説明

上げ下げ窓

【課題】簡易な構造であって、開閉が容易である上げ下げ窓を提供する。
【解決手段】上横枠11と下横枠12と左右の縦枠13、14とを有する枠体10、上障子20、及び、上下に移動自在の可動障子30、を備える上げ下げ窓100であって、可動障子の閉鎖の姿勢ではラッチ部材が、縦枠のラッチ部材が係合可能である部位に係合し、支持部材はガイド溝の傾斜部に配置されることにより、可動障子と上障子とが同一面内に並べられて配置され、可動障子の開放の姿勢では、ラッチ部材及び支持部材のいずれもがガイド溝内に配置され、該ガイド溝にガイドされることが可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や公共施設等の建物開口部に備えられる上げ下げ窓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における建築物の多様化により、ここに用いられる窓、扉等の開口部装置も多種多様なものが提案されている。このような開口部装置の中には、障子を上げ下げして移動することにより、開口部の開放及び閉鎖を可能とするものがある。
【0003】
従来、このような障子を有する開口部装置では、見込み方向の位置をずらして設けられた内障子と外障子とを備えており、これら内障子と外障子とは常に見込み方向にずれた状態であった。
【0004】
ところが、このような開口部装置では、開口部装置全体の見込方向が大きくなる傾向にあった。そして外観上の観点からも凹凸が大きくなる傾向にあった。そのため、例えば特許文献1には、閉鎖の姿勢で同一面内に並べて配置される2枚の障子を備えた上げ下げ窓が開示されている。特許文献1に記載の上げ下げ窓は、枠体内側の下部に設けられる固定障子(嵌め殺し部)と、閉鎖の姿勢で枠体の枠内の上部に設けられる可動障子(上げ下げ障子)とを備えている。そして、閉鎖の姿勢で固定障子と可動障子とが同一面内に並べられて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−296362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の上げ下げ窓では、可動障子のためのガイド溝を上端側及び下端側のそれぞれに設ける必要があり、その構造が複雑となっていた。
【0007】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、簡易な構造であって、開閉が容易である上げ下げ窓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1に記載の発明は、上横枠(11)と下横枠(12)と左右の縦枠(13、14)とを有する枠体(10)、閉鎖の姿勢で枠体内側の上部に備えられる上障子(20)、及び、閉鎖の姿勢で枠体内側の下部に配置され、枠体内側を上下に移動自在に設けられる可動障子(30)、を備える上げ下げ窓(100)であって、可動障子は、その上端側には、縦枠に向けて付勢され、その突出量を変化させることが可能とされたラッチ部材(72)を有し、可動障子の下端側には、縦枠に向けて突出した支持部材(38)を備え、縦枠は、上障子の閉鎖の姿勢で該上障子が配置された位置の下方にラッチ部材が係合可能である部位を有するとともに、直線部(41)と傾斜部(42)とを有するガイド溝(40)を具備し、直線部は縦枠の長手方向に沿って設けられ、傾斜部は直線部の下端に連通するとともに上障子が備えられる側に傾斜して延在し、可動障子の閉鎖の姿勢ではラッチ部材が縦枠のラッチ部材が係合可能である部位に係合し、支持部材はガイド溝の傾斜部に配置されることにより、可動障子と上障子とが同一面内に並べられて配置され、可動障子の開放の姿勢では、ラッチ部材及び支持部材のいずれもがガイド溝内に配置され、該ガイド溝にガイドされることが可能とされていることを特徴とする、上げ下げ窓である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の上げ下げ窓において、ラッチ部材(72)は、縦枠(13、14)のいずれの部位にも接触しない突出量で、その突出量を変化させることを禁止する係合部材(373)が備えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、閉鎖時に複数の障子が面一となる上げ下げ窓において、簡易な構造で開閉が容易であるものとすることができる。特に、ラッチ部材を適用し、可動障子の閉鎖の姿勢では、該可動障子の上端を固定障子の下方に配置し、可動障子の開放の姿勢ではこのラッチ部材が可動障子のガイド溝に移動してガイドされる構成とすることにより、簡易な構成、及び開閉の容易を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1つの実施形態に係る上げ下げ窓を、室内側から正面視したときの概略図である。
