説明

一つ以上の電極を含むインプラント及び関連する挿入器具

本発明は解剖学的構造体、特に骨構造体に配置することが可能なインプラント1に関し、絶縁体6により離間された少なくとも二つの導電性電極4,5であって、同インプラントの表面と同一平面にある電極4,5を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的な整形外科の分野に関し、より詳細には、例えば、脊柱の矯正及び安定化又は骨折整復を可能にする装置を配置するためのスクリュー、ピン等のインプラントのようなインプラントの挿入に関する。
【背景技術】
【0002】
上記インプラントは骨構造体に配置するように設計されている。
これらのインプラントを挿入する際に医療従事者が感じる主たる困難な作業の一つは、それらを正確に配置することである。
【0003】
インプラントの配置が不正確であると満足のゆく治療効果が得られないのみならず、患者に疼痛、麻痺、出血等が起こり、多くの場合は更なる外科的な手術を必要とし、或いは場合によっては回復不能な損傷をきたすこともあり得る。
【0004】
従って、医療従事者が挿入時に、インプラントの挿入される経路を追跡するのみならず同インプラントを案内可能とすることが必要である。
解剖学的構造、特に骨構造体において器具の進入経路を追跡することが可能な装置は従来から公知である。
【0005】
特に、本出願人によって出願された特許出願である特許文献1は、貫通時の電気的インピーダンスの差を測定することにより、椎骨への刺入器具の貫通経路を追跡することが可能な装置であって、それにより、同器具の先端が骨皮質から出て、軟組織領域(骨髄、神経、組織)へ侵入しているか否かを常に医療従事者が知り得ることのできる装置を提供している。この場合、医療従事者は骨皮質へ戻るために刺入器具の経路を修正することができる。従って、そのような装置は予め穿孔された孔へ刺入する際に同骨皮質における亀裂の形成を検出することが可能となる。この目的のために、同特許文献1に記載された追跡調査装置は、神経筋刺激を提供することのできる少なくとも一つの電気刺激装置を含み、同装置は、少なくとも二つの電極に接続されており、同電極のうちの少なくとも一方は刺入装置の一方の先端部に配置されており、同装置はまた少なくとも二つの電極に接続された少なくとも一つの誘導器を含み、更に同装置は、同誘導器がインピーダンスの変化を検出した際に信号を生成することが可能な少なくとも一つの信号発生装置を含む。
【0006】
しかしながら、そのような装置は、予め穿孔された孔へのインプラントの挿入を追従調査することができない。
【特許文献1】フランス国特許出願公開第2835732号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インプラントの骨構造体への挿入時に同インプラントの経路をたどり、かつ案内することが可能な一つの器具を提供することを目的としており、同骨構造体は、インプラントの挿入時或いはその前の操作時に同インプラントにより直接穿孔される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、広い意味において、解剖学的構造、特に骨構造体への挿入を意図されたインプラントに関する。
本発明は、同インプラントが絶縁体により互いに離間されている少なくとも二つの電極を有し、同電極は、同インプラントの解剖学的な構造への挿入時に同インプラントを追跡調査し、かつ案内するために同インプラントの表面と同一平面となっていることを特徴とする。
【0009】
同電極は、i)同電極のうちの一方が同インプラントの外周面と少なくとも部分的に同一平面にあるとともに、ii)他方の電極が同インプラントの外周面と選択的に同一平面にある、ように配置されていると好ましい。
【0010】
同電極は、i)同電極のうちの一方が同インプラントの外周面を少なくとも部分的に形成し、ii)同インプラントの内側にある他方の電極が同インプラントの先端面と選択的に同一平面にある、ように配置されていると有利である。
【0011】
そのように構成されたインプラントは、以下に述べる適合された挿入器具を用いて配置された場合、解剖学的構造体への挿入時にその進行経路を追跡することが可能である。
外部電極は、ほぼ管状であると好ましい。
【0012】
同様に、内部電極は、ほぼ管状であると有利である。
同電極は、同心円状または偏心していると有利である。
本発明の好ましい実施形態において、電極は取り外し可能とすることができる。
【0013】
同絶縁体もまた取り外し可能であると有利である。この場合、同絶縁体は、内部電極と同時に取り外されるか、又は同内部電極が取り外された後に取り外される。
本発明はまた、上述の取り外し可能な部分、即ち内部電極と、選択的に絶縁体とが備えてられていないインプラントに関する。この場合、その内部を貫通する通路を有するインプラントは、同インプラントの外周面の少なくとも一部と同一平面上にある少なくとも一つの電極を含み、同電極は同インプラントの側壁の全て又は一部を構成する。
【0014】
同インプラントは好ましくは管状の電極から構成されている。
同インプラントは、管状の絶縁体を含むと有利である。
