説明

一体押出成形体および建築用部材

【課題】被覆層と芯材との十分な接着性を有し、しかも生産性に優れた一体押出成形体および建築用部材を提供すること。
【解決手段】アルミ製芯材10の外表面における周方向Pの一部または全部に、該芯材の長手方向mに沿って合成樹脂からなる被覆層1が形成されてなり、芯材10の外表面が少なくとも被覆層形成領域において長手方向に沿って、深さ0.03〜1.0mmの溝を有する一体押出成形体、および該一体押出成形体からなる建築用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ製芯材入り一体押出成形体および建築用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芯材入り合成樹脂製品の製造方法として、表面に樹脂系接着剤を塗布した金属製芯材を用いて合成樹脂により積層成形及び/又は押出成形によって芯材入りの合成樹脂製品を得ることを特徴とした方法が知られている(特許文献1)。具体的には、あらかじめフェノール変成アクリル系接着剤、変性ウレタン系接着剤、シランカップリング剤から成る接着剤などをアルミニウム芯材に塗布しておき、当該芯材を押出成形機にかけて、芯材入り合成樹脂成形体を得るものである。しかしながら、そのような方法では、接着剤を芯材に予め塗布する必要があるので、製造が煩雑であり生産性に問題があった。
【0003】
そこで生産性に優れた方法、特に建築用板材の製造方法として、所定の厚み寸法、幅寸法および長手寸法を有し、長手方向に一様断面を有するとともに、波板状に形成された金属製の芯材と、この芯材を包含する樹脂とを含んだ建築用板材を製造する方法であって、金属帯板材を長手方向に搬送しつつ、長手方向に一様断面の波板状をした芯材を連続形成する第1工程と、樹脂押出成形法により、上記芯材を包含する樹脂成形物を連続形成する第2工程と、上記第2工程で形成された樹脂成形物を所定長さごとに切断して単位板材を得る第3工程と、を含むことを特徴とする方法が開示されている(特許文献2)。具体的には、0.3〜1.0mm程度の肉厚の波板状芯材の表面に樹脂原料と共に複合押出成形(共押出成形)を行うものである。しかしながら、そのような方法では、確かに生産性は向上するが、金属製芯材にそのまま直接的に合成樹脂を被覆しているので金属製芯材と合成樹脂とが接着不良を起こした。
【特許文献1】特開昭62−13315号公報
【特許文献2】特開2003−13543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着性の向上のために、特許文献2の技術において、金属製芯材の表面にエンボス加工を施すことが考えられる。しかしながら、当該加工処理は、非常に煩雑である上に、平板状以外の異形状の芯材や中空状の芯材に対しては、対応することが極めて困難となる。
また、特に芯材がアルミニウムからなる場合、当該アルミ製芯材をアルマイト処理して表面を多孔質とし、当該芯材を用いることによって接着性を向上させることも考えられるが、やはり生産性に問題があり、しかも接着性は十分ではなかった。
【0005】
本発明は、被覆層と芯材との十分な接着性を有し、しかも生産性に優れた一体押出成形体および建築用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルミ製芯材の外表面における周方向の一部または全部に、該芯材の長手方向に沿って合成樹脂からなる被覆層が形成されてなり、芯材の外表面が少なくとも被覆層形成領域において長手方向に沿って、深さ0.03〜1.0mmの溝を有することを特徴とする一体押出成形体、および該一体押出成形体からなる建築用部材に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一体押出成形体が含有するアルミ製芯材の長手方向の溝は、長手方向に対して略垂直な方向の溝やエンボス加工によって付与される凹凸等と比較して、均一かつ効率のよい形成が可能である。そのため、生産性に優れると同時に被覆層と芯材との十分な接着性を有する。
芯材が有する長手方向の溝は、アルミ製芯材を押出成形するときに同時に形成できるため、そのように形成すると、一体押出成形体の生産性が顕著に優れる。
芯材が有する長手方向の溝がアルミ製芯材の押出成形と同時に形成されると、溝深さやピッチがより有効に均一になるため、接着性が顕著に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一体押出成形体は、アルミ製芯材の外表面に合成樹脂からなる被覆層が形成されてなるものである。詳しくは、例えば図1および図2に示すように、被覆層1は芯材10の長手方向mにおいて連続的に形成される。芯材10断面の周方向Pにおいては被覆層1は、例えば図1および図2に示すように該周方向Pの全部において継ぎ目なく連続的に形成されてもよいし、または該周方向Pの一部において形成されてもよい。図1および図2はいずれも本発明の一体押出成形体の一例を示す概略見取り図である。
