説明

下水管と中継構造体との接続構造

【課題】地震等の地殻変動が生じた場合でも、下水管と中継構造体とを保護することができる下水管と中継構造体との接続構造を提供すること。
【解決手段】下水管52とマンホールや枡等の中継構造体50との接続構造であって、前記下水管52の底部内壁52aと前記中継構造体底部に形成された溝50bの表面とが面一となるように接続された下水管52と中継構造体50との接続構造10において、前記下水管52の端面52aが突き合わされた前記中継構造体底部50aの該突き合わせ部分近傍に、少なくとも前記下水管52の厚さよりも大きい深さを有する所定幅の隙間部12が形成されたことを特徴とする下水管と中継構造体との接続構造10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管とマンホールや枡等の中継構造体との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に地下に埋設される下水管には、ヒューム管、陶管、硬質塩化ビニル管等が広く使用されており、通常数mの管のピースが複数連結されて下水管路が形成され、マンホールや枡等の中継構造体と接続されている。図13及び図14は、下水管とマンホールとの一般的な接続構造を示している。図13に示したように、マンホール50は地盤100に直立状態で埋設されており、その最下部位置に流入側の下水道本管52と流出側の下水管54が連結されている。また、図14にはマンホール50の底部50aの内部形状が示されており、図示のように、底部50aには流入側の下水道本管52から流出側の下水管54へ向けて、水の流れを円滑にするための溝であるインバート50bが形成されている。
【0003】
インバート50bは、例えば、マンホール50の側壁に穿孔された流入口及び流出口を仮設管により仮接続した後、マンホール50の底にセメント等の硬化材料を流し込み、仮設管のほぼ半分の高さが埋まる程度まで流し込んだ後、硬化させ、仮設管を引き上げて除去することにより形成される。このような、インバート50bは、流入口から流出口にかけて下方に傾斜させて形成され、流入口から流れる下水は円滑に流出口に流下する。
【0004】
図15はマンホールと下水管との接続部を示す斜視図であり、図16はその詳細断面図である。下水道本管52のマンホール50側の端面52bは、その下部がマンホール50の底部50aと対向するように接触し、下水道本管52の底部内壁52aと、マンホール底部50aのインバート50bの表面とが面一となるように接続されている。
【0005】
下水管路は地中に埋設されているため、自然的もしくは人為的な地殻変動の影響を受けやすい。この管路が影響を受ける地殻変動としては、自然的なものとしては、地震や地盤沈下、特に管路周辺の地盤が不均等に沈下する不等沈下が挙げられる。また、人為的なものとしては、下水管路やマンホール上を通過する車両による車両加重が挙げられる。そして、例えば、地震が発生した場合、下水管に地震荷重が加わり下水管に変形やクラック等が生じる場合がある。
【0006】
このような地殻変動に対して耐震性を施した構造として、特許文献1に記載の下水管の耐震化構造が知られている(図17参照)。この下水管の耐震化構造は、マンホール50への取り付け部近傍において、下水管の内周面52aの全周に亘って、密閉用部材が充填された溝状の誘導メジ28を形成し、所定の厚みを有する可撓性材料で形成された環状シート部材30と、この環状シート部材30の内側から拡径するスリーブ32と、このスリーブ32の拡径状態を固定する固定部(図示せず)とを有する被覆体で、誘導メジ28が形成された位置において下水道本管52の内周面52aを被装するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−144229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の耐震化構造によれば、地殻変動発生時において、誘導メジ28によりクラック40を誘導させて誘導メジ28以外の箇所でのクラックの発生を防ぐことができる。そのため、曲げモーメント、せん断応力や引張力に対して耐震性を発揮することができ、下水道本管52の大きな変形や損傷を防止することができる。
【0009】
