説明

一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系および複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のためのその使用

本発明は、2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)を含有し、その大部分または全部が同一構成成分から成り、かつ、それぞれ少なくとも2種の互いに別個に貯蔵された成分を含有する、一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系に関し、その際、(I)少なくとも1種の成分が、(i.1)イソシアネート反応性官能基および(i.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する、反応性官能基、(i.3)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または(i.4) 三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる調整された構造単位を含有し、かつ、(II)少なくとも1種の成分が、(ii.1)遊離イソシアネート基、(ii.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する、反応性官能基、および(ii.3)三次元架橋の構成成分として、そのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または(ii.4)三次元架橋の構成成分として、そのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位を含有し、その際、デュアル−キュア−被覆材料系(B)が、デュアルキュア被覆材料系(A)に対して、(a)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する反応性官能基を合算してより少ない量、および/または、(b)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位を合算してより多い量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、DE 10 2004 026 423.6-43の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系に関する。さらに本発明は、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆系の、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のためのその使用に関する。さらに本発明は、複雑に成形された三次元基材を、デュアル−キュア−被覆材料を用いて内側被覆および外側被覆するための新規方法に関する。特に、本発明は、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系を用いて、内側被覆および外側被覆された、複雑に成形された三次元基材に関する。
【0003】
複雑に成形された三次元基材、たとえば自動車ボディー、特に乗用車ボディーの高価な被覆または塗装は、当然のことながら費用がかかり、かつ多くの技術的問題を有する。したがって、自動車ボディー、特に乗用車ボディーの着色塗料および/または効果塗料は、今日では好ましくは複数個の塗料相から成り、この場合、この相は、重ねて塗布され、かつ種々の性質を示す。
【0004】
たとえば、連続的に、電気的に析出させた電着塗装(ETL)をプライマーとして、プライマー・サーフェーサーまたはストンガードプライマー、ベースラッカーおよびクリアラッカーを、基材に塗布する。これに関して、ETLは、特に薄板の腐食保護に役立つ。これは、当該技術分野では、しばしばプライマーと呼称されている。プライマー・サーフェーサーは、基材のでこぼこをカバーするのに役立ち、かつ、その弾性に基づき、ストンガード性を付与する。場合によっては、プライマー・サーフェーサーは、さらに隠蔽力の強化のためおよび塗料の色調を深めるために使用されてもよい。ベースラッカーは、色および/または光学的効果を調整する。クリアラッカーは、光学的効果の強化さらには機械的および化学的ダメージからの塗膜の保護に役立つ。ベースラッカーおよびクリアーラッカーは、しばしば一緒になってトップコートと呼称される。補足的にはさらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Veriag, Stuttgart.New York, 1998, Seiten 49 und 51,Automobillackeに示されている。
【0005】
以下、これらの多層塗料系は、着色および/または効果多層塗料系と呼称する。
【0006】
近年、特に、熱硬化および化学線硬化可能なクリアラッカー材料から、クリアーラッカーが製造されている。ここで、化学線とは、以下、電磁気線、たとえば遠赤外線、可視光線、UV線またはX線またはγ−線、特にUV線、および粒子線、たとえば電子線、陽子線、α線、β線または中性子線、特に電子線であると理解される。熱硬化および化学線硬化の組み合わせは、当該技術分野においては、しばしばデュアル−キュア(Dual cure)と呼称する。