【0009】
本明細書中、一体押出成形とは、被覆層用樹脂を押出成形すると同時に当該層を、送り込まれた芯材に順次被覆して一体化することを意味し、そのよう方法で形成されたものを一体押出成形体という。
【0010】
本発明において使用される芯材は外表面が少なくとも被覆層形成領域において長手方向に沿って溝を有すればよく、例えば、被覆層形成領域においてのみ当該溝を有してもよいし、または被覆層形成領域以外の領域においても当該溝を有してもよい。被覆層との接着性の観点から好ましくは、芯材は、例えば、図3および図4に示すように、溝2が芯材10の外表面全面において、芯材10の断面周方向および長手方向mの両方向において連続的に形成されたものである。本発明においては芯材が外表面に有する溝は芯材の長手方向mに沿ったものであるので、芯材の長手方向に対して略垂直な方向の溝やエンボス加工によって付与される凹凸等と比較して、芯材の成形と同時に溝付与が可能となり、より均一な溝形成を効率よく達成できる。その結果として一体押出成形体の生産性が向上すると同時に、被覆層と芯材との十分な接着性を確保できる。例えば、芯材が外表面に有する溝が、芯材の長手方向に対して略垂直な方向に沿ったもののみであると、特に芯材が棒形状を有する場合、そのような溝は後加工で付与することとなり、加工自体が困難となる。また溝が不均一に形成され易いので、接着性が低下する傾向がある。たとえ均一に形成できたとしても、そのような溝の形成には比較的長時間がかかるので、非効率である。また例えば、芯材の外表面が、後加工であるエンボス加工による凹凸のみを有する場合、そのような凹凸は均一な形成が著しく困難であるとともに、ピッチの短いものは作成が極めて困難である。
【0011】
本発明は、芯材が、芯材長手方向の溝以外に、例えば、当該長手方向に対して略垂直な方向の溝やエンボス加工による凹凸を有することを妨げるものではないが、生産性の観点から長手方向の溝のみを有することが好ましい。長手方向の溝を有するだけで、芯材と被覆層との間で良好な接着性を確保できるためである。
【0012】
溝2の深さ(Dp)は0.03〜1.0mmであり、好ましくは0.05〜0.35mmである。深さが浅すぎると、加工自体が極めて困難な上に、被覆層に対する接着性が低下する。深さが深すぎると、被覆層が厚くなり被覆自体が困難になるとともに、成形体表面に芯材の凹凸が現れ、外観不良を引き起こすおそれが出てくる。
【0013】
溝2のピッチ(P)(すなわち、隣接する溝間における最深部間隔)は0.03〜1.5mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1.0mmである。ピッチが大きすぎると、被覆層に対する接着性が低下する傾向にある。ピッチが小さすぎると、加工自体ができない。
【0014】
溝の深さおよびピッチは、芯材の長手方向の長さ1mあたり任意の3箇所において、測定された値の平均値で示すものとする。測定方法は特に限定されるものではないが、マイクロゲージを用いた方法が簡易である。また、レーザー光を照射して深さを測定しても良い。なお、深さ及びピッチについて、切断断面をマイクロスコープにて確認する方法でも測定可能である。
【0015】
溝の形状は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、溝によって形成される凹凸の断面形状が、図3および図4に示すように、略三角形状の凸部および凹部が連続するような形態を有していても良いし、または略円弧形状の凸部および凹部が連続するような形態を有していても良い。
【0016】
溝は、被覆層に対する接着性の観点から、均一に形成されることが好ましい。例えば、溝の深さおよびピッチは、芯材の押出成形時に溝を付与することにより、非常に均一なものとすることが可能である。例えばアルミの押出金型に、所望の溝形状を付与しておき、当該金型よりアルミを押出成形することにより、非常に均一な溝を有する芯材が得られる。これにより、被覆層と芯材との間の接着性を顕著に向上させることができる。
【0017】
芯材はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中空または中実の形態を有するものであり、その全体形状は特に制限されず、例えば、平板形状、棒形状等であってよい。通常、芯材はアルミニウムまたはアルミニウム合金の押出成形により形成される。特に中空形状やコ字形状・L字形状等種々の異形状芯材において、通常の後加工では溝付与が困難な場合、当該押出成形が可能であることは非常に有用である。なお、本発明において「アルミ製」とは、「アルミニウム合金製」もその範疇に含むものである。
【0018】
芯材が中空の形態を有する場合のアルミ部分の厚みは1.0mm以上、特に1.1〜5.0mmであることが好ましい。
また芯材が中空または中実の形態を有する場合の全体寸法は特に制限されるものではなく、得られる一体押出成形体の用途に応じて適宜設定されればよい。
