説明

三次元積層造形部品の表面仕上げ方法

【課題】光ビームを利用した積層三次元造形製品の製作において、各積層端部に滑らかな表面加工を実現することが可能な表面仕上げ方法を提供する。
【解決手段】光ビームの照射に伴って、積層端部に突出した状態にて出現する余剰造形部を切削除去する三次元積層造形部品の表面仕上げ方法であって、余剰造形部が突出している単数層又は複数層4に対し、回転するエンドミル工具31によって当該余剰造形部を切削除去する際、上側において更なる積層及び光ビームの照射を原因とする熱収縮によって、切削除去の対象となる積層端面が上側となるに従って内側に移行するような傾斜を呈しても、一挙に表面仕上げとなるような切削除去をせずに、当該傾斜の影響を受けないように、最初の切削除去と表面仕上げに至る切削除去との2段階の工程を採用するか、又は当該傾斜が生じている積層領域よりも下側の積層領域を切削除去の対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光などの光ビームを利用した三次元積層造形製品を製作する工程において、積層造形工程において、所定の位置まで積層を行った段階にて、積層造形段階における積層端面の表面粗さを解消する工程である表面仕上げ方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
通常の積層造形方法で製作された部品や金型などを仕上げ加工する場合、特に狭く深い溝が多くあるコア金型の加工には、切削工具の刃長が不足するため、従来工法においては、放電加工や割り型とする工程を必要とし、このため、多数の設計図面及び加工プログラムに基づく工程を不可欠とする。
【0003】
このような不都合を打開するために、特許文献1、2においては、金属粉末の層成形と所定箇所に光ビームを照射して焼結層を作ることを繰り返す積層造形において、切削工具の刃長近くまで積み上げた途中の段階で、積層造形時に発生する各層の段差、不完全結合部及び余剰造形部を切削除去することによって表面仕上げを行い、更に、エンドミル工具の刃長近くまで前記の積層造形を繰り返すことによって、切削工具の刃長制限による不都合を解消している。
【0004】
このような刃長制限の解消を伴った積層及び表面仕上げに基づいて、複雑な形状であり、しかも狭く深い溝の仕上げ加工を伴う場合においても、前記のような放電加工の実施や割り型とすることが不必要となるため工程を非常に短縮すると共に、比較的精度の高い、面粗さが小さい積層造形製品や金型を得ることを可能としている。
【0005】
前記積層造形においては、切削仕上げ加工後に新たな材料層を使用して積層造形すると共に、光ビームを照射して固化・焼結・溶融させた場合には、当該新たな積層面端部には、図4に示すような余剰造形部が発生する。
【0006】
当該余剰造形部の大きさに対し、特に切削工具の径が小さい場合には、当該切削工具の回転刃によって切削を行っても、余剰造形部がバリのように薄く切削面に張り付く現象が顕著に現れ、切削仕上げ面の面粗さを小さくできない現象が発生していた。
【0007】
特許文献3においては、図5(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、積層造形の度ごとに、既に形成された積層部において発生した余剰造形部に対し、一挙に表面仕上げに至るような切削除去を行っている。
【0008】
しかしながら、このような方法においては、切削除去が行われた積層部の更にその上側に新たな積層及び光ビームの照射を行った場合に、既に仕上げられた表面の付近において、新たな積層を行うための材料粉末が切削仕上げ面に部分的に再度焼結・再溶着することによって、当該表面の肌荒れによる凹凸が生じ、再度の切削除去を行うも、十分な表面仕上げを行うことができない場合が発生する。
【0009】
しかも、図5(c)、(d)に示すように、積層の端面に対する切削除去を行った後に、新たな積層を行うための光ビームの照射に基づく上部造形層の変質・密度変化・熱影響を原因とする収縮・変形が生ずることによって、既に切削除去が行われたその下側積層部においても、積層領域内において、その位置が上側となるに従って、積層面方向の収縮の程度が著しくなり、積層端部においては、積層端部の位置が上側となるに従って、積層面が小さくなるような形状、即ち内側に移行するような傾斜部を形成するため、平坦な端部を形成することができない。
