説明

一液常温硬化性塗料組成物

【課題】
仕上がり性に優れ、耐皮脂性にも優れた塗膜を常温乾燥の条件でも形成でき、環境や人体に対する負荷が少なく、建築用として有用な一液常温硬化性塗料組成物に関する。
【解決手段】
重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)を含む有機溶剤系の塗料組成物であって、重合体分散液(I)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであって、重合体溶液(II)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであり、 重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)の固形分質量比が10/90〜90/10の範囲内にあり、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量が塗料組成物中に含まれる全有機溶剤中80質量%以上であることを特徴とする一液常温硬化性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上がり性に優れ、耐皮脂性にも優れた塗膜を常温乾燥の条件でも形成可能であり、特に建築用として有用な一液常温硬化性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築塗料の分野では、塗料形態を一液型にすることができ常温硬化性を有することから不飽和脂肪酸で変性してなる樹脂が広く使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、エポキシ基含有ビニル重合体と不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸成分との反応物に、さらにイソシアネート基を有する化合物を反応させてなるウレタン変性ビニル系樹脂を被膜形成成分として含有することを特徴とする常温硬化性塗料組成物が開示されており、特許文献2には該ウレタン変性ビニル系樹脂に対し特定量の重合体分散液を併用させてなる建築用一液硬化性塗料組成物が開示されている。
【0004】
これら塗料組成物によれば常温乾燥の条件でも初期乾燥性が良好で、光沢、クラック追随性に優れた塗膜を形成することができるが、例えば人の出入りが多い箇所に塗装された場合、手脂・手垢などの成分が塗膜に付着・徐々に浸透していき、塗膜の軟化・剥離といった不具合(耐皮脂性の低下)を経時で生じることがある。
【0005】
一方、近年、人体又は環境に対する配慮から、臭気の強い有機溶剤いわゆる強溶剤を用いた塗料の使用が抑制されており、人体又は環境に対する負荷が比較的少ない有機溶剤、いわゆる弱溶剤を用いた塗料の開発が進められている。
【0006】
一般に塗料中に含まれる塗膜形成成分である樹脂の弱溶剤に対する溶解性は強溶剤に対する溶解性と比較すると格段に低く、このことが弱溶剤系塗料の設計を困難にさせている。例えば、上記耐皮脂性の低下に対する解決手段として皮脂成分と馴染み難い高極性材料を用いると、弱溶剤に対する溶解性の低下に起因して塗膜の仕上がり性不良を生じる。また、塗膜形成成分中に導入する一液常温硬化性である不飽和脂肪酸基の増量を検討しても耐皮脂性はそれほど向上しないばかりか形成塗膜の仕上がり性が不良となる。このように環境や人体に対する負荷が少ない弱溶剤を用いた塗料で耐皮脂性と仕上がり性を満足させることは非常に困難である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−329212号公報
【特許文献2】特開2001−262055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、仕上がり性及び耐皮脂性に優れた塗膜を常温乾燥の条件でも形成でき、環境や人体に対する負荷が少なく、建築用として有用な一液常温硬化性塗料組成物を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記した課題について鋭意検討した結果、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる炭化水素系溶剤を主成分とする弱溶剤系塗料に、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体分散液と、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体溶液を特定割合で含ませることで、仕上がり性及び耐皮脂性に共に優れた塗膜を常温乾燥の条件でも形成することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
1. 重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)を含む有機溶剤系の塗料組成物であって、重合体分散液(I)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであって、
重合体溶液(II)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであり、
重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)の固形分質量比が10/90〜90/10の範囲内にあり、
脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量が塗料組成物中に含まれる全有機溶剤中80質量%以上であることを特徴とする一液常温硬化性塗料組成物、
