説明

三方活栓

【課題】弁体の切換路における薬液の滞留を防止して、薬液の投与誤差や濃度変化を抑制することができる三方活栓を提供する。
【解決手段】円筒状の基部2と、基部2から延出する3つの分岐管3,4,5と、基部2内に設けられた円柱状の弁体7とを備える。弁体7に、その回動により各分岐管同士を選択的に連通させる切換路8を設ける。切換路8を、弁体7を貫通する貫通孔8aと、貫通孔8aの一端から他端に至る弁体7の周壁の一側に沿って半円状に延設され、貫通孔8aと連通状態で各分岐管3,4,5に選択的に連通自在の外周溝8bとによって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの分岐管の連通を選択的に切換える三方活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
三方活栓は、医療の分野において点滴等を行う際に使用されており、2つの分岐管から供給される薬液等を他の1つの分岐管に交互にあるいは同時に供給するものである。従来、この種の三方活栓は、円筒状の基部から外方に3つの分岐管が延出しており、各分岐管は基部の軸心から90゜の角度をもって互いに離間している。基部内には円柱状の弁部が回動自在に設けられており、弁部にはT字形の切換路が形成されている。そして、この弁体を回動させることにより切換路を介して各分岐管同士を選択的に連通させることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
更に詳しく説明すれば、従来の三方活栓は、図5(a)に示すように、弁部10に形成されたT字形の切換路11の各連通路11a,11b,11cを、基部12から延びる各方向の分岐管13,14,15に一致させることにより3つの分岐管13,14,15の全てが連通状態となる。この状態で、例えば、第1の分岐管13から点滴用薬液を供給し、第2の分岐管14から他の薬液注入を行えば、点滴用薬液と他の注入薬液とを合流させて第3の分岐路15から送り出すことができる。
【0004】
また、図5(b)に示すように、基部12の両側に直線的に延びる第1の分岐管13と第3の分岐管15とに切換路11の両側に直線的に延びる第1の連通路11aと第3の連通路11cとを一致させ、第2の連通路11bを基部12の内面で閉塞する位置に回動させると、第1の分岐管13から供給する点滴用薬液のみを第3の分岐路15から送り出す状態となり、第2の分岐管14は閉塞状態となる。
【0005】
更に、図5(c)に示すように、基部12から直交方向に延びる第2の分岐管14と第3の分岐管15とに切換路11の第1の連通路11aと第2の連通路11bとを一致させ、第3の連通路11cを基部12の内面で閉塞する位置に回動させると、第2の分岐管14からの注入薬液のみが第3の分岐路15から送り出され、第1の分岐管13が閉塞する。
【0006】
しかし、図5(b)及び図5(c)に示すように、弁部10に形成されたT字形の切換路11によって分岐管13,14,15のうちの何れか2つを連通させた状態とすると、切換路11の各連通路11a,11b,11cのうちの何れか1つ、即ち、図5(b)に示す状態では第2の連通路11b、図5(c)に示す状態では第3の連通路11cが、基部12の内面で閉塞された閉塞空間となり、この空間に薬液等が滞留する不都合があった。
【0007】
このため、例えば、図5(c)に示す状態で第2の分岐管14からの薬液注入を行なった際に閉塞状態の第3の連通路11cの内部に注入薬液の一部が滞留し、患者に対する薬液の投与誤差が生じていた。また、図5(c)に示す第3の連通路11cの内部に注入薬液が滞留した状態で、図5(b)に示す状態に切換えると、第3の連通路11cの内部に滞留していた注入薬液がその濃度が高い状態のまま、第1の分岐管13から供給された点滴用薬液によって一気に第3の分岐路15から放出され、点滴用薬液中に注入薬液の急激な濃度変化が生じていた。そして、こうした薬液の投与誤差や濃度変化は、特に、体重の少ない未熟児や乳幼児に対して治療効果の低下につながるおそれがあった。
【特許文献1】実開平6−44554号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる不都合を解消して、本発明は、弁体の切換路における薬液の滞留を防止して、薬液の投与誤差や濃度変化を抑制することができる三方活栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、円筒状の基部と、該基部から三方に延出する3つの分岐管と、基部内に回動自在に設けられた円柱状の弁体とを備え、該弁体に、その回動により各分岐管同士を選択的に連通させる切換路が形成された三方活栓において、前記切換路は、弁体を貫通する貫通孔と、一端が該貫通孔の一端に連通し他端が該貫通孔の他端に連通して該貫通孔の一端から他端に至る弁体の周壁の一側に沿って半円状に延設され、該貫通孔と連通状態で各分岐管に選択的に連通自在の外周溝とによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、弁体の切換路が、端部同士で互いに連通状態の貫通孔と外周溝とによって構成されているので、貫通孔が何れの分岐管に連通した状態となっても、貫通孔と外周溝との連通状態が維持される。これにより、薬液等の流動を3つの分岐管の間で切換えたとき、切換路を介して何れか2つの分岐管が連通された状態であっても、切換路には基部の内面によって閉塞される部分が生じず、貫通孔と外周溝との両方を薬液等が流動するので、弁体の切換路における薬液の滞留を防止することができる。
【0011】
更に、貫通孔と外周溝との両方を薬液等が流動することによって、例えば貫通孔と外周溝との各々の流路断面積を、従来の切換路の半分となるように形成しても、従来の切換路と同等の流量を確保することができる。しかもこのように、貫通孔と外周溝との各々の流路断面積を小さくして十分な流量が確保できることにより、切換路を設けたことによる弁体の強度低下を防止することができ、強度の高い弁体を備える耐久性の高い三方活栓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の三方活栓の平面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1のIII−III線断面図、図4は本実施形態の三方活栓における弁体の作用を示す説明的断面図である。
