説明

一部にラベル貼り領域を備えた袋体

【課題】収容物品等に関する情報を記載したラベルを貼り替え自在とした袋体を低コストで得る。また、袋体が、例えば極低温環境と常温環境とに交互に置かれるような袋体の場合であっても、多数回のラベルの貼り替えを行っても、ラベルの剥がし難くさが生じないようにした袋体を得る。
【解決手段】一部にラベル貼り領域50を備えた袋体20であって、ラベル貼り領域50は、ラベル60に対する粘着力が、袋体の外側表面層を構成する材料よりも強い材料で作られている。袋体20の外側表面層は例えばポリアミド系樹脂で作られており、ラベル貼り領域50は例えばアルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シートで作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一部にラベル貼り領域を備えた袋体に関し、限定されないが、特に、食品などを収容して冷蔵室内において予冷し、予冷後に適宜の冷媒を収容して運搬や保管に用いるのに好適な、一部にラベル貼り領域を備えた袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
保管や物流の便のために、袋体のような搬送容器に、収容した物品の種類や搬送先等に関する情報を記載したラベルを貼り付けることは行われる。特許文献1には、外側の見やすい箇所にそのようなラベルのため領域を設定した搬送容器が記載されている。このような袋体(搬送容器)では、収容した物品の種類や搬送先等を記載したラベルを、使用の都度に貼り替えることで、同じ袋体をリターナブルに多数回使用するようにしている。
【0003】
一方、収容する物品が、野菜などの生鮮食品、冷凍食品あるいは冷蔵食品などの場合、消費者に届くまでに、所定の温度環境下に低温保管されまた運搬される。特許文献2あるいは特許文献3には、その目的で使用される折り畳み可能な断熱シートを用いた把持部付の保温袋体が記載されている。さらに、軽量であり断熱性にも富むことから、例えばポリスチレン樹脂発泡体のような合成樹脂発泡体からなる保冷容器が多く用いられており、保冷容器の取り扱いを容易にするために、特許文献4に記載のように、保冷容器を把持部の付いたカバー体(袋体)で覆うことも行われる。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3132755号公報
【特許文献2】登録実用新案第3009717号公報
【特許文献3】特開平10−287372号公報
【特許文献4】特開2007−91271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のようなリターナブルに使用する袋体においては、使用の度毎に収容物品等に関する情報を記載したラベルの貼り替えが必要となる。貼り付けたラベルは、通常の使用状態では容易に剥がれないだけの粘着強度で貼り付いている必要がある。そのために、袋体の少なくとも外側表面素材として、ラベル側に塗布した粘着剤との関係において、強い粘着力が得られる材料が選ばれる。しかし、通常の場合、その種の材料は高価であり、袋体の外側表面全部をそのような材量で覆うことは、コスト高となる。
【0006】
一方、そのような袋体において、ラベルの貼り替え時には、ラベル側の粘着剤が袋体側に残ることなく綺麗に剥がれることが望ましい。粘着剤の一部が袋体側に残ると、多数回のラベルの貼り替えを行うとことにより、ラベルが剥がし難くなる結果を招き、リターナブルに使用する袋体として、不都合が生じる。特に、特許文献2〜4に記載のような、所定の温度環境下に低温保管され、その後に搬送等に供される袋体では、袋体の温度変化が大きく外側表面に結露が生じやすく、そのために貼り付けたラベルが剥がれやすくなる。それを防ぐために、使用環境が常温のみである通常の袋体よりも強い粘着力が生じる材料を少なくとも外側表面層に用いることが行われるが、粘着力の強さに比例して袋体側に残る粘着剤の量も多くなり、多数回のラベルの貼り替えを行うと、ラベルの剥がし難くさが生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収容物品等に関する情報を記載したラベルを通常の使用状態では容易に剥がれないだけの粘着強度で貼り付けておくことのできる袋体であって低コストで製造することのできる袋体を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、例えば極低温環境と常温環境とに交互に置かれるような袋体の場合であっても、多数回のラベルの貼り替えを行っても、ラベルの剥がし難くさが生じないようにした袋体を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による袋体は、一部にラベル貼り領域を備えた袋体であって、前記ラベル貼り領域は、ラベルに対する粘着力が、袋体の外側表面層を構成する材料よりも強い材料で作られていることを特徴とする。
