説明

ワークの移載装置及びワークの移載方法

【課題】ワークの品質低下を抑えつつワークを確実に移載することができるワークの移載装置及びワークの移載方法を提供する。
【解決手段】搬送コンベア12にて搬送される金属リングWの搬送方向に搬送コンベア12と並列して配置され、且つ金属リングWが載置される載置面30を有する載置部14及び搬送コンベア12間で金属リングWを移載する金属リングWの移載装置16であって、載置面30が金属リングWの搬送方向且つ水平線Lに対して傾斜するように載置部14を変位する変位手段を備え、変位手段は、載置部14を回転可能に支持する支持部34と、載置部14を所定位置で保持する保持部36と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送コンベアと載置部との間でワークを移載するワークの移載装置及びワークの移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の変速装置として用いられる無段変速機(CVT)のベルトは、複数の金属リングをそれらの厚み方向に積層して組み立てた積層リングにより構成されている。
【0003】
前記金属リングは、鋼材料の薄板の端部同士を溶接して形成された円筒状のドラムを所定幅に裁断して得られた帯状のリングを、所定の厚さに圧延し、窒化処理等を施して形成される(特許文献1参照)。
【0004】
このような金属リングの製造ラインには、金属リングを搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアにて搬送される前記金属リングの搬送方向に該搬送コンベアと並列して近接配置される載置部とが設けられており、前記搬送コンベア及び前記載置部間で前記金属リングが移載される。
【0005】
搬送コンベアから載置部に金属リングを移載する方法として、前記金属リングを搬送方向に送り出す前記搬送コンベアの搬送力を利用するものが知られている。
【0006】
また、載置部から搬送コンベアに金属リングを移載する方法として、アクチュエータ等を利用して前記載置部に載置されている前記金属リングを前記搬送コンベアに押し込むものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−257462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した搬送コンベアから載置部に金属リングを移載する方法では、金属リングと搬送コンベアとが非接触となる位置で前記金属リングの搬送が停止するので、該金属リングの一部が前記載置部からはみ出し、移載が不十分となることがある。前記金属リングが前記載置部からはみ出ないようにする(金属リングを完全に移載させる)方法としては、前記搬送コンベアにて搬送される別の金属リングにて前記載置部に搬送された該金属リングを押し込む方法や、アクチュエータ等を利用して前記載置部に載置された前記金属リングを押し込む方法等が考えられる。
【0009】
しかし、前者の場合には、前記載置部に載置されている前記金属リングと前記別の金属リングとが接触し、後者の場合には、前記金属リングと前記アクチュエータ等とが接触するので、金属リングが損傷することがある。
【0010】
また、上述した載置部から搬送コンベアに金属リングを移載する方法においても、前記アクチュエータ等と前記金属リングとが接触するので、金属リングが損傷することがある。従って、前記搬送コンベア及び前記載置部間で前記金属リングを移載する際に、前記金属リングの品質が低下するおそれがある。なお、このような不具合は、金属リングに限らず、他のワークを製造する時にも起こり得る。
【0011】
そこで、本発明は、ワークの品質低下を抑えつつワークを確実に移載することができるワークの移載装置及びワークの移載方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るワークの移載装置は、搬送コンベアにて搬送される金属リングの搬送方向に該搬送コンベアと並べて配置され且つ当該金属リングが載置される載置面を有する載置部、及び前記搬送コンベアの間で当該金属リングを移載するワークの移載装置であって、前記載置面が、前記金属リングの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位する変位手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るワークの移載装置は、搬送コンベアにて搬送されるワークの搬送方向に該搬送コンベアと並べて配置され且つ当該ワークが載置される載置面を有する載置部、及び前記搬送コンベアの間で当該ワークを移載するワークの移載装置であって、前記載置面が、前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位する変位手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るワークの移載装置によれば、搬送コンベアから載置面にワークを移載する場合、前記搬送コンベアにて前記載置面に前記ワークを搬送した後に、前記載置面を前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜させることができる。