説明

ワックス系コンベア用潤滑剤

コンベア用の、特に容器輸送コンベア用のワックス系潤滑剤被覆が提供される。潤滑剤被覆は、摩擦係数の低いコンベア表面を提供する。一実施形態において、潤滑剤被覆はカルナバ・ワックスおよび少なくとも1種の追加のワックスの混合物で構成される。潤滑剤被覆が塗布されているコンベアも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア用潤滑剤に関する。より詳しくは、本発明は、コンベアの表面に耐久性のある潤滑被覆を与えるワックス系潤滑剤被覆の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料ボトルおよび食品加工工場を含む多くの製造分野において、ボトル、ジャー、缶および類似のものなどの容器を移動させるためにコンベアが使用される。ラインの効率を維持し、容器およびコンベアの各部品を清浄に保ち、潤滑を施すために、潤滑剤、通常は水性で石鹸を基材とするものまたは合成の潤滑剤を使用することが慣例である。これらの潤滑剤は、一般に、使用前または使用中に大幅に希釈するように設計された濃縮液として販売されている。たとえば、典型的な希釈比は1:100以上にもなる。
【0003】
残念ながら、これらの従来の潤滑剤は、ある種の不都合をもたらす。たとえば、大幅な希釈の故に、これらの潤滑剤は、それらが被覆されている表面から滴り落ちる傾向があり、工場内に安全上の問題を生じ、常に清浄化に努めることが必要である。さらに、従来の潤滑剤は、通常、頻繁にまたは常に再塗布する必要があり、これが潤滑処理の費用と効率の悪さを増大させる。知られている潤滑剤は、しばしば容器および/またはコンベア部品と相性が悪い。たとえば、多くの市販の潤滑剤は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルの応力亀裂の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、費用効果があり、塗布および再塗布が効率的であり、さらに容器およびコンベア部品との相性がよいコンベア潤滑剤に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コンベア用の、ワックス系潤滑剤被覆、この潤滑剤被覆をコンベアに塗布する方法、およびこの潤滑剤で被覆されたコンベアを提供する。本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆は、低い摩擦係数、一部の事例では0.15よりも低い摩擦係数、を有するコンベア表面を作る。潤滑に加えて、この潤滑剤被覆は、それらが塗布されたコンベアの部品に耐久性を与え、その結果これらが使用された施設の安全性、衛生状態が高まり、水の節約が増える。一部の実施形態においては、潤滑剤被覆は、少なくとも70重量%(wt%)が、カルナバ・ワックスおよび/またはポリエチレン・ワックスなどの1種または複数のワックスで構成されている。
【0006】
潤滑剤被覆は、1種または複数のワックスを、水、有機溶媒または水と1種または複数の溶媒の混合物などの液体担体中に含有している、液体潤滑剤組成物から形成されてよい。潤滑剤被覆を形成するためには、この液体潤滑剤組成物を、コンベア表面の少なくとも一部分に塗布する。液体潤滑剤組成物の塗布後、組成物の揮発性成分が蒸発し、ワックス系潤滑剤被覆を得る。一部の実施形態においては、この液体潤滑剤組成物は、液体潤滑剤組成物の全重量に対して約60重量%以下のワックスで構成される。
【0007】
本明細書において提供される液体潤滑剤組成物および潤滑剤被覆においては、幅広い種類のワックスを使用することができる。しかし、好ましいワックスは、望ましくは高い硬度および高い結晶化度を有する。カルナバ・ワックスは、コンベア潤滑用途に適切なワックスの一例である。他の適当なワックスには、植物ワックス、動物系ワックス、合成ワックスおよび鉱物ワックスならびにこれらの混合物が含まれるが、これらだけには限定されない。
本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆によって潤滑されるコンベアも提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によって低い摩擦係数を持つコンベア表面を提供するワックス系コンベア潤滑剤被覆は、さまざまなワックスから調製される。一部の実施形態においては、ワックス系の潤滑剤被覆は、ショートトラック・コンベア試験によって測定して約0.15以下の摩擦係数を与える。本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆は、ボトルおよび缶などの容器を輸送するために使用されるコンベアでの使用に適切である。潤滑剤被覆は、液体媒体中に1種または複数のワックスを含有している液体潤滑剤組成物から形成することができる。したがって、この開示の目的では、「潤滑剤被覆」という用語は、液体潤滑剤組成物を乾燥させた後に、表面(たとえば、コンベア・ベルトの表面)に残る被覆のことを言うものとする。
