説明

一酸化窒素が関与する、処置および予備処置装置、ならびにその製造方法

【解決課題】ヒトまたは動物の器官のある領域を、貫通して前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、又は採取容器に連結させるための処置または前処置を可能にする装置を提供する。
【解決手段】装置は、前記処置または前処置中に前記領域において血管拡張作用を得るための一酸化窒素(NO)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、カテーテル、venflon(登録商標)、針、および/またはシリンジ挿入に向けて皮下組織を調整するために作られた装置の分野に関する。より具体的には、発明は、一酸化窒素(NO)が関与する、カテーテル、脈管アクセス装置、針、および/またはシリンジ挿入に向けて皮下組織を調整するための装置、ならびに前記装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル、venflons(登録商標)、針、および/またはシリンジは、患者から流体を採取するか、患者に流体を注入するかを問わず、最小限の侵襲的な方法によって患者の脈管系と流体連絡するのに用いられることは周知である。
【0003】
venflons(登録商標)およびカテーテルは、一般的には遠位端が開口し、且つ近位端がハブの中に固定されている、短く細い柔軟性の管である。ハブは、脈管アクセス装置またはカテーテルと、例えば液体供給源または液体採取源から伸びる送達管の間で、すばやく着脱できる機械式コネクターの役割を果たす。
【0004】
針およびシリンジは、管状部分を有する、非柔軟性の、好ましくは金属材料で作られた装置であり、以下に従ったカテーテルおよびvenflons(登録商標)の利用、および直接サンプリング、注入、および体液の採取を補助する。
【0005】
一つの典型的なカテーテルは、その中を通って患者の皮膚を貫通しカテーテルを患者の脈管系内に進める挿入針を必要とする、外套針型カテーテルである。前記の針は、患者の皮膚の穿刺を容易にするために斜めに切り取られた遠位端を備えている。
【0006】
上記に従って装置を挿入する場合、患者の脈管系との連結に適した血管を見出すことが看護士または医師にとって非常に困難であることが多々ある。この困難は、標的領域の皮下組織の血管拡張が小さいためである。
【0007】
また本技術分野では、看護士および医師は普通、脈管アクセス装置、カテーテル、針、またはシリンジを通す領域を消毒する。この消毒は通常、前記領域をある種のアルコールを含ませた綿パッドで擦ることによって行われる。
【0008】
一酸化窒素(NO)が抗生物質のような通常の治療法に代わる方法になることが知られている。一酸化窒素は、多くの細胞の機能に関与している反応性の高い分子である。事実、一酸化窒素は免疫系で重要な役割を果たしており、真菌、ウイルス、細菌といった様々な病原体、および一般の微生物の侵入に対し自己を保護しているマクロファージによるエフェクター分子としての役割を果たしている。この治癒の改善は、一部は血小板の活性化もしくは凝集をNOが阻害することに拠るものであり、またNOが移植体部分の炎症プロセスを軽減すること拠るものでもある。
【0009】
NOは抗病原体効果、特に抗ウイルス効果を持つことも知られており、更にNOは、治療濃度に置いて細胞毒性および細胞増殖抑制的であることから抗癌効果を有しており、即ちNOはその他効果として特に殺腫瘍効果および殺菌効果も有している。NOは、例えば白血病またはリンパ腫患者由来のヒトの血液悪性細胞に対し細胞毒性を有しており、それ故にNOは、細胞が通常の抗癌剤に対し耐性になった時にでも、このような血液疾患を治療するための化学療法剤として用いることができるだろう。本発明は、例えば多くの抗癌剤のような副作用有することなく、このNOの抗病原体効果および抗腫瘍効果を利用している。
【0010】
しかしながらNOの半減期が短いことから、今までのところNOによってウイルス、細菌、ウイルス、真菌、または酵母の感染を治療することは非常に困難である。それはNOが高濃度では、実際には有毒であり、且つ体に大量に用いると悪影響を及ぼすからである。NOは、実際には血管拡張物質でもあり、体内に大量にNOが持ち込まれると、循環器系の完全虚脱が起こるだろう。一方NOは、一度放出されると、その半減期は数分の一秒から数秒と極めて短い。このようにNOの半減期が短いこと、および毒性により投与が制限されることが、これまで抗病原体および抗癌治療の分野でのNOの使用を制限する要因になってきた。
【0011】
近年、水と接触すると一酸化窒素を放出する能力を持ったポリマーを対象とする研究が行われている。このようなポリマーは、例えばL−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)やB−PEI(枝分かれポリエチレンイミン)のようなポリアルキレンイミンであり、これらポリマーは生体適合性酸化物であるという利点を持つ。
【0012】
NO溶出ポリマーのその他の例は、特許文献1に記載されており、そこでは原子量1200のポリマー単位当たり少なくとも一つの−NOx基で誘導体化されたポリマーが開示されており、前記Xは1または2である。一つの例は、S−ニトロシル化ポリマーであり、これは遊離チオール基のニトロシル化に好適な条件の下でポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させて調製される。
【0013】
Akron大学は、永久的に移植された、埋込み式グラフトのような医療装置の表面にナノ紡糸処置(nano−spun)することができ、このような装置を移植した時に治癒のプロセスの有意な改善および炎症の軽減を示すNO−溶出L−PEI分子を開発した。特許文献2によれば、医療装置のコーティングは、直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオラートのナノ繊維を用いた酸化窒素の送達を提供する。直鎖ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオラートは、組織および器官に対して、酸化窒素(NO)を制御様式で放出して治癒のプロセスを補助し、傷害のリスクを持つ組織への傷害を防止する。直鎖ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオラートの電界紡糸ナノ繊維は、医療装置を取り囲む組織に対し治療レベルのNOを放出すると同時に、前記装置の特性の変化は最小限にとどめる。ナノ繊維コーティングは、サイズは小さいがナノ繊維単位質量当たりの面積は広いために、より広い単位質量当たりの表面積を提供すると同時に、装置のその他特性の変更は最小限にとどめる。
【0014】
しかしながら、前記開示には、即ち脈管アクセス装置、カテーテル、針、またはシリンジが貫通する皮下領域の前処置向け装置に関して技術を改良し、一酸化窒素(NO)の溶出によって血管を拡張し、収縮および痙攣を低下させ、同時に抗菌および抗ウイルス効果を提供することについては何も述べられていない。
【0015】
それ故に本技術分野では、脈管アクセス装置、カテーテル、針、またはシリンジを貫通させる皮下領域の前処置に関して改良された装置、またはより有利な装置が求められている。前記装置は、前記領域での循環を増加し、血管拡張効果を有し、使用が簡便であり、活性な薬学的物質に対し耐性を生じず、抗菌および抗ウイルス効果を提供すること等が望まれ、且つ有利であり、特にvenflons(登録商標)、カテーテル、針、およびシリンジ等の挿入を容易にする装置が有利であろう。
【特許文献1】米国特許第5,770,645号
【特許文献2】米国特許第6,737,447号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それ故に、本発明は、当技術分野の上記欠陥または欠点の一つまたは複数を、単独または組み合わせて軽減、緩和、または排除すること、および、とりわけ上記問題の少なくとも一つを、添付の特許請求による装置を提供することによって少なくとも一部を解消することを専ら探求する。
