説明

一体型空気調和機

【課題】部屋全体を空調しながら、所定の使用者に常に風を当てることができる一体型空気調和機を提供する。
【解決手段】一体型空気調和機1の吹出口36を取付板41で上吹出口43と下吹出口42に分割し、それぞれ平行に配置され連携された左右風向板5a、5bを軸支し、一方の左右風向板5a、5bを回動させることで部屋全体を空調しながら、もう一方の左右風向板5a、5bを固定することで所定の使用者に向け常に風を当てることができ、また、上吹出口43と下吹出口42の左右風向板5a、5bを異なる回動動作で左右方向に回動させることで、風が当たらない時間が軽減して快適性を与えるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型空気調和機の吹出口の構造に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
一体型空気調和機の従来例には、前面と背面が開口された箱型の外胴の中に内部ユニットを搭載し、同内部ユニットが仕切板で室外側熱交換室と室内側熱交換室に区画され、室外側熱交換室には室外側熱交換器と圧縮機とプロペラファンを備え、室内側熱交換室には室内側熱交換器とシロッコファンと電装品ユニットを備え、前記外胴の前面に前面パネルを備え、同前面パネルは前記室内側熱交換室に対向する面に吸込口を設け、その横に縦長で矩形の吹出口を設け、同吹出口に横長で上下に平行に配置されそれぞれが連携して上下方向に動く上下風向板と、縦長で横方向に平行にそれぞれが連携して左右方向に動く左右風向板を設けたものがある。この左右風向板は、被空調室全体を均一に空調するために自動制御で左右同じ向きに回動するスイング運転と、回動せずに一定の向きに固定する2通りを選択することが出来る。(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、他の従来例として、壁掛型空気調和機の室内機には、被空調室全体を均一に空調するために自動制御で複数の上下風向板が回動するものがある。壁掛型空気調和機の室内機は、横方向に長く開口された吹出口を有することで、吹出範囲が横に長く、風を被空調室全体に広く吹き出すことができる。(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−281142号公報
【特許文献2】特開2001−116341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、一体型空気調和機の場合は吹出口が縦長で矩形であり、吹出範囲の横幅が狭いため、一定の方向に向けて風を吹き出すと被空調室全体に風が行き渡らないことになり、スイング運転で被空調室全体を均一に空調させている。
しかしながらスイング運転中においても、それぞれが連携された左右風向板は常に左右同じ方向を向きながら可動するため、被空調室内の所定の場所に使用者がいた場合、その使用者には間欠的に風が当たることになり、常に風に当たりたいと思う使用者にとっては不快を感じることがある。
逆に、左右風向板を固定して一定の方向に風を吹き出させた場合は、被空調室内の他の場所にいる使用者には風が当たらないことになり不快を感じさせることになる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、部屋全体を空調しながらも、所定の使用者に常に風を当てることができる一体型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
本体の前面に吸込口と吹出口を備えた一体型空気調和機において、
前記吹出口は取付板によって下吹出口と上吹出口に分割され、前記下吹出口には同下吹出口に設けた第1軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第1回動軸を有する複数の第1左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第1連結手段で連結され、
前記上吹出口には同上吹出口に設けた第2軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第2回動軸を有する複数の第2左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第2連結手段で連結され、
前記第1連結手段および第2連結手段はそれぞれが駆動手段に連結され同駆動手段により前記複数の第1左右風向板および前記複数の第2左右風向板を異なる回動動作で左右方向に回動させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本体の前面に吸込口と吹出口を備えた一体型空気調和機において、
