説明

一定のトルクを有するプロフィールギヤ

【課題】2つのホイールの軸間の距離が理論値から外れるときでも、歯の駆動の間一定のトルクを伝達する特性を有する伝動装置の輪郭を提供すること。
【解決手段】各歯のエッジの機能的な部分が、下記のパラメトリックの2つの式(デカルト座標において)を満足するプロフィールを有する歯付きホイール:
【数1】


ここで、R1 = d1 cos(α − atan μ)、αとd1はパラメータであり、μは前記エッジと別のホイールの歯のエッジ間の接触での摩擦係数に対応し、0.05と0.5の間の数値を採ることができ、uは間隔(0,1/μ)内で変動する変数であり、uを変えることにより前記プロフィールは変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ウォッチのギヤ列を構成しているホイールとピニオンに関し、更に詳しくは、これらのホイールの歯のプロフィールとこれらのピニオンのプロフィール(以下、プロフィールを単に「輪郭」と呼ぶ。)に関する。本発明は、また本発明によるホイールやピニオンを含む時計以外に、ウォッチのムーブメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウォッチにおいて、スプラングバランスの振動が完全に等時性を持たないことは、知られている。換言すれば、この振動の継続時間(周期)は、振動の振幅から完全に独立してはいない。また、テン輪(バランスホイール)の振動の総角度がリミット値を超える場合は、このテン輪ローラーのピンはフォークの外側に当接し、それによってウォッチのムーブメントにかなりの進みが生じることも知られている。従って、この後者については、ノックすると言われている。上述のことから、テン輪の振動の振幅を出来る限り等しくすることが望ましいということが分かる。
【0003】
螺旋のテン輪の振動の振幅の変動には、複数の原因がある。ウォッチが水平位置から垂直位置に向かって変位すると、このテン輪のピボットによって被る摩擦の強度が増加することは、当業者には周知である。他方、脱進機構によってテン輪に伝達される力の変動によって、このテン輪の振幅に同様に変動を引き起こすことがよく知られている。
【0004】
様々な要因が、脱進機構からテン輪に伝達される力の変動の根元にあると考えられる。第1に、バレル・スプリングの張力は、この後者の巻回の程度に依る。これは、通常、パワーリザーブの関数として、ギヤ列によって伝達される力の変動となる。他方、伝動装置(ギヤリング)において、嵌合する2つの歯のフランクの輪郭間の接触点は、歯の駆動中に、半径方向に移動し、駆動歯のヘッドの方へ移動する。この現象は添付図1に概略的に例示され、82個の歯とピッチ円半径R1を有する駆動輪10が、12個の歯とピッチ円半径R2を有する被駆動輪11と嵌合するのが示されている。矢印は、回転方向を示す。
この接触点の軌跡(嵌合線12と呼ばれる)は、ポイントAからポイントBまで延在し、2つのホイールの中心を結ぶ中心線13の近傍でホイールの2つのピッチ円を横切る。
公知の伝動装置においては、この駆動輪の被駆動輪との接触点がこの嵌合線に沿って進行する間、伝達されるトルクと受け取られるトルク間の比は一定ではない。
これに反して、ある歯の駆動中に、この比は、図1の垂直中心スケールの反対側で、例えば、曲線14が示すように、変動する。
【0005】
ウォッチのムーブメントにおいて、バレルから脱進機構へと力を伝達するのは、ギヤ列である。このギヤ列がマルチプライングギヤ列であることは知られている。従って、このギヤ列の下流側端部で、脱進機構ホイールが秒あたり数ステップだけ正常に進むならば、このギヤ列の上流の部分はこの同じ期間中殆ど移動しない。これらの状態においては、ギヤ列の上流の部分にある単一の歯の駆動は、テン輪のかなりの数の振動の間続くことができる。従って、伝達装置の上流側の1つの歯の駆動中に伝達されるトルクの変動は、一般的に、テン輪の振動の振幅に影響を及ぼすのに十分な時間の間続く。
【0006】
