説明

一貫した重油の品質向上方法及びインライン水素化仕上げ方法

【課題】新たな残油完全水素化転化スラリー反応器システムを用いる重油の品質向上方法を提供する。
【解決手段】触媒、未転化油及び転化油を、連続混合物で、混合物の限定なしで全体の反応器を通して循環し、それぞれの反応器出口混合物は、転化油だけを除去するために反応器間で部分的に分離され、未転化油及びスラリー触媒は、未転化油の部分が低沸点炭化水素に転化される次の連続した反応器中へ進み、今一度、未転化油、転化油、及びスラリー触媒の混合物を創り出す。更なる水素化処理は、油を完全に転化する更なる反応器で生起してもよい。部分的に転化され残った未転化油は濃縮された触媒とともに第一反応器へ直接再循環することのできる。完全に転化された油は、その後に、硫黄及び窒素等のヘテロ原子のほぼ完全な除去のために水素化仕上げすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時係属出願第11/305377号(2005年12月16日出願)、第11/305378(2005年12月16日出願)、及び第11/303425号(2006年3月20日出願)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、スラリー触媒組成物を使用する、重油の品質向上方法に関する。1つの実施形態では、品質向上の後に水素化仕上げが続く。
【背景技術】
【0003】
石油製品に対する大きくなる世界的需要により、重油の処理が今日大変注目されている。カナダ及びベネズエラは重油の産油国である。重油供給原料を有用な製品へ完全に転化する方法は特に注目される方法である。
【0004】
参照として組み込まれる次の特許は、重油の品質を向上させるための方法における高活性なスラリー触媒組成物の調製及びこの使用に関する。
【0005】
米国特許出願第10/938202号は、重油の水素化転化(hydroconversion)に適した触媒組成物の調製に関する。この触媒組成物は、VIB族金属酸化物と水性アンモニアとを混合して水性混合物を形成する工程及び混合物を硫化してスラリーを形成する工程を含む一連の工程により調製される。次いで、スラリーはVIII族金属により増進される。その後の工程は、スラリーを炭化水素油と混合する工程並びに得られた混合物を水素ガス及び第一の油よりも低い粘度を有する第二炭化水素油と組み合わせる工程を含む。活性触媒組成物はこれによって形成される。
【0006】
米国特許出願第10/938003号は、スラリー触媒組成物の調製に関する。このスラリー触媒組成物は、VIB族金属酸化物と水性アンモニアと混合して水性混合物を形成する工程及び混合物を硫化してスラリーを形成する工程を含む一連の工程で調製される。次いで、スラリーはVIII族金属で増進される。その後の工程は、スラリーと炭化水素油とを混合する工程、並びに得られた混合物を水素ガスと組み合わせて(水が液相を維持する条件下で)活性スラリー触媒を製造する工程を含む。
【0007】
米国特許出願第10/938438号は、重油の品質向上工程においてスラリー触媒組成物を使用する方法に関する。このスラリー触媒組成物は安定させることが不可能で、脱活性化となる可能性がある。このスラリーは、繰返し使用のために品質向上反応器へ再循環され、生成物は、触媒除去のための更なる分離手順を必要としない。
【0008】
米国特許出願第10/938200号は、スラリー組成物を使用して重油を品質向上させるための方法に関する。このスラリー組成物は、VIB族金属酸化物を水性アンモニアと混合して水性混合物を形成する工程及び混合物を硫化してスラリーを形成する工程を含む一連の工程で調製される。次いで、スラリーはVIII族金属化合物で増進される。その後の工程は、スラリーと炭化水素油とを混合する工程、並びに得られた混合物を水素ガスと組み合わせて(水が液相を維持する条件下で)活性スラリー触媒を製造する工程を含む。
【0009】
米国特許出願第10/938269号は、スラリー組成物を使用して重油を品質向上させるための方法に関する。このスラリー組成物は、VIB族金属酸化物と水性アンモニアを混合して水性混合物を形成する工程及び混合物を硫化してスラリーを形成する工程を含む一連の工程で調製される。次いで、スラリーはVIII族金属で増進される。その後の工程は、スラリーと炭化水素油とを混合する工程、並びに得られた混合物を水素ガス及び第一の油よりも低い粘度を有する第二炭化水素油と組み合わせる工程を含む。活性触媒組成物はこれによって形成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