【0009】
本発明のワックス系潤滑剤被覆は、現在入手可能な他のコンベア潤滑剤と比較して、いくつかの利点を有する。第1に、ワックス系潤滑剤被覆は、耐久性があり、水または溶媒をほとんど含まない。この被覆は、半永久的であり、それ故に、従来の水系潤滑剤と比較して、まれにしか再塗布する必要がない。これが、絶えずコンベア装置に潤滑剤を再塗布する必要性に付随する時間と費用を節約し、コンベアの表面から床の上に滴り落ちる潤滑剤に付随する問題を取り除く。ワックス系の潤滑剤被覆は、単にワックスまたはワックス混合物を含有している液体潤滑剤組成物を、コンベアの摩滅または損傷した部分に再塗布し、液体潤滑剤組成物を乾燥させて潤滑剤被覆にすることによって、簡単に更新および修理される。
【0010】
本明細書において提供される潤滑剤被覆で部分的または全体的に被覆することができるコンベア装置の部品には、コンベアに沿って移動する容器などの物体の動きを妨げる可能性のあるすべての部品が含まれるが、これらだけには限定されない。適当な部品の例には、コンベア・ベルト、トラック、チェーン、およびシュート・ガイドが含まれる。容器コンベアに使用する場合は、潤滑剤被覆は、コンベア装置の容器と接触するすべての部分に塗布することができる。これらのコンベア部品は、プラスチックおよび金属を含む、さまざまな材料で作ることができる。一実施形態においては、潤滑剤被覆は、ステンレス・スチール製のコンベア部品に塗布される。潤滑剤被覆は、プラスチック、ガラス、紙、金属およびセラミックを含むが、これらだけには限定されないさまざまな材料で作られた輸送物体に対して、潤滑された表面を提供する能力がある。多くの水系潤滑剤とは異なって、本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆は、一般的な容器材料に対して反応性ではない。たとえば、ワックス系潤滑剤被覆は、ペットボトルに応力亀裂を起こさない。
【0011】
ワックス系の潤滑剤被覆は、少なくとも1種のワックスを含有する。たとえば、この潤滑剤被覆は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種またはさらに多くの異なるワックスの混合物であってもよい。ワックスは、それ自体によってまたは他のワックスと組み合わさって、低下した摩擦係数を有する輸送表面を作る能力があるワックスならどれでもよい。多くの適当なワックスが知られており、市販されている。ワックスは、望ましくは高い硬度、高い密度および/または高い結晶化度を特徴とし、また固有の高い貫入硬度および/または高い溶融粘度を有している。たとえば、ワックスまたはワックスのブレンドは、ASTM D−5によって測定して約10dmm以下の平均硬度、ASTM D−1505によって測定して少なくとも約0.85g/ccの平均密度および/または少なくとも約30%の平均結晶化度を有するように選択すればよい。
【0012】
本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆中での使用に適当なワックスには、植物(たとえば、食用植物)、動物、昆虫、合成および/または鉱物のワックスが含まれる。適当なワックスの具体的な例には、カンデリラ・ワックス、フィッシャー−トロプシュ・ワックス、酸化石油ワックス、マイクロクリスタリん・ワックス、ラノリン・ワックス、カカオ脂から導出したワックス、綿実ワックス、ステアリン・ワックス、ウルシ・ワックス、ヤマモモ・ワックス、マートル・ワックス、ナツメグから導出したワックス、パーム核ワックス、蜜(ロウ)ワックス、クジラ・ワックス、イボタ蝋、マトン脂から作製したワックス、ポリエチレン・ワックス、酸化ポリエチレン・ワックス、ポリプロピレン・ワックス、酸化ポリプロピレン・ワックス、プロピレンおよびアクリル酸および/またはメタクリル酸および/または無水マレイン酸のコポリマーに基づくワックス、エチレンおよびアクリル酸エステルおよび/または無水マレイン酸のコポリマーに基づくワックス、エチレンおよびアクリル酸および/またはメタクリル酸および/または無水マレイン酸のコポリマーに基づくワックス、エチレンおよびスチレンおよび/または他のビニルモノマーのコポリマーに基づくワックス、ココナツ油または大豆油およびパラフィン、セレシン、モンタン、オゾケライトなどの鉱物ワックスの水素化から得られるワックスなどが含まれるが、これらだけには限定されない。一部の実施形態においては、ワックス系潤滑剤被覆およびそれから被覆が作られる液体潤滑剤組成物は、カルナバ・ワックスおよび少なくとも1種の追加のワックスの混合物を含有する。