【図2】図1(b)に示した上げ下げ窓の枠体を分解して概略的に示した図である。
【図3】図1のIII−III断面を概略的に示した図である。
【図4】図1のIV−IV断面を概略的に示した図である。
【図5】図1のV−V断面を概略的に示した図である。
【図6】図1のVI−VI矢視断面図のうち一部を拡大した図である。
【図7】ラッチ・錠装置の斜視図である。
【図8】ラッチ・錠装置の平面図、及び側面図である。
【図9】図3と同じ視点で可動障子を室内側に倒した姿勢を概略的に示す図である。
【図10】図9の姿勢おける可動障子の上面及びその配置を概略的に示す図である。
【図11】他の実施形態に係る上げ下げ窓のうち、図6と同じ視点で表した図である。
【図12】さらなる他の実施形態に係る上げ下げ窓のうち、図6と同じ視点で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、建物の開口部に取り付けられている1つの実施形態にかかる上げ下げ窓100を、室内側から正面視したときの概略図である。図1(a)は閉鎖の姿勢にある上げ下げ窓100を示しており、図1(b)は下障子30を少し開放した姿勢としたときの上げ下げ窓100を示している。
図2は、図1(b)に示した上げ下げ窓100の枠体10を分解して概略的に示した正面図である。
図3は、図1(a)に示したIII−III断面を概略的に示した図である。
図4は、図1(b)に示したIV−IV断面を概略的に示した図である。
図5は、図1(b)に示したV−V断面を概略的に示した図です。
ここで図3、図4では、紙面左が室外側、紙面右が室内側である。また、図5では紙面上が室外側、紙面下が室内側である。以下図1〜図5及び適宜示す図を参照しつつ開口部装置100について説明する。
【0015】
以下において、「見付方向」とは全体として平板状である上げ下げ窓の該平板状の平面に沿った方向を意味し、上げ下げ窓が建物に取り付けられた姿勢では、建物開口部の開口面に沿った方向を意味する。また、「見付方向内側」とは、見付方向のうち、上げ下げ窓の中央方向を意味する。従って「見付方向外側」とは見付方向のうち、開口部から離れる方向を意味する。さらに、「見込み方向」とは全体として平板状である上げ下げ窓の該平板状の厚さ方向を意味し、上げ下げ窓が建物に取り付けられた姿勢では、建物の室内外方向を示す。また障子を説明する時には、障子について同様の趣旨で「見付方向」及び「見込み方向」の用語を用いる。
【0016】
図1に示すように、上げ下げ窓100は、枠体10、上障子としての固定障子20、可動障子30、バランサー60、60(図2参照)、及びラッチ・錠装置70、70とを備えている。
【0017】
枠体10は、上横枠11、下横枠12、及び左右の縦枠13、14を備えており、これらが枠状に組み合わされて形成されている。
上横枠11は、図3、図4に表れる断面を有して延在する上部に水平に配置される長尺の部材である。上横枠11は、その断面において、後述するように上障子20の上框を固定するための片で3方を囲まれる凹状部11aを具備している。
下横枠12は、図3、図4に表れる断面を有して延在する下部に水平に配置される長尺の部材である。下横枠12は、その断面において、後述するように下障子30の下框を受け入れるための片で3方を囲まれる凹状部12aを具備している。
【0018】
縦枠13、14は、図5に表れる断面を有して延在する垂直に配置される長尺の部材である。縦枠13、14は、図5に表れる断面において見込み方向に延在する片13a、14aを具備し、その見込み方向両端からは見付方向に片13b、13c、片14b、14cを備えている。また、片13bと片13cとの間、片14bと片14cとの間には、見込み方向室外側から順に、アングル部材13d、14d、内倒し部材用レール溝90、90、及びガイド溝40、40が配置されている。
【0019】
アングル部材13d、14dは、図5からわかるように、断面略L字状の部材であり、その一方の片が片13a、14aに沿うように他の部材を介して該片13a、14aに固定される。他方の片は、当該一方の片の見込み方向室内側の端部から見付方向内側に延在している。
