呼ぶ。QS21の水溶液をSUVに加えた。PBS組成は、Na2HPO4:8.1 mM;KH2PO4:1.47mM;KCl:2.7mM;NaCl:137mM(pH7.4)であった。この混合物をASAと呼ぶ。ASAをp27抗原の存在下で希釈し、p27、3D-MPLおよびQS21が全て最終濃度100μg/mlとなるようにした。この製剤を「p27+ASA」と表す。
【0183】
II-1.1.2. DOTAP含有リポソームまたはPEI(ポリエチレンイミン)ポリマーへのp27の結合
DOTAP含有リポソームを調製するため、クロロホルム中でDOTAP (N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル(]-N,N,Nトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)とDOPE (ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)とをモル比1/1で混合し、溶媒を窒素流下で蒸発させて脂質膜を得た。この膜を、50mM Hepesと6%スクロース(pH7.4)を含むバッファーで水和し、DOTAPの最終濃度を20mg/mlとした。得られた小胞を、400nm、次いで100nmのポリカーボネート膜を通して連続的に押出した。
【0184】
p27/DOTAP-DOPE複合体を調製するため、2mlのp27(200μg/ml)を2mlのDOTAP/DOPEリポソーム(4mg/ml DOTAP濃度)と混合し、この混合物を室温で30分間インキュベートさせた。この混合物のバッファー組成は、Hepes:5mM;スクロース:9%(pH7.4)であった。結合効率を測定するため、リポソームを200,000gの超遠心分離でペレット化し、改変ローリー法を用いて、ペレットおよび上清中でp27をアッセイした。この実験における結合収率は、約60〜70%のp27がリポソームに結合していると推定された。この製剤を「p27-+DOTAP」と表す。
【0185】
PEI(分子量=750KD)を、50mM Hepes + 6%スクロース(pH6.8)中で可溶化した。p27/PEI複合体を調製するため、50mM Hepes、6%スクロース(pH6.8)中に溶解させた2mlのp27(200μg/ml)を、50mM Hepes、6%スクロース(pH6.8)中に溶解させた2mlのPEI(4mg/ml)と混合し、この混合物を室温で30分間インキュベートさせた。この製剤を「p27-+PEI」と表す。
【0186】
ASAアジュバントは、マウスへの投与前にこれらの2つの製剤と混合したため、そのASA濃度は、他の群に使用したASA濃度と同等であった。
【0187】
II-1.2 臓器採取
II-1.2.1 PBL単離
血液を眼窩静脈から採取し(マウス1匹当たり50μl、1群当たり10匹のマウス)、RPMI+ヘパリン(LEO)培地中に直接希釈した。lymphoprep勾配(CEDERLANE)を通してPBLを単離した。次いで、細胞を洗浄し、計数し、最後に特別な(ad hoc)希釈で特別な(ad hoc)バッファー中に再懸濁した(下記参照)。
【0188】
II-1.2.2 脾臓細胞単離
手短に言えば、脾臓の破壊により全細胞を抽出し、次いで細胞を大量のRPMI中で再懸濁した(35ml中に5個の脾臓)。lymphoprep勾配(CEDERLANE)を通して脾臓細胞を単離した。次いで、リンパ球を洗浄し、計数し、最後に、CMCアッセイにおいて標的細胞としてさらに使用するため特別な(ad hoc)希釈で特別な(ad hoc)バッファー中に再懸濁した。
【0189】
II-1.2.3 リンパ節細胞単離
手短に言えば、流入領域リンパ節の破壊によって全細胞を抽出した。これらの細胞を注意深く2回洗浄し、計数し、最後に、CMCアッセイにおいて標的細胞としてさらに使用するため特別な(ad hoc)希釈で特別な(ad hoc)バッファー中に再懸濁した。
【0190】
II-1.3 免疫学的アッセイ
II-1.3.1 細胞内サイトカイン染色(ICS)
上記のとおり採取した血液サンプルについてICSを行った。このアッセイは、2つのステップ(ex vivo刺激および染色)を含む。Ex vivoリンパ球刺激は、 5% FCS(Harlan, Holland)、1μg/mlのCD49dとCD28の各抗マウス抗体(BD, Biosciences)、2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、10μg/ml 硫酸ストレプトマイシン、10単位/mlのペニシリンGナトリウム(Gibco)、10μg/ml ストレプトマイシン、50μM B-MEメルカプトエタノールおよび100X希釈した非必須アミノ酸(これらの添加剤は全てGibco Life technologiesから入手)を補充したRPMI 1640(Biowitaker)である完全培地中で行う。ペプチド刺激は、常に37℃、5% CO2で行った。
【0191】
ステップ1:ex vivo刺激(SIV-p27モデル)
Ex vivo刺激のため、5〜10 105PBLを、それぞれ1μg/mlの濃度で存在する、59個の15量体のSIV-p27ペプチド(それぞれ11アミノ酸重複し、Neosystemから購入した様々なMHCクラスI制限ペプチドおよびMHCクラスII制限ペプチドを包含する)のプールを補充した完全培地中で再懸濁した。2時間後、1μg/ml Brefeldin-A(BD, Biosciences)を16時間添加し、全18時間後に細胞を回収した。
【0192】
ステップ2:染色
