説明

上げ下げ窓の落下防止機構

【課題】ワイヤの張力消失に関わらず可動窓の急激落下を阻止できる上げ下げ窓の落下防止機構を得、上げ下げ窓の安全性を向上させる。
【解決手段】縦の窓枠27の溝33に沿って少なくとも一つの可動窓15を上げ下げ自在に備えた上げ下げ窓の落下防止機構100であって、可動窓15の上げ下げ方向に軸線が直交する方向で縦の窓枠27に固設された揺動支持軸と、揺動支持軸に中央部が回動自在に固定され揺動によって上下端部のいずれか一方が可動窓15の上げ下げ移動軌跡上に選択的に突出可能な揺動板と、揺動板の上端部を上げ下げ移動軌跡上に配置するよう揺動板を回転付勢する付勢手段と、上端部に形成され下降する可動窓15が当接することで揺動板を付勢手段に抗して回転させる傾斜面と、下端部に形成され下端部が上げ下げ移動軌跡上に位置するときに可動窓15に係止して可動窓15の下降を阻止する爪とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦の窓枠の溝に沿って少なくとも一つの可動窓を上げ下げ自在に備えた上げ下げ窓の落下防止機構に関し、特に、バランサーの作動不能時に可動窓の落下を阻止する落下防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に開閉操作される可動窓を備えた上げ下げ窓は、窓重量と釣り合う引き上げ力を作用させて、可動窓を任意の位置に静止させたり、可動窓を小さな力で上下させたりする荷重平衡手段(バランサー)を備えるものがある。この種のバランサーとしては、窓枠の上部に取付けた渦巻きバネから繰り出されるワイヤで可動窓を吊持して窓重量と釣り合う平衡力を作用させるようにしたものや、室内側窓と室外側窓とを上部に配設した滑車を介してワイヤで吊持し窓重量をバランスさせたものなどが知られている。
【0003】
ところが、ワイヤにて可動窓を吊持するバランサーでは、何らかの原因でワイヤが切断した場合には可動窓が落下してしまう問題があった。このような不具合を解消したものに、例えば特許文献1に開示される上げ下げ窓がある。この上げ下げ窓は、バランサーを一つの可動窓につき左右二つ設け、左右のバランサーから垂下された一対のワイヤを可動窓に移動可能に設けた連結部材の左右に接続する。通常時は左右のワイヤの張力が平衡状態を保っており、この平衡状態が崩れた時に連結部材が張力の大きいワイヤ側に引っ張られ、縦の窓枠に圧接するように構成し、バランサーの平衡状態が崩れた時に可動窓の急激な落下を防止し、安全性の向上が図られるようになされていた。
【特許文献1】特開2001−207722公報
【特許文献2】特開2002−242527公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した上げ下げ窓は、平衡状態が崩れた時に張力の大きいワイヤ側に連結部材を引っ張り、縦の窓枠に圧接するように構成するため、例えば、経年劣化したワイヤでは一方のワイヤ切断による衝撃で他方のワイヤも切断し、左右のワイヤの張力が同時に消失し、可動窓が急激に落下する虞があった。また、バランサー内の渦巻きバネが破損したり、平衡力を出力する軸部が脱落、或いは折れた場合にも、同様の事態が想定された。さらに、特許文献2に開示される上げ下げ窓の窓吊り係止具においても、ワイヤが可動窓を吊持している状態では、揺動ブレーキ片を付勢手段に抗しながら縦の窓枠から離間する位置に保持し、ワイヤが切断したときには、ワイヤの張力消失で揺動ブレーキ片を付勢手段により突出し、縦の窓枠に接触させることにより可動窓の落下を防止するようなされるが、バランサー内の渦巻きバネ等が破損したときにはワイヤに或る程度の張力が作用するため、揺動ブレーキ片が突出せずに、可動窓が急激に落下する虞があった。このような事情から、上げ下げ窓には可動窓の落下が生じないようにするため、さらなる安全対策の採られることが望ましい。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、ワイヤの張力消失に関わらず可動窓の落下を阻止できる上げ下げ窓の落下防止機構を提供し、もって、手指を挟む危険性を無くして、上げ下げ窓の安全性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の上げ下げ窓の落下防止機構は、縦の窓枠27の溝33に沿って少なくとも一つの可動窓15を上げ下げ自在に備えた上げ下げ窓10の落下防止機構100であって、
前記可動窓15の上げ下げ方向に軸線が直交する方向で前記縦の窓枠27に固設された揺動支持軸45と、
該揺動支持軸45に中央部が回動自在に固定され揺動によって上下端部のいずれか一方が前記可動窓15の上げ下げ移動軌跡29上に選択的に突出可能な揺動板47と、