しかしながら、下水道本管52のマンホール50方向(図17の矢印200方向)への移動による荷重や衝撃に対しては十分に対応できず、その荷重や衝撃が加わった場合には、下水道本管52やマンホール50の側壁及び底部50aの破損が生じて、正常な流下機能が失われる恐れがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、地震等の地殻変動が生じた場合でも、下水管と中継構造体とを保護することができる下水管と中継構造体との接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するため、請求項1に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、下水管とマンホールや枡等の中継構造体との接続構造であって、前記下水管の底部内壁と前記中継構造体底部に形成された溝の表面とが面一となるように接続された下水管と中継構造体との接続構造において、前記下水管の端面が突き合わされた前記中継構造体底部の該突き合わせ部分近傍に、少なくとも前記下水管の厚さよりも大きい深さを有する所定幅の隙間部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、地震等の地殻変動が発生し、下水管がマンホールや枡等の中継構造体側に移動する方向の荷重や衝撃が加えられた場合でも、下水管は隙間部の空間分だけ中継構造体側に移動でき、中継構造体底部との直接衝突を回避することができる。したがって、衝突による応力の発生を防止することができ、下水管及び中継構造体の破損や変形を防止することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、請求項1に記載の下水管と中継構造体との接続構造であって、前記隙間部は、前記突き合わせ部分の前記下水管と対向する部分に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、下水管の端面が直接対向する中継構造体底部の部分に直接隙間部を形成することにより、地殻変動時に下水管がスムーズに隙間部の空間に移動することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、請求項1又は2に記載の接続構造において、前記隙間部に軟質材が充填されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、想定以上の地殻変動が発生し、下水管が中継構造体側に突き出した場合であっても、隙間部に充填された軟質材によって突出力が緩和されるので、下水管と中継構造体の直接衝突による変形や破壊を確実に回避することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載の接続構造において、前記隙間部を覆う被覆材が設けられたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、上記隙間部に異物が入ることによる下水の流れの阻害が防止され、支障なく下水を流下させることが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、請求項3又は4に記載の接続構造において、前記軟質材は、圧縮可能な弾性材であることを特徴とする。
【0020】
この構成にように圧縮可能な弾性体を充填すれば、下水管の突出力が大きくなるにつれて、弾性体による抵抗力が大きくなるため、下水管の突出力を緩やかに緩衝させることができ、突発的に荷重がかかることを回避することができる。
【0021】
請求項6に記載の下水管と中継構造体との接続構造は、請求項3〜5の何れか1項に記載の接続構造において、前記軟質材は、発泡樹脂であることを特徴とする。
【0022】
充填された軟質材が発泡樹脂の場合には、下水管が中継構造体方向に突き出しても、発泡樹脂は下水管が突き出した分だけ収縮するのみで、収縮した分だけ他の箇所で突出することがない。すなわち、軟質材として発泡樹脂は、緩衝作用を奏しつつ、下水管内部にはみ出すこともない。したがって、地殻変動が起きた後、下水管に圧迫された軟質材が下水管内部に突出することによってその軟質材が下水の流れの妨げになることが回避される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る下水管と中継構造体との接続構造によれば、地震等の地殻変動発生時において、下水管が中継構造体側へ移動する方向の荷重や衝撃が加えられた場合でも、下水管及び中継構造体の変形や破壊等を有効に防止することができ、下水管路の機能を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る接続構造を示す斜視図である。
【図2】図1の詳細断面図である。
【図3】隙間部の一例を示す断面図である。
【図4】隙間部の他の例を示す断面図である。
【図5】隙間部の一例を示すマンホール上方から見た説明図である。
【図6】隙間部の他の例を示すマンホール上方から見た説明図である。
【図7】被覆材を被覆した状態の斜視図である。
【図8】図7の詳細断面図である。
【図9】下水管が突き出した状態を示す断面図である。
【図10】本発明の接続構造の他の実施の形態を示す説明図である。
【図11】下水管に耐震化構造が設けられた断面図である。
【図12】図11の耐震化構造の詳細を示す説明図である。
【図13】一般的なマンホールと下水管との接続部を示す説明図である。
