説明

上着

【課題】外ポケットに入れた携帯用機器のコードを内側に引き回すことができるばかりでなく、携帯用機器を上着の内側から外ポケットに入れることができ、しかも、外ポケットに入れた携帯用機器が不用意に飛び出すことがなく、使用勝手に優れる上着を提供する。
【解決手段】上着10の外側に開口し、イヤホン31を有する携帯用機器30を収容可能な外ポケット11と、該外ポケット11を上着10の内側に開口させ、上着10の内側から前記携帯用機器30を前記外ポケット11に出し入れ可能にする内開口部20と、該内開口部20を開閉するファスナー21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上着に関するものであり、詳しくは、イヤホンを有する携帯用機器を収容可能な外ポケットを具備する上着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、小型軽量で携帯して使用することのできる様々な携帯用機器が案出されており、中には、携帯用音楽再生機や携帯電話機等のように、携帯して音楽や会話を楽しむことのできるイヤホンを有する携帯用機器がある。
【0003】
ところで、背広の上衣やジャケット等の上着には、外側(被服の表側)に開口する外ポケットが設けられているのが通常であり、上記携帯用機器を携帯する際には、携帯用機器を上着の外ポケットに入れて持ち歩くことが一般的になされている。しかしながら、携帯用機器を外ポケットに入れてイヤホンを使用すると、携帯用機器から延び出るイヤホンのコードが上着の外側にて引き回される。よって、イヤホンのコードが使用者の手や周りの人の被服等に引っ掛かる可能性があり、煩わしい。
【0004】
一方、上着の中には、内側(被服の裏側)に開口する内ポケットを有するものがあり、携帯用機器を内ポケットに入れておくこともできる。このようにすれば、イヤホンのコードを上着の内側にて引き回すことができる。しかしながら、携帯用機器を内ポケットに入れておいた場合には、携帯用機器が操作し難くなるといった不具合を生じる。
【0005】
そこで、本願出願人は、外ポケットの内部を上着の内側に連通させる貫通孔によって構成され、携帯用機器のイヤホンのコードを挿通可能な外ポケット挿通部、を設けた上着を既に提案している(特許文献1参照)。この上着によれば、携帯用機器を外ポケットに入れ、外ポケット挿通部にイヤホンのコードを挿通させて上着の内側に引き回すことで、上着の外側から携帯用機器を操作することができ、また、イヤホンのコードが外側に煩わしく引き回されるいった不具合を解消することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記上着は、以下のような点で改良の余地のあるものであった。
【0007】
外ポケット挿通部は、イヤホンのコードを挿通させるものであり、外ポケット挿通部の大きさとしては、コードを携帯用機器に接続させるジャックやイヤホンを挿通可能であれば、極力小さくするのが望ましい。何故ならば、無用に大きいと、外ポケットに入れた携帯用機器が外ポケット挿通部から飛び出してしまうからである。
【0008】
よって、上記上着では、外ポケットに携帯用機器を入れた後に、携帯用機器に接続したコードの端末のイヤホンを外ポケット挿通部に挿入したり、携帯用機器からコードを外した状態でコードのジャックを外ポケット挿通部に挿入し、その後、ジャックを携帯用機器に接続したりせねばならず、上記上着は、この点で使用勝手に劣るものであった。よって、携帯用機器を内側から外ポケットに入れることができるようにすることが好ましいのであるが、外ポケット挿通部を大きくすると、外ポケットに入れた携帯用機器が上着の内側に不用意に飛び出してしまう虞があることから、外ポケット挿通部を大きくすることができないことは上述の通りである。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、外ポケットに入れた携帯用機器のコードを内側に引き回すことができるばかりでなく、携帯用機器を上着の内側から外ポケットに入れることができ、しかも、外ポケットに入れた携帯用機器が不用意に飛び出すことがなく、使用勝手に優れる上着の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「上着の外側に開口し、イヤホンを有する携帯用機器を収容可能な外ポケットと、
該外ポケットを上着の内側に開口させ、上着の内側から前記携帯用機器を前記外ポケットに出し入れ可能にする内開口部と、
該内開口部を開閉するファスナーと
を備えることを特徴とする上着」
である。
【0011】
ここで、ファスナーは、内開口部を開閉させるものであり、スナップボタン等を用いた点ファスナー、スライダの移動によって対向する多数の務歯(エレメント)を互いに噛合させる線ファスナー、雄側の面部材と雌側の面部材とを互いに係合させる面ファスナー等を例示することができる。
【0012】
上記構成の上着では、携帯用機器を外ポケットに入れておくことで、携帯用機器を操作し易くなる。また、携帯用機器から延び出るイヤホンのコードを、外ポケットを上着の内側に開口させる内開口部に通すことで、コードを上着の内側にて引き回すことができる。
【0013】