【0017】
発明の一局面によると、ヒトまたは動物の器官のある領域を、前記領域を貫通して前記ヒトまたは動物の血管システムをサンプリング、注入、または採取容器につなぐ前、最中、および/または後に処置および/または予備処置することができる装置が提供される。前記装置は、前記組織と接触するように配置された一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを含み、一酸化窒素の治療用量が前記酸化窒素溶出ポリマーから前記組織に対し溶出して血管拡張を高め、収縮および痙攣を減じ、抗菌および抗ウイルス効果を可能にする。
【0018】
本発明による器官は、例えば前記ヒトまたは動物の体部の頭、顔、頚、肩、背、腕、手、胃、生殖器、大腿、脚、または足の皮膚でよい。
【0019】
発明の別の局面によれば、このような装置を製造する工程が提供され、このとき前記工程はヒトまたは動物の器官の在る領域を前処置できるようにする装置を形作るための工程であり、装置は前記器官を貫通して前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器に連結する。前記工程は、複数の酸化窒素溶出ポリマー繊維を選択する段階、および前記酸化窒素溶出繊維を、前記装置の中に含まれるパッチ/パッド、ドレッシング、テープ/コーティング、プラスター/シース、ゲル、ハイドロゲル、発泡体、クリーム等にする段階を含む。
【0020】
本発明は、従来技術に比べて、的を絞って器官領域をNOに暴露し、それにより前記領域内の血流、血管拡張効果を高め、収縮および痙攣を低下させ、抗菌および抗ウイルス効果を得ると同時に、薬学的活性物質に対する抵抗、局所的な皮膚刺激、疼痛等に対する抵抗性を発生させないという利点を少なくとも有している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明がなし得るこれら、およびその他の局面、特徴、および利点は、添付の図面を参考にして、本発明の態様の以下の記述から明らかにされ、且つ説明されるだろう。
【0022】
以下の説明は、ヒトまたは動物の器官のある領域に浸透する前、最中、および/または後に、前記領域を処置および/または予備処置し、前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器と連絡できるようにするパッチ/パッド、ドレッシング、ゲル、ハイドロゲル、発泡体、クリーム、テープ/コーティング等の形をした装置に応用可能な本発明の態様、ならびに後者のための製造方法および酸化窒素の使用に焦点を当てている。このサンプリング、注入、または採取容器は、例えば、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針であっても、またはこれらと連絡していても、またはこれらに接続してもよいが、本発明のサンプリング、注入、または採取容器はこれらの例に限定されないものとする。これらの例は、本発明に関する例示を意図したものに過ぎない。商標登録された脈管アクセス装置は、本発明では、本発明の範囲を制限しない形で用いられており、関係する装置の単なる一例を示すものであり、脈管アクセス装置として同様に機能する装置も全て本発明の範囲内である。
【0023】
本発明の動物は、例えばネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、トリ、ブタ等任意の動物、または脈管系を有するその他の可能な動物から選択できる。
【0024】
酸化窒素(一酸化窒素、NO)に関しては、その生理学的および薬理学的役割は非常に注目を集めており、それ故に研究が行われている。NOは酸化窒素合成酵素(NOS)により、基質とするアルギニンから合成される。NOSは構成的酵素に分類され、それは生体の正常状態にも存在しており、且つ誘導酵素、iNOSであり、特定の刺激に反応して大量に産生される。cNOSが産生するNOの濃度に比べ、iONSが産生するNOの濃度は2〜3桁、即ち100〜1000倍高いこと、およびiNOSが極めて大量のNOを産生することが知られている。
【0025】
iNOSによる産生のような大量のNOが生成される例では、NOは活性酸素と反応して、外来微生物および癌細胞を攻撃するが、同時に炎症および組織損傷も引き起こすことが知られている。一方、cNOSによる産生のような少量のNOの生成例では、NOは、血管拡張作用、血液循環の改善、抗血小板凝集作用、抗菌作用、抗癌作用、消化管の吸収促進、腎機能制御、神経伝達作用、勃起(生殖)、学習、食欲等、環状GMP(cGMP)を通じた、生体に対する様々な保護作用を担っていること考えられている。これまで、生体内で大量に生成されたNOによるものと考えられている炎症および組織損傷を防止することを目的として、NOSの酵素活性インヒビターが試験されている。しかしながら、生体に様々な保護作用を示すことを目的として、NOSの酵素活性を促進すること、およびNOを適切に産生することによるNOS(特にcNOS)の酵素活性(または発現量)の促進については調査されてこなかった。
【0026】
近年、水と接触した時に、酸化窒素を放出する能力を持ったポリマーについて研究が行われるようになった。このようなポリマーは、例えばL−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)、およびB−PEI(枝分かれポリエチレンイミン)のようなポリアルキレンイミンであり、これらポリマーは生体適合性であるという利点を有している。
【0027】
本発明の態様で用いられるポリマーは、電界紡糸、エアー紡糸、ガス紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、およびゲル紡糸によって製造できる。電界紡糸は、浮遊させたポリマーに電荷を与える工程である。固有電圧において、加えた電場とジェットが運ぶ電荷とが相互作用して作られる張力に反応して、表面からポリマーの微細ジェットが放出される。この工程は、ナノ繊維のようなポリマー繊維の束を作り出す。このポリマー繊維のジェットは、処置対象の表面に向けることができる。
【0028】
更には、米国特許第6,382,526号、米国特許第6,520,425号、および米国特許第6,695,992号は、このようなポリマー繊維の製造のための工程および装置を開示している。これらの技術は、一般的には、繊維が形成できる液体および/または溶液の、繊維製造産業では空気紡績としても知られるガス流紡績に基づく。ガス流紡績は、発明のある態様による製造器具に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1によれば、発明の一つの態様では、本発明の器具は、L−PEIまたはアミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルマート)、ポリ(イミノカルボナート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、およびポリジメチルシロキサン、またはこれらの任意の組み合わせといったその他NO−溶出ポリマー、あるいは多糖類主鎖またはセルロース性主鎖といった不活性主鎖にグラフトされたこれら記載のポリマー、ならびに基材としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの組み合わせから作られた、NOの溶出を可能とするパッチ/パッドであって、前記パッチ/パッドはその内側がNO−溶出L−PEIのナノ繊維で覆われている。本発明のパッチ/パッドの基材は、綿、ポリアクリラート、または任意の繊維産業で使用されているその他繊維でよく、この場合基材には発明のNO−溶出ポリマーが負荷される。この態様は、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針を貫通させる領域に用いる、簡便に使用できるパッチ/パッドを提供する。
【0030】