2. 重合体分散液(I)が、重合性不飽和モノマーを溶解し、該モノマーから形成される重合体は溶解しない有機液体中で、該有機液体に可溶な分散安定剤(X)の存在下で該重合性不飽和モノマーを2種以上重合して得られるものであり、該分散安定剤(X)が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体である1項に記載の一液常温硬化性塗料組成物、
3. 分散安定剤(X)が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体であって、エポキシ基を有する重合体(A1)に不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B1)を反応させた後、イソシアネート基を有する化合物(C1)を反応させて得られる重合体である2項に記載の一液常温硬化性塗料組成物、
4. 重合体溶液(II)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであり、エポキシ基を有する重合体(A2)と不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B2)との反応生成物に、イソシアネート基を含有する化合物(C2)を反応させて得られる重合体である1項ないし3項のいずれか1項に記載の一液常温硬化性塗料組成物、
5. 分散安定剤(X)として重合体溶液(II)を使用することを特徴とする2項ないし4項のいずれか1項に記載の一液常温硬化性塗料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料組成物によれば、一液型であり、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる炭化水素系溶剤を主成分とする有機溶剤を使用しているので環境や人体に対する負荷が少なく、仕上がり性に優れ、且つ耐皮脂性の良好な硬化塗膜を常温乾燥の条件でも形成することができ、人の手が頻繁に触れるような箇所に適用した場合でも、塗膜が軟質化したり手に付着する、あるいは塗膜に汚染物質などが付着することなく、良好な塗膜状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
重合体分散液(I)
本発明における重合体分散液(I)は、重合体分散液(I)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであれば従来公知の重合体分散液を制限なく使用でき、例えば、動的光散乱法による光強度平均粒子径が150〜900nm、多くは250〜400nm程度の安定な粒子の分散液であり、重合性不飽和モノマーを溶解し、該モノマーから形成される重合体は溶解しない有機液体中で、該有機液体に可溶な分散安定剤(X)の存在下で該重合性不飽和モノマーを2種以上重合して得られるものであり、重合性不飽和モノマーからなる重合体を芯とし、分散安定剤(X)を皮とするいわゆる非水ディスパーション(NAD)と称される分散液を好適に使用できる。
【0012】
本発明において、後述される有機液体に可溶な分散安定剤(X)には、従来公知の樹脂が種々適用可能であり、通常、数平均分子量が1,000〜100,000程度の樹脂が適当である。特に該分散安定剤(X)として、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体を使用すると、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の耐皮脂性が良好となり、好ましい。
【0013】
上記ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体は、例えば、エポキシ基を有する重合体(A1)に不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B1)を反応させた後、イソシアネート基を含有する化合物(C1)を反応させることにより製造することができる。
【0014】
エポキシ基を有する重合体(A1)は、通常、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーを共重合することによって製造することができ、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜24のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキシド鎖と水酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、スチレン、ビニルベンゼン、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0016】
上記エポキシ基を有する重合体(A1)において、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーとの共重合比率は、通常、
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーが、3〜70質量%、好ましくは10〜40質量%、
その他の重合性不飽和モノマーが30〜97質量%、好ましくは60〜90質量%の範囲内にあることが、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の耐皮脂性、塗り重ね時耐チヂミ性などの点から適当である。
【0017】
上記重合体において、水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用量の決定においては、イソシアネートを有する化合物(C1)との反応の際に、ゲル化が起こらぬようにその量を決定すべきである。通常、水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、重合体を構成するモノマー成分中、30質量%以下であることが適当である。