【0007】
デュアル−キュア−被覆材料、特にデュアル−キュア−クリアラッカー材料は、複雑に成形された三次元基材、たとえば車体、ラジエーターまたは電気コイル製品のシャドーゾーンにおいて本質的な利点を有するが、しかしながら最適であったり、特には完全なものではない。シャドーゾーンの化学線での暴露は、その使用技術特性プロフィールが、シャドーゾーン外の被覆に匹敵する被覆を提供する。これによって、シャドーゾーン中に存在する被覆は、たとえば、被覆された車体に、自動車の他の構成部品を取り付けるラインにおいて生じうる機械的および/または化学的影響によるダメージを、もはや受けることはない。
【0008】
さらに、化学線での硬化は、たとえば、デュアル−キュア−被覆材料系が、被覆された基材の温度感受性に基づいて、熱架橋反応の迅速な進行に必要とされる温度に加熱することができない場合には、不完全な熱硬化を補うことができる。
【0009】
デュアル−キュア−被覆材料および高価な着色および/または効果多層塗料系を製造するためのその使用は、たとえば特許出願DE 42 15 070 A 1. DE 198 18 735 A 1. DE 199 08 018 A 1. DE 199 30 665 A 1. DE 199 30 067 A 1. DE 199 30 664 A 1, DE 199 24 674 A 1, DE 199 20 799 A 1, DE 199 58 726 A 1. DE 199 61 926 A 1, DE 100 42 152 A 1. DE 100 47 989 A1, DE 100 55 549 A 1. DE 101 29 970 A 1. DE 102 02 565 A 1, DE 102 04 114 A 1. EP 0 928 800 A 1またはEP 0 952 170 A 1または特許 DE 101 29 660 C 1 から公知である。
【0010】
デュアル−キュア−被覆材料が確実に提供するあらゆる利点にもかかわらず、実際には、極めて複雑に成形された乗用車ボディーの被覆または塗装の際には、常にさらなる問題が生じる。したがって、しばしば前記目的におけるシャドーゾーン、たとえば、リアフラップおよびボンネットならびドアシル、トランクルームおよびドア内側およびウインドー内側での十分な照射は、ドア、フラップおよびボンネットを広く配置した場合であっても、望ましい範囲で可能ではない。したがって、十分な使用技術特性プロフィールは、シャドーゾーン中で熱架橋によって調整されるか、もしくは、もたらされるが、しかしながら、これは特に高い温度に暴露すべきではないプラスチックから構成されるボディー部品を塗装すべき場合には、問題を招きうる。いいかえれば、熱架橋が、十分ではない照射硬化の欠点を、必要な範囲で補うことができないという問題が生じる。
【0011】
この問題の可能な解決手段は、内側に特定の被覆材料(内側塗料)を使用することであり、この場合、これは、熱架橋の点で、特に反応性であるものである。この種の高反応性被覆系は、以前から公知であり、かつイソシアネート反応性基を有する常用の結合剤および架橋剤としてポリイソシアネートを含有する(二成分系)。これによって、シャドーゾーン中の被覆の使用技術特性プロフィールが、十分な照射量を有し、かつ熱硬化された範囲中の被覆の使用技術特性プロフィールに匹敵するよう、達成することができる。
【0012】
しかしながら、その後にボディーの範囲において、その内側塗料および外側塗料中で、たとえば、外側のための被覆材料中で重なり合う、重大な塗膜損傷が生じることが示された。これらは、特に、ウエット・オン・ウエット適用の際の内側塗料と外側塗料との不適合性によって生じるものである。これらの不適合性は、一の塗料のスプレーミストが、他の塗料の湿式フィルムにより排除されることを引き起こす。
【0013】
したがって本発明は、この課題に基づいて、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系を提供することに関し、この場合、この被覆材料系は、技術水準の欠点をもはや示すものでないばかりか、さらに複雑に成形された三次元基材、特に自動車ボディー、特に乗用車ボディーの、内側および外側で問題なくおこなわれ、かつ、さらに内側で、十分な照射用量で硬化させることができる外側の被覆の使用技術特性プロフィールに少なくとも匹敵する、使用技術特性プロフィールを示す被覆を提供する。これによって、内側の被覆(内側塗料)が、外側の被覆(外側塗料)と混ざりあう範囲において、もはや被覆の損傷を生じることはない(塗膜損傷)。
【0014】
したがって、少なくとも2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)を含有し、その大部分または全部が同一の構成成分から成り、かつ、それぞれ少なくとも2種の互いに別個に貯蔵された成分を含有する、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系において、この場合、この被覆材料系が
(I)少なくとも1種の成分が、
(i.1)イソシアネート反応性官能基および