内倒し部材用レール溝90、90は、不図示の内倒し部材が摺動するレール溝で、断面略コ字状を有して上下に延びている。
【0020】
ガイド溝40、40は後述するように、可動障子30をガイドする溝であり、可動障子30に具備される支持部材38、38がその内側を摺動するように形成されている。従ってその断面はコ字状に形成されている。ここで、当該コ字状のうちの開口部分には当該開口部を狭めるように対向する片40a、40a、…及び、見付方向にさらに延びるように設けられる片40b、40b、…が備えられている。
【0021】
一方、ガイド溝40、40に長手方向の態様を図3及び図4に表した。図3、図4では、縦枠14に設けられたガイド溝40について示しており、これに基づいて説明する。縦枠13に設けられたガイド溝40についても同様である。ガイド溝40は、図3、図4に破線で示すように、直線部41及び傾斜部42を備えている。直線部41は、固定障子20より見込み方向内側に配置され、縦枠14の長手方向に延在している。傾斜部42は、直線部41の下横枠12側の端部に連通するとともに、固定障子20が備えられる側(見込み方向室外側)で下枠12側に向かって傾斜するように延在している。
【0022】
傾斜部42の垂直面に対する傾斜角θ(図3参照)は特に限定されるものではないが、45度以上65度以下の範囲であることが好ましい。傾斜角θが大き過ぎる場合は、可動障子30を開ける際に要する力が大きくなる。
【0023】
固定障子20は、上障子として機能し、上框21、下框22、縦框23、24を方形に組み、その区画内にパネル(例えば、ガラスパネル)25を装着して構成されている。本実施形態例では、パネル25として、図3等に示すように、2枚の板ガラスの間にスペーサーを挟持した複層ガラスパネルを例示している。ただし、これに限定されるものではなく、単板ガラスでもよい。本実施形態では、断熱性を向上させるという観点からは、複層ガラスパネルの方が好ましい。
【0024】
パネル25は、その四方端部がグレージングチャンネルを介して上框21、下框22、縦框23、24に差し込まれるようにして固定される。そして、固定障子は20は、縦框23、24が固定部材26、26により縦枠13、14のアングル部材13d、14dに固定される。これにより、固定障子20は、枠体10内側の上部に位置が固定されて取り付けられる。
【0025】
可動障子30は、上框31、下框32、縦框33、34を方形に組み、その区画内にパネル(例えば、ガラスパネル)35を装着して構成されている。本実施形態例では、パネル35として、図3等に示すように、2枚の板ガラスの間にスペーサーを挟持した複層ガラスパネルを例示している。ただし、これに限定されるものではなく、単板ガラスでもよい。本実施形態では、断熱性を向上させるという観点からは、複層ガラスパネルの方が好ましい。
【0026】
パネル35は、その四方端部がグレージングチャンネルを介して上框31、下框32、縦框33、34に差し込まれるようにして固定される。ここで、上框31には、図3等からわかるように、その室内側には引手部36が備えられている。これにより、後述するように引手部36に手を掛けて操作することで、可動障子30の開閉を容易に行うことができる。また、図3によく表れているように、上框31(引手部36)は、閉鎖姿勢で室内側から見て固定障子20の下框22を覆う形態になっている。かかる形態とすることによって、外観をよくするとともに、水密性、断熱性、及び防犯性に優れた構造となる。すなわち、閉鎖姿勢で固定障子20と可動障子30との間を上框31(引手部36)によって覆うことで、水や熱の出入りを防いで水密性及び断熱性を向上させる。また、バールなどを差し込み難くすることができるので防犯性を高めることも可能である。
また、上框31の上面には、図3からわかるように、その長手方向に延在し、断面略L字状の錠部材ガイド31aが設けられている。錠部材ガイド31aは後述するラッチ・錠部材70、70のうち摺動棒76(図6〜図8参照)に係合し、これをガイドする片である。錠部材ガイド31aの断面L字状の一片が框31の上面から見付方向に立設し、その先端から他方の片が見込み方向室内側に延在する。
【0027】
さらに、可動障子30の下框32の左右両端部には、図2〜図5からわかるように、見付方向外側に突出するように支持部材38、38が取り付けられている。支持部材38、38は、ガイド溝40、40内に挿入され溝内を移動する支持部38a、38aを有する。また、支持部38aには、環状溝38b、38bが設けられており、環状溝38b、38bには、縦枠13、14の上部それぞれに内設されたバランサー60、60から引き出されたワイヤー61、61の一端が係止されている(図2参照)。
