説明

ワムシ、幼生エビおよび海産濾過食性動物の培養に適する餌料

本発明は、ワムシ、エビ、仔魚、および、カキ、二枚貝、軟体動物、イガイなどの他の濾過食性動物を大量生産するための、安価で栄養価の高い餌料源を提供する。本発明は、動物プランクトンの増殖を促進し、それにより、前記動物プランクトンの最終消費者である目標養殖種を増加させるために、蛋白源、例えば酵母、大型藻類生成物および微細藻類生成物の組み合わせを含む餌料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2002年11月14日に米国特許商標局に「ワムシ、幼生エビおよび海産濾過食性動物の培養に適する餌料(Feed Suitable for Culturing Rotifers, Larval Shrimp, and MarineFilter Feeders)」の名称で出願した米国仮出願第60/426,022号に基づく優先権を主張するものであり、そこでの開示はその全体が参照としてここに組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ワムシ、幼生エビおよび濾過食性動物などの水生生物の餌料に関する。この餌料は、藻類もしくは酵母、または、藻類もしくは酵母の抽出物を含み、水生生物に対して補助栄養、例えば、ビタミンB12などのビタミン類、脂肪酸、アミノ酸、成長因子、抗菌剤および色素などを与えることができる。
【背景技術】
【0003】
過去20年にわたって、水産養殖は最も成長の速い経済事業の一つに数えられるようになってきた。水産養殖の生産量は、地球人口の増大によってもたらされる将来の需要を満たすために、急速に拡大すると予想される。しかしながら、研究者らは、乱獲により全ての漁業産業が衰退している状況では、天然魚の漁獲量が拡大する可能性は殆どないと考えている。さらに、技術的なブレークスルーがなされなければ、水産養殖の拡大は、予想される需要を満たすに十分であるとはみられていない。その結果、シーフードの供給に対する要求は、乱獲、生息地の破壊および汚染によって天然魚資源が着実に減少することと関連して、魚の養殖業者や孵化場の生産能力を増大させ強化するように働いている。しかしながら、不十分な生餌の給餌や餌の品質低下に因る海産仔稚魚の生存率の低さや成長の遅さが、商業的に重要な海産養殖の魚種に対して要求されている発展を阻んでいる。商業生産規模においては、成長と生存率が最適化されていないことは、タンクスペースの追加や仔稚魚飼育期間の延長、および、それに伴う運転経費の増大(すなわち、ビジネスとして生き残るか失敗するかの相違)を意味する。
【0004】
海産養殖の発展強化に支障となることの一つは、商業的に重要な海産魚種の多くが、最初の餌料(仔魚飼育)として生きた生物を必要とすることである。人工の代替物を開発しようとする広範な努力(ダブロウスキー(Dabrowski)およびカルバー(Culver)1991;カナザワ(Kanazawa)1992)にもかかわらず、孵化場は未だ生餌、主に各種の微細藻類、ワムシのBrachionus plicatilisおよびブラインシュリンプのAltemia salinaまたはAltemia franciscanaに大きく頼っている。魚類と甲殻類の孵化場で使用されている全ての生餌の中で、ブラインシュリンプは、実用上の便利さと入手のしやすさのために、主要な餌料品目となっている。今日、ブラインシュリンプは、乾燥卵で年間2000トンを超える生産量で、主に天然から収穫されている。それにもかかわらず、Altemia卵の市場の大部分は、今なお、一箇所、グレート・ソルト・レイクから供給されている。この状況は、この湖の気候や生態系の変化に対して、市場を極めて脆弱なものにしており、このことは過去4年間において卵が異常な低収穫であったことで例示されている。結果として、価格は、乾燥卵1kg当たり20〜40ドルの適度な範囲から、1kg当り80〜100米ドルへと跳ね上がり、全ての魚介類養殖業に深刻な影響を与えた。他の主要な支障は、新たに孵化したブラインシュリンプの幼生は、大部分の海産魚類の仔魚には摂取できず、したがって、そのような仔魚にはより適切なプランクトン性の代替物を給餌しなければならない、ということにある。
【0005】
多くの海産魚と無脊椎動物は、ワムシが最も豊富で支配的な動物プランクトンである河口で幼生期間を過ごす。何百年以上もかけて、この自然の生態系の群集が生み出された結果、多くの仔稚魚と無脊椎動物はワムシを捕食し、栄養として利用するように適応してきた。ワムシのプランクトンとしての性質、それらの幅広い環境条件への適応性、高い再生産率(0.7〜1.4子孫/メス/日)、数年間休眠できる耐久卵を生産する能力、より小さいサイズ(ロリカ長100〜500μm)および遅い遊泳速度は、海産幼生の養殖用として理想的な生餌候補である。海産魚類の仔魚期に、ワムシを生餌生物として使用することに成功したことによって、制御された条件でワムシを大量培養するための改良研究が盛んになっている。実際、最初の大量培養の試行から25年後、ワムシは世界中で大量に生産されており、60種を超える海産魚、数種の淡水魚および18種の甲殻類の孵化場における生産の成功に寄与している(ナガタ(Nagata)およびホワイト(Whyte)1992)。しかしながら、ワムシの培養が有している最大の発展性は、近年、日本およびヨーロッパで成功裡に実施されているように、濃縮微細藻類の餌と酸素補給を行うことによって、これらを非常に高密度(2,000〜10,000個体/mL)で培養できる可能性にある(ヨシムラ(Yoshimura)ら1994)。高密度でも、ワムシは急速に再生され、商業的な幼生養殖の試行を開始する前の比較的短い期間に、大量の生餌を供給することに貢献する。
【0006】
生きた藻類による従来の培養法によっては、今後の水産養殖のニーズおよび天然資源増進計画のために、海産魚の仔稚魚および甲殻類を期待する数だけ生産することはできない。従来法では、ワムシを一般に100〜300個体/mlの低密度に維持し、生きた微細藻類を補った、主として酵母ベースの低品質製品を給餌するために、100〜1000mの大容積のタンクを必要とする(キタジマ(Kitajima)1983)。その結果、他の全ての目的よりもワムシの培養のために、さらに2〜3倍のタンクスペースが必要となる(ヨシムラ(Yoshimura)ら1996)。したがって、従来の孵化場では、マンパワーとタンクスペースの90%までが、生餌の生産に使用される。さらに、最近、いくつかの孵化場から、水質や環境条件の何らかの変化が原因と考えられるワムシのかなりの減産が報告されている(ヨシムラ(Yoshimura)ら1996)。実際、ワタナベ(Watanabe)(ワタナベ(Watanabe)ら1983a;ワタナベ(Watanabe)ら1983b)は、先ずワムシとそれらの餌料の集約的培養を確立しないことには、海産仔稚魚の養殖はさほど発展しないであろうと述べている。こうして、仔稚魚の生産は、事実上、生きた藻類とワムシの入手量によって限られるということが広く受け入れられてきている(ヒラタ(Hirata)ら1983;フクショ(Fukusho)およびヒラヤマ(Hirayama)1992)。