スラリーでの重油の水素化転化方法で、前記方法により最終生成物から硫黄又は窒素がほぼ完全に除去され、少なくとも2つの連続した上昇流反応器が、場合により各反応器の間に配置された分離器を伴って使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料、活性スラリー触媒組成物及び水素含有ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)工程(a)の前記混合物を、高温及び高圧を含む、スラリー水素化転化条件に維持されている前記上昇流反応器の第一反応器の底部へ通す工程、
(c)生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気混合物を前記第一反応器の頂部から除去して、それを第一分離器へ通す工程、
(d)前記第一分離器において、生成物及びガス塔頂留分を含む蒸気流を、リーンオイル接触器に向けて除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部物質を、高温及び高圧を含む、水素化転化条件に維持されている前記上昇流反応の第二反応器の底部へ通す工程、
(e)生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気混合物を前記第二反応器の頂部から除去して、それを第二分離器へ通す工程、
(f)前記第二分離器において、生成物及びガス塔頂留分を含む蒸気流を、リーンオイル接触器に向けて除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部物質を更なる処理工程へ通す工程、
(g)生成物とガスを含む前記蒸気流をリーンオイル接触器でリーンオイルと向流で接触する工程で、同伴した触媒及び未転化物質が底部物質として出て行くリーンオイルとの接触により除去され、生成物及びガスが塔頂へ通される工程、
(h)工程(g)の塔頂部物質を、硫黄及び窒素の除去のために水素化処理装置へ通す工程
を含む方法。
本発明のスラリー品質向上方法は、減圧残渣のほぼ98%をより軽質な生成物(1000°Fより下の沸点範囲にある)に転化する。これらの生成物の幾つかは、これらの高窒素、高硫黄及び高芳香族含有量、並びに低APIにより更なる処理工程を必要とする。本発明は、スラリー品質向上方法の下流の水素化仕上げを使用し、その結果、最終生成物からほぼ完全に硫黄及び窒素を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】3つの反応器と、その後に水素化仕上げ反応器を使用する本発明の方法スキームを表す図である。
【図2】3つの反応器を使用する、本発明の方法スキームを表す図である。
【図3】同じ方法ループ内で、触媒スラリーを使用する3つの反応器の上流の固定床前処理反応器を使用する、本発明の方法スキームを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、図1で表示されるような、触媒活性化スラリー水素化分解のための方法に関する。流れ1は、減圧残油等の重質供給原料を含む。この供給原料は、それが加熱される炉80に入り、流れ4に出て行く。流れ4は水素含有ガス(流れ2)及び活性スラリー組成物を含む流れ(流れ23)と一緒になって混合物を作る(流れ24)。流れ24は第一反応器10の底部に入る。生成物、ガス、スラリー、及び未転化物質を含む蒸気の流れ5は反応器の頂部を出る。流れ5は、好ましくはフラッシュドラムである高温高圧分離器40へ通る。生成物及びガスを含む蒸気流は流れ6として塔頂から除去される。流れ6は更なる処理工程のためにリーンオイル接触器へ通される。液体流7は、分離器40の底部を通って除去される。流れ7は、未転化油と一緒にスラリーを含む。
【0013】
流れ7は水素を含むガス流(流れ15)と一緒になって流れ25を創り出す。流れ25は第二反応器20の底部に入る。生成物、ガス、スラリー及び未転化物質を含む蒸気流8は、塔頂から第二反応器を出て行き、好ましくはフラッシュドラムである分離器50へ通る。生成物及びガスは流れ9として塔頂を介して除去され、更なる処理工程のためにリーンオイル接触器へ通される。液体流11は、フラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ11は、未転化油と一緒にスラリーを含む。
【0014】
流れ11は水素を含むガス流(流れ16)と一緒になって流れ26を創り出す。流れ26は第三反応器30の底部に入る。第三反応器30を出る流れ12は、好ましくはフラッシュドラムである分離器60へ通る。生成物及びガスは流れ13として分離器60から塔頂から除去される。液体流17は、分離器60の底部を通って除去される。流れ17は、未転化油と一緒にスラリーを含む。この流れの一部は流れ18を通って抜かれてもよい。