刺激の直後、PBLを染色した。手短に言えば、細胞を1回洗浄した後、抗マウス抗体(全てBD, Biosciencesで購入)で染色した。さらなるステップは全て氷上で行った。最初に細胞を、50μlのCD16/32溶液(1/50f.c.、FACSバッファー)中で10分間インキュベートした。50μlのT細胞表面マーカー混合液を加え、(Cp当たり1/100 CD8a、1/100 CD4 APC Cy7)、洗浄前に細胞を20分間インキュベートした。細胞を200μlの透過化/固定化溶液(BD, Biosciences)中で固定および透過処理し、透過化/洗浄バッファー(BD, Biosciences)中で1回洗浄し、4℃にて、抗IFNg-APC、抗TNFa-PEおよび抗IL2-FITCで2時間または一晩染色した。CELLQuestTMソフトウエアを有するFACS CaliburTMを用いてデータを分析し、生きているCD8のゲート内の15000事象が試験ごとに得られた。
【0193】
II-1.3.2 In vivoで検出される細胞媒介性細胞傷害活性(in vivoにおけるCMC)
In vivoにおける抗原特異的細胞傷害性を評価するため、免疫化したマウスと対照マウスに、抗原特異的標的と非特異的標的標的(比1/1)の混合物を注射した。シンジェニックな脾細胞およびリンパ節細胞に、59個の、全SIV-p27タンパク質を包含する15量体ペプチドの1μg/mlのプールを添加しまたは添加せず、低用量および高用量のCFSEでそれぞれ標識した。示差的標識のため、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Molecular Probes - Palmoskiら;2002, J. Immunol. 168, 4391-4398)を、0.2μMまたは2.5μMの濃度で用いた。両種の標的を1/1の比でプールし、108標的/mlの濃度で再懸濁した。2回目の注射の21日後に、1匹のマウスにつき200μlの標的混合物を尾静脈に注射した。標的注射の24時間後に屠殺した動物から採取した血液(頸静脈)のFACSR分析によって細胞傷害性を評価した。下記の式を用いて、p27特異的標的細胞の平均溶解率を、抗原陰性対照に対して算出した:
【数1】

【0194】
注射前の標的細胞 = in vivo注射の前にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的(preinj.+)とパルスされていない(preinj.-)標的との混合物。
【0195】
補正した標的(+) = 注射前の混合物中のpreinj+細胞の数を考慮するために補正した、in vivo注射の後にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的の数(上記を参照)。
【0196】
II-1.3.3 抗原特異的抗体力価:(プールされた)血清の特異的IgGの分析(ELISA)
血清学的分析を2回目の注射の2週間後に評価した。マウス(10匹/群)を、後眼窩穿刺により出血させた。
【0197】
使用するプレートは、抗原モデルによってコーティングが異なる96ウェルプレート(NUNC、免疫吸着プレート)である。
【0198】
SIV-p27モデルについて:ELISAによって抗SIV-p27全IgGを測定した。96ウェルプレートを、4℃にて一晩抗原でコーティングした(1ウェル当たり100μlのSIV-p27溶液、PBS中5μg/ml)。顕色ステップは以下の通りに実施した:その後プレートを洗浄バッファー(PBS/0.1% Tween 20(Merck))中で洗浄し、200μlの飽和バッファー(PBS/0.1% Tween 20/1% BSA)で37℃にて1時間飽和させた。飽和バッファーを除去し、100μlの希釈マウス血清を加え、37℃でさらに60分間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートを、100μlのビオチン化抗マウス全IgG(飽和バッファー中で1000倍希釈した)と共に37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、上記のとおり96ウェルプレートを再度洗浄した。飽和バッファー中で1000倍希釈したストレプトアビジンペルオキシダーゼ(Amersham)の溶液を加えた(100μl/ウェル)。最後の洗浄は、洗浄バッファー中での5ステップ洗浄であった。最後に、1ウェルにつき100μl OPDA(37.5μl ml Citrate de Na - 0.05% tween(pH4.5) + 15 mg OPDA + 37.5μl H2O2を即席で添加)を加え、プレートを室温にて20分間暗中に保った。反応を止めるため、1ウェルにつき100μlのH2SO4 2Nを加えた。BIORADから入手したElisaプレートリーダーにより、490/630nmの波長で吸光度を読み取った。結果は、Softmax-proソフトウエアを用いて算出した。
【0199】
II-2 結果
II-2.1 EX VIVOで検出されたサイトカイン産生T細胞(ICS)
図5は、2回目の注射の7日後、異なる群について検出されたサイトカイン産生CD8+T細胞頻度を示す。
【0200】