【0007】
水産養殖用餌料として使用するのに適した粒子状材料を微生物バイオマスから製造する方法は、米国特許第6,103,225号明細書、同第6,451,567号明細書および同第6,372,460号明細書(バークレー(Barclay)2000;バークレー(Barclay)2002;グラデュー(Gladue)およびベーレンス(Behrens)2002)に開示されている。これらの方法には、DHA残分の含有量が高い藻類の細胞を発酵させる方法が記載されている。これらの開示の主要な目的は、ArtemiaまたはワムシのDHAレベルを高め、その後、仔稚魚のDHAレベルを高めることである。濾過食性動物のような生物に対しては、材料は微小な粒子として供給でき、DHAを直接強化した餌料を与えることができる。Thraustochytrium、SchizochytriumおよびCrypthecodiniumsp.およびこれらの混合物から選択される微細植物を含むDHA強化水産養殖用餌料は、水産養殖に有用であり、特に幼生エビおよび軟体動物の餌料として有用である(バークレー(Barclay)2000;グラデュー(Gladue)およびベーレンス(Behrens)2002)。藻類細胞の凝集サイズは小さいので、微細植物は、幼生エビ、ブラインシュリンプ、ワムシおよび軟体動物に摂取され得る(ラングドン(Langdon)ら1999)。別のアプローチとして、本発明は、水産養殖餌料として栄養強化した酵母の使用を開示する。栄養強化した酵母は、部分的に消化した酵母または薄い細胞壁を有する酵母を選択し、DHA生産微細藻類などの水産養殖に使用されるある種の微細藻類と微細藻類抽出物との混合物を含むことによって得られ、こうして、完全で高栄養の水産養殖用餌料を配合することができる。酵母と発酵液中で成長した微細植物または光合成自己栄養成長性藻類をベースとするこれらの藻類餌料は、ワムシ、ブラインシュリンプ、エビの幼生、二枚貝、イガイおよび軟体動物用の餌料として使用するのに適している。上述したように、そのような条件で成長した微細植物の細胞の大きさは、通常、約50μm未満である。
【0008】
仔稚魚用餌料を、従属栄養菌由来の成分、藻類および酵母からのみ配合することができれば、孵化場で生きた藻類を生産することや、天然魚から得られるミールおよびオイルを使用することが、ともに必要なくなる。これらの藻類由来の餌料は、現在用いられている餌料よりはるかに安価であろう。商業的孵化場でこれらを使用した場合には、十分な量の藻類が培養されることによってコストが低減され、操業効率が向上し、それによって水産養殖の生産が増大することになろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酵母および微細藻類、またはそれらの成分を含む水産養殖用餌料を提供する。平均粒子径は、約5μm〜約100μmの範囲であってよく、餌料成分はドライ混合し、微粉末に粉砕することができる。酵母は、餌料の約30〜約95パーセント含むことができる。適した酵母としては、Saccharomyces spp.、Saccharomyces cerevisiae、Phaffia spp.、Phaffia rhodozyma、Pichia spp.、Pichia pastoris、Kluyveromyces spp.、Kluyveromyces aestuarii、Kluyveromyces marxianusおよびKluyveromyces yarrowiiが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酵母は、ビール酵母であってもよい。
【0010】
本餌料は、少なくとも約5重量パーセントの微細藻類を含むことができる。適した藻類としては、Tetraselmis sp.、Tetraselmis suecica、Myrmecia sp.、Myrmecia bissecta、Lyngbyasp.、Lyngbya majuscula、Cytospora sp.、Scenedesmus sp.、Scenedesmus obliquus、Scytonema sp.、Scytonema hofmanni、Nostoc sp.、Nostoc weissfloggia、Chaetoceros sp.、Chaetoceros lauderi、Ecklonia sp.、Ecklonia maxima、Dunaliella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella tertiolecta、Dunaliella bardiwal、Pseudoanabaena sp.、Anabaena sp.、Prorocentrumsp.、Prorocentrum minimum、Polysiphonia sp.、Polysiphonia denudata、Spirulina sp.、Arthrospirasp.、Spirulina platensis、Aphanotheae sp.、Aphanotheae nidulans、Hydrodictyon sp.、Hydrodictyon reticulatum、Navicula sp.、Navicula delongei、Phaeodactylum sp.、Phaeodactylum tricornutum、Pseudonitzschia sp.、Nitzschia sp.、Nitzschia navis-varingica、Chlorellasp.、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella vulgaris、Chlamydomonas sp.、Chlamydomonas reinhardii、Prennioporia sp.、Prennioporia medullaeparis、Pandorina sp.、Pandorinamorum、Isochrysis spp.、Isochrysis galbana、Schizochytrium sp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohniiおよびThraustochytrium sp.が挙げられるが、これらに限定されるものではない。適した微細藻類には、また、Schizochytrium sp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohnii、Thraustochytrium sp.およびこれらの成分も挙げられるが、これらに限定されるものではない。餌料は、また、プロバイオティック成分を含んでいてもよい。適したプロバイオティック成分としては、Lactobacillus sp.、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Pseudoalteromonas sp.およびPseudoalteromonas undinaが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
