ヴィロソームとサポニンアジュバントを含むワクチン組成物
本発明は、ウイルス由来の抗原とサポニンアジュバントを含有する、エンベロープウイルス(特にインフルエンザウイルス)からのヴィロソーム調製物を提供する。詳細には、本発明は、インフルエンザ抗原とQS21を、場合によりステロールと共に、含有する、インフルエンザウイルスからのヴィロソーム調製物を提供する。本発明はまた、ヴィロソーム調製物を含むワクチン製剤、ヴィロソーム調製物の製造方法、ならびにそれらを含むワクチンを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンベロープウイルス由来のヴィロソーム(virosome)、特にアジュバント添加(adjuvanted)ヴィロソーム、を含む組成物、それを調製するための方法、ならびに予防または治療におけるその使用に関する。さらに特定すると、本発明は、インフルエンザウイルスまたはRSVに由来する抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンベロープウイルスとは、ウイルスコアが脂質に富む外皮(ウイルスタンパク質を含む)によって囲まれているウイルスのことである。このようなウイルスとして、例えば次の科のウイルスが挙げられる:フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)。
【0003】
ヒト呼吸器多核体ウイルス(RSV)はパラミクソウイルス科のメンバーであり、下部気道疾患を、特に小児や乳児において、引き起こす。最近の報告では、RSVが成人(特に高齢者)においても重大な病原体となることが提唱されている。
【0004】
RSVは、11のメッセンジャーRNA(それぞれが単一のポリペプチドをコードする)をコードする、15,222ヌクレオチドからなる非分節型のマイナス鎖リボ核酸(RNA)ゲノムをもつエンベロープウイルスである。11のうち3つのタンパク質、すなわち、Gタンパク質(付着)、Fタンパク質(融合)、およびSHタンパク質は膜貫通型の表面タンパク質である。1つのタンパク質はビリオンマトリックスタンパク質(M)であり、3つのタンパク質はヌクレオキャプシドの構成成分(N、PおよびL)であり、そして2つのタンパク質は非構造タンパク質(NS1およびNS2)である。さらに2つのタンパク質M2-1およびM2-2がある。RSVには抗原的に明確に区別される2つのサブグループが存在し、それぞれサブグループAおよびBと呼ばれている。これらのサブグループからのウイルス株の特徴付けによって、大きな相違はGタンパク質にあり、Fタンパク質は保存されていることがわかった。
【0005】
インフルエンザウイルスは、世界中に蔓延する最もありきたりのウイルスの一つであり、ヒトと家畜のいずれにも感染する。インフルエンザの経済的影響は重大である。
【0006】
インフルエンザウイルスは、直径約125nmの粒子サイズのRNAエンベロープウイルスである。これは基本的には、核タンパク質と会合したリボ核酸(RNA)の内部ヌクレオキャプシドつまりコアが、外部糖タンパク質および脂質二重層構造をもつウイルスエンベロープによって取り囲まれた構造をしている。ウイルスエンベロープの内層は主にマトリックスタンパク質からなり、外層は大部分が宿主由来の脂質からなる。表面糖タンパク質のノイラミニダーゼ(NA)とヘマグルチニン(HA)は、粒子の表面に長さ10〜12nmのスパイクとして出現する。インフルエンザサブタイプの抗原特異性を決定するのが、これらの表面タンパク質、特にヘマグルチニンである。
【0007】
典型的なインフルエンザの流行は、入院率または死亡率の増加によって確認されるように、肺炎と下部気道疾患の発生率の増加をもたらす。高齢者や慢性疾患をかかえた患者はこのような合併症を併発する可能性が大きく、また乳幼児も重症の疾患にかかりやすい。したがって、こうした人達を保護する必要がある。
【0008】
すべての種類のインフルエンザワクチンは古典的には三価であり、弱毒化生ワクチンまたは不活化製剤のいずれかの形をとりうる。それらは通常、2つのインフルエンザAウイルス株と1つのインフルエンザBウイルス株に由来する抗原を含有する。標準的な0.5ml注射用量は、ほとんどの場合、一元放射免疫拡散法(single radial immunodiffusion: SRD)で測定して、各ウイルス株由来のヘマグルチニン(HA)抗原成分を15μg含有する(J.M. Woodら: インフルエンザヘマグルチニン抗原を検定するための改良型一元放射免疫拡散法:不活化全ウイルスおよびサブユニットワクチンの効力測定への応用(An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen: adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines) J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J.M. Woodら: インフルエンザウイルスのヘマグルチニン抗原を検定するための一元放射免疫拡散法および免疫電気泳動法の国際的共同研究(International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis techniques for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus) J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。
【0009】
あるインフルエンザ株が世界的に流行している場合のような特定の状況下では、ただ1つのウイルス株を含むワクチンを提供することが望ましいと考えられる。これは世界的な伝染病に応答するスピードを速めるのに役立つ。シーズンごとにインフルエンザワクチンに加えるべきインフルエンザウイルス株は、国立医療機関およびワクチンメーカーと協力して世界保健機構により決定される。
【0010】
現在利用可能なインフルエンザワクチンは、不活化インフルエンザワクチンまたは弱毒化生インフルエンザワクチンのいずれかである。不活化インフルエンザワクチンは、次の3つのタイプの抗原製剤のうちの1つを含む:不活化全ウイルス、ウイルス粒子の膜を界面活性剤もしくは他の試薬で破壊して脂質エンベロープが可溶化されているサブビリオン(いわゆる「スプリット」ワクチン)、またはサブユニットワクチン(組換えにより生産されるか、または破砕したウイルス粒子から精製される)、特にHAおよびNAサブユニットワクチン。ヴィロソームは別のタイプの不活化インフルエンザ製剤であり、この場合にはウイルス膜が破壊後に再構成される。これらの不活化ワクチンは一般的に非経口的に、特に筋肉内(i.m.)に投与されるが、いくつかのヴィロソーム系製剤および弱毒化生ワクチンは鼻腔内に投与されてきた。
【0011】
非経口的(例えば、筋肉内)に投与されたインフルエンザワクチンの免疫原性および有効性は、健康な成人(18〜60才)では非常に高いことが一般に認められている(有効性は約75%と推定される)が、これらのパラメーターは対象者が高齢(>60才)になると低下する(有効性は約50%と推定される)。
【0012】
高齢者(特に介護施設にいる高齢者)はインフルエンザにより誘発される重症疾患のリスクが最も高い人々であるので、高齢者におけるインフルエンザワクチンの有効性には大いに改善の余地がある。したがって、有効性の増大した新規なインフルエンザワクチンを高齢者用に創製することは、現在利用可能なワクチンに対する大きな改善となろう。
【0013】
非経口的に投与されるインフルエンザワクチンは、一般に、免疫原性があって、十分に許容されるが、免疫原性と関連反応性のレベルは各種組成物ごとに変化し、より高いレベルの免疫原性と関連反応性は概して比較的複雑な組成物(サブユニットおよびヴィロソームに対して全ウイルスおよびスプリット)を用いたときに認められる。かくして、現在市販されているインフルエンザワクチンの許容される反応性(reactogenicity)のプロファイルを維持しつつ、その免疫原性を実質的に改善しうる新規製剤を創出することが、依然として要求されている。
【0014】
上述したように、現在市販されているインフルエンザワクチンは、相変わらず、筋内投与されるスプリットワクチン、全ウイルス型ワクチン、サブユニット注射用ワクチン、またはヴィロソームワクチンだけである。特に、スプリットおよびサブユニットワクチンは、ウイルス粒子を、通常は有機溶媒もしくは界面活性剤を用いて破壊し、ウイルスタンパク質をさまざまな程度に分離・精製することにより調製される。スプリットワクチンは、全インフルエンザウイルス(感染性または不活化のいずれか)を可溶化濃度の有機溶媒もしくは界面活性剤により断片化し、続いて可溶化剤とウイルスの脂質の一部または大部分を除去することにより調製される。スプリットワクチンは一般に、膜エンベロープタンパク質(例えば、HAおよびNA)を含むだけでなく、汚染性のマトリックス(M)タンパク質や核タンパク質(NP)、時には脂質をも含むことがある。スプリットワクチンは通常ウイルス構造タンパク質の大部分または全部を含有するが、必ずしもそれらが全ウイルス中に存在するのと同じ割合で含む必要はない。一方、サブユニットワクチンは本質的に、高度に精製されたウイルス表面タンパク質のヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)からなり、これらの表面タンパク質はワクチン接種後に所望のウイルス中和抗体を引き出すことに関与している。マトリックスタンパク質と核タンパク質はいずれもサブユニットワクチン中に検出されないか、かろうじて検出されるにすぎない。
【0015】
インフルエンザワクチンの有効性を測定するための基準が国際的に使用されている。インフルエンザに対する有効なワクチンに関する欧州連合公式基準を以下の表に示す。理論的には、欧州連合の要件を満たすために、インフルエンザワクチンは、ワクチンに含まれる全てのインフルエンザ株について、表に示した基準のただ1つを満たしさえすればよい。しかしながら、実際には、少なくとも2つ、できれば3つ全ての基準を全部のウイルス株について満たす必要があり、特に、新しい皮内ワクチンのような新ワクチンの場合にはそうである。いくつかの状況下では、2つの基準で十分でありうる。例えば、3つの基準のうち2つを全部のウイルス株が満たし、同時に3番目の基準を一部(全部ではない)のウイルス株(例えば、3つのうち2つの株)が満たすことで許容される。製品要件(インフルエンザワクチン製品要件のハーモナイズに関するガイダンス(CPMP/BWP/214/96、1997年3月12日)を参照のこと)は、成人集団(18〜60才)と高齢者集団(>60才)とで相違する:
a) 18〜60才の成人対象者の場合には、各ウイルス株について次の血清学的評価を考慮すべきであり、評価の少なくとも1つが示した製品要件を満たすべきである:
・ セロコンバージョン率、つまり抗ヘマグルチニン抗体価の有意な増加率>40%;
・ 平均幾何学的増加>2.5;
・ HI価≧40またはSRH価>25mm2を達成する対象者の割合が>70%であるべきである。
【0016】
b) 60才を超える成人対象者の場合には、各ウイルス株について次の血清学的評価を考慮すべきであり、評価の少なくとも1つが示した製品要件を満たすべきである:
・ セロコンバージョン率、つまり抗ヘマグルチニン抗体価の有意な増加率>30%;
・ 平均幾何学的増加>2.0;
・ HI価≧40またはSRH価>25mm2を達成する対象者の割合が>60%であるべきである。
【0017】
新規なインフルエンザ製剤が商業上有用であるためには、これらの基準を満たす必要があるだけでなく、実際に、現在利用可能なワクチンと少なくとも同程度に免疫学的に有効である必要がある。また、医療従事者が簡単に実施できる信頼しうる方法を用いてそれを投与できなければならない。さらに、それは許容される工程で製造できなければならず、言うまでもなく抗原量および必要な投与回数の点で商業上実行可能でなければならない。
【0018】
そのような改良型インフルエンザワクチンを開発するために、様々なアプローチが試みられてきた。しかしながら、これまで、こうしたアプローチのどれも、許容される反応性プロファイルを維持する効力の高いインフルエンザワクチンを製造し商品化することを目的として成功を収めておらず、このことはそのような製剤を創製することの格別な困難性を反映している。
【0019】
研究された1つのアプローチは、従来型(すなわち、スプリット、サブユニット、または全ウイルス)ワクチンの使用に代わるインフルエンザヴィロソームワクチンの使用である。ヴィロソームは、ウイルス由来の抗原を含む再構成された脂質膜である。ヴィロソームは主に2つの方法で製造され、一方はヴィロソームの再構成において外因性脂質を添加するものであり (Almeidaら, 1975. Lancet 2:899-901; Trudel M.およびF. Nadon, 1981. Can J Microbiol. 27:958-62; Andoら, 1997. J Microencapsul. 14:79-90; Markgrafら, 2001. Cloning 3:11-21; Gluck, R.およびI.C. Metcalfe, 2002. Vaccine 20:B10-16; Mischler, R.およびI.C. Metcalfe, 2002. Vaccine 20:B17-23)、他方は外因性脂質を添加しないでヴィロソームを形成させるものである (Stegmann, T.ら, 1987. EMBO J. 6:2651-9; Huckriedeら, 2003. Vaccine 21:925-31)。ヴィロソームワクチンは、老人患者においては市販の三価サブユニットインフルエンザワクチンよりも高い免疫原性のあることが明らかにされた (Conneら, Vaccine, 1999, 15, 1675-1679)が、高齢者での別の研究においては、ヴィロソーム製剤が単独では市販のスプリットワクチンほど免疫原性のないことがわかった (Rufら, 2003. 第5回インフルエンザ制圧会議(Options for the Control of Influenza V Conference)沖縄県、10月7〜11日、「高齢者におけるFLUARIX(商標) vs. FLUAD(登録商標) vs. INFLEXAL V(登録商標) の免疫原性および抗体持続性」)。
【0020】
改良型インフルエンザ製剤の開発に向けられた別のアプローチでは、様々なインフルエンザワクチン組成物(特に、サブユニットワクチン)への各種形態のアジュバントの添加が検討された (O’Hagan, D.T., 1998. J. Pharm Pharmacol. 50:1-10; Gluck R. 1992. Vaccine 10:915-9; Podda A.およびG. Del Giudice, 2003. Expert Rev Vacines 2:197-203; Neromeら, 1990. Vaccine 8:503-9)。しかしながら、こうした製剤のうち開発が前進したものはほとんどなかった。それはおそらく、免疫原性の増加および許容される安全性に関して説得力のあるデータが不足していたためであろう。2つのアジュバント添加製剤が商品化されたものの、それらはいずれも良好な有効性および許容される反応性の基準を満たすことができない。Berna社により開発された1つのアジュバント添加製剤は、大腸菌不安定毒素(labile toxin: LT)を添加したヴィロソームに基づく製剤であった。これはInflexal N(登録商標)という名称で商品化された。この製剤は、鼻腔内経路で投与され、免疫原性があるけれども、許容し得ない安全性プロファイル(部分的な顔面麻痺との関連)をもつことがわかり、市場から姿を消した。商品化されたもう1つのアジュバント添加製剤はFLUAD(商標)(Chiron社)であり、これはMF59アジュバントを添加した非経口投与用のサブユニットワクチンである。この製剤は比較的よく許容されるようにみえたが、他の市販の古典的ワクチンよりも免疫原性が低いことが判明した (Rufら, 2003, 前掲を参照のこと)。
【0021】
サポニンは、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H. (1996 「サポニンの生物学的および薬理学的活性の総説」(A review of the biological and pharmacological activities of saponins) Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは植物界と海洋動物界に広く分布しているステロイドまたはトリテルペン配糖体である。サポニンは水中でコロイド溶液(振ったとき泡を生ずる)を形成し、またコレステロールを沈降させることが知られている。サポニンが細胞膜の近くにあると、それは膜に細孔様の構造を作り、これにより膜を破裂させる。赤血球の溶血はこの現象の一例であり、溶血がいくつか(全部ではない)のサポニンの性質となる。
【0022】
サポニンは全身投与用ワクチンのアジュバントとして知られている。個々のサポニンのアジュバント活性と溶血活性は当技術分野で広く研究されてきた (Lacaille-DuboisおよびWagner, 前掲)。例えば、Quil A (南アメリカの木であるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来) は、アジュバント活性をもつことが1974年にDalsgaardら (“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254) によって最初に記載された。Quil Aの精製された断片がHPLCによって単離されており、例えばQS7やQS21(QA7およびQA21としても知られる)のような断片はQuil Aに伴う毒性を示すことなくアジュバント活性を保持している(EP 0 362 278)。Quil A画分は米国特許US 5,057,540、“Saponins as vaccine adjuvants”, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55、および欧州特許EP 0 362 279 B1に記載されている。Quil Aまたはその画分を含む、免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complexes: ISCOMS)と呼ばれる微粒子構造体がワクチン製造に使用されている (Morein, B., EP 0 109 942 B1)。こうした構造体はアジュバント活性をもつことが報告されている (EP 0 109 942 B1; WO 96/11711)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身アジュバントであると記載されており、その製造方法は米国特許第5,057,540号および欧州特許第0 362 279 B1号に記載されている。また、これらの文献には、全身および粘膜(例えば、鼻腔内)ワクチンの強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil Aの非溶血画分)の使用も記載されている。QS21の使用はさらに、Kensilら (1991. J. Immunology vol 146, 431-437) にも記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンの併用も知られている (WO 99/10008)。QS21およびQS7といったQuil A画分を含む粒状アジュバント系は、国際公開WO 96/33739およびWO 96/11711に開示されている。
【0023】
全身的ワクチン接種研究において使用された他のサポニンには、ギプソフィラ(Gypsophila)属やサポナリア(Saponaria)属のような他の植物種に由来するものが含まれる (Bomfordら, Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0024】
サポニンはまた、粘膜に適用されるワクチンの研究においても使用され、免疫応答の誘導において多様な成功を収めたことも知られている。Quil-Aサポニンは、抗原を鼻腔内投与するときには、免疫応答の誘導に何の効果も及ぼさないことが以前に示されている (Gizurarsonら 1994. Vaccine Research 3, 23-29)。一方、他の著者らはこのアジュバントを用いて成功している (Maharajら, Can.J.Microbiol, 1986, 32(5):414-20; ChavaliおよびCampbell, Immunobiology, 174(3):347-59)。Quil Aサポニンを含むISCOMが胃内および鼻腔内ワクチン製剤中で使用され、これはアジュバント活性を示した (McI Mowatら, 1991, Immunology, 72, 317-322; McI MowatおよびDonachie, Immunology Today, 12, 383-385)。Quil Aの精製画分であるQS21も経口または鼻腔内アジュバントとして記載されている (Suminoら, J.Virol., 1998, 72(6):4931-9; WO 98/56415)。
【0025】
QS21のアジュバントとしての使用にはいくつかの欠点がある。例えば、QS21を遊離の分子として哺乳動物に非経口的に注射すると、壊死(すなわち、局在化された組織死)が注射部位に起こることが観察された。サポニンアジュバントを添加したサブユニットインフルエンザ製剤、例えば、ISCOMに組み込まれたインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)が報告されている (Sundquistら Vaccine, 1988, 6, 44-48; Barr I.G.およびG.F. Mitchell. 1996. Immunol Cell Biol. 74:8-25; Kersten G.F.A.およびD.J.A. Crommelin 2003. Vaccine 21:915-920)。しかし、多年にわたる努力にもかかわらず、許容されるヒト用の製品はまだ現れていない (Kersten G.F.A.およびD.J.A. Crommelin 2003. Vaccine 21:915-920)。
【0026】
したがって、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、既存の承認されたインフルエンザワクチンと比較して増大した免疫応答を誘起しうる製剤を創製することは、依然として研究を必要とする分野である。本発明は、改良されたインフルエンザワクチンのニーズに取り組むことを目的とする。
【発明の開示】
【0027】
本発明は、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、増大した免疫原性および有効性の基準を満たす、特に高齢者集団に有効な、ヴィロソームとサポニンの組合せに基づく新規なインフルエンザ製剤の開発に関する。
【0028】
発明の説明
本発明は、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、増大した免疫原性および有効性の基準を満たす、ヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントの組合せに基づく新規な組成物を同定した。
【0029】
したがって、第1の形態において、本発明は、エンベロープウイルスから得られるヴィロソーム調製物(該ウイルス由来の抗原を含む)とサポニンアジュバントを含有するヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。
【0030】
1つの実施形態では、本発明は、インフルエンザ抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有するインフルエンザヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。第2の実施形態では、本発明は、RSV抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有するRSVヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。一般的には、サポニンアジュバントは、南アメリカの木であるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られる、アジュバント活性を有する免疫学的に活性なサポニン画分、例えばQS21やQS17などであり、QA21(シャボンノキからのHPLC精製画分)としても知られている。この画分は当技術分野で周知であり、米国特許第5,057,540号に(QA21として)記載された方法に従って調製することができる。キラヤ(Quillaja)サポニンはまた、Scottら, Int. Archs. Allergy Appl. Immun., 1985, 77, 409にアジュバントとして開示されている。
【0031】
別の実施形態においては、インフルエンザヴィロソーム組成物は、以下の化学物質からなる群より選択される追加の免疫刺激性化学物質を含有する: Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0032】