【0019】
特に一体押出成形体を建築用部材として使用する場合において芯材は、図3および図4に示すような棒形状を有することが好ましい。この場合、芯材はやはり中空または中実のいずれの形態を有していても良いが、建築用部材の軽量化の観点からは、図3および図4に示すように中空であることが好ましい。
【0020】
芯材が棒形状を有する場合において、その断面形状は特に制限されるものではなく、例えば、略円形、略楕円形、または略方形(例えば、略長方形、略正方形)等であってよい。建築用部材の取扱い性の観点からは、略円形、略楕円形または略長方形の断面形状、特に略楕円形または略長方形の断面形状を有する芯材が好ましい。特に、中空長方形の断面形状の芯材は、一体押出成形時において芯材自体が樹脂圧で撓みやすく、接着性が低下する傾向があるため、本発明の溝付与が非常に有効である。なお、芯材の断面形状とは芯材の長手方向に対して垂直な断面形状を意味するものとする。
【0021】
芯材が中空形態を有する場合において、芯材は中空内部に、一体押出成形体の取り付けのためのビスホールを有してもよい。ビスホールは、芯材が押出成形により形成されるとき、同時に一体化形成可能である。
【0022】
芯材を押出成形によって形成するに際して、同時に長手方向の溝を形成可能である。すなわち、アルミ製芯材の押出成形時において、所定の長手方向の溝に対応した凸部を内面に有する金型を押出口に使用することによって、所定の長手方向の溝を芯材外表面に形成可能である。また、別法として、溝を有しない既製のアルミ製芯材と、当該芯材断面と同形状の孔を有し、かつ当該孔の内面に所定の長手方向の溝に対応した凸部を有するリング状の溝形成部材とを用意し、芯材の一端において溝形成部材を嵌合し、その状態で相対的に溝形成部材を芯材の他端まで通過させることによって、所定の長手方向の溝を芯材外表面に形成可能である。芯材断面とは芯材の長手方向に対して垂直な方向の芯材断面を意味する。これらの方法はいずれも、長手方向の溝の均一な形成を比較的短時間で達成可能である。
【0023】
長手方向の溝が、アルミ製芯材を押出成形するときに同時形成されると、溝がより短時間で形成され得るため、一体押出成形体の生産性が顕著に優れる。しかも、溝がより均一に形成され、接着性が顕著に優れる。
【0024】
長手方向の溝が形成された芯材は、後述の被覆層の形成前において、被覆層との接着性向上を目的としてアルマイト処理を施されてアルマイト層が形成されてもよいが、アルマイト処理は施されないことが好ましい。本発明においてはそのようなアルマイト処理を行わなくても接着性を有効に向上させ得るためである。
【0025】
芯材の外表面に形成される被覆層1は合成樹脂からなり、いわゆる非発泡体または発泡倍率5倍以下、特に2倍以下の低発泡体の形態を有するものである。
【0026】
そのような被覆層に使用される合成樹脂として、例えばポリ塩化ビニル樹脂(以後、PVC樹脂という)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以後、ABS樹脂という)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合樹脂(以後、ASA樹脂という)、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(以後、AS樹脂という)、シリコン系複合ゴム変性アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(以後、SAS樹脂という)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(以後、PMMA樹脂という)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂(以後、MS樹脂という)などのアクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂もしくはこれらの混合樹脂等が挙げられる。成形性、強靭性、経済性の面から特に好ましいのは、PVC樹脂、ABS樹脂、SAS樹脂、AS樹脂、ASA樹脂、PMMA樹脂であり、これらの樹脂はそれ自体、より硬質のものである。なお、これらの合成樹脂には、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シラスバルーン等の充填材や軽量化材、ガラス繊維やセルロース繊維等の補強材、難燃剤、その他熱安定剤、滑剤等の合成樹脂成形体に添加される各種添加剤を含むことができる。
【0027】
被覆層は単層からなっていても、2層以上の合成樹脂層からなっていてもよいが、2層以上、特に2〜4層の合成樹脂層からなることが好ましい。被覆層が2層以上の合成樹脂層からなる場合、各層を構成する合成樹脂はそれぞれ独立して上記合成樹脂から選択されればよい。
【0028】