該揺動板47の上端部を前記上げ下げ移動軌跡29上に配置するよう該揺動板47を回転付勢する付勢手段49と、
前記上端部に形成され下降する前記可動窓15が当接することで前記揺動板47を前記付勢手段49に抗して回転させる傾斜面47cと、
前記下端部に形成され該下端部が前記上げ下げ移動軌跡29上に位置するときに前記可動窓15に係止して該可動窓15の下降を阻止する爪47bと、
を具備したことを特徴とする。
【0007】
この上げ下げ窓の落下防止機構では、通常状態における可動窓15の閉鎖操作時、傾斜面47cに可動窓15が接触して、下端部が一旦、上げ下げ移動軌跡29上に配置されるが、可動窓15が傾斜面47cを通過した直後には、付勢手段49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる位置へ退避され、爪47bに係止することなく可動窓15が閉鎖される。一方、荷重平衡手段のワイヤ切断等により可動窓15が急激に落下すると、可動窓15が傾斜面47cに衝接することで、下端部が上げ下げ移動軌跡29上に配置され、付勢手段49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる前に、可動窓15が下端部に到達して爪47bに係止する。
【0008】
請求項2記載の上げ下げ窓の落下防止機構は、前記爪47Abが、前記上げ下げ方向の上方向に突出形成され、
前記可動窓15には該爪47Abを前記上げ下げ方向の下方向から挿入する係止部41Aaが設けられたことを特徴とする。
【0009】
この上げ下げ窓の落下防止機構では、上げ下げ移動軌跡29上に配置された下端部に可動窓15が到達した際、爪47Abが下方向から可動窓15の係止部41Aaに進入し、下端部の上げ下げ移動軌跡29から外れる方向への揺動が規制される。
【0010】
請求項3記載の上げ下げ窓の落下防止機構は、複数の前記揺動支持軸45が、前記縦の窓枠27に、前記可動窓15の上げ下げ方向に沿って離間して固設され、
それぞれの該揺動支持軸45に、前記傾斜面47c及び前記爪47bを備えた前記揺動板47と、前記付勢手段49とが設けられたことを特徴とする。
【0011】
この上げ下げ窓の落下防止機構では、落下方向の上部位置に設けた揺動板47で可動窓15の落下が阻止できなかったときであっても、それより下方に配置された次の揺動板47によって可動窓15の係止が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1記載の上げ下げ窓の落下防止機構によれば、縦の窓枠に固設された揺動支持軸と、この揺動支持軸に回動自在に固定された揺動板と、揺動板の上端部を上げ下げ移動軌跡上に配置するよう付勢する付勢手段と、揺動板の上端部に形成された傾斜面と、揺動板の下端部に形成され可動窓に係止して可動窓の下降を阻止する爪とを備えたので、通常状態における可動窓の閉鎖操作では、傾斜面に可動窓が接触して、下端部が一旦、上げ下げ移動軌跡上に配置されるが、可動窓が傾斜面を通過した直後には、付勢手段によって下端部が上げ下げ移動軌跡から外れる位置へ退避され、爪に係止することなく可動窓が閉鎖されることとなる。一方、荷重平衡手段のワイヤ切断等により可動窓が急激に落下すると、可動窓が傾斜面に衝接することで、下端部が上げ下げ移動軌跡上に配置され、付勢手段によって下端部が上げ下げ移動軌跡から外れる前に、可動窓が下端部に到達して爪に係止する。すなわち、可動窓と下の窓枠との間に所定の間隙が形成された状態で、可動窓の落下が阻止される。この結果、ワイヤの張力消失に関わらず可動窓の急激落下を防止でき、手指を挟む危険性を無くして、上げ下げ窓の安全性を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の上げ下げ窓の落下防止機構によれば、爪を上げ下げ方向の上方向に突出形成し、この爪が下方向から挿入される係止部を可動窓に設けたので、上げ下げ移動軌跡上に配置された下端部に可動窓が到達した際、爪が下方向から可動窓の係止部に進入し、下端部の上げ下げ移動軌跡から外れる方向への揺動が規制される。これにより、可動窓が爪に係止状態で保持され、可動窓落下阻止時において爪を外れ難くして、可動窓の落下をより確実に防止できる。
【0014】
請求項3記載の上げ下げ窓の落下防止機構によれば、複数の揺動支持軸を縦の窓枠に上げ下げ方向に離間配置し、それぞれの揺動支持軸に揺動板と、付勢手段とを設けたので、落下方向の上部位置に設けた揺動板で落下が阻止できなかった可動窓を、それより下方の揺動板によって係止することができ、可動窓の落下をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る上げ下げ窓の落下防止機構の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る落下防止機構を備えた上げ下げ窓の室内側から見た正面図である。