これにより、前記搬送コンベアから前記載置面に前記ワークを搬送した際に、該ワークの一部が前記載置面からはみ出していたとしても、該ワークを重力によって前記載置面上を斜め下方に滑り落として、該ワーク全体を前記載置面内に収めることができる。また、載置面から搬送コンベアにワークを移載する場合、前記載置面に前記ワークが載置されている状態で、前記載置面を前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜させることができる。これにより、前記ワークを重力によって前記載置面上を斜め下方に滑り落として、前記搬送コンベアに載置させることができる。従って、前者及び後者のどちらの場合においても、他のワークやアクチュエータ等と接触させることなく、搬送コンベア及び載置面間でワークを移載することができる。よって、ワークの品質低下を抑えつつワークを確実に移載することができる。なお、本発明において、水平線とは、鉛直方向と直交する線を言う。
【0015】
本発明の一形態において、前記変位手段は、前記載置部を、傾斜自在に揺動可能に支持する支持手段と、前記載置部を、所定位置で保持する保持手段と、を有してもよい。
【0016】
この形態によれば、載置部を水平位置から揺動させた状態で保持手段によって保持することにより、載置面を容易に傾斜させることができる。また、搬送コンベアから載置面にワークを移載する際に、例えば、傾斜状態にある載置部を水平位置まで揺動させた状態で保持手段によって保持することにより、載置面上を滑り落ちるワークを停止させることができる。なお、本形態において、揺動とは、載置部を時計方向及び反時計方向に回転させるものだけでなく、前記載置部を例えば、時計方向にのみ回転させるものを含む。さらに、回転とは、載置部の回転角度が0°〜90°の範囲のものを含む。
【0017】
上記形態において、前記保持手段には、前記載置部に設けられた状態で伸縮自在な伸縮部を有しており、前記伸縮部の伸縮量を制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0018】
この形態によれば、制御部にて伸縮部の伸縮量を制御することにより、載置面の傾斜状態(傾斜角度)を変えることができる。これにより、載置面を滑り落ちるワークを所望の位置に配置させることができる。
【0019】
本発明の一形態において、前記伸縮部は、前記載置面とは異なる位置に設けられてもよい。これにより、載置面上の空間を自由に利用することができる。
【0020】
本発明の一形態において、前記載置部には、前記ワークの前記載置面からの落下を阻止するストッパ部が設けられてもよい。これにより、例えば、搬送コンベアから載置面にワークを移載する際に、前記ワークが何らかの要因により載置面から外部に滑り落ちそうな場合であっても、該ワークの前記載置面からの落下を阻止することができる。
【0021】
本発明に係るワークの移載方法は、搬送コンベアにてワークを搬送する搬送工程と、前記ワークの搬送方向に前記搬送コンベアと並べて配置された載置部の載置面が、前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位させる変位手段を制御手段にて制御することにより、当該載置面を傾斜する傾斜工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一形態において、前記傾斜工程は、少なくとも前記変位手段を前記制御手段にて制御することにより、ワーク全体を前記載置面上で停止させて、前記載置面内に収めてもよい。
【0023】
この形態によれば、載置面内の所望の位置に収めることにより、ロボット等にてワークを、載置面から容易に把持することができるようになり、ワークの品質低下を抑えつつワークを確実に移載することができる。
【0024】
さらに、本発明の一形態において、前記傾斜工程は、前記変位手段を前記制御手段にて制御することにより、当該載置面を傾斜させた後、前記ワークが前記搬送コンベアに近づくにつれ傾斜させた載置面が水平線に近づくように、段階的に、又は連続的に前記載置部を変位させてもよい。