【0015】
塔頂からの蒸気流6、9及び13は、リーンオイル接触器70へ通る流れ14を創り出す。減圧ガス油等のリーンオイルを含む流れ22は、リーンオイル接触器70の頂部に入り、(1)任意の可能な同伴触媒を除去するため及び(2)重質物質(少量の減圧残渣を含む高沸点範囲油)の減少のために下方へ流れる。
【0016】
生成物及びガス(蒸気流21)は、塔頂からリーンオイル接触器70を出て行き、一方、液体流19は底部から出て行く。流れ19は、スラリー及び未転化油の混合物を含む。流れ19は、同様にスラリー及び未転化油の混合物を含む流れ17と一緒になる。新しいスラリーが流れ3に添加され、流れ23が創り出される。流れ23は第一反応器10への供給原料と一緒になる。
【0017】
流れ21は、水素化仕上げ前に冷却するためにスチーム交換器(又は発生器)90に入る。スチーム交換器の目的は、必要に応じて水素化仕上げ反応器入口温度を制御することである。流れ21は、固定床反応器、好ましくは、活性水素化処理触媒の複数床を有する固定床反応器である水素化仕上げ器100の頂部床に入る。水素(流れ27)は、複数床が使用される場合は、床間クエンチとして挿入される。水素化仕上げした生成物は流れ28として除去される。
【0018】
水素化仕上げ器は、不純物を除去し、飽和により生成物を安定化することによりスラリー品質向上器からの生成物を高品質生成物へ更に精製する。99重量%を超える硫黄及び窒素の除去が達成されてもよい。反応器流出液は熱回収の手段により冷却されて任意の通常の水素化処理装置におけるような生成物回収区域へ送られる。
【0019】
炭化水素を水素化仕上げするための条件は当業者には良く知られている。一般的な条件は、400〜800°F、0.1〜3LHSV、及び200〜3000psigである。水素化仕上げ反応にとって有用な触媒は、好ましくは、ゼオラト又はアモルファス物質に担持されたニッケル、コバルト及びモリブデンの組合せである。
【0020】
図面には表示されていない選択的実施形態としては、反応器の1つ又は複数が、外部分離器ではなく内部分離手段又は反応器に続くフラッシュドラムを含む一連の反応器が挙げられる。その他の実施形態では、一連の反応器の1つ又は複数間に中間段階分離は存在しない。
【0021】
本発明で使用される触媒スラリー組成物の調製方法は、参照として組み込まれる米国特許出願第10/938003号及び米国特許出願第10/938202号で示されている。触媒組成物は、熱水素化分解、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱硝、及び水素化脱金属等の水素化品質向上方法にとって有用であるがこれらに限定されない。
【0022】
本発明での使用に適した原料供給物は、米国特許出願第10/938269号に示されていて、常圧残油、減圧残油、溶剤脱アスファルト装置からのタール、常圧ガス油、減圧ガス油、脱アスファルト油、オレフィン、タールサンド又はビチューメン由来の油、石炭由来の油、重質原油、フィシャー−トロプシュ方法からの合成油、並びに回収油廃棄物及びポリマー由来の油を含む。適当な供給原料としては、又、常圧残油、減圧残油及び溶剤脱アスファルト装置からのタールが挙げられる。
【0023】
本発明における反応器の好ましい型は、液体再循環反応器であるが、上昇流反応器のその他の型が使用されてもよい。液体再循環反応器は、更に、参照として組み込まれる米国特許出願第11/305359号において検討されている。
【0024】
液体再循環反応器は、スラリー触媒と混合された重質炭化水素油及び水素に富むガスが高温及び高圧で、水素化転化のために供給される上昇流反応器である。
【0025】
水素化転化は、水素化分解及びヘテロ原子汚染物質(硫黄及び窒素等)の除去等の方法を含む。スラリー触媒使用では、触媒粒径は極端に小さい(1〜10ミクロン)。ポンプは、使用されてもよいが、再循環のために一般的には必要とされない。触媒の十分な運動はそれらなしで通常達成される。
【0026】
図2は、触媒活性化スラリー水素化分解のための方法に関するその他の実施形態を例示する。流れ1は、減圧残油等の重質供給原料を含む。この供給原料は、それが加熱される炉80へ入り、流れ4に出て行く。流れ4は、水素含有ガス(流れ2)及び活性スラリー組成物を含む流れ(流れ23)と一緒になって混合物(流れ24)を作る。流れ24は、第一反応器10の底部に入る。スラリー、生成物及び水素、並びに未転化物質を含む蒸気流5は、反応器10の頂部を出て行く。流れ5は、好ましくはフラッシュドラムである分離器40へ通る。生成物及び水素は流れ6として塔頂から除去される。液体流7はフラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ7は未転化油と一緒にスラリーを含む。