(i.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する反応性官能基、
(i.3)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または
(i.4)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位
を含有し、かつ、
(II)少なくとも1種の成分が、
(ii.1)遊離イソシアネート基、
(ii.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する反応性官能基、
(ii.3)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または
(ii.4) 三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度を上昇させる、硬化させる構造単位、を含有し、かつ、その際、デュアル−キュア−被覆材料系(B)が、デュアル−キュア−被覆材料系(A)に対して、
(a)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する反応性官能基を合算してより少ない量および/または
(b)三次元架橋の構成成分としてガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構成単位を合算してより多い量を有している。
【0015】
以下、新規の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系を、本発明による系と呼称する。
【0016】
さらに、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための、本発明による系の新規使用を見いだし、この場合、これは以下、本発明による使用と呼称する。
【0017】
さらに、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための新規方法が見いだされ、この場合、本発明による使用を含み、かつ、その際、(1)それぞれ少なくとも1種のデュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)を、それぞれ少なくとも1種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)から、それぞれ少なくとも1種の成分(I)および(II)をそれぞれ混合し、かつ得られた混合物をホモジナイズすることによって製造し、かつ、
(2)三次元基材の外側をデュアル−キュア−被覆材料(A)で、かつ、三次元基材の内側をデュアル−キュア−被覆材料(B)で被覆し、それによって
(3)得られた被覆を、熱的かつ化学線で硬化し、それによって内側被覆および外側被覆を生じる。
【0018】
以下、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための新規方法を、本発明による方法と呼称する。
【0019】
本発明による他の対象は、本願明細書中の記載から明らかである。
【0020】
本発明の課題を、本発明による系、本発明による方法、本発明による使用によって解決できることは、技術水準を考慮すれば驚くべきことであり、かつ当業者には予測できないことである。
【0021】
特に驚くべきことに、本発明による系は、技術水準の欠点をもはや有することなく、さらに本発明による使用の範囲内において、複雑に成形された三次元基材、特に自動車ボディー、特に乗用車ボディーの内側および外側での被覆を、本発明による方法にしたがって何ら問題なくおこない、かつ、内側において、十分な照射量で硬化させることができる外側の被覆の使用技術特性プロフィールに少なくとも匹敵する、使用技術特性プロフィールを示す被覆を提供する。
これに関して、内側被覆(内側塗料)と外側被覆(外側塗料)とが混ざり合う範囲において、もはや被覆の損傷を生じることはない(塗膜損傷)。
【0022】
本発明による系は、少なくとも2種、特に2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)、特にデュアル−キュア−二成分系(A)および(B)を含有する。
【0023】
デュアル−キュア−多成分系(A)および(B)は、大部分または全部が同一の構成成分から成る。「大部分」とは、デュアル−キュア−多成分系(A)および(B)が、多くとも3種および好ましくは多くとも2種の構成成分および特に1種のみの構成成分で互いに異なっていることを意味する。
【0024】
それぞれのデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)は、少なくとも2種、特に2種の成分(I)および(II)を含有し、この場合、これらは、デュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)を製造するまで、本発明による使用の範囲内で、互いに別個に保存される。
【0025】
それぞれデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)において、少なくとも1種、特に1種の成分(I)が、イソシアネート反応性官能基(i.1)、好ましくはヒドロキシル基、チオール基および第1級および第2級アミノ基から成る群、特にヒドロキシル基から選択される基を含有する。
