説明

ワーク切出し装置及びワーク切出し方法

【課題】径の異なるリング形状のワークを流通路に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークを1つずつ確実に排出する。
【解決手段】貯留部と、流通路4と、排出口5と、外縁部3に当接することにより第1ワークSW1を係止する第1係止手段10と、内縁部6に当接することにより第1ワークSW1を係止する第2係止手段15と、第2係止手段15により係止された第2ワークSW2の外縁部3に当接することにより第2ワークSW2を係止する第3係止手段20とを備え、第1係止手段10による第1ワークSW1の係止を解除した場合に、第2係止手段15は第1ワークSW1を係止し、第2係止手段15による第1ワークSW1の係止を解除した場合に、第3係止手段20は第2ワークSW2を係止し、第3係止手段20による第2ワークSW2の係止を解除した場合に、第1係止手段10は第2ワークSW2を新たな第1ワークSW1として係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング形状のワークを1つずつ排出するワーク切出し装置及びワーク切出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リング形状のワーク(例えば、内燃機関の吸気弁や排気弁に用いられるバルブシート)を1つずつ切出す(すなわち、排出する)ワーク切出し装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来のワーク切出し装置は、移送通路内のワークを停止するストッパ部材と、このストッパ部材に受け止められているワークに対して、ワークの送出方向の斜め後方から送出用の空気を噴射する噴口と、を備え、ストッパ部材と噴口との間隔は、ワークの径に適合させて設定した適合間隔とされ、更に噴口からの空気噴流の方向は、ワークの径に適合させて設定した適合傾斜角度とされている。そのため、この従来のワーク切出し装置によれば、噴口からの空気噴射でワークを確実に切出すことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−7326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載のワーク切出し装置は、ワークの径に応じた適合間隔と適合傾斜角度とを予め設定しておき、供給するワークの径が変更される都度、そのワークに適合した交換用部材を選択して、通路部材に取り付け直さなければならなかった。
また、供給するワークの径が設定限度以上に変更されると、最先のワークを受け止めているストッパ部材と2番目のワークを受け止めているストッパ部材との間隔も設定し直さなければならかった。
そのため、上記設定や上記取り付け作業に手間がかかり、生産性向上の妨げになっていた。
【0005】
本発明は、径の異なるリング形状のワークを流通路に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークを1つずつ確実に排出することができるワーク切出し装置及びワーク切出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) リング形状のワーク(例えば、後述のワークW)を1つずつ排出するワーク切出し装置(例えば、後述のワーク切出し装置1)であって、前記ワークを貯留する貯留部(例えば、後述の貯留部2)と、前記貯留部からの前記ワークが、同一平面上において互いに外縁部(例えば、後述の外縁部3)を当接させ且つ実質的に一列に並んだ状態で流通する流通路(例えば、後述の流通路4)と、前記流通路における前記ワークの流通方向下流側に設けられ、該ワークを該流通路から排出する排出口(例えば、後述の排出口5)と、前記排出口の最も近くに位置する前記ワークである第1ワーク(例えば、後述の第1ワークW1)の外縁部に当接することにより該第1ワークを係止すると共に、該外縁部への当接を解除することにより該第1ワークの係止を解除する第1係止手段(例えば、後述の係止シャッタ10)と、前記第1ワークの内縁部(例えば、後述の内縁部6)に当接することにより該第1ワークを係止すると共に、該内縁部への当接を解除することにより該第1ワークの係止を解除する第2係止手段(例えば、後述の係止ピン15)と、前記第2係止手段によって係止された前記第1ワークの流通方向上流側に隣接する前記ワークである第2ワーク(例えば、後述の第2ワークW2)の外縁部に当接することにより該第2ワークを係止すると共に、該第2ワークの該外縁部への当接を解除することにより該第2ワークの係止を解除する第3係止手段(例えば、後述の係止爪20)と、を備え、前記第1係止手段による前記第1ワークの係止を解除した場合に、前記第2係止手段は、該第1ワークを係止し、前記第2係止手段による前記第1ワークの係止を解除した場合に、前記第3係止手段は、前記第2ワークを係止し、前記第3係止手段による前記第2ワークの係止を解除した場合に、前記第1係止手段は、該第2ワークを新たな前記第1ワークとして係止するワーク切出し装置。