【0027】
流れ7は、水素を含むガス流(流れ15)と一緒になって流れ25を創り出す。流れ25は第二反応器20の底部に入る。生成物、水素、スラリー及び未転化物質を含む蒸気流8は、好ましくはフラッシュドラムである分離器50へ通る。生成物及び水素は、蒸気流で流れ9として塔頂から除去される。液体流11は、フラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ11は未転化油と一緒にスラリーを含む。
【0028】
流れ11は、水素を含むガス流(流れ16)と一緒になって流れ26を創り出す。流れ26は第三反応器30の底部に入る。
【0029】
生成物、水素、スラリー及び未転化物質を含む蒸気流12は、好ましくはフラッシュドラムである分離器60に向けて反応器30から塔頂を介して通る。生成物及び水素は、蒸気流13として塔頂から除去される。液体流17は、フラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ17は未転化油と一緒にスラリーを含む。この流れの一部は流れ18を通って抜かれてもよい。
【0030】
塔頂からの流れ6、9及び13は流れ14を創り出し、これは高圧分離器70へ通る。減圧ガス油等のリーンオイルを含む流れ21は、高圧分離器70の頂部に入る。生成物及び水素は、蒸気流22として、塔頂からリーンオイル接触器70を出て行き、一方、液体流19は底部から出て行く。流れ19はスラリー及び未転化油の混合物を含む。流れ19は、同様にスラリー及び未転化油の混合物を含む流れ17と一緒になる。新たなスラリーが流れ3に添加され、流れ23が創られる。流れ23は、第一反応器10への供給原料と一緒になる。
【0031】
本発明は、図3で表示されるように、上流インライン前処理を伴う、触媒活性化スラリー水素化分解のための方法に関する。流れ1は、減圧残油等の重質供給原料を含む。この供給原料は、それが加熱される炉80へ入り、流れ4に出て行く。流れ4は、水素含有ガス(流れ2)と一緒になって混合物(流れ101)を作る。流れ101は、前処理反応器100の頂部に入る。前処理装置は、固定床水素化処理装置又は脱アルファルト装置である。脱アルファルト装置では、溶剤は一般的に供給原料に対して向流で流れる。脱アスファルトは表示されていない。流れ102は前処理装置の底部を出て、好ましくはフラッシュドラムである高温高圧分離器110へ進む。生成物及び水素は、蒸気流、すなわち流れ103として、塔頂を介して除去される。流れ103は流れ22と一緒になる。未転化物質は、液体流104としてフラッシュドラム110の底部を出て行く。流れ104は流れ106と一緒になる。流れ106は、再循環スラリー触媒(流れ19)並びに補給スラリー触媒(流れ3)を含む。流れ104及び106は一緒になって流れ107を形成する。
【0032】
流れ107は、好ましくは液体再循環反応器である上昇流反応器10の底部に入る。スラリー、生成物、水素及び未転化物質を含む流れ5の蒸気流は塔頂から反応器を出る。流れ5は、好ましくはフラッシュドラムである高温高圧分離器40へ通る。生成物及び水素は、流れ6として蒸気流で塔頂から除去される。液体流7は、フラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ7は未転化油と一緒にスラリーを含む。
【0033】
流れ7は、水素を含むガス流(流れ15)と一緒になって流れ25を創り出す。流れ25は第二反応器20の底部に入る。スラリー、生成物、水素及び未転化物質を含む蒸気流である流れ8は、反応器20から、好ましくはフラッシュドラムである分離器50へ塔頂を介して通過する。生成物及び水素は、蒸気流9として塔頂を介して除去される。液体流11は、フラッシュドラムの底部を通って除去される。流れ11は未転化油と一緒にスラリーを含む。流れ11は、水素を含むガス流(流れ16)と一緒になって流れ26を創り出す。流れ26は第二反応器30の底部に入る。蒸気流12は、反応器30から、好ましくはフラッシュドラムである高温高圧分離器60へ塔頂を介して通過する。生成物及び水素は、蒸気流13として塔頂から除去される。流れ17は、フラッシュドラム60の底部を通って除去される。液体流17は未転化油と一緒にスラリーを含む。この流れの一部は流れ18を通って抜かれてもよい。
【0034】