【0026】
さらに、少なくとも1種、特に1種の、化学線で活性可能な結合を有する反応性官能基(i.2)を含有する。例として挙げられる、化学線で活性可能な結合および反応性官能基(i.2)は、この場合、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第8頁、段落 [0059]〜[0061]から公知のものを含む。特にアクリレート基(i.2)を使用する。
【0027】
さらに、三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位(i.3)を含有する。軟化させる構造単位(i.3)の適した例は、同様に、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第8頁段落[0064]〜第9頁段落[0072]から知られているものである。
【0028】
特に、三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位(i.4)を含有する。硬化させる構造単位(i.4)の適した例は、同様に、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第9頁段落[0079]〜第9頁段落[0085]から知られているものである。
【0029】
三次元架橋は、デュアル−キュア−多成分系(A)および(B)から製造する被覆材料または塗料(A)および(B)のデューロプラスチック成形体中に存在し、かつこれらの被覆材料または塗料(A)および(B)の主成分または個々の成分を形成する。したがって、被覆材料または塗料(A)および(B)の被覆のガラス転移温度Tgは、三次元架橋の物理的組成および構造によって、特に測定される。三次元架橋の物理的組成および構造は、さらにデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)の構成成分を選択することによって調整される。
【0030】
好ましくは、成分(I)は、少なくとも1種のポリマーおよび/またはオリゴマー結合剤、特に2種のオリゴマーおよび/またはポリマー結合剤を含有し、その際、イソシアネート反応性官能基(i.1)の一部または全部は、1種または複数種の結合剤中に含有されていてもよい。
【0031】
結合剤は、反応性官能基(i.2)を含有する。しかしながら、好ましくはこれを含有しない。
【0032】
この結合剤は、構造単位(i.3)および(i.4)を含有するか、またはこれから構成される。これに関して構造単位(i.3)および(i.4)は、その結合剤を三次元架橋中に導入することにより、好ましいガラス転移温度Tgの調整に寄与する割合で使用する。
【0033】
好ましくは成分(I)中で使用される、結合剤の例およびその量は、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第3頁段落[0018]〜第6頁段落[0041]から知られている。特に、(メタ)アクリレートコポリマーを使用する。好ましくは、ガラス転移温度−50℃〜+110℃、好ましくは−30℃〜+80℃、さらに好ましくは−15℃〜+70℃、より好ましくは−15℃〜+50℃、特に好ましくは−15℃〜+40℃および殊に−15℃〜+30℃を示す。特に、水中で本発明による被覆材料が使用できるかどうかにしたがい、その酸価を調整する。好ましくは、酸価は5〜100mgKOH/gである、同様に、そのイソシアネート基の含量、特にヒドロキシル基の含量は、可変であってもよく、
好ましくは、そのヒドロキシル価は20〜300、好ましくは30〜250、特に好ましくは40〜200、さらに好ましくは60〜190、特に80〜180mgKOH/gである。
【0034】
好ましくは、成分(I)は、少なくとも1種の、特に1種の低分子量構成成分および/またはオリゴマー成分を含有し、この場合、これらは、少なくとも1種の反応性官能基(i.2)および好ましくは少なくとも2種の、より好ましくは少なくとも3種の、および、特に好ましくは少なくとも4種の、反応性官能基(i.2)を含有する。さらに、これらの構成部分はなおも少なくとも1種の、特に1種のイソシアネート反応性官能基(i.1)を含有していてもよい。好ましくは、成分(I)の反応性官能基(i.2)の大部分またはすべての割合が、この構成成分中に含有される。好ましくは成分(I)中で使用される、この種の適した構成成分の例およびその量は、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第11頁段落[0101]〜[0103]から知られている。
【0035】
さらに成分(I)は、なおも常用かつ公知の塗料添加剤を含有し、たとえばドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第12頁段落[0123]に記載されている。特に、擬似塑性Sag調整剤(SCA)を使用する。
【0036】
さらに成分(I)は、なおも常用かつ公知の顔料を含有していてもよく、この場合、これらは、たとえばドイツ特許DE 101 29 970 A 1、第11頁段落[0104]〜第12頁段落[0121]に記載されている。特に、ナノ粒子を使用する。
