説明

一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉の製造方法及び圧縮塊を製造するためのそのスプレー粉の使用方法

【課題】所定の要求を満たすスプレー粉を産業規模で得ることができる方法を提供すること
【解決手段】 上記課題は、一般式(I):
MOOC−CHR−N(CH2COOM)2(I)
で表わされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉の製造方法であって、
空気の導入と共にスプレードライされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含む水溶液から出発し、水溶液はその乾燥質量の総質量に対して84質量%以上の割合で一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含み、
スプレードライを、前記水溶液と前記空気が並流で、その水溶液とその空気の間で70〜350℃の範囲の温度勾配を有して流れる乾燥装置中で行い、
乾燥装置中において水溶液を、100m/s以上の周速で回転する一個以上のディスク上に供給すること等により、細かい液滴へと霧化する方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉の製造方法、圧縮塊を製造するためのそのスプレー粉の使用方法、及び固体又は液体の洗浄組成物中での、特に、食器洗浄器のための錠剤を製造するための圧縮塊の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤、特に、繊維用洗剤を製造するために、又は洗浄組成物、特に、食器洗浄用組成物を製造するために固体又は液体の製剤を選択することができる。
【0003】
洗剤又は洗浄剤は、通常、ヨードアルカリと重金属イオンの錯体形成剤を含む。グリシン−N,N−二酢酸誘導体がしばしばそれ自体として用いられる。
【0004】
これらは、その合成から生じる水溶液から出発し、スプレードライによって得られるスプレー粉の形態で使用される。そのスプレー粉は、貯蔵可能とするために、且つ続いて起こる加工工程である圧縮塊をもたらす処理のために好適にするために、しばしば、約0.3〜0.7kg/lの範囲で可能な限り高い嵩密度を有しなければならず、且つ約4〜8%の範囲の水分という比較的狭い濃度範囲で残留水分を有しなければならない。高い水含量を有するスプレー粉は、あまりにも速く凝集しがちであるのに対し、水含量があまりに低いスプレー粉は処理することが困難である。
【0005】
更に、スプレー粉は容易に流れ出し可能であるべきである。
【0006】
スプレー粉は、様々な粒子形態、特に、壁厚に依存して破損する可能性がある中空球状、固体球状、又は針状に形成されることが知られている。
【0007】
固体球状と同様に中空球状は特に容易に流れ出すことができ、約0.5〜0.7kg/lの範囲の所望の高い嵩密度を有し、及びまた、特に、破損した中空球状と同様に圧縮のために理想的に好適である。針状は同様に圧縮のために好適であるけれども、それらは辛うじて流れ出し、且つ約0.2〜0.5kg/lの範囲の低い嵩密度を有する。固体球状は高い嵩密度を有し、且つ容易に流れ出すけれども、それらは圧縮に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
錯体形成剤、特に、グリシン−N,N−二酢酸誘導体のみであるか、又はポリエチレングリコールとの混合物のどちらかを含むスプレー粉は、圧縮塊をもたらすために、しばしば、二つのロール又は押抜き具の間で約2〜10%の割合に圧縮され、続いて細かく砕かれ、そして断片化される。
【0009】
その圧縮塊は、しばしば、事前に所定の粒径、特に、約0.3〜1.6mmの範囲の粒径を有さなければならず、及びそれに応じて、食器洗浄器のための錠剤をもたらす圧縮工程であるさらなる処理工程において全ての供給材料に対して同様の粒径が保証されるように、約0.6〜0.7mmの範囲の平均粒径を有さなければならない。これは、全ての供給材料の良好な混和性のために必要であり、及び特に、食器洗浄器のための錠剤の製造の間の全ての供給材料の分離を未然に防ぐために必要である。
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記の要求を満たすスプレー粉を産業規模で得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
解決策は、一般式(I):
MOOC−CHR−N(CH2COOM)2(I)
[式中、
RはC1-12−アルキル基であり、及び
Mはアルカリ金属である。]で表わされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉の製造方法であって、
