説明

下水処理機における主務チェーン切断検知装置

【課題】主務チェーンが切断すると同時に、直ちにかつ確実にその切断を検知して下水処理機を直ちに停止するようにした下水処理機における主務チェーン切断検知装置を提供すること。
【解決手段】主務チェーン1の切断と同時に切断するように主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤー4を主務チェーン1と平行にエンドレス状に張架し、パイロットワイヤー4を介して送信器5からの信号を受信器6にて受信するように送信器5及び受信器6を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理機における主務チェーン切断検知装置に関し、特に、汚泥掻寄機、沈砂掻揚機、除塵機などの下水処理機において、駆動用の主務チェーンが切断すると同時に、直ちにかつ確実にその切断を検知するようにした下水処理機における主務チェーン切断検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場においてはその下水の処理工程に応じて、汚泥掻寄機、沈砂掻揚機、除塵機などの下水処理機が沈殿池、沈砂池等の処理池に設置され、流入する汚水中の固形物として池底に沈殿する沈砂や汚泥を掻き寄せ排出したり、また、流入する汚水中のし渣を捕捉して掻き揚げ排出するようにしている。
また、これらの汚泥掻寄機、沈砂掻揚機、除塵機などの下水処理機の駆動を、モータ等の駆動源より主務チェーンを介して駆動するようにしている。
【0003】
また、この下水処理機の駆動中に主務チェーンが、摩耗や過負荷などにより切断することがある。この駆動中に主務チェーンが切断すると下水処理機はその機能を停止するものとなるが、この主務チェーンの切断後も下水処理機の駆動源を運転すると、例えば、汚泥掻寄機や沈砂掻揚機においては池底に沿って移動している掻寄レーキが停止しても、汚泥や汚砂は引き続き沈殿してくるので、掻寄レーキが沈砂や汚泥によって埋没し、復旧に手数と時間がかかるものとなる。
また、除塵機においては捕捉し渣が停止したレーキ装置に絡まったりしてその復旧に、同様に手数と時間がかかるものとなる。
【0004】
そこで、これらの下水処理機の主務チェーンが切断すると、この切断を検知して機械装置を停止するものとして、主務チェーン切断検知装置がこれらの下水処理機に付設されている。例えば、この主務チェーン切断検知装置として代表的なものは、主務チェーンを駆動するためのモータ等の原動機にて駆動される主務チェーン駆動用スプロケットホイールと対をなす従動側スプロケットホイールの回転を検知するようにして検知器を取り付け、該従動側スプロケットホイールの回転停止をもって主務チェーンの切断を検知するようにしている。
【0005】
ところが、この主務チェーンの従動側スプロケットホイールの回転検知方式においては、例えば、主務チェーンの切断位置が、主務チェーンの往路側で、かつその切断端が従動側スプロケットホイールからも距離がある位置だと、該主務チェーンが切断してもその切断端部の主務チェーンがまだ従動側スプロケットホイールに噛合されており、この切断された主務チェーンの端部が従動側スプロケットホイールから完全に外れるまで従動側スプロケットホイールは回転を続けるため主務チェーンの切断を検知することができず、下水処理機は継続して駆動されるものとなり、これが機械装置の新たな故障の原因となったり、さらにはその復旧に手数と時間がかかるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、下水処理機における主務チェーン切断検知装置の有する問題点に鑑み、主務チェーンが切断すると同時に、直ちにかつ確実にその切断を検知して下水処理機を直ちに停止するようにした下水処理機における主務チェーン切断検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置は、主務チェーンの切断と同時に切断するように主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤーを主務チェーンと平行にエンドレス状に張架し、パイロットワイヤーを介して送信器からの信号を受信器にて受信するように送信器及び受信器を配置したことを特徴とする。
【0008】
この場合において、パイロットワイヤーを、送信器と受信器間の信号伝送可能な電磁結合方式とすることができる。
【0009】