【0007】
(1)の発明によれば、第1ワークの外縁部に第1係止手段を当接させることにより、第1ワークを排出口に最も近い位置で係止することができる。
続いて、第1係止手段による第1ワークの係止を解除すると共に、第1ワークの内縁部に第2係止手段を当接させることにより、第1ワークを第2係止手段によって係止することができる。そのため、第1ワークは、第2係止手段によって所定の位置に位置決めされる。
【0008】
第1ワークが第2係止手段によって所定の位置に位置決めされているため、このとき、第1ワークの外縁部に当接する第2ワークも、この第1ワークによって容易に位置決めされる。
従って、この位置決めされた第2ワークの外縁部に第3係止手段を当接させることにより、第2ワークを係止することができる。続いて、第1ワークが第2係止手段による係止を解除されて排出口から排出され、第2ワークが第1ワークによって支持されなくなっても、第2ワークは、第3係止手段によって係止され、所定の位置に位置決めされる。
【0009】
そして、第3係止手段による第2ワークの係止が解除されると、第2ワークは、流通方向下流側に流通する。第1係止手段は、この第2ワークを新たな第1ワークとして係止する。また、第2ワークの流通方向上流側に隣接していた次のワークが、新たな第2ワークとなる。そして、これらの新たな第1ワーク及び新たな第2ワークに対して、第1係止手段、第2係止手段及び第3係止手段によって、前述の各動作(係止及びその解除)が順次繰り返される。
【0010】
このように、第1係止手段は、第1ワークの外径の大きさに関わらず、その外縁部に当接することにより第1ワークを係止することができる。第2係止手段は、第1ワークの内径の大きさに関わらず、第1ワークの内縁部に当接することにより第1ワークを係止することができる。第3係止手段は、第2ワークの外径の大きさに関わらず、第2ワークの外縁部に当接することにより第2ワークを係止することができる。
従って、この発明によれば、径の異なるリング形状のワークを流通路に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークを1つずつ確実に排出することができる。
【0011】
(2) 前記流通路は、前記ワークの流通方向に沿って該ワークの厚みに相当する流通空間(例えば、後述の流通空間4c)を有し、前記第1係止手段は、前記排出口に設けられ、前記流通空間に対して突出及び後退する可動部材であり、前記第2係止手段は、前記第1係止手段よりも前記ワークの流通方向上流側に設けられ、前記流通空間に対して該ワークの厚み方向に突出及び後退するピン状の可動部材であり、前記第3係止手段は、前記第2係止手段よりも前記ワークの流通方向上流側に一対設けられ、前記流通空間に対して突出及び後退する先端部(例えば、後述の先端部21)の細い可動部材である(1)に記載のワーク切出し装置。
【0012】
(2)の発明によれば、流通路は、ワークの流通方向に沿ってワークの厚みに相当する流通空間を有しているため、ワークが互いに重なることなく、実質的に一列に並んだ状態で流通空間を流通することができる。また、第1係止手段を例えば板状の可動部材によって簡易に構成することができる。また、第2係止手段をピン状の可動部材によって簡易に構成することができる。また、第3係止手段を例えば棒状の可動部材によって簡易に構成することができる。更に、第3係止手段の先端部を細くすることにより、第2係止手段によって係止された第1ワークの外縁部とこの第1ワークによって位置決めされた第2ワークの外縁部との間に、第3係止手段の先端部を配置し易くすることができる。
【0013】
(3) 前記流通路は、前記ワークの流通方向下流側を下向きとして実質的に垂直となるように設けられる(1)又は(2)に記載のワーク切出し装置。
【0014】
(3)の発明によれば、ワークは、その自重によって流通路をほぼ垂直に落下することができる。そのため、ワークの自重を利用してワークを流通方向下流側に容易に流通させることができ、ワークを流通させる専用の装置等の設置を不要にすることができる。
【0015】
(4) 前記流通路は、前記ワークの流通方向下流側を下向きとして傾斜するように設けられる(1)又は(2)に記載のワーク切出し装置。
【0016】
(4)の発明によれば、ワークは、その自重によって流通路を傾斜方向下方に滑り落ちることができる。そのため、ワークの自重を利用してワークを流通方向下流側に容易に流通させることができ、ワークを流通させる専用の装置等の設置を不要にすることができる。
【0017】