好ましい被覆層は2層以上の合成樹脂層からなり、芯材と接触する合成樹脂層がポリエステル系樹脂層である。これによって、被覆層と芯材との接着性がより有効に向上するためである。被覆層が2層以上の合成樹脂層からなる場合、芯材と接する層(いわゆる内層)の厚みは、前記接着性の観点からは、少なくとも芯材の溝深さよりも厚くすることが必要であり、通常0.05〜2mmである。例えば、溝深さが0.1mmである場合、少なくとも内層の厚みは0.1mm以上必要であり、好ましくは平均値として0.15mm(溝深さより0.05mm以上厚い)以上である。特に一体成形時には、樹脂圧により芯材と密着されるため接着力が発揮される。このとき、芯材と接触するポリエステル系樹脂層以外の合成樹脂層は、PVC樹脂、ABS樹脂、SAS樹脂、AS樹脂、ASA樹脂、PMMA樹脂等からなっていることがより好ましい。ポリエステル系樹脂層による接着性向上効果がより有効に発揮されるためである。
【0029】
被覆層が2層以上の合成樹脂層からなる場合、最表面層は表面を保護するための保護機能を有することが好ましい。そのような保護機能を有する最表面層は、上記合成樹脂のうち、通常PMMA樹脂、SAS樹脂、AS樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、MS樹脂、PVC樹脂からなっていることが好ましい。そのような合成樹脂の中でも、最表面層をPMMA樹脂、ABS樹脂、MS樹脂、AS樹脂から構成させると透明保護層とすることができる。
【0030】
被覆層の好ましい構成を以下に示す。ただし、以下の構成に限定されるものではない。なお、最初に記載の層は芯材と接触する層であり、順に最表面層に近づく層を示し、最後に記載の層は最表面層である;
(1)ポリエステル系樹脂からなる接着層−PMMA樹脂からなる透明保護層;
(2)ポリエステル系樹脂からなる接着層−種剤を有する着色SAS樹脂からなる表面加飾層;
(3)ポリエステル系樹脂からなる接着層−種剤を有する着色PMMA樹脂からなる加飾層−PMMA樹脂からなる表面層;
(4)ポリエステル系樹脂からなる接着層−着色ABS樹脂からなる半透明保護層;
(5)ポリエステル系樹脂からなる接着層−種剤を有する着色半透明MS樹脂からなる表面加飾層;
(6)ポリエステル系樹脂からなる接着層−可飾性粉体を有する着色半透明PMMA樹脂からなる表面加飾層;
(7)ポリエステル系樹脂からなる接着層−可飾性粉体を有する着色PMMA樹脂からなる加飾層−PMMA樹脂からなる透明表面層;
【0031】
被覆層の厚みは、硬度、摩耗性、生産安定性の観点から0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上である。被覆層が2層以上の合成樹脂層からなる場合、芯材と接する層(いわゆる内層)の厚みは、前記接着性の観点より、少なくとも芯材の溝深さよりも厚くすることが極めて好ましい。なお、2層以上の合計厚みは上記範囲内であればよい。特に、被覆層厚みが0.6mm以上であれば、表面加飾層を形成する場合、安定した加飾表現が可能となる。なお、厚みの上限は特に制限されるものではないが、一体成形時の樹脂圧力が過剰になること、生産性及びコストの面より3mm以下であり、好ましくは2mm以下である。
【0032】
本発明の一体押出成形体は、生産性、長尺物成形、製品特性の一定性という面から、被覆層の押出成形と同時に被覆層を芯材と一体化させる、いわゆる一体押出法によって製造される。特に、2層以上の合成樹脂層からなる被覆層を有する一体押出成形体を製造する場合には、図5に示すような共押出式の一体化押出成形機によって製造される。詳しくは、各合成樹脂層を形成する樹脂を溶融・混練するための各押出機(図5中、11,12)より押し出された樹脂を1個のダイス13内で積層すると同時に、当該層を、送り込まれた長手方向の溝を有する芯材14に順次被覆して一体化する。一体化された後は、通常、冷却され、所望寸法に切断される。図5では2台の押出機が使用されているが、これに制限されず、被覆層を構成する合成樹脂層の数に応じて適宜設置されればよい。
【0033】
本発明の一体押出成形体は、アルミ製芯材の表面全面を合成樹脂にて被覆されている必要はない。例えば図4のような断面略長方形状のものであれば、上面及び下面を被覆し、側面は芯材むき出し状態であるような被覆状態であっても良い。また、建築用部材であれば外観として現れる部分のみが被覆されているような場合も本発明に含まれる。
【実施例】
【0034】
[芯材]
押出成形によって製造した以下に示すアルミ合金製芯材A〜Gを用いた。なお、芯材A〜Fの押出成形時において押出口には表1に示す各芯材の溝に対応する凸部を有した金型を用いた。芯材Gの押出成形時において押出口には凸部を有さない金型を用いた。芯材B〜Gにはさらにアルマイト処理を施して用いた。いずれのアルミ製芯材も全長3mであった。
【0035】
【表1】

【0036】
[評価サンプルの作成方法]
(実施例1)