【0009】
上記の袋体では、通常高価であるラベルに対する粘着力が強い材料は、当該袋体におけるラベル貼り領域にのみ使用されており、少なくとも外側表面全部をラベルに対する粘着力が強い材料でつくる場合と比較して、低コストで袋体を作ることができる。
【0010】
上記の袋体において、袋体全体の材料は当該袋体の使用目的に応じて適宜選択される。また、ラベル貼り領域を形成する材料は、ラベル側に塗布した粘着剤との関係で、より高い粘着力が得られる材料が選択される。一例として、袋体の少なくとも外側表面層はポリアミド系樹脂シートで作られており、前記ラベル貼り領域はアルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シートで作られている袋体を挙げることができる。
【0011】
上記の袋体では、ポリアミド系樹脂シートは、前記の複合シートよりも通常安価であり、製造コストを低減することができる。また、ラベル側に塗布される粘着剤に対する粘着力は、ポリアミド系樹脂シートは小さく、前記の複合シートは比較して大きい。さらに、後の実施例に示すように、前記の複合シートは、袋体を外側表面に結露が生じるような使用環境で使用しても、ラベルとの粘着力が低下することはなく、不用意にラベルが剥がれるのを阻止することができる。また、ラベルを剥がしたときに、前記の複合シート側に粘着剤が残ることもほとんどない。
【0012】
本発明による袋体において、強い粘着力を生じる領域にラベルを貼り付けた場合、ラベルの粘着力は充分に大きなものとなるが、それを剥がそうとするときに、粘着力が強すぎて、ラベルに塗布した粘着剤がラベル貼り領域側に多く残ったり、ラベルに破れが生じたりすることが起こり得る。それを回避するために、本発明による袋体の他の態様では、前記ラベル貼り領域は、その一部に、ラベルに対する粘着力が強い材料によって覆われていない部分を有するようにされる。この態様の袋体では、ラベル貼り領域は、ラベルに対する粘着力が強い材料によって覆われている部分と、覆われていない部分とで構成されるので、覆われている部分と覆われていない部分の面積比を適宜選択することで、所要の粘着力と所要の剥がしやすさの双方を同時に満足するラベル貼り領域を確実に構成することができる。
【0013】
本発明は、多くの用途で用いることができる。代表的には、保冷を要する食品等の保冷および物流に用いられる袋体であり、さらに、合成樹脂発泡体からなる保冷容器のカバーとなる袋体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収容物品等に関する情報を記載したラベルを貼り替え自在とした袋体を低コストで得ることができる。また、袋体が、例えば極低温環境と常温環境とに交互に置かれるような袋体の場合であっても、多数回のラベルの貼り替えを行っても、ラベルの剥がし難くさが生じないようにした袋体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による袋体の一態様を示し、袋体は合成樹脂発泡体からなる保冷容器のカバーとして用いられている。図2は本発明における袋体でのラベル貼り領域の複数の形態とそこに貼り付けられたラベルの状態を示している。
【0016】
図1の例において、100はカバー体付き保冷容器であり、発泡ポリスチレンのような合成樹脂発泡体の成形品である箱形の容器本体10と、該容器本体の外側を被覆する第1のカバー体20と、やはり合成樹脂発泡体の成形品である蓋体30と、該蓋体本体の外側を被覆する第2のカバー体40とからなり、容器本体10に蓋体30をすることにより、その内部を実質的に外気から遮断した状態とされる。なお、ここでの第1のカバー体20が本発明の「袋体」に相当する部材である。
【0017】
第1のカバー体20は、ポリアミド系樹脂の織布(例えば、製品名:ナイロン420D染ハイパロンコート:朝日化工株式会社製)で作られており、その一側面には、ラベル貼り領域50が形成されている。この例において、ラベル貼り領域50は、矩形状であるポリエチレンクロスの一面または両面にアルミ含有ポリエチレンフィルムをラミネートした複合シートの1枚を、アルミ含有ポリエチレンフィルム面を外側にして、第1のカバー体20の側面に縫い付けることで形成されている。
【0018】
ラベル貼り領域50には、カバー体付き保冷容器100に収容した物品の種類やその配送先等に関する情報が例えばバーコードの形態で書き込まれたラベル60が貼り付けられる。そのラベル60の裏面にはエマルジョン系の粘着剤が塗布されており、該粘着剤の粘着力は、第1のカバー体20を構成するポリアミド系樹脂に対しては小さく、ラベル貼り領域50を構成する前記アルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シートに対しては、比較して数倍程度に大きい。しかし、必要な場合には、容易に引き剥がすことができる。