【0010】
このため、図5(e)(図5(d)の内の造形層cに関する部分拡大図)に示すように、その造形層cに対する部分拡大図に示すように、各積層端面においては、切削除去において、その上側の積層部から移動してきた端面部分と、その下側の傾斜面部分とが形成され、平坦な端面とは程遠い状態とならざるを得なかった。
【特許文献1】特許第3446733号公報
【特許文献2】特開2003−293012号公報
【特許文献3】特開2005−154830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、三次元積層造形部品の表面仕上げ方法において、従来技術を採用した場合に生ずる弊害を克服し、平坦な積層端面を実現し得るような表面仕上げ方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)金属粉又は非金属粉を各層毎に、光ビームを照射することによって焼結させながら積層し、所定の三次元造形製品を製作する際に、光ビームの照射に伴って、積層端部に突出した状態にて出現する余剰造形部を切削除去する三次元積層造形部品の表面仕上げ方法であって、余剰造形部が突出している単数層又は複数層に対し、回転するエンドミル工具によって当該余剰造形部を切削除去する際、既に表面仕上げが完了している下側の積層端面と同レベルに至るまでの切削除去をせずに、切削除去の対象となる単数層又は複数層の内の最上側層(単数層の場合には、当該層)において、更なる積層及び光ビームの照射を原因とする熱収縮によって、前記最上側層の上側表面が内側に移行しても、当該上側表面の積層端部が既に表面仕上げが完了している下側の積層端面のレベルよりも内側に移行しない程度の突出幅を残存した状態にて切削除去を行った後、前記最上側層の上側表面における熱収縮が終了した後に表面仕上げのための切削除去を行うことに基づく三次元積層造形部品の表面仕上げ方法、
(2)金属粉又は非金属粉を各層毎に、光ビームを照射することによって焼結させながら積層し、所定の三次元造形製品を製作する際に、光ビームの照射に伴って、積層端部に突出した状態にて出現する余剰造形部を切削除去する三次元積層造形部品の表面仕上げ方法であって、突出した状態にある余剰造形部の全ての層を切削除去せずに、余剰造形部が突出している造形層の上側において更なる積層及び光ビームの照射が行われても、当該積層及び照射を原因とする熱収縮が生じないような位置にある下側の積層領域を切削除去の対象とし、かつ既に表面仕上げが行われている更に下側の積層端面と同一レベルによる切削除去を行うことに基づく三次元積層造形部品の表面仕上げ方法、
からなる。
【発明の効果】
【0013】
前記(1)、(2)の基本構成に基づく本発明においては、新たな上側の積層部の形成及び光ビームの照射を原因とする材料粉末の既に仕上げられた表面に対する再度の焼結・再溶着に基づく凹凸の発生を防止すると共に、表面端部における前記傾斜部の発生を防止し、ひいては、平坦な積層端面による表面仕上げを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、前記(1)の基本構成による実施形態を示す。
【0015】
図1(a)において、下側造形層4のA、Bは、既に表面仕上げが行われている。
【0016】
その上側造形層4のC、Dは、造形層4のA、Bのような表面仕上げが行われた積層端面よりも幅wだけ積層端面が突出するような状態にて切削除去が行われているが、このような突出状態の場合には、図1(b)に示すように、更に新たに造形層4のE、Fの光ビーム5の照射を伴う積層を原因として、最上部の造形層4のDにおいて、上側となるに従って、内側により多く収縮し、上側表面が最も内側に移行しても、A、Bの2層の積層端面よりも内側に移行しない程度の突出幅として残存させている(図1(b)からも明らかなように、造形層4のDにおいては、その上側表面が最も内側に移行しているが、A、Bの積層端面よりも外側に位置している。)。
【0017】
その後、図1(c)に示すように、新たな造形層4のE、Fに対しても、これまでの造形層4のC、Dと同じように、表面仕上げが行われたA、Bの積層端面よりも突出幅wを残存した状態にて、最初の切削除去が行われている。
【0018】