一酸化窒素溶出ポリマーからの一酸化窒素の溶出の調整および制御にとって重要な3つの要素は、どれほど迅速にジアゾリウムジオラート基のようなプロトン供与体を一酸化窒素放出ポリマーと接触させるか、一酸化窒素溶出ポリマーを取り囲む環境の酸性度、および一酸化窒素溶出ポリマーを取り囲む環境の温度(高い温度ほど一酸化窒素の溶出を促進する)である。
【0031】
本発明の一つの態様では、L−PEI−NOのような一酸化窒素溶出ポリマーに担体ポリマーを混合し、一酸化炭素溶出を遅くするかまたは延長する。また別の態様では、一酸化窒素溶出ポリマーを一つを超える担体ポリマーと混合し、それによって具体的な要求に合わせてって溶出または放出を仕立てることができる。このような要求としては、例えば、一酸化窒素溶出ポリマーの環境が疎水性である第1期間中には低速で溶出し、かつ一酸化窒素溶出ポリマーの環境がより親水性に変わった第2期間中ではより高速に溶出するものがある。これは、例えば、生物分解性ポリマーを用い、それによって第1期間の低速溶出を実現し、疎水性ポリマーが溶解したその後に親水性ポリマーがより多くの一酸化窒素の溶出を提供することによって達成できる。このように、より疎水性である担体ポリマーは一酸化窒素をよりゆっくり溶出するが、これは水または体液のような活性化プロトン供与体は担体ポリマー中によりゆっくり浸透するからである。これに対し親水性ポリマーは、これと逆に働く。親水性ポリマーの一つの例はポリエチレンオキシドであり、疎水性ポリマーの一つの例はポリスチレンである。これら担体ポリマーは、一酸化窒素ポリマーと混合し、次に好適な繊維に電界紡糸できる。当業者は、同様の工程にどのようなその他ポリマーが使用できるか承知している。図4には、2種類のポリマー混合物;酸性環境中で親水性担体ポリマーと混合した一酸化窒素溶出ポリマー(A)、および中性環境中で親水性担体ポリマーと混合した一酸化窒素溶出ポリマー(B)の2つの溶出プロフィールが描かれている。
【0032】
本発明の一つの態様では、装置は、ヒトまたは動物の器官のある領域を、該領域を貫通させる前、最中、および/または後に、前記ヒトまたは動物を処置および/または前処置して、前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器に接続するように作られる。前記装置は、一酸化窒素(NO)を溶出して、前記領域に血管拡張、抗収縮、および抗痙攣作用を得るように作られる。封入された水のような一酸化窒素の溶出を開始するための手段を、前記装置内に組み込むことができる。
【0033】
本発明の態様のパッチ/パッドが皮膚に接触し、それによって分泌された汗の形の湿気と接触すると、NO溶出パッチ/パッドは前記領域にNOを放出し始める。
【0034】
こうして溶出したNOは、前記領域に対し血管拡張作用および抗収縮および抗外連作用を及ぼし、その効果によって前記領域の血管が広がり、血管の痙攣リスクが下がる。血管の痙攣は、貫通中の一般的な現象であり、この現象が貫通を困難にしている。更には、拡張した血管は簡単に位置を変え、これにより看護士または医師は、その中にカテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針を挿入する血管を簡単に選べるようになる。血管が拡張すると、看護士または医師は前記カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針をより簡単に血管に通すこともできる。
【0035】
NOは血管拡張作用だけでなく、抗微生物および抗ウイルス作用も提供する。そのため、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針を挿入しようとする領域を、今日の医療現場の一般的に行われているように、例えばアルコールで消毒する必要はない。
【0036】
本発明の別の態様では、パッチ/パッドは、上記に従って、任意のその他好適ポリマーのナノ繊維で内側が覆われる。このようなポリマーは、例えば、B−PEI(枝分かれボリエチレンイミン)またはPEI−セルロースのような他のポリアルキレンイミンであり、これらポリマーは生物適合性である利点を有する。
【0037】
NO溶出ポリマーの別の例は、米国特許第5,770,645号に記載されており、そこにはポリマーの1200原子質量当たり少なくとも1個の−NOX基で誘導化された、前記Xが1または2であるポリマーが開示されている。一つの例は、S−ニトロシル化ポリマーであり、これは遊離チオール基をニトロシル化するのに適した条件下でポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させることによって調製される。
【0038】
Akron大学は、埋込みグラフトのような永久的に埋込まれる医療装置の表面にナノ紡糸可能な、そのような装置を埋込んだ時に治癒プロセスの有意な改善および炎症の低下を示すNO溶出L−PEI分子を開発した。米国特許第6,737,447号によれば、医療装置のためのコーティングは、直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオラートのナノ繊維を用いた一酸化窒素デリバリーを提供する。直鎖ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオラートは、一酸化窒素(NO)を制御された様式で放出する。
【0039】
しかしながら、米国特許第6,737,447号との関係での「制御された」という意味は、一酸化窒素がある期間コーティングから溶出するという事実、即ち一時に全ての一酸化窒素が溶出しないという事実に向けられたものに過ぎない。それ故に、米国特許第6,737,447号に於ける「制御された」の解釈は、本発明における「制御する」の意味とは異なる。本発明では「制御または調整」は、一酸化窒素の溶出を変更し、それによって異なる溶出プロフィールを達成する可能性と解釈するものとする。
【0040】
O−ニトロシル化基を含むポリマーもまた可能な一酸化窒素溶出ポリマーである。それゆえに、本発明の一つの態様では、一酸化窒素溶出ポリマーは、ジアゼニウムジオラート基、S−ニトロシル化およびO−ニトロシル化基、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0041】
本発明の更に別の態様では、前記一酸化窒素溶出ポリマーは、L−PEI−NO(直鎖(アルキレンイミン(エチレンイミン)ジアゼニウムジオラート)のようなポリ(アルキレンイミン)ジアゼニウムジオラートであり、前記一酸化窒素溶出ポリマーにはジアゼニウムジオラート基を通して一酸化窒素が負荷され、かつ処置部位に一酸化窒素を放出するように配置されている。
【0042】
好適な一酸化窒素溶出ポリマーのその他いくつかの例は、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレニミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルマート)、ポリ(イミノカルボナート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、およびポリジメチルシロキサン、またはこれらの任意の組み合わせ、ならびに多糖類主鎖またはセルロース性主鎖といった不活性主鎖にグラフトされたこれら記載のポリマーを含む群から選択される。
【0043】
本発明の更に別の態様では、一酸化窒素溶出ポリマーは、O−誘導化NONOアート(NONOate)である。この種のポリマーは、一酸化窒素放出に酵素反応を必要とすることが多い。
【0044】
一酸化窒素溶出ポリマーとして好適なポリマーを記述する別の方法は、L−EPIのような第2級アミン基(=N−H)を含むか、またはアミノセルロースのような、ペンダントとして第2級アミン(=N−H)を有するポリマーである。
【0045】