塔頂からの蒸気流6、9及び13は流れ14を創り出し、これはリーンオイル接触器70へ通る。減圧ガス油等のリーンオイルを含む流れ22は、リーンオイル接触器70の頂部に入り、(1)任意の可能な同伴触媒を除去するため及び(2)重質物質(少量の減圧残渣を含む高沸点範囲)の減少のために下方へ流れる。生成物及び水素(流れ21)は、蒸気として塔頂からリーンオイル接触器70を出て行き、一方、液体流19は底部から出て行く。流れ21は、生成物流103と一緒になって、水素化仕上げへ送られる流れ22を形成する。
【0035】
流れ19はスラリー及び未転化油の混合物を含む。流れ19は、同様にスラリー及び未転化油の混合物を含む流れ17と一緒になる。新しいスラリーが流れ3に添加され、流れ106が創り出される。流れ106は第一反応器10への供給原料(流れ104)と一緒になって、流れ107を創り出す。
【0036】
重質生成物画分は、任意の残留オレフィンを除去するために水素化仕上げされる。水素化仕上げ器は、スラリー品質向上器からの生成物を更に精製して、不純物を除去し、生成物を安定化することにより高品質生成物とする。99重量%を超える硫黄及び窒素除去が達成されてもよい。反応器流出液は熱回収の手段により冷却されて任意の通常の水素化処理装置におけるような生成物回収区域へ送られる。
【0037】
炭化水素を前処理するための条件は当業者には良く知られている。前処理は水素化処理又は脱アスファルトを含んでもよい。水素化処理は、供給原料の前処理のよく知られた形態であり、通常、1つ又は複数の床を有する固定床水素化処理反応器で生起する。水素化処理は、米国特許第6890423号に大筋で開示されていて、Gary and HandwerkによるPetroleum Refining(第2版:1984年)で検討されている。一般的な水素化処理条件は広範囲にわたって変動する。一般的には、全体のLHSVは約0.25〜2.0、好ましくは、約0.5〜1.0である。水素分圧は200psiaを超え、好ましくは約500psia〜約2000psiaの範囲である。水素再循環率は一般的に50SCF/Bblを超え、好ましくは、1000〜5000SCF/Bblである。温度は、約300°F〜約750°F、好ましくは、450°F〜600°Fの範囲である。水素化処理操作で有用な触媒は当該技術分野では良く知られている。適当な触媒としては、VIIIA族(国際純正応用化学連合(IUPAC)の1975年規則による)の貴金属、例えば、アルミナ又はケイ素質マトリックス上の白金又はパラジウム等、並びに未硫化VIIIA族及びVIB族、例えば、アルミナ又はケイ素質マトリックス上のニッケル−モリブデン又はニッケル−スズ等が挙げられる。非貴金属(ニッケル−モリブデン等)水素化金属は、通常、酸化物として、更に好ましくは又は可能なものとして、そのような化合物が、含まれる特定の金属から容易に形成される場合は硫化物として最終触媒組成物中に存在する。好ましい非貴金属触媒組成物は、相当する酸化物として決定される、約5重量%を超え、好ましくは約5〜約40重量%のモリブデン及び/又はタングステン、並びに少なくとも約0.5、一般的には約1〜約15重量%のニッケル及び/又はコバルトを含む。貴金属(白金等)触媒は、0.01%を超える金属、好ましくは0.1〜1.0%の金属を含んでもよい。貴金属の組合せ、例えば、白金とパラジウムの混合物等が使用されてもよい。
【0038】
前処理は、使用される供給原料がアスファルトを含む場合は、選択的に脱アスファルトを行ってもよい。脱アスファルトは、通常は溶剤としてプロパンの使用により遂行されるが、その他の溶剤として、低沸点パラフィン炭化水素、例えば、エタン、ブタン又はペンタンが挙げられてもよい。脱アスファルト技術は精製分野では良く知られているが、Petroleum Refiningのテキストで検討されている。脱アスファルトは、米国特許第6264826号及び第5993644号等の特許に大筋で開示されている。
【0039】
表示されていない、スラリー反応器システムに対するその他の実施形態としては、反応器の1つ又は複数が、外部分離器ではなく内部分離手段又は反応器に続くフラッシュドラムを含む、一連の反応器が挙げられる。
【実施例】
【0040】
【表1】

【0041】