本発明はさらに、医薬の製造における(1)エンベロープウイルスから得られるヴィロソーム調製物および(2)サポニンアジュバントの使用に関し、前記医薬は、患者(特に、高齢患者)において、エンベロープウイルスに対する防御免疫応答を達成させるか、またはエンベロープウイルスが原因となる疾患の重症度を低減させることを目的としたものである。典型的には、前記ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスもしくはRSVウイルスから得られ、また、前記疾患はそれぞれインフルエンザ関連疾患もしくはRSV関連疾患である。
【0033】
本発明はまた、全エンベロープウイルスをイオン性(一般的には、陰イオン性)界面活性剤で処理し、適切には、続いてヴィロソーム再構成の間に外因性ステロールおよび/または外因性脂質を添加することを含んでなる、ヴィロソーム調製物の調製方法に関する。典型的には、ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスまたはRSVウイルスから得られる。別の実施形態では、本発明は、インフルエンザ抗原もしくはRSV抗原を含むヴィロソーム調製物を、サポニンアジュバントもしくはそのアジュバント特性を保持する誘導体と組み合わせることを含んでなる、それぞれインフルエンザもしくはRSVヴィロソーム組成物またはワクチンの製造方法に関する。
【0034】
本発明はまた、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物と、サポニンアジュバントもしくはそのアジュバント特性を保持する誘導体と、の両方を含有するアジュバント添加ヴィロソーム組成物またはワクチンを、個体に投与することを含んでなる、該個体におけるエンベロープウイルスが原因となる疾患(特に、インフルエンザもしくはRSVによる感染または疾患)の予防方法に関する。
【0035】
本発明はさらに、エンベロープウイルスが原因となる感染または疾患を予防するための組成物またはワクチンの製造における、エンベロープウイルスからのヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体の使用に関する。典型的には、ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスまたはRSVウイルスから得られる。
【0036】
本発明はさらに、エンベロープウイルスから得られたヴィロソーム調製物のアジュバント添加(adjuvantation)における、サポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体の使用に関する。
【0037】
本発明はまた、被験者におけるエンベロープウイルスに起因する感染または疾患の予防方法に関し、前記方法は、前記ウイルス由来の抗原(特に、インフルエンザ抗原またはRSV抗原)を含むヴィロソーム調製物と、サポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体を、連続的にまたは同時に投与することを含んでなる。
【0038】
本発明はまた、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物を、サポニンアジュバントまたはその免疫刺激特性を保持する誘導体と共に含有するデリバリーデバイス、特に皮内、鼻腔内、もしくは経皮デリバリーデバイスに関する。
【0039】
本発明のその他の形態および利点については、以下の好適な実施形態の詳細な説明でさらに記述することにする。
【0040】
詳細な説明
本発明の全ての実施形態において、エンベロープウイルスは、次のリストから選択されるいずれかのウイルスでありうる:フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)。インフルエンザウイルスとRSVウイルスが好ましい。
【0041】
本発明の好適な形態では、免疫原組成物中のサポニンアジュバントは、シャボンノキ(saponaria molina)quil Aの誘導体、好ましくはQuil Aの免疫学的に活性な画分、例えばQS17またはQS21、適切にはQS21である。このようなアジュバント添加ヴィロソームワクチンの利点は、サポニンアジュバントを添加した従来型(例えば、サブユニット)ワクチンと比較して、内在性(すなわち、ウイルス由来)ステロールがサポニンの溶解活性を抑制し、それによりサポニンアジュバントに関連した局所反応性を抑えることができる点にある。典型的には、インフルエンザウイルスは約20〜24%の脂質を含み、そのうちの約10〜13%がリン脂質、約6〜8%がステロール、約1〜2%が糖脂質である (Kilbourne E.D., The influenza viruses and influenza, Academic press, New York, San Francisco, London, 1975)。さらに、本発明のアジュバント添加インフルエンザヴィロソームワクチンは、市販されているアジュバント無添加のスプリットワクチンと比較して、向上した免疫原性を示す。
【0042】
QS21(場合により、WO 96/33739に記載されるような、その無毒化リポソーム構造内にあってもよい)とヴィロソーム(HA含有量により測定)の比は、一般的に100:1から1:100(w/w)の範囲であり、好ましい範囲は50:1から1:50(w/w)、10:1から1:10(w/w)、例えば5:1、4:1、3.33:1、3:1、2:1(w/w)であり、1:1(w/w)が好適である。
【0043】
特定の実施形態において、QS21はその反応性が比較的低い組成物として提供され、その場合には、QS21が例えばコレステロールのような内在性ステロールによって抑制される。QS21が内在性コレステロールにより抑制されている、比較的反応性の低い組成物のいくつかの特殊な形態が存在する。1つの実施形態では、サポニン/ステロールがISCOM(好ましくは、Quil Aの無毒性画分を含む)の形態をしている。こうした構造体はアジュバント活性をもつことが報告されている (WO 96/11711)。もう1つの実施形態では、サポニンとステロールを含有する、ISCOM以外の代替の粒状構造体(これもサポニン単独よりも毒性が低い)が意図され、これはリポソーム構造を形成することが知られている (WO 96/33739)。
【0044】
リポソームは、好ましくは、室温で非結晶質であることが望ましい中性脂質を含有し、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、またはジラウリルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリンを含有する。また、リポソームは、飽和脂質から構成されたリポソームの場合にリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質を含んでいてもよい。これらの場合、荷電脂質の量は適当には1〜20%w/w、好ましくは5〜10%である。ステロールのリン脂質に対する比率は1〜50%(モル/モル)、適当には20〜25%である。
【0045】
リポソーム構造または、これとは別にISCOM「かご状」構造が存在する。こうした組成物の特定の形態はWO 96/33739に記載されるとおりである。かかる組成物の別の好適な形態は、サポニンとステロールを含むアジュバント製剤であり、これは、アジュバントがISCOMの形態をしている点に特徴がある。好ましくは、ISCOMは、WO 00/07621に記載されるように、サポニン以外に追加の界面活性剤を含まない。
【0046】
ISCOMは通常(例えば、EP 0 109 942に記載されるように)2工程を経て形成される。すなわち、1.膜と膜タンパク質を界面活性剤により可溶化する工程;2.可溶化剤をいくつかの手段により除去し、同時に膜成分をサポニン(その濃度をサポニンの臨海ミセル濃度に少なくとも等しくする)と接触させる工程、または可溶化剤を除去して、その抗原をサポニンの溶液に直接移す工程。米国特許第4,578,269号は、抗原を可溶化剤から分離するための具体的な方法を教示している。こうした方法は、とりわけ、ある勾配の可溶化剤から逆勾配のサポニンへ遠心分離すること、または、これとは別に、可溶化された抗原をサポニンと混合し、続いて混合物を遠心分離し、透析して過剰の界面活性剤を除去すること、を含んでなる。
【0047】
EP 0 242 380はこの製造方法の改良法を教示している。この特許は、該方法への脂質の添加が抗原/配糖体ミセルの形成をどのようにして防止するかを述べており、また、抗原/配糖体構造がすべてISCOM様であることを確認している。この特許の明細書は、脂質対抗原のモル比を少なくとも0.1:1、好ましくは1:1として、脂質をどの段階で添加してもよい、と述べている。脂質の例としては、コレステロールとホスファチジルコリンが挙げられている。
【0048】
あるいはまた、前記ISCOMはWO 00/07621(参照することにより本明細書に組み入れる)に記載される方法で製造することができ、これはサポニン以外の追加の界面活性剤を含まないことを特徴とする。
【0049】
適当なステロールには、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールが含まれるが、コレステロールが好適である。これらのステロールは当技術分野で周知であり、例えば、コレステロールは動物脂肪中に見出せる天然のステロールとしてMerck Index, 第11版, 341ページに記載されている。前記組成物は、ヴィロソームに会合したサポニンのアジュバント効果を維持する一方で、サポニンアジュバントを含む非ヴィロソームインフルエンザ製剤と比較して、低下した反応性を示すという利点を備えている。
【0050】
QS21と外因性コレステロールを含む本発明の組成物は、アジュバント効果を維持しつつ、外因性コレステロールを含まない組成物と比較して、さらに低下した反応性を示す。反応性の試験は、WO 96/33739に記載される方法に従って評価することができる。
【0051】
外因性ステロールとは、ウイルス内に存在しないが、ヴィロソーム調製物に添加されるか、または後で製剤化するときに添加されるステロールを意味する。一般的には、外因性ステロールは、ヴィロソームの調製方法の間にヴィロソーム調製物に補充されるか、あるいはまた、例えばステロールで抑制された形態のサポニンを用いることにより、サポニンアジュバントを含むヴィロソーム調製物のその後の製剤化の間に添加される。好ましくは、WO 96/33739に記載されるように、外因性ステロールはサポニンアジュバントに会合させる。
【0052】
QS21:外因性ステロールの比は、一般的に1:100から1:1(w/w)の範囲であり、適当には1:10から1:1(w/w)、好ましくは1:5から1:1(w/w)である。適切には、ステロールが過剰に存在し、QS21:外因性ステロールの比を少なくとも1:2(w/w)とする。ステロールとしては、コレステロールが好ましい。一般に、ヒトに投与する場合、QS21とステロールは、1回量あたり約1μg〜100μg、好ましくは約10μg〜50μgの範囲でワクチン中に存在させる。
【0053】
その他の有用なサポニンは、植物Aesculus hippocastanum(セイヨウトチノキ)またはGyophilla struthiumに由来するものである。文献に記載された他のサポニンとしてはエスシン(Escin)があり、これはトチノキLat: Aesculus hippocastanumの種子に存在するサポニンの混合物である、とMerck index(第12版: エントリー3737)に記載されている。その単離はクロマトグラフィーと精製による(Fiedler, Arzneimittel-Forsch. 4, 213 (1953))、またイオン交換樹脂による(Erbringら, US 3,238,190)と記載されている。エスシン(Escin)の画分は精製されて、生物学的に活性であることが示されている(Yoshikawa M,ら (Chem Pharm Bull (Tokyo) 1996 Aug;44(8):1454-1464))。Gyophilla struthium由来のサポアルビン(Sapoalbin)(R. Vochtenら, 1968, J. Pharm. Belg., 42, 213-226)についても、例えばISCOMの製造に関連して記載されている。
【0054】
ヴィロソーム調製物は、好ましくは、室温で非結晶質であることが望ましい外因性の中性脂質を含有し、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、またはジラウリルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリンを含有する。ジオレオイルホスファチジルコリンが好適である。ステロール:リン脂質の比率は1〜50%(モル/モル)、好ましくは20〜25%である。
【0055】
外因性リン脂質とは、ウイルス内に存在しないが、後で調製物に添加されるリン脂質を意味する。外因性リン脂質は、ヴィロソームの調製方法の間にヴィロソーム調製物に補充されるか、あるいはまた、サポニン/コレステロールアジュバントを用いたヴィロソーム調製物のその後の製剤化の間に添加される。
【0056】
本発明の他の実施形態においては、免疫原組成物は別のアジュバント、好ましくは主にTh1型の免疫応答を引き出すもの、をさらに含有する。適切なTh1誘導性アジュバントは、以下からなるアジュバントの群より選択される:Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0057】
好ましくは、追加のアジュバントはToll様受容体アゴニストである。特定の実施形態において、追加のアジュバントはToll様受容体9アゴニストである。別の好適な実施形態では、アジュバントがToll様受容体(TLR)4アゴニスト、例えばリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドA、さらに特定すると3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0058】
MPL(登録商標)はCorixa Corporation (Seattle, WA; 例えば、米国特許第4,436,727号; 第4,877,611号; 第4,866,034号および第4,912,094号を参照)から入手可能であり、主にIFN-g (Th1)表現型を有するCD4+ T細胞応答を促進する。MPL(登録商標)はGB 2 220 211 Aに記載される方法に従って製造することができる。化学的には、これは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。本発明の組成物中では小粒子状の3D-MPLを使用することが好ましい。小粒子状3D-MPLは、0.22μmフィルターを通して滅菌濾過されうるような粒子サイズを有する。そのような調製物はWO 94/21292に記載されている。
【0059】
本発明の適当な組成物は、MPLを用いないで最初にリポソームを調製し(WO 96/33739に記載されるとおり)、その後MPLを好ましくは100nmの粒子として添加するものである。したがって、MPLは小胞膜内に含まれない(MPL outとして知られる)。MPLが小胞膜内に含まれる組成物(MPL inとして知られる)もまた、本発明の1つの形態を構成する。抗原は小胞膜内に保持されても、小胞膜外に保持されてもよい。適当には、可溶性抗原は膜外であり、疎水性または脂質化抗原は膜内もしくは膜外のいずれかに保持される。
【0060】
リピドAの合成誘導体は公知であり、TLR 4アゴニストであると考えられる。かかる合成誘導体には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシル二水素リン酸) (WO 95/14026);
OM294 DP (3S, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(二水素リン酸) (WO 99/64301およびWO 00/0462);
OM197 MP-Ac DP (3S-, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-二水素リン酸 10-(6-アミノヘキサノエート) (WO 01/46127)。
【0061】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは他のいずれかのToll様受容体(TLR)9アゴニストも使用することができる。免疫刺激性DNA配列は、例えば、Satoら, Science 273:352, 1996に記載されている。本発明のアジュバントまたはワクチン中で使用するのに適したオリゴヌクレオチドは、CpG含有オリゴヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも3個(より好ましくは、少なくとも6個またはそれ以上)のヌクレオチドにより分離された2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むものである。本発明のオリゴヌクレオチドは一般的にはデオキシヌクレオチドである。一実施形態において、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間結合はホスホロジチオエート、または好ましくはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルや他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内であり、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも含まれる。本発明で利用するCpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の方法を用いて合成しうる(例えば、EP 468520)。こうしたオリゴヌクレオチドは自動合成機を使って合成することが便利である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートを製造する方法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0062】
適当なオリゴヌクレオチドの例は次の配列を有する。これらの配列は好ましくはホスホロチオエート改変型ヌクレオチド間結合を含む。
【0063】
オリゴ1 (配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3 (配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006、これはCpG 7909としても知られる)
オリゴ5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
【0064】
代替CpGオリゴヌクレオチドは、それらが重大ではない欠失または付加を有するという点で上記の好ましい配列を含みうる。
【0065】
TLR 2アゴニストの例には、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が含まれる。イミキモド(Imiquimod)やレシキモド(Resiquimod)のようなイミダゾキノリン類は公知のTLR 7アゴニストである。一本鎖RNAは公知のTLR 8アゴニストであり、一方二本鎖RNAおよびポリICはTLR 3アゴニストの例である。
【0066】
特に好ましいアジュバントは、3D-MPLとQS21の組合せ (WO 94/00153)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルジョン (WO 95/17210、WO 98/56414)、または他の担体を用いて処方された3D-MPL (EP 0 689 454 B1)である。もう1つの特に好ましい増強された製剤は、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組合せ、特にWO 00/09159およびWO 00/62800に記載されるようなCpGとQS21の組合せを含む。その他の適当なアジュバント系は、US 6558670、US 6544518に記載されるような3D-MPLとQS21とCpGオリゴヌクレオチドの組合せを含む。QS21は、好ましくは、WO 96/33739に記載されるように、反応性が比較的低い組成物(QS21がコレステロールにより抑制されている)として提供される。
【0067】
したがって、別の実施形態では、本発明による製剤は、(1)エンベロープウイルス由来の抗原を含む、前記ウイルスから調製されるヴィロソーム調製物、および(2)サポニン(好ましくはQS21、より好ましくはコレステロールで抑制された形態のもの)と、以下のリストより選択される1種以上のアジュバントとの組合せ、を含有する:Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0068】
あるいはまた、本発明の組成物中のサポニンアジュバントは、キトサンまたは他のポリカチオンポリマーからなるワクチン用ビヒクル、ポリラクチドおよびポリラクチド-コ-グリコリドの粒子、ポリ-N-アセチルグルコサミン系ポリマーマトリックス、多糖類または化学修飾多糖類からなる粒子、リポソームおよび脂質系粒子、グリセロールモノエステルからなる粒子などと組み合わせることができる。サポニンはまた、リポソームやISCOMのような粒状構造体を形成させるためにコレステロールの存在下で製剤化することもできる。さらに、サポニンをポリオキシエチレンエーテルまたはエステルと一緒に、非粒状溶液もしくは懸濁液として、または小ラメラ(paucilamelar)リポソームやISCOMのような粒状構造体として製剤化してもよい。サポニンはまた、粘度を高めるためにCarbopol(登録商標)のような賦形剤を用いて製剤化することができ、また、ラクトースのような粉末賦形剤を用いて乾燥粉末形態に製剤化することもできる。
【0069】
インフルエンザ抗原は、卵や細胞(例えば、MDCK細胞など)のような適当な基体において増殖させることができる。ヴィロソームは、R. Gluck, Vaccine, 1992, 10, 915-920、またはStegmannら 1987, EMBO Journal 6, 2651-2659に記載されるように調製することができる。インフルエンザヴィロソームは、HAおよび/またはNAエンベロープタンパク質を含む界面活性剤処理ウイルスの画分(すなわち、オクチルグルコピラノシドOGPなどの脱キャップ剤で処理し、続いて主要なエンベロープタンパク質HAを少なくとも含む上清を回収した後の、脱キャップウイルス)から調製することができる。あるいはまた、インフルエンザヴィロソームは、HAおよびNAのほかに追加のタンパク質を含む破砕ウイルスから調製することもできる。この出発物質は、その抗原複雑度が完全なウイルスの抗原複雑度に近似しているという利点を提供するので、好適である。適当な破砕剤または脱キャップ剤はイオン性、非イオン性、および両親媒性の界面活性剤である。一般的には、非イオン性界面活性剤、例えばC12E8、C12E9、オクチルグルコピラノシド(OGP)、またはPlantacare(登録商標)が本発明によるヴィロソームの調製に適している。有利には、イオン性(好ましくは、陰イオン性)界面活性剤を用いて、例えば実施例1に詳述する方法に従って、ヴィロソームを調製する。特に、Sarcosyl(登録商標)(ラウリルサルコシネートまたはナトリウムN-ドデカノイル-N-メチルグリシネート) が好適な陰イオン性界面活性剤である。場合により、可溶化工程後に、ヴィロソームの再構成の間に外因性ステロールを添加することからなる追加の工程を含んでもよく、この方法が好ましいものである。一般的に、この方法で添加されるステロールとしては、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールが挙げられ、コレステロールが特に好ましい。あるいはまた、可溶化工程後に、ヴィロソームの再構成の間に外因性脂質を添加することからなる追加の工程を含む。典型的なリン脂質は、ホスファチジルコリンもしくはその誘導体、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、またはジラウリルホスファチジルコリンである。好ましくは、リン脂質とステロールの混合物を使用する。好適なステロールはコレステロールであり、好適なリン脂質はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)である。本発明の方法はさらに、界面活性剤を除去し、それによりヴィロソームの形成へと至らせる工程を含む。一般的に、界面活性剤の除去工程は透析による。好ましくは、この方法が大規模製造に適合しうるように、限外濾過が行われる。この方法では、満足のいくタンパク質収率が得られると同時に、全てのパラメーターを固定しかつ制御しうるという利点がある。
【0070】
場合により、ヴィロソーム調製物(特に、限定するものではないが、該調製物のB型インフルエンザ株のHA成分)はさらなる安定化を必要とする。適当な安定剤はα-トコフェロールまたはその誘導体(例えば、コハク酸α-トコフェロール)である。本発明で使用するのに適した他のトコフェロール誘導体には、D-α-トコフェロール、D-δ-トコフェロール、D-γ-トコフェロール、およびDL-α-トコフェロールが含まれる。使用しうる好適なトコフェロールの誘導体としては、酢酸エステル、コハク酸エステル、リン酸エステル、ギ酸エステル、ブロピオン酸エステル、酪酸エステル、硫酸エステル、およびグルコン酸エステルがある。コハク酸α-トコフェロールが特に適している。α-トコフェロールまたはその誘導体は、インフルエンザ調製物のヘマグルチニン成分を安定化するのに十分な量で存在する。