【0013】
本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆は、少なくとも70重量%または少なくとも約70重量%の少なくとも1種のワックスを含有する。これはワックスが潤滑剤被覆の少なくとも80重量%または少なくとも約80重量%を占める実施形態を包含し、さらにワックスが潤滑剤被覆の少なくとも85重量%または少なくとも約85重量%を占める実施形態を包含し、なおさらにワックスが潤滑剤被覆の少なくとも90重量%または少なくとも約90重量%を占める実施形態をも包含し、まださらにワックスが潤滑剤被覆の少なくとも95重量%または少なくとも約95重量%を占める実施形態を包含し、さらにワックスが潤滑剤被覆の少なくとも98重量%または少なくとも約98重量%を占める実施形態さえも包含する。被覆の残りは、不揮発性溶媒(すなわち、液体潤滑剤組成物を乾燥させて潤滑剤被覆とした後に残っている溶媒)および、コンベア潤滑剤および被覆中に一般に見られるものなどの、潤滑剤添加物を含むさまざまな成分で構成されている。適当な添加物には、抗菌剤、顔料、界面活性剤、ポリマー乳化剤を含めた乳化剤、脂肪酸およびそれらの塩、湿潤化剤およびレベリング剤、脱泡剤および消泡剤、有機塩基および無機塩基、イオン性架橋剤、シリコンおよびフッ素化ポリマーが含まれるが、これらだけには限定されない。
【0014】
2種以上のワックスの混合物を使用する場合の、被覆中のそれぞれのワックスの相対的な量は、選択したワックスの性質、被覆する表面の性質、および希望する潤滑性の程度を含むさまざまな因子に依存して変化することができる。潤滑剤被覆が第1のワックスと第2のワックスの混合物で構成される一部の例示的な実施形態においては、被覆中の第1のワックスと第2のワックスの重量比は、約1:10〜10:1であればよい。これは、潤滑剤被覆中の第1のワックスと第2のワックスの重量比が約1:5〜5:1である実施形態を包含し、また潤滑剤被覆中の第1のワックスと第2のワックスの重量比が約1:3〜3:1である実施形態をも包含し、さらに第1のワックスと第2のワックスの重量比が約1:2〜2:1である実施形態も包含し、さらに第1のワックスと第2のワックスの重量比が約1:1.5〜1.5:1である実施形態を包含する。本発明者らは、カルナバ・ワックスおよび少なくとも1種の追加のワックスの混合物から作った潤滑剤被覆が、コンベアの潤滑剤被覆として特に適切であることを発見した。被覆にカルナバ・ワックスが含まれている一部の実施形態においては、カルナバ・ワックスは、少なくとも約20重量%のレベルで存在すればよい。これは、カルナバ・ワックスが潤滑剤被覆の少なくとも約30重量%を構成する実施形態を包含し、さらにカルナバ・ワックスが潤滑剤被覆の少なくとも約40重量%を構成する実施形態を包含し、なおさらにカルナバ・ワックスが潤滑剤被覆の少なくとも約50重量%を構成する実施形態を包含する。一実施形態においては、潤滑剤被覆は約45〜55重量%のカルナバ・ワックスおよび約45〜55重量%の酸化ポリエチレン・ワックスを含有している。他の実施形態においては、カルナバ・ワックスが、潤滑剤被覆中に存在する唯一のワックスである。
【0015】
ワックスおよびワックス混合物は、通常、輸送表面に対して液体潤滑剤組成物として塗布し、これを十分に乾燥させてワックス系潤滑剤被覆を与える。液体潤滑剤組成物は、さまざまな周知の塗布方法のうちの任意の方法によって輸送表面に塗布することができる。たとえば、液体組成物は、スプレイ塗布、滴下塗布、浸漬塗布、ロール塗布、または刷毛、布、ローラー、パッドもしくはスポンジによる塗布によって塗布することができる。液体潤滑剤組成物は、1種または複数のワックス、任意の選択された添加物および適当な担体を含む。一部の実施形態においては、担体は水である。こうした実施形態においては、液体潤滑剤組成物は、溶液、分散液、またはエマルジョンであってよい。溶液、分散液、およびエマルジョンは、水性であっても有機系であってもよい。