上記表から、スラリー水素化分解の生成物の水素化仕上げが、一連の生成物及び、ジェット燃料やディーゼル等の個々の生成物カットにおいて、硫黄及び窒素含有量の劇的な減少を与えることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーでの重油の水素化転化方法で、前記方法により最終生成物から硫黄又は窒素がほぼ完全に除去され、少なくとも2つの連続した上昇流反応器が、各反応器の間に配置された分離器を伴って使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料、活性スラリー触媒組成物及び水素含有ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)工程(a)の前記混合物を、高温及び高圧を含む、スラリー水素化転化条件に維持されている前記上昇流反応器の第一反応器の底部へ通す工程、
(c)生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気混合物を前記第一反応器の頂部から除去して、それを第一分離器へ通す工程、
(d)前記第一分離器において、生成物及びガス塔頂留分を含む蒸気流を、リーンオイル接触器に向けて除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部物質を、高温及び高圧を含む、水素化転化条件に維持されている前記上昇流反応器の第二反応器の底部へ通す工程、
(e)生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気混合物を前記第二反応器の頂部から除去して、それを第二分離器へ通す工程、
(f)前記第二分離器において、生成物及びガス塔頂留分を含む蒸気流を、リーンオイル接触器に向けて除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部物質を更なる処理工程へ通す工程、
(g)生成物とガスを含む前記蒸気流をリーンオイル接触器でリーンオイルと向流で接触する工程で、同伴した触媒及び未転化物質が底部物質として出て行くリーンオイルとの接触により除去され、生成物及びガスが塔頂へ通される工程、
(h)工程(g)の塔頂部物質を、硫黄及び窒素の除去のために水素化処理装置へ通す工程
を含む方法。
【請求項2】
前記水素化処理装置が、水素化仕上げ条件で操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化処理装置が、少なくとも1つの触媒床を含む固定床反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クエンチガスが、床入口温度を制御するために床間に導入される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化処理装置の少なくとも1つの触媒床が、水素化仕上げ触媒を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
水素化仕上げ条件が、400〜800°Fの範囲の温度、0.1〜3LHSVの範囲の空間速度、及び200〜3000psigの範囲の圧力を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
水素化仕上げ触媒が、ゼオライト系又はアモルファス支持体上の、コバルト、ニッケル及びモリブデンからなる群から選択される組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化処理装置の入口温度が制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スチーム交換器が、前記水素化処理装置の入口温度を制御するために使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(f)の前記底部物質が工程(a)へ再循環され、工程(a)の前記混合物が、再循環された未転化物質及びスラリー触媒を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(f)の前記底部物質が、高温及び高圧を含む、水素化転化条件で維持されている第三反応器の底部へ通される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器の少なくとも1つが液体再循環反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記再循環反応器がポンプを使用する、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
各反応器において使用される水素化処理条件が、1500〜3500psiaの範囲の全圧力及び700〜900°Fの温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記全圧力が、好ましくは、2000〜3000psiaの範囲にあり、温度が、好ましくは、775〜850°Fの範囲にある、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