最終的には、脱進機構からテン輪へと伝達される力は、1つのタイムピースから他のタイムピースに同様に変化することができ、これらのタイムピースが理論的に同一の場合であっても、そのようになる。事実、時計および時計の製造の特徴である小型化の高度さのため、複数のホイールとウォッチのピニオンの位置決めの製造許容度は、このウォッチのギヤ列によって伝達される力に大いに影響を及ぼすのに十分でありえる。その理由は、公知の伝動装置(ギヤ)の輪郭について、この2つの歯付きホイールの回転軸間の距離が理論値から外れるや否や伝動装置において伝達されるトルクが大いに変化するからである。
軸心の距離の変動に対するこの伝動装置の感度の主な不利点は、ノッキングのあらゆるリスクを無くすためにウォッチのムーブメントの各例のテン輪の振動の振幅を相当な時間に亘って計測する必要があることだ。
【0007】
時計および時計の製造の分野において、例えば歯付きホイールの歯の輪郭とピニオンの刃の輪郭を、ある円に対するサイクロイド、エピサイクロイド、インボリュートなどの幾何学的な曲線に基づいて決定することは、知られている。このようにして得られたホイールとピニオンはある「比例した伝達」を与えることができる特徴、即ち、換言すれば、1つの歯の駆動中、一定のままである回転速度を伝達する特徴を有する。更に、歯を有し、その歯の輪郭が円に対するインボリュート(以下、円に対するインボリュートを、単に「インボリュート」と呼ぶ。)に基づいているホイールおよびピニオンは、この2つのホイールの軸間の距離がこの理論値から外れている場合でさえ、この同じ伝達比で、比例した伝達ができるという追加的な特徴を有する。
【0008】
図2A(インボリュートを有する伝動装置を表す)は、24個の歯を有するホイール1と16個の歯を有するホイール2との嵌合を示す。図2Aは、更に、この2つのホイールの各々に重畳された2つの同心円を示す。これらの2つの円(それぞれの参照符号はB1、B2)のうち小さい方の円は、このインボリュートのベース円である。大きい方の円(それぞれの参照符号はP1、P2)は、ピッチ円である。このホイール1のピッチ円P1とホイール2のピッチ円P2は、定義上一点で接触する。更に、これらのピッチ円の半径d1とd2の比は、この伝動装置の伝達比に等しく選択される。ここで注目すべきことは、これらのピッチ円の半径d1とd2に反して、この2つのベース円B1とB2の半径R1とR2が、2つのホイールの中心間の距離に依存しないことである。しかしながら、定義上、それらは、d1およびd2と同じ比である。
【0009】
噛合線7を、再び、図2A、2Bに示す。この図示の例において、この嵌合線は2点AとBによって区切られた直線の線分の形状を有することが見て取れる。更に注目すべきことは、インボリュートを有する伝動装置の示差的特徴によれば、この嵌合線7にサブテンドする直線はこの2つのベース円B1とB2に対して正しく接線方向(タンジェンシャル)であることである。インボリュートを有する伝動装置の別の示差的特徴は、この接触点での2つの歯のエッジに共通な法線は、嵌合線の方向に、常に指向している(図2B)ことである。インボリュートを有する伝動装置の有利な特徴は、駆動輪と被駆動輪の角速度間の比が一定のままであって、かつ2つのホイール間の軸中心距離から独立していることである。換言すれば、すでに述べたように、インボリュートを有する伝動装置は、この2つのホイールの軸間の距離が公称値から外れているときでも、同じ伝達比で、比例した伝達を与えるという特徴を有することである。前述したことから、インボリュートを有する伝動装置によって伝達されるトルクは、2つのホイール間の軸中心距離がどうであろうと、歯の駆動中一定のままであるとの結論を出したくなるかもしれない。しかしながら、そのように考えるのは、この伝動装置がもはや平衡状態にないとなるや否や避けられない摩擦力を無視することとなる。事実、これらのホイールの回転には、相互に接触している面の滑りと、従ってまた接触しているこの2つの歯のフランクに接線方向(タンジェンシャル)である摩擦力とが常に付随する。これらの摩擦力は、この接触点でこの2つの歯のエッジに垂直な共通線に対して垂直であることが理解されよう。これらの摩擦力は、従って、伝達される力を嵌合線の方向から散開(ダイバージ)させる効果を有する。図2Bに類似の図3を参照すれば、力は互いに接触しているエッジによって及ぼされているのが知れる(これらの力は、2つの歯間の接触点に起源を持つ2本の対向する矢で示されている)。これらの力の方向は、嵌合線と共線的でないことが分かる。力と嵌合線間の散開(ダイバージェンス)により、伝達されるトルクが歯の駆動中一定でないということである。