【0025】
この形態によれば、重力によって載置面上を下方に滑り落ちているワークが、搬送コンベアに到達する際に、金属リングが受ける衝撃が小さくなり、より一層ワークの品質低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、搬送コンベアから載置面にワークを移載する場合、前記載置面を前記ワークの搬送方向且つ水平線に対して傾斜させることで該ワークを重力によって前記載置面上を斜め下方に滑り落として、該ワーク全体を前記載置面内に収めることができる。また、載置面から搬送コンベアにワークを移載する場合、前記載置面を前記ワークの搬送方向且つ水平線に対して傾斜させることで前記載置面上に位置している前記ワークを重力によって前記載置面上を斜め下方に滑り落として、前記搬送コンベアに載置させることができる。従って、ワークの品質低下を抑えつつワークを確実に移載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る移載装置が適用された搬送装置の斜視図である。
【図2】搬送コンベアから載置面への金属リングの移載を説明するための図において、図2Aは載置面が傾斜している状態を示す説明図であり、図2Bは載置面が水平に位置している状態を示す説明図である。
【図3】第1実施形態において、搬送コンベアから載置面に金属リングを移載する手順を示すフローチャートである。
【図4】載置面から搬送コンベアへの金属リングの移載を説明するための図において、図4Aは載置面が水平に位置している状態を示す説明図であり、図4Bは載置面が傾斜している状態を示す説明図である。
【図5】第1実施形態において、載置面から搬送コンベアに金属リングを移載する手順を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る移載装置が適用された搬送装置の斜視図である。
【図7】第2実施形態において、搬送コンベアから載置面に金属リングを移載する手順を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態において、載置面から搬送コンベアに金属リングを移載する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態例について図1〜図8を参照しながら説明する。
【0029】
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態に係る移載装置及び移載方法が適用された搬送装置について図1〜図5を参照しながら説明する。前記搬送装置は、例えば、自動車等の変速装置として用いられる無段変速機(CVT)のベルトを構成するワークとしての金属リングの製造ラインに用いられる。なお、前記CVTベルト用の金属リングは上述した通り、薄板帯状で円形状に略復元しようとする弾性力を有する。
【0030】
図1に示すように、搬送装置10は、金属リングWを一方向に搬送するための搬送コンベア12と、搬送コンベア12にて搬送される金属リングWの搬送方向に並列した状態で搬送コンベア12と近接配置される板状の載置部14と、搬送コンベア12及び載置部14間で金属リングWを移載する移載装置16と、制御部17とを備えている。搬送コンベア12及び載置部14間の隙間は、金属リングWの外径の半分以下に設定されている。
【0031】
搬送コンベア12は、ベルトコンベアとして構成されており、リング状に形成されたベルト部18と、ベルト部18が巻掛けられる一対のローラ部20、22と、片方のローラ部20を回転するためのモータ24と、各ローラ部20、22の両端に設けられて床面に載置される脚部26、26、26、26とを有している。但し、搬送コンベア12として、ローラコンベア等を利用してもよい。ベルト部18は、金属リングWが載置される搬送面28を含んでいる。また、ベルト部18(搬送面28)の幅は、金属リングWの外径よりも幾らか大きく形成されている。各脚部26、26、26、26の長さは、略同一に形成されている。これにより、搬送面28が略水平となる。
【0032】
載置部14は、金属リングWが載置される載置面30を有している。載置面30は、金属リングWの外径よりも幾らか大きく形成されており、載置面30の幅は、搬送面28の幅と略同一の大きさに設定されている。載置面30は、鉛直方向と直交する水平線Lに対して傾斜した状態で金属リングWが滑ることができるように形成されている(図2A参照)。具体的には、載置面30は、金属又は樹脂等で形成されている。また、載置部14には、金属リングWの載置面30への載置の有無を検出する検出センサ32が設けられている。
【0033】