その後、造形層4のC、Dの熱収縮が終了した段階にて、図1(d)に示すように、予め突出幅wだけ残存させた状態にて切削除去が行われた造形層4のC、Dを造形層4のA、Bの積層端面と同一レベルとなるように、表面仕上げを行い、図1(d)の造形層4のC、Dと同E、Fとの関係は、図1(a)の造形層4のA、Bと同C、Dと同一の関係にある。
【0019】
図1においては、図1(c)、(d)に示すように、造形層4のC、Dの表面仕上げに至る切削除去よりも、その後新たに積層された造形層4のE、Fの最初の切削除去を先に行っているが、造形層4のC、Dの熱収縮が既に完了しているのであれば、その順序を逆転する方法、即ち造形層4のC、Dの表面仕上げに至る切削除去を先に行い、その後、造形層4のE、Fの最初の切削除去を行う場合も、前記(1)の基本構成の実施形態に該当する(但し、前記逆転する順序よりも、図1(c)、(d)のような順序の場合の方が造形層4のC、Dにおける熱収縮が完了することを待たずに、造形層4のE、Fにおける最初の切削除去を行い得る以上、造形層4のC、D、E、F全体の切削除去に要する時間を短縮し、かつ効率的な作業を行うことができる。)。
【0020】
尚、図1(a)の状態から図1(b)の状態に移行した場合と同じように、図1(d)の造形層4のE、Fに対し、更に新たな2層の造形層4が積層された場合には、改めて図1(c)、(d)と同様の工程、又は段落〔0019〕において説明したような図1(c)の工程と図1(d)の工程との順序を逆転したことによる工程による切削除去が行われることになる。
【0021】
図1(a)、(b)、(c)、(d)のプロセスからも明らかなように、前記(1)の基本構成においては、最初の切削が行われた造形層4(図1(a)の造形層4のC、D)に対し、新たな造形層4(図1(b)の造形層4のE、F)が積層された場合には、材料粉末が最初の切削除去が行われている積層端部(図1(b)、(c)の積層端部)に、再度溶融が部分的に行われたとしても、その後、当該積層端部は、表面仕上げのための切削除去の対象となる以上、結局、前記再度焼結・再溶着による表面の凹凸は生じない。
【0022】
しかも、最初の切削除去が行われた造形層4(図1(b)、(c)の造形層4のC、D)に対し、図5(a)、(b)に示す場合と同様に、更なる積層(図1(b)の造形層4のE、Fの積層)が行われ、当該積層に伴う光ビーム5の照射に基づく造形層4の変質・変化・熱影響を原因とする収縮・変形が生ずることによって積層部の位置が上側となるに従って、内側に移行するような傾斜部(積層部C、Dの積層端面による傾斜部)が形成されたとしても、当該傾斜部は、最終的な仕上げ段階において切削除去されてしまうので、平坦な表面仕上げ(図1(d)の造形層4のA、B、C、Dによる積層端面)を形成することが可能となる。
【0023】
図2は、3段毎に積層及び表面仕上げを行う場合の前記(2)の実施形態を示す。
【0024】
図2(a)に示すように、造形層4のA、B、Cは、既に表面仕上げによる積層端面を形成しているのに対し、造形D、E、Fの3層、及び当該3層に対し、更に積層された造形層4のG、H、Iの3層は、何れも、切削除去の前段階にある。
【0025】
光ビーム5の照射を伴う造形層4のGの積層段階において、造形層4のD、E、Fの3層の下側に位置している造形層4のCは、照射に伴う熱収縮の影響を殆ど受けないため、造形層4のA、B、Cを予め切削除去によって表面仕上げを行ったとしても、図5(a)、(b)の造形層4のBのように、下側から上側の位置となるに従って、内側に移行するような傾斜部を形成することはない。
【0026】
造形層4のG、H、Iの3層の積層の後に、図2(b)に示すように、造形層4のD、E、Fの3層の積層端部を一挙に表面仕上げとなるような切削除去、即ち造形層4のA、B、Cの積層端面と同様のレベルとなるような切削除去を行ったうえで、図2(c)に示すように、更に造形層4のJ、K、Lの3層を積層したとしても、表面仕上げを行った造形層4のD、E、Fの内、最も上側に位置している造形層4のFに対し、造形層4のJの光ビーム5の照射を伴った積層を原因とする熱の影響が殆どない以上、図2(a)の造形層4のCの場合と同様に、一挙に表面仕上げに至る切削除去をしても、図2(a)、(b)の造形層4のBから傾斜部を生じない。
【0027】
このように、前記(2)の基本構成においては、下側の単数又は複数の造形層4を一挙に切削除去させている点において、極めて効率的な表面仕上げを可能にすると共に、熱収縮の影響が当初から除去されていることから、前記(1)の構成の場合と同様、平坦な積層端面を形成することが可能となる。