さらに、内開口部は、携帯用機器を外ポケットに出し入れ可能なものであるため、内開口部を通じて携帯用機器を上着の内側から外ポケットに出し入れすることができる。そして、内開口部に設けられたファスナーを閉じることで、外ポケットに入れた携帯用機器が上着の内側に不用意に飛び出すことを防止することができる。
【0014】
上述した手段において、
「前記外ポケットの裏に設けられ、上着の内側に開口する内ポケットを備え、
前記内開口部は、前記内ポケットの内部に設けられている
ことを特徴とする上着」
とするのが好適である。
【0015】
内開口部のファスナーが上着の内側に露呈していると、上着を着たり脱いだりするときや上着を着て活動中に、手やシャツのボタン等がファスナーに引っかかり、ファスナーを不用意に開けてしまう虞がある。
【0016】
これに対して、上記構成の上着では、内開口部が内ポケットの内部に設けられているため、ファスナーは内ポケットに隠蔽される。よって、ファスナーを不用意に開けてしまう虞はない。
【0017】
上述した手段において、
「前記内開口部の上方に、上着の内側の上下方向に所定間隔で複数箇所が縫着された長尺材を備える
ことを特徴とする上着」
とするのが好適である。
【0018】
イヤホンのコードが上着の内側に引き回されてはいても、コードが長いと、上着の内側にて無用にぶらついて、多少の煩わしさが残る。
【0019】
これに対して、上記構成の上着では、上着の内側において、内開口部の上方に長尺材を備えており、この長尺材は、所定間隔で複数箇所が上着の内側に縫着されている。よって、長尺材の縫着部分の間にコードを通すことで、コードが無用にぶらつかないように固定することができる。また、長尺材は、上下方向に所定間隔で複数箇所が上着の内側に縫着されたものであるため、上着の内側において長尺材にコードを通して固定する位置を、上下方向において適宜選択することができる。
【0020】
上述した手段において、
「前記携帯用機器は、フックを有し、イヤホンのコードにスライド自在に取着されたフック具を有するものであり、
前記内開口部の上方に、前記フック具の前記フックを掛止する掛止部を備える
ことを特徴とする上着」
とするのが好適である。
【0021】
ここで、掛止部としては、布や紐をループさせて両端を上着の内側に逢着したループ材、上着の外側と内側とを貫通する貫通孔、上着の裏地に設けられて表側には露呈しない裏地孔等を例示することができる。
【0022】
上記構成の上着では、イヤホンのコードに取着されたフック具のフックを掛止部に掛止させることで、上着の内側にてコードが無用にぶらつかないように固定することができる。また、フック具は、コードにスライド自在に取着されたものであるため、コードにおいて、上着の内側に固定する位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0023】
上述した通り、本発明によれば、外ポケットに入れた携帯用機器のコードを内側に引き回すことができるばかりでなく、携帯用機器を上着の内側から外ポケットに入れることができ、しかも、外ポケットに入れた携帯用機器が不用意に飛び出すことがなく、使用勝手に優れる上着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る上着の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した上着の内側の要部を示す斜視図である。
【図3】上着の別の例を示す斜視図である。
【図4】内開口部の別の例を示す要部斜視図である。
【図5】上着の内側にコードを固定する別の例を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2に、本発明に係る上着10の一例を示す。
【0026】
上着10の下部には、外側に開口する外ポケット11が設けられており、この外ポケット11の上部の裏側には、外ポケット11を上着10の内側に開口させる内開口部20が設けられている。ここで、内開口部20は、携帯用機器30を挿通可能な大きさとなっており、この上着では、携帯用機器30を上着10の外側からでも、上着10の内側からでも自由に出し入れすることができる。
【0027】
そして、外ポケット11に入れた携帯用機器30のイヤホン31のコード32を内開口部20に通して上着10の内側に引き出せば、コード32を上着10の内側にて引き回すことができる。
【0028】
また、内開口部20には、内開口部20を開閉するファスナー21が設けられており、携帯用機器30を上着10の内側から外ポケット11に入れた後にファスナー21を閉じれば、外ポケット11に入れられた携帯用機器30が内開口部20から不用意に飛び出すことを防止することができる。
【0029】
なお、本例では、ファスナー21として、スライダを移動させることで内開口部20を開閉する線ファスナーを採用しているが、これに限らず、スナップボタン等の点ファスナーや面ファスナーを用いることができる。また、本例では、スライダを手前に移動させることで内開口部20を閉じる線ファスナーを採用しており、携帯用機器30のコード32を、上着10の手前側に引き出すことができるようにしてあるが、スライダを奥側に移動させることで内開口部20を閉じる線ファスナーを採用して、携帯用機器30のコード32を、上着10の奥側に引き出すことができるようにしてもよい。さらに、内開口部20としては、本例の如く横方向のスリット状のものに限らず、縦方向のスリット状のものであってもよい。
【0030】