【0018】
上記重合体(A1)を得るための共重合方法は、とくに限定されるものではないが、脂肪酸成分(B1)やイソシアネート基を有する化合物(C1)との反応のさせやすさなどの面から、有機溶剤中にてラジカル重合開始剤の存在下で行う溶液重合法が好適である。
【0019】
上記重合体の溶液重合による合成に際して使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0020】
また溶液重合による合成に際して使用される有機溶剤としては、当業界でいわゆる弱溶剤と呼ばれる有機溶剤が好適である。
【0021】
このような弱溶剤としては、例えば脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤を挙げることができる。
【0022】
かかる炭化水素系溶剤の具体例としては、例えば、VM&Pナフサ、ミネラルスピリット、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、ソルベントナフサ、「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」(以上商品名、東永産業社製)、「スワゾール310」、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上商品名、丸善石油化学社製)などを使用することができる。
【0023】
また、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの沸点が148℃未満の炭化水素溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;イソプロパノール等のアルコール系溶剤等の有機溶剤を単独で、あるいは2種以上を混合して、必要に応じて任意に用いることができる。
【0024】
上記脂肪酸成分(B1)は、不飽和脂肪酸を必須に含有し、必要に応じて飽和脂肪酸を含有する脂肪酸成分であり、ヨウ素価が約50〜200の範囲内にあることが塗膜の硬化性と製造安定性の点から適当である。
【0025】
脂肪酸成分(B1)の必須成分である不飽和脂肪酸は、酸化硬化形の重合性不飽和基を有する脂肪酸であって、上記重合体(A1)に酸化硬化性基である不飽和脂肪酸基を導入するものであり、その具体例としては、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸成分(B1)が上記不飽和脂肪酸に加えて、さらに必要に応じて含有することができる飽和脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の不乾性油脂肪酸;カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0027】
上記脂肪酸成分(B1)の使用割合は、上記重合体(A1)の樹脂固形分100質量部に対して1〜60質量部、好ましくは5〜30質量部の範囲内にあることが、得られる塗膜の硬化性及び耐候性、耐皮脂性、塗り重ね時耐チヂミ性などの面から好適である。
【0028】
本発明において、上記重合体(A1)と脂肪酸成分(B1)との反応は、重合体(A1)中のエポキシ基と脂肪酸成分(B1)中のカルボキシル基とのエステル化反応に基くものであり、この反応によって得られる脂肪酸変性重合体は通常、2級水酸基を有する。この反応に際しては、必要に応じて、N,N−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン;臭化テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩等の反応触媒を用いることができる。反応触媒を使用する場合には、その使用量は、重合体(A1)と脂肪酸成分(B1)との合計100質量部に基いて0.01〜100質量部の範囲内が適当である。
【0029】
重合体(A1)と脂肪酸成分(B1)との反応条件は、ゲル化などの反応上の問題を起こすことなく、重合体(A1)中のエポキシ基と脂肪酸成分(B1)中のカルボキシル基とが反応できる条件であればよく、通常、約100〜170℃で、約2〜10時間加熱する条件が適当である。
【0030】
本発明において、上記脂肪酸変性重合体にウレタン結合を導入するためのイソシアネートを有する化合物(C1)としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂環族又は脂肪族のポリイソシアネート化合物、及びこれらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体やビュウレット体、これらのポリイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物、リジントリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0031】
上記イソシアネート基を有する化合物(C1)の使用量は、上記脂肪酸変性重合体中の水酸基に対するイソシアネート基を有する化合物(C1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.05〜2.0、好ましくは0.1〜1.2の範囲内になるように決定することが好適である。
【0032】
当量比が0.05未満になると耐皮脂性、耐水性が低下し、2.0を超えると硬く脆い塗膜となる為下塗り適性が発現できないことがある。また、塗料粘度が上昇してしまい作業性を低下させることがある。
【0033】