【0028】
図2(a)、(b)、(c)からも明らかなように、前記(2)の基本構成においては、切削除去によって仕上げ加工が行われた積層端面(図2(a)の造形層4のA、B、C、及び図2(c)の造形層4のD、E、F)に対し、上側における光ビーム5の照射を伴った造形層4の積層(図2(a)の造形層4のG、H、Iの積層、及び図2(c)の造形層4のJ、K、Lの積層)が行われても、その間に複数の造形層4(図2(a)の造形層4のD、E、F、及び図2(c)の造形層4のG、H、I)が介在していることから、上側の光ビーム5の照射を伴う造形層4の積層に際し、材料粉末が部分的に再度焼結・再溶着するとしても、既に仕上げが行われている表面である積層端面(図2(a)の造形層4のA、B、Cの積層端面)にまで及ばず、精々その中間に位置している造形層4(図2(a)の造形層4のD、E、Fの、及び図2(c)の造形層4のG、H、I)の未だ切削していない積層端面に及ぶに過ぎないことに帰し、結局、仕上げ表面の影響を受けることはない。
【0029】
しかも、中間に介在している造形層4(図2(a)の造形層4のD、E、F、及び図2(c)の造形層4のG、H、I)によって、更に上側の光ビーム5の照射を伴う造形層4の積層(図2(a)の造形層4のG、H、Iの積層、及び図2(c)の造形層4のJ、K、Lの積層)が行われても、当該上側造形層4の変質・密度変化、熱影響を原因とする収縮・変形による前記傾斜部の形成は、精々中間の造形層4(図2(a)の造形層4のD、E、Fの全て又は一部)において生じているに過ぎない(図2(a)においては、造形D、E、Fが傾斜した積層端面に該当しており、同様に、図2(c)においては、造形層4のG、H、Iが傾斜した積層端面に該当している。)以上、既に仕上げ加工が行われた造形層4の積層端面(図2(a)の造形層4のA、B、Cの積層端面及び図2(c)の造形層4のD、E、Fの積層端面)に傾斜面が生ずることもない。
【0030】
前記(1)及び(2)の基本構成において採用する光ビーム5の典型例は、レーザ光であるが、必ずしもレーザ光に限定される訳ではなく、光の振幅及び周波数の程度において金属粉又は非金属粉を焼結させる程度の照射エネルギーを有する光ビーム5であれば、その種類を問わない。
【0031】
前記(1)の最終的な切削除去、及び前記(2)の切削除去においては、図1(d)に示すように、切削除去を行うエンドミル工具31の径が段差を有しており、先端の太径部分と、内側の細径部分との境界に位置し、当該細径部分に対する直交面が切削除去に関与し、前記細径部分と余剰造形部41との間には隙間が存在した状態にて、前記エンドミル工具31による切削除去を行い得ることを特徴とする実施形態を採用することが可能である。
【0032】
前記実施形態に係るエンドミル工具31の場合には、各造形積層部を、側部からの押圧を伴わずに切削を行うことができる。
【0033】
即ち、例えば図1(c)に示すように、通常のエンドミル工具31の場合のように、側部からの押圧を伴いながら、切削除去が行われるため、積層端部が傾斜している下側の造形層4と、上側の造形層4から垂れ下がった余剰造形部41との境界が曖昧な状態にて残存するような欠点を免れることができる。
【0034】
本発明においては、図1(d)に示すように、切削除去を行うエンドミル工具31の径が段差を有しており、先端の太径部分において、内側の細径部分との境界面が切削除去に関与しており、前記細径部分と余剰造形部41との間には隙間が存在した状態にて、前記エンドミル工具31による切削除去を行うことを特徴とする実施形態を採用することも可能である。
但し、図1(d)に示すエンドミル工具31に代えて、切削除去を行うエンドミル工具31の径が段差を有しており、先端の太径部分と、内側の細径部分との境界に位置し、当該細径部分に対する直交面が切削除去に関与しており、前記細径部分もまた、切削刃を有し、かつ余剰造形部41の切削に関与し得る状態にて、前記エンドミル工具31による切削除去を行い得ることを特徴とする実施形態(図示せず)を採用することも、当然可能である。
【0035】
本発明においては、図3に示すように、先端を半球形状とし、その余の部分を円柱形状とするエンドミル工具31を採用し、当該工具31を円柱状の側部によって上下方向の切削を行うと共に、当該工具31を上下方向に対し傾斜させた状態にて、先端の略半球形状部分による局所的な切削をも行うことを特徴とする実施形態を採用することも可能である。