移載装置16は、載置部14を揺動(回転)可能に支持する支持手段としての支持部34と、載置部14を所定位置で保持する保持手段としての保持部36と、搬送コンベア12とは反対側に位置する載置部14の側面に設けられたストッパ部38とを有する。
【0034】
支持部34は、ストッパ部38と隣り合う載置部14の両側面から突出する支軸40、40と、支軸40、40を回転可能に支持して床面に載置されるスタンド部42、42とを有する。支軸40、40は、搬送コンベア12寄りに位置している。スタンド部42、42の長さは、載置面30が水平に位置している時に、載置面30と搬送面28の鉛直方向の位置がほぼ揃うような長さに設定されている。
【0035】
保持部36は、床面に固定される固定部44と、固定部44に設けられた伸縮部46と、伸縮部46の先端と載置部14とを連結する連結部48とを有する。固定部44には、支軸40、40の軸線方向に延びた軸部50が設けられている。伸縮部46には、軸部50の周りに回転可能な状態で軸部50に設けられたシリンダ部52と、シリンダ部52に移動可能な状態で差し込まれたロッド部54とが設けられている。また、伸縮部46は、油圧や電気等によってシリンダ部52からのロッド部54の突出量が変更可能なように形成されている。つまり、伸縮部46は、アクチュエータとして構成されている。連結部48の一端部は載置部14の側面に固定されており、連結部48の他端部は伸縮部46が連結部48の軸線の周りに回動可能なようにロッド部54の先端に接続している。
【0036】
ストッパ部38は、載置面30から上方に幾らか突出するように設けられており、その突出量は金属リングWの厚みよりも大きく設定されている。なお、ストッパ部38は、例えばゴム等で構成することが好ましい。ストッパ部38を金属等の硬質材料で形成した場合と比較して、金属リングWとストッパ部38とが接触した際の金属リングWの損傷を抑えることができるからである。
【0037】
制御部17は、検出センサ32から出力された信号に基づいてロッド部54の伸縮量を制御するとともに、モータ24を制御する。制御部17では、前記シリンダ部52の突出量が記憶され、換言すると、少なくとも基準突出量、第1突出量、及び第2突出量が記憶されている。
【0038】
基準突出量としては、載置面30が水平に位置するような突出量が用いられる。
【0039】
図2Aに示すように、第1突出量としては、載置面30が搬送面28よりも鉛直下方に位置するようなシリンダ部52からのロッド部54の突出量が用いられる。具体的には、載置面30と水平線Lとのなす角度(以下、傾斜角度と称することがある。)がθl°となるようなシリンダ部52からのロッド部54の突出量が用いられる。なお、傾斜角度θlは、任意に設定してよく、例えば、搬送コンベア12から初速を受けて、載置面30上を滑り落ちていた金属リングWが、載置面30と金属リングWとの摩擦抵抗により、当該載置面30内で停止するような角度に設定される。また例えば、金属リングWが載置面30上を滑り落ちるような角度に設定される。
【0040】
図4Bに示すように、第2突出量としては、載置面30が搬送面28よりも上方に位置するようなシリンダ部52からのロッド部54の突出量が用いられる。具体的には、傾斜角度がθu°となるようなシリンダ部52からのロッド部54の突出量が用いられる。なお、傾斜角度θu°も任意に設定してもよく、例えば、金属リングWが載置面30上を滑り始めるような角度に設定される。
【0041】
次に、図2及び図3を参照しながら、搬送コンベア12から載置面30への金属リングWの移載について説明する。なお、図3に示すフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0042】
先ず、不図示のロボット等が搬送面28に金属リングWを載置する(ステップS1)。
【0043】
また、制御部17は、モータ24を駆動する(ステップS2)。具体的には図2に示すように、制御部17は、モータ24を反時計方向に回転する。これにより、ベルト部18が反時計方向に回転するので、搬送面28に載置されている金属リングWが載置部14側に移動する。
【0044】
そして、金属リングWが載置面30まで搬送されると、検出センサ32が金属リングWの載置面30への載置を検出する(ステップS3)。
【0045】
続いて、検出センサ32からの出力信号を取得した制御部17は、ロッド部54の突出量が第1突出量となるようにロッド部54を縮める(ステップS4)。これにより、載置部14は、載置面30が金属リングWの搬送方向に且つ水平線Lに対して傾斜角度θlだけ傾斜するように変位する。言い換えると、載置部14は、傾斜角度θlだけ載置面30が搬送面28よりも鉛直下方に傾斜するように変位する。よって、搬送コンベア12から載置面30に金属リングWを搬送した際に、金属リングWの一部が載置面30からはみ出していたとしても、金属リングWを重力によって載置面30上を斜め下方に滑り落として、金属リングW全体を載置面30内に収めることができる。