上記(A1)及び(B1)の反応による脂肪酸変性重合体に上記イソシアネート基を有する化合物(C1)を反応させる際、その反応の進行程度によって、例えば反応系の粘度が上昇し適性範囲を超える場合には、アルコール類、フェノール類、ラクタム類、オキシム類などを適当量添加し、反応を制御することができる。
【0034】
前記脂肪酸変性重合体とイソシアネート基を有する化合物(C1)との反応は、必要に応じて、反応触媒の存在下において行うことができる。上記反応は、脂肪酸変性重合体中の水酸基とイソシアネート基を有する化合物(C1)中のイソシアネート基との反応によるものである。
【0035】
上記脂肪酸変性重合体中の水酸基には、重合体(A1)中に初めから存在する水酸基、重合体(A1)と脂肪酸成分(B1)との反応によって生成する水酸基がある。
【0036】
上記反応触媒としては、例えばジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルへキシレート)、ジベンジル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレエート、テトラブチルチタネート等の有機金属化合物等が挙げられる。これらの反応触媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
上記反応触媒は、脂肪酸変性重合体とイソシアネート基を有する化合物(C1)との合計100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.005〜1質量部を用いることが反応の促進効果の点から適当である。
【0038】
上記のようにして得られるウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を有する重合体は分散安定剤(X)として好適に使用される。
【0039】
分散安定剤(X)の存在下で重合される芯となりうる重合体を形成する重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上併用して使用できる。
【0040】
また、本発明の1液常温硬化性塗料組成物を用いて形成される塗膜に対する皮脂成分の浸透を抑制する効果があることから、上記重合性不飽和モノマーは、その成分の一部として多ビニル化合物を含んでいてもよい。該多ビニル化合物としては、例えばアリル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−プロペニル(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。該多ビニル化合物を使用する場合は重合性不飽和モノマー中2質量%以下の範囲内で使用するとよい。
【0041】
上記重合性不飽和モノマーと分散安定剤(X)の使用割合としては、重合性不飽和モノマー/分散安定剤(X)質量比で10/90〜80/20好ましくは50/50〜70/30の範囲内にあることが適している。
【0042】
分散安定剤(X)が質量比で90を超えると、塗り重ね時の耐チヂミ性が低下し、20未満では乾燥性が悪くなり、耐皮脂性、耐水性を低下させることがある。
【0043】
上記した如き分散安定剤(X)の存在下での重合性不飽和モノマーの分散重合は、上記重合性不飽和モノマーを溶解し、該モノマーから形成される重合体は溶解せず分散安定剤(X)は溶解する有機液体中で、ラジカル重合開始剤の存在下で行なわれる。
【0044】
上記有機液体としては、分散安定剤(X)の溶液重合において使用される有機溶剤の説明で挙げた有機溶剤を使用することができ、該ラジカル重合開始剤は上述したものと同様のものが使用可能である。
【0045】
重合体溶液(II)
本発明において重合体溶液(II)は、該重合体溶液(II)を構成する重合体がウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものである。これにより、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜が耐皮脂性、塗り重ね時耐チヂミ性が良好と成り得る。
【0046】
かかる重合体溶液(II)におけるウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体は、上記重合体分散液(I)におけるウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体と同様に製造することができ、具体的にはエポキシ基を有する重合体(A2)と、不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸成分(B2)との反応生成物に、イソシアネート基を有する化合物(C2)を反応させて得られる酸化硬化型の重合体である。
【0047】
上記エポキシ基を有する重合体(A2)は、上記エポキシ基を有する重合体(A1)の中から適宜選択して使用することができる。
【0048】
上記不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B2)は、上記不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B1)の中から適宜選択して使用することができる。
【0049】
上記イソシアネート基を有する化合物(C2)は、上記イソシアネート基を有する化合物(C1)の中から適宜選択して使用することができる。
【0050】
本発明においては特に分散安定剤(X)として上記重合体溶液(II)を使用すると、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜中における被膜形成成分である重合体溶液(II)と重合体分散液(I)の皮成分の相溶性がアップし、均一な塗膜が形成できるとともに塗膜の硬化性が格段に向上し、粒子界面への手垢成分の浸透が抑制される効果を発揮することができるので好適である。