(5) (1)から(4)のいずれか一つに記載のワーク切出し装置を用いたワーク切出し方法であって、前記第1係止手段によって前記第1ワークを係止する第1係止工程(例えば、後述の第1係止工程ST1)と、前記第1係止手段による前記第1ワークの係止を解除すると共に、該第1ワークを前記第2係止手段によって係止する第2係止工程(例えば、後述の第2係止工程ST2)と、前記第2ワークを前記第3係止手段によって係止する第3係止工程(例えば、後述の第3係止工程ST3)と、前記第2係止手段による前記第1ワークの係止を解除し、該第1ワークを前記排出口から排出する第1ワーク排出工程(例えば、後述の第1ワーク排出工程ST4)と、前記第3係止手段による前記第2ワークの係止を解除し、該第2ワークを新たな前記第1ワークとして前記第1係止手段によって係止可能な位置に導入する第1ワーク導入工程(例えば、後述の第1ワーク導入工程ST5)と、を含むワーク切出し方法。
【0018】
(5)の発明によれば、第1係止工程において、第1ワークの外縁部に第1係止手段を当接させることにより、第1ワークを排出口に最も近い位置で係止することができる。
続いて、第2係止工程において、第1係止手段による第1ワークの係止を解除すると共に、第1ワークの内縁部に第2係止手段を当接させることにより、第1ワークを第2係止手段によって係止することができる。そのため、第1ワークは、第2係止手段によって所定の位置に位置決めされる。第1ワークが第2係止手段によって所定の位置に位置決めされているため、この第1ワークの外縁部に当接する第2ワークも、この第1ワークによって容易に位置決めされる。
【0019】
また、第2係止工程において位置決めされた第2ワークの外縁部に、第3係止工程において、第3係止手段を当接させることにより、第2ワークを係止することができる。
【0020】
また、第1ワーク排出工程において、第2係止手段による第1ワークの係止を解除し、第1ワークを排出口から排出する。このとき、第2ワークは、第3係止手段によって係止されているため、第1ワークのみを排出口から排出することができる。
【0021】
次に、第1ワーク導入工程において、第3係止手段による第2ワークの係止が解除されると、第2ワークは流通方向下流側に流通する。第1係止手段は、この第2ワークを新たな第1ワークとして係止する。
従って、(5)の発明によれば、第1係止工程、第2係止工程、第3係止工程、第1ワーク排出工程及び第1ワーク導入工程を順次繰り返して実施することにより、径の異なるリング形状のワークを流通路に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークを1つずつ確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のワーク切出し装置及びワーク切出し方法によれば、径の異なるリング形状のワークを流通路に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークを1つずつ確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態のワーク切出し装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態のワーク切出し装置を用いたワーク切出し方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態のワーク切出し装置を用いたワーク切出し方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態のワーク切出し装置を示す正面図である。図1に示すように、本実施形態のワーク切出し装置1によって切出されるワークは、例えば、内燃機関の吸気弁や排気弁に用いられるバルブシートであり、リング形状となっている。以下の説明において、ワークの外径を区別する必要がない場合には、ワークに符号Wを付して総称することとする。また、ワークの外径を区別する必要がある場合には、このWの符号に、更にL又はSの符号を付して区別する。具体的には、流通させる最大径のワークに符号LWを付し、最小径のワークに符号SWを付して区別する。更に、ワークWの位置(上下位置)関係を区別する必要がある場合には、後述するように、排出口5の最も近くに位置するワークWに符号1を付し、これに隣接する次のワークWに符号2を付している。なお、図1においては、ワークSW,LWを想像線で示している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のワーク切出し装置1は、ワークWを貯留する貯留部2と、貯留部2からのワークWが流通する流通路4と、ワークWを流通路4から排出する排出口5と、排出口5の最も近くに位置するワークW(以下、「第1ワークW1」という。)の外縁部3(図2(a)参照)に当接することにより第1ワークW1を係止する係止シャッタ(第1係止手段)10と、第1ワークW1の内縁部6に当接することにより第1ワークW1を係止する係止ピン(第2係止手段)15と、第1ワークW1の流通方向上流側に隣接するワークW(以下、「第2ワークW2」という。)の外縁部3(図2(d)参照)に当接することにより第2ワークW2を係止する係止爪(第3係止手段)20と、を備える。