【0010】
事実、一定のトルクを伝達するために、歯の駆動の初めから終わりまで、2つの歯間の接触点での力は、この中心線の同一点(図8A、8Bおよび8Cにおける参照符号P0)に向かって、コンスタントに指向されていることが必要であるということが示される。従って、上述のことから、この接触している歯が摩擦なしで互いの上を滑ることができない限り、インボリュートを有する伝動装置は一定のトルクを伝達することができないということが理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従って、2つのホイールの軸間の距離が理論値から外れるときでも、歯の駆動中一定のトルクを伝達する特性を有する伝動装置の輪郭を提供することによって従来技術の不利な点を改善することである。本発明は、一方では、請求項1に従うホイールまたはピニオンを提供することによって、そして、他方では、本発明によるホイールまたはピニオンを含むウォッチのムーブメントや時計を提供することによって、この目的を達成する。
【0012】
本発明の他の特徴および効果は、添付図を参照して以下の説明から明らかとなる。なお、これらの図は単に例示的なものであり、発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】公知の伝動装置の部分的な模式図である。
【図2A】インボリュートを有する公知の伝動装置の模式的な表示である。
【図2B】図2Aのインボリュートを有する伝動装置の部分的な拡大略図である。
【図3】図2Bに類似の模式図で、接触点での相互の歯によって及ぼされる力が、追加して表されている。
【図4】2つの歯間の接触点が中心線と一致する場合の本発明による伝動装置の部分的な模式図である。
【図5】この中心線に沿った2つの歯間の接触点の位置とこの伝動装置の平均出力との間の関係を例示する。
【図6】この中心線の通過の間の接触点での歯のエッジの傾斜角度を示す。
【図7】伝動装置の2つのホイールの歯のエッジの機能的なヘッド部とフット部の構成を例示する。
【図8A】本発明による伝動装置において、伝達された力の方向が常に同じ点で中心線と交差することを事実示している3つの連続したスナップショットに対応する。
【図8B】本発明による伝動装置において、伝達された力の方向が常に同じ点で中心線と交差することを事実示している3つの連続したスナップショットに対応する。
【図8C】本発明による伝動装置において、伝達された力の方向が常に同じ点で中心線と交差することを事実示している3つの連続したスナップショットに対応する。
【図9】図8Bに類似の模式図で、2つの直線の線分によって形成される嵌合線を示す。
【図10A】3つの部分的な模式図で、それぞれ、相互から3つの距離に配置された同一対のホイールの嵌合を示す。
【図10B】3つの部分的な模式図で、それぞれ、相互から3つの距離に配置された同一対のホイールの嵌合を示す。
【図10C】3つの部分的な模式図で、それぞれ、相互から3つの距離に配置された同一対のホイールの嵌合を示す。
【図11】図10A、10B、10Cに表された図の3つのケースにおいて歯の駆動中に伝達されるトルクの変動をそれぞれ表している3本の曲線を含むグラフである。
【図12A】歯の駆動中の2つの異なる瞬間での本発明の第2実施例による伝動装置を示す。
【図12B】歯の駆動中の2つの異なる瞬間での本発明の第2実施例による伝動装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図4は、本発明による伝動装置の2つの歯17、18間の接触点(参照符号P0)がこの中心線上に位置する場合の部分的な模式図である。以下、図4の伝動装置を作り出すプロセスの簡単な説明を行う。
【0015】
今説明しようとしているプロセスは、あるパラメータの値が既に公知(または選択済み)である瞬間から始まるものとする。
これらのパラメータは、以下の通り:
− 公称軸中心距離「d」;
− この軸中心距離の許容度、換言すると、間隔[dmin、dmax]で、この範囲内では歯の輪郭は一定のトルクを与えなければならない;
− 2つのホイールの歯の数「z1」と「z2」;
− 2つの歯間の接触点での摩擦係数「μ」。
【0016】