【0051】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、上記重合体分散液(I)及び重合体溶液(II)を含むものであり、その使用割合としては、重合体分散液(I)/重合体溶液(II)固形分質量比で10/90〜90/10の範囲内にあることを特徴とするものである。この範囲より重合体分散液(I)の使用割合が多すぎると塗膜の光沢、耐水性が低下し、一方重合体溶液(II)の使用割合が多すぎると塗り重ね時の耐チヂミ性が低下することから好ましくない。重合体分散液(I)及び重合体溶液(II)の好ましい使用割合としては、15/85〜50/50の範囲内を挙げることができる。
【0052】
また、本発明の塗料組成物は、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の塗料組成物中に含まれる全有機溶剤に対する含有量が80質量%以上であることを特徴とするものであり、好ましくは90質量%以上の範囲内にあることが望ましい。
【0053】
上記脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の具体例としては、上述した通りである。
【0054】
本発明の塗料組成物に含まれる有機溶剤は、すべてが上記脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤であることが望ましいが、該有機溶剤中に、脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤以外のその他の有機溶剤を20質量%以下、好ましくは10質量%以下含有していても良い。
【0055】
有機溶剤中における脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量が80質量%未満では作業環境上臭気の問題や、塗り重ね時の塗膜のチヂミ発生といった点から好ましくない。
【0056】
上記本発明の塗料組成物は更に必要に応じて、酸化硬化反応触媒、顔料類、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、塗液皮張り防止剤、防カビ剤、防藻剤、可塑剤、消泡剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
【0057】
上記酸化硬化反応触媒としては、例えばオクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸鉛等の有機金属化合物を挙げることができる。また、レオロジーコントロール剤としては、例えば酸化ポリエチレンや脂肪酸アマイドワックスなどの増粘剤、アルコキシシリル化合物又はその縮合物、さらには非水分散型樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は併用して使用することができる。
【0058】
本発明の塗料組成物は、金属、スレート、モルタルなどの素材面、これらの下塗り塗装(シーリング材、下地調整剤、厚付け材など)面、あるいは旧塗膜面などに適用可能であり、特にスレートやモルタルなどの無機建材用として、及びこれらに塗装された弾性を有する塗膜面上に有用である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。「部」及び「%」は、それぞれ質量部及び「質量%」を意味する。
【0060】
重合体分散液の製造
製造例1
フラスコ中にミネラルスピリットとして「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)32部、芳香族系混合溶剤として「スワゾール#1000」(丸善石油化学(株)製品、沸点162〜176℃)25部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、100℃まで撹拌を行ないながら昇温した。次いで、温度を100℃に保ちながら下記単量体混合物を4時間で滴下した。
分散安定剤(X−1)用単量体混合物組成
スチレン 20部
t−ブチルメタクリレート 40部
2−エチルヘキシルアクリレート 20.7部
2−エチルヘキシルメタクリレート 5部
グリシジルメタクリレート 14.3部
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 2.0部
その後100℃を保ちながら2時間熟成した後、130℃に昇温してからアマニ油脂肪酸97.1部、臭化テトラブチルアンモニウムブロミド2.3部を加えて脂肪酸の付加反応を行った。樹脂酸価をKOH滴定法で追跡し、樹脂酸価が1.0以下になった時点を終点とした。反応終了後、「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)45部で希釈し、さらに温度を100℃まで下げてから、ヘキサメチレンジイソシアネート0.2部を添加し、同温度で1時間反応させて、固形分55%の褐色透明な皮となりうる分散安定剤(X−1)を得た。フラスコ中に上記で製造した分散安定剤(X−1)185.4部、酢酸イソブチル25.5部及び「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)101部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、100℃まで撹拌を行ないながら昇温した。次いで、温度を100℃に保ちながら芯となりうる下記単量体混合物を3時間かけて滴下した。
単量体混合物組成
メチルメタクリレート 25部
エチルアクリレート 15部
メチルアクリレート 40部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1.5部