一実施形態においては、水産養殖用餌料は、酵母、微細藻類および大型藻類を含むことができる。平均粒子径は約5μm〜約100μmの範囲であってよく、餌料成分はドライ混合し、微粉末に粉砕することができる。酵母は、餌料の約30〜約95パーセント含むことができる。適した酵母としては、Saccharomyces spp.、Saccharomyces cerevisiae、Phaffia spp.、Phaffiarhodozyma、Pichia spp.、Pichia pastoris、Kluyveromyces spp.、Kluyveromyces aestuarii、Kluyveromyces marxianusおよびKluyveromyces yarrowiiが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酵母は部分的に消化されていてもよい。
【0012】
本餌料は少なくとも約5重量パーセントの大型藻類を含んでいてもよい。適した大型藻類としては、Tetraselmis sp.、Tetraselmis suecica、Myrmecia sp.、Myrmecia bissecta、Lyngbyasp.、Lyngbya majuscula、Cytospora sp.、Scenedesmus sp.、Scenedesmus obliquus、Scytonemasp.、Scytonema hofmanni、Nostoc sp.、Nostoc weissfloggia、Chaetoceros sp.、Chaetoceros lauderi、Eckloniasp.、Ecklonia maxima、Dunaliella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella tertiolecta、Dunaliella bardiwal、Pseudoanabaena sp.、Anabaena sp.、Prorocentrum sp.、Prorocentrum minimum、Polysiphoniasp.、Polysiphonia denudata、Spirulina sp.、Arthrospira sp.、Spirulina platensis、Aphanotheaesp.、Aphanotheae nidulans、Hydrodictyon sp.、Hydrodictyon reticulatum、Navicula sp.、Navicula delongei、Phaeodactylum sp.、Phaeodactylum tricornutum、Pseudonitzschia sp.、Nitzschiasp.、Nitzschia navis-varingica、Chlorella sp.、Chlorella pyrenoidosa、Chlorellavulgaris、Chlamydomonas sp.、Chlamydomonas reinhardii、Prennioporia sp.、Prennioporia medullaeparis、Pandorina sp.、Pandorina morum、Isochrysis spp.、Isochrysis galbana、Schizochytrium sp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohniiおよびThraustochytrium sp.が挙げられるが、これらに限定されるものではない。水産養殖用餌料は、Laminariaspp.、Padina sp.、Gracillaria sp.およびUlva sp.から選択される大型藻類を、少なくとも約0.5重量パーセント含んでいてもよい。大型藻類は、大型藻類の抽出物を含んでいてもよく、これはさらに、エタノール抽出生成物を含んでいてもよい。この餌料は、また、プロバイオティック成分を含んでいてもよい。適切なプロバイオティック成分としては、Lactobacillussp.、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Pseudoalteromonas sp.およびPseudoalteromonas undinaが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明は、また、養殖種に上記餌料を給餌することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、動物プランクトン種に上記餌料を給餌することを含む方法を提供する。適した動物プランクトン種としては、ブラインシュリンプ、ワムシ、Artemia spp.、Artemia salina、Artemia franciscana、Brachionus spp.、Brachionusplicatilis、カイアシ類および枝角類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
概要
本発明の目的は、ワムシ(rotifer)、エビ、仔魚、および、カキ、二枚貝、軟体動物、イガイなどの他の濾過食性動物の大量生産のために、細菌、藻類および/または酵母の発酵による安価で栄養価の高い餌料源を提供することにある。現在、海産魚の養殖に対する障害は、エネルギーと労働の高コスト(ボルトン(Bolton)およびフルクス(Fulks)によれば全運転コストの85%まで(ボルトン(Bolton)1982;フルクス(Fulks)およびメイン(Main)1992))と高品質の藻類を培養することに関連する操業上の難しさにある。孵化場が1年を通じて十分な量の藻類を供給することが困難であることはしばしばである。単細胞藻類は、一般に、光合成自己栄養性であり、そうしたものであるから、二酸化炭素を有機炭素に還元し、酸素を放出する光合成を行うために光を必要とする。孵化場では、通常、屋内の藻類培養に電気照明を使用しているか、または、気候条件が許せば、藻類を屋外タンクで培養することができる。しかしながら、細胞の密度と成長速度は、培養液中への光の浸透によって制限される。光合成自己栄養培養法は、エネルギー的に非効率であり、コストがかかり、孵化場は藻類培養システムを維持管理するのに熟練者を雇用しなければならない。
【0016】
ワムシ、エビ、仔魚および濾過食性動物に、光合成または従属栄養で培養した細菌、藻類および酵母から製造される、安価で高品質の乾燥餌料を提供することが、本発明の目的の一つである。
【0017】