前記吹出口は取付板によって下吹出口と上吹出口に分割され、前記下吹出口には同下吹出口に設けた第1軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第1回動軸を有する複数の第1左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第1連結手段で連結され、
前記上吹出口には同上吹出口に設けた第2軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第2回動軸を有する複数の第2左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第2連結手段で連結され、
前記第1連結手段および第2連結手段のいずれか一方が駆動手段に連結され、同駆動手段により左右方向に回動させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
前記第1軸孔と前記第2軸孔は上下方向の同軸線上に設けられないことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一体型空気調和機の吹出口を取付板によって下吹出口と上吹出口に分割し、それぞれ平行に配置され連結手段で連携された左右風向板を軸支し、連結手段が駆動手段に連結され同駆動手段により下吹出口と上吹出口の左右風向板を異なる回動動作で左右方向に回動させることで、使用者にとって風が当たらない時間が軽減することで快適性を与えるものとなる。
また、一方の左右風向板を回動させることで部屋全体を空調しながら、もう一方の左右風向板を固定することで所定の使用者に向け常に風を当てることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による一体型空気調和機の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明による一体型空気調和機の運転状態説明図である。
【図4】本発明による一体型空気調和機の前面パネルを外した状態の説明図である。
【図5】本発明による一体型空気調和機の部分正面図である。
【図6】本発明による一体型空気調和機の吹出口を背面側から見た要部説明図である。
【図7】本発明による一体型空気調和機の運転中の正面図である。
【図8】実施例2の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明による一体型空気調和機1は、図1と図2に示すように、前面および後面が開口された箱型筒状の外胴10の中に内部ユニット11を搭載する。同内部ユニット11は仕切板12で室外側熱交換室2と室内側熱交換室3に区画されている。外胴10の開口された前面には前面パネル13が着脱自在に取り付けられている。
尚、一体型空気調和機1は、図3に示すように、前面パネル13だけを被空調室Lに突設させ、外胴10は壁面内に取り付け、室外側熱交換室2に該当する部分が屋外に出るように設置される。
【0014】
室外側熱交換室2は、図1と図2に示すように、室外側熱交換器20と圧縮機21とプロペラファン22と、同プロペラファン22と後述するシロッコファン31とを駆動するファンモータ23とを備え、外胴10の天面と側面に設けた室外側吸込口24からプロペラファン22により吸い込まれた空気を室外側熱交換器20で冷媒と熱交換して外胴10の開口された後面にある室外側吹出口25から吹き出す。
【0015】
室内側熱交換室3は、図2と図4と図5に示すように、室内側熱交換器30と、室内側熱交換器30と仕切板12の間にファンモータ23に軸支されたシロッコファン31と、同シロッコファン31を囲み導風路を構成するダクト32と、同ダクト32の下部に電装品ユニット33を備え、室内側熱交換器30の前面が着脱自在に取り付けられるフィルタ34を備えた室内側吸込口35となり、ダクト32の前面部の開口が縦長で矩形の室内側吹出口36となる。
【0016】
電装品ユニット33の前面側には操作パネル37があり、図示しないリモートコントローラーの信号を受光部37aで受け、電装品ユニット33内の制御部で運転操作が制御され、運転状態を操作パネル37に表示する。また、操作は必ずしもリモートコントローラーの信号操作ではなく、手動で操作可能でもよく、その場合は、図示しないが操作パネル37には手動で操作するツマミやレバーが配置される。
【0017】
室内側吹出口36には、ダクト32の両側壁に軸支され手動で上下方向に偏向できる上下風向板38が配置される。また、上下風向板38の手前側で操作パネル37の上にダクト32の開口全体を囲む吹出口枠40が配置される。
そして、外胴10の前面に取り付けられる前面パネル13は、室内側吸込口35に対向する面に吸込桟13aを備え、操作パネル37と吹出口枠40に対向する面に大きく枠状に開口された開口部13bを備え、操作パネル37と吹出口枠40は開口部13bに嵌合される。