従って、可動障子30はバランサー60、60によって吊られた状態にある。バランサー60は、通常の上げ下げ窓に用いられるバランサーでよく、例えば渦巻きバネが内設されており、可動障子30の質量と平衡を保ち、可動障子30を小さな力で上下移動させることを可能にするとともに、任意の高さで停止させることができるように構成されている。本実施形態では縦枠13、14にバランサー60、60を設けた例を示したが、これに限定されることはなく、上枠11に配置されてもよい。
【0028】
次にラッチ・錠装置70、70について説明する。図6〜図8に説明するための図を示した。図6は、図1にVI−VIで示した矢視断面図のうち、上框31の上面で縦枠13側に配置されたラッチ・錠装置70を示した図である。図6では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を表している。図7は、ラッチ・錠装置70の斜視図である。図8は、ラッチ・錠装置70の平面図(図8(a))、及び図8(a)に矢印VIIIの方向から見た図(左側面図、図8(b))である。
【0029】
ラッチ・錠装置70は、基体71、ラッチ部材72、錠装置75、を備えている。
基体71は、当該ラッチ・錠装置70の基礎となる部材である。すなわち、基体71にラッチ部材72及び錠装置75が配置されることによりラッチ・錠装置70が形成される。ここで基体71は、略板状である板状部71a及び後述する錠操作部材77が摺動可能に取り付けられる操作部材取り付け部71bを有している。
【0030】
ラッチ部材72は、一方向を長手方向とする板状の部材であり、その長手方向一端側が他に比べて大きく形成され、その先端の端面は多面に形成されている。具体的には、長手方向に直交する面72a、該面72aの両端に配置され、長手方向他端側に傾斜する面72b、72c、該面72b、72cのそれぞれの端部から、さらに長手方向に直交する方向に延在する面72d、72e、及び面72d、72eの端部から略直交するように長手方向に延在する面72f、72gである。このような構成により、いわゆる両方向ラッチを形成することができ、後述するように障子が面一の姿勢で閉鎖する上げ下げ窓において適切に可動障子の移動をさせることが可能となる。
さらにラッチ部材72には、該ラッチ部材72を面72cに直交する方向(長手方向)に付勢する弾性部材73を備えている。
【0031】
錠装置75は、摺動棒76、錠操作部材77、及び連結部材78を備えている。摺動棒76は、棒状の部材であり、図8(b)からわかるように断面が略コ字状に形成されている。錠操作部材77は操作者の操作に供される部材で、棒状の連結部材78を介して摺動棒76に連結している。
【0032】
以上のような各部材は次のように組み合わせられてラッチ・錠装置70が構成される。すなわち、基体71の板状部71aの一方の面側にラッチ部材72が配置される。その際には、図6〜図8に表れているように、面72a〜面72gが配置された端部が基体71から突出して配設される。また、弾性部材73の一端が基体71に他端がラッチ部材72に固定され、ラッチ部材の面72a〜面72gが基体71に対してその突出量を変えることができるように付勢される。
【0033】
一方、錠装置75については、その摺動棒76が基体71の板状部71aの他方の面側に配置される。その際には摺動棒76の長手方向は上記したラッチ部材72の突出方向と同じとし、ラッチ部材72の長手方向軸線と摺動棒76の軸線とは平面視(図8(a)の視点)で一致することが好ましい。また、図8(b)からわかるように、摺動棒76の断面コ字状である片の一つの片が板状部71aに係合しつつ摺動可能とされている。
錠操作部材77は、操作部材取り付け部71bに摺動可能に取り付けられる。錠操作部材77の摺動方向は、摺動棒76の長手方向と同じ方向である。そして連結部材78は、摺動棒76と錠操作部材77とを連結する。
【0034】
これによりラッチ部材72は、所定の力を受けて、これに応じて該ラッチ部材の面72a〜面72gが基体71に対してその突出量を変えるように移動することができる。一方、錠装置75では、錠操作部材77を摺動させることにより摺動棒をその長手方向に移動させることが可能となる。
【0035】