一酸化窒素溶出ポリマーは、前述したように、主鎖中またはペンダントとして第2級アミンを含んでよい。これは良好な一酸化窒素溶出ポリマーを作るだろう。第2級アミンは、一酸化窒素に容易に負荷される強い負の電荷を有していなければならない。例えば窒素原子に対する炭素原子のように、隣接原子上でリガンドが第2級アミンに接近して存在している場合は、窒素原子(N)より電気陰性度が高いため、ポリマーに一酸化窒素を負荷することは極めて難しくなる。一方、例えば窒素原子に対する炭素原子のような隣接原子上で、第2級アミンに隣接して電気陽性リガンドが存在する場合は、アミンの電気陰性度は高くなり、それによって一酸化窒素溶出ポリマーに一酸化窒素が負荷される可能性が高くなる。
【0046】
本発明の態様では、一酸化窒素溶出ポリマーは、塩によって安定化できる。ジアゼニウムジオラート基のような一酸化窒素溶出基は通常陰性であるため、カチオンのような陽性対イオンを用いて一酸化窒素溶出基を安定化できる。このカチオンは、例えば、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+のような、周期律表の第1属または第2属の任意のカチオンを含む群から選択できる。同じ一酸化窒素溶出ポリマーの異なる塩は、異なる性質を有している。このようにして、様々な目的に合わせて、好適な塩(またはカチオン)を選択することができる。カチオン安定化ポリマーの例は、L−PEI−NO−Na、即ちナトリウムで安定化されたL−PEIジアゼニウムジオラート、およびL−PEI−NO−Ca、即ちカルシウムで安定化されたL−PEIジアゼニウムジオラートである。
【0047】
本発明の別の態様は、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物を、吸収剤と混合する段階を含む。この態様は、吸収剤のはたらきによりポリマーまたはポリマー混合物が水または体液といった活性化流体をより迅速に取り込むことによって、一酸化窒素溶出が加速されるという利点を提供する。一つの例では、80%(w/w)の吸収剤が、一酸化窒素溶出ポリマーまたは一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物と混合され、あるいは別の態様では、10〜50%(w/w)の吸収剤が、一酸化窒素溶出ポリマーまたは一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物と混合される。
【0048】
一酸化窒素の溶出は、水のようなプロトン供与体によって活性化されることから、一酸化窒素溶出ポリマーまたは一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物を前記プロトン供与体と接触した状態に保つことは有利であろう。長時間の一酸化窒素の溶出が必要と指示された場合は、プロトン供与体を一酸化窒素溶出ポリマーまたは一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物と接触した状態に保つ可能性を示すシステムが有利である。それ故に、本発明の更に別の態様では、一酸化窒素の溶出は、吸収剤を追加することによって制御できる。吸収剤は、水のようなプロトン供与体を吸収し、プロトン供与体が一酸化窒素溶出ポリマーと長期間密着した状態を保つようにする。前記吸収剤は、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロールおよび微結晶セルロース、綿、ならびにデンプンを含む群から選択できる。この吸収剤は、充填剤とし用いてもよい。この場合、前記充填剤は、一酸化窒素溶出ポリマーまたは前記一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料の混合物に、所望の感触を与えることができる。
【0049】
かくして、本発明の本態様によるNO溶出パッチ/パッド中のナノ紡糸繊維は、PEIを含む。また、パッチ/パッドに織られるナノフィラメントは、PEIから好適に作られ、使用時のその放出のためにNOが負荷される。
【0050】
本発明の別の態様では、本発明のパッチ/パッドは、NO溶出ナノパーティクルまたはマイクロスフェアで内側が覆われている。これらのナノパーティクルまたはマイクロスフェアは、本発明のNO溶出ポリマーから形作られ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ピリビニルアセタート、ポリラクチカシド、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせのような好適材料に封入することができる。本発明のナノパーティクルまたはマイクロスフェアが、パッチ/パッドの内側に汗の形で分泌された湿気と接触すると、それらはNOを前処置対象の領域に溶出し始める。
【0051】
本発明の更に別の態様では、パッチ/パッドは、より小さな水バッグまたは密封された水スポンジを収納している。この水バッグまたは密封された水スポンジは、NO溶出ポリマー、ナノパーティクル、および/またはマイクロスフェアからのNOの溶出を活性化するのに用いられる。この態様を利用して、汗を簡単にかけないヒトを補助することができる。または、パッチ/パッドは、それを前記領域に使用した後、または直前に、水に浸してもよい。このバッグまたはスポンジは、以下に記載するプロトン供与体であるその他プロトン供与体を含んでもよい。
【0052】
本発明の別の態様では、一酸化窒素溶出ポリマーは、マイクロ封入されたプロトン供与体と一緒、および/または組み合わせて提供される。
【0053】
これは、例えば、最初に水または水含有流体といったプロトン供与体を技術水準様式で含むマイクロカプセルを作ることによって実施できる。それから、これらのマイクロカプセルはNO溶出ポリマーを付加される。NO溶出ポリマーへのマイクロカプセルの付加は、例えば、パターングルーイングのような糊付け、またはそれに代わってNO溶出ポリマーを前記マイクロカプセル上に紡糸することで実施できる。このようにして、NO溶出ポリマーおよびマイクロカプセル化されたプロトン供与体を含む装置が作られる。装置またはシステムを標的領域で使用する時は、装置またはシステムは圧迫または絞られる。前記の圧迫または絞りによってマイクロカプセルは破壊される。かくしてNO溶出ポリマーはプロトン供与体に暴露されることとなり、標的領域上でNO溶出ポリマーからNO溶出が始まる。本発明の別の態様では、マイクロカプセル内側のプロトン供与体は、マイクロカプセルが破断するまでマイクロカプセルを加熱または剪断することによって放出される。
【0054】
更に別の態様では、マイクロカプセルはフィルム、テープ、またはシースの形に成形される。その後、NO溶出ポリマーのフィルム、テープ、またはシースは、マイクロカプセルのフィルム、テープ、またはシースの上に糊付けされる。NO溶出ポリマーのフィルム、テープ、またはシースは、マイクロカプセルのフィルム、テープ、またはシース上に、パターン化して糊付けされるのが好ましい。得られたパターンは、圧迫または絞りによってマイクロカプセルが破壊された時に、その中の空間をプロトン供与体がNO溶出ポリマーに向かって移動する糊のない空間を含んでいる。プロトン供与体がNO溶出ポリマーに接触すると、NOの溶出が始まる。このようにしてマイクロカプセルのフィルム、テープ、またはシースとNO溶出ポリマーの組み合わせを標的領域に用いることができる。その後、前記組み合わせを圧迫または絞ると、標的領域がNOに曝されることになる。
【0055】
更に別の態様では、NO溶出ポリマーは、プロトン供与体を含むマイクロカプセルのフィルム、テープ、またはシースの上に直接紡糸される。マイクロカプセルのフィルム、テープ、またはシースと紡糸されたNO溶出ポリマーの組み合わせは、標的領域に作用させることができる。その後、組み合わせを圧迫または絞り、その結果標的領域がNOに暴露される。
【0056】