【図14】一般的なマンホールと下水管との接続部を示す斜視図である。
【図15】一般的なマンホール底部を示す斜視図である。
【図16】図15の断面図である。
【図17】従来の耐震化構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、中継構造体としてマンホールを例に示す実施の形態を説明するが、本発明は枡と取付管との接続構造にも適用することができる。
【0026】
図1は本実施の形態に係る下水道本管とマンホールとの接続構造を示す斜視図であり、図2はその断面図である。上述したように、一般に下水道本管52、54はマンホール50に接続されており、マンホール底部50aには下水を円滑に流下させるための溝であるインバート50bが形成されている。本実施の形態に係る下水管と中継構造体との接続構造10において特徴的なことは、下水道本管52の端面52bが対向するマンホール底部50aの部分に、少なくとも下水道本管52の厚さよりも大きい深さを有する所定幅の隙間部12が形成されていることである。
【0027】
隙間部12は、マンホール底部50aのインバート50bの端部が切削されて形成され、その幅Wは、下水道本管52がマンホール50側に突出する可能性のある長さだけあればよく、例えば、30mm以上、好ましくは40〜100mmである。地震等の地殻変動が発生した場合の下水管の突出長さ、すなわち、下水道本管52がマンホール50に対して相対的に移動する長さは、経験的に30〜80mm程度と知られており、隙間部12の幅が上記長さであれば、下水道本管52が隙間部12の空間に突き出され、マンホール底部50aとの直接衝突が回避される。
【0028】
隙間部12は、その深さDが少なくとも下水道本管52の厚さTよりも大きければよい。具体的には例えば、厚さが50mm下水道本管の場合には、50mm超100mm以下である。本実施の形態では、下水管12の厚さTよりも若干長い深さに切削されて隙間部12が形成されている。なお、本実施の形態では、下水道本管54側にも同様の構成の隙間部12が形成されている。
【0029】
隙間部12は、上述した幅Wと深さDを少なくとも有していればよくその形状は図3に示した円弧状でも、図4に示すように矩形状としてもよい。図5は本実施の形態の隙間部12を上方から見た説明図である。図示のように、本実施の形態では隙間部12はマンホール50の湾曲した内壁面50cに沿って湾曲させて切削されているが、図6に示すように、隙間部12のマンホール50中央側の端面12aは直線状に切削されていてもよい。
【0030】
このように中継構造体の底部50aの所定箇所に隙間部12を形成することにより、地震等の地殻変動によって、下水道本管52がマンホール50側に移動する方向の荷重や衝撃が加えられても、下水道本管52は隙間部12の空間に突出されるので、マンホール底部50aを構成するコンクリートに直接接触及び衝突することが回避される。したがって、下水道本管52及びマンホール底部50aへの応力発生を防止でき、下水道本管52及びマンホール底部50aの破損や変形、クラックの発生を防止することができる。
【0031】
図7は、他の実施の形態に係る下水管と中継構造体との接続構造を示す斜視図及び断面図であり、図8はその断面図である。本実施の形態では、隙間部12に軟質材14が充填され、その軟質材14の上には被覆材16が設けられている。軟質材14を隙間部12に充填することにより、地殻変動が発生した場合の下水道本管52の突出力を緩衝させることができ、想定以上に下水道本管52が突出しても、マンホール底部50aとの接触を回避することができる。軟質材14を充填する場合には、隙間部12の幅Wは、下水道本管52が突出する想定長さよりも長くすることが好ましい。
【0032】
軟質材14としては、適宜隙間部12の形状に成形した弾性体(ゴム、スポンジ、樹脂)や硬質発泡ウレタン材等が挙げられる。この中でも、圧縮可能な弾性体、例えばゴム等が好ましい。圧縮可能な弾性体を充填することにより、下水道本管52の突出力が大きくなるにつれて、弾性体による抵抗力が大きくなるため、下水道本管52の突出力を緩やかに緩衝させることができ、突発的に荷重がかかることを避けることができる。
【0033】
また、特に好ましい軟質材は、発泡ウレタン等の発泡樹脂である。発泡樹脂が軟質材として充填された場合、下水道本管52がマンホール50方向に突き出して、発泡樹脂を圧迫しても、発泡樹脂は収縮するのみで、下水道本管52内に押し出されない。したがって、地殻変動が起きた後、軟質材による緩衝作用を確保しつつ、下水道本管52内に軟質材が突出することによってその軟質材が下水の流れの妨げになることも回避される。
【0034】
また、被覆材16を設けることにより、隙間部12に棒状体等の異物が入り込んで送水が阻害されることが防止され、下水が滞りなく下流側に送られる。図示のように、被覆材16は、下水道本管内壁52a及びインバート52b表面と面一となるように設けられることが好ましい。これにより下水を円滑に流下させることができる。