【0037】
成分(I)の製造は、方法に関する限り特別なものではないが、しかしながら、前記構成成分の混合、得られた混合物の常用かつ公知の混合方法および装置、たとえば撹拌槽、撹拌ミル、押出機、混練機、ウルトラターラックス、インラインディソルバー、スタティックミキサ、歯車型分散機、圧力放出ノズルおよび/またはミクロ流動化装置を用いて、好ましくは化学線放射の不在下で、混合およびホモジナイズによって実施する。
【0038】
それぞれデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)について、少なくとも1種の、特に1種の成分(II)は、遊離イソシアネート基(ii.1)を含有する。さらに、なおもわずかな量のブロックされたイソシアネート基を含有していてもよく、この場合、これは、たとえばドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1、第7頁および第8頁段落[0058]に記載されている。
【0039】
さらに成分(II)は、反応性官能基(ii.2)を含有し、この場合、これらは、化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を含有している。適した反応性官能基(ii.2)の例は、前記反応性官能基(i.2)である。
【0040】
さらに、三次元架橋の構成成分として、そのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位(ii.3)を含有する。適した軟化させる構造単位(ii.3)の例は、前記構造単位(i.3)である。
【0041】
特に成分(II)は、三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位(ii.4)を含有する。硬化させる構造単位(ii.4)の適した例は、前記構造単位(i.4)である。
【0042】
好ましくは、成分(II)は、必然的に特徴(ii.1)および(ii.2)を示す少なくとも1種の構成成分を含有するか、あるいは、これから構成される。
【0043】
好ましくは、デュアル−キュア−多成分系(A)および(B)中で使用することができる、適した成分(II)および特徴(ii.1)および(ii.2)の適した構成部分の例、その製造方法ならびにその量は、ドイツ特許出願DE 101 29 970 A 1, 第6頁段落 [0042]〜第11頁段落[0100]に、詳細に記載されている。
【0044】
さらに成分(II)は、成分(II)の製造、貯蔵および使用の条件下で、イソシアネート基(ii.1)と反応することはない場合において、前記に示された塗料添加剤を含有することができる。
【0045】
成分(II)の製造は、同様に、方法に関して何ら特別なことなく実施されるが、しかしながら、前記混合物および方法を使用することができる。
【0046】
本発明による系に関して、本質的に、デュアル−キュア−被覆材料系(B)は、デュアル−キュア−被覆材料系(A)に対して、反応性官能基(i.2)+(ii.2)を合算してより少ない量、および/または、硬化させる構造単位(i.4)+(ii.4)を合算してより多い量を有する。
【0047】
本発明による系は、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆に役立つ。複雑に成形された三次元基材の例は、移動手段のボディー、この場合、これは、エンジン力および/または筋力によって操作される移動手段を含み、たとえば乗用車、商用車、バス、自動二輪車、自転車、列車、船艇および航空機、およびその部品、その構造部品およびパーツ、ドア、ウインドー、ファーニチュアおよび機械的、光学的および電気的構成成分である。本発明による系は、特に自動車ボディー、特に乗用車ボディーの内側被覆および外側被覆に役立つ。
【0048】
本発明による使用の範囲において、デュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)から、デュアル−キュア−被覆材料系(A)および(B)を、前記成分(i)および(ii)の混合および得られた混合物のホモジナイズによって製造する。
【0049】
得られたデュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)は、好ましくは、常用の、有機溶剤含有被覆材料、水性被覆材料または本質的にまたは完全に溶剤不含かつ水不含の液体被覆材料(100%−系)である。
【0050】
これは、隠蔽被覆材または塗料、たとえば、プライマー・サーフェーサー、ベースラッカーおよびソリッド−カラートップコートを製造するために使用することができる。特に、透明な単層および多層のクリアラッカー系ならびに多層のクリアラッカー、着色および/または効果付与、導電性、耐磁気性および/または蛍光被覆剤の、特に、ウエット・オン・ウエット法による製造に顕著に適しており、この場合、この方法は、ベースラッカー、特に水性ベースラッカーを基材表面上に塗布し、それによって得られたベースラッカー層を、硬化させることなく乾燥させ、かつクリアラッカー層で積層するものである。その後に、2層を一緒にして硬化させる。
【0051】