空気の導入と共にスプレードライされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含む水溶液から出発し、
−その水溶液が、その乾燥質量の合計質量に対して84質量%以上の割合で一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含み、
−スプレードライを、水溶液と空気が並流で、その水溶液とその空気の間で70〜350℃の範囲の温度勾配を有して流れる乾燥装置中で行い、
−乾燥装置中において水溶液を、100m/s以上の周速で回転する一個以上のディスク上に供給することにより、又はポンプを用いてその水溶液を2MPa(20bar)絶対圧力以上とし、且つこの圧力でその水溶液を一個以上の吹出し口を介して前記乾燥装置へと供給することにより、細かい液滴へと霧化することを特徴とする方法で構成される。
【発明の効果】
【0012】
嵩密度、流出性及び貯蔵安定性に関する優れた特性を有するだけでなく、さらに必要な高い引張強度及び/又は低い摩耗性を有する圧縮塊をもたらすために優れた方法で圧縮することもまた可能な、一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉が得られることがわかった。
【0013】
驚くべきことに、圧縮塊の引張強度は、この発明者らによって提案されるように、高純度の一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体と、それ故に、乾燥質量の合計質量に対して84質量%以上の割合で一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含む水溶液から出発する合成からの低い割合の二次成分とを含む水溶液から出発するスプレー粉がこのために使用される場合に大きく改良されることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この目的のために好適なものは、特に、対応する2−アルキル−若しくは2−アルケニルグリシン、2−アルキル−若しくは2−アルケニルグリシンニトリル、式
【0015】
【化1】

のダブルグリシン、又は式
【0016】
【化2】

のダブルグリシンニトリルを、ホルムアルデヒド及びシアン化水素若しくはシアン化アルカリ金属と反応させ、又は
イミノ二酢酸若しくはイミノジアセトニトリルを、式OHC−A−CHOの対応するモノアルデヒド若しくはジアルデヒド及びシアン化水素若しくはシアン化アルカリ金属と反応させ、その後になお存在する任意のニトリル基を加水分解させてカルボキシル基をもたらすというDE−A4319935の方法により得られるグリシン−N,N−二酢酸誘導体である。
【0017】
更に、本発明による方法は、好ましくは、中空球状及び/又は破損した中空球状を高い割合で有するスプレー粉が得られるように操作される乾燥装置中で実施される。
【0018】
これは、スプレードライされる水溶液とこの目的のために使用される高温空気との間の急激な操作温度勾配を保証することによる過酷な乾燥により、及び約20〜100μmの範囲の液滴直径を有する非常に微細な液滴へとその水溶液がスプレードライされることに貢献する素子を有する乾燥装置中でその乾燥が実施されることにより達成される。
【0019】
必要な操作温度勾配は、水溶液と乾燥のために使用される空気を約70〜350℃の範囲、好ましくは約150〜250℃の範囲の温度差でその乾燥装置へと通すことにより達成される。
【0020】
特に、その水溶液は約20〜120℃の範囲の温度でその乾燥装置へと通され、乾燥のために使用される空気は約150〜250℃の範囲の温度でその乾燥装置へと通される。
【0021】
水溶液の全体質量に対して20〜60%の合計濃度を有する一種以上のグリシン−N,N−二酢酸を含む水溶液を使用することが好ましい。
【0022】
水溶液の必要とされる微細霧化は、それを100m/s以上の周速で急速に回転する一個以上のディスク上に配置することにより達成することができる。これは、そのディスクの対応する回転速度で操作される、いわゆるディスクドライヤー中で達成される。
【0023】
また、その水溶液の必要とされる非常に微細な霧化は、ポンプを用いて水溶液を2MPa(20bar)絶対圧力以上とし、この圧力で水溶液を乾燥装置中に配置された一個以上の吹出し口を通すことにより達成される。好ましくは、この目的のために膜ポンプを使用することができる。
【0024】
好ましくは、その水溶液は3MPa(30bar)絶対圧力以上になされる。
【0025】
増加した圧力になされたその水溶液を、各吹出し口が好ましくは1〜4mmの範囲の開口部を有する1〜30の吹出し口、特に、1〜20の吹出し口へと通すことができる。
高圧にされた水溶液の霧化は、“Masters: Spray Drying Handbook”等より当業者にとって公知のジェットドライヤー中で実施することができる。
【0026】
本発明による方法では、一般式(I):