以上の構成により、室内側熱交換室3では、シロッコファン31により前面パネル13の吸込桟13aを通過し室内側吸込口35に吸い込まれた空気は、室外側熱交換器20から送られた冷媒と室内側熱交換器30で熱交換した後、ダクト32に導かれ室内側吹出口36から被空調室Lに吹き出される。
【0018】
吹出口枠40には、図4と図5と図6に示すように、吹出口枠40を上下に分割する取付板41が設けられ、下吹出口42と上吹出口43とを形成する。
尚、図5では下吹出口42と上吹出口43のそれぞれの高さは、下吹出口42が高く上吹出口43が低くなっているが、これに限らず同じ高さでも良いし、下吹出口42が低くてもよい。
【0019】
下吹出口42には、複数の第1左右風向板5aが上下方向に且つ平行に配置されている。第1左右風向板5aは、短冊形の羽根部50aと、上下両端に同軸線上に設けられた第1回動軸51aと、羽根部50aの下部後方に一体に設けられたアーム52aとアーム52aの先端に設けた連結ピン53を備え、第1回動軸51aがそれぞれ下吹出口42側の吹出口枠40の底面と取付板41の底面に設けられた図示しない第1軸孔に軸支されている。
【0020】
第1左右風向板5aは、図6に示すように、電装品ユニット33内にある駆動手段のモータ6aと第1揺動板61aに連結している。モータ6aには、図示しないが回転を伝える回転軸が第1揺動板61aに軸支され、第1揺動板61aの第1揺動板回転軸61a1が、第1連結手段であるT字状をした第1連結板62aのT字の中央に該当する部分に設けた切込部62a1に緩やかに挿入されている。第1連結板62aはT字の頭に該当する部分に軸受孔62a2を複数備え、第1左右風向板5aの連結ピン53をそれぞれ軸支して第1左右風向板5aを連携する。
これらの構成によりモータ6aの回転に合わせ第1揺動板61aの第1揺動板回転軸61a1が第1連結板62aの切込部62a1内を回転しながら移動することで第1連結板62aを左右に移動させる。合わせて第1連結板62aに軸支された第1左右風向板5aのアーム52aが左右に移動する。第1左右風向板5aは第1回動軸51aを回動の中心としてアーム52aの移動により同じ方向に向きを変える図3に示すスイング運転Wを行い、吹出空気を被空調室Lに広げることができる。
【0021】
また、上吹出口43にも複数の第2左右風向板5bが上下方向に且つ平行に配置されている。第2左右風向板5bの構成および動作方法は下吹出口42の第1左右風向板5aとほぼ同様で、短冊形の羽根部50bと、上下両端に同軸線上に設けられた第2回動軸51bと、羽根部50bの上部後方に一体に設けられたアーム52bとアーム52bの先端に設けた連結ピン53を備え、第2回動軸51bがそれぞれ上吹出口43側の吹出口枠40の上面と取付板41の上面に設けられた図示しない第2軸孔に軸支されている。
第2左右風向板5bは、図6に示すように、駆動手段のモータ6bと第2揺動板61bに連結している。モータ6bがダクト32の上方に取り付けられ、モータ6bから下方に第2揺動板61bと、第2連結手段である第2連結板62bとが設けられ第2左右風向板5bの上端に設けられたアーム52bと連結し、第2左右風向板5bを回動させる。
【0022】
取付板41は上面に第1左右風向板5aの第1回動軸51aを、底面に第2左右風向板5bの第2回動軸51bをそれぞれ軸支しているため、収容した軸の高さが取付板41の高さとして必要となる。だが、取付板41は吹き出される風の中央付近に位置して通風抵抗となるため、なるべく通風抵抗とならないように取付板41の高さを抑える必要がある。そこで、本発明では、下吹出口42の第1左右風向板5aおよび上吹出口43の第2左右風向板5bは、図5に示すように通風抵抗を抑えるために第1回動軸51aと第2回動軸51bを左右交互に軸支している。これにより、第1回動軸51aと第2回動軸51bを同軸線上に配置した場合に比べ略半分の高さとなり通風抵抗を軽減できる。また、図8の後述する実施例2に示すように第3回動軸51cを第4回動軸51dよりも後方に配置してもよい。
【0023】
上記では、下吹出口42の第1左右風向板5aはモータ6aと上吹出口43の第2左右風向板5bはモータ6bと連結している。しかしながら図示はしないが、モータ6aを1つだけ配置して下吹出口42の第1左右風向板5aと上吹出口43の第2左右風向板5bの両方を回動してもよい。その際は下吹出口42と上吹出口43のそれぞれの連結板62を連結軸で連結して間に歯車を介することで、上吹出口43が別の回動をするように調整する。また、上吹出口43の第2左右風向板5bを固定してスポット空調Sとして使用する際は、上吹出口43の連結板62と歯車を離すことで所定の位置に第2左右風向板5bを固定する。
【0024】
