説明

上半身受け用クッションマット

【課題】 マッサージや整体を行う際、指圧の押圧荷重等を広く分散・吸収できる上半身受け用クッションマットを提供する。また同時に頭部、頸部、肩甲骨、肩関節の四ヶ所を支える体圧分散性に優れた枕としても利用できるようにする。
【解決手段】 低反発弾性ポリウレタンフォームからなるクッションマットにおいて、厚みが中程度の中肉部3と、厚みが厚い厚肉部4と、厚みが薄い薄肉部5を長手方向に沿って順に形成し、上面を滑らかな湾曲線で結んで流線形にするとともに、中肉部3と厚肉部4の上面に、幅方向に延出する複数の溝10を形成し、また、中肉部3と厚肉部4に対応する位置の下面に、厚み調整用クッション材6、7、8を嵌合せしめるための嵌合溝9を幅方向に沿って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージや整体時に、被施術者の上半身の下面側に敷かれて荷重を分散・吸収するクッションマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マッサージや整体を受ける際、被施術者を施術台等の上に横たわらせ、その上から指圧等を行うようにしているが、施術台等が硬すぎる場合、被施術者の下方の施術台上に毛布や厚手のタオルケットなどを敷いて触感を良好にしたり、クッション性を確保したりすることがある。
一方、マッサージ等を行う際、被施術者が横臥するマット自体にマッサージ効果を持たせるようにした技術も知られており、その一例として、特許文献1では、流体の導入・排出によって膨大縮小自在な袋体を複数並設してマット本体にするようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−157374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、マッサージや整体を行う際、施術台上に毛布や厚手のタオルケットを敷いただけでは、施術者が強い力で首や背中や腰等を上から押圧するとき、特に上半身の下面が均一に施術台に密着していないため、施術台に接触している部分だけに局部的に荷重が集中して、同部に痛みを感じたりする等の問題があった。
そして、このように施術者によってマッサージや整体を受ける際、特に上半身の下方に敷かれるクッション材として、従来では適当なものが提案されていなかった。
【0005】
そこで本発明は、施術者によってマッサージや整体を受ける際、特に上半身の下面側に敷けば荷重を分散・吸収できて好適なクッションマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、マッサージや整体の施術時に被施術者の上半身の下面側に敷かれるクッションマットにおいて、長手方向に沿って厚みが中程度の中肉部と、厚みが厚い厚肉部と、厚みが薄い薄肉部とを順に連ならせて形成し、これらの上面を滑らかな湾曲線で結ぶとともに、中肉部と厚肉部の上面には、幅方向に沿って複数本の溝を形成し、また、材質を低反発弾性ポリウレタンフォームから構成した。
【0007】
このように、中肉部と厚肉部と薄肉部とを連続して形成し、その上面を滑らかな湾曲線で結ぶようにすれば、頭や首や肩や腰を優しく包み込むような流線形となり、例えば、うつ伏せ姿勢、仰向け姿勢、横向き姿勢等の被施術者の姿勢や指圧の部位等に応じて適切な位置にセットすることにより、上半身と施術台との間に生じる隙間が塞がれて、体重や指圧による荷重等を広い範囲で分散・吸収させることができる。
ここで、本明細書において、上半身とは、腰および腰より上部の身体部分をいう。
また、幅方向に沿った複数本の溝によって、身体との接触面がムレにくくなり、爽やかさを得ることができる。
そして、材質を低反発弾性ポリウレタンフォームにすることで、ソフト感が得られると同時に、変形してもゆっくり復元する性質によって、例えば指圧によって瞬間的に大きな荷重がかかっても反発力は瞬間的に大きくならず、両者のバランスがとられて人体への負担を軽減できる。
なお、低反発弾性ポリウレタンフォームとは、反発弾性率1〜20%のポリウレタンフォームをいう。
【0008】
また本発明では、前記中肉部と厚肉部の位置の下面に、厚み調整用のクッション材を嵌合せしめるための嵌合溝を幅方向に沿って形成し、この嵌合溝に嵌合可能な一層または二層以上の厚み調整用クッション材を別体の組合せ部品として設けるようにした。
そして、適宜これらの厚み調整用クッション材を用いることで、その人の体の特徴や好み等に合わせた形態に変更できるようにする。この際、嵌合溝を幅方向に沿って形成することにより、クッションマットを身長方向に移動させても嵌合が外れにくくなる。
【0009】
また本発明では、前記上半身受け用クッションマットや厚み調整用クッション材とは別体に、人体の頭部を支持する頭部支持用クッション材をセット部品として準備し、この頭部支持用クッション材には、一端側端部を切り欠いた切欠凹部を形成するようにした。
そして、例えばうつ伏せ姿勢で腰の付近をマッサージする場合に、クッションマットの中心を腰の付近まで下げると頭部部分の受けがなくなり、首等に負担がかかる。このため、このときは、頭部支持用クッション材を使用するようにし、切欠凹部部分に顔をあてて呼吸できるようにする。
【発明の効果】
【0010】