【0013】
本実施形態の三方活栓1は、図1に示すように、円筒状の基部2と、基部2から三方に延出する3つの分岐管(第1導入管3、第2導入管4、導出管5)とを備えている。3つの分岐管のうち、第1導入管3と導出管5とは図2に示すように基部2を介して互いに180゜離間して直線状に延設され、第2導入管4は、図1及び図3に示すように、基部2を介して第1導入管3及び導出管5に対して90゜離間して延設されている。
【0014】
基部2には、図1及び図2に示すように、上部にレバー6を備える円柱状の弁体7が回動自在に挿設されている。弁体7には、図4(a)に示すように切換路8が形成されている。切換路8は、図2及び図4(a)に示すように、弁体7を貫通する貫通孔8aと、図3及び図4(a)に示すように、弁体7の周壁に沿って半円状に延設された外周溝8bとによって構成されている。
【0015】
貫通孔8aは、図2及び図4(a)〜(c)に示すように、弁体7の軸線に直交する方向に直線状に貫通して形成されており、レバー6操作に伴う弁体7の回動によって、3つの分岐管(第1導入管3、第2導入管4、導出管5)の何れかに軸線方向に連通する。また、外周溝8bは、図4(a)〜(c)に示すように、その両端が貫通孔8aの両端に連通し、3つの分岐管(第1導入管3、第2導入管4、導出管5)の何れかに側方から連通する。なお、図1に示すように、レバー6には、その上面に連通方向を示す矢印表示9が設けられている。
【0016】
次に、本実施形態の三方活栓1の作動について説明する。まず、図4(a)に示すように、弁体7の貫通孔8aが第1導入管3と導出管5とに連通し、弁体7の外周溝8bが第2導入管4に連通したとき、貫通孔8aと外周溝8bとが互いに連通していることから、第1導入管3、第2導入管4、及び導出管5が全て連通状態となる。この状態においては、例えば、第1導入管3から点滴等の薬液が導入され、第2導入管4にはシリンジ等が接続されて他の薬液が注入され、それらの薬液が共に導出管5から導出される。
【0017】
この状態から、レバー6の操作によって、図4(b)に示すように弁体7を180°回動させると、弁体7の周壁により第2導入管4が閉鎖され、第1導入管3及び導出管5は貫通孔8aにより連通状態となる。このとき、外周溝8bは、その両端が貫通孔8aに連通していることから、第1導入管3及び導出管5は外周溝8bによっても連通状態となる。これにより、第1導入管3から導入された点滴等の薬液が、貫通孔8aと外周溝8bとの両方を流動して導出管5から導出される。従って、第2導入管4を閉鎖している弁体7の切換路8には、従来のように閉塞された空間が形成されることはなく、弁体7の切換路8における薬液の滞留が生じることがない。
【0018】
また、図4(a)に示す状態から、レバー6の操作によって、図4(c)に示すように弁体7を反時計回りに90°回動させると、弁体7の周壁により第1導入管3が閉鎖され、第2導入管4及び導出管5は外周溝8bの一部により連通状態となる。このとき更に、外周溝8bはその両端が貫通孔8aに連通していることから、第2導入管4及び導出管5は貫通孔8aと外周溝8bの他部によっても迂回した形で連通状態となる。これにより、第2導入管4に接続されたシリンジ等から注入された薬液が、貫通孔8aと外周溝8bとの両方を流動して導出管5から導出される。従って、第1導入管3を閉鎖している弁体7の切換路8には、従来のように閉塞された空間が形成されることはなく、弁体7の切換路8における薬液の滞留が生じることがない。
【0019】
以上のように、本実施形態の三方活栓1によれば、弁体7の切換路8を貫通孔8aと外周溝8bとによって構成したことにより、切換路8に閉塞された空間が形成されることはなく、切換路8における薬液の滞留を防止することができるので、薬液の投与誤差や濃度変化を防止して、例えば、体重の少ない未熟児や乳幼児に対しても良好に採用することができる。
【0020】
しかも、図4(b)や図4(c)に示すように、第1導入管3と第2導入管4との何れか一方を閉鎖したときであっても、弁体7の切換路8には貫通孔8aと外周溝8bとの両方を薬液が流動するので、貫通孔8aと外周溝8bとの夫々の流路断面積が小さくても、導出管5から十分な流量で薬液を導出させることができる。このことから、導出管5から導出させる薬液の所定流量の範囲内であれば、貫通孔8aと外周溝8bとの夫々の流路断面積を小さくすることができ、切換路8を形成したことによる弁体7の強度低下を抑制して三方活栓1の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の三方活栓の平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】本実施形態の三方活栓における弁体の作用を示す説明的断面図。
【図5】従来の三方活栓における弁体を示す説明的断面図。
【符号の説明】
【0022】
1…三方活栓、2…基部、3…第1導入管(分岐管)、4…第2導入管(分岐管)、5…導出管(分岐管)、7…弁体、8…切換路、8a…貫通孔、8b…外周溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基部と、該基部から三方に延出する3つの分岐管と、基部内に回動自在に設けられた円柱状の弁体とを備え、該弁体に、その回動により各分岐管同士を選択的に連通させる切換路が形成された三方活栓において、
前記切換路は、弁体を貫通する貫通孔と、一端が該貫通孔の一端に連通し他端が該貫通孔の他端に連通して該貫通孔の一端から他端に至る弁体の周壁の一側に沿って半円状に延設され、該貫通孔と連通状態で各分岐管に選択的に連通自在の外周溝とによって構成されていることを特徴とする三方活栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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