【0046】
その後、制御部17は、ロッド部54の突出量が基準突出量となるようにロッド部54を伸ばす(ステップS5)。これにより、載置部14は、載置面30が水平になるように変位する。よって、載置面30上を滑り落ちていた金属リングWが停止する。なお、上述では、ロッド部54の突出量が基準突出量となるように、ロッド部54を、制御部17が制御して、伸ばして、載置面30上を滑り落ちていた金属リングWを停止させる例を示したが、ステップS4で、搬送コンベア12から初速を受けて、載置面30上を滑り落ちていた金属リングWが、当該載置面30と金属リングWとの摩擦抵抗により、当該載置面30内で停止するような角度に応じた第1突出量となるように、制御部17はロッド部54を縮める制御を行ってもよい。この場合ステップS5は、不図示のロボット等にて金属リングWを載置面30から容易に把持できる状態になる。制御部17がロッド部54を伸ばすタイミングは、任意に設定してよい。ステップS5の処理後、本制御ルーチンは終了する。
【0047】
次に、図4及び図5を参照しながら、載置面30から搬送コンベア12への金属リングWの移載について説明する。なお、図5に示すフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0048】
先ず、不図示のロボット等が載置面30に金属リングWを載置する(ステップS11)。
【0049】
また、制御部17は、モータ24を駆動する(ステップS12)。具体的には図4Bに示すように、制御部17は、モータ24を時計方向に回転する。これにより、ベルト部18が時計方向に回転するので、搬送面28に金属リングWが載置された際に、金属リングWが載置部14から離れる方向に移動する。
【0050】
この時、検出センサ32は、金属リングWの載置面30への載置を検出する(ステップS13)。
【0051】
続いて、検出センサ32からの出力信号を取得した制御部17は、ロッド部54の突出量が第2突出量となるようにロッド部54を伸ばす(ステップS14)。これにより、載置部14は、載置面30が金属リングWの搬送方向且つ水平線Lに対して傾斜角度θuだけ傾斜するように変位する。言い換えると、載置部14は、傾斜角度θuだけ載置面30が搬送面28よりも上方に傾斜するように変位する。よって、金属リングWが重力によって載置面30上を下方に落ち始めて、搬送面28に到達する。搬送面28に到達した金属リングWは、搬送コンベア12にて所定の位置まで搬送される。
【0052】
その後、制御部17は、ロッド部54の突出量が基準突出量となるようにロッド部54を縮める(ステップS15)。そうすることにより、不図示のロボット等が金属リングWを、載置面30に載置しやすい状態になる。なお、制御部17がロッド部54を縮めるタイミングは、任意に設定してよい。ステップS15の処理後、本制御ルーチンは終了する。
【0053】
上述した図3及び図5のフローチャートにおいて、ステップS2及びステップS12が搬送工程に、ステップS4及びステップS14が傾斜工程にそれぞれ相当する。また、上述した移載装置16において、支持部34及び保持部36が変位手段に相当する。
【0054】
以上説明したように、第1実施形態に係る移載装置16によれば、搬送コンベア12及び載置部14間で金属リングWを移載する際に、別の金属リングやアクチュエータ等を移載する金属リングWに接触させる必要がないので、金属リングWが損傷することがない。よって、金属リングWの品質低下を抑えつつ金属リングWを確実に移載することができる。
【0055】
また、第1実施形態に係る移載装置16において、搬送コンベア12から載置面30に金属リングWを移載する際に、傾斜角度θl及びステップS5を実行するタイミングを任意に設定することにより、載置面30を滑り落ちる金属リングWを所望の位置に配置させることができる。
【0056】
さらに、第1実施形態に係る移載装置16において、保持部36が載置部14の側面に設けられているので、載置面30上の空間を自由に利用することができる。また、ストッパ部38を設けているので、搬送コンベア12から載置面30に金属リングWを移載する際に、金属リングWが何らかの要因により載置面30から外部に滑り落ちそうな場合であっても、金属リングWの載置面30からの落下を阻止することができる。
【0057】