上げ下げ窓10は、四角枠状に構成された窓枠11の内部に、外窓13と、内窓15とを設け、少なくとも一方の内窓15が可動窓となって縦の窓枠27,27の溝33に沿って昇降自在とされる。内窓15は室内側下方に、外窓13は室外側上方にそれぞれ配置されて閉鎖状態となる。
【0016】
上部横の窓枠17の左右両端には荷重平衡手段である渦巻きバネ式等のバランサー装置19,19が配設され、バランサー装置19,19は繰り出された吊りワイヤ23,23が内窓15の縦框25,25のプーリー21,21に張架された後、内窓15に固定されている。
【0017】
図示は省略するが、渦巻きバネ式バランサー装置19は、内設された渦巻きバネにより内窓15の重量と平衡を保ち、内窓15を小さな力で開閉できるようにするとともに、任意の高さ位置に停止可能と開放位置で保持する。すなわち、内窓15の閉止時には下降方向への閉止操作力が必要となる。なお、図中、31は内窓15の下框、37は下の窓枠、39は内窓15に嵌められたガラスを表す。
【0018】
図2は図1の一部分を切り欠いた要部拡大図である。
内窓15と縦の窓枠27とには落下防止機構100が設けられる。落下防止機構100は、本実施の形態において左右の窓枠27,27のそれぞれに配設されるが、いずれか一方の縦の窓枠27のみに設けられるものであってもよい。また、後述するように、一つの窓枠27に、上下方向に離間して多段状に複数が配設されてもよい。落下防止機構100は、揺動支持軸45と、略S字形状の揺動板47とを主要な構成部材として有している。
【0019】
縦の窓枠27,27にはベース板43が固定され、ベース板43は揺動支持軸45を突設している。揺動支持軸45は、内窓15の上げ下げ方向(図2の上下方向)に軸線が直交する方向(図2の紙面垂直方向)でベース板43を介して縦の窓枠27,27に固設される。揺動板47は、揺動支持軸45に中央部が回動自在に固定され、揺動によって上下端部のいずれか一方が内窓15の上げ下げ移動軌跡29上に選択的に突出可能となる。
【0020】
内窓15の下框31の端部にはL字形状の当接部材41が固設され、当接部材41は下框31(又は縦框25)の端部から突出している。当接部材41の取り付け位置は、下框31に限らず、縦框25の上下中間位置であってもよい。また、当接部材41は、内窓15に対し、後付けされる部材であってもよい。
【0021】
本実施の形態で上げ下げ移動軌跡29とは、内窓15の下框31に固設された当接部材41の最外部による軌跡29を言う。また、上げ下げ移動軌跡上とは、図2に示すように、揺動板47の上端部に設けられた摺接部47aが上げ下げ移動軌跡29(図中の垂直線)を越えて、内窓15側に配置された状態を言う。
【0022】
なお、当接部材41は、下框31自体、或いは縦框25自体に形成されるものであってもよい。その場合、当接部材41の当接先端41aが揺動板47の下端部に到達する前に、揺動板47の摺接部47aが再び移動軌跡29を越えて内窓15側に配置されるための凹部などが、下框31自体、或いは縦框25自体に必要となる。
【0023】
揺動支持軸45には付勢手段である捻じりコイルバネ49が外挿され、捻じりコイルバネ49は一端がベース板43に係着し、他端が揺動板47に係着することで、揺動板47を図2の反時計回りに付勢している。すなわち、捻じりコイルバネ49は、揺動板47の上端部を、上げ下げ移動軌跡29上に配置するよう揺動板47を回転付勢している。
【0024】
揺動板47の上端部には傾斜面47cが形成され、傾斜面47cは下降する内窓15の当接先端41aが当接することで、揺動板47を捻じりコイルバネ49の付勢力に抗して図2の時計回りに回転させる。本実施の形態では、傾斜面47cの下端が、摺接部47aとなってく字状に突出する。
【0025】
揺動板47の下端部には爪47bが形成され、爪47bは下端部が上げ下げ移動軌跡29上に位置するときに内窓15に係止して、内窓15の下降を阻止する。本実施の形態において、爪47bは、下端部が上げ下げ移動軌跡29上に位置するとき、係止面が水平配置される。この他、爪47bは、後述するように、先端が上方向へ突出するものであってもよい。
【0026】
次に、上記の上げ下げ窓の落下防止機構100の作用を説明する。
図3は通常下降時における傾斜面摺接時の要部拡大図、図4は通常下降時における傾斜面通過直後の要部拡大図、図5は通常下降時における爪位置通過時の要部拡大図、図6は通常下降時における爪位置通過後の要部拡大図である。