マッサージや整体の施術時に被施術者の上半身の下面側に敷かれるクッションマットとして、中肉部と厚肉部と薄肉部を順に連ねて形成し、これらの上面を滑らかな湾曲面で結ぶような形態にすることで、頭や首や肩や腰を優しく包み込むことのできるような流線形となり、被施術者の姿勢や指圧部位等に応じて適切な位置にセットすることにより、身体と施術台との間に大きな隙間を生じさせないで、体重や指圧時の荷重を広い範囲で分散・吸収させることができる。また、幅方向に沿った複数本の溝により人体との接触面がムレにくくなり、また、材質を低反発弾性ポリウレタンフォームから構成することで、ソフト感が得られると同時に、荷重と反発力のバランスがとられて体への負担を軽減できる。そして、頭部、頸部、肩甲骨、肩関節の四ヶ所が一体に支えられるようになり、リラックスした姿勢で施術を受けることができる。
また、中肉部と厚肉部の下面に、厚み調整用のクッション材を嵌合自在にすれば、その人の体の特徴や好み等に合わせた形態にして使用することができる。
更に、人体の頭部を支持する頭部支持用クッション材を設け、この頭部支持用クッション材に一端側端部を切り欠いた切欠凹部を形成すれば、例えばうつ伏せ姿勢で腰や背中の付近をマッサージする場合に便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る上半身受け用クッションマットの一例を示す斜視図、図2は同断面図、図3は薄肉部を折り曲げる場合の説明図、図4は頭部支持用クッション材を併用する場合の説明図、図5は使用例の一例を示す説明図、図6は上半身受け用クッションマットの他の構成例図である。
【0012】
本発明に係る上半身受け用クッションマットは、マッサージや整体時に被施術者の身体のうち、特に上半身の下面側に敷くのに好適なクッションマットとして構成され、例えば指圧時の荷重が瞬間的に大きくかかっても、これを広く分散・吸収させて身体下面に局部的な痛み等を受けることがないようにされ、形状は頭や首や胸や腰を優しく包み込むことのできるような流線形で、また素材は低反発弾性ポリウレタンフォームから形成されていることを特徴としている。
【0013】
すなわち、図1、図2に示すように、本上半身受け用クッションマット1は、低反発弾性ポリウレタンフォームから作製され、厚みが中程度の中肉部3と、厚みが厚い厚肉部4と、厚みが薄い薄肉部5とが長手方向に沿って連続して形成されるクッションマット本体2と、中肉部3や厚肉部4の下面の嵌合溝9に積層可能な厚み調整用クッション材6、7、8を備えており、クッションマット本体2の上面は、中肉部3、厚肉部4、薄肉部5の上面が滑らかな湾曲線によって結ばれて流線形となり、平面視で矩形状にされている。
【0014】
ここで、低反発弾性ポリウレタンフォームは、荷重を受けるとゆっくり沈み、荷重が抜けるとゆっくり復元する性質を有しており、一般のウレタンフォームに較べて反発弾性が小さく、耐衝撃性とエネルギー吸収性に優れているため、特にマッサージや整体の際に施術台と被施術者との間に介装するクッションマットに適用すれば、例えば、瞬間的に下方に向けて大きな荷重がかかっても、これに対する反発力が少なく、人体への負担軽減が図られるものである。
【0015】
前記クッションマット本体2下面の嵌合溝9は、厚み調整用クッション材6、7、とほぼ同じ厚み分だけ切り欠かれた凹部10内に、幅方向に沿って二本平行に設けられており、厚み調整用クッション材6、7、8のうち、図中最下段の厚み調整用クッション材8の長さは、前記凹部10の長さとほぼ同じにされ、図中それより上層の厚み調整用クッション材6、7は、ほぼ半分の長さとされている。また、それぞれの厚み調整用クッション材6、7、8の上面側には、嵌合溝9に嵌合可能な凸部6t、7t、8tが形成され、そのうち長さの短い厚み調整用クッション材6、7の下面側には、嵌合溝9と同じサイズの嵌合溝6u、7uが形成されている。
【0016】
そして、例えば図1、図2に示すように、長さの短い2個の厚み調整用クッション材6、7を並べて各凸部6t、7tを嵌合溝9に嵌合させた後、それぞれの下面の嵌合溝6u、7uに長さの長い厚み調整用クッション材8の凸部8tを嵌合させることで、二層分の高さに調整できるようにしている。なお、本実施例の場合、各厚み調整用クッション材6、7、8の組合せにより、13通りの変化で高さを調整することができる。
また、図3に示すように、薄肉部5を折り返して厚み調整用クッション材8の下方に重ねれば、更に厚みを調整することが出来る。
【0017】
また、クッションマット本体2の中肉部3と厚肉部4の上面には、幅方向に延出する複数本の溝10が形成されている。この溝10は、通気性を確保し、湿気や温度等を逃がすことにより、人体が接触する面のムレを防止して爽やかさを得るためのものである。
【0018】
因みに、本上半身受け用クッションマットの寸法は、長手方向の長さが75cm程度、幅が50cm程度、中肉部3の厚みが7cm程度、厚肉部4の厚みが10cm程度、薄肉部5の中間部付近の厚みが3cm程度、厚み調整用クッション材6、7、8の厚みが2cm程度である。
【0019】
以上のような上半身受け用クッションマット1には、別のセット部品として、図4に示すような頭部支持用クッション材12が準備されている。
この頭部支持用クッション材12には、一端側端部に切欠凹部12dが形成されており、この切欠凹部12dは、顔を載せた際に顔面周縁や額を保持できるようなサイズや形状にされ、顔を乗せた状態でも呼吸ができるようにされている。