各反応器間に配置された前記分離器がフラッシュドラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記重油が、常圧残油、減圧残油、溶剤脱アスファルト装置からのタール、常圧ガス油、減圧ガス油、脱アスファルト油、オレフィン、タールサンド又はビチューメン由来の油、石炭由来の油、重質原油、フィシャー−トロプシュ法からの合成油、並びに回収された油廃棄物及びポリマー由来の油からなる群から選択される、請求項1に記載の水素化転化方法。
【請求項18】
水素化分解、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱硝、及び水素化脱金属からなる群から選択される、請求項1に記載の水素化転化方法。
【請求項19】
請求項1に記載の活性スラリー触媒組成物が、以下の工程、すなわち、
(a)VIB族金属酸化物と水性アンモニアを混合して、VIB族金属化合物水性混合物を形成する工程、
(b)初期反応帯で、工程(a)の水性混合物を、硫化水素をVIB族金属の1ポンド当たり8SCFを超える量まで含むガスで硫化してスラリーを形成する工程、
(c)前記スラリーをVIII族金属化合物で増進する工程、
(d)工程(c)のスラリーを、212°Fで少なくとも2cStの粘度を有する炭化水素油と混合して中間体混合物を形成する工程、
(e)第二反応帯において、前記中間体混合物中の水を液相で維持する条件下で、前記中間体混合物を水素ガスと組み合わせて、液体炭化水素と混合された活性触媒組成物を形成する工程、及び
(f)前記活性触媒組成物を回収する工程
により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
重油供給原料の約98重量%が、より軽質な生成物へ転化される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
スラリーでの重油の水素化転化方法で、前記方法により最終生成物から硫黄又は窒素がほぼ完全に除去され、少なくとも2つの連続した上昇流反応器が、全反応器の内部に配置され分離器を伴って使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料、活性スラリー触媒組成物及び水素含有ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)工程(a)の混合物を、高温及び高圧を含む、水素化処理条件に維持されている前記上昇流反応器の第一反応器の底部へ通す工程、
(c)前記第一反応器において、生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む流れを、生成物及び水素及びその他のガスを含む蒸気流、並びに、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体流、の2つの流れに内部で分離する工程、
(d)工程(c)の蒸気流塔頂留分を、リーンオイル接触器に向けて通し、未転化物質及びスラリー触媒を含む前記液体流を、底部流として前記第一反応器から通す工程、
(e)工程(d)の底部流と更なる供給原料油とを組み合わせて中間体混合物とする工程、
(f)工程(e)の中間体混合物を、高温及び高圧を含む水素化処理条件で維持されている、前記上昇流反応器の第二反応器の底部へ通す工程、
(g)前記第二反応器において、生成物、ガス、未転化物質及びスラリー触媒を含む流れを、生成物及び水素及びその他のガスを含む蒸気流、並びに未転化物質及びスラリー触媒を含む液体流、の2つの流れに内部で分離する工程、
(h)工程(g)の蒸気流塔頂留分を、リーンオイル接触器に向けて通し、工程(g)の液体流を、更なる処理工程へ底部流として前記第二反応器から通す工程、
(i)工程(h)のリーンオイル接触器の塔頂流出液を、硫黄及び窒素の除去のために水素化処理装置へ通す工程
を含む方法。
【請求項22】
重油の水素化転化方法で、前記方法では少なくとも2つの連続した上昇流反応器が中間分離を伴わずに使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料、活性スラリー触媒組成物及び水素含有ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)工程(a)の混合物を、高温及び高圧を含む、水素化処理条件に維持されている前記上昇流反応器の第一反応器の底部へ通す工程、