その後100℃で3時間熟成し、固形分60%の乳白色の重合体分散液(I−1)を得た。その平均粒子径は375nmであった。
【0061】
製造例2
上記製造例1において、分散安定剤(X−1)に使用する単量体混合物として下記分散安定剤(X−2)用単量体混合物を用いた以外は製造例1と同様にして行ない、分散安定剤(X−2)を得た。次いで分散安定剤(X−2)を使用する以外は製造例1と同様にして乳白色の重合体分散液(I−2)を得た。その平均粒子径は380nmであった。
分散安定剤(X−2)用単量体混合物組成
スチレン 20部
t−ブチルメタクリレート 50部
2−エチルヘキシルアクリレート 10.7部
2−エチルヘキシルメタクリレート 5部
グリシジルメタクリレート 14.3部
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 2.0部。
【0062】
製造例3
上記製造例1において、分散安定剤(X−1)に使用する単量体混合物として下記の分散安定剤(X−3)用単量体混合物を用いた以外は製造例1と同様にして行ない、分散安定剤(X−3)を得た。次いで分散安定剤(X−3)を使用する以外は製造例1と同様にして乳白色の重合体分散液(I−3)を得た。その平均粒子径は382nmであった。
分散安定剤(X−3)用単量体混合物組成
スチレン 20部
t−ブチルメタクリレート 45部
2−エチルヘキシルアクリレート 10.7部
2−エチルヘキシルメタクリレート 10部
グリシジルメタクリレート 14.3部
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 2.0部。
【0063】
製造例4
上記製造例1において、分散安定剤(X−1)溶液に対して滴下する単量体混合物として下記単量体混合物を用いた以外は製造例1と同様にして行ない、乳白色の重合体分散液(I−4)を得た。その平均粒子径は380nmであった。
単量体混合物組成
メチルメタクリレート 35部
エチルアクリレート 15部
メチルアクリレート 30部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1.5部。
【0064】
製造例5
上記製造例1において、分散安定剤(X−1)溶液に対して滴下する単量体混合物として下記単量体混合物を用いた以外は製造例1と同様にして行ない、乳白色の重合体分散液(I−5)を得た。その平均粒子径は374nmであった。
単量体混合物組成
メチルメタクリレート 30部
エチルアクリレート 15部
メチルアクリレート 35部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1.5部。
【0065】
製造例6
上記製造例1において、分散安定剤(X−1)溶液に対して滴下する単量体混合物として下記単量体混合物を用いた以外は製造例1と同様にして行ない、乳白色の重合体分散液(I―6)を得た。その平均粒子径は383nmであった。
単量体混合物組成
メチルメタクリレート 20部
エチルアクリレート 15部
メチルアクリレート 40部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1.5部。
【0066】
製造例7
上記製造例1において、ヘキサメチレンジイソシアネートを添加しない事以外は製造例1と同様にして行ない、ウレタン結合を有しない分散安定剤(X−5)を製造し、次いで分散安定剤(X−5)を使用する以外は製造例1と同様にして乳白色の重合体分散液(I−7)を得た。その平均粒子径は390nmであった。
【0067】
重合体溶液の製造
製造例8
フラスコ中にミネラルスピリットとして「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)32部、芳香族系混合溶剤として「スワゾール#1000」(商品名、丸善石油化学(株)製品、沸点162〜176℃)25部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、100℃まで撹拌を行ないながら昇温した。次いで、温度を100℃に保ちながら下記混合物を4時間で滴下した。
スチレン 25部
n−ブチルメタクリレート 14部
i−ブチルメタクリレート 16部
2−エチルヘキシルアクリレート 18部
グリシジルメタクリレート 27部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 1部
その後100℃を保ちながら2時間熟成した後、130℃に昇温してからアマニ油脂肪酸97.1部、臭化テトラブチルアンモニウムブロミド2.3部を加えて脂肪酸の付加反応を行った。樹脂酸価をKOH滴定法で追跡し、樹脂酸価が1.0以下になった時点を終点とした。反応終了後、「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)45部で希釈し、さらに温度を100℃まで下げてから、ヘキサメチレンジイソシアネート0.2部を添加し、同温度で1時間反応させて、固形分55%の褐色透明な重合体溶液(II−1)を得た。
【0068】
塗料組成物の製造
実施例1
上記製造例8で得られた重合体溶液(II−1)及び製造例1で得られた重合体分散液(I−1)を、樹脂固形分質量比が70/30となるように混合し、これらの合計樹脂固形分に対して硬化触媒としてナフテン酸コバルトを0.3質量%及びオクチル酸ジルコニウムを1.3質量%となるように添加した後、均一になるまで攪拌を行ない、さらに該合計樹脂固形分100質量部に対して、攪拌しながら「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)11.8部、「TRONOX CR−826」(商品名、テイカ社製、チタン白)81部、「ディスパロン6820−20M」(商品名、楠本化成社製、タレ止め剤)3.5部及び「ダッポ−SN−359」(商品名、サンノプコ株式会社、消泡剤)0.3部を配合し、サンドミルで分散後、さらに「日石Aソルベント」(商品名、日本石油(株)社製、沸点150〜205℃)にて粘度が75〜90KUとなるように調整して、弱溶剤系塗料組成物(A−1)を得た。該塗料組成物(A−1)中における脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量は全有機溶剤中96.5%であった。