本発明のさらに別の態様では、装置またはシステムには活性化インジケータが提供される。この活性化インジケータは、マイクロカプセルが十分破壊された時、従ってNO溶出ポリマーが十分なプロトン供与体に曝されて十分な量のNOを溶出した時を表示する。この活性化インジケータは、例えば、マイクロカプセルの内側に閉じ込められたプロトン供与体を着色することによって得ることができる。マイクロカプセルが破壊されると、NO溶出ポリマーを湿潤させると同時に着色されたプロトン供与体はマイクロカプセルから出て、その色を目で確認することができる。活性化インジケータを得る別の方法は、マイクロカプセルが壊れた時に音を出す材料でマイクロカプセルを作るか、前記マイクロパーティクルの壁厚を選ぶことである。マイクロカプセル内に含まれるプロトン供与体に香気を混入することもできる。これにより、マイクロカプセルが破壊された後にプロトン供与体がマイクロカプセルから出た時、装置またはシステムの使用者は香気に気づくことができるようになる。
【0057】
別の態様では、水と接触したときに色を変える物質を装置に組み入れることができる。その結果水カプセルまたは水バックが壊れると材料が色を変え、それによって材料が活性化されたことを示す。
【0058】
本発明の別の態様では、装置またはシステムは一方向だけのNO溶出を可能にする。この種の態様では、装置の一側は一酸化窒素に対して低透過性または実質的に不透過性である。これは、発明の装置の一側にNOに対し透過性でない材料を使用することによって達成できる。このような材料は、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはそれらの組み合わせといった一般のプラスチックを含む群から選ぶことができる。この態様はまた、NO溶出ポリマー、例えばL−PEI(または、以下により詳細に説明する、一酸化窒素溶出ポリマーおよび担体物質)を、上記プラスチック、ラテックス、または綿の発明よる装置の表面上に電界紡糸またはガスジェット紡糸できる時、より簡便に製造できる。
【0059】
更に別の態様では、装置には、装置の第1側に、一酸化窒素に対し透過性である一つの部材が提供され、前記装置の第2側には一酸化窒素に対し低透過性または実質的不透過性である別の部材が提供される。この態様は、前記第2側からの一酸化窒素の溶出を実質的に防止しながら、溶出を装置の前記第1側に方向付けする可能性を提供する。これにより、より大量の一酸化窒素が目的とする処置対象領域に到達するだろう。
【0060】
一酸化窒素溶出ポリマーの活性化は、前記ポリマーを好適なプロトン供与体と接触させることによって達成できる。一つの態様では、プロトン供与体は、水、体液(血液、リンパ液、胆汁等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール等)、水性酸性緩衝液(リン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオナート、ブチラート、脂肪酸、アミノ酸等)、またはこれらの任意の組み合せを含む群から選択できる。
【0061】
プロトン供与体に界面活性剤を加えることによって、装置の湿潤化を促進することができる。界面活性剤は表面張力を下げ、活性化流体の装置内の移動が容易になる。
【0062】
本発明の装置の更に別の態様では、図2のテープまたはコーティングは、ポリウレタン、またはポリエチレンから作ることができる。このポリウレタンテープまたはコーティングは、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針の挿入が予定される領域の上に容易に用いることができる。少なくとも体部に面した側は、NO溶出L−PEIのNO溶出ナノパーティクル、マイクロスフェア、またはナノフィラメントで覆うことができる。これらパーティクルまたはフィラメントが、テープまたはコーティングの内側で汗の形の湿気、またはスプレーまたは水浴といったその他の方法で加えられたプロトンと接触するようになると、NOの溶出が始まる。
【0063】
この態様は、足指または指、鼠径部、脇窩の間等といったパッチ/パッドの使用が難しい部位に利用できる装置を獲得できるようにする。
【0064】
発明の別の態様では、テープ/コーティングは、ゴムおよびプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、またはラテックス、あるいはこれらの任意の組み合わせといった、任意のその他好適な材料から作ることができ、これら材料は次に本発明のNO溶出ポリマーによって覆われる。
【0065】
別の態様では、上記のナノパーティクルまたはマイクロスフェアは、本発明のパッチ/パッドの内側で崩壊する可溶性フィルムの中に組み入れ、処置対象領域上で前記可溶性フィルムが汗の形または水バッグもしくは密封された水スポンジからの湿気と接触した時に、関心対象領域にNOを溶出できる。
【0066】
本発明の装置は、処置対象領域に置いた時にNO溶出を提供し、これが血管拡張作用をもたらす。この血管拡張作用は血管を広げ、この拡大によって前記血管内へのカテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針の挿入が容易になる。
【0067】
本発明の別の態様では、装置は一方向のNO溶出だけを可能にする。この種の態様では、パッチ/パッドまたはテープ/コーティングの一側にNOに不透過性の材料を用いることで達成できる。これはNOに対して不透過性であるパッチ/パッドあるいはテープ/コーティングの一側に材料を塗布することにより達成できる。このような材料は、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(アクリル酸)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選ぶことができる。
【0068】
本発明の別の態様では、装置は、本発明のNO溶出ポリマーでコーティングされたポリウレタンまたはポリエチレンのシースまたは図3のプラスター、パッド、もしくはドレッシングの形をとる。プラスターまたはシースは、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、または針の挿入が計画されている領域に用いることができる。
【0069】
本発明の別の態様では、装置は、L−PEI、B−PEI、および/またはPEI−セルロースといったNO溶出ポリマーのナノ繊維から作られた粉末で覆われる。この態様では、本発明の装置は、上記の装置がナノパーティクルおよび/またはマイクロスフェアでおおわれたのと同じ方法で前記粉末によって覆われる。
【0070】
本発明の更に別の態様では、上記のパッチ/パッド、テープ/コーティング、シース/プラスター、またはドレッシングは、気密および/または遮光保護包装内に包装される。保護包装の一側を取り除き、本発明の態様によるNO溶出ポリマーで覆われた側を前処置対象領域に作用させると、装置はその領域にNOを溶出し始める。
【0071】
本発明の更に別の態様では、装置は水バッグまたはその他好適水リザーバーを含む保護包装内に包装される。前処置対象領域に装置を用いる直前に水バッグまたは他の好適水リザーバーが破壊される。その後、湿潤した本発明の装置が前処置対象領域に当てられ、その後装置はNOの溶出を開始する。
【0072】
本発明の装置の別の態様では、繊維、ナノパーティクル、マイクロスフェア、および/または粉末は、塗布または圧迫構造のいずれかの形を取るゲルに組み入れることができる。この場合NOの溶出は、水に浸したパッチを前記ゲルに作用させることで開始できる。繊維、ナノパーティクル、またはマイクロスフェアはまた、使用前に直接混合するハイドロゲルに組み入れることもできる。これらの態様には、皮膚内のポケットおよび隅を貫通して、前処置対象領域により近づけてNOを放出できる利点がある。一酸化窒素溶出ポリマーはプロトン供与体によって活性化されるため、一酸化窒素溶出ポリマーは、一酸化窒素の溶出の開始、即ち装置の使用が望まれるまでプロトン供与体から分離されていなければならない。これを達成する一つの方法は、二つの分離した容器を持つ一本のシリンジを持つことである。一つの容器には、プロトン供与体を基本としたゲルを入れ、もう一方の容器には非プロトン供与体を基本とした、一酸化窒素溶出ポリマーを含むゲルを入れる。装置使用時には二つのゲルがシリンジから絞り出され、一つに混合され、第1ゲル中のプロトン供与体が第2ゲル中の一酸化窒素溶出ポリマーと接触するようになり、一酸化窒素の溶出が始まる。