たとえば、1種または複数のワックスを、ミネラル・スピリットなどの有機媒体中に溶解することができる。水性媒体を使用する場合は、その媒体が場合によっては有機溶媒を含んでいてもよい。あるいは、担体は、たとえば、炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、リン酸エステル、グリコールエーテル系モノおよびジ安息香酸エステル、フタル酸エステル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールからのグリコールエーテル、およびピロリドン系の溶媒、または混合物などの各種溶媒からの適当な有機溶媒であってもよい。液体潤滑剤組成物のワックス含有量は、一般に、液体潤滑剤組成物の全重量に対して約60重量%以下である。これは、液体潤滑剤組成物のワックス含有量が約50重量%以下である実施形態を包含し、さらに液体潤滑剤組成物のワックス含有量が約40重量%以下である実施形態を包含し、さらに液体潤滑剤組成物のワックス含有量が約30重量%以下である実施形態を包含し、さらに液体潤滑剤組成物のワックス含有量が約20重量%以下である実施形態を包含し、なおさらに液体潤滑剤組成物のワックス含有量が、約10重量%以下である実施形態を包含する。ワックスは、液体潤滑剤組成物に、エマルジョンまたは分散液の形態で加えることができることに注意されたい。上で述べたワックス含有量は、組成物に加えるワックスの量だけに言及したものであり、ワックスのエマルジョンまたは分散液の一部分として加えられている溶媒または担体などの他の化合物は含んでいない。
【0016】
塗布後、液体潤滑剤組成物を、上記の特徴を有するワックス系潤滑剤被覆を得るのに十分な時間乾燥させる。液体組成物の乾燥は、場合によっては加熱装置の使用によって促進してもよい。一般に、液体組成物は、約5重量%以下、好ましくは約1重量%以下の液体担体含有量まで乾燥すれば、潤滑剤被覆を形成したとみなされる。しかし、一部の事例、たとえば不揮発性の有機溶媒が存在するときには、潤滑剤被覆の液体含有量は、まだ約20重量%という高さであることもある。
【0017】
潤滑剤被覆は、当初は非常に薄いこともありまた非常に厚いこともある。たとえば、被覆は、0.001ミル〜20ミルの被覆(1ミル=1/1000インチ)であり得る。これは、潤滑剤被覆が0.04ミル〜0.2ミルの被覆である実施形態を包含する。被覆された表面の稼動が開始された後、コンベアによって輸送される物体からの磨耗が、被覆の厚さを減少させる。しかし、潤滑剤被覆によって与えられた低い摩擦係数および潤滑性は長期間残存する。
【0018】
本明細書において提供されるワックス系潤滑剤被覆は、それらが塗布された表面の摩擦係数を低下させる。この潤滑剤被覆は、ショートトラック・コンベア試験を使用して測定して約0.15以下の摩擦係数を提供することが可能である。これは、この潤滑剤被覆が約0.14以下の摩擦係数を有する表面を提供する実施形態を包含し、さらに摩擦係数が約0.12以下である実施形態を包含し、なおさらに潤滑剤被覆が約0.11以下の摩擦係数を提供する実施形態を包含し、さらに潤滑剤被覆が約0.1以下の摩擦係数を有する表面提供する実施形態さえも包含し、まださらに潤滑剤被覆が約0.08以下の摩擦係数を有する表面を提供する実施形態を包含し、また潤滑剤被覆が約0.06以下の摩擦係数を有する表面を提供する実施形態をも包含する。ワックス系潤滑剤被覆の摩擦係数値を測定するために使用するショートトラック・コンベア試験は、以下の実施例の項に詳細に記載する。
【実施例】
【0019】
さまざまなワックスを含有している例示的ワックス系潤滑剤被覆をここで提示する。潤滑剤被覆を形成する液体潤滑剤組成物の配合を下記の表1において規定する。組成物中のそれぞれの成分の量は、液体潤滑剤組成物の全重量に対する重量パーセントで記載されている。表1に列挙されている水の量は、ワックス・エマルジョンと共に導入される追加の水を含んでいない。コンベア・ベルト上で移動するさまざまな容器に対する摩擦係数は、ショートトラック・コンベア試験を使用して測定した。これらの測定結果は表1に示す。
【0020】