ワムシ、エビ、仔魚および濾過食性動物に、消化性の高い乾燥酵母を提供することが、本発明の目的の一つである。この酵母は、セルラーゼで部分消化したパン酵母、または、薄く容易に消化できる細胞壁を有するビール酵母であってもよい。
【0018】
ワムシ、エビの幼生および濾過食性動物に、ある種の淡水種および海水種の藻類を光合成または従属栄養で培養したものを提供することが、本発明の目的の一つである。微細藻類の例としては、淡水性Chlorella sp.、海水性Chlorella(Nannochloropsis oculata)Tetraselmis sp.、Caetocerossp.、Crypthecodinium sp.、Schizochytrium sp.、Chlorella spp.(Chlorella vulgarisk-22などであるが、これに限定されるものではない)およびIsochrysis galbana(T-イソ クローン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの藻類は、栄養価が高く、人工培養が容易なことから、水産養殖業に広く使用されており、また、ワムシの餌料源としても広く使用されている(ヘルナンデス(Hernandez)ら1986;ナガタ(Nagata)およびホワイト(Whyte)1992;ベルギネリ(Verginelli)ら1994;リー(Lie)ら1997;プラナス(Planas)およびクンハ(Cunha)1999)。Crypthecodinium cohniiおよびSchizochytrium sp.は、例外的に、海産魚の仔稚魚の餌料において必須の脂肪酸サプリメントであるドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)を高濃度で含有している(カナザワ(Kanazawa)(カナザワ(Kanazawa)1993)およびワタナベ(Watanabe)(ワタナベ(Watanabe)1993)によるレビュー)。
【0019】
ワムシ、エビの幼生および濾過食性動物に、藻類のビタミンB12を添加した廃水共生成物(最大で400μg/100g乾燥物まで)を提供することが、本発明の目的の一つである。より具体的には、これらの餌料には、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)やアラキドン酸(ARA、20:4n−6)などの必須脂肪酸に豊富なリン脂質が含有された藻類由来の生成物を補うことができる。
【0020】
ワムシ、エビの幼生および他の濾過食性動物に、乾燥した大型藻類のミール、または、これらの方法に限定されるものではないが、例えば、大型藻類バイオマスをエタノールもしくは熱水で抽出する方法によって得られた抽出物を提供することが、本発明の目的の一つである。これらの抽出物は、さらに必須成長因子、抗菌剤、静菌性化合物、色素および必須アミノ酸を含むことができる。大型藻類としては、Laminaria sp.、Padina sp.およびGracillaria sp.などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
定義
本発明の記述には、以下に記載する定義に従って、次の用語が使用されている。
【0022】
ここで使用されている「動物プランクトン」(複数形)もしくは「動物プランクトン」(単数形)という用語は、3つの主要な無脊椎動物グループ、すなわち、ワムシ、カイアシ類および枝角類、のメンバーを意味する。これらの3つの主要グループは全て、外洋性(開水面)、沿岸性(植物性)および底生性(底)環境に適応した種を有しており、淡水環境および海水環境双方に広く分布している。
【0023】
ここで使用されている「ワムシ」という用語は、しばしば高速回転する輪のような外観を与える強い繊毛の輪を有する伸縮自在な円盤の形の前端を有する、微細で、通常顕微鏡サイズであるが、しかし多細胞の水生無脊椎動物の網を意味する。ワムシは、幼生初期の水生動物に対する生餌源として使用される。
【0024】
ここで使用されている「ブラインシュリンプ」という用語は、節足動物門甲殻網に属するArtemia系統のものを意味する。これらの小さな甲殻類は、世界中の塩湖や海水池で見出される。Artemiaブラインシュリンプは、水生仔魚の初期および後期の生餌源として使用される。
【0025】
ここで使用されている「水産養殖用餌料」という用語は、動物プランクトンや水生仔魚の培養、養殖に使用される微粉末状の乾燥餌料を意味する。
【0026】
ここで使用されている「藻類餌料」という用語は、藻類成分のいずれかの部分を含む乾燥餌料形態を意味する。
【0027】
ここで使用されている「強化餌料」という用語は、乾燥または湿潤状のいずれかの餌料を意味し、水生動物プランクトンの収穫に先立つ短期間に、これらの動物プランクトンに餌料を与えた際に水生仔魚に必須栄養素を提供する目的で、使用されるものである。
【0028】
「濾過食性動物」という用語は、何らかの機構により微小な粒子もしくは生物を分離することによって、餌を水生媒体から摂取する無脊椎動物を意味する。
【0029】
「大型藻類」という用語は、一生の内の少なくともある段階で、肉眼により容易に認識できる大きな構造体を形成する藻類を意味する。通常、これらの生物は、二次的な維管束や器官を有している。大型藻類を含む異なるグループとしては、これらに限定されるものではないが、chlorophyta、rhodophytaおよびphaeophytaが例示される。
【0030】
「微細藻類」という用語は、多くの異なる種に分類される原核細胞性および真核細胞性藻類を意味する。通常、原核細胞性藻類は、藍色細菌または藍藻類と称する。真核細胞性藻類は多くの属に分類されており、その属のいくつかは大型藻類と重なっていて、それらとはサイズと特定の器官の欠如によって区別される(それらも分化した細胞タイプを有してはいるが)。微細藻類を含む異なるグループとしては、これらに限定されるものではないが、chlorophyta、rhodophyta、phaeophyta、dinophyta、euglenophyta、cyanophyta、prochlorophytaおよびcryptophytaが例示される。
【0031】
「ビール酵母」という用語は、ビール、ワインまたは他の発酵製品の製造によく使用される酵母に由来する酵母生成物と定義される。そのような酵母には、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces diastaticus、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces bayanusおよびKluyveromyces sp.などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
発明の実施形態
ワムシおよびブラインシュリンプの生産