一次CD8応答は極めて低かった(データ示さず)。次いで、図8に報告される二次応答は、一次応答のクリアブーストの結果である。2の7日後、遊離p27およびASA(P27+ASA)を含む製剤の投与を受けたマウスについて、CD8頻度は極めて低かった。p27をDNAハイブリダイゼーションによってリポソームの表面に結合させると(P27--GpCCpG-ASA*)、P27+ASAと比較してCD8応答は明らかに増加し、リポソーム上へのp27の結合がCD8+T細胞応答に明らかな増強効果を与えたことを示していた。オリゴハイブリダイゼーションを介した抗原/リポソーム結合ができなかった対照製剤は以下のとおりであった:POPE-MAL含有リポソームを含むが、結合CpGは有さない製剤(p27 + ASA*)、またはCpGに結合したリポソームを含むが、p27は修飾されていない製剤(p27 + ASA*--CpG)、またはp27にコンジュゲートしたGpCを有するが、表面にCpGがないリポソームを有する製剤(p27--GpC + ASA*)。これらの対照製剤は全て、極めて低いCD8応答(0.5%未満)を誘導した。このことは、CD8応答の改善が、p27のハイブリダイゼーションを介したリポソームへの結合を明らかに必要とし、また抗原および/またはリポソームの化学的修飾によるものでも、リポソームに結合した修飾CpGの単独存在によるものでもないことを示した。結論として、全体のデータは、抗原を、相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを介して免疫刺激剤MPLおよびQS21を含むリポソームに結合させることにより、CD8応答の改善を達成し得ることを示す。カチオン性脂質を含む製剤((p27-+DOTAP)とASA)またはカチオン性ポリマーを含む製剤((p27-+PEI)とASA)を注射したマウスは一匹も、検出可能な頻度のp27特異的CD8+T細胞を誘導しなかった。これらの後者のデータは、抗原の、イオン性相互作用を介したDOTAPリポソームまたはPEIポリマーなどの粒子系への結合がCD8を誘導するのに十分ではないことを示し、このため抗原がオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを介してASAに結合した場合に観察されたCD8応答の改善は、単に抗原の粒子化によるものではないことを示唆する。
【0201】
図6は、2回目の注射の7日後に異なる群について検出されたサイトカイン産生CD4+T細胞頻度を示す。CD8応答について観察されたように、一次CD4応答は極めて低かった(データ示さず)。このため、図9で報告される応答は、免疫応答のクリアブーストの結果である。2回目の注射の7日後、データは、ハイブリダイゼーションを介した抗原のリポソームへの結合が、CD4応答にもプラスの影響を与えることを明らかに示す(p27 + ASAとP27--GpCCpG-ASA*を比較)。CD8応答について、対照製剤は、CD4応答の増大が、タンパク質の修飾(p27-GpC + ASA*)、またはリポソームの単独修飾(P27 + ASA*)もしくはリポソームに結合したCpGの単独存在(P27 + ASA*-CpG)によるものではないことを示した。カチオン性脂質を含む製剤((p27-+DOTAP)とASA)またはカチオン性ポリマーを含む製剤((p27-+PEI)とASA)を注射したマウスは一匹も、検出可能な頻度のp27特異的CD4+T細胞を誘導しなかった。
【0202】
II-2.2 IN VIVOで検出された細胞傷害活性(CMC)
図7は、2回目の注射の21日後にin vivoで検出された細胞傷害活性を示す。標的細胞への注射の24時間後にPBLを分析した(詳細については、材料および方法を参照)。p27がDNAハイブリダイゼーションによってリポソームの表面に結合している製剤(P27--GpCCpG-ASA*)は、遊離p27およびASA(p27 + ASA)を含む製剤よりも高い細胞傷害活性を誘導した。対照群(p27-GpC + ASA*、P27 + ASA*、P27 + ASA*-CpG)はいずれも、P27--GpCCpG-ASA*製剤によって誘導された細胞傷害性と同じくらい高いレベルの細胞傷害性は誘導しなかった。カチオン性脂質と結合した抗原を含む製剤((p27-+DOTAP)とASA)、またはカチオン性ポリマーと結合した抗原を含む製剤((p27-+PEI)とASA)を注射したマウスは一匹も、in vivoで検出可能な細胞傷害活性を誘導しなかった。
【0203】
II-2.3 抗原特異的抗体力価:(プールされた)血清の特異的IgGの分析(ELISA)
図8は、2回目の注射の14日後に採取した個々の血清中で検出された抗p27 IgG力価を示す。P27特異的抗体力価は、DNAハイブリダイゼーションを介してリポソームに結合した抗原上で増加する。本発明では、修飾p27とASAを含む製剤(P27-GpC + ASA*)が、抗体応答を改善することができた。カチオン性脂質を含む製剤((p27-+DOTAP)とASA)またはカチオン性ポリマーを含む製剤((p27-+PEI)とASA)を注射した群はいずれも、p27 + ASAの注射を受けたマウスにおいて観察された抗体力価よりも高い抗体力価は誘導しなかった。
【0204】
CpGモチーフを含まないオリゴヌクレオチド(配列番号7 GGTGTGTGCATTGCTTGGTGGTGGおよびその相補的配列)を含む免疫原性組成物も試験した。ハイブリダイゼーションが示されたサンプルについて、ハイブリダイズしていない対照を上回って免疫応答の増加を示す傾向があったが、この傾向は統計的に有意ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの抗原送達粒子と少なくとも1つの抗原を含み、該抗原と該抗原送達粒子が中間リンカーを用いて結合されている、免疫原性組成物。
【請求項2】
抗原送達粒子が、リポソーム、ISCOM、水中油型エマルション中の油滴、マイクロ粒子、ナノ粒子、または油滴からなる群から選択される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
抗原送達粒子がリポソームである、請求項1または2のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