以上のように構成されたラッチ・錠装置70は、可動障子30の上框31の上面のうち、その両端のそれぞれに配置される。このとき、図6からわかるように、ラッチ・錠装置70のラッチ部材72の面72a〜面72gが縦枠13、14に面するように取り付けられる。また、図3からわかるように、摺動棒76の断面コ字状のうちの1つの片が、上框31の錠部材ガイド31aに係合するように配置される。これにより錠としての強度を向上させることができ、その信頼性も向上させることが可能となる。これにより例えば基体71を樹脂材料により形成しても錠装置として十分な強度を有するものとなる。
【0036】
また、本実施形態によればラッチと錠装置とを1つの部材で形成することができる。従って、いわゆるクレセント錠とラッチとを別に設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。また、外観にも優れたものとなる。
【0037】
次に以上で説明した上げ下げ窓100の動作について説明する。ここでは、上げ下げ窓100が閉鎖され、施錠された姿勢から、解錠及び可動障子30の開放がされる場面を例に説明する。図9、図10には当該場面と途中の姿勢を示す図で、図9は図3と同じ視点、図10は図6と同じ視点による図である。
【0038】
可動障子30は、閉鎖姿勢では、図3に示すように、枠体10内側の固定障子20の下方において固定障子20と同一面内に上下に並べられて配置されている。このときには、ラッチ・錠装置70、70では、図6に示したように、ラッチ部材72の面72eが内倒し部材用レール溝90の片に接するように配置される。このときラッチ部材72はここに備えられる弾性部材73(図8参照)により内倒し部材用レール溝90の片を押圧している。一方、錠装置75は、錠操作部材77に摺動棒76が縦枠13、14に向けて大きく突出され、その先端がアングル部材13dに係合している。これにより可動障子30は移動させることができず、閉鎖及び施錠状態とされている。
【0039】
このような姿勢から操作者は初めに、錠操作部材77を図6の紙面右に移動させる。これにより摺動棒76がアングル部材13dから離脱し、解錠される。そして操作者は可動障子30の上框31に設けられた引手部36を室内側に引き倒し、図9、図10に示した姿勢とする。これにより可動装置30の上端部がガイド溝40側に配置される。かかる引き倒しでは、ラッチ・錠装置70では、ラッチ部材72は、上記した位置から、弾性部材73によるラッチとしての作用により、内倒し部材用レール溝90や片40bを越えて図10に示した姿勢となる。すなわち、ラッチ部材72の先端がガイド溝40内に配置される。ここで、ガイド溝40には、片40a、40a、40b、40bが設けられており、ラッチ部材72の面72d〜72gが当該片に接触し、これを押圧する。そしてガイド溝40の片40bがラッチ部材72の片72gに接触することにより、可動障子30がこれ以上室内側に倒れ難いようにストッパーとして作用する。
【0040】
あとは引手部36に手を掛けて可動障子30を引き上げることで、支持部38やラッチ部材72がガイド溝40内を移動し、可動障子30を図4、図5に示した姿勢に開放させることができる。
【0041】
可動障子30を閉める際には、上記手順を遡るように操作すればよい。
【0042】
図11には、他の実施形態にかかる上げ下げ窓200のうち、図10に相当する図を示した。上げ下げ下げ窓200では、可動障子30を室内側に傾けた姿勢としたときに(図9参照)おけるラッチ・錠装置70の位置に対応する位置のガイド溝40内に、錠受け270が具備される。他の部位については上記した上げ下げ窓100と共通であるから同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
【0043】
錠受け270は、図11からわかるように、ガイド溝40内に配置され、錠装置の摺動棒76の先端に係合可能とされている。すなわち、可動障子30を図9に示したように傾けた姿勢で、図11(b)のように、錠操作部材77を操作して摺動棒76をガイド溝40内に挿入させる。すると、摺動棒76が錠受け270に係合して可動障子30を引き上げることが禁止される。従って、可動障子30の係る姿勢を維持して施錠することができ、固定障子20下端と、可動障子20上端とに少しの隙間を開けた状態で換気を可能としつつ、施錠することができる。
【0044】