【0019】
第2のカバー体40は、蓋体30を覆うことのできる寸法の形状のものであり、図示の例では、その裏面に取り付けたフック41を利用して、帯状の留め付けバンド42が着脱自在に取り付けられ、留め付けバンド42の両端には面ファスナー43が取り付けてある。第2のカバー体40の裏面に蓋体30を置き、フック41を通して2本の留め付けバンド42を取り付けることにより、蓋体30と第2のカバー体40は一体となる。図示されないが、第1のカバー体20にも面ファスナーが取り付けてあり、その面ファスナーと留め付けバンド42に取り付けた面ファスナー43とを利用して、蓋体30は容器本体10に着脱自在に取り付けられる。
【0020】
上記のカバー体付き保冷容器100の一使用態様として、食品などの物品を収容しかつ第1のカバー体20を取り付けた容器本体10を、蓋をしない状態で冷気環境にある冷蔵倉庫内に置き、倉庫内の冷気で収容した物品を所要温度まで予冷することが行われる。予冷後に、冷媒を入れかつ蓋体30を被冠して内部を密封した後、貼り付けてあるラベル60に記載の情報を参照しながら、食品等を配布する所定の場所に搬送される。
【0021】
配布後に、カバー体付き保冷容器100は元の場所に戻され、再び、食品等の収容、予冷、配達搬送が繰り返される。その都度、旧ラベルは引き剥がされ、新たな情報を書き込んだ新たなラベルが、第1のカバー体20に形成したラベル貼り領域50に貼り付けられる。この使用態様が、多数回にわたって繰り返される。
【0022】
上記の使用態様においては、第1のカバー体20の外側表面は、冷蔵倉庫内の冷気環境と、配達搬送時での常温環境の双方に曝される。そのために、第1のカバー体20の外側表面には結露が生じやすく、結露はラベル貼り領域50にも生じる。結露が生じると粘着力が低下してラベル60は剥がれやすくなるが、本発明者らの実験では、後の実施例に示すように、ラベル貼り領域50を前記したアルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シートで構成したことにより、粘着当初は高い粘着力が得られると共に、結露が生じても粘着力の低下はほとんどなく、不用意にラベルが剥がれることは回避できた。
【0023】
図2は、本発明における袋体でのラベル貼り領域の他の複数の形態とそこに貼り付けられたラベルの状態を示す。前記したように、強い粘着力を生じる領域50にラベル60を貼り付けた場合、ラベル60は強い粘着力で貼り付けられるが、それを剥がそうとするときに、粘着力が強すぎて、ラベル60に塗布した粘着剤がラベル貼り領域50側に多く残ったり、ラベル60に破れが生じたりすることが起こり得る。図2に示すラベル貼り領域の形態は、それを回避するためのものである。
【0024】
すなわち、図2(a1)では、ラベル貼り領域50は、互いに分離した2枚のラベルに対する粘着力が強い材料、この例では、前記したアルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シート50a,50bで覆われており、その間には、ラベルに対する粘着力が強い材料によって覆われていない部分51を有している。そして、前記部分51には、第1のカバー体20を構成するポリアミド系樹脂の織布が露出している。
【0025】
図2(a1)の形態では、分離した2枚の前記した複合シート50a,50bを縫い付ける作業が必要であり、縫製がやや困難となる。それを解決するために、図2(a2)では、1枚の前記複合シート50の中央部にその下端から切り欠き状に前記部分51を形成しており、図2(a3)では、1枚の前記複合シート50の中央部に開口状に前記部分51を形成している。
【0026】
図2(b1)では、前記部分51を3箇所に形成しており、そのために、50a〜50dの4枚の前記複合シートを縫い付けるようにしている。縫製作業を容易にするために、図2(b2)では、1枚の前記複合シート50にその下端から切り欠き状に3つの前記部分51を形成しており、図2(b3)では、1枚の前記50の内部に開口状に3つの前記部分51を形成している。
【0027】