次に左右風向板5の動作について説明する。第1左右風向板5aと第2左右風向板5bは、それぞれ回動方法を選択することができる。例えば、第1左右風向板5aと第2左右風向板5bの右端から左端へのスイング運転Wの周期を一定として、図7に示すように、第1左右風向板5aと第2左右風向板5bのスイング運転Wを異なる回動動作で左右方向に回動させるようにすることで、風の当たらない時間を極力減らして快適性を与えるとともに、被空調室L全体を空調することができる。
【0025】
また、図3と図7に示すように、第2左右風向板5bを所定の使用者H1に向けて固定することでスポット空調Sが可能となるとともに、第1左右風向板5aをスイング運転Wとすることで、被空調室L全体を空調することができる。
【0026】
さらに、第2左右風向板5bを使用者H2に向けて固定し、第1左右風向板5aを使用者H1に向けて固定することで、被空調室Lの異なる場所にいてもそれぞれがスポット空調Sを得ることが出来る。
【実施例2】
【0027】
左右風向板5は、必ずしもそれぞれ駆動手段による自動運転を行わず、どちらか一方を自動運転とし、もう一方を手動で向きを変更させるようにすることも可能である。図8に示す上吹出口43の第3左右風向板5cは、羽根部50cの先端を指で好みの方向へ向けるものであり、下吹出口42の第4左右風向板5dよりも奥行きを長く形成し、隣合う左右風向板同士の間隔を広げている。これにより羽根部50cが大きく回動することになり、スポット空調Sの向きが分かりやすくなり、吹出空気を一定の方向へ導く導風効果も高い。さらにスポット空調Sと、全体空調を得ることが可能であるとともに、モータ1つ分のコストが削減される。
【符号の説明】
【0028】
1 :一体型空気調和機
13 :前面パネル
3 :室内側熱交換室
32 :ダクト
34 :室内側吸込口
35 :室内側吹出口
38 :操作パネル
40 :吹出口枠
41 :取付板
42 :下吹出口
43 :上吹出口
5 :左右風向板、5a:第1左右風向板、5b:第2左右風向板
50a、50b:羽根部
51a:第1回動軸、51b:第2回動軸
52a、52b:アーム
53 :連結ピン
6a、6b:モータ
61a:第1揺動板、61b:第2揺動板
62a:第1連結板、62b:第2連結板
L :被空調室
S :スポット空調
W :スイング運転


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の前面に吸込口と吹出口を備えた一体型空気調和機において、
前記吹出口は取付板によって下吹出口と上吹出口に分割され、前記下吹出口には同下吹出口に設けた第1軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第1回動軸を有する複数の第1左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第1連結手段で連結され、
前記上吹出口には同上吹出口に設けた第2軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第2回動軸を有する複数の第2左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第2連結手段で連結され、
前記第1連結手段および第2連結手段はそれぞれが駆動手段に連結され同駆動手段により前記複数の第1左右風向板および前記複数の第2左右風向板を異なる回動動作で左右方向に回動させるようにしたことを特徴とする一体型空気調和機。
【請求項2】
本体の前面に吸込口と吹出口を備えた一体型空気調和機において、
前記吹出口は取付板によって下吹出口と上吹出口に分割され、前記下吹出口には同下吹出口に設けた第1軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第1回動軸を有する複数の第1左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第1連結手段で連結され、
前記上吹出口には同上吹出口に設けた第2軸孔に羽根部と同羽根部の上下に第2回動軸を有する複数の第2左右風向板がそれぞれ上下方向に且つ平行に軸支されるとともに互いに連携して回動するように第2連結手段で連結され、
前記第1連結手段および第2連結手段のいずれか一方が駆動手段に連結され、同駆動手段により左右方向に回動させるようにしたことを特徴とする一体型空気調和機。
【請求項3】
前記第1軸孔と前記第2軸孔は上下方向の同軸線上に設けられないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の一体型空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96600(P2013−96600A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237672(P2011−237672)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】