ワムシおよびブラインシュリンプの培養システムは、実効容積が各20〜2000Lのファイバグラスタンクを含む。このシステムは、200〜10,000個体/mLの範囲の密度で、ワムシ5×10個/日/タンクまでの生産が、あるいは、ブラインシュリンプ湿潤バイオマス10kg/日/タンクまでの生産が可能である。温度は各タンク毎にサーモスタットヒーターで、ワムシの系統に応じて28〜32℃に調整される。pHコントローラは、各培養タンク毎に連続的にpHを監視し、ペトリ(Petri)ポンプによって10%塩酸(HCl)を自動的に注入し、pHを6.5〜7.0の間に制御する。あるいは、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムを含む緩衝液を注入し、アンモニアを無毒の形態に維持する。ワムシの成長と生殖の速度は高濃度の毒性を有するイオン化アンモニア(ユ(Yu)およびヒラヤマ(Hirayama)、1986に報告されているように、例えば、7.8mg/Lを超える濃度)に敏感であるため、培養液は、特に高密度培養システムでは、pHをわずかに酸性に維持する。
【0033】
餌料は各培養タンクに手動、またはペトリ(Petri)計量ポンプを使って連続的に配給する。藻類餌料および他のサプリメントの一日分の量を、冷却(0〜4℃)した速度の遅い攪拌装置付懸濁容器に保存してもよい。ワムシは、培養容積の3分の1までを毎日交換して、別の収穫タンクに連続的に収穫し、その後、仔稚魚に給餌する前に、必須栄養素でさらに強化する。
【0034】
ワムシまたはブラインシュリンプの密度が増加し、それに伴い給餌量と有機負荷が増大すると、酸素が不足することが予想される。従って、酸素ボンベまたは酸素発生器から、純酸素を各タンクにエアーストーンを通して拡散させ、最小酸素レベルを3ppmに維持する。培養密度が高いと、粒子状有機物質や混入した原生動物が蓄積される可能性があり、その場合、生産に影響したり収穫時にプランクトンネットが詰まるおそれがある。したがって、ワムシもしくはブラインシュリンプの培養液は、ナイロンのマットフィルタ(1cm厚さ)を通して連続的に循環させる。このような簡単な濾過システムでも、最小限の損失で固形物を効果的に除去し、培養成績を安定化させる(ヨシムラ(Yoshimura)ら、1996;ヨシムラ(Yoshimura)ら、1995)。
【0035】
藻類餌料の配合
ビール酵母または部分的に加水分解したパン酵母(少なくとも細胞壁の外層は、酵素的または化学的に消化されている)は、ブラインシュリンプおよびワムシに消化性の高い栄養物を供給する。藻類餌料の組成における酵母含有量は、餌料の30%〜95%、より好ましくは70%〜90%の範囲である。本発明は、それらを食する動物の消化酵素には到達可能であるが、細胞壁は細胞の内容物が消費される前に水の中に出てしまうことのないようにそのままの状態が維持される酵母を提供する。
【0036】
乾燥パン酵母は、これらに限定されるものではないが、セルラーゼまたはマンナーゼなどの酵素または化学薬剤を使用して製造される。適した酵素とそれらの使用条件(pH、濃度、温度および培養期間など)は、当業者に知られている(ラベンス(Lavens)ら1992)。
【0037】
長鎖ポリ不飽和脂肪酸に富む微細藻類は、必須脂肪酸、特にDHA、ARAおよびEPAの供給源として提供される(バークレー(Barclay)およびゼラー(Zeller)1996;キュレ(Cure)ら1996;フルイタ(Furuita)ら1998;アブ−レスク(Abu−Rezq)ら2002;プレース(Place)およびハレル(Harel)2002a;プレース(Place)およびハレル(Harel)2002b)。DHAに富む藻類の含有量は、餌料の0.5%〜50%の範囲であり、より好ましくは餌料の5%〜20%である。DHA(ドコサヘキサエン酸)は、仔魚の成長や生存率に大きく寄与する重要な栄養素であると認められてきている(キュレ(Cure)ら1996)。仔魚は、ポリ不飽和脂肪酸を高レベルで含む藻類の直接給餌、または、藻類によってポリ不飽和脂肪酸に富むようになったワムシやブラインシュリンプを給餌することによって、最終的に藻類からのこれらの脂肪酸を摂取する(バークレー(Barclay)およびゼラー(Zeller)1996)。DHAに富む微細藻類は、発酵体の中で、糖をエネルギー源として使用するか、または光合成で生産される。これらの藻類はワムシの成長と再生に必須なビタミンB12が強化され、生産期間中は少なくとも200μg/100g乾燥物を含有する。
【0038】
アラキドン酸(ARA)に富む微細藻類または真菌類は必須脂肪酸源として供給される。ARAに富む藻類の含有量は、餌料の0.5%〜10%の範囲であり、より好ましくは餌料の2%〜8%である。ARAは、仔魚の成長や生存率ばかりでなく、浸透性の調節やストレスに対する抵抗に大きく寄与する重要な栄養素であると認められてきている。
【0039】
プロバイオティックまたはプレバイオテック菌(例えば、Lactobacillus sp.、Bacillus sp.、Bifidobacterium sp.およびEnterococcussp.など)が、0.01%〜5%の範囲で添加される。これらの細菌は生物の腸にコロニーを作るか、または有益な活性もしくは栄養素を分配する働きをする。そのようなプロビオントは、摂取する動物のストレスを和らげ、病原体の負荷を減少させるであろう。
【0040】
大型藻類抽出物もまた、約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.5%〜約1%の範囲で組成に含まれる。これらの抽出物は、ワムシやブラインシュリンプに、さらに追加の必須成長因子、抗菌性および静菌性化合物、色素、並びに、必須アミノ酸を与える。
【0041】
藻類は全て、生産過程でビタミンB12が強化される。これは、ワムシのBrachionus plicatilisが、餌料中に約100〜200μg/100g乾燥物の量のビタミンB12を要求するからである(ヒラヤマ(Hirayama)ら1989;ヒラヤマ(Hirayama)およびマルヤマ(Maruyama)1991;マルヤマ(Maruyama)およびヒラヤマ(Hirayama)1993)。藻類の栄養価は、藻類に3種の脂溶性ビタミン(ビタミンA、DおよびE)とビタミンCを強化することによって、さらに高められる。これらビタミンは全てサプリメント効果を示し、ワムシの増殖率を大きく増大させた(サツイト(Satuito)およびヒラヤマ(Hirayama1986;サツイト(Satuito)およびヒラヤマ(Hirayama1991)。
【実施例】
【0042】
次に本発明の実施形態を以下の実施例によりさらに詳細に記載する。これらの実施例は、選択された本発明の実施形態をより完全に記載するための助けとすることを単に意図するものであって、本発明の特許請求の範囲を制限するものと決して考えるべきものではない。
【0043】
実施例1.ワムシ培養用藻類餌料の配合