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、
RはC1-12−アルキル基であり、及び
Mはアルカリ金属である。]で表わされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉が提供される。
【0029】
一般式(I)の化合物では、Mはアルカリ金属であり、好ましくはナトリウム又はカリウムであり、特に好ましくはナトリウムである。
【0030】
RはC1-12−アルキル基であり、好ましくはC1-6−アルキル基であり、特に好ましくはメチル又はエチル基である。成分(a)としてメチルグリシン二酢酸(MGDA)のアルカリ金属塩を用いることが特に好ましい。メチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩を用いることが非常に特に好ましい。
【0031】
一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体が水溶液として用いられ、好ましくはその溶液の全体質量に対して20〜60質量%の濃度で用いられる。
【0032】
好ましくは、以下の測定法:
スプレー粉の試料をシリコンオイル中に分散させ、約56〜300倍の倍率の透過光プリントを作成し、中空球状及び/又は破損した中空球状として存在する粒子、及びまた、透過光プリントの粒子の総計を数え上げ、且つその粒子の総計に対して中空球状及び/又は破損した中空球状として存在する粒子の百分率割合を算出する測定法により決定される合計で60%以上の中空球状及び/又は破損した中空球状の割合を有するスプレー粉が得られる。
【0033】
好ましくは、中空球状及び破損した中空球状を合計80%以上の割合で有するスプレー粉が本発明の方法により得られる。
【0034】
また、本発明は、そのスプレー粉を、適宜にさらなる成分と共に、特に、ポリエチレングリコール、好ましくは2〜10質量%の割合のポリエチレングリコール、及び/又はさらなる添加剤と共に二つのロール又は押抜き具の間で圧縮することにより、及びその後の粉砕と分画により圧縮塊を製造するための、上述の方法により得られるスプレー粉の使用を提供する。ここで得られる圧縮塊は高い引張強度と対応して低い摩耗性を有する。
【0035】
引張強度は以下の方法:
高さ4mm及び直径12mmの円筒形の圧密体が200MPasの成形圧力で製造され、破断荷重はPharmatest/Hainburgからの錠剤試験機WHT II(登録商標)で測定された。その圧密体の破断荷重(BF)、高さ(H)及び直径(D)の値が、以下の式:
【0036】
【数1】

により引張強度(TS)を決定するために使用される。
【0037】
本発明による方法により製造されたスプレー粉を用いることにより、1.45MPas以上の引張強度が達成された。
【0038】
これらの引張強度は約5%未満の大きさの摩耗性という低い値に対応する。その摩耗性は、粉砕され、断片化された材料の試料、特に、0.3及び1.6mmの間の粒子サイズを有する圧密体を、500μmで2分間で予備篩にかけることにより、そして、ふるい残渣の重さを量ることにより決定された。この試料は、その後、振動篩上で2mmの振幅で10分間圧力をかけられ、透過したふるい分け画分が決定された。この透過物を、ここでは摩損部と呼ぶ。
【0039】
また、本発明は、固体若しくは液体の洗剤又は洗浄組成物中で、特に、食器洗浄器のための錠剤を製造するための洗剤又は洗浄組成物中での本発明による方法により製造されたスプレー粉を使用することにより得られた圧縮塊の使用を提供する。
【0040】
本発明を、実施例を参照することにより以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0041】
(比較のための)実施例1
使用した出発材料は、出発水溶液の乾燥質量の総質量に対して39.4質量%のメチルグリシン−N,N−二酢酸(MGDA)の三ナトリウム塩又は81.5質量%のMGDAの出発水溶液であった。これから、6.5質量%の水の残留含量を有するスプレー粉及び約15%の割合の中空球状を産業用スプレー塔中で製造した。この粉を、その後7質量%のポリエチレングリコールを添加して圧縮した。
【0042】
0.77MPasの上述の方法により決定された引張強度(TS)を有する圧縮塊(圧密体)を得た。
【0043】
(本発明による)実施例2
使用した出発材料は、乾燥質量の合計質量に対して39.8質量%のMGDA又は84.8%のMGDAの水溶液であった。
【0044】
これから、6%の残留水分及び約85%の割合の中空球状を有するスプレー粉を、12900rpmの産業用のディスク塔中で製造した。これを、例えば、実施例1に記載するように、ポリエチレングリコールと共に圧縮した。
【0045】
1.99MPasの引張強度を有する圧縮塊(圧密体)を得た。
【0046】
(本発明による)実施例3