また、パイロットワイヤーを、主務チェーンのリンク接合用ピンに突設するブラケットにて支持するようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置によれば、主務チェーンの切断と同時に切断するように主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤーを主務チェーンと平行にエンドレス状に張架し、パイロットワイヤーを介して送信器からの信号を受信器にて受信するように送信器及び受信器を配置することにより、主務チェーンの切断と同時にパイロットワイヤーも切断されて、直ちに送信器からの信号を受信器にて受信できなくなるので、主務チェーンの切断等の異常を検知して瞬時に機械装置の停止が行え、その復旧も簡易に行うことができる。
【0011】
また、パイロットワイヤーを、送信器と受信器間の信号伝送可能な電磁結合方式とすることにより、非接触にて信号を伝送することができるので、送信器と受信器間の信号伝送が確実で、誤動作なしに精度良く主務チェーンの切断等の異常を検知することができる。
【0012】
また、パイロットワイヤーを、主務チェーンのリンク接合用ピンに突設するブラケットにて支持するようにすることにより、主務チェーンが切断すると該切断リンク前後のブラケットによりパイロットワイヤーが固定されているので、主務チェーンの切断箇所と同じ箇所でパイロットワイヤーも切断され、主務チェーン切断検知及びその箇所の特定が簡易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図4に、本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置の一実施例を示す。
沈殿池、沈砂池等の処理池には汚泥掻寄機や沈砂掻揚機を設置し、また、入水路には除塵機を設置し、これらの下水処理機は、モータ等の駆動源(図示省略)より駆動される駆動スプロケットホイール2と従動スプロケットホイール3との間に主務チェーン1を張架し、該主務チェーン1に沈砂或いは汚泥の掻寄或いは掻揚用のレーキ又はし渣掻揚用のレーキ(いずれも図示省略)を取り付けて主務チェーン1の駆動によりこれらのレーキを運行し、汚泥掻寄機や沈砂掻揚機においては池底に沈殿した沈砂や汚砂を掻き寄せ掻き揚げるようにしている。
また、除塵機においては流入する汚水中のし渣をスクリーンにて捕捉し、これをスクリーンに沿って昇降移動するレーキにて掻き揚げ排出するようにしている。
【0015】
また、本発明では、図1に示すように、対向する駆動・従動両スプロケットホイール2.3間にエンドレス状に張架する主務チェーン1の側方に沿って突出し、平行になるようにして、主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤー4をエンドレス状に張架し、該パイロットワイヤー4を介して送信器5からの信号を受信器6にて受信するように送信器5及び受信器6を、パイロットワイヤー4に沿って配置するようにする。
この送信器5と受信器6とは、図1に示すように、互いに所定の間隔をあけて対峙するように配置し、かつ固定側、特に限定されるものではないが、例えば、下水処理機フレームに固定するようにする。
【0016】
この場合において、パイロットワイヤー4を、送信器5と受信器6間の信号伝送可能な電磁結合方式とするとともに、該パイロットワイヤー4の主務チェーン1に対する支持は、図3に示すように、主務チェーン1の各リンク10、10間の接合用ピン11にそれぞれ突設するようにしたブラケット7の先端部にて支持するようにし、これにより主務チェーンに対して弛まないように主務チェーン1に沿って張架するが、これは主務チェーン1の側方に突出するようにしてパイロットワイヤー4が吊垂支持されるようになっている。
このブラケット7の先端の把持部71にてパイロットワイヤー4の支持を行うが、これは特に限定されるものではないが、例えば、ブラケット先端部をかしめることにより固定する方法やボルト・ナットにて締結する方法等が採用される。
【0017】
なお、このブラケット7は、主務チェーン1の各リンク接合用ピン11毎に突設するようにするとともに、各ブラケット7の先端の把持部71にてパイロットワイヤー4を把持するようにする。
なお、図示の実施例では、各リンク接合部毎にブラケット7を突設しているが、これは特に限定されるものではなく、パイロットワイヤー4がたるむことなく主務チェーン1の側面に沿って張架されるならば、一定の間隔毎に、等間隔に突設することができる。
これにより、主務チェーン1に沿ってパイロットワイヤー4はエンドレス状に緊張して配設される。
また、主務チェーン1が切断しても、該切断リンク前後のブラケット7、9によりパイロットワイヤー4を固定するようにするとともに、主務チェーン1の切断箇所と同じ箇所でパイロットワイヤー4も主務チェーン切断と同時に切断されるよう、パイロットワイヤー4の太さ、引張強度等を設定する。