【0071】
したがって、本発明の一形態では、ヴィロソームの調製方法もまた提供され、この方法は、全エンベロープウイルスをイオン性、好ましくは陰イオン性の界面活性剤(典型的には、限定するものではないが、Sarcosyl(登録商標)界面活性剤)で処理し、破砕調製物を含む上清からペレットを分離し、続いて破砕調製物を、外因性リン脂質とステロール(好ましくは、コレステロール)の混合物と混合することを含んでなる。界面活性剤は、界面活性剤:タンパク質(HA含有量として測定)の比が100:1から1:1(w/w)、好ましくは50:1から1:1(w/w)、例えば20:1から1:1、特に10:1から1:1(w/w)で用いられる。約10:1(w/w)の比が特に好ましい。ヴィロソームの調製に適するその他の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばC12E8、C12E9、オクチルグルコピラノシド(OGP)またはPlantacare(登録商標)である。
【0072】
あるいはまた、他のステロールを、シトステロール(例えば、β-シトステロール)、スチグマステロール、エルゴステロール、およびエルゴカルシフェロールのようなリン脂質と混合して用いることができる。典型的には、リン脂質とステロールの混合物は、リン脂質:ステロール(好ましくは、コレステロール)の比が1:10から10:1(w/w)、好ましくは4:1(w/w)、例えば1:1で用いられる。典型的には、界面活性剤:総タンパク質(BCA Compat-AbleTM検査(Pierce社から参照番号23215)により測定)の比は、1000:1から1:1(w/w)、好ましくは100:1(w/w)、さらに好ましくは20:1である。好適には、この比は10(w/w)である。
【0073】
本発明によるインフルエンザワクチンは、好ましくは、2つ以上のインフルエンザ株を含む多価インフルエンザワクチンである。典型的には、それは3つの株を含む三価ワクチンである。従来のインフルエンザワクチンは3つのインフルエンザ株、すなわち2つのA型株と1つのB型株を含んでなる。標準的なワクチン用量は通常、SRDアッセイにより測定して、3〜45μgのHA成分を含有する。標準的な0.5ml注射用量は、大抵の場合、一元放射免疫拡散法(SRD)で測定して、各株由来のヘマグルチニン抗原成分を15μg含有する。しかしながら、一価ワクチン、例えば世界的に大流行しているか、または世界的に大流行のきざしがあるインフルエンザ株に基づくワクチンを本発明から排除するものではない。世界的に大流行するインフルエンザの一価ワクチンは、ほとんどが単一のA型株に由来するインフルエンザ抗原を含むだろう。
【0074】
本発明によるインフルエンザ組成物またはワクチンは、そのワクチンがヨーロッパで承認されるように、上で説明したインフルエンザワクチンのEU基準の一部または全部を満たすことが好ましい。ワクチンに含まれる全てのインフルエンザ株について、3つのEU基準のうち少なくとも2つを満たすことが好適である。全ての株が少なくとも2つの基準を満たし、3番目の基準は全ての株、または少なくとも、1株を除いて全部の株が満たすことがさらに好適である。含まれる全株が3つ全ての基準を満たすことが最適である。
【0075】
本発明の組成物は、非経口および粘膜経路を含めて、適切であればどのようなデリバリー経路によっても投与することができる。この組成物は特に、限定するものではないが、非経口投与に適しており、典型的には、筋肉内、皮下または皮内注射に適する。このワクチンはまた、鼻腔内投与を含む粘膜投与にも適している。
【0076】
本出願において引用した全ての文献(特許出願および許可された特許を含む)の教示は、参照することにより本明細書に完全に含めるものとする。誤解を避けるために、本明細書中で用いる「含む」および「含んでなる」(comprise)とは、その場合に応じて、「からなる」(consist of)という用語と置き換えることが可能であるものとする。
【0077】
本発明について、以下の非限定的な実施例を参考にすることにより、さらに説明することにする。
【実施例】
【0078】
実施例I−QS21アジュバント添加ヴィロソームの調製
全インフルエンザウイルスを界面活性剤(その大部分はその後除去される)で破砕する。不溶性物質を遠心分離により廃棄する。少なくともHAを含む可溶性物質をリン脂質(PL)とコレステロールの混合物に添加する。次いで、界面活性剤の除去後にヴィロソームを形成させる。必要ならば、組み込まれないタンパク質をショ糖勾配による精製の後に除去してもよい。その後、精製された物質または精製されていない物質にQS21をアジュバントとして添加する。このプロセスの間に外因性PLとコレステロールを添加して、サポニンアジュバントに関連した溶解活性を低下または消失させたヴィロソームを得る。サポニンアジュバントの反応性(reactogenicity)に対するこの効果はコレステロールの存在により達成される。QS21サポニンをヴィロソーム調製物に添加して特定のコレステロール:QS21比を得る場合には、QS21の局所反応性が部分的にまたは完全に抑制される。
【0079】
I.1. 破砕剤としてSarcosyl(登録商標)を用いたヴィロソームの調製
ヴィロソーム調製の概略を図1に示す。
【0080】
再構成されたウイルスエンベロープ、外因性脂質(リン脂質とコレステロール)およびインフルエンザタンパク質(HA、NAなど)からなるヴィロソームを、次の方法に従って調製する。
【0081】
Sarcosyl(登録商標)を破砕剤として使用する。すなわち、HAと他のインフルエンザタンパク質を、処理したウイルスの遠心分離後の上清中に回収する。
【0082】
BPL(βプロピオラクトン)不活化全ウイルスを60,000gで1時間遠心分離してペレット化し、続いて界面活性剤の作用により破砕する。これはバッチ方式でも行うことができる。界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。本実施例では、Sarcosyl界面活性剤(Sigma L-9150)を用いる。室温で2時間後、懸濁液を100,000gで1時間遠心分離し、不溶性物質を捨てる。界面活性剤との接触時間は1〜24時間の範囲とすることができる。
【0083】
並行して、クロロホルムまたはエタノール(Sarcosylを含むまたは含まない)中にリン脂質とコレステロールを4(w/w)の比で含む混合物をロータリーエバポレーターで乾燥させる。得られた薄膜を、可溶化した物質により再構成し、室温で少なくとも2時間振とうする。リン脂質/コレステロール/HA標的組成物は、例えば、1000/250/45または500/125/45 (w/w/w)である。
【0084】
得られた調製物を、その後、0.2μmフィルターで濾過し、スライドAライザー透析カセット(10000MWCO)に移して所望のバッファーに対して透析する。この場合には、PBS pH7.4を使用した。数回のバッファー交換を行う。この透析工程の間に粒子が形成され、これらの粒子にはHAが結合されている。
【0085】
典型的には、この方法により約100nmの粒子(ヴィロソーム)が得られる。粒子サイズは、Malvern Zetasizer 3000HS (動的光散乱) を用いて次の条件下で測定する:レーザー波長: 532nm; レーザー出力光: 50mW; 散乱光の90°検出; T°: 25℃; z平均径: 累積解析による。
【0086】
ヴィロソームサンプルを分析するために5〜45%ショ糖勾配を行う。サンプルを前記勾配にアプライし、34000rpmで16時間遠心分離する(SW41 Tiローター)。次いで1mL画分を集める。
【0087】
SDS-PAGEゲルにかけて、銀染色する。ゲルパターンによれば、HAはゲルの最初の画分(最も低いショ糖密度に相当する)中に存在し、該画分にはリン脂質とコレステロールも見出される。これらの画分はヴィロソームを含有する。HAは密度が比較的高い画分中にも検出される。これは未結合のHAに相当する。
【0088】
結合されていないタンパク質をさらに除くために精製工程を追加してもよい。ショ糖勾配(上記と同じ条件)を行う。該勾配の上部の画分を取っておいてプールする。未結合物質に相当する画分は捨てる。
【0089】
この方法からは、ヴィロソーム構造体に結合されたHAが、界面活性剤除去(例えば、透析または限外濾過による)工程後に測定して、30〜80%の範囲(好ましくは、70〜80%の範囲)の高収率で得られる。タンパク質の収量は、Compat-AbleTM(Pierce社から参照番号23215)で処理してからまたは処理せずにBCATM法(Pierceキット23225)を用いて、あるいはLowry法を用いて測定することが便利である。HA濃度は、一元放射免疫拡散法(SRD)(WHOが推奨する方法)で測定する(J.M. Woodら: インフルエンザヘマグルチニン抗原を検定するための改良型一元放射免疫拡散法:不活化全ウイルスおよびサブユニットワクチンの効力測定への応用(An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen: adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines) J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J.M. Woodら: インフルエンザウイルスのヘマグルチニン抗原を検定するための一元放射免疫拡散法および免疫電気泳動法の国際的共同研究(International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis techniques for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus) J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。
【0090】
I.2. 代替界面活性剤を用いた比較実験
比較実験はSarcosyl(登録商標)の代わりに以下の界面活性剤を用いて行った:オクチルグルコピラノシド(OGP)、トリトンX-100(オクチルフェノール-ポリエチレングリコールエーテル、非イオン性界面活性剤)、C12E8 (オクタエチレングリコールモノn-ドデシルエーテル、非イオン性界面活性剤、Sigma P-8925)、C12E9 (ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、非イオン性界面活性剤、Sigma P-9641)、またはPlantacare(登録商標)(Plantacare 2000 UP、C8-C16アルキルポリグリコシド、Henkel KGaAから入手可能な非イオン性界面活性剤)。OGPは脱キャップ剤であり、すなわち、処理したウイルスを遠心分離した後に、膜に固着されたタンパク質(HAとNA)が存在する。以下の表1および図2は、破砕前の全ウイルスに対して(表1、1行目、100%)および破砕後に行った、Compat-AbleTM(Pierce社から参照番号23215)で処理してからBCA法(Pierceキット23225)で測定したタンパク質含有量(収量)を示す。破砕後に行った測定は遠心分離工程後の上清に対して行う(表1の2〜8行を参照のこと)。HAの収量はSRD試験を用いて測定した。
【0091】
このアッセイは、BPL(βプロプリオラクトン)不活化B/Shangdong株を用いて「バッチ」方式で(すなわち、界面活性剤と接触させる前のペレット化されていない全ウイルスに対して)行った。
【表1】
【0092】
I.3. QS21によるヴィロソームのアジュバント添加
ヴィロソームをQS21と混合して、コレステロール:QS21の比を10:1から1:1(w/w)とする。赤血球を用いてQS21の溶解活性を測定することにより、該活性が抑制されていることを確かめる。
【0093】
典型的には、ワクチン製剤は、500μl中に、アジュバントとして50μgのQS21を添加したヴィロソーム(H1N1、H3N2およびB型株から調製)中の3×15μgのHAを含有する。最終的なコレステロール:QS21の比は10:1から1:1(w/w)である。
【0094】
I.4. アジュバント添加ヴィロソームの溶血活性のアッセイ
QS21アジュバント添加ヴィロソームを含有する製剤の溶解活性を試験する。これらの結果を表2Aおよび2Bに示す。
【0095】
I.4.1. 実施例I.1に従って調製したヴィロソーム
表2Aは、実施例I.1に従って調製したヴィロソーム調製物により得られたデータを示す。これらの調製物は、その製造過程で外因性のリン脂質とステロールを添加してある。製剤は500μl用量あたり45μgのHAと50μgのQS21を含有する。リン脂質とコレステロールの含有量は、表2Aに示すように製剤ごとに変化する。
【0096】
赤血球に対する溶解活性を試験し、溶解が起こったときには、以下に詳述した方法に従って540nmでのODにより溶解を測定する:
血液の低速遠心分離を行い、続いて赤血球をPBSに懸濁させてもとの容量とすることで、赤血球を3回洗浄する。洗浄後、赤血球ペレットをPBSで10倍に希釈する。
QS21対照標準を調製する:1、2.5および5μgのQS21をPBSと混合して最終容量を900μlとする。試験すべきサンプルについては、2.5および5μgのQS21の等量をとり、PBSを添加して900μlの容量とする。
100μlの赤血球(10倍に希釈)をそれぞれの対照標準とサンプルに添加する。チューブをごく穏やかに揺すって、室温で30分間放置する。その後、チューブを2000rpm(CS-6R遠心分離機 - Beckman)で5分間遠心する。
上清のODを540nmで読み取る。
【0097】
外因性コレステロールの存在下で実施例I.1に従って調製したヴィロソームにより得られた結果を表2Aに示す。これらの結果は、ヴィロソームがQS21の溶解活性を抑えることができ、その性能はコレステロール:QS21の比に相関することを示している。
【表2A】
【0098】
I.4.2. 市販ヴィロソームInflexal V(登録商標)(Berna)
500μlのInflexal V(登録商標)ワクチンに、アジュバントとして50μgのQS21を添加した。その結果得られる混合物の組成は、525μl中に+/-117μgのレシチン、45μgのHA、50μgのQS21となる。この製剤中のQS21の溶解活性をQS21単独の溶解活性と比較した。
【0099】
実際には、2.5μgのQS21の等量を含有する容量の製剤「Inflexal V + QS21」をPBS pH7.4に添加して最終容量を900μlとする。並行して、2.5μgのQS21をとり、これもPBSで900μlに希釈する。上記のこれら2つのサンプルに100μlの赤血球(10倍希釈)を添加する。サンプルを室温で30分間放置する。2000rpmで遠心分離した後、上清のODを540nmで読み取る。
【表2B】
【0100】
表2Bは、QS21の溶解活性がInflexal V(登録商標)ヴィロソームの添加により減少することを示しており、このことから、該ウイルス中に存在する内因性ステロールがQS21アジュバントの溶解活性を低下させうることがわかる。
【0101】
実施例II−QS21アジュバント添加ヴィロソームを用いた免疫原性試験
ヴィロソーム製剤の免疫原性は、ヒト高齢者で観察される状況をより綿密に再現するようにした感作マウスモデル(予めインフルエンザ抗原に接触させたが、ワクチン接種前の防御応答を示さない)で評価した。2つの試験を実施した。
【0102】
II.1. 試験#1の計画
0日目に、5μgのホルマリン不活化三価全インフルエンザウイルス (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Panama/2007/99 H3N2、B/Johannesburg/5/99) を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。
【0103】
63日目に、マウスに筋肉内経路でワクチンを接種した:
- グループA: (三価スプリットワクチン対照): 三価スプリットワクチン(上記組成を参照)の株あたり1.5μg(HA)−いわゆる「プレーン」
- グループB: 1.5μg(HA) (A/Panama/2007/99, H3N2)を含む一価ヴィロソーム−いわゆる「ヴィロソーム0327」
- グループC: 1.5μg(HA) (A/Panama/2007/99, H3N2)を含む一価ヴィロソーム+5μg QS21−いわゆる「ヴィロソーム0327+QS21」
- グループD: 1.5μg(HA) (A/New Caledonia/20/99, H1N1)を含む一価ヴィロソーム−いわゆる「ヴィロソーム0328」
- グループE: 1.5μg(HA) (A/New Caledonia/20/99, H1N1)を含む一価ヴィロソーム+5μg QS21−いわゆる「ヴィロソーム0328+QS21」
- グループF: Inflexal V(登録商標)(Berna、三価): 三価ヴィロソームワクチン (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Moscou/10/99 H3N2、B/Hong Kong/330/2001) の株あたり1.5μg(HA)
このヴィロソームは商業的に入手した (Inflexal V、Berna Biotech、Berne Switzerland)。
【0104】
グループB〜Eのマウスに注射したヴィロソームは以下の方法により調製した(II.2を参照):
II.2. ヴィロソームの調製
II.2.1. ヴィロソーム0328
704μg/mLのHAを含有する11mLのBPL不活化全A/New Caledonia/20/99を60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を廃棄する。PBS pH7.4中の100mM Sarcosylをペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁からそれを剥がす。この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(いわゆる破砕調製物)をとっておく。
【0105】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(60mg)とコレステロール(15mg)をCorexチューブに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる(Buchiロータリーエバポレーター)。乾燥した脂質薄膜を3mLの破砕調製物により再構成する。さらにPBS pH7.4(1.5mL)も加えて容量を増やす。Corexチューブを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。
【0106】
次にこの混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。SPECTRA/POR膜(登録商標)(12-14000MWCO; Φ6.4mm、参照番号132676)による透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。透析後、84nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.09である。
【0107】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:10本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに400μLのサンプルを重層する。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、10℃)。1mLの画分を最上部まで集める(画分1=F1は該勾配の最上部であり、F12は該勾配の最下部である)。Count Rate(CR)を測定し(図6参照)、これは粒子がどこに存在するかを示す。大部分の粒子は画分1(F1)に存在する。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこの画分に存在することを示す。各勾配の画分1を一緒にプールして多量のF1を得る。各勾配の画分2〜4を一緒にプールし(プールF2,3,4)、同様に画分7〜9をプールする(プールF7,8,9)。これらのプールをPBSに対して透析して残留ショ糖を取り除く。リン脂質(PL)、コレステロール(Chol)およびHAの含有量を測定する。リン脂質の含有量はMPR2キット(Roche、参照番号: 691844)で測定し、コレステロールはBoehringer Mannheimキット(参照番号: 0139050)で測定し、HAはSRDで測定する。これらの結果は、F1がPL、コレステロールおよびHAを含有することを示しており、同様にプールF2,3,4は、これらの画分中にヴィロソームが存在することを意味している。プールF7,8,9はHAを含有するもののPLもコレステロールも含まない。このプールは未結合のタンパク質に相当する。
【0108】
その後動物に注射された、試験0328からの画分F1の最終組成は、6160μg PL/1805μg Chol/45μg HAである。
【0109】
II.2.2. ヴィロソーム0327の調製
これらはヴィロソーム0328と同様に調製するが、BPL不活化全A/Panama/2007/99ウイルスを使用する。F1の得られた最終組成は、2690μg PL/534μg Chol/45μg HAである。
【0110】
II.3. in vivo試験#1
ヴィロソーム調製物(市販のInflexal V(登録商標)ワクチンを除外する)は、実施例II.2.1およびII.2.2に記載したように、ショ糖勾配で精製した。注射したヴィロソームは次の組成を有する:
2690μg PL/ 534μg Chol/ 45μg HA (327)
6160μg PL/ 1805μg Chol/ 45μg HA (328)
Inflexal V(登録商標)ワクチン(Berna社より販売)の組成は、+/- 140μg PL/ 3 x 15μg HAであった。
【0111】
ワクチン接種前(63日目)とワクチン接種後(14日目)に動物から採血した。赤血球凝集阻害抗体(HI)応答を標準方法 (Dowdleら, 1979. Diagnostic procedures for viral, rickettsial, and chlamydial infections中のInfluenza Viruses, American Public Health Association, Washington, D.C. pp 585-609) で測定し、幾何平均抗体価を図3(A/New Caledonia H1N1)および図4(A/Panama H3N2)に示す。
【0112】
結果
2つの一価調製物を別々に注射した(したがって、A/New CaledoniaまたはA/Panamaのいずれかに対する応答)。A/New Caledoniaの場合は、QS21を含むまたは含まないヴィロソーム調製物がプレーン(アジュバント無添加)のスプリットワクチンよりも相当に高いHI(血清ヘマグルチニン阻害抗体価、実施例IV参照)抗体応答を引き出した。一方、A/Panamaの場合は、QS21の添加がプレーンのスプリットワクチンよりも高いHI応答をもたらした。両製剤とも、市販のヴィロソームワクチンであるInflexal V(登録商標)を用いたときよりも高い応答を誘導した。Inflexal V(登録商標)の応答はプレーンのスプリットワクチンにより誘導された応答とおおむね類似していた。こうして、QS21アジュバント添加ヴィロソーム製剤は、試験した全ての製剤のうちで最も強力なHI抗体応答を引き出すことができた。
【0113】
II.4. 試験#2の計画
別の試験では、インフルエンザA/H1N1ヴィロソームの新調製物の免疫原性について感作マウスモデルを使って調べた。先の試験と同様に、0日目に、不活化三価全インフルエンザウイルス(A/New Caledonia H1N1、A/Panama H3N2、およびB/Shangdong)を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。42日目に、動物にワクチンを接種した:
- グループA: (三価スプリットワクチン対照): 三価スプリットワクチン(上記組成を参照)の株あたり1.5μg(HA)−いわゆる「プレーン」
- グループB: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V3−いわゆる「精製V3」
- グループC: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V3+5μg QS21−いわゆる「精製V3+QS21」
- グループD: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V4−いわゆる「精製V4」
- グループE: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V4+5μg QS21−いわゆる「精製V4+QS21」
【0114】
グループB〜Eのマウスに注射したヴィロソームは、下記の方法(II.5参照)に従って調製した。それらの組成は次のとおりである:
V3: 1850μg PL/ 409μg Chol/ 45μg HA
V4: 1200μg PL/ 127μg Chol/ 45μg HA
【0115】
II.5. ヴィロソームの調製
II.5.1. V3調製物の説明