ショートトラック・コンベア試験は次のように行った:液体潤滑剤組成物で濡らしたチーズクロス・パッドを使用して、図1に示すモーター駆動の実験用卓上コンベア・ベルト102の上に、潤滑剤被覆を塗布した。液体潤滑剤組成物は、約1.0〜1.2mg/cmの量で、組成物約8gが塗布されるまで、または約2.0〜2.2mg/cmの量で、約16gの組成物が塗布されるまで塗布した。使用した実験用卓上コンベア装置103は、Simplimatic Engineering社製品であり、調節可能なガイド・レール(不図示)、キャスター(不図示)、トップ・コンベア・ベルト、3/4HP可変速度駆動装置(不図示)を、ステンレス・スチール製ドリップ・パン(不図示)を含めて、有していた。このショートトラック・コンベアは、サンプル試験用の幅7.5インチのポリアセタール製(REX 820 Table Top)またはステンレス・スチール製(REX SS 815 Table Top)コンベア・ベルト(トラック)を備えており、いずれもRexnord Industries Inc.、Grafton、WI製品であった。コンベア・ベルトの全長は13フィートであり、サンプルの被覆および試験のためのトラックの全表面積は8.125平方フィートであった。
【0021】
表1の液体潤滑剤組成物の1種をコンベア・ベルトに塗布後、組成物を周囲条件下、室温で約60分間、ワックス系潤滑剤被覆が得られるまで乾燥させた。この時点で、得られた潤滑剤被覆の水含有量は約5重量%未満であった。いくつかの容器104(すなわち、12オンスの首の長いガラス製ビール瓶、ペットボトルまたはアルミ缶)をコンベアに載せて、コンベアを1.35m/secの速度で走らせながら、静止状態に保持した。コンベアを始動させた後、容器104を1個ずつ表面に、ストレインゲージ・ロードセル108(No.363−D3−50−20pl型、Process Instrument and Valves,Inc.製品)に接続されている、ロードセル・ループ106内に置いた。ロードセルはデジタル指示計(IMS型、Process Instruments and Valves,Inc.製品)に接続されており、計器と共に提供されている標準取扱説明書に従って定期的に較正した。ロードセルを較正するためには、較正治具を使用することができる。較正治具114は、低摩擦プーリー(4インチ)116をコンベアの後部から吊り下げる器具である。小径較正ワイヤまたはケーブル118(無視できる質量もの)が、ロードセル108に固定されており、プーリー116に懸けられている。ロードセル108の較正中は、重り120を反対側の端に取り付ける。容器104およびロードセル・ループ106の総重量は、6個のガラス瓶について約2814gであった。他の容器を使用する場合は、試験に必要な容器の数を決定するために、2800〜3200gの荷重を使用した。容器が載っているコンベアを、5分間隔で抗力の強さを記録しながら30分間運転した。抗力の強さは手作業で読み取るかまたは記録紙記録計110(BD40型、Kipp−Zonen製品)から読み取ることができる。30分後に、最終の抗力の読みを記録した。
【0022】
ドライ運転の測定が完了したら、被覆されたコンベアに、32オンスのトリガー・スプレイヤーから水道水を、約115g/minで2分間スプレイしてコンベア表面を濡らした。次に、所定に位置に試験コンテナを載せて動かし、摩擦係数を5分間隔で約30分間にわたって測定し、その間コンベアは空気乾燥させた。これらの「ウエット」運転の結果は、この潤滑剤被覆が、一旦乾燥するとその低い摩擦係数を維持することができることを実証した。
【0023】
特定の潤滑剤被覆の潤滑性は、容器に対する水平面内抗力を、垂直面における既知の荷重で割ったものとして測定した。摩擦係数の値は、ドライ潤滑剤被覆および水に暴露した潤滑剤被覆を使用して測定した。摩擦係数は、コンベアの潤滑性を測定するために使用した。この測定値を得るために、最終抗力の測定値を、次の計算式を使用して摩擦係数(COF)の測定値に変換した。
COF=(水平面における抗力(ロードセルから))/(容器全重量)
【0024】
図2は、表1の液体潤滑剤組成物1から作製した潤滑剤被覆についての摩擦係数測定データを示す。図3は、表1の液体潤滑剤組成物2から作製した潤滑剤被覆についての摩擦係数測定データを示す。グラフ中の矢印は、潤滑剤被覆の濡れが開始した時点を示す。表1の液体潤滑剤組成物1〜15から作製したワックス系潤滑剤被覆のそれぞれについての摩擦係数は、ドライ条件下では約0.05〜約0.2の範囲にわたり、ウエット条件下では約0.03〜約0.195の範囲にわたった。

【表1】

【0025】



下記の特許請求の範囲については、「ショートトラック・コンベア試験」は、上記実施例の項に記載したショートトラック・コンベア試験に言及するものであり、そのトラックはポリアセタール・トラックであり、容器はガラス・ボトルであり、液体潤滑剤組成物は約1.0〜1.2mg/cmの量で約8gが塗布されるまで塗布し、液体潤滑剤組成物は、摩擦係数測定の前に、周囲条件下、室温で約60分間乾燥させる。