【0073】
更に別の態様では、粉末、ナノパーティクル、またはマイクロスフェアのような一酸化窒素溶出ポリマーは、発泡体に組み入れることができる。発泡体は開放気泡構造を有することができ、これにより一酸化窒素溶出ポリマーへのプロトン供与体の移動が容易になる。発泡体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせ、あるいはラテックスのような任意の好適ポリマーでよい。
【0074】
更に別の態様では、本発明の装置は、クリームまたはスプレーの形である。クリームまたはスプレーは、油性溶媒のような非水性溶媒中にNO溶出ポリマーを含むことができる。最初にクリームまたはスプレーは、前処置対象領域に用いられ、次に水またはその他プロトン供与体を作用させてNOの溶出を開始させる。NO溶出ポリマーを含むクリームまたはスプレーを上記コーティング材料中に入れ、圧力によってコーティング材料が壊れ、これによりNOの溶出を開始させることもできる。
【0075】
本発明の全ての態様には、カテーテル、脈管アクセス装置、シリンジ、針等の貫通を予定している領域への装置の使用を容易にするために、糊のような接着材料を提供することができる。
【0076】
装置は、前記溶出ポリマーから、0.001〜5000ppmのような、0.01〜3000ppmのような、0.1〜1000ppmのような、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmのような治療用量の一酸化窒素(NO)を溶出する。濃度は、濃度を測定した場所により大きく変化するだろう。濃度を実際のNO溶出ポリマー近くで測定した場合は、濃度は数千ppmほどの高さになるが、一方この場合の組織内側の濃度は1〜1000ppmのように相当低いだろう。
【0077】
本発明の態様では、発明の装置からのNO放出の時間帯を好適に調整または制御できる。これは、前記装置内に別のポリマーまたは材料を組み入れることによって達成できる。これらのポリマーまたは材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせのような任意の好適材料またはポリマーから選ぶことができる。
【0078】
本発明の装置内のNO溶出ポリマーは、水素活性化銀のような銀と組み合わせることができる。本発明の装置内への銀の組み入れは、抗菌および抗ウイルス作用を更に高める。銀は装置から、銀イオンの形で放出可能であることが好ましい。装置内への銀の組み入れは、いくつかの利点を示す。このような利点の一例は、銀が、一酸化窒素溶出ポリマーが標的部位に治療用量の一酸化窒素を溶出している間、装置そのものを無菌または無ウイルス状態に保てることである。
【0079】
本発明の更に別の態様では、NO溶出装置は、例えば医薬品、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリン、ジクロフェナック、イブプロフェン、アスピリン、ナプロキセン、COX−2インヒビター、サリチル酸マグネシウムコリン、ジフルニサール、サルサラート、フェノプロフェン、フルビプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、メロキシカム、ピリキシカム、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナブメトン、エストダルク、ケトロラク、セレコキシブ、バルデコキシブ、およびロフェコキシブのような非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);コルチゾン、プレドニゾン、メトルプレドニゾロン、プレドニゾロン、ビタミンD、エストロゲン、コレステロール、ベクロメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、デソニド、クロベタゾール、アクロメタゾール、デソキシメタゾン、ベータメタゾン、ハルシノニド、およびデキサメタゾンのようなステロイド;モートリン、フェルデン、ナプロシン、リドカイン、およびプリロカインのような鎮痛薬;ならびに硫酸インジナビル、フィナステリド、アプレピタント、モンテルカストナトリウム、アレンドネートナトリウム、レフェコキシブ、リザトリプタンベンゾエート、シムバスタチン、フィナセテリド、エゼチミブ、カスポファンギンアセタート、エルタペネムナトリウム、塩酸ドロゾラミド(dorzolamide hydrochloride)、マレイン酸チモロール、ロサルタンカリウム、およびヒドロクロロチアジドのようなその他物質等の薬物溶出パッチの効果促進薬として働く。本態様は、有意な価値を持つ二つの処置を一つの処置にまとめた利点を有する装置である。
【0080】
本発明の装置は、例えばL−PEIの、例えば電界紡糸法、ガス紡糸、エアー紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、またはゲル紡糸によって製造できる。L−PEIは、次に、電界紡糸法で製造された場合には固有電圧が印加され、L−PEIポリマー繊維の束としてL−PEIの微細ジェットが放出される。このポリマー繊維のジェットは、処置対象表面に向けられる。処置対象表面は、例えば本発明の装置に関して任意の好適な材料である。電界紡糸されたL−PEIの繊維は次に前記材料に付与され、発明の装置にL−PEIのコーティング/層を形成する。
【0081】
本発明の装置の基礎材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本とするポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせでよい。NO溶出ポリマーは、本発明の全ての態様について、これら材料に組み入れても、一緒に紡糸しても、またはその上に紡糸してもよい。
【0082】
本発明の範囲内に留まりながら上記その他NO溶出ポリマーを発明の装置に電界紡糸することも勿論可能である。
【0083】
一つの態様では、本発明に用いるNO溶出ポリマーは、純粋なNO溶出ポリマー繊維が得られるように電界紡糸される。
【0084】
本発明の装置上への前記NO溶出ポリマーのガス流紡糸、エアー紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、およびゲル紡糸もまた本発明の範囲内である。
【0085】
本発明の製造工程は、NO溶出ポリマー繊維またはマイクロパーティクルと前処置対象領域との広い接触面、NO溶出ポリマーの効果的な使用、および本発明の装置の費用効果的な製造法の利点を提供する。
【0086】
発明は、任意の好適な形で実施できる。発明の態様の要素および構成要素は、任意の好適な様式で、物理的、機能的、および理論的に実施できる。実際、機能性は単一ユニット内、複数のユニット内、またはその他機能的ユニットの一部として実施できる。
【0087】
本発明は特定の態様を参照して上に記載されているが、これはここに記載された特定の形に制限するものではない。むしろ発明は、添付の請求項によってのみ制限され、上の特定態様以外の態様もこれら添付の請求項の範囲内において同様に可能である。
【0088】
特許請求の範囲では、用語「含む」は、他の要素または段階の存在を排除しない。更には個別に掲載されているが、複数の手段、要素、または方法の段階が実施できる。これに加えて、単一の特徴を異なる請求項に含めることができるが、これらは有利に組み合わせることができ、また異なる請求項に含めることは特徴の組み合わせが実行可能および/または有利でないことを意味しない。これに加えて、単数形の引用は複数形の引用を除外するものではない。用語「a」、「an」、「第1」、「第2」等は複数形を排除しない。請求項内の引用符号は、単に明瞭な例を提供するものであり、いかなる形でも請求項の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、発明のある態様によるパッチ/パッド10の概略図である。