526μg/mLのHAおよび1615μg/mLの総タンパク質を含有する50mLのBPL不活化A/New Caledonia/20/99全ウイルスを60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を捨てる。PBS pH7.4中の500mg/mLのSarcosyl(登録商標)をペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。PBS pH7.4も加えて最終HA濃度を1mg/mLとする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁から剥がす。この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(いわゆるスプリット)をとっておく。
【0116】
以下の表3は、破砕後のHAおよびタンパク質について得られた収率を示す(HAはSRDで定量し、タンパク質はCompat-AbleTM(Pierce社、参照番号: 23215)で処理してからPierceキット23225で定量する)。HA:タンパク質比は、スプリットが得られたことを示している。
【表3】
【0117】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(133mg)とコレステロール(33mg)を丸底フラスコに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる。乾燥した脂質薄膜を5.8mLのスプリットにより再構成する。さらにPBS pH7.4(4.2mL)も加えて最終容量を10mL、最終HA濃度を600μg/mLとする。フラスコを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。この段階で、最終的なDOPC/コレステロール/HAの組成は1000/250/45となる。その後、混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。
【0118】
図7は、HA、リン脂質(PL)およびコレステロールの収率を示す。それらは100%に近い。
【0119】
次いで、スライドAライザー透析カセット(容量3〜12ml)(10000 MWCO、Pierce #66810)での透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。タンパク質(Lowry法)、HA (SRDによる)、PL (MPR2キット)、およびコレステロール(Boehringer Mannheimキット)の含有量を測定する。得られた収率を図8にまとめて示す。97nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.2であった。
【0120】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:数本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに500μLのサンプルを入れる。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、T°10℃)。その後1mLの画分を最上部から集める(F1は該勾配の最上部の第1画分であり、F12は該勾配の最下部の画分である)。Count Rate(CR)(散乱光子の数である)を測定し(図9)、これは粒子がどこに存在するかを示す。大部分の粒子は画分1(F1)だけでなく、画分F2〜F4にも存在する。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこれらの画分に存在することを示す。画分F1〜F3を一緒にプールし(=プールF1,2,3またはViro3−精製V3)、PBS pH7.4に対して透析してショ糖を除去する。HA、タンパク質、リン脂質およびコレステロールを測定する。
【0121】
プールF1,2,3の全体的な収率(全ウイルスからプールF1,2,3まで)ならびに最終組成を表4に示す。
【表4】
【0122】
II.5.2. V4調製物の説明
526μg/mLのHAと1615μg/mLの総タンパク質を含有する50mLのBPL不活化A/New Caledonia/20/99全ウイルスを60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を捨てる。PBS pH7.4中の500mg/mLのSarcosyl(登録商標)をペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。PBS pH7.4も加えて最終HA濃度を1mg/mLとする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁から剥がす。その後この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(スプリットとも呼ばれる)をとっておく。
【0123】
以下の表5は、破砕後のHAおよびタンパク質について得られた収率を示す(HAはSRDで定量し、タンパク質はCompat-AbleTM(Pierce社、参照番号: 23215)で処理してからPierceキット23225で定量する)。HA:タンパク質比は、スプリットが得られたことを示している。
【表5】
【0124】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(66.6mg)、コレステロール(16.6mg)およびSarcosyl(登録商標) (66.6mg)を丸底フラスコに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる。乾燥した脂質薄膜を5.8mLのスプリット調製物により再構成する。さらにPBS pH7.4(4.2mL)も加えて最終容量を10mL、最終HA濃度を600μg/mLとする。フラスコを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。この段階で、最終的なDOPC/コレステロール/HAの組成は500/125/45となる。
【0125】
その後、混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。濾過後の収率は100%(HA、タンパク質、PL、コレステロール)に近い。次いで、スライドAライザー透析カセット(容量3〜12ml)(10000 MWCO、Pierce #66810)での透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。タンパク質(Lowry法)、HA (SRDによる)、PL (MPR2キット)、およびコレステロール(Boehringer Mannheimキット)の含有量を測定する。得られた収率を図10にまとめて示す。88nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.16であった。
【0126】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:数本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに500μLのサンプルを重層する。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、T°10℃)。その後1mLの画分を最上部から集める(F1は該勾配の最上部の第1画分であり、F12は該勾配の最下部の画分である)。Count Rate(CR)を測定し(Zetasizer3000HSにより測定)、粒子は画分F1〜F4に存在することを示す。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこれらの画分に存在することを示す。
【0127】
画分1〜4を一緒にプールし(=Viro4−精製V4)、PBS pH7.4に対して透析してショ糖を除去する。HA、リン脂質およびコレステロールを測定する。精製Viro4の全体的な収率(全ウイルスから精製Viro4までの収率)ならびに最終組成を表6にまとめて示す。
【表6】
【0128】
精製ヴィロソームにアジュバントQS21を添加する(最終容量500μL中に45μgのHA、50μgのQS21、127μgのコレステロール)。最終製剤のサイズは79nmである。
【0129】
II.5.3. マウスに投与する前の製剤
注射用の水と10倍濃縮PBS(10倍希釈後にPBS pH7.4となる)を室温で一緒に混合する。ヴィロソーム中のHA 15μgを添加し、穏やかに10分間混合する。次いでH2O中のQS21 50μgを添加し、この製剤を穏やかに15分間振とうする。
【0130】
V3ヴィロソームの最終組成は、500μlあたり15μg HA、50μg QS21、136μg コレステロール、および617μg DOPCである。最終製剤のサイズを測定すると(Zetasizer 3000HS)、平均88nmで、多分散度0.16である。このサイズは4℃で7日間保存した後でも安定している。
【0131】
II.6. in vivo試験#2
ワクチン接種前(42日目)とワクチン接種の14日後(56日目)に動物から採血する。赤血球凝集阻害抗体(HI)応答を標準方法 (Dowdleら, 1979. Influenza Viruses. In: Diagnostic procedures for viral, rickettsial, and chlamydial infections. American Public Health Association, Washington, D.C. pp 585-609) で測定し、幾何平均抗体価を図5(抗A/New Caledonia H1N1)に示す。
【0132】
この試験では、両H1N1ヴィロソーム調製物の免疫原性はスプリットプレーンワクチンの免疫原性とほぼ同様であったが、これらの製剤にQS21を添加すると、ヴィロソームに基づく製剤に対する抗体応答が少なくとも2倍増強された。免疫原性はQS21アジュバントの添加により増加したものの、試験中に観察された反応性プロファイルには差異がなかった。要するに、新規QS21アジュバント添加ヴィロソーム製剤は、許容される反応性プロファイルを維持しつつ、非経口的に投与されたインフルエンザワクチンの免疫原性に関して利点を提供する。
【0133】
実施例III−ヘマグルチニン(HA)含有量の測定に用いるSRD法
ガラスプレート(12.4〜10.0cm)に、NIBSCにより推奨される濃度の抗インフルエンザHA血清を含有するアガロースゲルをコーティングする。ゲルが固化してから、アガロース内に72のサンプルウェル(3mm Φ)をパンチする。標準とサンプルの適当な希釈液10μLをウェルに入れる。このプレートを加湿チャンバー内で室温(20〜25℃)にて24時間インキュベートする。その後、プレートをNaCl溶液に一晩浸し、蒸留水で手短に洗浄する。その後ゲルを押し付けて乾かす。完全に乾いたら、プレートをクーマシーブリリアントブルー溶液で10分間染色し、明確な染色ゾーンが見えるようになるまでメタノールと酢酸の混合液で2回脱染色する。プレートを乾かした後、抗原ウェルを囲む染色ゾーンの直径を直角の二方向で測定する。あるいはまた、表面を測定する器具を用いてもよい。表面に対する抗原希釈液の用量応答曲線を作成し、結果を標準的な勾配比法(slope-ratio assay)に従って求める (Finney, D.J. (1952). Statistical Methods in Biological Assay. London: Griffin, Quoted in: Wood, JMら (1977). J. Biol. Standard. 5, 237-247)。
【0134】
実施例IV−インフルエンザ特異的血清抗体の赤血球凝集阻害(HAI)活性
血清(50μl)を200μlのRDE(受容体破壊酵素)で37℃にて16時間処理する。この反応を150μlの2.5%クエン酸Naにより停止させ、血清を56℃で30分間不活性化する。100μlのPBSを添加して1:10の希釈液を調製する。次いで、25μlの血清(1:10)を25μlのPBSで希釈することにより2倍希釈系列を96ウェルプレート(V底)に調製する。25μlの基準抗原を、25μlあたり4赤血球凝集単位の濃度で各ウェルに加える。抗原と抗血清希釈液をマイクロタイタープレートシェーカーにより混合し、室温で60分間インキュベートする。次に、50μlのニワトリ赤血球(RBC) (0.5%)を加え、RBCを室温で1時間沈降させる。HAI抗体価は、ウイルスにより誘発された赤血球凝集を完全に阻害する最後の血清希釈率の逆数に相当する。
【0135】
実施例V−3種のインフルエンザワクチン製剤を用いた免疫原性比較試験
このin vivo試験では、古典的なスプリットワクチンの免疫原性を、市販のInflexal V(登録商標)ワクチン(A/New Caledonia/20/99様、A/Moscow/10/99様、B/Sichuan/379/99様の株を含むBerna 2001-2002組成物)と比較し、さらに、解毒型(すなわち、抑制型)QS21(いわゆるDQ型、参照することにより本明細書に組み入れるWO 96/33739を参照)をアジュバントとして添加したInflexal V(登録商標)ワクチンと比較した。
【0136】
この免疫原性試験では、0日目に、5μgの不活化三価全インフルエンザウイルス (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Panama/2007/99 H3N2、B/Johannesburg/5/99) を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。28日目に、動物に筋肉内経路で古典的スプリットワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)、Inflexal V (Berna)ヴィロソームワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)、または5μgの解毒QS21アジュバントを添加したInflexal V (Berna)ヴィロソームワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)を接種した。Inflexal V(登録商標)−QS21製剤は次のように調製する。すなわち、株あたり15μgのHAを含有するInflexal V(登録商標)ワクチン500μlに、DQ型のQS21(DQ: 50μg QS21、250μg コレステロール、1000μg DOPC)を50μg添加する。
【0137】
ワクチン接種後14日目にHI抗体応答(実施例IVに記載の方法により測定)を測定し、A/Panama株について見られた結果を図11に示す。簡単に述べると、ワクチン接種により誘導されたHI抗体価は、スプリットワクチンおよびアジュバント無添加Bernaヴィロソームワクチンにおいてほぼ似通っていた。しかし、解毒型QS21を添加すると、HI抗体価が2倍程度増加した。同様の結果が他の2つの株についても得られた。
【0138】
この試験を繰り返しても、同じ結果が得られた。
【0139】
実施例VI−解毒型QS21アジュバントを添加した市販のヴィロソームInflexal V(登録商標)の溶解活性
Bernaから市販されているInflexal V(登録商標)2001/2002組成物(A/New Caledonia/20/99様、A/Moscow/10/99様、B/Sichuan/379/99様の株を含む)を使用したが、これは最終容量500μl中に15μgずつの各株を含有する。
【0140】
この試験では、DQまたはAS01(WO96/33739に記載される)と呼ばれる2種類の解毒型QS21を使用した。DQまたはAS01は、QS21量が約100μg/mlまたは20μg/ml(すなわち、0.5mL用量あたり約50または10μg)となるようにヴィロソーム調製物に添加した。表7に調製した製剤をまとめて示す。
【表7】
【0141】
グループ1および2では最終QS21濃度が91μg/ml (50μg/550μl)であり、グループ3および4では18.2μg/ml (10μg/550μl)の濃度である。
【0142】
QS21に関係した溶解活性は赤血球を用いて試験し、溶解(もし溶解が起これば)を以下に詳述する方法に従って540nmでのODにより測定する。血液を低速の遠心分離にかけ、続いて赤血球をPBS中に再懸濁させてもとの容量とすることにより赤血球を3回洗浄する。洗浄後、赤血球ペレットをPBSで10倍に希釈する。QS21標準を調製する: 1、2.5、および5μgのQS21をPBSと混合して最終容量を900μlとする。試験すべきサンプルについては、約2μgのQS21の等量を含む容量をとり、PBSを加えて900μlとする。100μlの赤血球(10倍希釈)を各標準およびサンプルに添加する。チューブをごく穏やかに振とうさせ、室温に30分間放置する。その後チューブを2000rpmで5分間遠心分離する(CS-6R遠心分離機-Beckman)。上清のODを540nmで読み取る。結果を表8に示す。
【表8】
【0143】
表8に示すように、解毒型QS21を含むサンプルで観察されたODは、ブランク(PBS対照)で得られたODに等しかった。このことは、溶解活性が一切検出されないことを意味する。QS21はこれらの製剤中で解毒されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】界面活性剤としてSarcosyl(登録商標)を用いたヴィロソームの調製方法の概略を表す。
【図2】Sarcosyl(登録商標)による破砕方法での総タンパク質とHAの収量を示す。
【図3】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/New Caledonia H1N1赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図4】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/Panama H3N2赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図5】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/New Caledonia H1N1赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図6】ショ糖勾配後に回収した画分のCount rate測定を示す。
【図7】0.2μmで濾過した後のHA、リン脂質およびコレステロールの回収率を示す。
【図8】透析後のタンパク質、HA、リン脂質およびコレステロールの収率を示す。
【図9】ショ糖勾配後に回収した画分のCount Rate(CR)を示す。
【図10】透析後のタンパク質、HA、コレステロールおよびリン脂質の収率を示す。
【図11】QS21アジュバントを添加したおよび添加してないヴィロソームワクチンの免疫原性を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンベロープウイルス由来のヴィロソーム(virosome)、特にアジュバント添加(adjuvanted)ヴィロソーム、を含む組成物、それを調製するための方法、ならびに予防または治療におけるその使用に関する。さらに特定すると、本発明は、インフルエンザウイルスまたはRSVに由来する抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンベロープウイルスとは、ウイルスコアが脂質に富む外皮(ウイルスタンパク質を含む)によって囲まれているウイルスのことである。このようなウイルスとして、例えば次の科のウイルスが挙げられる:フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)。
【0003】
ヒト呼吸器多核体ウイルス(RSV)はパラミクソウイルス科のメンバーであり、下部気道疾患を、特に小児や乳児において、引き起こす。最近の報告では、RSVが成人(特に高齢者)においても重大な病原体となることが提唱されている。
【0004】
RSVは、11のメッセンジャーRNA(それぞれが単一のポリペプチドをコードする)をコードする、15,222ヌクレオチドからなる非分節型のマイナス鎖リボ核酸(RNA)ゲノムをもつエンベロープウイルスである。11のうち3つのタンパク質、すなわち、Gタンパク質(付着)、Fタンパク質(融合)、およびSHタンパク質は膜貫通型の表面タンパク質である。1つのタンパク質はビリオンマトリックスタンパク質(M)であり、3つのタンパク質はヌクレオキャプシドの構成成分(N、PおよびL)であり、そして2つのタンパク質は非構造タンパク質(NS1およびNS2)である。さらに2つのタンパク質M2-1およびM2-2がある。RSVには抗原的に明確に区別される2つのサブグループが存在し、それぞれサブグループAおよびBと呼ばれている。これらのサブグループからのウイルス株の特徴付けによって、大きな相違はGタンパク質にあり、Fタンパク質は保存されていることがわかった。
【0005】
インフルエンザウイルスは、世界中に蔓延する最もありきたりのウイルスの一つであり、ヒトと家畜のいずれにも感染する。インフルエンザの経済的影響は重大である。
【0006】
インフルエンザウイルスは、直径約125nmの粒子サイズのRNAエンベロープウイルスである。これは基本的には、核タンパク質と会合したリボ核酸(RNA)の内部ヌクレオキャプシドつまりコアが、外部糖タンパク質および脂質二重層構造をもつウイルスエンベロープによって取り囲まれた構造をしている。ウイルスエンベロープの内層は主にマトリックスタンパク質からなり、外層は大部分が宿主由来の脂質からなる。表面糖タンパク質のノイラミニダーゼ(NA)とヘマグルチニン(HA)は、粒子の表面に長さ10〜12nmのスパイクとして出現する。インフルエンザサブタイプの抗原特異性を決定するのが、これらの表面タンパク質、特にヘマグルチニンである。
【0007】
典型的なインフルエンザの流行は、入院率または死亡率の増加によって確認されるように、肺炎と下部気道疾患の発生率の増加をもたらす。高齢者や慢性疾患をかかえた患者はこのような合併症を併発する可能性が大きく、また乳幼児も重症の疾患にかかりやすい。したがって、こうした人達を保護する必要がある。
【0008】
すべての種類のインフルエンザワクチンは古典的には三価であり、弱毒化生ワクチンまたは不活化製剤のいずれかの形をとりうる。それらは通常、2つのインフルエンザAウイルス株と1つのインフルエンザBウイルス株に由来する抗原を含有する。標準的な0.5ml注射用量は、ほとんどの場合、一元放射免疫拡散法(single radial immunodiffusion: SRD)で測定して、各ウイルス株由来のヘマグルチニン(HA)抗原成分を15μg含有する(J.M. Woodら: インフルエンザヘマグルチニン抗原を検定するための改良型一元放射免疫拡散法:不活化全ウイルスおよびサブユニットワクチンの効力測定への応用(An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen: adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines) J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J.M. Woodら: インフルエンザウイルスのヘマグルチニン抗原を検定するための一元放射免疫拡散法および免疫電気泳動法の国際的共同研究(International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis techniques for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus) J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。
【0009】
あるインフルエンザ株が世界的に流行している場合のような特定の状況下では、ただ1つのウイルス株を含むワクチンを提供することが望ましいと考えられる。これは世界的な伝染病に応答するスピードを速めるのに役立つ。シーズンごとにインフルエンザワクチンに加えるべきインフルエンザウイルス株は、国立医療機関およびワクチンメーカーと協力して世界保健機構により決定される。
【0010】
現在利用可能なインフルエンザワクチンは、不活化インフルエンザワクチンまたは弱毒化生インフルエンザワクチンのいずれかである。不活化インフルエンザワクチンは、次の3つのタイプの抗原製剤のうちの1つを含む:不活化全ウイルス、ウイルス粒子の膜を界面活性剤もしくは他の試薬で破壊して脂質エンベロープが可溶化されているサブビリオン(いわゆる「スプリット」ワクチン)、またはサブユニットワクチン(組換えにより生産されるか、または破砕したウイルス粒子から精製される)、特にHAおよびNAサブユニットワクチン。ヴィロソームは別のタイプの不活化インフルエンザ製剤であり、この場合にはウイルス膜が破壊後に再構成される。これらの不活化ワクチンは一般的に非経口的に、特に筋肉内(i.m.)に投与されるが、いくつかのヴィロソーム系製剤および弱毒化生ワクチンは鼻腔内に投与されてきた。
【0011】
非経口的(例えば、筋肉内)に投与されたインフルエンザワクチンの免疫原性および有効性は、健康な成人(18〜60才)では非常に高いことが一般に認められている(有効性は約75%と推定される)が、これらのパラメーターは対象者が高齢(>60才)になると低下する(有効性は約50%と推定される)。
【0012】