図2に示すいずれの形態の場合も、ラベル60はラベルに対する粘着力が強い材料と所望の面積で貼着しており、不用意に剥がれることはない。また、前記部分51を形成することにより、必要以上に強い粘着力でラベル60が貼着する状態となるのを回避することができ、剥がしやすさも同時に満足することができる。また、強い粘着力を生じる領域にラベル60が貼り付いた領域では、ラベル60を剥がすときに、ラベル60に塗布した粘着剤がラベル貼り領域側に残る場合があるが、前記部分51、すなわち、第1のカバー体20を構成するポリアミド系樹脂の織布が露出している面積分だけ、ラベル60の粘着面積を少なくすることができるので、ラベルの面積に対するラベルに塗布した粘着剤が残る割合は、ラベル全面が貼着する場合よりも小さくなる。それにより、多数回のラベルの貼り替えを行っても、ラベルが剥がし難くなるのを回避することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明者らが行った実施例について説明する。
【0029】
ラベルとして、裏面にエマルジョン系粘着剤が塗布されているラベル(製品名:LD3331:リンテック株式会社製)を用いた。ラベルを貼り付ける基材には、アルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シート(製品名:ポリエチレン14×14 UVUVシルバー:森下化学工業株式会社)(以下、材料1)、アルミ含有ポリエチレンフィルムがラミネートされていないポリエチレンクロス(以下、材料2)、ポリアミド系樹脂シート(製品名:ナイロン420D染ハイパロンコート:朝日化工株式会社製)(以下、材料3)、メッシュ状のポリエステルシート(以下、材料4)を用いた。基材にラベルを貼り付けた後、貼り付け直後のラベルの剥離強度を測定した。また、基材にラベルを貼り付けた後に−20℃の環境に5時間置き、その後、大気環境に取り出して結露を生じさせた後のラベルの剥離強度を測定した。さらに、結露乾燥時のラベルの剥離強度を測定した。また、剥離したときのラベルの状態を目視により観察した。その結果を表1に示した。なお、剥離強度試験は、環境温度24℃、環境湿度60%、引き剥がし速度50mm/minで行った。
【0030】
【表1】

【0031】
[考察]
表1に示すように、材料3および材料4では剥離強度が弱く、袋体の素材として用いたときにラベルが剥がれやすくなる。材料1および材料2では結露後も結露乾燥後も材料3および材料4と比較して非常に高い剥離強度を示しており、袋体におけるラベル貼り領域形成材料として好ましいことがわかる。しかし、材料2では、剥離時にラベルに破れが生じており、材料1と比較して好ましい材料とはいえない。破れが生じた理由は、ポリエチレンクロスの格子状表面が鋭角になっているため、その鋭角な部分を基点して破れが生じたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による袋体の一態様を示す図であり、袋体は合成樹脂発泡体からなる保冷容器のカバーとして用いられている。
【図2】本発明における袋体でのラベル貼り領域の複数の形態とそこに貼り付けられたラベルの状態を示す図。
【符号の説明】
【0033】
100…カバー体付き保冷容器、
10…合成樹脂発泡体の成形品である箱形の容器本体、
20…容器本体の外側を被覆する第1のカバー体(本発明による袋体)
30…合成樹脂発泡体の成形品である蓋体、
40…第2のカバー体、
50…ラベル貼り領域、
60…ラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部にラベル貼り領域を備えた袋体であって、前記ラベル貼り領域は、ラベルに対する粘着力が、袋体の外側表面層を構成する材料よりも強い材料で作られていることを特徴とする袋体。
【請求項2】
請求項1に記載の袋体であって、前記袋体の外側表面層はポリアミド系樹脂シートで作られており、前記ラベル貼り領域はアルミ含有ポリエチレンフィルムとポリエチレンクロスの複合シートで作られていること特徴とする袋体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の袋体であって、前記ラベル貼り領域は、一部に前記ラベルに対する粘着力が袋体の外側表面層を構成する材料よりも強い材料によって覆われていない部分を有することを特徴とする袋体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の袋体であって、前記袋体は保冷を要する食品等の保冷および物流に用いられる袋体であることを特徴とする袋体。
【請求項5】
請求項4に記載の袋体であって、前記袋体は合成樹脂発泡体からなる保冷容器のカバーとなる袋体であることを特徴とする袋体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−132293(P2010−132293A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307340(P2008−307340)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】