方法に関して、デュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)の塗布は、方法に関していえば何ら特別なものではないが、しかしながら、すべての常用の塗布方法、たとえば、スプレー、へら塗、はけ塗り、フローコート、浸漬、散水またはロールコートを使用することによって実施される。好ましくは、噴霧塗布方法を使用する。一般には、本発明による被覆材料、被覆接着剤およびシーラントの早期架橋を回避するために、化学線の排除下で操作することが好ましい。
【0052】
好ましくは、本発明による方法は、たとえば、三次元基材の外側または外側の範囲を、デュアル−キュア−被覆材料(A)を用いて、かつ三次元基材の内側または内側の範囲を、デュアル−キュア−被覆材料(B)を用いて被覆する際に使用される。その後に、得られた未硬化の被覆材料(A)および(B)を、場合によっては、他の存在する未硬化の被覆材料と一緒に、熱または化学線で硬化させ、それによって、一体化された内側被覆および外側被覆または一体化された内側または外側塗料系(B/A)を得る。
【0053】
硬化自体については、方法に関して何ら特別なものではないが、しかしながら、ドイツ特許出願DE 102 02 565 A 1, 第9頁段落[0090]〜第10頁段落[0107]に記載された方法および装置によって実施することができる。
【0054】
得られた本発明による内側被覆または内側塗料(B)は硬質かつ耐引掻性であり、その結果、たとえば、自動車構成部品にさらに導入または取り付ける際に、何ら損傷を受けることはない。傑出した光学的性質および特に高い光、化学薬品、水、水滴、天候および腐食に対する耐性を有する。その重なり性についても傑出している。
【0055】
得られた本発明による外側被覆(A)は、より高い耐引掻性を有し、かつ硬質であり、その結果、自動車製造者および消費者のすべての要求に適合する。特に、デュアル−キュア−被覆材料(A)から製造されたクリアラッカーは、貯蔵弾性率E’はゴム弾性範囲において少なくとも107.5Paを有し、かつ20℃で誘電損tanδは最大0.1であり、その際、貯蔵弾性率E’および誘電損は、動的機械的熱分析(DMTA)を用いて、40±10μm(ドイツ特許出願DE10202565A1参照)の層厚を有する任意のフィルム上で測定した。同様に、傑出した光学的性質および特に高い光、化学薬品、水、水滴、天候および腐食に対する耐性を有する。その重なり性は傑出している。
【0056】
特に、本発明による一体化された内側および外側塗料系(B/A)は、その内側塗料(B)および外側塗料(A)を重ねたその範囲において、たとえば剥離、くぼみ、おう穴または浸出のような塗膜損傷を生じることはない。
【実施例】
【0057】
例1
一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系の製造
デュアル−キュア−二成分系(A1)および(A2):
一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系の製造に関して、乗用車ボディー上の一体化された内側および外側塗料系(B/A)を製造するために、最初に、第1表に示すデュアル−キュア−二成分系(A1)および(A2)を、その成分(I)および(II)の構成成分を混合し、かつ得られた混合物(I)および(II)をUV−線の排除下でホモジナイズすることによって製造した。それぞれの成分(I)および(II)は、その使用時まで互いに別個に貯蔵する。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

デュアル−キュア−二成分系(B1)〜(B5):
一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系の製造に関して、乗用車ボディー上の一体化された内側塗料および外側塗料(B/A)を製造するために、最初に、第2表に示すデュアル−キュア−二成分系(B1)〜(B5)中で、その成分(I)および(II)の構成成分を混合し、かつ得られた混合物(I)および(II)を、UV−線の排除下でホモジナイズすることによって製造した。それぞれの成分(I)および(II)は、使用時まで互いに別個に貯蔵した。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

a)固体:65質量%;ヒドロキシ価175mgKOH/g:
ガラス転移温度−21℃;
b)固体:65質量%;ヒドロキシ価:175mgKOH/g:
ガラス転移温度+11℃、
c)尿素ベース上のSCA。DE 102 04 114 A 1、第11頁41行〜51行、製造例3による(固体59質量%);
d)固体28.47質量%;
e)固体100質量%;
f)市販の光保護剤(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);固体:100質量%
g)市販の光保護剤(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);固体:85質量%;
h)市販の塗料添加剤(Byk Chemieから入手可能);固体:52質量%;
i)市販の光開始剤(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能);固体:50質量%;