【0026】
当業者には理解されるように、あらゆる全ての目的のために、特に明細書の記載に関して、そこに開示されるすべての範囲は、あらゆる全ての部分的範囲および部分的範囲の組合せを包含する。いかなる記載された範囲も十分に記述しているものであり、同じ範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分、その他に分割されることを可能にするものと容易に認識されうる。非限定的実施例として、本明細書で論じたそれぞれの範囲は、容易に下位3分の1、中位3分の1、および上位3分の1、その他に分割されることができる。また、当業者であれば、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」等のすべての用語は、挙げられた数を含み、かつ続いて上記で論じた部分的範囲に分割することができる範囲に言及するものであることも理解されよう。
本発明が、本明細書において例示的なものとして記載した特定の実施形態には限定されず、下記の特許請求の範囲の範囲内に入るすべての形態を包含することは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ワックス系潤滑剤被覆について、ショートトラック・コンベア試験を使用して摩擦係数を得るために使用する、実験用コンベアの構成を示す図である。
【図2】カルナバ・ワックス50%および酸化ポリエチレン・ワックス50%で構成されたワックス系潤滑剤被覆について、ショートトラック・コンベア試験によって測定した摩擦係数を時間に対して示すグラフである。この潤滑剤被覆は、表1の1番の液体潤滑剤組成物から作製した。
【図3】カルナバ・ワックス100%で構成されたワックス系潤滑剤被覆について、ショートトラック・コンベア試験によって測定した摩擦係数を時間に対して示すグラフである。この潤滑剤被覆は、表1の2番の液体潤滑剤組成物から作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約70重量%のワックスを含む潤滑剤被覆を、コンベア表面の少なくとも一部分に形成することを含む、容器コンベア表面を潤滑する方法。
【請求項2】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約90重量%のワックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約98重量%のワックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑剤被覆が、潤滑剤被覆の全重量に対して約5重量%以下の液体含有量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑剤被覆の形成が、少なくとも1種のワックスおよび少なくとも1種の液体担体を含む液体潤滑剤組成物を、コンベア表面の少なくとも一部分に塗布し、前記塗布された液体潤滑剤組成物から十分な液体担体を除去して潤滑剤被覆を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体潤滑剤被覆が、液体潤滑剤組成物の全重量に対して約60重量%以下のワックスを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも2種のワックスの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記潤滑剤被覆が、カルナバ・ワックスおよび少なくとも1種の追加のワックスの混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、ポリエチレン・ワックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約25重量%のカルナバ・ワックスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記潤滑剤被覆が、約10〜約80重量%のカルナバ・ワックスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、植物ワックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、動物系ワックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、合成ワックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