同通路は同インプラントを長手方向に貫通すると有利である。
【0015】
同通路は中央通路であると有利である。
本発明はまた、解剖学的構造体、特に解剖学的な骨構造体に上述のインプラントを挿入するための挿入器具に関する。この目的のために、同器具は少なくとも二つの電極に電力を供給する電源と、同電極間のインピーダンスを測定するための手段と、に接続されている。
【0016】
上記したような取り外し可能な部分を備えていないインプラントの場合、同器具は内部長手部を含む。この長手部はインプラントの通路に収容されるべくデザインされている。インプラントが絶縁体を備えているか否かに応じて、同長手部は電極又は絶縁体により包囲される電極を構成する。
【0017】
同器具の長手部は取り外し可能であると有利である。従って、長手部を備えていない場合、同器具は、絶縁体により外部電極から離間された内部電極を含むインプラントと接触するように構成されている。
【0018】
同器具は、同インプラントが同器具と接触した場合に、一つ又は複数の電極と電気的に接触可能な手段を含む。電気的な接触は、内側にて、及び/又は外側にて実施され得る。従って、内側にて接触する場合、同挿入器具は同インプラントの内部電極と接触するべく配置された電気接触要素を含み、外側にて接触する場合、同器具は同インプラントの外周電極と接触するように配置された電気接触要素を含む。
【0019】
同器具は、同インプラントの一部を受承するための凹部並びに同インプラントを同器具の中央に収容するための手段を含むと有利である。
同挿入器具は同インプラントを機械的に駆動する手段を含むと有利である。
【0020】
インプラント及び器具がそのように構成されているので、骨構造体への挿入時に、電極により生成された電気信号を分析することによりインプラントの進入経路を追跡することができる。
【0021】
器具及びインプラントで構成されたシステムの先端が骨構造体に形成された亀裂と接触すると、インピーダンスが急激に低下する。この情報を基に、医療従事者は骨構造体内にてインプラントを再配置するために同インプラントに与えられた経路を修正する。インプラントが最終的に装着されるまで、このような工程が繰り返される。
【0022】
本発明は、添付された図面を参照して、例示のみの目的にて提供された本発明の第一の実施形態の詳細な説明により更に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の第一の実施形態に従うインプラント1の断面図を示す。
本発明の本実施形態において、椎弓根スクリューのようなインプラント1は尖形の先端部13を有するねじ切りされた円筒状本体2を有し、他方の端部には頭部3が設けられている。本発明がこのインプラントの形態に制限されるものではないことは明らかである。とはいえ、この場合、その構成が簡単であることから、本発明の記載を容易にするために当該インプラントの形態が選択されている。
【0024】
同インプラント1の本体2は絶縁体6により離間された二つの導電部を含む。
より詳細には、導電部の各々は電極4,5から構成されており、第一の電極4は同インプラント1の側壁を形成し(外部電極)、それにより同外部電極は、同インプラント1の本体2の側面17及び先端面18の一部と同一平面となり、第二の電極5は同インプラントの内側部を構成し(内部電極)、同インプラント1の本体2の先端面18と選択的に同一平面となる。
【0025】
円形の断面を備えたロッドの形状である内部電極5は、同インプラントを貫通していると有利である。同内部電極5は絶縁体6に包囲されており、同絶縁体6は外部電極4に包囲されている。
【0026】
本発明の好ましい実施形態に従って、同電極4,5は同心円状となるように配置されている。これは本発明の特殊な実施形態であることは明らかであり、同インプラント1の本体2が例えば二つの偏心電極から構成されていてもよいことは理解される。
【0027】
そのようなインプラント1を骨構造体に挿入するための器具との電気的な接触を容易にするために、内部電極5及び絶縁体6は同インプラント1の頭部3を貫通して延びている。
【0028】
本発明の特に有利な実施形態に従って、同インプラント1は取り外し可能な部分14を含む。この様式において、通常、インプラント1が骨構造体に配置されて、取り外し可能な部分14が取り外されると、その長手軸をたどる通路がインプラント1内に形成される(図2を参照)。
【0029】
取り外し可能な部分14は好ましくは内部電極5と絶縁体6とからなる。しかしながら、同取り外し可能な部分14が取り外される際、インプラント1の取り外し可能な部分14が内部電極5のみから構成され、絶縁体6をインプラント1に残したままの構成とすることが可能であることは当業者には明らかであろう。
【0030】
上記実施例における内部電極及び絶縁体のように、インプラントのある部分を取り外すことにより、患者の身体に移植された材料の幾らかのタイプのものが残されたままとなることが回避できる。
【0031】