【0026】
貯留部2は、ワークWの流通方向に矩形状に延びている。貯留部2は、本体部2aと、蓋部2bと、貯留空間2cと、窓部25aとを有する。図1に示すように、本体部2aは、その長手方向と直交する方向で切断した断面において、手前側に開放するコ字状となっている。蓋部2bは、本体部2aの短手方向(幅方向)の両端部に離間して配置される一対の矩形板である。蓋部2bは、本体部2aのボルト穴(図示せず)にボルト2dを螺合することにより、本体部2aに着脱自在に固定される。
【0027】
貯留空間2cは、本体部4a及び蓋部2bによって囲まれる空間であり、ワークWの流通方向に沿って形成される空間である。貯留空間2cは、ワークWが貯留空間2c内で移動できるように、ワークWの厚みに相当する間隙となっている。なお、本実施形態では、ワークSWの厚みとワークLWの厚みは、略同一であるが、相違してもよい。
窓部25bは、一対の蓋部2b,2bの間に形成される空間であり、貯留空間2cと連通する。この窓部25bによれば、貯留空間2cのワークWの貯留状態を視認することができる。
【0028】
また、貯留部2は、ワークWの流通方向下流側(図1において下側)を下向きとして実質的に垂直となるように設けられる。ここで、「実質的に垂直」とは、ワークWがその自重によって貯留部2(貯留空間2c)を落下することができる程度に垂直であればよい、という趣旨である。
【0029】
このように構成される貯留部2によれば、ワークWが、同一平面上において互いに外縁部3を当接させ、且つ、実質的に一列に並んだ状態で流通(落下)することができる。ここで、「実質的に一列に並んだ状態」とは、隣接し合うワークWの中心(図示せず)の間の距離のワークWの流通方向の成分が、ワークWの外径に略等しい状態をいう。
【0030】
流通路4は、ワークWの流通方向に矩形状に延びており、貯留部2の下流側に連結される。流通路4は、本体部4aと、蓋部4bと、流通空間4cと、窓部25bと、本体部4aに開口される第1開口部7、第2開口部8及び第3開口部9と、を有する。
【0031】
図1に示すように、本体部4aは、その長手方向と直交する方向で切断した断面において、手前側に開放するコ字状となっている。蓋部4bは、本体部4aの短手方向(幅方向)の両端部に離間して配置される一対の矩形板である。蓋部4bは、本体部4aのボルト穴4dにボルト4eを螺合することにより、本体部4aに着脱自在に固定される。
【0032】
流通空間4cは、本体部4a及び蓋部4bによって囲まれる空間であり、ワークWの流通方向に沿って形成される空間である。流通空間4cは、ワークWが流通空間4c内で移動できるように、ワークWの厚みに相当する間隙となっている。また、流通空間4cの幅は、ワークLWの外径よりも若干(例えば、0.4〜0.5mm)大きくなっている。
【0033】
窓部25bは、一対の蓋部4b,4bの間に形成される空間であり、流通空間4cと連通する。この窓部25bによれば、流通空間4cを流通するワークWを視認することができる。
【0034】
第1開口部7は、本体部4aにおいて、排出口5(後述)の上流側(図1において上側)にほぼ矩形状に開口される。この第1開口部7から、係止シャッタ10(後述)が流通空間4cに対して突出及び後退する。
【0035】
第2開口部8は、本体部4aにおいて、第1開口部7の上流側に例えば円形状に開口される。第2開口部8は、係止シャッタ10(後述)によって係止された最大径のワークLWの内部と、係止シャッタ10(後述)によって係止された最小径のワークSWの内部とに係止ピン15を挿通できる位置に配置される。この第2開口部8から、係止ピン15(後述)が流通空間4cに対してワークWの厚み方向に突出及び後退する。
【0036】
第3開口部9は、本体部4aの幅方向(図1において左右方向)の両端部において、第2開口部8の上流側に矩形状に一対開口される。具体的には、この第3開口部9は、第1ワークW1が係止ピン15(後述)によって係止され且つこの第1ワークW1に第2ワークW2が隣接(当接)している状態(図3(c)参照)において、第1ワークW1の外縁部3と第2ワークW2の外縁部3との間に形成される空間(隙間)に臨むことができる位置に開口される。この開口位置の条件は、最小径のワークSW及び最大径のワークLWの両者に対して満足されるようになっている。このように開口された一対の第3開口部9から、係止爪20(後述)が流通空間4cに対して突出及び後退する。
【0037】
また、流通路4は、ワークWの流通方向下流側(図1において下側)を下向きとして実質的に垂直となるように設けられる。ここで、「実質的に垂直」とは、ワークWがその自重によって流通路4(流通空間4c)を落下することができる程度に垂直であればよい、という趣旨である。
このように構成される流通路4によれば、貯留部2からのワークWが、同一平面上において互いに外縁部3を当接させ且つ実質的に一列に並んだ状態で流通(落下)することができる。
【0038】