【0036】
前記実施形態に係るエンドミル工具31の場合には、略半球形状の頂部を押圧することによって、図1(d)の場合のような段差状のエンドミル工具31を使用する場合と同じように、側部からの押圧を伴わずに、単なる上方への移行に基づく切削除去を実現していると共に、図1(c)、(d)に示すように、2個の異なるエンドミル工具31を使用せずに、1個のエンドミル工具31によって、最初の切削除去及び最終的な切削除去を実現し得る点において極めて便利である。
【0037】
図6(a)及び図7(a)は、それぞれ従来の表面仕上げ方法に基づく表面状態の写真及び表面粗さ測定を示す。
【0038】
これに対し、図6(b)、図7(b)は、前記(1)の基本構成に係る方法に基づく表面状態の写真、及び表面粗さ測定の状態を示している。
【0039】
図6、及び図7の対比からも明らかなように、本発明の方法においては、前記傾斜部が残存せずに、極めて平坦な表面加工が実現することが十分判明し得るところである。
【0040】
尚、前記(2)の基本構成による方法の場合にも、前記(1)の場合と同様の作用効果を実現し得ることから、図6(b)、図7(b)のような表面状態及び表面粗さを呈することができる。
【0041】
前記(1)及び(2)の基本構成に基づく作用効果について、余剰造形部41の切削除去に即して説明したが、余剰造形部41のみならず、各層の段差、不完全結合部が出現したとしても、前記熱収縮を原因とする前記傾斜部の形成に対処する基本原理に変わりはない以上、全く同様に、平坦な表面仕上げを行うことができる。
【0042】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例】
【0043】
実施例においては、図8に示すように、1単位の加工機械装置内に、レーザ発振及び照射装置1、造形層4の材料である粉末材供給部21、当該供給部21から提供された前記粉末をレーザ発振照射装置1からのレーザの照射によって積層工程を実現する積層形成部22、当該積層形成部22の積層側端部に対し、エンドミル工具31を駆動し、かつ操作させ得るエンドミル操作部32を備えることによって、順次連続してレーザ光の照射に伴う積層を行いながら、前記(1)、(2)の基本構成に基づく切削除去を実現することを特徴としている。
【0044】
即ち、レーザ発振照射装置1、粉末材供給部21及び当該レーザ発振照射装置1からのレーザ光の照射を伴う造形部41の積層形成部22、更にはその側部におけるエンドミルの駆動及び操作部32を有することによって、前記(1)、(2)の基本構成による表面加工を順次同一の装置内において実現することから、実施例においては、極めて速やかな表面加工を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、光ビームによる積層結合造形による三次元造形製品及び金型を製作する工程の全ての分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】前記(1)の基本構成を示す模式図である。
【図2】前記(2)の基本構成を示す模式図である。
【図3】先端部及び側部の双方による切削を実現しているエンドミル工具を採用した場合の実施形態の状況を示す模式図である。
【図4】従来技術の表面加工方法において、余剰造形部が積層端部に垂れ下がった状況を示す模式図である。
【図5】従来技術の表面加工方法において、一挙に積層端部の表面加工を行った場合、上側における更なる造形層の形成に伴う熱収縮によって、既に表面加工が行われた積層端部が内側に傾斜する傾向があることを示す模式図である。
【図6】積層された端部の表面に対する撮影写真を示しており、(a)は従来技術の表面加工方法に基づく場合を示しており、(b)は、前記(1)の方法の場合を示している。
【図7】表面粗さを示すグラフであって、(a)は従来技術の表面加工方法に基づく場合を示しており、(b)は、前記(1)の方法の場合を示している。
【図8】実施例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザ発振照射装置
21 粉末材供給部
22 積層形成部
31 エンドミル工具
32 エンドミル駆動及び操作部