抗原送達粒子がISCOMである、請求項1または2のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
抗原送達粒子が水中油型エマルション中の油滴である、請求項1または2のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
抗原送達粒子がマイクロ粒子である、請求項1または2のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
抗原送達粒子がナノ粒子である、請求項1または2のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
リンカーが互いに相補的な少なくとも2つの成分を含み、第1のリンカー成分が抗原送達粒子に結合し、第1のリンカー成分に相補的な第2のリンカー成分が抗原に結合している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
2つの相補的リンカー成分が結合および/またはハイブリダイズしている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記中間リンカーが少なくとも1対の相補的オリゴヌクレオチド配列を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
第1のオリゴヌクレオチドが抗原送達粒子に結合し、第1のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のオリゴヌクレオチドが抗原に結合している、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
1つ以上の抗原が、相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを介して1つ以上の抗原送達粒子に結合している、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが、DNA、RNA、およびPNAの群から選択される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドがDNAである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート骨格を含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、1つ以上のCpGモチーフを含む、請求項14または15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、1つ以上のCpGモチーフを含まない、請求項14または15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
1つ以上のCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド配列が、配列番号4の配列(ODN 2006)を含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
1つ以上のオリゴヌクレオチドが、抗原送達粒子および/または抗原への前記オリゴヌクレオチドのコンジュゲーションを容易にするように修飾されている、請求項10〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
1つ以上のオリゴヌクレオチドがチオール(SH)基の付加により修飾されている、請求項10〜19のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
チオール基がオリゴヌクレオチドの3'末端にコンジュゲートしている、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの抗原送達粒子が、化学的コンジュゲーションにより第1のオリゴヌクレオチドに結合している、請求項10〜21のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの抗原が、化学的コンジュゲーションにより第1のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のオリゴヌクレオチドに結合している、請求項22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの抗原が、マレイミドベースの化学的コンジュゲーションによりオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに結合している、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
免疫原性組成物が免疫刺激剤を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
抗原送達粒子がリポソームであり、少なくとも1つのリポソームが1つ以上の免疫刺激剤を含む、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
免疫刺激剤が、サポニン、Toll様受容体4(TLR4)リガンド、Toll様受容体7および/または8(TLR7/8)リガンド、Toll様受容体9(TLR9)リガンド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項25または26のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