ビール乾燥酵母は、米国、イリノイ州、ペキンのウィリアム・バイオプロダクツ(William Bioproducts)より購入した。DHAに富むSchizochytrium sp.は、米国、メリーランド州、コロンビアのアドバンスド・バイオニュートリション・コーポレーション(Advanced BioNutrition Corp.)から入手した。Padinasp.乾燥粉末抽出物は、ICP(マルタ(Malta))から入手した。
【0044】
成分を表1に示す割合で混合してワムシ用餌料を配合した。全ての成分を、乾燥重量基準で混合し、ミルで粉砕して、約5〜約15μmのサイズの微粒子を製造した。
【0045】
【表1】

【0046】
ワムシに、ワムシ100万個当たり1日量0.5g乾燥物で連続的に給餌した。ワムシを、毎日、全培養容積の30〜50%を交換することによって、連続的に収穫した。温度、酸素量、全てのフリーのアンモニア、並びに、pHを、前記概略のように連続的に監視した。ワムシは、仔稚魚、甲殻類または他の水生生物の生餌として直接使用した。
【0047】
実施例2.ブラインシュリンプ用藻類餌料の配合
DHAに富むCrypthecodinium sp.およびTetraselmis sp.は、AquaGrow(登録商標)の商標名で製造されたものである。他の全ての成分は、実施例1で示したように入手し、表2にしたがって調製した。
【0048】
【表2】

【0049】
ブラインシュリンプへの給餌を、最初、1日分の給餌量を体重の100%として、孵化約8時間後(2齢幼生期)に開始した。1日の給餌量を、毎日10%ずつ減少させ、必要な大きさに達したときに、培養タンクから部分的に収穫することができる。完全な収穫は、孵化後10日目、ブラインシュリンプがタンク中で最大のサイズ、または、最大のバイオマスに達したときに、行うことができる。温度、酸素量、全てのフリーアンモニア、並びに、pHを、前記概略のように連続的に監視した。
【0050】
実施例3.イガイ用藻類餌料の配合
スプレードライしたSpirulina sp.は、ハワイ州、カイルア−コナ(Kailua−Kona,HI)のシアノテック・コーポレーション(Cyanotech Corp.)から入手した。他の全ての成分は、実施例1および2で示したように入手し、表3にしたがって調製した。乾燥ミールを混合し、50μm未満の微粒子に粉砕した。
【0051】
【表3】

【0052】
イガイ(M.galloprovincialis)の幼生を、一水槽当たり20個体の密度で、25Lのプラスチック水槽に入れる。培養系は、閉鎖循環水システムに組み込まれており、バイオフィルタ、10μmメッシュフィルタおよびUV処理装置を具備している。温度は24〜26℃に維持する。藻類ミールを水に懸濁し、ブレンダで激しく混合し、1日に2回、全量で2mg/Lとなるようにイガイに与える。この動物の成長速度および生存率を、週ベースでモニターする。
【0053】
実施例4.エビ幼生用藻類餌料の配合
Chaetoceros sp.は、フォトバイオリアクター中、50%インスタント・オーシャン(Instant Ocean)培地で、標準の照明と文献(ディー・ソウザ(D’Souza)ら2002)で知られている方法により培養する。Laminaria抽出物は、カリフォルニア州、メンローパークのパシフィック・スタンダード・ディストリビューターズ・インコーポレイテッド(Pacific Standard Distributors Inc)より入手する。全ての成分は、実施例1および2で示したように入手し、表4にしたがって調製した。乾燥ミールを混合し、50μm未満の微粒子に粉砕した。
【0054】
【表4】

【0055】
幼生期のエビ(Penaeus vannameiまたはLitopenaeus vannamei)を、一水槽当たり50個体の密度で、25Lのプラスチック水槽に入れる。培養系は、閉鎖循環水システムに組み込まれており、バイオフィルタ、10μmメッシュフィルタおよびUV処理装置を具備している。温度は24〜26℃に維持する。藻類ミールを水に懸濁し、ブレンダで激しく混合し、1日に2回、全量で2mg/Lとなるように幼生に与える。この動物の成長速度および生存率を、週ベースでモニターする。
【0056】
実施例5.ワムシ培養用藻類餌料の配合
乾燥ビール酵母は、米国、イリノイ州、ペキンのウィリアム・バイオプロダクツ(William Bioproducts)より購入した。DHAに富むSchizochytrium sp.は、米国、メリーランド州、コロンビアのアドバンスド・バイオニュートリション・コーポレーション(Advanced BioNutrition Corp.)から入手した。Padinasp.乾燥粉末抽出物は、ICP マルタ(Malta)から入手した。
【0057】
90gのビール酵母、9gのSchizochytriumバイオマスおよび1gの乾燥Padina抽出物を混合してワムシ用餌料を配合した(表5)。全ての成分を、乾燥重量基準で混合し、その後、ミルで粉砕して、5〜15μmのサイズの微粒子を製造した。
【0058】
【表5】

【0059】
ワムシには、ワムシ100万個当たり1日量0.5g乾燥物で連続的に給餌した。ワムシは、毎日、全培養容積の30〜50%を交換することによって、連続的に収穫した。温度、酸素量、全てのフリーアンモニア、並びに、pHを連続的に監視した。ワムシは、仔稚魚、甲殻類または他の水生生物の生餌として直接使用した。標準培養餌料(生パン酵母と藍藻類)、商業的に入手できる培養餌料(カルチャー・セルコ(Culture Selco))および本発明の藻類餌料を与えたワムシの結果を表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
実施例6.プロバイオティックのLactobacillus rhamnosusを添加したワムシ培養用藻類餌料の配合
藻類餌料は実施例1に記載したように調製し、凍結乾燥したLactobacillus rhamnosusは、日本、神奈川県の森永乳業株式会社から入手した。
【0062】
89.9gのビール酵母、9gのSchizochytrium、1gのPadinaおよび0.1gのL.rhamnosusを混合してワムシ用餌料を配合した(表7)。全ての成分を、乾燥重量基準で混合し、ミルで粉砕して、約5〜15μmのサイズの微粒子を製造した。
【0063】
【表7】

【0064】
ワムシには、ワムシ100万個当たり1日量1g乾燥物で連続的に給餌した。培養条件は、外気によるチューブ曝気、温度28±1℃、塩分濃度20ppt、pH8±0.5、酸素飽和度100±5%、培養容積約20〜100Lとした。1日の給餌量を4〜5回/日で与えた。
【0065】
温度(℃)、酸素(%飽和度)、pH、塩分濃度(ppt)およびワムシの数/mLを毎日測定した。毎日のワムシの収穫を、培養中のワムシの数の約30%とした。図1に、標準培養餌料(生パン酵母および藍藻類の混合物)、商業的に入手できる培養餌料(カルチャー・セルコ(Culture Selco))、および本発明に係るプロバイオティックのラクト菌を添加した藻類餌料を与えた場合のワムシの日産量を示す。