第1実施形態は、上述した構成に限定されず、種々の構成を採ることができる。保持部は、載置部の1つの側面に設けられている例に限らず、載置部の向かい合う一対の側面にそれぞれ設けてもよい。これにより、載置部をより安定した状態で所定の位置に保持することができる。また、保持部を載置部の載置面の裏面に設けてもよい。
【0058】
伸縮部は、アクチュエータでなくてもよい。例えば、ボールねじ軸及びナットを利用してロッド部の伸縮を実現してもよい。
【0059】
また、制御部は、ステップS15において、ロッド部を縮めるタイミングを任意に設定してよい。例えば、制御部は、載置面上を滑り落ちている金属リングが、搬送コンベアの搬送面に近づくにつれ、段階的又は、連続的に傾斜角度が小さくなるように、ロッド部を縮めてもよい。これにより、重力によって載置面上を下方に滑り落ちている金属リングが、搬送面に到達する際に、金属リングが受ける衝撃が小さくなり、より一層金属リングの品質低下を抑えることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る移載装置について図6〜図8を参照しながら説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と共通する構成には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
図6に示すように、第2実施形態に係る搬送装置100は、第1実施形態に係る搬送装置10とほぼ同様の構成を有するが以下の点で異なる。すなわち、移載装置116の構成が第1実施形態と比較して変更されている。移載装置116は、第1実施形態の保持部36が省略され、支軸40を回転駆動する保持手段としての回転モータ156が追加されている。そして、制御部117は、検出センサ32から出力された信号に基づいて回転モータ156の回転量を制御する。制御部117には、基準位置、第1回転位置、及び第2回転位置が記憶されている。なお、第1実施形態との関係において、基準位置は基準突出量に、第1回転位置は第1突出量に、第2回転位置は第2突出量にそれぞれ対応している。
【0062】
次に、搬送コンベア12から載置面30への金属ベルトWの移載について図7を参照しながら説明する。図7は図3に対応しており、ステップS21〜ステップS23の処理は、ステップS1〜ステップS3の処理と同一である。従って、ステップS24及びステップS25の処理についてのみ説明する。
【0063】
ステップS23の処理後、検出センサ32からの出力信号を取得した制御部117は、回転モータ156の回転位置が第1回転位置となるように回転モータ156を回転する(ステップS24)。これにより、上述したステップS4の効果と同様な効果を奏する。
【0064】
その後、制御部117は、回転モータ156の回転位置が基準位置となるように回転モータ156を回転する(ステップS25)。これにより、上述したステップS5の効果と同様な効果を奏する。ステップS25の処理後、本制御ルーチンは終了する。
【0065】
次に、載置面30から搬送コンベア12への金属ベルトWの移載について図8を参照しながら説明する。図8は図5に対応しており、ステップS31〜ステップS33の処理は、ステップS11〜ステップS13の処理と同一である。従って、ステップS34及びステップS35の処理についてのみ説明する。
【0066】
ステップS33の処理後、検出センサ32からの出力信号を取得した制御部117は、回転モータ156の回転位置が第2回転位置となるように回転モータ156を回転する(ステップS34)。これにより、上述したステップS14と同様な効果を奏する。
【0067】
その後、制御部117は、回転モータ156の回転位置が基準位置となるように回転モータ156を回転する(ステップS35)。ステップS35の処理後、本制御ルーチンは終了する。
【0068】
上述した図7及び図8のフローチャートにおいて、ステップS22及びステップS32が搬送工程に、ステップS24及びステップS34が傾斜工程にそれぞれ相当する。
【0069】
第2実施形態は、上述した例に限定されない。制御部は、ステップS35において、回転モータの回転位置を基準位置に近づけるように回転させるタイミングを任意に設定してよい。例えば、制御部は、載置面上を滑り落ちている金属リングが、搬送コンベアの搬送面に近づくにつれ、段階的又は、連続的に傾斜角度が小さくなるように、回転モータを制御してもよい。これにより、重力によって載置面上を下方に滑り落ちている金属リングが、搬送面に到達する際に、金属リングが受ける衝撃が小さくなり、より一層金属リングの品質低下を抑えることができる。
【0070】