高齢者(特に介護施設にいる高齢者)はインフルエンザにより誘発される重症疾患のリスクが最も高い人々であるので、高齢者におけるインフルエンザワクチンの有効性には大いに改善の余地がある。したがって、有効性の増大した新規なインフルエンザワクチンを高齢者用に創製することは、現在利用可能なワクチンに対する大きな改善となろう。
【0013】
非経口的に投与されるインフルエンザワクチンは、一般に、免疫原性があって、十分に許容されるが、免疫原性と関連反応性のレベルは各種組成物ごとに変化し、より高いレベルの免疫原性と関連反応性は概して比較的複雑な組成物(サブユニットおよびヴィロソームに対して全ウイルスおよびスプリット)を用いたときに認められる。かくして、現在市販されているインフルエンザワクチンの許容される反応性(reactogenicity)のプロファイルを維持しつつ、その免疫原性を実質的に改善しうる新規製剤を創出することが、依然として要求されている。
【0014】
上述したように、現在市販されているインフルエンザワクチンは、相変わらず、筋内投与されるスプリットワクチン、全ウイルス型ワクチン、サブユニット注射用ワクチン、またはヴィロソームワクチンだけである。特に、スプリットおよびサブユニットワクチンは、ウイルス粒子を、通常は有機溶媒もしくは界面活性剤を用いて破壊し、ウイルスタンパク質をさまざまな程度に分離・精製することにより調製される。スプリットワクチンは、全インフルエンザウイルス(感染性または不活化のいずれか)を可溶化濃度の有機溶媒もしくは界面活性剤により断片化し、続いて可溶化剤とウイルスの脂質の一部または大部分を除去することにより調製される。スプリットワクチンは一般に、膜エンベロープタンパク質(例えば、HAおよびNA)を含むだけでなく、汚染性のマトリックス(M)タンパク質や核タンパク質(NP)、時には脂質をも含むことがある。スプリットワクチンは通常ウイルス構造タンパク質の大部分または全部を含有するが、必ずしもそれらが全ウイルス中に存在するのと同じ割合で含む必要はない。一方、サブユニットワクチンは本質的に、高度に精製されたウイルス表面タンパク質のヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)からなり、これらの表面タンパク質はワクチン接種後に所望のウイルス中和抗体を引き出すことに関与している。マトリックスタンパク質と核タンパク質はいずれもサブユニットワクチン中に検出されないか、かろうじて検出されるにすぎない。
【0015】
インフルエンザワクチンの有効性を測定するための基準が国際的に使用されている。インフルエンザに対する有効なワクチンに関する欧州連合公式基準を以下の表に示す。理論的には、欧州連合の要件を満たすために、インフルエンザワクチンは、ワクチンに含まれる全てのインフルエンザ株について、表に示した基準のただ1つを満たしさえすればよい。しかしながら、実際には、少なくとも2つ、できれば3つ全ての基準を全部のウイルス株について満たす必要があり、特に、新しい皮内ワクチンのような新ワクチンの場合にはそうである。いくつかの状況下では、2つの基準で十分でありうる。例えば、3つの基準のうち2つを全部のウイルス株が満たし、同時に3番目の基準を一部(全部ではない)のウイルス株(例えば、3つのうち2つの株)が満たすことで許容される。製品要件(インフルエンザワクチン製品要件のハーモナイズに関するガイダンス(CPMP/BWP/214/96、1997年3月12日)を参照のこと)は、成人集団(18〜60才)と高齢者集団(>60才)とで相違する:
a) 18〜60才の成人対象者の場合には、各ウイルス株について次の血清学的評価を考慮すべきであり、評価の少なくとも1つが示した製品要件を満たすべきである:
・ セロコンバージョン率、つまり抗ヘマグルチニン抗体価の有意な増加率>40%;
・ 平均幾何学的増加>2.5;
・ HI価≧40またはSRH価>25mm2を達成する対象者の割合が>70%であるべきである。
【0016】
b) 60才を超える成人対象者の場合には、各ウイルス株について次の血清学的評価を考慮すべきであり、評価の少なくとも1つが示した製品要件を満たすべきである:
・ セロコンバージョン率、つまり抗ヘマグルチニン抗体価の有意な増加率>30%;
・ 平均幾何学的増加>2.0;
・ HI価≧40またはSRH価>25mm2を達成する対象者の割合が>60%であるべきである。
【0017】
新規なインフルエンザ製剤が商業上有用であるためには、これらの基準を満たす必要があるだけでなく、実際に、現在利用可能なワクチンと少なくとも同程度に免疫学的に有効である必要がある。また、医療従事者が簡単に実施できる信頼しうる方法を用いてそれを投与できなければならない。さらに、それは許容される工程で製造できなければならず、言うまでもなく抗原量および必要な投与回数の点で商業上実行可能でなければならない。
【0018】
そのような改良型インフルエンザワクチンを開発するために、様々なアプローチが試みられてきた。しかしながら、これまで、こうしたアプローチのどれも、許容される反応性プロファイルを維持する効力の高いインフルエンザワクチンを製造し商品化することを目的として成功を収めておらず、このことはそのような製剤を創製することの格別な困難性を反映している。
【0019】
研究された1つのアプローチは、従来型(すなわち、スプリット、サブユニット、または全ウイルス)ワクチンの使用に代わるインフルエンザヴィロソームワクチンの使用である。ヴィロソームは、ウイルス由来の抗原を含む再構成された脂質膜である。ヴィロソームは主に2つの方法で製造され、一方はヴィロソームの再構成において外因性脂質を添加するものであり (Almeidaら, 1975. Lancet 2:899-901; Trudel M.およびF. Nadon, 1981. Can J Microbiol. 27:958-62; Andoら, 1997. J Microencapsul. 14:79-90; Markgrafら, 2001. Cloning 3:11-21; Gluck, R.およびI.C. Metcalfe, 2002. Vaccine 20:B10-16; Mischler, R.およびI.C. Metcalfe, 2002. Vaccine 20:B17-23)、他方は外因性脂質を添加しないでヴィロソームを形成させるものである (Stegmann, T.ら, 1987. EMBO J. 6:2651-9; Huckriedeら, 2003. Vaccine 21:925-31)。ヴィロソームワクチンは、老人患者においては市販の三価サブユニットインフルエンザワクチンよりも高い免疫原性のあることが明らかにされた (Conneら, Vaccine, 1999, 15, 1675-1679)が、高齢者での別の研究においては、ヴィロソーム製剤が単独では市販のスプリットワクチンほど免疫原性のないことがわかった (Rufら, 2003. 第5回インフルエンザ制圧会議(Options for the Control of Influenza V Conference)沖縄県、10月7〜11日、「高齢者におけるFLUARIX(商標) vs. FLUAD(登録商標) vs. INFLEXAL V(登録商標) の免疫原性および抗体持続性」)。
【0020】
改良型インフルエンザ製剤の開発に向けられた別のアプローチでは、様々なインフルエンザワクチン組成物(特に、サブユニットワクチン)への各種形態のアジュバントの添加が検討された (O’Hagan, D.T., 1998. J. Pharm Pharmacol. 50:1-10; Gluck R. 1992. Vaccine 10:915-9; Podda A.およびG. Del Giudice, 2003. Expert Rev Vacines 2:197-203; Neromeら, 1990. Vaccine 8:503-9)。しかしながら、こうした製剤のうち開発が前進したものはほとんどなかった。それはおそらく、免疫原性の増加および許容される安全性に関して説得力のあるデータが不足していたためであろう。2つのアジュバント添加製剤が商品化されたものの、それらはいずれも良好な有効性および許容される反応性の基準を満たすことができない。Berna社により開発された1つのアジュバント添加製剤は、大腸菌不安定毒素(labile toxin: LT)を添加したヴィロソームに基づく製剤であった。これはInflexal N(登録商標)という名称で商品化された。この製剤は、鼻腔内経路で投与され、免疫原性があるけれども、許容し得ない安全性プロファイル(部分的な顔面麻痺との関連)をもつことがわかり、市場から姿を消した。商品化されたもう1つのアジュバント添加製剤はFLUAD(商標)(Chiron社)であり、これはMF59アジュバントを添加した非経口投与用のサブユニットワクチンである。この製剤は比較的よく許容されるようにみえたが、他の市販の古典的ワクチンよりも免疫原性が低いことが判明した (Rufら, 2003, 前掲を参照のこと)。
【0021】
サポニンは、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H. (1996 「サポニンの生物学的および薬理学的活性の総説」(A review of the biological and pharmacological activities of saponins) Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは植物界と海洋動物界に広く分布しているステロイドまたはトリテルペン配糖体である。サポニンは水中でコロイド溶液(振ったとき泡を生ずる)を形成し、またコレステロールを沈降させることが知られている。サポニンが細胞膜の近くにあると、それは膜に細孔様の構造を作り、これにより膜を破裂させる。赤血球の溶血はこの現象の一例であり、溶血がいくつか(全部ではない)のサポニンの性質となる。
【0022】
サポニンは全身投与用ワクチンのアジュバントとして知られている。個々のサポニンのアジュバント活性と溶血活性は当技術分野で広く研究されてきた (Lacaille-DuboisおよびWagner, 前掲)。例えば、Quil A (南アメリカの木であるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来) は、アジュバント活性をもつことが1974年にDalsgaardら (“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254) によって最初に記載された。Quil Aの精製された断片がHPLCによって単離されており、例えばQS7やQS21(QA7およびQA21としても知られる)のような断片はQuil Aに伴う毒性を示すことなくアジュバント活性を保持している(EP 0 362 278)。Quil A画分は米国特許US 5,057,540、“Saponins as vaccine adjuvants”, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55、および欧州特許EP 0 362 279 B1に記載されている。Quil Aまたはその画分を含む、免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complexes: ISCOMS)と呼ばれる微粒子構造体がワクチン製造に使用されている (Morein, B., EP 0 109 942 B1)。こうした構造体はアジュバント活性をもつことが報告されている (EP 0 109 942 B1; WO 96/11711)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身アジュバントであると記載されており、その製造方法は米国特許第5,057,540号および欧州特許第0 362 279 B1号に記載されている。また、これらの文献には、全身および粘膜(例えば、鼻腔内)ワクチンの強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil Aの非溶血画分)の使用も記載されている。QS21の使用はさらに、Kensilら (1991. J. Immunology vol 146, 431-437) にも記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンの併用も知られている (WO 99/10008)。QS21およびQS7といったQuil A画分を含む粒状アジュバント系は、国際公開WO 96/33739およびWO 96/11711に開示されている。
【0023】
全身的ワクチン接種研究において使用された他のサポニンには、ギプソフィラ(Gypsophila)属やサポナリア(Saponaria)属のような他の植物種に由来するものが含まれる (Bomfordら, Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0024】
サポニンはまた、粘膜に適用されるワクチンの研究においても使用され、免疫応答の誘導において多様な成功を収めたことも知られている。Quil-Aサポニンは、抗原を鼻腔内投与するときには、免疫応答の誘導に何の効果も及ぼさないことが以前に示されている (Gizurarsonら 1994. Vaccine Research 3, 23-29)。一方、他の著者らはこのアジュバントを用いて成功している (Maharajら, Can.J.Microbiol, 1986, 32(5):414-20; ChavaliおよびCampbell, Immunobiology, 174(3):347-59)。Quil Aサポニンを含むISCOMが胃内および鼻腔内ワクチン製剤中で使用され、これはアジュバント活性を示した (McI Mowatら, 1991, Immunology, 72, 317-322; McI MowatおよびDonachie, Immunology Today, 12, 383-385)。Quil Aの精製画分であるQS21も経口または鼻腔内アジュバントとして記載されている (Suminoら, J.Virol., 1998, 72(6):4931-9; WO 98/56415)。
【0025】
QS21のアジュバントとしての使用にはいくつかの欠点がある。例えば、QS21を遊離の分子として哺乳動物に非経口的に注射すると、壊死(すなわち、局在化された組織死)が注射部位に起こることが観察された。サポニンアジュバントを添加したサブユニットインフルエンザ製剤、例えば、ISCOMに組み込まれたインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)が報告されている (Sundquistら Vaccine, 1988, 6, 44-48; Barr I.G.およびG.F. Mitchell. 1996. Immunol Cell Biol. 74:8-25; Kersten G.F.A.およびD.J.A. Crommelin 2003. Vaccine 21:915-920)。しかし、多年にわたる努力にもかかわらず、許容されるヒト用の製品はまだ現れていない (Kersten G.F.A.およびD.J.A. Crommelin 2003. Vaccine 21:915-920)。
【0026】
したがって、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、既存の承認されたインフルエンザワクチンと比較して増大した免疫応答を誘起しうる製剤を創製することは、依然として研究を必要とする分野である。本発明は、改良されたインフルエンザワクチンのニーズに取り組むことを目的とする。
【発明の開示】
【0027】
本発明は、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、増大した免疫原性および有効性の基準を満たす、特に高齢者集団に有効な、ヴィロソームとサポニンの組合せに基づく新規なインフルエンザ製剤の開発に関する。
【0028】
発明の説明
本発明は、許容される反応性プロファイルを保持しつつ、増大した免疫原性および有効性の基準を満たす、ヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントの組合せに基づく新規な組成物を同定した。
【0029】
したがって、第1の形態において、本発明は、エンベロープウイルスから得られるヴィロソーム調製物(該ウイルス由来の抗原を含む)とサポニンアジュバントを含有するヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。
【0030】
1つの実施形態では、本発明は、インフルエンザ抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有するインフルエンザヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。第2の実施形態では、本発明は、RSV抗原を含むヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントを含有するRSVヴィロソーム組成物またはワクチンに関する。一般的には、サポニンアジュバントは、南アメリカの木であるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られる、アジュバント活性を有する免疫学的に活性なサポニン画分、例えばQS21やQS17などであり、QA21(シャボンノキからのHPLC精製画分)としても知られている。この画分は当技術分野で周知であり、米国特許第5,057,540号に(QA21として)記載された方法に従って調製することができる。キラヤ(Quillaja)サポニンはまた、Scottら, Int. Archs. Allergy Appl. Immun., 1985, 77, 409にアジュバントとして開示されている。
【0031】
別の実施形態においては、インフルエンザヴィロソーム組成物は、以下の化学物質からなる群より選択される追加の免疫刺激性化学物質を含有する: Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0032】
本発明はさらに、医薬の製造における(1)エンベロープウイルスから得られるヴィロソーム調製物および(2)サポニンアジュバントの使用に関し、前記医薬は、患者(特に、高齢患者)において、エンベロープウイルスに対する防御免疫応答を達成させるか、またはエンベロープウイルスが原因となる疾患の重症度を低減させることを目的としたものである。典型的には、前記ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスもしくはRSVウイルスから得られ、また、前記疾患はそれぞれインフルエンザ関連疾患もしくはRSV関連疾患である。
【0033】
本発明はまた、全エンベロープウイルスをイオン性(一般的には、陰イオン性)界面活性剤で処理し、適切には、続いてヴィロソーム再構成の間に外因性ステロールおよび/または外因性脂質を添加することを含んでなる、ヴィロソーム調製物の調製方法に関する。典型的には、ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスまたはRSVウイルスから得られる。別の実施形態では、本発明は、インフルエンザ抗原もしくはRSV抗原を含むヴィロソーム調製物を、サポニンアジュバントもしくはそのアジュバント特性を保持する誘導体と組み合わせることを含んでなる、それぞれインフルエンザもしくはRSVヴィロソーム組成物またはワクチンの製造方法に関する。
【0034】
本発明はまた、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物と、サポニンアジュバントもしくはそのアジュバント特性を保持する誘導体と、の両方を含有するアジュバント添加ヴィロソーム組成物またはワクチンを、個体に投与することを含んでなる、該個体におけるエンベロープウイルスが原因となる疾患(特に、インフルエンザもしくはRSVによる感染または疾患)の予防方法に関する。
【0035】
本発明はさらに、エンベロープウイルスが原因となる感染または疾患を予防するための組成物またはワクチンの製造における、エンベロープウイルスからのヴィロソーム調製物とサポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体の使用に関する。典型的には、ヴィロソーム調製物はインフルエンザウイルスまたはRSVウイルスから得られる。
【0036】
本発明はさらに、エンベロープウイルスから得られたヴィロソーム調製物のアジュバント添加(adjuvantation)における、サポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体の使用に関する。
【0037】
本発明はまた、被験者におけるエンベロープウイルスに起因する感染または疾患の予防方法に関し、前記方法は、前記ウイルス由来の抗原(特に、インフルエンザ抗原またはRSV抗原)を含むヴィロソーム調製物と、サポニンアジュバントまたはそのアジュバント特性を保持する誘導体を、連続的にまたは同時に投与することを含んでなる。
【0038】
本発明はまた、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物を、サポニンアジュバントまたはその免疫刺激特性を保持する誘導体と共に含有するデリバリーデバイス、特に皮内、鼻腔内、もしくは経皮デリバリーデバイスに関する。
【0039】
本発明のその他の形態および利点については、以下の好適な実施形態の詳細な説明でさらに記述することにする。
【0040】
詳細な説明
本発明の全ての実施形態において、エンベロープウイルスは、次のリストから選択されるいずれかのウイルスでありうる:フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)。インフルエンザウイルスとRSVウイルスが好ましい。
【0041】
本発明の好適な形態では、免疫原組成物中のサポニンアジュバントは、シャボンノキ(saponaria molina)quil Aの誘導体、好ましくはQuil Aの免疫学的に活性な画分、例えばQS17またはQS21、適切にはQS21である。このようなアジュバント添加ヴィロソームワクチンの利点は、サポニンアジュバントを添加した従来型(例えば、サブユニット)ワクチンと比較して、内在性(すなわち、ウイルス由来)ステロールがサポニンの溶解活性を抑制し、それによりサポニンアジュバントに関連した局所反応性を抑えることができる点にある。典型的には、インフルエンザウイルスは約20〜24%の脂質を含み、そのうちの約10〜13%がリン脂質、約6〜8%がステロール、約1〜2%が糖脂質である (Kilbourne E.D., The influenza viruses and influenza, Academic press, New York, San Francisco, London, 1975)。さらに、本発明のアジュバント添加インフルエンザヴィロソームワクチンは、市販されているアジュバント無添加のスプリットワクチンと比較して、向上した免疫原性を示す。
【0042】
QS21(場合により、WO 96/33739に記載されるような、その無毒化リポソーム構造内にあってもよい)とヴィロソーム(HA含有量により測定)の比は、一般的に100:1から1:100(w/w)の範囲であり、好ましい範囲は50:1から1:50(w/w)、10:1から1:10(w/w)、例えば5:1、4:1、3.33:1、3:1、2:1(w/w)であり、1:1(w/w)が好適である。
【0043】
特定の実施形態において、QS21はその反応性が比較的低い組成物として提供され、その場合には、QS21が例えばコレステロールのような内在性ステロールによって抑制される。QS21が内在性コレステロールにより抑制されている、比較的反応性の低い組成物のいくつかの特殊な形態が存在する。1つの実施形態では、サポニン/ステロールがISCOM(好ましくは、Quil Aの無毒性画分を含む)の形態をしている。こうした構造体はアジュバント活性をもつことが報告されている (WO 96/11711)。もう1つの実施形態では、サポニンとステロールを含有する、ISCOM以外の代替の粒状構造体(これもサポニン単独よりも毒性が低い)が意図され、これはリポソーム構造を形成することが知られている (WO 96/33739)。
【0044】
リポソームは、好ましくは、室温で非結晶質であることが望ましい中性脂質を含有し、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、またはジラウリルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリンを含有する。また、リポソームは、飽和脂質から構成されたリポソームの場合にリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質を含んでいてもよい。これらの場合、荷電脂質の量は適当には1〜20%w/w、好ましくは5〜10%である。ステロールのリン脂質に対する比率は1〜50%(モル/モル)、適当には20〜25%である。
【0045】
リポソーム構造または、これとは別にISCOM「かご状」構造が存在する。こうした組成物の特定の形態はWO 96/33739に記載されるとおりである。かかる組成物の別の好適な形態は、サポニンとステロールを含むアジュバント製剤であり、これは、アジュバントがISCOMの形態をしている点に特徴がある。好ましくは、ISCOMは、WO 00/07621に記載されるように、サポニン以外に追加の界面活性剤を含まない。
【0046】