1.このプロセスのこの第1のステップは、伝動装置が持たねばならない効率「ε」を定めることである。
【0017】
ホイール1によってホイール2上に及ぼされるトルクをM12で示し、ホイール1上に及ぼされるホイール2の反応を、M21で示すと、歯の駆動中にホイール1によってホイール2に与えられる仕事(エネルギー)は2π/z212に等しく、ホイール2に受け取られるこのエネルギーは2π/z221に等しい。
これらの状態において、効率出力がεに等しいとすると、2π/z221 =ε2π/z112または等価的に
【数1】

が与えられる。
【0018】
本発明によってこの輪郭を構成するためには、この平均効率「ε」を選択することが必要である。殆ど1に近いεの値、例えば間隔[0.9; 0.99]内の値が、好ましくは選択される。
【0019】
1をホイール1の中心とP0(即ち、中心線と嵌合線の交点)間の距離とし、d2をホイール2の中心とP0間の距離とすると、
【数2】

が理解されよう。事実、一方では、ホイール1によってホイール2上に及ぼされる力F12は、ホイール1上に及ぼされるホイール2の反応力F21に等しく、かつ、他方では、この接触点がこの中心線上にある瞬間では、次式が与えられる:
21 = d1 sinβ F21およびM12 = d2 sinβ F12(ここで、βはこの力がこの中心線でつくる角度である)。
【0020】
この中心線上の接触点P0の位置は、従って、
【数3】

とd1 + d2 = d との関係にわたる出力「ε」の値に依存する。
図5は、視覚的にこの関係を例示する。
【0021】
2.このプロセスのこの第2のステップは、この歯の傾斜の角度を選択することである。
【0022】
公知の伝動装置の輪郭の場合のように、この歯の傾斜を選択することが必要である。図6で示すように、本実施例では、この歯のエッジの傾斜は、この中心線上の接触点P0で選択される。この傾斜は接触点P0での1つの歯の接線(タンジェント)と中心線間のなす角度αで表される。この角度は、10°と30°の間で好ましくは選択される。
【0023】
3.このプロセスの第3のステップは、これらのベース円の半径R1とR2を算出することである。
【0024】
本実施例では、各歯のエッジの機能的な(または有用な)部分は、2つの部分「a」と「b」、即ち、有用なヘッド部と有用なフット部から形成される;
図7で分かるように、このフット部とヘッド部は、接触しているこの2つの歯に共通である点P0で接合される。ホイール1の歯のエッジの機能的な部分は、有用なフット部「a1」と有用なヘッド部「b1」によって形成される。
同様に、ホイール2の歯のエッジの機能的な部分は、有用なフット部「a2」と有用なヘッド部「b2」によって形成される。
【0025】
再び図7に加えて図4を参照すると、まず第1に、駆動輪(ホイール1)の歯のエッジのフット部a1が被駆動輪(ホイール2)の歯のエッジのヘッド部b2を押すと理解されよう。次に、ヘッド部b1がフット部分a2を押す。更にまた、この接触点が中心線と交差するとき、または、換言すれば、この摩擦の力が点P0で方向を代えるときに、接触している2つの歯のエッジ間の摩擦の力「μ」が、方向を切り換える。従って、この摩擦係数「μ」は、この中心線を横切る前は、負(部分a1とb2間の摩擦)で、その後は正(部分b1およびa2間の摩擦)であると考えられる。
【0026】
これらの2つのホイールのこのベース半径RlとR2は、この以下の公式によって与えられる:
l = dl cos(a − atan μ)
2 = d2 cos(a − atan μ)
【0027】
従って、歯は、例えばサイクロイドで発生するごとき、異なる輪郭の2つの部分から形成される。実際のところ、この摩擦係数は、点P0で符号を変えるので、各歯について2つのベース半径R(a)およびR(b)がある。この歯のエッジの部分aに対するベース半径とこの歯のエッジの部分bに対するベース半径である。
本発明よれば、この2つの部分aとbの輪郭は、このポイントP0で接線(タンジェント)である。
【0028】
このプロセスの第4のステップは、各歯の部分aとbの輪郭を算出することである。
【0029】
各ホイールの歯の部分aとbは、下記の式によって算出される:
【数4】

【0030】
注目すべきことは、上記の2つの関係が下記の結果を有することである:
2+y2=R2 (1+u2).