ところで、本例の上着10では、外ポケット11に、その開口を塞ぐ返し片11aが設けられている。よって、外ポケット11に収納した携帯用機器30のコード32を外ポケット11の開口から外側に引出すと、返し片11aが邪魔になり、イヤホン31を使用する使用者の頭部へとコード32を直線的に引出すことができず、外側に引き回されたコード32が非常に煩わしくなるのであるが、上述のように、コード32を上着10の内側に引き回すことで、この煩わしさを解消することができる。
【0031】
また、本例の上着10では、図2に示すように、内開口部20の上方に長尺材40が設けられている。ここで、長尺材40は、上下方向において所定間隔で上着10の内側に縫着されており、適宜の縫着部分41間に携帯用機器30のコード32を通して、上着の内側にてコード32を固定できるようにしてある。
【0032】
以上、本発明に係る上着の一例を示したが、本発明に係る上着はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更が可能である。
【0033】
例えば、上着としては、前述ような背広の上衣やジャケットのような形態のものに限らず、図3に示すような上着10、具体的にはジャンパーであってもよく、その他、カーディガン、トレーニングウエアの上衣、コート等であってもよい。
【0034】
また、前述のような上着の内側に内開口部及びファスナーを露呈させるものものに限らず、図4に示すように、内開口部20及びファスナー21を隠蔽させるものであってもよい。図4に示す上着10では、内側において、外ポケット11に対応する部位(外ポケット11の裏側)に、内側に開口する内ポケット12が設けられている。そして、内開口部20及びファスナー21は、内ポケット12の内部に設けられており、上着10の内側に露呈せず、内ポケット12によって隠蔽されている。
【0035】
このように内開口部20及びファスナー21が隠蔽されていれば、内側に着込んだシャツのボタンや手等がファスナー21に引っ掛かることがなく、ファスナー21が不用意に開くことを防止することができる。
【0036】
また、上着の内側にてコードを固定する手段としては、前述の長尺材を用いたものに限らず、図5に示すように、上着10の内側に掛止部50を設けたものであってもよい。この図5に示した上着10は、フック具60が取着されたコード32を内側に固定するためのものである。ここで、フック具60は、フック61を有するものであり、上着10の内側に設けられた掛止部50にフック61を掛止することで、上着10の内側に固定される。また、フック具60は、コード32にスライド自在に取着されたものであり、コード32に対する取着位置を変更することで、上着10に固定されるコード32の位置を調節することができる。
【0037】
なお、本例では、掛止部50として、布や紐をループさせて両端を上着10の内側に逢着したループ材を採用しているが、フック具60のフック61を掛止できるものであれば、これに限らず、上着10の外側と内側とを貫通する貫通孔や、上着10の裏地に設けられて表側には露呈しない裏地孔等であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 上着
11 外ポケット
11a 返し片
12 内ポケット
13 襟
20 内開口部
21 ファスナー
30 携帯用機器
31 イヤホン
32 コード
40 長尺材
41 縫着部分
50 掛止部
60 フック具
61 フック
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】登録実用新案第3152824号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上着の外側に開口し、イヤホンを有する携帯用機器を収容可能な外ポケットと、
該外ポケットを上着の内側に開口させ、上着の内側から前記携帯用機器を前記外ポケットに出し入れ可能にする内開口部と、
該内開口部を開閉するファスナーと
を備えることを特徴とする上着。
【請求項2】
前記外ポケットの裏に設けられ、上着の内側に開口する内ポケットを備え、
前記内開口部は、前記内ポケットの内部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の上着。
【請求項3】
前記内開口部の上方に、上着の内側の上下方向に所定間隔で複数箇所が縫着された長尺材を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の上着。
【請求項4】
前記携帯用機器は、フックを有し、イヤホンのコードにスライド自在に取着されたフック具を有するものであり、
前記内開口部の上方に、前記フック具の前記フックを掛止する掛止部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の上着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7253(P2012−7253A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141848(P2010−141848)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(308038897)株式会社フェニックスサンコーみの (3)
【Fターム(参考)】