【0066】
実施例7.ビール酵母およびSchizochytriumを添加したワムシ培養用藻類餌料の配合
乾燥ビール酵母は、米国、イリノイ州、ペキンのウィリアム・バイオプロダクツ(William Bioproducts)より購入した。DHAに富むSchizochytrium sp.は、米国、メリーランド州、コロンビアのアドバンスド・バイオニュートリション・コーポレーション(Advanced BioNutrition Corp.)から入手した。ワムシは、表8に記載の特定の添加物を添加した以外は、実施例6に記載したように培養した。ビール酵母およびSchizochytriumを90:10の比で含有する餌料(2つの異なるタイプのビール酵母)は、新鮮な藻類と酵母を供給する対照餌料に十分に匹敵していた。オリーブ抽出物またはパディナ(Padina)抽出物の添加は、3日間の投入では1mLあたりのワムシの数に大きな変化をもたらさなかった。これらの餌料は全て、カルチャー・セルコ(Culture Selco)より優れていた。
【0067】
【表8】


本明細書は、以下に示す参考文献を参照することによって最もよく理解され、これら全体を本明細書に参照として援用する。
米国特許
6,451,567 Barclay, W. September 17,2002
6,372,460 Gladue and Behrens April 16,2002
6,103,225 Barclay, W. August 15,2000
5,739,006 Abe, et al. April 14,1998
5,688,500 Barclay, W. November 18,1997
5,158,788 Lavens,et al. October 27, 1992
5,047,250 Prieels, etal. September 10,1991
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【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ワムシ100万個当たりD.W.ベーカーズ イースト(D.W.Bakers yeast)0.4gおよび生きた藻類Nanochloropsis sp.40×10個与えた場合(▲)、ワムシ100万個当たり藻類餌料1gおよび0.1%L.rhamnosusを与えた場合(×)、並びに、カルチャー・セルコ(Culture Selco)(INVE,バスロード ベルギー(INVE,Bassrode Belgium))を与えた場合(◆)のワムシの1日の収穫量(全培養量の30%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母および微細藻類、またはそれらの成分を含む水産養殖用餌料。
【請求項2】
平均粒子径が約5μm〜約100μmの範囲である請求項1に記載の水産養殖用餌料。
【請求項3】
前記餌料成分がドライ混合され、微粉末に粉砕されている請求項1に記載の水産養殖用餌料。
【請求項4】
前記酵母は、前記餌料の約30〜約95パーセント含まれる請求項1に記載の水産養殖用餌料。
【請求項5】
前記酵母は、Saccharomycesspp.、Saccharomyces cerevisiae、Phaffia spp.、Phaffia rhodozyma、Pichia spp.、Pichiapastoris、Kluyveromyces spp.、Kluyveromyces aestuarii、Kluyveromyces marxianusおよびKluyveromycesyarrowiiから選択される請求項2〜4のいずれかに記載の水産養殖用餌料。
【請求項6】
前記酵母は、ビール酵母である請求項2〜4のいずれかに記載の水産養殖用餌料。
【請求項7】
少なくとも約5重量パーセントの微細藻類源を含む請求項1に記載の水産養殖用餌料。
【請求項8】
微細藻類源は、Tetraselmissp.、Tetraselmis suecica、Myrmecia sp.、Myrmecia bissecta、Lyngbya sp.、Lyngbya majuscula、Cytospora sp.、Scenedesmus sp.、Scenedesmus obliquus、Scytonema sp.、Scytonema hofmanni、Nostoc sp.、Nostoc weissfloggia、Chaetoceros sp.、Chaetoceros lauderi、Ecklonia sp.、Ecklonia maxima、Dunaliella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella tertiolecta、Dunaliella bardiwal、Pseudoanabaena sp.、Anabaena sp.、Prorocentrum sp.、Prorocentrum minimum、Polysiphoniasp.、Polysiphonia denudata、Spirulina sp.、Arthrospira sp.、Spirulina platensis、Aphanotheaeosp.、Aphanotheae nidulans、Hydrodictyon sp.、Hydrodictyon reticulatum、Navicula sp.、Naviculadelongei、Phaeodactylum sp.、Phaeodactylum tricornutum、Pseudonitzschia sp.、Nitzschia sp.、Nitzschia navis-varingica、Chlorella sp.、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella vulgaris、Chlamydomonas sp.、Chlamydomonas reinhardii、Prennioporia sp.、Prennioporia medullaeparis、Pandorina sp.、Pandorina morum、Isochrysis spp.、Isochrysis galbana、Schizochytrium sp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohniiおよびThraustochytrium sp.から選択される請求項7に記載の水産養殖用餌料。
【請求項9】
前記微細藻類は、Schizochytriumsp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohnii、Thraustochytrium sp.およびこれらの成分から選択される請求項7に記載の水産養殖用餌料。
【請求項10】
プロバイオティック成分をさらに含む請求項1に記載の水産養殖用餌料。