【図2】図2は、発明のある態様によるテープまたはコーティング20の概略図である。
【図3】図3は、発明のある態様によるシースまたはプラスター30の概略図である。
【図4】図4は、酸化窒素溶出ポリマーと担体材料からなる2種類の混合物の、2つの溶出プロフィールを描いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の器官のある領域を、前記領域貫通前、最中、および/または後に処置および/または前処置して、前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器に連結するように作られた装置であって、
前記領域に血管拡張、抗収縮、および抗痙攣作用、ならびに一酸化窒素の溶出を開始するための手段を獲得する一酸化窒素(NO)を溶出する装置。
【請求項2】
前記装置が、前記処置および/または前処置のために用いた時に、無毒用量の一酸化窒素(NO)を溶出するように作られた一酸化窒素溶出ポリマーを含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーが、ジアゼニウムジオラート基、S−ニトロシル化基、およびO−ニトロシル化基、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーがL−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)であり、前記ジアゼニウムジオラート基、S−ニトロシル化基、またはO−ニトロシル化基、あるいはそれらの組み合わせを通して一酸化窒素(NO)が負荷されており、前記領域を処置および/または前処置するために、体の前記領域への一酸化窒素(NO)放出に合わせて配置されている、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
前記一酸化窒素溶出ポリマーが、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルマート)、ポリ(イミノカルボナート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、およびポリジメチルシロキサン、またはこれらの任意の組み合わせ、および多糖類主鎖またはセルロース性主鎖といった不活性主鎖にグラフトされたこれら記載のポリマーを含む群から選択される、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、ヒトまたは動物のある領域を、前記領域を貫通する前、最中、および/または後に処置および/または前処置して、前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器と連結するために作られたパッチ/パッド、テープ/コーティング、ドレッシング、およびシース/プラスターから成る群より選択された形状を有する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記パッチ/パッド、テープ/コーティング、ドレッシング、およびシース/プラスターが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの組み合わせ作られ、且つ前記パッチ/パッド、テープ/コーティング、ドレッシング、またはシース/プラスターが、使用時に前記領域に前記一酸化窒素(NO)を溶出するために作られた一酸化窒素溶出ポリマーを含む、請求項6記載の装置。
【請求項8】
一酸化窒素の溶出を開始するための前記手段がプロトン供与体バッグ、密封されたプロトン供与体スポンジ、またはマイクロ封入されたプロトン供与体である、請求項1のいずれかの装置。
【請求項9】
前記プロトン供与体が、水、血液、リンパ液、胆汁、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール、リン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオナート、ブチラート、脂肪酸、およびアミノ酸等、またはこれらの任意の組み合せを含む群から選択される、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記プロトン供与体バッグ、密封されたプロトン供与体スポンジ、マイクロカプセル化プロトン供与体が前記装置の保護包装内に収納されている、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が使用前は保護包装内に包装されている、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、湿気または水に曝されると部分的に崩壊する、請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記ポリマーが、前記領域に暴露するように配された銀を含む、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、医薬品、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリン、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド、および/または鎮痛剤から成る群より選ばれたその他活性成分のブースターとして働くように作られている、請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記ポリマーがナノパーティクルまたはマイクロスフェアの形をとる、請求項1記載の装置。
【請求項16】
前記ナノパーティクルまたはマイクロスフェアが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせのような好適材料内に封入されている、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記ナノパーティクルまたはマイクロスフェアが、ゲル、ハイドロゲル、発泡体、スプレー、またはクリーム中に組み入れられている、請求項15または16記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、前記NOの溶出を調整または制御するのに適合した担体材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項19】
前記NO溶出ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、ポリ乳酸、デンプン、セルロース、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質を基本としたポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、およびラテックス、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択された材料に塗布または組み込まれている、請求項1記載の装置。
【請求項20】
前記一酸化窒素溶出ポリマーが、主鎖の中に2級アミンを含むか、またはペンダントとして2級アミンを含む、請求項1記載の装置。
【請求項21】
陽性リガンドが2級アミンの隣接炭素原子に配置されている、請求項20記載の装置。
【請求項22】
吸収剤を含む、請求項1または18記載の装置。
【請求項23】
前記吸収剤が、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース、綿、またはデンプン、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項22記載の装置。
【請求項24】
カチオンを含み、前記カチオンが一酸化窒素溶出ポリマーを安定化する、請求項1、18、または22記載の装置。
【請求項25】
前記カチオンが、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記担体材料がハイドロゲルである、請求項1記載の装置。