排出口5は、流通路4におけるワークWの流通方向下流側に開口して設けられ、ワークWを流通路4(流通空間4c)から排出する。
【0039】
係止シャッタ10は、排出口5に設けられ、排出口5を開閉する。係止シャッタ10は、第1開口部7において流通空間4cに対して突出及び後退する板状の可動部材である。係止シャッタ10は、第1ワークW1の外縁部3(図2(a)のワークSW1を参照)に当接することにより第1ワークW1を排出口5に最も近い位置で係止する。また、係止シャッタ10は、第1ワークW1の外縁部3への当接を解除することにより第1ワークW1の係止を解除する。係止シャッタ10は、例えば、圧縮空気によって動作する駆動装置(図示せず)によって駆動される。
【0040】
係止ピン15は、係止シャッタ10よりもワークWの流通方向上流側に設けられ、第2開口部8において、流通空間4cに対してワークWの厚み方向に突出及び後退するピン(円柱)状の可動部材である。係止ピン15は、係止シャッタ10によって係止を解除された第1ワークW1の内縁部6に当接することにより第1ワークW1を所定位置に係止する。また、係止ピン15は、第1ワークW1の内縁部6への当接を解除することにより第1ワークW1の係止を解除する。係止ピン15は、例えば、圧縮空気によって動作する駆動装置(図示せず)によって駆動される。
【0041】
係止爪20は、係止ピン15よりもワークWの流通方向上流側に一対(2つ)設けられ、第3開口部9において、流通空間4cに対して突出及び後退する。係止爪20は、先端部21が細い棒状の可動部材である。係止爪20は、係止ピン15によって係止された第1ワークW1に隣接する第2ワークW2の外縁部3に当接することにより第2ワークW2を係止する。また、係止爪20は、第2ワークW2の外縁部3への当接を解除することにより第2ワークW2の係止を解除する。係止爪20は、例えば、圧縮空気によって動作する駆動装置23によって駆動される。
【0042】
次に、ワーク切出し装置1を用いたワーク切出し方法について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施形態のワーク切出し装置1を用いたワーク切出し方法を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施形態のワーク切出し装置1を用いたワーク切出し方法を示す模式図である。図3においては、説明の便宜上、貯留部2(図1参照)の図示を省略してある。また、最小径のワークSWを実線で示し、最大径のワークLWを想像線で示してある。最小径のワークSWの動作と最大径のワークLWの動作は同様であるので、以下、最小径のワークSWの動作を中心に説明する。
【0043】
図3(a)は、係止シャッタ10を流通空間4cに対して突出させた後、係止ピン15を流通空間4cに対して突出させた状態を示す。図3(b)は、係止シャッタ10を流通空間4cから退行させ、第1ワークSW1が係止ピン15にぶら下がった状態を示す。図3(c)は、係止爪20を流通空間4cに対して突出させた状態を示す。
【0044】
図3(d)は、係止ピン15が流通空間4cから退行することにより、第1ワークSW1が排出口5から排出され、第2ワークSW2が係止爪20によって係止された状態を示す。図3(e)は、係止シャッタ10を流通空間4cに対して突出させた状態を示す。図3(f)は、係止爪20が流通空間4cから退行することにより、第2ワークSW2が係止シャッタ10に向かって落下する状態を示す。なお、図3(a)〜(d)においては、説明の便宜上、係止シャッタ10を流通空間4cに対して左方から突出及び後退させた状態を示している。
【0045】
図2に示すように、本実施形態のワーク切出し装置1を用いたワーク切出し方法は、第1係止工程(ステップST1)と、第2係止工程(ステップST2)と、第3係止工程(ステップST3)と、第1ワーク排出工程(ステップST4)と、第1ワーク導入工程(ステップST5)と、を含む。
【0046】
先ず、実線で示す最小径のワークSWが切出される過程について説明する。図2に示すステップST1の第1係止工程においては、図3(a)に示すように、係止シャッタ10によって第1ワークSW1を係止する。具体的には、係止シャッタ10を第1開口部7から流通空間4cに対して突出させ、排出口5を閉塞する。係止シャッタ10は、第1ワークSW1の外縁部3に当接することにより、第1ワークSW1を排出口5に最も近い位置で係止することができる。
【0047】
次に、係止ピン15を第2開口部8から流通空間4cに対して突出させ、リング状の第1ワークSW1の内部に挿通する。この場合、係止ピン15が挿通された第1ワークSW1は、係止ピン15又は流通空間4cの幅(左右)方向の内壁によって、係止シャッタ10の上面における左右方向の移動が規制される。
【0048】