落下防止機構100は、内窓15が閉鎖された状態で、揺動板47の摺接部47aが上げ下げ移動軌跡29上に突出している(図6の状態参照)。閉鎖状態から内窓15が開放方向へ上げられると、当接部材41の上端に摺接部47aが当たり、揺動板47が図2の時計回りに回転し、当接部材41が上方へ通過することとなる。
【0027】
上昇されて開かれた内窓15は、ワイヤ23を介してバランサー装置19によって吊られることで、自重が平衡され、下降することなく所望の高さで静止する。開放状態の内窓15を閉めるには、内窓15の下框31或いは把手(図示せず)など掴み持つなどし下側へ押し下げる。これにより、内窓15は閉動されることとなる。つまり、静止している内窓15を、下げる方向に力を加える。
すると、上げ下げ移動軌跡29上に突出した揺動板47の傾斜面47cに、当接部材41の当接先端41aが当たり、揺動板47を図3の時計回り(矢印a回り)に回転させる。
【0028】
揺動板47は、捻じりコイルバネ49に付勢されることで、下降する内窓15の当接部材41に摺接部47aを摺接する。この状態で、揺動板47の爪47bは、上げ下げ移動軌跡29上に突出されている。
【0029】
図4に示すように、当接部材41が摺接部47aを通過すると、揺動板47は捻じりコイルバネ49の付勢力によって再び反時計回り(矢印b回り)に回転し、摺接部47aを上げ下げ移動軌跡29上に配置するとともに、下端部の爪47bを上げ下げ移動軌跡29上から退避させる。これにより、図5に示すように、当接部材41は爪47bと干渉することなく、揺動板47を通過し、図6に示すように、下框31が下の窓枠37に達して閉鎖となる。
【0030】
図7は落下時における傾斜面摺接時の要部拡大図、図8は落下時における爪係止状態の要部拡大図、図9は変形例に係る爪及び係止部の拡大図である。
一方、ワイヤ23の切断等により内窓15が急激に落下すると、図7に示すように、当接部材41が摺接部47aに衝接し、揺動板47が勢いよく時計回り(矢印aa方向)に回転する。自由落下する内窓15は、捻じりコイルバネ49の付勢力によって爪47bが上げ下げ移動軌跡29上から退避する前に、図8に示すように、爪47bに到達し、当接先端41aが爪47bに引っ掛かり停止する。つまり、落下が阻止されることとなる。爪47bに保持されて落下が阻止された内窓15は、下框31と下の窓枠37との間に間隙Dが形成される。これにより、手指などの挟まれることが回避される。
【0031】
なお、爪47bによる係止をより確実にするため、図9に示すように、揺動板47Aの爪47Abを、上げ下げ方向の上方向に突出形成し、当接部材41Aには爪47Abを下方向から挿入する係止部41Aaを設ける構成としてもよい。このような変形例によれば、上げ下げ移動軌跡29上に配置された下端部に内窓15が到達した際、爪47Abが下方向から当接部材41Aの係止部41Aaに進入し、爪47Abの上げ下げ移動軌跡29から外れる方向への揺動が規制される。これにより、内窓15の衝突による爪47Abの外れを阻止し、内窓15の落下をより確実に防止することができる。
【0032】
このように、落下防止機構100は、通常状態における内窓15の閉鎖操作時、傾斜面47cに内窓15が接触して、下端部が一旦、上げ下げ移動軌跡29上に配置されるが、内窓15が傾斜面47cを通過した直後には、捻じりコイルバネ49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる位置へ退避され、爪47bに係止することなく内窓15が閉鎖される。一方、バランサー装置19のワイヤ切断等により内窓15が急激に落下すると、内窓15が傾斜面47cに衝接することで、下端部が上げ下げ移動軌跡29上に配置され、捻じりコイルバネ49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる前に、内窓15が下端部に到達して爪47bに係止することとなる。
【0033】
したがって、本実施の形態による上げ下げ窓の落下防止機構100によれば、縦の窓枠27,27に固設された揺動支持軸45と、この揺動支持軸45に回動自在に固定された揺動板47と、揺動板47の上端部を上げ下げ移動軌跡29上に配置するよう付勢する捻じりコイルバネ49と、揺動板47の上端部に形成された傾斜面47cと、揺動板47の下端部に形成され内窓15に係止して内窓15の下降を阻止する爪47bとを備えたので、通常状態における内窓15の閉鎖操作では、内窓15が閉鎖方向に急激に移動することはなく、バランサー装置19などの自重平衡によって緩やかに閉鎖移動となり、傾斜面47cに内窓15が接触して、下端部が一旦、上げ下げ移動軌跡29上に配置されるが、内窓15が傾斜面47cを通過した直後には、捻じりコイルバネ49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる位置へ退避され、爪47bに係止することなく内窓15が閉鎖される。