【0031】
上記の式において、このベース半径Rは、前述したように決定される。他方では、uは、間隔[0,1/μ]の間で変化するパラメータである。uを変えることによって、この曲線は、通過される。各部分について、この変数uの初期の値(uini)は、対応する半径方向の座標が、d1(ホイール1について)およびd2(ホイール2について)に等しいように決定される。言い換えると、この値uiniは、ポイントP0に対応するように決定される。各歯の部分a1、b1、a2およびb2に対してRは異なるある値であるので、各歯並びに各部分aまたはbに対しても、同様に異なる初期変数uiniがある。各歯1または2の各部分aまたはbは、増加するか減少する仕方でuiniからuを変えることによってP0からスタートして延び、その結果、この輪郭は、「正しい方向において」(即ち部分aに対しては半径方向座標が減少し、部分bに対しては半径方向座標が増加する)延在する。
【0032】
更に、注目すべきことは、各ホイール1または2の輪郭の各部分aまたはbを、接触点が中心線上にある位置に移動させるために上式xとyによって得られたこの輪郭の回転を再び遂行することが、必要であることである。
【0033】
このプロセスの第5のステップは、部分aとbの範囲(限界)を決定することである。
【0034】
この間隔[0,1/μ]の間で初期値uiniから変数uを変えることによって、輪郭の部分aとbは、長くすることができる:即ち、部分bのインフィニティ(1/μ向かうuに対応する)まで、そして、部分aに対するこのベース半径R(限界値u = 0に対応する)まで。
これらの部分の範囲を決定する変数uの値ufinは、この選択された軸方向の中心距離の許容度を考慮して、この軸中心距離がたとえどうであっても、この2つの歯の接触が、歯のエッジの機能的なまたは有用な部分上に常にあるようにシンプルに選択される。当業者は、また、ある1つの歯の輪郭が、ホイールの次の歯の輪郭を侵さないことを確実にする。これを行うために、当業者は、この歯のエッジの傾斜角度αの選択と伝動装置の効率「ε」の選択の両方に従って行動することが可能である。
【0035】
6.このプロセスの第6のステップは、フットおよびヘッドをこの歯に加えることである。
【0036】
上述の式は、ただ歯の輪郭の機能的な部分、即ち、別の歯との接触が起こることができるゾーンを記載するだけである。しかしながら、「機能的でない」ヘッドを追加することによって各歯を「閉じること」によって、また同様に隣接する歯のフットと連結されるフットを加えることによって噛み合いを完全なものとすることが必要である。これらの機能的でない部分が加えられるとき、噛み合いの間、機能的でない部分が機能的なゾーンを妨害するのを回避することが重要である。
【0037】
数値例は下記の通り:
− 公称の軸中心距離d =2.958mm;
− 軸中心距離の間隔[dmin、 dmax] =[2.913mm、2.968mm];
− この2つのホイールの歯の数 z1 = 82およびz2 = 12;
− 摩擦係数μ= 0.2;
− 伝達されるべきトルクの断片(フラクション):ε = 0.966;
− 傾斜の角度:α = 30.5°.
上述の値から続く:
− 部分a1に対して、R = 1.932mm、uini = 0.894およびufin = 0.821;
− 部分a2に対して、R = 0.346mm、uini = 0.348およびufin = 0.013;
− 部分b1に対して、R = 2.447mm、uini = 0.348およびufin = 0.408;
− 部分b2に対して、R = 0.273mm、uini = 0.894およびufin = 1.162。
【0038】
図8A、8Bおよび8Cは、本発明による伝動装置における歯の駆動中の3つの連続したスナップショットである。図8Aは、この接触点がこの中心線の前に位置する瞬間に対応し、図8Cは、この接触点がこの中心線の後で位置する瞬間に対応する。この2つの間で、図8Bは、この中心線上にある接触点を示す。図8Aおよび8Cが示すように、相互の面の反応力はそれらの面に垂直でなくて、傾斜している。更に、相互の面の滑りの方向はこの嵌合点の両側で逆向きであるから、法線に対する力の方向の偏差も、またこの嵌合点の両側で逆方向にある。
【0039】
図8A、8Bおよび8Cは、再びこの接触点での力の方向が、2つのエッジの嵌合の全期間中、この交点P0に関係していることを確認可能とする。この特徴は、一定の伝達されるトルクを有することを可能にするための必要条件である。すでに説明したように、本発明による伝動装置の輪郭の1つの利点は、この2つのホイールの中心間の距離がこの理論的な基準と異なる場合であっても、トルクはほぼ一定の仕方で常に伝達されることである。
【0040】
図8Bの様に、図9は、この接触点がこの中心線上に正確に位置している瞬間に対応する。図9において、この嵌合線は、破線で示されている。この円に対するコンボリュートのケースであったことに反して、本発明による伝動装置においては、この嵌合線は、この点P0で連結される2つの直線からなる部分から形成されることが分かろう。この嵌合線の方向が、あらゆる点でこの力の方向に対応することが、更に、理解されよう。最後に、この嵌合線と、接触している2つのエッジに共通である法線との間の角度は、摩擦係数のアークタンジェントに等しいことが明らかであろう。
