説明

下水汚泥の処理方法

【課題】重金属、ダイオキシン類等の有害物を含む下水汚泥を該有害物を分解した状態で処理する。
【解決手段】配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群をオカラに混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜72時間一次発酵させ、更に、これに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群を混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜48時間二次発酵させることにより下水汚泥処理用の発酵資材を製造し、処理すべき下水汚泥1000重量部を発酵槽内に投入し、これに水分調整材を加えて含水率を45〜55%となし、前記発酵資材1〜2重量部を加えて混合し、続いて、発酵槽内の温度を60℃〜200℃に加温し、発酵槽内に空気を注入し、発酵槽内を連続的に攪拌することにより下水汚泥を発酵処理することを特徴とする下水汚泥の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥の処理方法に関するものであり、特に、下水処理場から発生する産業廃棄物の汚泥、集落排水等の下水道類似施設から発生する一般廃棄物の汚泥等の下水汚泥を処理するための下水汚泥の処理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
現在、下水汚泥は、大部分がそのまま埋立処理され、又は乾燥若しくは焼却した後埋立処理されている。以下この埋立処理方法を「従来の下水汚泥の処理方法(イ)」という。
【0003】
特開平6−55200号公報は、下水汚泥の処理方法(以下「従来の下水汚泥の処理方法(ロ)」という。)を開示している。
【0004】
従来の下水汚泥の処理方法(ロ)は、脱水汚泥ケーキと生石灰類とを混合機により混合して混合物とする混練行程と、該混合物を粉化機により粉末化する粉末行程とよりなるものである。
【特許文献1】特開平6−55200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の下水汚泥の処理方法(イ)(ロ)においては、いずれも、下水汚泥に含まれる重金属、ダイオキシン類等の有害物を分解することができないという問題がある。
【0006】
また、上記従来の下水汚泥の処理方法(イ)においては、下水汚泥の処理費が嵩むだけでなく、埋立に伴う重金属等による地下汚染、焼却に伴う大気汚染やダイオキシン類の発生等、人の生活環境を悪化させるという深刻な問題を生じている。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明は、上記従来の下水汚泥の処理方法における上述の如き問題を解決し、重金属、ダイオキシン類等の有害物を含む下水汚泥を該有害物を分解した状態で処理するようにした下水汚泥の処理方法を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は下記の下水汚泥の処理方法を提供するものである。
【0009】
(1)配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群をオカラに混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜72時間一次発酵させ、更に、これに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群を混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜48時間二次発酵させることにより下水汚泥処理用の発酵資材を製造し、
処理すべき下水汚泥1000重量部を発酵槽内に投入し、これに水分調整材を加えて含水率を45〜55%となし、前記発酵資材1〜2重量部を加えて混合し、
続いて、発酵槽内の温度を60℃〜200℃に加温し、発酵槽内に空気を注入し、発酵槽内を連続的に攪拌することにより下水汚泥を発酵処理することを特徴とする下水汚泥の処理方法(請求項1)。
【0010】
(2)前記発酵槽内に発酵促進剤として麦飯石の粉末を投入する(請求項2)。
【0011】
(3)前記発酵槽には除湿機を備えさせる(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の発明において製造される下水汚泥処理用の発酵資材を下水汚泥に加え、60℃〜200℃の温度にて発酵処理することにより、下水汚泥中の重金属、ダイオキシン類等の有害物が分解される。
【0013】
即ち、発酵過程において好気性菌群、嫌気性菌群中の高熱菌のみが残存し、高熱菌以外の菌類は死滅する。このような過程で下水汚泥中の重金属、ダイオキシン類等の有害物が分解される。
【0014】
従って、重金属、ダイオキシン類等の有害物を含む下水汚泥についても、発酵処理後の処理物を支障なく土壌に加えることができる。処理物を加えた土壌は、腐葉化し、深耕度が深くなり、植物の成長が早まる。
【0015】
以上の如く、請求項1の発明によれば、下水汚泥中の重金属、ダイオキシン類等の有害物による環境の汚染が防止される。
【0016】
[請求項2の発明]