ISCOMは通常(例えば、EP 0 109 942に記載されるように)2工程を経て形成される。すなわち、1.膜と膜タンパク質を界面活性剤により可溶化する工程;2.可溶化剤をいくつかの手段により除去し、同時に膜成分をサポニン(その濃度をサポニンの臨海ミセル濃度に少なくとも等しくする)と接触させる工程、または可溶化剤を除去して、その抗原をサポニンの溶液に直接移す工程。米国特許第4,578,269号は、抗原を可溶化剤から分離するための具体的な方法を教示している。こうした方法は、とりわけ、ある勾配の可溶化剤から逆勾配のサポニンへ遠心分離すること、または、これとは別に、可溶化された抗原をサポニンと混合し、続いて混合物を遠心分離し、透析して過剰の界面活性剤を除去すること、を含んでなる。
【0047】
EP 0 242 380はこの製造方法の改良法を教示している。この特許は、該方法への脂質の添加が抗原/配糖体ミセルの形成をどのようにして防止するかを述べており、また、抗原/配糖体構造がすべてISCOM様であることを確認している。この特許の明細書は、脂質対抗原のモル比を少なくとも0.1:1、好ましくは1:1として、脂質をどの段階で添加してもよい、と述べている。脂質の例としては、コレステロールとホスファチジルコリンが挙げられている。
【0048】
あるいはまた、前記ISCOMはWO 00/07621(参照することにより本明細書に組み入れる)に記載される方法で製造することができ、これはサポニン以外の追加の界面活性剤を含まないことを特徴とする。
【0049】
適当なステロールには、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールが含まれるが、コレステロールが好適である。これらのステロールは当技術分野で周知であり、例えば、コレステロールは動物脂肪中に見出せる天然のステロールとしてMerck Index, 第11版, 341ページに記載されている。前記組成物は、ヴィロソームに会合したサポニンのアジュバント効果を維持する一方で、サポニンアジュバントを含む非ヴィロソームインフルエンザ製剤と比較して、低下した反応性を示すという利点を備えている。
【0050】
QS21と外因性コレステロールを含む本発明の組成物は、アジュバント効果を維持しつつ、外因性コレステロールを含まない組成物と比較して、さらに低下した反応性を示す。反応性の試験は、WO 96/33739に記載される方法に従って評価することができる。
【0051】
外因性ステロールとは、ウイルス内に存在しないが、ヴィロソーム調製物に添加されるか、または後で製剤化するときに添加されるステロールを意味する。一般的には、外因性ステロールは、ヴィロソームの調製方法の間にヴィロソーム調製物に補充されるか、あるいはまた、例えばステロールで抑制された形態のサポニンを用いることにより、サポニンアジュバントを含むヴィロソーム調製物のその後の製剤化の間に添加される。好ましくは、WO 96/33739に記載されるように、外因性ステロールはサポニンアジュバントに会合させる。
【0052】
QS21:外因性ステロールの比は、一般的に1:100から1:1(w/w)の範囲であり、適当には1:10から1:1(w/w)、好ましくは1:5から1:1(w/w)である。適切には、ステロールが過剰に存在し、QS21:外因性ステロールの比を少なくとも1:2(w/w)とする。ステロールとしては、コレステロールが好ましい。一般に、ヒトに投与する場合、QS21とステロールは、1回量あたり約1μg〜100μg、好ましくは約10μg〜50μgの範囲でワクチン中に存在させる。
【0053】
その他の有用なサポニンは、植物Aesculus hippocastanum(セイヨウトチノキ)またはGyophilla struthiumに由来するものである。文献に記載された他のサポニンとしてはエスシン(Escin)があり、これはトチノキLat: Aesculus hippocastanumの種子に存在するサポニンの混合物である、とMerck index(第12版: エントリー3737)に記載されている。その単離はクロマトグラフィーと精製による(Fiedler, Arzneimittel-Forsch. 4, 213 (1953))、またイオン交換樹脂による(Erbringら, US 3,238,190)と記載されている。エスシン(Escin)の画分は精製されて、生物学的に活性であることが示されている(Yoshikawa M,ら (Chem Pharm Bull (Tokyo) 1996 Aug;44(8):1454-1464))。Gyophilla struthium由来のサポアルビン(Sapoalbin)(R. Vochtenら, 1968, J. Pharm. Belg., 42, 213-226)についても、例えばISCOMの製造に関連して記載されている。
【0054】
ヴィロソーム調製物は、好ましくは、室温で非結晶質であることが望ましい外因性の中性脂質を含有し、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、またはジラウリルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリンを含有する。ジオレオイルホスファチジルコリンが好適である。ステロール:リン脂質の比率は1〜50%(モル/モル)、好ましくは20〜25%である。
【0055】
外因性リン脂質とは、ウイルス内に存在しないが、後で調製物に添加されるリン脂質を意味する。外因性リン脂質は、ヴィロソームの調製方法の間にヴィロソーム調製物に補充されるか、あるいはまた、サポニン/コレステロールアジュバントを用いたヴィロソーム調製物のその後の製剤化の間に添加される。
【0056】
本発明の他の実施形態においては、免疫原組成物は別のアジュバント、好ましくは主にTh1型の免疫応答を引き出すもの、をさらに含有する。適切なTh1誘導性アジュバントは、以下からなるアジュバントの群より選択される:Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0057】
好ましくは、追加のアジュバントはToll様受容体アゴニストである。特定の実施形態において、追加のアジュバントはToll様受容体9アゴニストである。別の好適な実施形態では、アジュバントがToll様受容体(TLR)4アゴニスト、例えばリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドA、さらに特定すると3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0058】
MPL(登録商標)はCorixa Corporation (Seattle, WA; 例えば、米国特許第4,436,727号; 第4,877,611号; 第4,866,034号および第4,912,094号を参照)から入手可能であり、主にIFN-g (Th1)表現型を有するCD4+ T細胞応答を促進する。MPL(登録商標)はGB 2 220 211 Aに記載される方法に従って製造することができる。化学的には、これは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。本発明の組成物中では小粒子状の3D-MPLを使用することが好ましい。小粒子状3D-MPLは、0.22μmフィルターを通して滅菌濾過されうるような粒子サイズを有する。そのような調製物はWO 94/21292に記載されている。
【0059】
本発明の適当な組成物は、MPLを用いないで最初にリポソームを調製し(WO 96/33739に記載されるとおり)、その後MPLを好ましくは100nmの粒子として添加するものである。したがって、MPLは小胞膜内に含まれない(MPL outとして知られる)。MPLが小胞膜内に含まれる組成物(MPL inとして知られる)もまた、本発明の1つの形態を構成する。抗原は小胞膜内に保持されても、小胞膜外に保持されてもよい。適当には、可溶性抗原は膜外であり、疎水性または脂質化抗原は膜内もしくは膜外のいずれかに保持される。
【0060】
リピドAの合成誘導体は公知であり、TLR 4アゴニストであると考えられる。かかる合成誘導体には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシル二水素リン酸) (WO 95/14026);
OM294 DP (3S, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(二水素リン酸) (WO 99/64301およびWO 00/0462);
OM197 MP-Ac DP (3S-, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-二水素リン酸 10-(6-アミノヘキサノエート) (WO 01/46127)。
【0061】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは他のいずれかのToll様受容体(TLR)9アゴニストも使用することができる。免疫刺激性DNA配列は、例えば、Satoら, Science 273:352, 1996に記載されている。本発明のアジュバントまたはワクチン中で使用するのに適したオリゴヌクレオチドは、CpG含有オリゴヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも3個(より好ましくは、少なくとも6個またはそれ以上)のヌクレオチドにより分離された2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むものである。本発明のオリゴヌクレオチドは一般的にはデオキシヌクレオチドである。一実施形態において、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間結合はホスホロジチオエート、または好ましくはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルや他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内であり、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも含まれる。本発明で利用するCpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の方法を用いて合成しうる(例えば、EP 468520)。こうしたオリゴヌクレオチドは自動合成機を使って合成することが便利である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートを製造する方法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0062】
適当なオリゴヌクレオチドの例は次の配列を有する。これらの配列は好ましくはホスホロチオエート改変型ヌクレオチド間結合を含む。
【0063】
オリゴ1 (配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3 (配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006、これはCpG 7909としても知られる)
オリゴ5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
【0064】
代替CpGオリゴヌクレオチドは、それらが重大ではない欠失または付加を有するという点で上記の好ましい配列を含みうる。
【0065】
TLR 2アゴニストの例には、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が含まれる。イミキモド(Imiquimod)やレシキモド(Resiquimod)のようなイミダゾキノリン類は公知のTLR 7アゴニストである。一本鎖RNAは公知のTLR 8アゴニストであり、一方二本鎖RNAおよびポリICはTLR 3アゴニストの例である。
【0066】
特に好ましいアジュバントは、3D-MPLとQS21の組合せ (WO 94/00153)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルジョン (WO 95/17210、WO 98/56414)、または他の担体を用いて処方された3D-MPL (EP 0 689 454 B1)である。もう1つの特に好ましい増強された製剤は、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組合せ、特にWO 00/09159およびWO 00/62800に記載されるようなCpGとQS21の組合せを含む。その他の適当なアジュバント系は、US 6558670、US 6544518に記載されるような3D-MPLとQS21とCpGオリゴヌクレオチドの組合せを含む。QS21は、好ましくは、WO 96/33739に記載されるように、反応性が比較的低い組成物(QS21がコレステロールにより抑制されている)として提供される。
【0067】
したがって、別の実施形態では、本発明による製剤は、(1)エンベロープウイルス由来の抗原を含む、前記ウイルスから調製されるヴィロソーム調製物、および(2)サポニン(好ましくはQS21、より好ましくはコレステロールで抑制された形態のもの)と、以下のリストより選択される1種以上のアジュバントとの組合せ、を含有する:Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニスト)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せ。
【0068】
あるいはまた、本発明の組成物中のサポニンアジュバントは、キトサンまたは他のポリカチオンポリマーからなるワクチン用ビヒクル、ポリラクチドおよびポリラクチド-コ-グリコリドの粒子、ポリ-N-アセチルグルコサミン系ポリマーマトリックス、多糖類または化学修飾多糖類からなる粒子、リポソームおよび脂質系粒子、グリセロールモノエステルからなる粒子などと組み合わせることができる。サポニンはまた、リポソームやISCOMのような粒状構造体を形成させるためにコレステロールの存在下で製剤化することもできる。さらに、サポニンをポリオキシエチレンエーテルまたはエステルと一緒に、非粒状溶液もしくは懸濁液として、または小ラメラ(paucilamelar)リポソームやISCOMのような粒状構造体として製剤化してもよい。サポニンはまた、粘度を高めるためにCarbopol(登録商標)のような賦形剤を用いて製剤化することができ、また、ラクトースのような粉末賦形剤を用いて乾燥粉末形態に製剤化することもできる。
【0069】
インフルエンザ抗原は、卵や細胞(例えば、MDCK細胞など)のような適当な基体において増殖させることができる。ヴィロソームは、R. Gluck, Vaccine, 1992, 10, 915-920、またはStegmannら 1987, EMBO Journal 6, 2651-2659に記載されるように調製することができる。インフルエンザヴィロソームは、HAおよび/またはNAエンベロープタンパク質を含む界面活性剤処理ウイルスの画分(すなわち、オクチルグルコピラノシドOGPなどの脱キャップ剤で処理し、続いて主要なエンベロープタンパク質HAを少なくとも含む上清を回収した後の、脱キャップウイルス)から調製することができる。あるいはまた、インフルエンザヴィロソームは、HAおよびNAのほかに追加のタンパク質を含む破砕ウイルスから調製することもできる。この出発物質は、その抗原複雑度が完全なウイルスの抗原複雑度に近似しているという利点を提供するので、好適である。適当な破砕剤または脱キャップ剤はイオン性、非イオン性、および両親媒性の界面活性剤である。一般的には、非イオン性界面活性剤、例えばC12E8、C12E9、オクチルグルコピラノシド(OGP)、またはPlantacare(登録商標)が本発明によるヴィロソームの調製に適している。有利には、イオン性(好ましくは、陰イオン性)界面活性剤を用いて、例えば実施例1に詳述する方法に従って、ヴィロソームを調製する。特に、Sarcosyl(登録商標)(ラウリルサルコシネートまたはナトリウムN-ドデカノイル-N-メチルグリシネート) が好適な陰イオン性界面活性剤である。場合により、可溶化工程後に、ヴィロソームの再構成の間に外因性ステロールを添加することからなる追加の工程を含んでもよく、この方法が好ましいものである。一般的に、この方法で添加されるステロールとしては、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールが挙げられ、コレステロールが特に好ましい。あるいはまた、可溶化工程後に、ヴィロソームの再構成の間に外因性脂質を添加することからなる追加の工程を含む。典型的なリン脂質は、ホスファチジルコリンもしくはその誘導体、例えば、卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、またはジラウリルホスファチジルコリンである。好ましくは、リン脂質とステロールの混合物を使用する。好適なステロールはコレステロールであり、好適なリン脂質はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)である。本発明の方法はさらに、界面活性剤を除去し、それによりヴィロソームの形成へと至らせる工程を含む。一般的に、界面活性剤の除去工程は透析による。好ましくは、この方法が大規模製造に適合しうるように、限外濾過が行われる。この方法では、満足のいくタンパク質収率が得られると同時に、全てのパラメーターを固定しかつ制御しうるという利点がある。
【0070】
場合により、ヴィロソーム調製物(特に、限定するものではないが、該調製物のB型インフルエンザ株のHA成分)はさらなる安定化を必要とする。適当な安定剤はα-トコフェロールまたはその誘導体(例えば、コハク酸α-トコフェロール)である。本発明で使用するのに適した他のトコフェロール誘導体には、D-α-トコフェロール、D-δ-トコフェロール、D-γ-トコフェロール、およびDL-α-トコフェロールが含まれる。使用しうる好適なトコフェロールの誘導体としては、酢酸エステル、コハク酸エステル、リン酸エステル、ギ酸エステル、ブロピオン酸エステル、酪酸エステル、硫酸エステル、およびグルコン酸エステルがある。コハク酸α-トコフェロールが特に適している。α-トコフェロールまたはその誘導体は、インフルエンザ調製物のヘマグルチニン成分を安定化するのに十分な量で存在する。
【0071】
したがって、本発明の一形態では、ヴィロソームの調製方法もまた提供され、この方法は、全エンベロープウイルスをイオン性、好ましくは陰イオン性の界面活性剤(典型的には、限定するものではないが、Sarcosyl(登録商標)界面活性剤)で処理し、破砕調製物を含む上清からペレットを分離し、続いて破砕調製物を、外因性リン脂質とステロール(好ましくは、コレステロール)の混合物と混合することを含んでなる。界面活性剤は、界面活性剤:タンパク質(HA含有量として測定)の比が100:1から1:1(w/w)、好ましくは50:1から1:1(w/w)、例えば20:1から1:1、特に10:1から1:1(w/w)で用いられる。約10:1(w/w)の比が特に好ましい。ヴィロソームの調製に適するその他の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばC12E8、C12E9、オクチルグルコピラノシド(OGP)またはPlantacare(登録商標)である。
【0072】
あるいはまた、他のステロールを、シトステロール(例えば、β-シトステロール)、スチグマステロール、エルゴステロール、およびエルゴカルシフェロールのようなリン脂質と混合して用いることができる。典型的には、リン脂質とステロールの混合物は、リン脂質:ステロール(好ましくは、コレステロール)の比が1:10から10:1(w/w)、好ましくは4:1(w/w)、例えば1:1で用いられる。典型的には、界面活性剤:総タンパク質(BCA Compat-AbleTM検査(Pierce社から参照番号23215)により測定)の比は、1000:1から1:1(w/w)、好ましくは100:1(w/w)、さらに好ましくは20:1である。好適には、この比は10(w/w)である。
【0073】
本発明によるインフルエンザワクチンは、好ましくは、2つ以上のインフルエンザ株を含む多価インフルエンザワクチンである。典型的には、それは3つの株を含む三価ワクチンである。従来のインフルエンザワクチンは3つのインフルエンザ株、すなわち2つのA型株と1つのB型株を含んでなる。標準的なワクチン用量は通常、SRDアッセイにより測定して、3〜45μgのHA成分を含有する。標準的な0.5ml注射用量は、大抵の場合、一元放射免疫拡散法(SRD)で測定して、各株由来のヘマグルチニン抗原成分を15μg含有する。しかしながら、一価ワクチン、例えば世界的に大流行しているか、または世界的に大流行のきざしがあるインフルエンザ株に基づくワクチンを本発明から排除するものではない。世界的に大流行するインフルエンザの一価ワクチンは、ほとんどが単一のA型株に由来するインフルエンザ抗原を含むだろう。
【0074】
本発明によるインフルエンザ組成物またはワクチンは、そのワクチンがヨーロッパで承認されるように、上で説明したインフルエンザワクチンのEU基準の一部または全部を満たすことが好ましい。ワクチンに含まれる全てのインフルエンザ株について、3つのEU基準のうち少なくとも2つを満たすことが好適である。全ての株が少なくとも2つの基準を満たし、3番目の基準は全ての株、または少なくとも、1株を除いて全部の株が満たすことがさらに好適である。含まれる全株が3つ全ての基準を満たすことが最適である。
【0075】
本発明の組成物は、非経口および粘膜経路を含めて、適切であればどのようなデリバリー経路によっても投与することができる。この組成物は特に、限定するものではないが、非経口投与に適しており、典型的には、筋肉内、皮下または皮内注射に適する。このワクチンはまた、鼻腔内投与を含む粘膜投与にも適している。
【0076】
本出願において引用した全ての文献(特許出願および許可された特許を含む)の教示は、参照することにより本明細書に完全に含めるものとする。誤解を避けるために、本明細書中で用いる「含む」および「含んでなる」(comprise)とは、その場合に応じて、「からなる」(consist of)という用語と置き換えることが可能であるものとする。
【0077】
本発明について、以下の非限定的な実施例を参考にすることにより、さらに説明することにする。
【実施例】
【0078】
実施例I−QS21アジュバント添加ヴィロソームの調製
全インフルエンザウイルスを界面活性剤(その大部分はその後除去される)で破砕する。不溶性物質を遠心分離により廃棄する。少なくともHAを含む可溶性物質をリン脂質(PL)とコレステロールの混合物に添加する。次いで、界面活性剤の除去後にヴィロソームを形成させる。必要ならば、組み込まれないタンパク質をショ糖勾配による精製の後に除去してもよい。その後、精製された物質または精製されていない物質にQS21をアジュバントとして添加する。このプロセスの間に外因性PLとコレステロールを添加して、サポニンアジュバントに関連した溶解活性を低下または消失させたヴィロソームを得る。サポニンアジュバントの反応性(reactogenicity)に対するこの効果はコレステロールの存在により達成される。QS21サポニンをヴィロソーム調製物に添加して特定のコレステロール:QS21比を得る場合には、QS21の局所反応性が部分的にまたは完全に抑制される。
【0079】
I.1. 破砕剤としてSarcosyl(登録商標)を用いたヴィロソームの調製
ヴィロソーム調製の概略を図1に示す。
【0080】
再構成されたウイルスエンベロープ、外因性脂質(リン脂質とコレステロール)およびインフルエンザタンパク質(HA、NAなど)からなるヴィロソームを、次の方法に従って調製する。
【0081】
Sarcosyl(登録商標)を破砕剤として使用する。すなわち、HAと他のインフルエンザタンパク質を、処理したウイルスの遠心分離後の上清中に回収する。
【0082】
BPL(βプロピオラクトン)不活化全ウイルスを60,000gで1時間遠心分離してペレット化し、続いて界面活性剤の作用により破砕する。これはバッチ方式でも行うことができる。界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。本実施例では、Sarcosyl界面活性剤(Sigma L-9150)を用いる。室温で2時間後、懸濁液を100,000gで1時間遠心分離し、不溶性物質を捨てる。界面活性剤との接触時間は1〜24時間の範囲とすることができる。
【0083】
並行して、クロロホルムまたはエタノール(Sarcosylを含むまたは含まない)中にリン脂質とコレステロールを4(w/w)の比で含む混合物をロータリーエバポレーターで乾燥させる。得られた薄膜を、可溶化した物質により再構成し、室温で少なくとも2時間振とうする。リン脂質/コレステロール/HA標的組成物は、例えば、1000/250/45または500/125/45 (w/w/w)である。
【0084】
得られた調製物を、その後、0.2μmフィルターで濾過し、スライドAライザー透析カセット(10000MWCO)に移して所望のバッファーに対して透析する。この場合には、PBS pH7.4を使用した。数回のバッファー交換を行う。この透析工程の間に粒子が形成され、これらの粒子にはHAが結合されている。
【0085】
典型的には、この方法により約100nmの粒子(ヴィロソーム)が得られる。粒子サイズは、Malvern Zetasizer 3000HS (動的光散乱) を用いて次の条件下で測定する:レーザー波長: 532nm; レーザー出力光: 50mW; 散乱光の90°検出; T°: 25℃; z平均径: 累積解析による。