図2に示すステップST2の第2係止工程においては、図3(b)に示すように、係止シャッタ10による第1ワークSW1の係止を解除すると共に、第1ワークSW1を係止ピン15によって係止する。具体的には、流通空間4cに突出している係止シャッタ10を退行させ、第1ワークSW1の係止を解除する。この場合、第1ワークSW1には、係止ピン15が挿通されている。そのため、第1ワークSW1は、係止ピン15にぶら下がった状態となる。
【0049】
つまり、第1ワークSW1の内縁部6に係止ピン15を当接させることにより、第1ワークSW1をこの係止ピン15によって係止することができる。これにより、第1ワークSW1は、排出口5に最も近い所定の位置で位置決めされる。このように、第1ワークSW1が係止ピン15によって所定の位置に位置決めされているため、この第1ワークSW1の外縁部3に当接する第2ワークSW2も、この第1ワークSW1によって容易に位置決めされる。
【0050】
図2に示すステップST3の第3係止工程においては、図3(c)に示すように、係止爪20を流通空間4cに対して突出させる。これにより、図3(d)に示すように、第1ワークSW1が係止ピン15による係止を解除されて落下し、第2ワークSW2が第1ワークSW1によって支持されなくなった場合であっても、第2ワークSW2は、係止爪20によって所定の位置に係止され、落下が規制される。
【0051】
図2に示すステップST4の第1ワーク排出工程においては、図3(d)に示すように、係止ピン15による第1ワークSW1の係止を解除し、第1ワークSW1を排出口5から排出する。このとき、第2ワークSW2は、前述したように、係止爪20によって係止されているため落下せず、第1ワークSW1のみを排出口5から排出することができる。
【0052】
図2に示すステップST5の第1ワーク導入工程は、図3(e)に示すように、先ず、係止シャッタ10を流通空間4cに対して突出させた後、図3(f)に示すように、係止爪20を流通空間4cから退行させる。これにより、係止爪20による第2ワークSW2の係止が解除され、第2ワークSW2は、係止シャッタ10に向かって落下する。この第2ワークSW2が新たな第1ワークSW1となって係止シャッタ10によって係止可能な位置に導入され、その外縁部3が係止シャッタ10によって係止される(図2(a)参照)。
【0053】
このようにして、第1ワークSW1のみを排出口5から排出することができる。そして、次の第2ワークSW2を新たな第1ワークSW1として係止シャッタ10によって係止可能な位置に導入し、以上に説明した第1係止工程、第2係止工程、第3係止工程、第1ワーク排出工程及び第1ワーク導入工程を順次繰り返して実施する。
【0054】
一方、想像線で示す最大径のワークLW(LW1,LW2)が流通路4に流通した場合も、係止シャッタ10、係止ピン15及び係止爪20を用い、上述した工程を経ることによって、第1ワークLW1のみを排出口5から排出することができる。
従って、径の異なるリング状のワークWを流通路4に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークWを1つずつ確実に排出することができる。
【0055】
以上に説明した本実施形態のワーク切出し装置1によれば、以下に示す各効果が奏される。本実施形態のワーク切出し装置1は、貯留部2と、流通路4と、排出口5と、第1ワークW1の外縁部3に当接することにより第1ワークW1を係止すると共に、外縁部3への当接を解除することにより第1ワークW1の係止を解除する係止シャッタ10と、係止シャッタ10によって係止を解除された第1ワークW1の内縁部6に当接することにより第1ワークW1を係止すると共に、内縁部6への当接を解除することにより第1ワークW1の係止を解除する係止ピン15と、係止ピン15によって係止された第2ワークW2の外縁部3に当接することにより第2ワークW2を係止すると共に、第2ワークW2の外縁部3への当接を解除することにより第2ワークW2の係止を解除する係止爪20と、を備える。
【0056】
本実施形態のワーク切出し装置1によれば、第1ワークW1の外縁部3に係止シャッタ10を当接させることにより、第1ワークW1を排出口5に最も近い位置で係止することができる。更に係止シャッタ10による係止を解除された第1ワークW1の内縁部6に係止ピン15を当接させることにより、第1ワークW1を所定の位置に係止して位置決めすることができる。これによって、所定の位置に位置決めされた第1ワークW1に隣接する第2ワークW2も、この第1ワークW1によって容易に位置決めされる。
【0057】
また、この第1ワークW1によって位置決めされた第2ワークW2の外縁部3に係止爪20を当接させることにより、第2ワークW2を係止することができる。そのため、第1ワークW1が係止ピン15による係止を解除されて排出口5から排出された場合であっても、第2ワークW2を係止爪20によって確実に係止することができる。従って、本実施形態のワーク切出し装置1によれば、径の異なるリング状のワークWを流通路4に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークWを1つずつ確実に排出することができる。