麦飯石は多孔性の多元素物質であり、麦飯石の粉末を発酵槽内に投入して処理物に混入したときには、処理物にバクテリアが好ましく吸着し、発酵が著しく促進される。
【0017】
[請求項3の発明]
除湿機は発酵槽内の結露を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において使用される下水汚泥処理用の発酵資材は下記の如く製造される。
【0019】
配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群をオカラに混合する。
【0020】
オカラは、豆腐殻、卯の花とも呼ばれ、豆腐製造の際、豆乳を搾り取った残渣である。湿潤状態のオカラは、菌が繁殖し易く、短時間で悪臭を放ち、処理が困難な廃棄物である。
【0021】
有効微生物群は、一例としてオカラ1000重量部に対し、1重量部の割合で使用する。
【0022】
有効微生物群には次のものが含まれる。
酵母菌、セルロース分解菌、窒素固定菌、乳酸菌、糸状菌(芳香族化合物分解菌)、マンガン還元菌(クロカビ属群−原生担子菌類)、マンガン酸化菌(有機栄養菌)、アンモニア酸化菌(亜硝酸菌)、放線菌(キチン分解菌)、硝酸菌(硝化生成細菌)、硫黄細菌(硫化水素を水素供与体として利用する細菌群)、メタン酸化菌、セルロース放線菌、セルロース糸状菌、納豆菌、リグニン分解菌、鉄酸化菌、鉄還元菌、硫酸還元菌、酢酸菌、バチルス属(Bacillus sp.)、スポロサルシナ属(Sporosarcina sp.)、ペニバチルス属( Paenibacillus sp.)、オーシャノバチルス属(Oceanobacillus sp.)。
【0023】
有効微生物群をオカラに混合してなるものを40℃〜200℃の温度にて24時間〜72時間一次発酵させる。
【0024】
更に、これに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる上記と同様の有効微生物群を混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜48時間二次発酵させる。
【0025】
以上により、下水汚泥処理用の発酵資材が製造される。
【0026】
この下水汚泥処理用の発酵資材を用いて、下水汚泥を下記の如く発酵処理する。
【0027】
処理すべき下水汚泥1000重量部を発酵槽内に投入し、これに水分調整材を加えて含水率を45〜55%となし、発酵資材1〜2重量部を加えて混合する。
【0028】
水分調整材としては、例えば発酵オカラ、米ぬか、籾殻、オガクズ、木皮(バーク材)等を用いる。
【0029】
続いて、発酵槽内の温度を60℃〜200℃に加温し、発酵槽内に空気を注入し、発酵槽内を連続的に攪拌することにより下水汚泥を発酵処理する。
【0030】
発酵槽内に空気を注入することにより、好気性菌群の効力が高まる。
【0031】
発酵槽内の攪拌は、約1〜5回転/分の速さで連続回転させる。
【0032】
以後、処理物と、処理物の含水率に応じた水分調整剤材と、発酵資材とを適宜発酵槽内に投入し、発酵槽内を連続的に攪拌することにより、7日〜10日間にわたり発酵処理し、処理物の含水率を10%〜15%とする。
【0033】
処理物の含水率が10%〜15%になれば、処理は完了する。処理物は適宜土壌に加える。
【0034】
例えば、2日目に処理物の含水率が15%〜20%であれば、水分調整材を処理物の10重量%程度追加し、発酵資材を適量追加する。
【0035】
また、例えば3日目に処理物の含水率が20%〜30%であれば、水分調整材を処理物の15〜20重量%程度追加し、発酵資材を適量追加する。
【0036】
なお、7日〜10日間にわたり発酵処理したときでも、処理物の含水率が15%を越している場合には、更に発酵処理を続ける。
【0037】
発酵槽内には、好ましくは発酵促進剤として麦飯石の粉末を投入する。
【0038】
麦飯石の含有物は一例として下記の通りである。
【0039】
【表1】

【0040】
発酵槽には、好ましくは除湿機を備えさせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群をオカラに混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜72時間一次発酵させ、更に、これに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群を混合し、40℃〜200℃の温度にて24時間〜48時間二次発酵させることにより下水汚泥処理用の発酵資材を製造し、
処理すべき下水汚泥1000重量部を発酵槽内に投入し、これに水分調整材を加えて含水率を45〜55%となし、前記発酵資材1〜2重量部を加えて混合し、
続いて、発酵槽内の温度を60℃〜200℃に加温し、発酵槽内に空気を注入し、発酵槽内を連続的に攪拌することにより下水汚泥を発酵処理することを特徴とする下水汚泥の処理方法。
【請求項2】
前記発酵槽内に発酵促進剤として麦飯石の粉末を投入することを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項3】
前記発酵槽には除湿機を備えさせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の下水汚泥の処理方法。