【0069】
実施例2
上記実施例1において、重合体溶液(II−1)を分散安定剤(X−1)に置き換える以外は実施例1と同様にして弱溶剤系塗料組成物(A−2)を得た。該塗料組成物(A−2)中における脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量は全有機溶剤中96.5%であった。
【0070】
実施例3〜9及び比較例1〜3
上記実施例1において重合体溶液及び重合体分散液の組み合わせ、固形分質量比を表1に記載の通りとする以外は上記実施例1と同様にして弱溶剤系塗料組成物(A−3)〜(A−12)を得た。
【0071】
性能試験
上記実施例及び比較例で得られた各弱溶剤系塗料組成物を下記性能試験に供した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
(1)初期乾燥性:ガラス板上に各組成物を300μmのアプリケーターで塗装後、20℃,75%RHで6時間放置後の指触乾燥性を調べた。
◎:全く指紋がつかない、
○:わずかに指紋が付く、
△:指紋がはっきり付く、
×:塗膜が指に付着する。
(2)耐皮脂性試験:ボンデ鋼板上に200μmのアプリケーターで各塗料組成物を塗装後、20℃,75%RHで1週間放置する。試験模擬液であるオレイン酸/サラダ油=30/70(質量%)の混合液を400g/mの割合で塗膜に3日間接触させ、試験液を除去して指でラビング後の塗膜状態を観察した。
◎:問題なし、
○:塗膜の一部が軟化する、
△:塗膜全面が軟化する、
×:塗膜全面が剥離する。
(3)2回塗り作業性:ガラス板上に各塗料組成物を300μmのアプリケーターで塗装後、20℃、75%RHで16時間放置後、もう1度得られた塗膜の上に各塗料組成物を刷毛で乾燥膜厚80〜100μmとなるように塗装した後の塗膜の状態を観察した。
○:異常なし、
×:塗膜にチヂミが認められる、
(4)塗膜光沢:「アレスセラマイルド」(関西ペイント社製、白色の艶消し塗料)を塗装してなるスレート板上に、各塗料組成物を300μmのアプリケーターで塗装し20℃,75%RHで1週間乾燥後、60°鏡面反射率を測定し、下記基準で評価した。
○:80%以上、
×:80%未満。
(5)耐水性:スレート板上に各塗料組成物を300μmのアプリケーターで塗装し20℃,75%RHで1週間乾燥させた塗板を、上水(20℃)に3日間浸漬した後の塗膜の状態を観察した。
○:異常なし、
△:わずかにフクレが認められる、
×:著しくフクレが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)を含む有機溶剤系の塗料組成物であって、重合体分散液(I)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであって、
重合体溶液(II)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであり、
重合体分散液(I)並びに重合体溶液(II)の固形分質量比が10/90〜90/10の範囲内にあり、
脂肪族炭化水素系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる沸点が148℃以上の炭化水素系溶剤の含有量が塗料組成物中に含まれる全有機溶剤中80質量%以上であることを特徴とする一液常温硬化性塗料組成物。
【請求項2】
重合体分散液(I)が、重合性不飽和モノマーを溶解し、該モノマーから形成される重合体は溶解しない有機液体中で、該有機液体に可溶な分散安定剤(X)の存在下で該重合性不飽和モノマーを2種以上重合して得られるものであり、該分散安定剤(X)が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体である請求項1に記載の一液常温硬化性塗料組成物。
【請求項3】
分散安定剤(X)が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含む重合体であって、エポキシ基を有する重合体(A1)に不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B1)を反応させた後、イソシアネート基を有する化合物(C1)を反応させて得られる重合体である請求項2に記載の一液常温硬化性塗料組成物。
【請求項4】
重合体溶液(II)を構成する重合体が、ウレタン結合及び不飽和脂肪酸基を含むものであり、エポキシ基を有する重合体(A2)と不飽和脂肪酸を含む脂肪酸成分(B2)との反応生成物に、イソシアネート基を含有する化合物(C2)を反応させて得られる重合体である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の一液常温硬化性塗料組成物。
【請求項5】
分散安定剤(X)として重合体溶液(II)を使用することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の一液常温硬化性塗料組成物。

【公開番号】特開2009−114383(P2009−114383A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291035(P2007−291035)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】