リポソームが、サポニンおよび/またはTLR4リガンドを含む、請求項26または27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
サポニンがQuil Aの誘導体である、請求項27または28のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
Quil A誘導体がQS21である、請求項29に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
TLR4リガンドがモノホスホリルリピドAである、請求項27または28のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
抗原送達粒子がリポソームであり、少なくとも1つのリポソームがステロールを含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
ステロールがコレステロールである、請求項32に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
1つ以上の異なる抗原を含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 第1のオリゴヌクレオチドを抗原にコンジュゲートさせるステップ;
b. ステップa)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のオリゴヌクレオチドを抗原送達粒子にコンジュゲートさせるステップ;
c. 該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、該抗原と該抗原送達粒子とを混合するステップ
を含んでなる、前記方法。
【請求項36】
免疫原性組成物の製造方法であって、以下:
a. 好適な試薬を用いて抗原上の任意の遊離スルフヒドリル基を遮断するステップ;
b. 該抗原にマレイミド基を付加するステップ;
c. 第1のチオール活性化オリゴヌクレオチドを該抗原にコンジュゲートさせるステップ;
d. ステップc)のオリゴヌクレオチドに相補的な第2のチオールオリゴヌクレオチドを、マレイミド活性化リン脂質を含むリポソームにコンジュゲートさせるステップ;
e. オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で、抗原とリポソームとを混合するステップ
を含んでなる、前記方法。
【請求項37】
医薬において使用するための、請求項1〜36のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
疾患に感受性のまたは罹患しているヒトの予防および/または治療において使用するための、請求項1〜37のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
疾患に感受性のまたは罹患しているヒトの予防および/または治療のための医薬の製造における、請求項1〜38のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の投与による、疾患に感受性のまたは罹患している個体の治療。
【請求項41】
i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子を含むキット。
【請求項42】
i) 1つ以上のオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原を含むキット。
【請求項43】
i) オリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原送達粒子と、ii) i)のオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドに結合した少なくとも1つの抗原とを含むキット。
【請求項44】
1つ以上の異なる種類の抗原送達粒子を含む、請求項41〜43のいずれか1項に記載のキット。
【請求項45】
1つ以上の異なる抗原を含む、請求項41〜44のいずれか1項に記載のキット。
【請求項46】
1つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを含む、請求項41〜45のいずれか1項に記載のキット。
【請求項47】
1つ以上の免疫刺激剤をさらに含む、請求項41〜46のいずれか1項に記載のキット。
【請求項48】
少なくとも1つの抗原送達粒子が、相補的オリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションを介して少なくとも1つの抗原に結合し、または少なくとも1つの抗原が、相補的オリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションを介して少なくとも1つの抗原送達粒子に結合している、請求項43〜47のいずれか1項に記載のキット。
【請求項49】
1つまたは複数の抗原送達粒子および1つまたは複数の抗原が、相補的オリゴヌクレオチドによりハイブリダイズしていない、請求項41〜47のいずれか1項に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−500827(P2012−500827A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524363(P2011−524363)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060967
【国際公開番号】WO2010/023216
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】