出発材料は、乾燥質量の合計質量に対して39.9質量%のMGDA又は87.1質量%のMGDAの出発水溶液であった。
【0047】
これから、0.5%の残留水分及び約10%の割合の中空球状を有するスプレー粉を産業用スプレー塔中で製造した。
【0048】
その圧縮塊(圧密体)は1.9MPasの引張強度を有した。
【0049】
上述の実施例は、このように、その乾燥質量の合計質量に対してMGDAを84質量%以上の高純度で含む水溶液から出発して得られた圧縮塊の改良された引張強度を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
MOOC−CHR−N(CH2COOM)2(I)
[式中、
RはC1-12−アルキル基であり、及び
Mはアルカリ金属である。]で表わされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含むスプレー粉の製造方法であって、
空気の導入と共にスプレードライされる一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含む水溶液から出発し、
−前記水溶液は、その乾燥質量の総質量に対して84質量%以上の割合で一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含み、
−前記スプレードライを、前記水溶液と前記空気が並流で、その水溶液とその空気の間で70〜350℃の範囲の温度勾配を有して流れる乾燥装置中で行い、
−前記乾燥装置中において前記水溶液を、100m/s以上の周速で回転する一個以上のディスク上に供給することにより、又はポンプを用いてその水溶液を2MPa(20bar)絶対圧力以上とし、且つこの圧力でその水溶液を一個以上の吹出し口を介して前記乾燥装置へと供給することにより、細かい液滴へと霧化することを特徴とする方法。
【請求項2】
一種以上のメチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩をグリシン−N,N−二酢酸誘導体として使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥装置がディスクドライヤーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
乾燥装置がスプレードライヤーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が、その水溶液の総質量に対して20〜60質量%の合計濃度で一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記一種以上のグリシン−N,N−二酢酸誘導体の水溶液を約20〜120℃の温度で導入し、且つ前記空気を約150〜250℃の温度で導入する請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポンプが膜ポンプである請求項1、2又は4〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液を、前記ポンプを用いて3MPa(30bar)絶対圧力以上とする請求項1、2又は4〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下の測定法:
スプレー粉の試料をシリコンオイル中に分散させ、
約56〜300倍の倍率を有する透過光プリントを作成し、
中空球状及び/又は破損した中空球状として存在する粒子、及びまた、透過光プリントの粒子の総計を数え上げ、且つ
粒子の総計に対して中空球状及び/又は破損した中空球状として存在する粒子の百分率割合を算出する測定法
により決定される60%以上の中空球状及び/又は破損した中空球状の割合を有するスプレー粉を得る請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリエチレングリコールを添加して、又は添加すること無く圧縮塊を製造するために、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法により得られたスプレー粉を使用する方法。
【請求項11】
固体又は液体の洗浄組成物中で用いるために、請求項10に記載の圧縮塊を使用する方法。
【請求項12】
食器洗浄器のための錠剤を製造するための請求項11に記載の使用方法。

【公表番号】特表2012−527506(P2012−527506A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511270(P2012−511270)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056855
【国際公開番号】WO2010/133617
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】