【0035】
被覆材16は、軟質材14上にモルタルを流し込んで硬化させることにより形成することができる。また、ステンレス等の耐腐食性の高い金属板等も用いることができ、このような金属板は、耐水性を有する接着剤、例えばエポキシ樹脂等使用して当該個所に被覆することができる。なお、本実施の形態では被覆材16として金属板を使用した例を示している。被覆材16の厚さは例えば、1〜10mmであればよい。
【0036】
また、被覆材16が、図示しているように金属などの板状体で形成された場合、下水道本管52がマンホール50に突き出したときに、その固定状態が外れて下水の流れを阻害するなどの問題が生じないようにするため、下水道本管52によって押された時に、インバート52b表面上を横ずれする固定状態とすることも好適である。例えば、板状体の被覆材16に固定用の長穴を形成し、その長穴にボルト等の締結部材を通すことで止め、衝撃が加えられたときに、長穴の範囲で固定状態を維持しつつ横ずれする様にすることが可能である。
【0037】
図9は、本発明に係る接続構造10に、下水道本管52がマンホール50方向(矢印200方向)へ移動する荷重が加えられた場合の説明図である。図示のように、下水道本管52は隙間部12に突出するが、マンホール底部50aとの直接衝突は回避される。また、隙間部12に軟質材が充填されていれば突出力を軟質材によって緩衝させることができる。
【0038】
図10は、本発明に係る下水管と中継構造体との接続構造の他の実施の形態を示す断面図(a)及び上方からみた説明図(b)である。上述したように、本発明に係る接続構造は、隙間部12は、下水道本管52の端面52aが突き合わされたマンホール底部50aのその突き合わせ部分近傍に形成されていればよい。したがって、図示のように、下水道本管52の端面52bからマンホール50側に一定距離間隔を空けた位置に隙間部12を形成してもよい。このような場合であっても、地殻変動によって下水道本管52がマンホール50側に移動する荷重が加わった場合には、マンホール底部50aのコンクリート部分50a−1が破壊されて、隙間部12の空間分、下水道本管52がマンホール50側に突き出されることになり、衝撃が受け止められる。したがって、下水道本管52とマンホール50の大きな破損が防止され、下水管路の機能を維持することが可能となる。
【0039】
本発明に係る接続構造10は、下水道本管52がマンホール50へ移動する方向の荷重だけでなく、曲げモーメントや引張力あるいはせん断力等、あらゆる方向に対しての荷重に対応できるようにするため、下水道本管52のマンホール50への接続部近傍に更なる耐震化構造が設けられていてもよい。
【0040】
この耐震化構造は、図11の断面図及び図12の斜視図に示すように、下水道本管52のマンホール50との接続部近傍において、下水道本管52の内周面52aの全周に亘って、任意に使用する密閉用部材が充填された溝状の誘導メジ28を形成し、所定の厚みを有する可撓性材料で形成された環状シート部材30と、このシート部材30の内側から拡径するスリーブ32と、このスリーブ32の拡径状態を固定する固定部36とを有する被覆体34で、誘導メジ28が形成された位置において下水道本管52の内周面52aを被装するものである。具体的には以下のようにして形成することができる。
【0041】
まず、誘導メジ28に任意に密閉用部材を充填した後、被覆体の環状シート部材32を下水道本管52に搬入し、誘導メジ28がカバーされるように位置させる。環状シート部材30は、外側面の両端縁部30a、30bに全周に亘って突起部34を有しており、スリーブ32を、両突起部の間に誘導メジを位置させた状態の環状シート部材30の内側から拡径し、環状シート部材30を下水道本管52の内周面に押圧する。
【0042】
ここで、スリーブ32は、1枚の可撓性を有する板部材が環状となるように湾曲されて形成され、その端部同士が対向する部分32a、32b間に形成される隙間に挿入される楔状の固定部材38とで構成されている。なお、図12において挿入前の固定部材38は仮想線で、挿入後の固定部材38は実線で示している。スリーブ32を拡径するときは、スリーブ32の上記隙間に固定部材38をそのまま介在させることによりスリーブ32の拡径状態が維持される。
【0043】
本実施の形態では、スリーブ32は一枚の可撓性板部材が環状に湾曲されて形成された例を示しているが、これに限られず、複数枚、例えば3枚の板部材を周方向に並べて環状に形成する方法としてもよい。この場合には、形成される三か所の隙間にそれぞれ固定部材が挿入される。
【0044】
なお、誘導メジ28に充填する密閉用部材としては、合成樹脂等の充填材やゴムリングが挙げられる。また、誘導メジ28は、このような密閉用部材が存在しない状態であってもよい。スリーブ32の材質としては、例えばステンレスや樹脂(特に繊維強化プラスチック(FRP))等を用いることができ、環状シート部材30の材質としては例えばゴムやウレタン等が挙げられる。