加えて、患者の体内にとどまる材料のみがいわゆる「移植可能な」材料である必要があるので、インプラントが骨構造体に配置された際に取り外される同インプラントの部分はその全体を生体適合性材料から形成することができる。生体適合性材料は移植可能な材料よりも安価であるために、取り外し可能な部分を含むインプラントは取り外し可能な部分を備えていないインプラントよりも製造コストを低く抑えることができるという利点を有するであろう。
【0032】
図3は、インプラントを骨構造体に挿入するための器具11と、上述のインプラント1との間の電気的接触の簡略化した図を示す。図面を簡略化するために、同インプラント1と同器具11との実際の接触は示されていない。
【0033】
挿入器具11とインプラント1との間の電気的な接触は、同挿入器具11を構成する接続タブ12,19により提供され、内部接続タブ19は同インプラント1の内部電極5と接触し、外部接続タブ12の少なくとも一つは同インプラント1の外部電極4と接触する。
【0034】
加えて、インプラント1を骨構造体に挿入する際に同インプラント1の経路をたどり、かつ案内する必要があるので、挿入器具11の接続タブ12,19は同電極4,5の間のインピーダンスを測定するための手段(誘導器20)に接続されている。
【0035】
同誘導器20は警告装置(図示しない)と接続されていると有利であり、同警告装置は、誘導器20により測定された同電極4,5間のインピーダンスの変化を視認することを可能にする。これは例えば、インプラント1が骨構造体に進入する際にインピーダンスの変化を曲線にて追跡調査することのできるディスプレイスクリーンであり得る。
【0036】
図4は、本発明の別の形態に従うインプラント10と、同インプラント10を骨構造体に配置するための挿入器具11との断面図を示す。
同インプラント10と同器具11との協働動作の原理をより容易に理解するために、特に、挿入器具11とインプラント10をそれぞれ構成する要素を区別するために、同図は同インプラント10と同器具11との間の実際の協働動作は示されていない。
【0037】
一実施形態のこの例において、同インプラント10は尖状の先端部13を有するねじ切りされた導電性本体2を有する。
同インプラント10の管状本体2は、同インプラント10の本体2の一方の端部から他方の端部まで貫通する通路7を備えていると有利である。
【0038】
同インプラント10の本体2は、電極4から構成されていると有利である。
同インプラント10と接触するように意図されている挿入器具11は中央長手部9を備えた中空本体8から構成されており、同長手部9は、同インプラント10が同器具11と接触した場合に、同インプラント10の通路7内に収容されるように構成されている。
【0039】
同中央長手部9は絶縁体16で包囲された電極15から構成されていると有利である。長手部9が電極15のみで構成されており、同挿入器具11と接触するように意図されたインプラントが自身の絶縁体を含むことは明らかであろう。
【0040】
従って、骨構造体の挿入時に、同インプラント10は同器具11の端部に固定され、同器具11の長手部9は同インプラント10の通路7に挿入される。
同インプラント10の挿入の進入を追跡調査するために、電気的導通が確立されている。
【0041】
電気的接触は、同インプラント10を構成する電極4と接触する接続タブ12により有利に提供されている。
骨構造体内にインプラントを追跡調査及び案内することが可能な挿入器具11の電気的な部分のみを記載してきた。同挿入器具11が、操作可能な、例えばインプラントを回転させる、刺通することができる電動機のような機械的な駆動手段を含めることが可能であることは当業者には明らかである。
【0042】
本発明は、上記のように実施例によって記載してきた。本発明の文脈を逸脱することなく、本発明の異なる変更を行うことが可能であることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に従うインプラントの断面図を示す。
【図2】図1のインプラントの取り外し可能な部分が取り外された断面図及びインプラントから取り外された取り外し可能な部分の断面図を示す。
【図3】図1のインプラントと接触した状態の挿入器具の概略図を示す。
【図4】本発明の第二の実施形態に従うインプラントの断面図を示し、同インプラントは挿入器具と接触している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的な構造体、特に骨構造体に配置されるためのインプラント(1)であって、前記インプラント(1)は、
絶縁体(6)によって離間された少なくとも二つの電極(4,5)を備え、
前記電極(4,5)は、前記解剖学的構造体への前記インプラント(1)の挿入時に、同インプラント(1)を追跡調査し、かつ案内することが可能となるように、同インプラント(1)の表面と同一平面上にあることを特徴とする、インプラント(1)。
【請求項2】
前記電極(4,5)は、
i)前記電極のうちの一方の電極(4)が前記インプラント(1)の外周面と少なくとも部分的に同一平面となり、かつ
ii)他方の電極(5)が前記インプラント(1)の外周面と選択的に同一平面となるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のインプラント(1)。