【0041】
図10A、10Bおよび10Cは、相互から3つの距離に位置した同じ対のホイールの嵌合をそれぞれ示している3つの部分的な模式図である。図11のグラフに関しては、図10A、10Bおよび10Cのそれぞれに対応している3つの異なる軸中心距離についての歯の駆動中に伝達されるトルクの変動を示す。連続線の曲線は、この公称軸中心距離に対応し、従って、図10Aに例示される状況に対応し、点(ドット)からなる曲線は図10Bに例示される状況に対応し、最後に、交互の点と線からなる曲線は、図10Cの状況に対応する。
【0042】
図10Aに表される伝動装置において、この2つのホイールの中心間の距離は、この理論的な基準に対応する。この「理想的な」ケース(この中心線の通過の間)において、歯の間の接触点は、各々のホイールのエッジの部分aとb間の境界に正確に位置する。この場合、図11のある連続線の曲線が示すように、この伝達されたトルクは殆ど一定である。
【0043】
図10Bの伝動装置において、この2つのホイールの中心間の距離は、理論的な基準(ノルム)より大きい。図10Cの伝動装置において、この2つのホイールの中心間の距離は、正規の距離より小さい。一続きの点(ドット)から形成され、また、交互の点と線から形成されてなる図11の曲線で示されるように、伝達されるトルクは、この軸中心距離が公称値から外れていて、中心線からの通過の周りからはなれているときでも、殆ど一定のままである。事実、ホイール間の距離が、公称の軸中心距離に対応しないときは、接触している2つの歯のフット部分とヘッド部分間のこの2つの転移点は決して正確には一致しない。これらの状態において、一方の有用な部分から他方の有用な部分への接触点の通過は、2つの歯に対して同時には起こらない。同時性のこの欠如は、この伝達されるトルクに一時的な変動を伴う。
【0044】
図12Aおよび12Bは、本発明の第2の実施例による伝動装置における歯の駆動中の連続したスナップショットである。この第2の実施例によれば、1つの歯のエッジの機能的な部分は、たった1つの輪郭部分から成るものであって、図7〜11に例示の実施例におけるような2つの輪郭部分からなるものではない。
【0045】
駆動輪がホイール101で、被駆動輪がホイール102であると仮定すると、図12Aおよび12Bには2つの歯はただ中心線の後で接触するだけであることが見てとれよう。
これらの状態において、上で採用されたのと同じ約束が守られるならば、この摩擦係数「μ」は常に正であると言うことができる。事実、これらエッジ間の接触は、この中心線の後で、常に起こる(しかしながら、これらのホイールが他の方向に回ったならば、ホイール102が駆動輪となり、ホイール101が被駆動輪となる。すると、エッジ間の接触は、常に中心線の前で生じ、後で生じるのではないことが知れよう)。
【0046】
本発明のこの第2の実施例の効果は、伝達されるトルクの一時的な変動が回避されるということであり、この一時的な変動は本発明の第1実施例に関して上述した同時性の欠如と関係している。
【0047】
提案された本発明は、理論的には、正確に変動零(0%)を達成することを可能にする。しかしながら、それにもかかわらず、軸中心距離が正規でないとき、または摩擦係数が一方の部分から他の部分に変わり得るので、または、時間の経過の中で、変動の観察が予想される。しかしながら、出願人はこれらの変動は現行の輪郭のものより明らかに少ないことを算出し得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各歯のエッジの機能的な部分が、下記のパラメトリックの2つの式(デカルト座標において)を満足するプロフィールを有することを特徴とする歯付きホイール。
【数1】

ここで、R1 = d1 cos(α − atan μ)、αとd1はパラメータであり、μは前記エッジと別のホイールの歯のエッジ間の接触での摩擦係数に対応し、0.05と0.5の間の数値を採ることができ、uは間隔(0,1/μ)内で変動する変数であり、uを変えることにより前記プロフィールは変化する。
【請求項2】
各歯のエッジの第1の機能的な部分と第2の機能的な部分とが連続しており、各部分は下記のパラメトリックの2つの式を満足するプロフィールを有することを特徴とする請求項1に記載の歯付きホイール。
【数2】

ここで、パラメータαとd1、そしてまた、摩擦係数μのモジュラスは前記第1の機能的な部分と第2の機能的な部分とについて同一であり、摩擦係数μは前記第1の機能的な部分に対して正であり、前記第2の機能的な部分に対しては負である。
【請求項3】
前記歯付きホイールの前記機能的な部分は、各歯のエッジの機能的な部分を完全に含む、請求項1に記載の歯付きホイール。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2012−102877(P2012−102877A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−247198(P2011−247198)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(591048416)ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス (63)
【Fターム(参考)】