なお、この頭部支持用クッション材12も、低反発弾性ポリウレタンフォーム製としている。
【0020】
次に、以上のような上半身受け用クッションマット1の使用方法の一例について、図5に基づき説明する。
うつ伏せ姿勢で腰や背中付近のマッサージ等を受ける際は、図5(a)に示すように、上半身受け用クッションマット1上に被施術者の上半身を乗せてうつ伏せ姿勢となり、頭部支持用クッション材12上に顔を乗せて切欠凹部12dを通して呼吸ができるようにする。
そして、施術者が腰や背中等を指圧すれば、体重や押圧荷重等は上半身受け用クッションマット1に広く分散・吸収され、しかも瞬間的な反発力も軽減されるためバランスがとられて快適である。
【0021】
次に、横向き姿勢や仰向け姿勢の時は、図5(b)(c)に示すように、それぞれ指圧部等の下方に上半身受け用クッションマット1を敷き、必要に応じて厚み調整用クッション材6、7、8や薄肉部5の折り曲げ等によって高さを調整し、快適な状態で使用する。
この際、前記要領により、各厚み調整用クッション材6、7、8の組み合わせや薄肉部5の折り返しにより、首から肩にかけての高さや感触を異ならせることができ、自分の好みに合った状態にして使用すればよい。
【0022】
また、マッサージ等の時間が長くなる場合でも、上面の溝10によってムレが防止され、また、厚み調整クッション材6、7、8が幅方向の嵌合溝9で嵌合しているため、上半身受け用クッションマット1を長手方向に移動させても外れにくい。
そして、このように、身体部分のうち、特に上半身を受けるクッションマットとして有効である。
【0023】
次に、本上半身受け用クッションマット1の別構成例について図6に基づき説明する。
この構成例では、クッションマット本体2Aの形態として、前記クッションマット本体2と厚み調整用クッション材6、7とを一体にしたような形態であり、中肉部3と厚肉部4の位置に対応する下面に、一層の厚み調整用クッション材8Aを嵌合自在にしたものである。そして、クッションマット本体2Aとして、前記クッションマット本体2と厚み調整用クッション材6、7を一体化した構成以外はすべて前記例と同一である。
この場合も同様な効果を奏する。
【0024】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、図5に示す使用例は例示であり、また、本発明の上半身受け用クッションマット1は枕としても使用可能である。枕とした場合には、頭部、頸部、肩甲骨、肩関節の四ヶ所を支えることのできる枕となり、体圧分散性に優れた枕となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
マッサージや整体を行う際、専用の上半身受け用クッションマットを設け、被施術者の指圧点等の下方に適切な態様で敷くことで、例えば、上から瞬間的に大きな荷重がかかる場合でも、それが広く分散・吸収されるとともに、反発力が瞬間的に大きくかかることはなく、人体に対する負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る上半身受け用クッションマットの一例を示す斜視図
【図2】同断面図
【図3】一部を折り曲げる場合の説明図
【図4】頭部支持用クッション材の説明図
【図5】使用例の一例を示す説明図
【図6】上半身受け用クッションマットの他の構成例の説明図
【符号の説明】
【0027】
1…上半身受け用クッションマット、2…クッションマット本体、2…中肉部、3…厚肉部、4…薄肉部、6…厚み調整用クッション材、7…厚み調整用クッション材、8…厚み調整用クッション材、9…嵌合溝、10…溝、12…頭部支持用クッション材、12d…切欠凹部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージや整体の施術時に被施術者の上半身の下面側に敷かれるクッションマットであって、長手方向に沿って厚みが中程度の中肉部と、厚みが厚い厚肉部と、厚みが薄い薄肉部とが順に連なって形成され、これらの上面が滑らかな湾曲線で結ばれるとともに、中肉部と厚肉部の上面には、幅方向に沿って複数本の溝が形成され、また、材質が低反発弾性ポリウレタンフォームから構成されることを特徴とする上半身受け用クッションマット。
【請求項2】
前記中肉部と厚肉部の位置の下面には、厚み調整用のクッション材を嵌合せしめるための嵌合溝が幅方向に沿って形成され、この嵌合溝に嵌合可能な一層または二層以上の厚み調整用クッション材が別体の組合せ部品として設けられることを特徴とする上半身受け用クッションマット。
【請求項3】
前記上半身受け用クッションマットや厚み調整用クッション材とは別体に、人体の頭部を支持する頭部支持用クッション材がセット部品として準備され、この頭部支持用クッション材には、一端側端部を切り欠いた切欠凹部が形成されることを特徴とする上半身受け用クッションマット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−245(P2006−245A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177732(P2004−177732)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(504232963)株式会社甲斐 (1)
【Fターム(参考)】