【0058】
また、本実施形態のワーク切出し装置1においては、流通路4は、ワークWの流通方向に沿ってワークWの厚みに相当する流通空間4cを有し、係止シャッタ10は、排出口5に設けられ、流通空間4cに対して突出及び後退する板状の可動部材であり、係止ピン15は、係止シャッタ10よりもワークWの流通方向上流側に設けられ、流通空間4cに対してワークWの厚み方向に突出及び後退するピン状の可動部材であり、係止爪20は、係止ピン15よりもワークWの流通方向上流側に一対(2つ)設けられ、流通空間4cに対して突出及び後退する先端部21の細い棒状の可動部材である。
【0059】
そのため、本実施形態によれば、流通路4において、ワークWが互いに重なることなく、実質的に一列に並んだ状態で流通空間4cを流通することができる。また、係止シャッタ10を板状の可動部材によって簡易に構成することができる。更に、係止ピン15をピン状の可動部材によって簡易に構成することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、係止爪20を棒状の可動部材によって簡易に構成することができる。更に、係止爪20の先端部21を細くすることにより、係止ピン15によって係止された第1ワークW1の外縁部3とこの第1ワークW1によって位置決めされた第2ワークW2の外縁部3との間に、係止爪20の先端部21を配置し易くすることができる。
【0061】
また、本実施形態のワーク切出し装置1においては、流通路4は、ワークWの流通方向下流側を下向きとして実質的に垂直となるように設けられる。そのため、ワークWは、その自重によって流通路4をほぼ垂直に落下(自由落下)することができる。従って、ワークWの自重を利用してワークWを流通方向下流側に容易に流通させることができ、ワークWを流通させる専用の装置等の設置を不要にすることができる。
【0062】
本実施形態のワーク切出し装置1を用いたワーク切出し方法は、係止シャッタ10によって第1ワークW1を係止する第1係止工程と、係止シャッタ10による第1ワークW1の係止を解除すると共に、第1ワークW1を係止ピン15によって係止する第2係止工程と、第2ワークW2を係止爪20によって係止する第3係止工程と、係止ピン15による第1ワークW1の係止を解除し、第1ワークW1を排出口5から排出する第1ワーク排出工程と、係止爪20による第2ワークW2の係止を解除し、第2ワークを新たな第1ワークとして係止シャッタ10によって係止可能な位置に導入する第1ワーク導入工程と、を含む。
【0063】
本実施形態によれば、第1係止工程において、第1ワークW1の外縁部3に係止シャッタ10を当接させることにより、第1ワークW1を排出口5に最も近い位置で係止することができる。また、第2係止工程において、第1ワークW1の内縁部6に係止ピン15を当接させることにより、第1ワークW1をこの係止ピン15によって所定の位置に係止することができる。そのため、第1ワークW1は、係止シャッタ10による係止を解除されても、係止ピン15によって係止される。これにより、第1ワークW1を排出口5に最も近い所定の位置で位置決めすることができ、第1ワークW1に隣接する第2ワークW2をこの第1ワークW1によって容易に位置決めすることができる。
【0064】
また、第2係止工程において位置決めされた第2ワークW2の外縁部3に、第3係止工程において係止爪20を当接させることにより、第2ワークW2を係止することができる。また、第1ワーク排出工程において、係止ピン15による第1ワークW1の係止を解除することにより、第1ワークW1を排出口5から排出することができる。このとき、第2ワークW2は、係止爪20によって係止されているため、第1ワークW1のみを排出口5から排出することができる。
【0065】
また、第1ワーク導入工程において、係止爪20による第2ワークW2の係止を解除することにより、第2ワークW2を流通方向下流側に流通できるようにし、この第2ワークW2を新たな第1ワークW1として係止シャッタ10によって係止可能な位置に導入することができる。
従って、本実施形態によれば、第1係止工程、第2係止工程、第3係止工程、第1ワーク排出工程及び第1ワーク導入工程を順次繰り返して実施することにより、径の異なるリング状のワークWを流通路4に流通させる場合であっても、装置の設定変更が不要で、ワークWを1つずつ確実に排出することができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、流通路4は、ワークWの流通方向下流側を下向きとして実質的に垂直となるように設けられるものとして説明したが、これに制限されず、流通路4は、ワークWの流通方向下流側を下向きとして傾斜するように設けられてもよい。
【0067】
この場合、ワークWは、その自重によって流通路4を傾斜方向下方に滑り落ちることができる。そのため、ワークWの自重を利用してワークWを流通方向下流側に容易に流通させることができ、ワークWを流通させる専用の装置等の設置を不要にすることができる。