4 造形層
41 余剰造形部
5 光ビーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉又は非金属粉を各層毎に、光ビームを照射することによって焼結させながら積層し、所定の三次元造形製品を製作する際に、光ビームの照射に伴って、積層端部に突出した状態にて出現する余剰造形部を切削除去する三次元積層造形部品の表面仕上げ方法であって、余剰造形部が突出している単数層又は複数層に対し、回転するエンドミル工具によって当該余剰造形部を切削除去する際、既に表面仕上げが完了している下側の積層端面と同レベルに至るまでの切削除去をせずに、切削除去の対象となる単数層又は複数層の内の最上側層(単数層の場合には、当該層)において、更なる積層及び光ビームの照射を原因とする熱収縮によって、前記最上側層の上側表面が内側に移行しても、当該上側表面の積層端部が既に表面仕上げが完了している下側の積層端面のレベルよりも内側に移行しない程度の突出幅を残存した状態にて切削除去を行った後、前記最上側層の上側表面における熱収縮が終了した後に表面仕上げのための切削除去を行うことに基づく三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項2】
金属粉又は非金属粉を各層毎に、光ビームを照射することによって焼結させながら積層し、所定の三次元造形製品を製作する際に、光ビームの照射に伴って、積層端部に突出した状態にて出現する余剰造形部を切削除去する三次元積層造形部品の表面仕上げ方法であって、突出した状態にある余剰造形部の全ての層を切削除去せずに、余剰造形部が突出している造形層の上側において更なる積層及び光ビームの照射が行われても、当該積層及び照射を原因とする熱収縮が生じないような位置にある下側の積層領域を切削除去の対象とし、かつ既に表面仕上げが行われている更に下側の積層端面と同一レベルによる切削除去を行うことに基づく三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項3】
光ビームがレーザ光であることを特徴とする請求項1、2記載の三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項4】
切削除去を行うエンドミル工具の径が段差を有しており、先端の太径部分と、内側の細径部分との境界に位置し、当該細径部分に対する直交面が切削除去に関与しており、前記細径部分と余剰造形部との間には隙間が存在した状態にて、前記エンドミル工具による切削除去を行い得ることを特徴とする請求項1、2記載の三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項5】
切削除去を行うエンドミル工具の径が段差を有しており、先端の太径部分と、内側の細径部分との境界に位置し、当該細径部分に対する直交面が切削除去に関与しており、前記細径部分もまた、切削刃を有し、かつ余剰造形部の切削に関与し得る状態にて、前記エンドミル工具による切削除去を行い得ることを特徴とする請求項1、2記載の三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項6】
先端を半球形状とし、その余の部分を円柱形状とするエンドミル工具を採用し、当該工具を円柱状の側部によって上下方向の切削を行うと共に、当該工具を上下方向に対し傾斜させた状態にて、先端の略半球形状部分による局所的な切削をも行うことを特徴とする請求項1、2記載の三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。
【請求項7】
1単位の加工機械装置内に、レーザ発振及び照射装置、造形層の材料である粉末材供給部、当該供給部から提供された前記粉末をレーザ発振照射装置からのレーザの照射によって積層工程を実現する積層形成部、当該積層形成部の積層側端部に対し、エンドミル工具を駆動し、かつ操作させ得るエンドミル操作部を備えることによって、順次連続してレーザ光の照射を伴う積層、及び切削除去を実現することを特徴とする請求項1、2記載の三次元積層造形部品の表面仕上げ方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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