【請求項3】
前記電極(4,5)は、
i)前記電極のうちの一方の電極(4)が前記インプラント(1)の外周面を少なくとも部分的に形成し、かつ
ii)前記インプラント(1)の内側にある他方の電極(5)が前記インプラント(1)の先端面と選択的に同一平面となるように配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプラント(1)。
【請求項4】
前記外部電極(4)はほぼ管状であることを特徴とする、請求項3に記載のインプラント(1)。
【請求項5】
前記内部電極(5)はほぼ管状であることを特徴とする、請求項3又は4に記載のインプラント(1)。
【請求項6】
前記電極(4,5)は同心円状にあることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインプラント(1)。
【請求項7】
前記電極(4,5)は偏心状にあることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインプラント(1)。
【請求項8】
前記一つ又は複数の電極は取り外し可能であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインプラント(1)。
【請求項9】
前記絶縁体(6)は取り外し可能であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインプラント(1)。
【請求項10】
解剖学的な構造体、特に骨構造体に配置されるためのインプラント(10)であって、前記インプラント(10)は、
少なくとも一つの電極(5)を含み、かつ同電極(5)は前記インプラント(10)の外周面の少なくとも一部と同一平面にあり、かつ同インプラント(10)は通路(7)を含むことを特徴とする、インプラント(10)。
【請求項11】
前記インプラント(10)は管状電極(5)から構成されることを特徴とする、請求項10に記載のインプラント(10)。
【請求項12】
前記インプラント(10)は管状絶縁体(6)を含むことを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載のインプラント(10)。
【請求項13】
前記通路(7)は前記インプラント(10)の長手方向に貫通していることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載のインプラント(10)。
【請求項14】
前記通路(7)は中心にあることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれか一項に記載のインプラント(10)。
【請求項15】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のインプラント(1)又は請求項10乃至14のいずれか一項に記載のインプラント(10)を解剖学的構造体、特に解剖学的な骨構造体に挿入するための挿入器具(11)であって、少なくとも二つの電極に電力を供給する電力源と、前記電極間のインピーダンスを測定するための手段とに接続されている器具(11)において、前記器具(11)は、
前記インプラント(10)の通路に収容される内部長手部(9)を含み、かつ前記長手部(9)は電極(15)を構成することを特徴とする、器具(11)。
【請求項16】
前記電極(15)は絶縁体(16)により包囲されていることを特徴とする、請求項15に記載の器具(11)。
【請求項17】
前記器具(11)の長手部(9)は取り外し可能であることを特徴とする、請求項15又は請求項16に記載の器具(11)。
【請求項18】
前記器具(11)は、前記インプラント(1,10)が前記器具(11)と接触する際に、前記一つ又は複数の電極(4,5,15)と電気的に接触可能な手段を含むことを特徴とする、請求項15乃至17のいずれか一項に記載の器具(11)。
【請求項19】
前記器具(11)は、前記インプラント(1,10)の一部を受承するための凹部と、前記器具(11)の中央に前記インプラント(1,10)を収容することを可能にするための手段と、を含むことを特徴とする、請求項15乃至18のいずれか一項に記載の器具(11)。
【請求項20】
前記器具(11)は、前記インプラント(1,10)を機械的に駆動するための手段を含むことを特徴とする、請求項15乃至19のいずれか一項に記載の器具(11)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−510549(P2008−510549A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528926(P2007−528926)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002143
【国際公開番号】WO2006/024801
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505436829)
【氏名又は名称原語表記】SPINEVISION
【Fターム(参考)】