【0086】
ヴィロソームサンプルを分析するために5〜45%ショ糖勾配を行う。サンプルを前記勾配にアプライし、34000rpmで16時間遠心分離する(SW41 Tiローター)。次いで1mL画分を集める。
【0087】
SDS-PAGEゲルにかけて、銀染色する。ゲルパターンによれば、HAはゲルの最初の画分(最も低いショ糖密度に相当する)中に存在し、該画分にはリン脂質とコレステロールも見出される。これらの画分はヴィロソームを含有する。HAは密度が比較的高い画分中にも検出される。これは未結合のHAに相当する。
【0088】
結合されていないタンパク質をさらに除くために精製工程を追加してもよい。ショ糖勾配(上記と同じ条件)を行う。該勾配の上部の画分を取っておいてプールする。未結合物質に相当する画分は捨てる。
【0089】
この方法からは、ヴィロソーム構造体に結合されたHAが、界面活性剤除去(例えば、透析または限外濾過による)工程後に測定して、30〜80%の範囲(好ましくは、70〜80%の範囲)の高収率で得られる。タンパク質の収量は、Compat-AbleTM(Pierce社から参照番号23215)で処理してからまたは処理せずにBCATM法(Pierceキット23225)を用いて、あるいはLowry法を用いて測定することが便利である。HA濃度は、一元放射免疫拡散法(SRD)(WHOが推奨する方法)で測定する(J.M. Woodら: インフルエンザヘマグルチニン抗原を検定するための改良型一元放射免疫拡散法:不活化全ウイルスおよびサブユニットワクチンの効力測定への応用(An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen: adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines) J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J.M. Woodら: インフルエンザウイルスのヘマグルチニン抗原を検定するための一元放射免疫拡散法および免疫電気泳動法の国際的共同研究(International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis techniques for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus) J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。
【0090】
I.2. 代替界面活性剤を用いた比較実験
比較実験はSarcosyl(登録商標)の代わりに以下の界面活性剤を用いて行った:オクチルグルコピラノシド(OGP)、トリトンX-100(オクチルフェノール-ポリエチレングリコールエーテル、非イオン性界面活性剤)、C12E8 (オクタエチレングリコールモノn-ドデシルエーテル、非イオン性界面活性剤、Sigma P-8925)、C12E9 (ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、非イオン性界面活性剤、Sigma P-9641)、またはPlantacare(登録商標)(Plantacare 2000 UP、C8-C16アルキルポリグリコシド、Henkel KGaAから入手可能な非イオン性界面活性剤)。OGPは脱キャップ剤であり、すなわち、処理したウイルスを遠心分離した後に、膜に固着されたタンパク質(HAとNA)が存在する。以下の表1および図2は、破砕前の全ウイルスに対して(表1、1行目、100%)および破砕後に行った、Compat-AbleTM(Pierce社から参照番号23215)で処理してからBCA法(Pierceキット23225)で測定したタンパク質含有量(収量)を示す。破砕後に行った測定は遠心分離工程後の上清に対して行う(表1の2〜8行を参照のこと)。HAの収量はSRD試験を用いて測定した。
【0091】
このアッセイは、BPL(βプロプリオラクトン)不活化B/Shangdong株を用いて「バッチ」方式で(すなわち、界面活性剤と接触させる前のペレット化されていない全ウイルスに対して)行った。
【表1】
【0092】
I.3. QS21によるヴィロソームのアジュバント添加
ヴィロソームをQS21と混合して、コレステロール:QS21の比を10:1から1:1(w/w)とする。赤血球を用いてQS21の溶解活性を測定することにより、該活性が抑制されていることを確かめる。
【0093】
典型的には、ワクチン製剤は、500μl中に、アジュバントとして50μgのQS21を添加したヴィロソーム(H1N1、H3N2およびB型株から調製)中の3×15μgのHAを含有する。最終的なコレステロール:QS21の比は10:1から1:1(w/w)である。
【0094】
I.4. アジュバント添加ヴィロソームの溶血活性のアッセイ
QS21アジュバント添加ヴィロソームを含有する製剤の溶解活性を試験する。これらの結果を表2Aおよび2Bに示す。
【0095】
I.4.1. 実施例I.1に従って調製したヴィロソーム
表2Aは、実施例I.1に従って調製したヴィロソーム調製物により得られたデータを示す。これらの調製物は、その製造過程で外因性のリン脂質とステロールを添加してある。製剤は500μl用量あたり45μgのHAと50μgのQS21を含有する。リン脂質とコレステロールの含有量は、表2Aに示すように製剤ごとに変化する。
【0096】
赤血球に対する溶解活性を試験し、溶解が起こったときには、以下に詳述した方法に従って540nmでのODにより溶解を測定する:
血液の低速遠心分離を行い、続いて赤血球をPBSに懸濁させてもとの容量とすることで、赤血球を3回洗浄する。洗浄後、赤血球ペレットをPBSで10倍に希釈する。
QS21対照標準を調製する:1、2.5および5μgのQS21をPBSと混合して最終容量を900μlとする。試験すべきサンプルについては、2.5および5μgのQS21の等量をとり、PBSを添加して900μlの容量とする。
100μlの赤血球(10倍に希釈)をそれぞれの対照標準とサンプルに添加する。チューブをごく穏やかに揺すって、室温で30分間放置する。その後、チューブを2000rpm(CS-6R遠心分離機 - Beckman)で5分間遠心する。
上清のODを540nmで読み取る。
【0097】
外因性コレステロールの存在下で実施例I.1に従って調製したヴィロソームにより得られた結果を表2Aに示す。これらの結果は、ヴィロソームがQS21の溶解活性を抑えることができ、その性能はコレステロール:QS21の比に相関することを示している。
【表2A】
【0098】
I.4.2. 市販ヴィロソームInflexal V(登録商標)(Berna)
500μlのInflexal V(登録商標)ワクチンに、アジュバントとして50μgのQS21を添加した。その結果得られる混合物の組成は、525μl中に+/-117μgのレシチン、45μgのHA、50μgのQS21となる。この製剤中のQS21の溶解活性をQS21単独の溶解活性と比較した。
【0099】
実際には、2.5μgのQS21の等量を含有する容量の製剤「Inflexal V + QS21」をPBS pH7.4に添加して最終容量を900μlとする。並行して、2.5μgのQS21をとり、これもPBSで900μlに希釈する。上記のこれら2つのサンプルに100μlの赤血球(10倍希釈)を添加する。サンプルを室温で30分間放置する。2000rpmで遠心分離した後、上清のODを540nmで読み取る。
【表2B】
【0100】
表2Bは、QS21の溶解活性がInflexal V(登録商標)ヴィロソームの添加により減少することを示しており、このことから、該ウイルス中に存在する内因性ステロールがQS21アジュバントの溶解活性を低下させうることがわかる。
【0101】
実施例II−QS21アジュバント添加ヴィロソームを用いた免疫原性試験
ヴィロソーム製剤の免疫原性は、ヒト高齢者で観察される状況をより綿密に再現するようにした感作マウスモデル(予めインフルエンザ抗原に接触させたが、ワクチン接種前の防御応答を示さない)で評価した。2つの試験を実施した。
【0102】
II.1. 試験#1の計画
0日目に、5μgのホルマリン不活化三価全インフルエンザウイルス (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Panama/2007/99 H3N2、B/Johannesburg/5/99) を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。
【0103】
63日目に、マウスに筋肉内経路でワクチンを接種した:
- グループA: (三価スプリットワクチン対照): 三価スプリットワクチン(上記組成を参照)の株あたり1.5μg(HA)−いわゆる「プレーン」
- グループB: 1.5μg(HA) (A/Panama/2007/99, H3N2)を含む一価ヴィロソーム−いわゆる「ヴィロソーム0327」
- グループC: 1.5μg(HA) (A/Panama/2007/99, H3N2)を含む一価ヴィロソーム+5μg QS21−いわゆる「ヴィロソーム0327+QS21」
- グループD: 1.5μg(HA) (A/New Caledonia/20/99, H1N1)を含む一価ヴィロソーム−いわゆる「ヴィロソーム0328」
- グループE: 1.5μg(HA) (A/New Caledonia/20/99, H1N1)を含む一価ヴィロソーム+5μg QS21−いわゆる「ヴィロソーム0328+QS21」
- グループF: Inflexal V(登録商標)(Berna、三価): 三価ヴィロソームワクチン (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Moscou/10/99 H3N2、B/Hong Kong/330/2001) の株あたり1.5μg(HA)
このヴィロソームは商業的に入手した (Inflexal V、Berna Biotech、Berne Switzerland)。
【0104】
グループB〜Eのマウスに注射したヴィロソームは以下の方法により調製した(II.2を参照):
II.2. ヴィロソームの調製
II.2.1. ヴィロソーム0328
704μg/mLのHAを含有する11mLのBPL不活化全A/New Caledonia/20/99を60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を廃棄する。PBS pH7.4中の100mM Sarcosylをペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁からそれを剥がす。この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(いわゆる破砕調製物)をとっておく。
【0105】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(60mg)とコレステロール(15mg)をCorexチューブに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる(Buchiロータリーエバポレーター)。乾燥した脂質薄膜を3mLの破砕調製物により再構成する。さらにPBS pH7.4(1.5mL)も加えて容量を増やす。Corexチューブを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。
【0106】
次にこの混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。SPECTRA/POR膜(登録商標)(12-14000MWCO; Φ6.4mm、参照番号132676)による透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。透析後、84nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.09である。
【0107】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:10本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに400μLのサンプルを重層する。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、10℃)。1mLの画分を最上部まで集める(画分1=F1は該勾配の最上部であり、F12は該勾配の最下部である)。Count Rate(CR)を測定し(図6参照)、これは粒子がどこに存在するかを示す。大部分の粒子は画分1(F1)に存在する。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこの画分に存在することを示す。各勾配の画分1を一緒にプールして多量のF1を得る。各勾配の画分2〜4を一緒にプールし(プールF2,3,4)、同様に画分7〜9をプールする(プールF7,8,9)。これらのプールをPBSに対して透析して残留ショ糖を取り除く。リン脂質(PL)、コレステロール(Chol)およびHAの含有量を測定する。リン脂質の含有量はMPR2キット(Roche、参照番号: 691844)で測定し、コレステロールはBoehringer Mannheimキット(参照番号: 0139050)で測定し、HAはSRDで測定する。これらの結果は、F1がPL、コレステロールおよびHAを含有することを示しており、同様にプールF2,3,4は、これらの画分中にヴィロソームが存在することを意味している。プールF7,8,9はHAを含有するもののPLもコレステロールも含まない。このプールは未結合のタンパク質に相当する。
【0108】
その後動物に注射された、試験0328からの画分F1の最終組成は、6160μg PL/1805μg Chol/45μg HAである。
【0109】
II.2.2. ヴィロソーム0327の調製
これらはヴィロソーム0328と同様に調製するが、BPL不活化全A/Panama/2007/99ウイルスを使用する。F1の得られた最終組成は、2690μg PL/534μg Chol/45μg HAである。
【0110】
II.3. in vivo試験#1
ヴィロソーム調製物(市販のInflexal V(登録商標)ワクチンを除外する)は、実施例II.2.1およびII.2.2に記載したように、ショ糖勾配で精製した。注射したヴィロソームは次の組成を有する:
2690μg PL/ 534μg Chol/ 45μg HA (327)
6160μg PL/ 1805μg Chol/ 45μg HA (328)
Inflexal V(登録商標)ワクチン(Berna社より販売)の組成は、+/- 140μg PL/ 3 x 15μg HAであった。
【0111】
ワクチン接種前(63日目)とワクチン接種後(14日目)に動物から採血した。赤血球凝集阻害抗体(HI)応答を標準方法 (Dowdleら, 1979. Diagnostic procedures for viral, rickettsial, and chlamydial infections中のInfluenza Viruses, American Public Health Association, Washington, D.C. pp 585-609) で測定し、幾何平均抗体価を図3(A/New Caledonia H1N1)および図4(A/Panama H3N2)に示す。
【0112】
結果
2つの一価調製物を別々に注射した(したがって、A/New CaledoniaまたはA/Panamaのいずれかに対する応答)。A/New Caledoniaの場合は、QS21を含むまたは含まないヴィロソーム調製物がプレーン(アジュバント無添加)のスプリットワクチンよりも相当に高いHI(血清ヘマグルチニン阻害抗体価、実施例IV参照)抗体応答を引き出した。一方、A/Panamaの場合は、QS21の添加がプレーンのスプリットワクチンよりも高いHI応答をもたらした。両製剤とも、市販のヴィロソームワクチンであるInflexal V(登録商標)を用いたときよりも高い応答を誘導した。Inflexal V(登録商標)の応答はプレーンのスプリットワクチンにより誘導された応答とおおむね類似していた。こうして、QS21アジュバント添加ヴィロソーム製剤は、試験した全ての製剤のうちで最も強力なHI抗体応答を引き出すことができた。
【0113】
II.4. 試験#2の計画
別の試験では、インフルエンザA/H1N1ヴィロソームの新調製物の免疫原性について感作マウスモデルを使って調べた。先の試験と同様に、0日目に、不活化三価全インフルエンザウイルス(A/New Caledonia H1N1、A/Panama H3N2、およびB/Shangdong)を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。42日目に、動物にワクチンを接種した:
- グループA: (三価スプリットワクチン対照): 三価スプリットワクチン(上記組成を参照)の株あたり1.5μg(HA)−いわゆる「プレーン」
- グループB: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V3−いわゆる「精製V3」
- グループC: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V3+5μg QS21−いわゆる「精製V3+QS21」
- グループD: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V4−いわゆる「精製V4」
- グループE: 1.5μg HA (A/New Caledonia H1N1)を含む一価ヴィロソーム調製物V4+5μg QS21−いわゆる「精製V4+QS21」
【0114】
グループB〜Eのマウスに注射したヴィロソームは、下記の方法(II.5参照)に従って調製した。それらの組成は次のとおりである:
V3: 1850μg PL/ 409μg Chol/ 45μg HA
V4: 1200μg PL/ 127μg Chol/ 45μg HA
【0115】
II.5. ヴィロソームの調製
II.5.1. V3調製物の説明
526μg/mLのHAおよび1615μg/mLの総タンパク質を含有する50mLのBPL不活化A/New Caledonia/20/99全ウイルスを60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を捨てる。PBS pH7.4中の500mg/mLのSarcosyl(登録商標)をペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。PBS pH7.4も加えて最終HA濃度を1mg/mLとする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁から剥がす。この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(いわゆるスプリット)をとっておく。
【0116】
以下の表3は、破砕後のHAおよびタンパク質について得られた収率を示す(HAはSRDで定量し、タンパク質はCompat-AbleTM(Pierce社、参照番号: 23215)で処理してからPierceキット23225で定量する)。HA:タンパク質比は、スプリットが得られたことを示している。
【表3】
【0117】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(133mg)とコレステロール(33mg)を丸底フラスコに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる。乾燥した脂質薄膜を5.8mLのスプリットにより再構成する。さらにPBS pH7.4(4.2mL)も加えて最終容量を10mL、最終HA濃度を600μg/mLとする。フラスコを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。この段階で、最終的なDOPC/コレステロール/HAの組成は1000/250/45となる。その後、混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。
【0118】
図7は、HA、リン脂質(PL)およびコレステロールの収率を示す。それらは100%に近い。
【0119】
次いで、スライドAライザー透析カセット(容量3〜12ml)(10000 MWCO、Pierce #66810)での透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。タンパク質(Lowry法)、HA (SRDによる)、PL (MPR2キット)、およびコレステロール(Boehringer Mannheimキット)の含有量を測定する。得られた収率を図8にまとめて示す。97nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.2であった。
【0120】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:数本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに500μLのサンプルを入れる。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、T°10℃)。その後1mLの画分を最上部から集める(F1は該勾配の最上部の第1画分であり、F12は該勾配の最下部の画分である)。Count Rate(CR)(散乱光子の数である)を測定し(図9)、これは粒子がどこに存在するかを示す。大部分の粒子は画分1(F1)だけでなく、画分F2〜F4にも存在する。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこれらの画分に存在することを示す。画分F1〜F3を一緒にプールし(=プールF1,2,3またはViro3−精製V3)、PBS pH7.4に対して透析してショ糖を除去する。HA、タンパク質、リン脂質およびコレステロールを測定する。
【0121】
プールF1,2,3の全体的な収率(全ウイルスからプールF1,2,3まで)ならびに最終組成を表4に示す。
【表4】
【0122】
II.5.2. V4調製物の説明
526μg/mLのHAと1615μg/mLの総タンパク質を含有する50mLのBPL不活化A/New Caledonia/20/99全ウイルスを60,000g、20℃で1時間遠心分離する。上清を捨てる。PBS pH7.4中の500mg/mLのSarcosyl(登録商標)をペレットに添加して最終的な界面活性剤:タンパク質比を10(w/w)とする。PBS pH7.4も加えて最終HA濃度を1mg/mLとする。ペレットを細かくすり砕いてバイアル壁から剥がす。その後この混合物を室温で2時間振とう(オービタルシェーカー)する。100,000gでの遠心分離を20℃で1時間行う。上清(スプリットとも呼ばれる)をとっておく。
【0123】
以下の表5は、破砕後のHAおよびタンパク質について得られた収率を示す(HAはSRDで定量し、タンパク質はCompat-AbleTM(Pierce社、参照番号: 23215)で処理してからPierceキット23225で定量する)。HA:タンパク質比は、スプリットが得られたことを示している。
【表5】
【0124】
並行して、クロロホルム中に可溶化したDOPC(66.6mg)、コレステロール(16.6mg)およびSarcosyl(登録商標) (66.6mg)を丸底フラスコに入れて混合し、クロロホルムを蒸発させる。乾燥した脂質薄膜を5.8mLのスプリット調製物により再構成する。さらにPBS pH7.4(4.2mL)も加えて最終容量を10mL、最終HA濃度を600μg/mLとする。フラスコを室温で3時間振とう(オービタルシェーカー)して混合ミセルを形成させる。この段階で、最終的なDOPC/コレステロール/HAの組成は500/125/45となる。
【0125】
その後、混合物を0.2μmフィルター(Millex-GV; 0.22μmフィルターユニット; 参照番号: SLGV013SL)で濾過する。濾過後の収率は100%(HA、タンパク質、PL、コレステロール)に近い。次いで、スライドAライザー透析カセット(容量3〜12ml)(10000 MWCO、Pierce #66810)での透析をPBS pH7.4に対して3日間行い、その間にバッファーを3回交換する。タンパク質(Lowry法)、HA (SRDによる)、PL (MPR2キット)、およびコレステロール(Boehringer Mannheimキット)の含有量を測定する。得られた収率を図10にまとめて示す。88nmのサイズ(Zetasizer 3000HSを用いて測定)が得られ、多分散度は0.16であった。
【0126】
精製工程は5〜45%ショ糖勾配で行う:数本のチューブ(14×89mm Ultra Clearチューブ)に調製し、そこに500μLのサンプルを重層する。ショ糖勾配に17時間かける(SW41Tiローター、34000rpm、T°10℃)。その後1mLの画分を最上部から集める(F1は該勾配の最上部の第1画分であり、F12は該勾配の最下部の画分である)。Count Rate(CR)を測定し(Zetasizer3000HSにより測定)、粒子は画分F1〜F4に存在することを示す。SDS-PAGEゲルも行うが、これはHAがやはりこれらの画分に存在することを示す。
【0127】
画分1〜4を一緒にプールし(=Viro4−精製V4)、PBS pH7.4に対して透析してショ糖を除去する。HA、リン脂質およびコレステロールを測定する。精製Viro4の全体的な収率(全ウイルスから精製Viro4までの収率)ならびに最終組成を表6にまとめて示す。