j)市販の光開始剤(BASF Aktiengesellschaftから入手可能);固体:10質量%;
k) Roskydal(R) UA VPLS 2337 (Bayer AGより入手可能であって、トリマーヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする、イソシアネート基含量12質量%、固体100質量%)
I)Roskydal(R) UA VP FWO 3003−77(Bayer AGより入手可能であって、イソホロンジイソシアネートトリマーをベースとする、固体70.5質量%、イソシアネート基の含量:6.7質量%)
m)イソホロンジイソシアネートをベースとするポリイソシアネート(Desmodur(R) N 3300、Bayer AGより入手可能)
n)4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(Desmodur(R) W Bayer AGより入手可能)および4−ヒドロキシブチルアクリレートをベースとするイソシアナトアクリレート(固体:70質量%;イソシアネート−当量724g);
一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系:
それぞれ前記デュアル−キュア−多成分系(A1)または(A2)は、前記デュアル−キュア−多成分系(B1)、(B2)、(B3)、(B4)または(B5)と一緒に組み合わせて、一体化したデュアル−キュア−被覆剤系にし、その結果、全部で10個のこのような系が生じる。
【0063】
例2
一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系を使用して製造された、クリアーラッカー系を有する効果付与多層ラッカー系での、乗用車ボディーの被覆
一般的な試験方法:
リアフラップおよびボンネット下およびドアシルの範囲、トランクルームおよびドア内側およびウインドー内側の、乗用車ボディーの内側塗装のために、デュアル−キュア−被覆材料(B1)〜(B5)を塗布直前に前記デュアル−キュア−多成分系(B1)〜(B5)(例1、第2表参照)から、それぞれの成分(I)および(II)を以下の混合比(I)/(II)(質量%)で製造した。(B1):100/111;(B2):100/111;(B3):100/91;(B4):100/89;(B5):100/89。
【0064】
乗用車ボディーの外側塗装に関して、適用直前に、前記にデュアル−キュア−二成分系(A1)および(A2)(例1、第1表参照)を、それぞれの成分(1)および(11)を、以下の混合比(I)/(II)(質量%)で混合することによって、デュアル−キュア−被覆材料(A1)および(A2)を製造した:(A1):100/67:(A2):100/65。
【0065】
常用かつ公知の電着塗料および常用かつ公知のプライマーサーフェーサーで被覆された乗用車ボディーを、通常のアルミニウム効果顔料を含有する水性ベースラッカーで被覆する。水性ベースラッカーは、室温に短くフラッシュオフし、かつ80℃で10分に亘って乾燥させた。湿った薄層を、乾燥および硬化後に、12〜15μmの層厚が得られるように選択した。
【0066】
5個の乗用車ボディーの内側で、水性ベースラッカー層を、ウエット・オン・ウエット法で、それぞれ1種のデュアル−キュア−被覆材料(B1)〜(B5)で被覆し、かつこの水性ベースラッカー層を外側で、ウエット・オン・ウエット法で、デュアル−キュア−被覆材料(A1)で被覆した。クリアラッカーの薄層は、硬化後に40〜45μmの層厚が得られるように調整した。
【0067】
5個の乗用車ボディーの内側で、水性ベースラッカー層を、ウエット・オン・ウエット法で、それぞれ1種のデュアル−キュア−被覆材料(B1)〜(B5)で被覆し、かつ水性ベースラッカー層を外側で、ウエット・オン・ウエット法で、デュアル−キュア−被覆材料(A2)で被覆した。これに関して、クリアラッカー層の薄層は、硬化後に40〜45μmの層厚が得られるように調整した。
【0068】
10個の乗用車ボディーの水性ベースラッカー層およびクリアラッカー層を一緒にして、室温で5分間に亘って、かつ80℃で10分に亘って予備乾燥させ、その際、照射量1500mJ/cmのUV−線で照射し、かつ引き続いて、20分に亘って140℃で硬化させた。
【0069】
得られた内側塗料(B)は硬質かつ耐引掻性であり、その結果、乗用車の他の構成部品を何ら問題なく導入することができる。得られた外側塗料(A)は、高い耐引掻性を有し、かつ硬質である。双方の塗料は、しばしば、傑出した光学的性質および特に高い光、化学薬品、水、水滴、天候および腐食に対する耐性を示す。その重なり性は傑出している。しかしながら、特に、内部塗膜(B)と外部塗膜(A)が重なる範囲において、もはや塗膜の損傷を生じることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)を含有し、その大部分または全部が同一構成成分から成り、かつ、それぞれ少なくとも2種の互いに別個に貯蔵された成分を含有する、一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系において、その際、
(I)少なくとも1種の成分が、
(i.1)イソシアネート反応性官能基および