【0045】
また、符号37で示した部材は当板部材であり、平板状の略長方形形状を有している。当板部材37は、端部32a、32bで形成される隙間において、その隙間から環状シート部材30がスリーブ32の内側にはみ出すのを防止等するものである。当板部材37は、スリーブ32と環状シート部材30との間に必要に応じて装着される。
【0046】
このような耐震化構造を施すことで次のような効果が生じる。誘導メジ28が設けられた位置において下水道本管52の厚さが薄くなっているので、その部分の強度は他の部分よりも弱められており、クラックは誘導メジ28が設けられた位置において下水道本管の厚さ方向に発生する。このクラックは、下水道本管に対してマンホールが動くことに起因して発生したものであるので、一旦、誘導メジ28の部位にクラックが発生すると、マンホール50側と下水道本管52側が切り離された状態となり、地震等の地殻変動にも、別々の動きが可能となるため、下水道本管52の他の部位でのクラックの発生は防止される。すなわち、誘導メジ28がクラックの発生を誘導したことになる。
【0047】
そして、誘導メジ28においてクラックが発生しても、被覆体34が誘導メジ28と誘導メジ28付近の下水道本管52の内周面52aを被覆している。すなわち、環状シート部材30が内周面52aをシールして、クラックが発生した下水道本管52を補修した状態となっている。したがって、クラックを介して下水管内部の流水が下水道本管52の外部に漏れ、或いは下水管の外部の地下水や土砂等が、下水管内部に浸入することを防止することができる。
【0048】
以上のように、本発明に係る下水管と中継構造体との接続構造は、下水管がマンホール等の中継構造体へ移動する方向の荷重だけでなく、曲げモーメントや引張力あるいはせん断力等、あらゆる方向に対しての荷重や衝撃に対して耐震性を発揮することができる。なお、本発明において、中継構造体とは、下水管路を一定距離毎に中継する地中に埋設されたマンホールや枡等の縦孔のことをいう。
【0049】
本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、インバートはコンクリートで形成された例を示しているが、これに限られず、マンホールの設置時に事前にプラスチックやコンクリート等で一体成形されたマンホール底部にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る下水管と中継構造体との接続構造によれば、既設管に簡易且つ安価な方法で耐震性を持たせることができ、地震等の地殻変動発生時の下水管路の機能の停止を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 下水管と中継構造体との接続構造
12 隙間部
14 軟質材
16 被覆材
28 誘導メジ
30 環状シート部材
32 スリーブ
34 突起部
36 固定部
37 当板部材
38 固定部材
50 マンホール
50a マンホール底部
50b インバート
52、54 下水道本管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水管とマンホールや枡等の中継構造体との接続構造であって、
前記下水管の底部内壁と前記中継構造体底部に形成された溝の表面とが面一となるように接続された下水管と中継構造体との接続構造において、
前記下水管の端面が突き合わされた前記中継構造体底部の該突き合わせ部分近傍に、少なくとも前記下水管の厚さよりも大きい深さを有する所定幅の隙間部が形成されたことを特徴とする下水管と中継構造体との接続構造。
【請求項2】
前記隙間部は、前記突き合わせ部分の前記下水管と対向する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の下水管と中継構造体との接続構造。
【請求項3】
前記隙間部に軟質材が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の下水管と中継構造体との接続構造。
【請求項4】
前記隙間部を覆う被覆材が設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の下水管と中継構造体との接続構造。
【請求項5】
前記軟質材は、圧縮可能な弾性材であることを特徴とする請求項3又は4に記載の下水管と中継構造体との接続構造。
【請求項6】
前記軟質材は、発泡樹脂であることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の下水管と中継構造体との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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