【請求項11】
前記プロバイオティック成分は、Lactobacillus sp.、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Pseudoalteromonas sp.およびPseudoalteromonas undinaから選択される請求項10に記載の水産養殖用餌料。
【請求項12】
酵母、微細藻類および大型藻類を含む水産養殖用餌料。
【請求項13】
平均粒子径が約5μm〜約100μmの範囲である請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項14】
前記餌料成分がドライ混合され、微粉末に粉砕されている請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項15】
前記酵母は、前記餌料の約30〜約95パーセント含まれる請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項16】
前記酵母は、Saccharomyces spp.、Saccharomyces cerevisiae、Phaffia spp.、Phaffia rhodozyma、Pichia spp.、Pichia pastoris、Kluyveromyces spp.、Kluyveromyces aestuarii、Kluyveromyces marxianusおよびKluyveromyces yarrowiiから選択される請求項12〜15のいずれかに記載の水産養殖用餌料。
【請求項17】
前記酵母は、部分的に消化されている請求項12〜15のいずれかに記載の水産養殖用餌料。
【請求項18】
少なくとも約5重量パーセントの大型藻類を含む請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項19】
大型藻類源は、Tetraselmissp.、Tetraselmis suecica、Myrmecia sp.、Myrmecia bissecta、Lyngbya sp.、Lyngbya majuscula、Cytospora sp.、Scenedesmus sp.、Scenedesmus obliquus、Scytonema sp.、Scytonema hofmanni、Nostoc sp.、Nostoc weissfloggia、Chaetoceros sp.、Chaetoceros lauderi、Ecklonia sp.、Ecklonia maxima、Dunaliella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella tertiolecta、Dunaliella bardiwal、Pseudoanabaena sp.、Anabaena sp.、Prorocentrum sp.、Prorocentrum minimum、Polysiphoniasp.、Polysiphonia denudata、Spirulina sp.、Arthrospira sp.、Spirulina platensis、Aphanotheae sp.、Aphanotheae nidulans、Hydrodictyon sp.、Hydrodictyon reticulatum、Navicula sp.、Naviculadelongei、Phaeodactylum sp.、Phaeodactylum tricornutum、Pseudonitzschia sp.、Nitzschia sp.、Nitzschia navis-varingica、Chlorella sp.、Chlorella pyrenoidosa、Chlorellavulgaris、Chlamydomonas sp.、Chlamydomonas reinhardii、Prennioporia sp.、Prennioporia medullaeparis、Pandorina sp.、Pandorina morum、Isochrysis spp.、Isochrysis galbana、Schizochytrium sp.、Crypthecodinium sp.、Crypthecodinium cohniiおよびThraustochytrium sp.から選択される請求項18に記載の水産養殖用餌料。
【請求項20】
少なくとも約0.5重量パーセントの大型藻類を含む請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項21】
大型藻類源は、Laminariaspp.、Padina sp.、Gracillaria sp.およびUlva sp.から選択される請求項20に記載の水産養殖用餌料。
【請求項22】
前記大型藻類源は、大型藻類の抽出物を含む請求項20に記載の水産養殖用餌料。
【請求項23】
前記大型藻類抽出物は、エタノール抽出生成物を含む請求項22に記載の水産養殖用餌料。
【請求項24】
プロバイオティック成分をさらに含む請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項25】
前記プロバイオティック成分は、Lactobacillus sp.、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Pseudoalteromonas sp.およびPseudoalteromonas undinaから選択される請求項24に記載の餌料。
【請求項26】
前記酵母は、部分的に消化されている請求項12に記載の水産養殖用餌料。
【請求項27】
請求項1に記載の餌料を養殖種に給餌することを含む方法。
【請求項28】
請求項1に記載の餌料を動物プランクトン種に給餌することを含む方法。
【請求項29】
前記動物プランクトン種は、ブラインシュリンプ、ワムシ、Artemia spp.、Artemia salina、Artemia franciscana、Brachionus spp.、Brachionus plicatilis、カイアシ類および枝角類から選択される請求項28に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−506065(P2006−506065A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551696(P2004−551696)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/035043
【国際公開番号】WO2004/043139
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504102530)アドバンスド バイオニュートリション コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】