図5に示す共押出式の一体化押出成形機によって一体押出成形体を製造した。詳しくは、外層(最表面層)、内層(芯材と接触する層)の合成樹脂を、それぞれ外層用押出機12、内層用押出機11から同時に押出し、ダイス13内でアルミ製芯材10(芯材A)に積層・被覆して、アルミ製芯材Aの外表面における周方向の全部に2層型被覆層を有する一体押出成形体を製造した。なお、押出条件、押出樹脂、芯材条件は次の通りである。
外層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度約180℃)
内層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度約150℃)
内層樹脂:ポリエステル系樹脂であって、比重が1.26、融点が115℃のものを用いる。冷却後の内層厚みは0.2mmである。
外層樹脂:SAS樹脂(ユーエムジーウッド;ユーエムジーエービーエス社製)。冷却後の外層厚みは0.5mmである。
アルミ製芯材は、ダイス内に挿入直前に予備加熱(約100℃)を行う。
【0037】
(実施例2〜4および比較例1)
アルミ製芯材として表2に示す芯材を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、一体押出成形体を製造した。
(実施例5および比較例2)
アルミ製芯材として表2に示す芯材を用いたこと、および内層樹脂の厚みを0.4mmとし、外層樹脂の厚みを1.0mmとしたこと以外、実施例1と同様の方法により、一体押出成形体を製造した。
【0038】
【表2】

【0039】
[評価方法]
・接着性
まず、サンプルに対してサーマルサイクル試験を実施した。
サーマルサイクル試験とは、サンプルを低温及び高温状況下に繰返し保持するものであり、具体的には、−10℃で2時間保持及び80℃で2時間保持を1サイクルとし、計20サイクル行った。なお、当該サーマルサイクル試験終了後、表面を水で洗浄し、24時間陰干しにて乾燥させた。
【0040】
続いて、当該試験終了後のサンプルに対し、JISK5400:1990の8.5.2碁盤目テープ試験に準じて、接着性試験を行った。詳しくは、サンプル表面にマス目を作成した。マス目はカッターナイフにて作成し、カッターナイフによる切り目間隔は2mm、マス目の総数は100個とした。テープの貼り方及びテープの剥がし方についてはJIS法に準じて行った。表中の評価結果において、分子は剥離しなかった碁盤目の数であり、分母は全碁盤目数である。
上記接着性試験は一体押出成形体の長手方向における中央部において行った。なお、剥離碁盤目が1つでもあると、当該一体押出成形体は全体として出荷できるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のアルミ製芯材入り一体押出成形体は、建築用化粧材、建築用手摺り、防犯用面格子、デッキ材、バルコニールーバー等の建築用部材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一体押出成形体の一例を表す概略見取り図である。
【図2】本発明の一体押出成形体の一例を表す概略見取り図である。
【図3】本発明の一体押出成形体を構成する芯材の一例を表す概略見取り図である。
【図4】本発明の一体押出成形体を構成する芯材の一例を表す概略見取り図である。
【図5】本発明の一体押出成形体を製造するための共押出式の一体押出成形機の概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:被覆層、2:溝、10:14:芯材、11:12:押出機、13:ダイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ製芯材の外表面における周方向の一部または全部に、該芯材の長手方向に沿って合成樹脂からなる被覆層が形成されてなり、芯材の外表面が少なくとも被覆層形成領域において長手方向に沿って、深さ0.03〜1.0mmの溝を有することを特徴とする一体押出成形体。
【請求項2】
芯材が押出成形によって形成され、該芯材の押出成形時に溝が形成された請求項1に記載の一体押出成形体。
【請求項3】
被覆層が2層以上の合成樹脂層からなり、芯材と接触する合成樹脂層がポリエステル系樹脂層である請求項1または2に記載の一体押出成形体。
【請求項4】
被覆層の厚みが0.3mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の一体押出成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の一体押出成形体からなる建築用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−175949(P2007−175949A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375321(P2005−375321)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】