(i.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する、反応性官能基、
(i.3)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または
(i.4) 三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位
を含有し、かつ、
(II)少なくとも1種の成分が、
(ii.1)遊離イソシアネート基、
(ii.2)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する、反応性官能基、および
(ii.3)三次元架橋の構成成分として、そのガラス転移温度Tgを低下させる、軟化させる構造単位、および/または
(ii.4)三次元架橋の構成成分として、そのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位
を含有し、かつ、
その際、デュアル−キュア−被覆材料系(B)が、デュアルキュア被覆材料系(A)に対して、
(a)化学線で活性可能な少なくとも1種の結合を有する反応性官能基を合算してより少ない量、および/または、
(b)三次元架橋の構成成分としてそのガラス転移温度Tgを上昇させる、硬化させる構造単位を合算してより多い量を有する、
少なくとも2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)を含有し、その大部分または全部が同一構成成分から成り、かつ、それぞれ少なくとも2種の互いに別個に貯蔵された成分を含有する、一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項2】
2種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)を含有する、請求項1に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項3】
少なくとも1種のデュアル−キュア−二成分系(A)を含有する、請求項1または2に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項4】
少なくとも1種のデュアル−キュア−二成分系(B)を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項5】
デュアル−キュア−多成分系(A)および(B)が、多くとも2種の構成成分において物理的に互いに異なる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の、一体化されたデュアル−キュア被覆材料系。
【請求項6】
成分(I)が、イソシアネート反応性官能基(i.1)を有する、少なくとも1種のオリゴマーおよび/またはポリマー結合剤を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項7】
成分(I)が、少なくとも1種の反応性官能基(i.2)を有する、少なくとも1種の低分子量構成成分および/またはオリゴマー構成成分を含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項8】
成分(II)が、特徴(ii.1)および(ii.2)を示す少なくとも1種の構成成分を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系。
【請求項9】
複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系の使用。
【請求項10】
基材が乗用車ボディーである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の一体化されたデュアル−キュア−被覆材料系を用いる、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための方法において、
(1)それぞれ少なくとも1種のデュアル−キュア−被覆材料(A)および(B)を、それぞれ少なくとも1種のデュアル−キュア−多成分系(A)および(B)から、それぞれ少なくとも1種の成分(I)および(II)を混合し、かつ、得られた混合物をホモジナイズすることによって製造し、
(2)三次元基材の外側をデュアル−キュア−被覆材料(A)を用いて、かつ、三次元基材の内側を、デュアル−キュア被覆材料(B)を用いて被覆し、それによって、
(3)得られた被覆(A)および(B)を、熱および化学線で硬化することで、一体化された内側被覆および外側被覆(B/A)を生じる、複雑に成形された三次元基材の内側被覆および外側被覆のための方法。

【公表番号】特表2008−501051(P2008−501051A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513927(P2007−513927)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052385
【国際公開番号】WO2005/116117
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】