【0018】
また、主務チェーン1の切断と同時にパイロットワイヤー4も切断され、直ちに送信器5からの信号を受信器6にて受信できなくなるので、主務チェーン1の切断等の異常を検知して瞬時に機械装置の停止が行えるよう、受信器6に下水処理機の停止回路(図示省略)を接続する。これにより、下水処理機の復旧も簡易に行うようにする。
この場合、パイロットワイヤー4を、送信器5と受信器6間の信号伝送可能な電磁結合方式としているので、非接触にて信号を伝送することができ、送信器5と受信器6間の信号伝送が確実で、誤動作なしに精度良く主務チェーンの切断等の異常を検知することができる。
【0019】
次に、本発明の汚泥掻寄機等の下水処理機における主務チェーン切断検知装置の作用について説明する。
主務チェーン1の側部に沿ってパイロットワイヤー4をエンドレス状に緊張配設して、該主務チェーン1を駆動し、かつ送信器5、受信器6をも作動させる。この主務チェーン1が切断されることなく円滑に駆動されている場合、送信器5からの信号は、信号伝送可能な電磁結合方式としているパイロットワイヤー4を介して受信器6にて受信されている。
しかし、パイロットワイヤー4はブラケット7により把持されて主務チェーン1に固定されるようになっており、摩耗、過負荷などにより主務チェーン1が切断されると、主務チェーン1の切断箇所前後位置のブラケット7、7にてパイロットワイヤー4は依然として把持固定されているので、この主務チェーン切断箇所における両側のブラケット7、7にてパイロットワイヤー4は引張負荷がかかるようになって切断される。
【0020】
このようにしてパイロットワイヤー4が切断されると、パイロットワイヤー4を介して伝送される送信器5からの信号が受信器6側にて受信されなくなり、これにより直ちに主務チェーン1の切断を検知することができる。
【0021】
以上、本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置は、主務チェーンが切断すると同時に、直ちにかつ確実にその切断を検知して下水処理機を直ちに停止することができることから、下水処理機の用途に好適に用いることができるほか、主務チェーンを用いた機械装置の主務チェーン切断検知の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の下水処理機における主務チェーン切断検知装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】パイロットワイヤーを主務チェーンに沿って張架した実施例を示し、(A)は正面図、(B)は一部の拡大図である。
【図3】パイロットワイヤーの張架方法を示す説明図である。
【図4】パイロットワイヤーを介して送受信する装置を示し、(A)は送信器の配置を示す断面図、(B)は受信器の配置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 主務チェーン
11 主務チェーンのリンク接合用ピン
2 駆動スプロケットホイール
3 従動スプロケットホイール
4 主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤー
5 送信器
6 受信器
7 ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主務チェーンの切断と同時に切断するように主務チェーン切断検知用のパイロットワイヤーを主務チェーンと平行にエンドレス状に張架し、パイロットワイヤーを介して送信器からの信号を受信器にて受信するように送信器及び受信器を配置したことを特徴とする下水処理機における主務チェーン切断検知装置。
【請求項2】
パイロットワイヤーを、送信器と受信器間の信号伝送可能な電磁結合方式としたことを特徴とする請求項1記載の下水処理機における主務チェーン切断検知装置。
【請求項3】
パイロットワイヤーを、主務チェーンのリンク接合用ピンに突設するブラケットにて支持するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の下水処理機における主務チェーン切断検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237984(P2008−237984A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79234(P2007−79234)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】