【請求項27】
一酸化窒素溶出ポリマーがプロトン供与体によって活性化可能であり、前記一酸化窒素溶出ポリマーが、使用前、そこから一酸化窒素の溶出が始まるまでプロトン供与体から分離されて貯蔵されている、請求項1記載の装置。
【請求項28】
前記装置が、第1容器にはゲルのようなプロトン供与体を基本とするNO放出活性化剤が入っており、第2容器には一酸化窒素溶出ポリマーを含む非プロトン供与体を基本とするゲルが入っており、前記領域に投与することによって混合されるように作られている二つの分離容器を有するシリンジ型装置である、請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記領域が貫通可能な皮膚領域である、先行請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
ヒトまたは動物の器官のある領域を、前記領域貫通前、最中、および/または後に処置および/または前処置して前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器と連結するように作られた請求項1記載の装置を製造する工程であって:
処置または前処置のために用いた時に治療用量の一酸化窒素(NO)を溶出するよう作られた一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを選択する段階、
担体材料を選択する段階で、担体材料が前記治療用量の一酸化窒素(NO)の溶出を調整および制御するように作られている段階、
NO溶出ポリマーを前記担体材料と一緒に一酸化窒素(NO)溶出材料内に、前記担体材料が、前記装置使用時に前記治療用量の一酸化窒素(NO)の溶出を調整および制御するように組み入れる段階、ならびに
前記一酸化窒素溶出材料を好適な形状または担体上のコーティングとして展開して前記前記装置の少なくとも一部分を形作り、使用時に前記NO溶出ポリマーが一酸化窒素(NO)を溶出した時、前記一酸化窒素に治療標的部位が暴露するように前記装置を作る段階、を含む工程。
【請求項31】
前記展開段階が、NO溶出ポリマーまたはNO溶出材料の電界紡糸、エアー紡糸、ガス紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、またはゲル紡糸を含む、請求項30記載の製造工程。
【請求項32】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを選択する前記段階が、複数の一酸化窒素(NO)溶出ポリマー性パーティクル、好ましくはナノ繊維、ナノパーティクル、またはマイクロスフェアを選択する段階を含む、請求項30記載の製造工程。
【請求項33】
前記NO溶出ポリマーを前記担体材料と一緒に組み入れる段階が、前記NO溶出ポリマーを前記担体材料に組み込む段階、前記NO溶出ポリマーを前記担体材料と一緒に紡糸するかまたは前記NO溶出ポリマーを前記担体材料最上部に紡糸して前記装置の一酸化窒素溶出特性を事前に画定する段階を含む、請求項30または31記載の製造工程。
【請求項34】
前記装置に銀を組み込む段階を更に含む、請求項30記載の製造工程。
【請求項35】
マイクロカプセル内にプロトン供与体をマイクロカプセル化する段階、および
前記一酸化窒素(NO)溶出材料にマクロカプセルを加える段階を更に含む、請求項30記載の製造工程。
【請求項36】
前記添加の段階が、前記マイクロカプセル上にNO溶出材料をパターン化して糊付けるか、または紡糸する段階を含む、請求項35記載の製造工程。
【請求項37】
第1フィルム、テープ、またはシース内にマイクロカプセルを形成する段階、
前記NO溶出材料の第2フィルム、テープ、またはシースを形成する段階、および
マイクロカプセルの第1フィルム、テープ、またはシースを前記NO溶出材料の前記第2フィルム、テープ、またはシースに糊付けする段階を含む、請求項35記載の製造工程。
【請求項38】
前記糊付け段階が、糊のない空間を含むパターンが得られるようにパターン化して糊付けする段階を含む、請求項37記載の製造工程。
【請求項39】
第1フィルム、テープ、またはシース内にマイクロカプセルを形成する段階、およびプロトン供与体を含有するマクロカプセルのフィルム、テープ、またはシース上にNO溶出材料を直接紡糸する段階を含む、請求項35記載の製造工程。
【請求項40】
マイクロカプセルが壊れてNO溶出材料が前記プロトン供与体に曝され、NOを溶出したことを示すように作られた活性化インジケータを提供する段階を含む、請求項35記載の製造工程。
【請求項41】
前記活性化インジケータを提供する段階が、マイクロカプセル内側に着色剤を提供する段階を含む、請求項40記載の製造工程。
【請求項42】
前記活性化インジケータを提供する段階が、マイクロカプセルが壊れたときに音を出す、マイクロカプセルの材料を選択する段階または前記マイクロカプセルの壁厚を選択する段階を含む、請求項40記載の製造工程。
【請求項43】
前記活性化インジケータを提供する段階が、マイクロカプセル内に香気材料を混合する段階を含む、請求項40記載の製造工程。
【請求項44】
前記活性化インジケータを提供する段階が、プロトン供与体と接触すると色を変える物質を提供する段階を含む、請求項40記載の製造工程。
【請求項45】
ヒトまたは動物のある領域を、前記領域貫通前、最中、および/または後に処置および/または前処置して前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器と連結するように作られた装置製造への一酸化窒素(NO)溶出ポリマーの使用であって:
一酸化窒素が前記装置に負荷され、装置が、前記領域に用いられた時、前記溶出ポリマーから無毒用量の一酸化窒素(NO)を溶出する使用。
【請求項46】
前記無毒用量が0.01〜3000ppmのような、0.1〜1000ppmのような、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmのような0.001〜5000ppmである、請求項45記載の使用。
【請求項47】
ヒトまたは動物の器官の少なくとも一カ所の領域を処置して、前記領域貫通前、最中、および/または後に、前記ヒトまたは動物の脈管系をサンプリング、注入、または採取容器創傷と連絡する方法であって、一酸化窒素(NO)を溶出する装置および一酸化窒素の溶出を開始させるための手段を用い、それによって前記少なくとも一つのヒトまたは動物の器官の前記少なくとも一カ所の領域を前記一酸化窒素に暴露する段階を含む方法。
【請求項48】
前記少なくとも一カ所の創傷の前記部位が体の頭、顔、頸、肩、背、腕、手、胃、生殖器、大腿部、脚部、または足であり、パッチ/パッド、テープ/コーティング、ドレッシング、シース/プラスター、ゲル、ハイドロゲル、発泡体、スプレー、またはクリームを、前記暴露のために体の前記頭、顔、頸、肩、背、腕、手、胃、生殖器、大腿部、脚部、または足に使用することを含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
一酸化窒素(NO)への前記暴露が、NO溶出ポリマーによって得られる、請求項47または48記載の方法。
【請求項50】
NO溶出ポリマーからのNOの放出が、担体材料によって調整または制御される、請求項49記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542327(P2008−542327A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514039(P2008−514039)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050899
【国際公開番号】WO2006/128742
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507271798)ノーラブズ エービー (11)
【Fターム(参考)】