【表6】
【0128】
精製ヴィロソームにアジュバントQS21を添加する(最終容量500μL中に45μgのHA、50μgのQS21、127μgのコレステロール)。最終製剤のサイズは79nmである。
【0129】
II.5.3. マウスに投与する前の製剤
注射用の水と10倍濃縮PBS(10倍希釈後にPBS pH7.4となる)を室温で一緒に混合する。ヴィロソーム中のHA 15μgを添加し、穏やかに10分間混合する。次いでH2O中のQS21 50μgを添加し、この製剤を穏やかに15分間振とうする。
【0130】
V3ヴィロソームの最終組成は、500μlあたり15μg HA、50μg QS21、136μg コレステロール、および617μg DOPCである。最終製剤のサイズを測定すると(Zetasizer 3000HS)、平均88nmで、多分散度0.16である。このサイズは4℃で7日間保存した後でも安定している。
【0131】
II.6. in vivo試験#2
ワクチン接種前(42日目)とワクチン接種の14日後(56日目)に動物から採血する。赤血球凝集阻害抗体(HI)応答を標準方法 (Dowdleら, 1979. Influenza Viruses. In: Diagnostic procedures for viral, rickettsial, and chlamydial infections. American Public Health Association, Washington, D.C. pp 585-609) で測定し、幾何平均抗体価を図5(抗A/New Caledonia H1N1)に示す。
【0132】
この試験では、両H1N1ヴィロソーム調製物の免疫原性はスプリットプレーンワクチンの免疫原性とほぼ同様であったが、これらの製剤にQS21を添加すると、ヴィロソームに基づく製剤に対する抗体応答が少なくとも2倍増強された。免疫原性はQS21アジュバントの添加により増加したものの、試験中に観察された反応性プロファイルには差異がなかった。要するに、新規QS21アジュバント添加ヴィロソーム製剤は、許容される反応性プロファイルを維持しつつ、非経口的に投与されたインフルエンザワクチンの免疫原性に関して利点を提供する。
【0133】
実施例III−ヘマグルチニン(HA)含有量の測定に用いるSRD法
ガラスプレート(12.4〜10.0cm)に、NIBSCにより推奨される濃度の抗インフルエンザHA血清を含有するアガロースゲルをコーティングする。ゲルが固化してから、アガロース内に72のサンプルウェル(3mm Φ)をパンチする。標準とサンプルの適当な希釈液10μLをウェルに入れる。このプレートを加湿チャンバー内で室温(20〜25℃)にて24時間インキュベートする。その後、プレートをNaCl溶液に一晩浸し、蒸留水で手短に洗浄する。その後ゲルを押し付けて乾かす。完全に乾いたら、プレートをクーマシーブリリアントブルー溶液で10分間染色し、明確な染色ゾーンが見えるようになるまでメタノールと酢酸の混合液で2回脱染色する。プレートを乾かした後、抗原ウェルを囲む染色ゾーンの直径を直角の二方向で測定する。あるいはまた、表面を測定する器具を用いてもよい。表面に対する抗原希釈液の用量応答曲線を作成し、結果を標準的な勾配比法(slope-ratio assay)に従って求める (Finney, D.J. (1952). Statistical Methods in Biological Assay. London: Griffin, Quoted in: Wood, JMら (1977). J. Biol. Standard. 5, 237-247)。
【0134】
実施例IV−インフルエンザ特異的血清抗体の赤血球凝集阻害(HAI)活性
血清(50μl)を200μlのRDE(受容体破壊酵素)で37℃にて16時間処理する。この反応を150μlの2.5%クエン酸Naにより停止させ、血清を56℃で30分間不活性化する。100μlのPBSを添加して1:10の希釈液を調製する。次いで、25μlの血清(1:10)を25μlのPBSで希釈することにより2倍希釈系列を96ウェルプレート(V底)に調製する。25μlの基準抗原を、25μlあたり4赤血球凝集単位の濃度で各ウェルに加える。抗原と抗血清希釈液をマイクロタイタープレートシェーカーにより混合し、室温で60分間インキュベートする。次に、50μlのニワトリ赤血球(RBC) (0.5%)を加え、RBCを室温で1時間沈降させる。HAI抗体価は、ウイルスにより誘発された赤血球凝集を完全に阻害する最後の血清希釈率の逆数に相当する。
【0135】
実施例V−3種のインフルエンザワクチン製剤を用いた免疫原性比較試験
このin vivo試験では、古典的なスプリットワクチンの免疫原性を、市販のInflexal V(登録商標)ワクチン(A/New Caledonia/20/99様、A/Moscow/10/99様、B/Sichuan/379/99様の株を含むBerna 2001-2002組成物)と比較し、さらに、解毒型(すなわち、抑制型)QS21(いわゆるDQ型、参照することにより本明細書に組み入れるWO 96/33739を参照)をアジュバントとして添加したInflexal V(登録商標)ワクチンと比較した。
【0136】
この免疫原性試験では、0日目に、5μgの不活化三価全インフルエンザウイルス (A/New Caledonia/20/99 H1N1、A/Panama/2007/99 H3N2、B/Johannesburg/5/99) を鼻腔内経路で投与してマウスを感作した。28日目に、動物に筋肉内経路で古典的スプリットワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)、Inflexal V (Berna)ヴィロソームワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)、または5μgの解毒QS21アジュバントを添加したInflexal V (Berna)ヴィロソームワクチン(株あたり1.5μgのHA含有量)を接種した。Inflexal V(登録商標)−QS21製剤は次のように調製する。すなわち、株あたり15μgのHAを含有するInflexal V(登録商標)ワクチン500μlに、DQ型のQS21(DQ: 50μg QS21、250μg コレステロール、1000μg DOPC)を50μg添加する。
【0137】
ワクチン接種後14日目にHI抗体応答(実施例IVに記載の方法により測定)を測定し、A/Panama株について見られた結果を図11に示す。簡単に述べると、ワクチン接種により誘導されたHI抗体価は、スプリットワクチンおよびアジュバント無添加Bernaヴィロソームワクチンにおいてほぼ似通っていた。しかし、解毒型QS21を添加すると、HI抗体価が2倍程度増加した。同様の結果が他の2つの株についても得られた。
【0138】
この試験を繰り返しても、同じ結果が得られた。
【0139】
実施例VI−解毒型QS21アジュバントを添加した市販のヴィロソームInflexal V(登録商標)の溶解活性
Bernaから市販されているInflexal V(登録商標)2001/2002組成物(A/New Caledonia/20/99様、A/Moscow/10/99様、B/Sichuan/379/99様の株を含む)を使用したが、これは最終容量500μl中に15μgずつの各株を含有する。
【0140】
この試験では、DQまたはAS01(WO96/33739に記載される)と呼ばれる2種類の解毒型QS21を使用した。DQまたはAS01は、QS21量が約100μg/mlまたは20μg/ml(すなわち、0.5mL用量あたり約50または10μg)となるようにヴィロソーム調製物に添加した。表7に調製した製剤をまとめて示す。
【表7】
【0141】
グループ1および2では最終QS21濃度が91μg/ml (50μg/550μl)であり、グループ3および4では18.2μg/ml (10μg/550μl)の濃度である。
【0142】
QS21に関係した溶解活性は赤血球を用いて試験し、溶解(もし溶解が起これば)を以下に詳述する方法に従って540nmでのODにより測定する。血液を低速の遠心分離にかけ、続いて赤血球をPBS中に再懸濁させてもとの容量とすることにより赤血球を3回洗浄する。洗浄後、赤血球ペレットをPBSで10倍に希釈する。QS21標準を調製する: 1、2.5、および5μgのQS21をPBSと混合して最終容量を900μlとする。試験すべきサンプルについては、約2μgのQS21の等量を含む容量をとり、PBSを加えて900μlとする。100μlの赤血球(10倍希釈)を各標準およびサンプルに添加する。チューブをごく穏やかに振とうさせ、室温に30分間放置する。その後チューブを2000rpmで5分間遠心分離する(CS-6R遠心分離機-Beckman)。上清のODを540nmで読み取る。結果を表8に示す。
【表8】
【0143】
表8に示すように、解毒型QS21を含むサンプルで観察されたODは、ブランク(PBS対照)で得られたODに等しかった。このことは、溶解活性が一切検出されないことを意味する。QS21はこれらの製剤中で解毒されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】界面活性剤としてSarcosyl(登録商標)を用いたヴィロソームの調製方法の概略を表す。
【図2】Sarcosyl(登録商標)による破砕方法での総タンパク質とHAの収量を示す。
【図3】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/New Caledonia H1N1赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図4】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/Panama H3N2赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図5】各種ヴィロソーム製剤で免疫したマウスにおける抗インフルエンザA/New Caledonia H1N1赤血球凝集阻害抗体応答を示す。
【図6】ショ糖勾配後に回収した画分のCount rate測定を示す。
【図7】0.2μmで濾過した後のHA、リン脂質およびコレステロールの回収率を示す。
【図8】透析後のタンパク質、HA、リン脂質およびコレステロールの収率を示す。
【図9】ショ糖勾配後に回収した画分のCount Rate(CR)を示す。
【図10】透析後のタンパク質、HA、コレステロールおよびリン脂質の収率を示す。
【図11】QS21アジュバントを添加したおよび添加してないヴィロソームワクチンの免疫原性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープウイルス由来の抗原を含む該ウイルスからのヴィロソーム調製物、およびサポニンアジュバントを含有する組成物。
【請求項2】
サポニンが免疫活性サポニン画分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
免疫活性サポニン画分がQS21である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
外因性ステロールをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
外因性ステロールがシトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ステロール/免疫活性サポニン画分がリポソーム構造を形成している、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
ステロール/免疫活性サポニン画分がISCOM構造を形成している、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項8】
ヴィロソーム調製物が外因性のリン脂質をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
外因性リン脂質がホスファチジルコリンまたはその誘導体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
エンベロープウイルスが、フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
インフルエンザヴィロソーム調製物が抗原としてインフルエンザウイルスの少なくとも1つの表面抗原を含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
インフルエンザ表面抗原がヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
追加のアジュバントをさらに含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
追加のアジュバントが、Toll様受容体アゴニスト、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せからなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
Toll様受容体アゴニストが、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニストからなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物の製造方法であって、全エンベロープウイルスをイオン性界面活性剤で処理し、ペレットを上清から分離し、清澄化した上清にリン脂質またはステロールまたはリン脂質とステロールの混合物を添加してヴィロソームを再構成させ、界面活性剤を除去することを含んでなる、上記方法。
【請求項18】
イオン性界面活性剤がラウリルサルコシネートである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
外因性ステロールがコレステロールである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
外因性リン脂質がホスファチジルコリンまたはその誘導体である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ホスファチジルコリン:コレステロールの比が4:1(w/w)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ホスファチジルコリン:コレステロールの比が1:1(w/w)である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
界面活性剤を透析または限外濾過により除去する、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
エンベロープウイルスが、フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)からなる群より選択される、請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法により得られる、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物。
【請求項27】
エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物をサポニンアジュバントと混合することを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項28】
ヴィロソーム調製物が請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法により製造される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ヴィロソーム調製物が請求項1〜16のいずれか1項に記載されたものである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
医療において使用するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
エンベロープウイルスが原因の感染または疾患を、それに罹りやすい個体において予防するための医薬の製造における、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物およびサポニンアジュバントの使用。
【請求項32】
個体におけるエンベロープウイルスが原因の感染または疾患を予防する方法であって、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物およびサポニンアジュバントを含有する免疫原性組成物を個体に投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項33】
個体が高齢患者である、請求項31に記載の使用または請求項30に記載の方法。
【請求項34】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項31もしくは33に記載の使用または請求項32もしくは33に記載の方法。
【請求項1】
エンベロープウイルス由来の抗原を含む該ウイルスからのヴィロソーム調製物、およびサポニンアジュバントを含有する組成物。
【請求項2】
サポニンが免疫活性サポニン画分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
免疫活性サポニン画分がQS21である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
外因性ステロールをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
外因性ステロールがシトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、およびコレステロールからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ステロール/免疫活性サポニン画分がリポソーム構造を形成している、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
ステロール/免疫活性サポニン画分がISCOM構造を形成している、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項8】
ヴィロソーム調製物が外因性のリン脂質をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
外因性リン脂質がホスファチジルコリンまたはその誘導体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
エンベロープウイルスが、フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
インフルエンザヴィロソーム調製物が抗原としてインフルエンザウイルスの少なくとも1つの表面抗原を含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
インフルエンザ表面抗原がヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
追加のアジュバントをさらに含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
追加のアジュバントが、Toll様受容体アゴニスト、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、および水中油型エマルジョン、または前記アジュバントの2種以上の組合せからなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
Toll様受容体アゴニストが、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニスト、およびToll様受容体9アゴニストからなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物の製造方法であって、全エンベロープウイルスをイオン性界面活性剤で処理し、ペレットを上清から分離し、清澄化した上清にリン脂質またはステロールまたはリン脂質とステロールの混合物を添加してヴィロソームを再構成させ、界面活性剤を除去することを含んでなる、上記方法。
【請求項18】
イオン性界面活性剤がラウリルサルコシネートである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
外因性ステロールがコレステロールである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
外因性リン脂質がホスファチジルコリンまたはその誘導体である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ホスファチジルコリン:コレステロールの比が4:1(w/w)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ホスファチジルコリン:コレステロールの比が1:1(w/w)である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
界面活性剤を透析または限外濾過により除去する、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
エンベロープウイルスが、フラビウイルス科(すなわち、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルスHEV、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス)、ポックスウイルス科(すなわち、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス)、レトロウイルス科(すなわち、免疫不全ウイルスHIV/SIV)、パラミクソウイルス科(すなわち、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、呼吸器多核体ウイルスRSV)、およびオルソミクソウイルス科(すなわち、インフルエンザウイルス)からなる群より選択される、請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法により得られる、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物。
【請求項27】
エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物をサポニンアジュバントと混合することを含んでなる、免疫原性組成物の製造方法。
【請求項28】
ヴィロソーム調製物が請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法により製造される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ヴィロソーム調製物が請求項1〜16のいずれか1項に記載されたものである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
医療において使用するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
エンベロープウイルスが原因の感染または疾患を、それに罹りやすい個体において予防するための医薬の製造における、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物およびサポニンアジュバントの使用。
【請求項32】
個体におけるエンベロープウイルスが原因の感染または疾患を予防する方法であって、エンベロープウイルス由来の抗原を含むヴィロソーム調製物およびサポニンアジュバントを含有する免疫原性組成物を個体に投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項33】
個体が高齢患者である、請求項31に記載の使用または請求項30に記載の方法。
【請求項34】
エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスまたはRSVである、請求項31もしくは33に記載の使用または請求項32もしくは33に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−500984(P2008−500984A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513828(P2007−513828)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005786
【国際公開番号】WO2005/117958
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005786
【国際公開番号】WO2005/117958
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】
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