図12には、さらなる他の実施形態にかかる上げ下げ窓300のうち、図10に相当する図を示した。上げ下げ下げ窓300では、ラッチ・錠装置370のラッチ部材372のうち面72aが設けられた側と反対側に孔372aが設けられている。加えて、基体71の板状部71aには係合部材373が配置されている。他の部位については上記した上げ下げ窓100と共通であるから同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
【0045】
係合部材373は、ラッチ部材372に設けられた上記孔372aに係合可能とされ、係合したときにはラッチ部材372の移動を禁止することができる。すなわち、図12(b)に示したように、ラッチ板係合部材373をラッチ部材372の孔372aに係合させると、ラッチ部材372は、縦枠13(縦枠14側についても同様)に接触しない姿勢でその移動が禁止される。これにより、可動障子30をさらに室内側に倒すことができる。そして例えば可動障子30の室外側を清掃することが可能である。これによれば、ラッチ部材372が縦枠13、14に接触しないので、不要な力を用いることなく可動障子30を倒すことができ、また、縦枠13、14の室内側面を傷つけることもない。
【0046】
以上で示した上げ下げ窓では、上障子を枠体上部に固定して設置する固定障子としたが、これに限定されることはなく、上障子も枠内を上下動可能に移動するものであってもよい。このとき、上障子が独立して移動するように構成してもよく、上記した可動障子30に連動して移動するように構成してもよい。
また、上記実施形態では上障子及び可動障子を建物に固定される枠体に具備するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、上障子及び可動障子が備えられる枠体が、さらに建物に固定された他の枠体にスイング式に開閉可能なものを挙げることができる。
【0047】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う上げ下げ窓も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0048】
10 枠体
11 上枠
12 下枠
13 左縦枠
14 右縦枠
20 固定障子(上障子)
21 上框
22 下框
23 左縦框
24 右縦框
25 パネル
30 可動障子
31 上框
32 下框
33 左縦框
34 右縦框
35 パネル
36 引手部
38 支持部材
40 ガイド溝
41 直線部
42 傾斜部
60 バランサー
61 ワイヤー
70 ラッチ・錠装置
72 ラッチ部材
100 上げ下げ窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上横枠と下横枠と左右の縦枠とを有する枠体、閉鎖の姿勢で前記枠体内側の上部に備えられる上障子、及び、前記閉鎖の姿勢で前記枠体内側の下部に配置され、前記枠体内側を上下に移動自在に設けられる可動障子、を備える上げ下げ窓であって、
前記可動障子は、その上端側には、前記縦枠に向けて付勢され、その突出量を変化させることが可能とされたラッチ部材を有し、前記可動障子の下端側には、前記縦枠に向けて突出した支持部材を備え、
前記縦枠は、前記上障子の閉鎖の姿勢で該上障子が配置された位置の下方に前記ラッチ部材が係合可能である部位を有するとともに、直線部と傾斜部とを有するガイド溝を具備し、
前記直線部は前記縦枠の長手方向に沿って設けられ、前記傾斜部は前記直線部の下端に連通するとともに前記上障子が備えられる側に傾斜して延在し、
前記可動障子の閉鎖の姿勢では前記ラッチ部材が、前記縦枠の前記ラッチ部材が係合可能である部位に係合し、前記支持部材は前記ガイド溝の前記傾斜部に配置されることにより、前記可動障子と前記上障子とが同一面内に並べられて配置され、
前記可動障子の開放の姿勢では、前記ラッチ部材及び前記支持部材のいずれもが前記ガイド溝内に配置され、該ガイド溝にガイドされることが可能とされていることを特徴とする、上げ下げ窓。
【請求項2】
前記ラッチ部材は、前記縦枠のいずれの部位にも接触しない突出量で、その突出量を変化させることを禁止する係合部材が備えられることを特徴とする請求項1に記載の上げ下げ窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−1897(P2012−1897A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135288(P2010−135288)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】