(c)前記第一反応器から第二反応器へ、生成物及びガス、未転化物質、並びにスラリー触媒を含む流れを通す工程で、前記第二反応器は、硫黄及び窒素の除去のため生成物を含む蒸気流の水素化処理を伴う、更なる処理工程並びに蒸気流と液体流へのその後の分離のために、水素化工程条件で維持されている工程、
を含む方法。
【請求項23】
更なる水素が、工程(c)の流れに対して、前記第二反応器に入る前に添加されてもよい、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
重油の水素化転化方法で、前記方法では少なくとも2つの連続した上昇流反応器が分離器を伴って使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料、活性スラリー触媒組成物及び水素含有ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)工程(a)の混合物を、高温及び高圧を含む、水素化処理条件に維持されている第一反応器の底部へ通す工程、
(c)生成物、水素、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気流を前記第一反応器の頂部から除去して、それを第一分離器へ通す工程、
(d)前記第一分離器において、更なる処理工程のために生成物及び水素を除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部流を、高温及び高圧を含む、スラリー水素化処理条件に維持されている前記上昇流反応器の第二反応器の底部へ通す工程、
(e)生成物及び水素未転化物質並びにスラリー触媒を含む蒸気流を前記第二反応器の頂部から除去して、それを第二分離器へ通す工程、
(f)前記第二分離器において、更なる処理工程への蒸気流として生成物及び水素塔頂留分を除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む底部流を更なる処理工程へ通す工程
を含む方法。
【請求項25】
工程(f)の底部物質が工程(a)へ再循環され、工程(a)の混合物が、再循環された未転化物質及びスラリー触媒を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(f)の前記底部物質が、高温及び高圧を含む、水素化転化条件に維持されている第三反応器の底部へ通される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
スラリーでの重油の水素化転化方法で、前記方法では、少なくとも2つの連続した上昇流反応器が、各反応器の間にある分離器を伴って使用され、前記方法は以下の工程、すなわち、
(a)加熱した重油供給原料及び水素ガスを組み合わせて混合物を形成する工程、
(b)前記混合物を、少なくとも1つの前処理反応器において前処理条件で接触させる工程、
(c)工程(b)の流出液を後処理分離器へ通す工程、
(d)前記後処理分離器から生成物及び水素塔頂留分を通し、前記後処理分離器からの底部物質を活性スラリー触媒組成物と組み合わせて混合物を形成する工程、
(e)工程(d)の混合物を、高温及び高圧を含む、スラリー水素化転化条件に維持されている第一反応器の底部へ通す工程、
(f)生成物、水素、未転化物質及びスラリー触媒を含む蒸気流塔頂留分を前記第一反応器から除去し、それを分離器へ通す工程、
(g)工程(f)の分離器において、生成物及び水素を含む蒸気流塔頂留分を、更なる処理工程へと除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部流を、高温及び高圧を含む、スラリー水素化転化条件に維持されている第二反応器の底部へ通す工程、
(h)生成物及び水素、未転化物質並びにスラリー触媒を含む蒸気流塔頂留分を前記第二反応器から除去し、それを第二分離器へ通す工程、
(i)前記第二分離器において、更なる処理工程へと生成物及び水素を含む蒸気流塔頂留分を除去し、未転化物質及びスラリー触媒を含む液体底部流を更なる処理工程へ通す工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255158(P2012−255158A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165390(P2012−165390)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−545695(P2008−545695)の分割
【原出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】