、鉱物ワックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記潤滑剤被覆が、ショートトラック・コンベア試験によって測定して0.1以下の摩擦係数を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記潤滑剤被覆が、ショートトラック・コンベア試験によって測定して0.08以下の摩擦係数を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記コンベア表面が容器輸送表面であり、前記潤滑剤被覆が前記コンベア表面の容器と接触する領域に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の液体担体が水を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の液体担体が有機溶媒を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも約70重量%のワックス含む潤滑剤被覆によって少なくとも部分的に被覆された容器コンベア表面を含む、潤滑されたコンベア表面。
【請求項22】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約90重量%のワックスを含む、請求項21に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項23】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約98重量%のワックスを含む、請求項21に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項24】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも2種のワックスの混合物を含む、請求項21に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項25】
前記潤滑剤被覆が、カルナバ・ワックスおよび少なくとも1種の追加のワックスの混合物を含む、請求項24に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項26】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、ポリエチレン・ワックスである、請求項25に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項27】
前記潤滑剤被覆が、少なくとも約25重量%のカルナバ・ワックスを含む、請求項25に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項28】
前記潤滑剤被覆が、約10〜約80重量%のカルナバ・ワックスを含む、請求項25に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項29】
前記少なくとも1種の追加のワックスが、植物ワックス、動物系ワックス、合成ワックスまたは鉱物ワックスである、請求項25に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項30】
前記潤滑されたコンベア表面が、ショートトラック・コンベア試験によって測定して0.1以下の摩擦係数を有する、請求項21に記載の潤滑されたコンベア表面。
【請求項31】
前記コンベア表面が、容器輸送表面であり、前記潤滑剤被覆が、前記コンベア表面の容器と接触する領域に塗布される、請求項21に記載の潤滑されたコンベア表面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−518045(P2008−518045A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537872(P2007−537872)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/017568
【国際公開番号】WO2006/046970
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(398061050)ジョンソンディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】