ところで、金属リングの製造工程では、搬送コンベアから載置部に移載された金属リングは、ロボット等によって把持されて別の位置に運搬されることがある。このような製造工程において、従来のように載置面まで搬送された金属リングを搬送コンベアにて搬送される別の金属リングにて押し込むようにして載置面に移載した場合、金属リング同士が接触しているので、前記別の金属リングが邪魔になってロボットの不測の停止(いわゆるチョコ停)が生じ、金属リングの生産性が悪化するおそれがある。
【0071】
しかし、上述した各実施形態によれば、搬送コンベア12から載置面30に金属リングWを移載する際に、金属リングW同士が接触することがないので、ロボットのチョコ停の発生を抑制することができる。よって、金属リングWの生産性を向上させることができる。
【0072】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。ワークは、金属リングに限らず、種々の形状のワークを用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
10、100…搬送装置 12…搬送コンベア
14…載置部 16…移載装置
17、117…制御部 30…載置面
34…支持部(支持手段) 36…保持部(保持手段)
156…回転モータ(保持手段) L…水平線
W…金属リング(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送コンベアにて搬送される金属リングの搬送方向に該搬送コンベアと並べて配置され且つ当該金属リングが載置される載置面を有する載置部、及び前記搬送コンベアの間で当該金属リングを移載するワークの移載装置であって、
前記載置面が、前記金属リングの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位する変位手段を備えること
を特徴とするワークの移載装置。
【請求項2】
搬送コンベアにて搬送されるワークの搬送方向に該搬送コンベアと並べて配置され且つ当該ワークが載置される載置面を有する載置部、及び前記搬送コンベアの間で当該ワークを移載するワークの移載装置であって、
前記載置面が、前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位する変位手段を備えること
を特徴とするワークの移載装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワークの移載装置において、
前記変位手段は、前記載置部を、傾斜自在に揺動可能に支持する支持手段と、
前記載置部を、所定位置で保持する保持手段と、を有すること
を特徴とするワークの移載装置。
【請求項4】
請求項3記載のワークの移載装置において、
前記保持手段は、前記載置部に設けられた状態で伸縮自在な伸縮部を有しており、
前記伸縮部の伸縮量を制御する制御部をさらに備えること
を特徴とするワークの移載装置。
【請求項5】
請求項4記載のワークの移載装置において、
前記伸縮部は、前記載置面とは異なる位置に設けられていることを特徴とするワークの移載装置。
【請求項6】
請求項2記載のワークの移載装置において、
前記載置部には、前記ワークの前記載置面からの落下を阻止するストッパ部が設けられていることを特徴とするワークの移載装置。
【請求項7】
搬送コンベアにてワークを搬送する搬送工程と、
前記ワークの搬送方向に前記搬送コンベアと並べて配置された載置部の載置面が、前記ワークの搬送方向に且つ水平線に対して傾斜するように、前記載置部を変位させる変位手段を制御手段にて制御することにより、当該載置面を傾斜する傾斜工程と、を有すること
を特徴とするワークの移載方法。
【請求項8】
請求項7記載のワークの移載方法において、
前記傾斜工程は、少なくとも前記変位手段を前記制御手段にて制御することにより、ワーク全体を前記載置面上で停止させて、前記載置面内に収めること
を特徴とするワークの移載方法。
【請求項9】
請求項7記載のワークの移載方法において、
前記傾斜工程は、前記変位手段を前記制御手段にて制御することにより、当該載置面を傾斜させた後、前記ワークが前記搬送コンベアに近づくにつれ傾斜させた載置面が水平線に近づくように、段階的に、又は連続的に前記載置部を変位させることを特徴とするワークの移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−32047(P2011−32047A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180442(P2009−180442)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】