【0034】
一方、バランサー装置19のワイヤ切断等により内窓15の支えが無くなると、内窓15は自重によって急激に落下することとなり、内窓15が傾斜面47cに衝接することで、下端部が上げ下げ移動軌跡29上に配置され、捻じりコイルバネ49によって下端部が上げ下げ移動軌跡29から外れる前に、内窓15が下端部に到達して爪47bに係止する。すなわち、内窓15と下の窓枠37との間に所定の間隙Dが形成された状態で、内窓15の落下が阻止される。この結果、ワイヤ23の張力消失に関わらず内窓15の急激落下を防止でき、手指を挟む危険性を無くして、上げ下げ窓10の安全性を向上させることができる。
【0035】
なお、上記の実施の形態では、一つの窓枠27に左右一組の落下防止機構100が設けられる構成を説明したが、本発明に係る落下防止機構は、一つの窓枠27に、上下方向に離間して多段状に複数の落下防止機構100が配設されてもよい。すなわち、複数の揺動支持軸45が、縦の窓枠27,27に、内窓15の上げ下げ方向に沿って離間して固設され、それぞれの揺動支持軸45に、傾斜面47c及び爪47bを備えた揺動板47と、捻じりコイルバネ49とが設けられる。
【0036】
この変形例によれば、落下方向の上部位置に設けた揺動板47で内窓15の落下が阻止できなかったときであっても、それより下方に配置された次の揺動板47によって内窓15の係止が可能となり、内窓15の落下をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る落下防止機構を備えた上げ下げ窓の室内側から見た正面図である。
【図2】図1の一部分を切り欠いた要部拡大図である。
【図3】通常下降時における傾斜面摺接時の要部拡大図である。
【図4】通常下降時における傾斜面通過直後の要部拡大図である。
【図5】通常下降時における爪位置通過時の要部拡大図である。
【図6】通常下降時における爪位置通過後の要部拡大図である。
【図7】落下時における傾斜面摺接時の要部拡大図である。
【図8】落下時における爪係止状態の要部拡大図である。
【図9】変形例に係る爪及び係止部の拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
10…上げ下げ窓
15…可動窓(内窓)
27…縦の窓枠
29…上げ下げ移動軌跡
33…溝
41Aa…係止部
45…揺動支持軸
47…揺動板
47b…爪
47c…傾斜面
49…付勢手段(捻じりコイルバネ)
100…上げ下げ窓の落下防止機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦の窓枠の溝に沿って少なくとも一つの可動窓を上げ下げ自在に備えた上げ下げ窓の落下防止機構であって、
前記可動窓の上げ下げ方向に軸線が直交する方向で前記縦の窓枠に固設された揺動支持軸と、
該揺動支持軸に中央部が回動自在に固定され揺動によって上下端部のいずれか一方が前記可動窓の上げ下げ移動軌跡上に選択的に突出可能な揺動板と、
該揺動板の上端部を前記上げ下げ移動軌跡上に配置するよう該揺動板を回転付勢する付勢手段と、
前記上端部に形成され下降する前記可動窓が当接することで前記揺動板を前記付勢手段に抗して回転させる傾斜面と、
前記下端部に形成され該下端部が前記上げ下げ移動軌跡上に位置するときに前記可動窓に係止して該可動窓の下降を阻止する爪と、
を具備したことを特徴とする上げ下げ窓の落下防止機構。
【請求項2】
前記爪が、前記上げ下げ方向の上方向に突出形成され、
前記可動窓には該爪を前記上げ下げ方向の下方向から挿入する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の上げ下げ窓の落下防止機構。
【請求項3】
複数の前記揺動支持軸が、前記縦の窓枠に、前記可動窓の上げ下げ方向に沿って離間して固設され、
それぞれの該揺動支持軸に、前記傾斜面及び前記爪を備えた前記揺動板と、前記付勢手段とが設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の上げ下げ窓の落下防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223413(P2008−223413A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66816(P2007−66816)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】