【0068】
また、前記実施形態においては、係止シャッタ10(図1参照)は、流通空間4cに対してワークWの厚み方向に突出及び後退するように配置されるものとして説明したが、これに制限されず、係止シャッタ10は、流通路4の幅方向(図1において左右方向)において突出及び後退するように配置されてもよい。
【0069】
また、前記実施形態においては、係止爪20は、係止ピン15よりもワークWの流通方向上流側に一対(2つ)設けられるものとして説明したが、これに制限されず、係止爪20を1つ設けてもよい。
【0070】
また、前記実施形態においては、係止爪20は、流通路4の幅方向において突出及び後退するものとして説明したが、これに制限されず、係止爪20は、流通空間4cに対してワークWの厚み方向に突出及び後退するように配置されてもよい。
【0071】
また、前記実施形態においては、最大径のワークW及び最小径のワークWを示して説明したが、これに制限されず、最大径と最小径の間の径を有するワークWに対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
W ワーク
W1 第1ワーク
W2 第2ワーク
1 ワーク切出し装置
2 貯留部
3 外縁部
4 流通路
4c 流通空間
5 排出口
6 内縁部
10 係止シャッタ(第1係止手段)
15 係止ピン(第2係止手段)
20 係止爪(第3係止手段)
21 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング形状のワークを1つずつ排出するワーク切出し装置であって、
前記ワークを貯留する貯留部と、
前記貯留部からの前記ワークが、同一平面上において互いに外縁部を当接させ且つ実質的に一列に並んだ状態で流通する流通路と、
前記流通路における前記ワークの流通方向下流側に設けられ、該ワークを該流通路から排出する排出口と、
前記排出口の最も近くに位置する前記ワークである第1ワークの外縁部に当接することにより該第1ワークを係止すると共に、該外縁部への当接を解除することにより該第1ワークの係止を解除する第1係止手段と、
前記第1ワークの内縁部に当接することにより該第1ワークを係止すると共に、該内縁部への当接を解除することにより該第1ワークの係止を解除する第2係止手段と、
前記第2係止手段によって係止された前記第1ワークの流通方向上流側に隣接する前記ワークである第2ワークの外縁部に当接することにより該第2ワークを係止すると共に、該第2ワークの該外縁部への当接を解除することにより該第2ワークの係止を解除する第3係止手段と、
を備え、
前記第1係止手段による前記第1ワークの係止を解除した場合に、前記第2係止手段は、該第1ワークを係止し、
前記第2係止手段による前記第1ワークの係止を解除した場合に、前記第3係止手段は、前記第2ワークを係止し、
前記第3係止手段による前記第2ワークの係止を解除した場合に、前記第1係止手段は、該第2ワークを新たな前記第1ワークとして係止するワーク切出し装置。
【請求項2】
前記流通路は、前記ワークの流通方向に沿って該ワークの厚みに相当する流通空間を有し、
前記第1係止手段は、前記排出口に設けられ、前記流通空間に対して突出及び後退する可動部材であり、
前記第2係止手段は、前記第1係止手段よりも前記ワークの流通方向上流側に設けられ、前記流通空間に対して該ワークの厚み方向に突出及び後退するピン状の可動部材であり、
前記第3係止手段は、前記第2係止手段よりも前記ワークの流通方向上流側に一対設けられ、前記流通空間に対して突出及び後退する先端部の細い可動部材である請求項1に記載のワーク切出し装置。
【請求項3】
前記流通路は、前記ワークの流通方向下流側を下向きとして実質的に垂直となるように設けられる請求項1又は2に記載のワーク切出し装置。
【請求項4】
前記流通路は、前記ワークの流通方向下流側を下向きとして傾斜するように設けられる請求項1又は2に記載のワーク切出し装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のワーク切出し装置を用いたワーク切出し方法であって、
前記第1係止手段によって前記第1ワークを係止する第1係止工程と、
前記第1係止手段による前記第1ワークの係止を解除すると共に、該第1ワークを前記第2係止手段によって係止する第2係止工程と、
前記第2ワークを前記第3係止手段によって係止する第3係止工程と、
前記第2係止手段による前記第1ワークの係止を解除し、該第1ワークを前記排出口から排出する第1ワーク排出工程と、
前記第3係止手段による前記第2ワークの係止を解除し、該第2ワークを新たな前記第1ワークとして前記第1係止手段によって係止可能な位置に導入する第1ワーク導入工程と、を含むワーク切出し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate