説明

下着

【課題】パッドからの漏れが生じた場合であっても、着用時の不快感を抑えることができる下着を提供する。
【解決手段】尿失禁者用ショーツ1では、クロッチ部3において、肌側布11の脇縁部11cに設けられた第1の脇布15が裏当布12の張出部分よりも広い幅を有している。そして、第1の脇布15の脇縁部15cが折り返された状態で肌側布11の脇縁部11cに縫着されることにより、肌側布11の脇縁部11cから肌側布11の中央側に向かって張り出すように装着面11dに対して隆起する隆起部17が形成されている。したがって、尿失禁者用ショーツ1では、パッドからの伝い漏れ等が発生した場合であっても、漏れた尿が隆起部17によって堰き止められて吸水性の肌側布11側に戻されるので、外衣が汚れることを防止でき、着用者の不快感を抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁時の尿や生理時の経血といった体液が外部に漏れるのを抑えるためのパッドを装着可能な下着に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の下着として、例えば特許文献1に記載の失禁用パンツがある。この失禁用パンツは、ラミネート生地、吸水性部材、吸収性生地、及びネット生地の積層体の周縁を撥水性テープで縫着してなるパッドを備えており、パッドの周縁を部分的にパンツ身生地に縫着した構造となっている。これにより、パッドに吸収された尿がパンツの身生地にはみ出ることを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第2535469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような下着では、漏れた直後の体液の外部への漏れはパッドによって抑えられるものの、パッドの吸水性部材に吸収された体液が時間の経過とともに縫着部分を伝って外側に漏れ出る、いわゆる伝え漏れが生じる場合がある。しかしながら、従来では、パッドが装着されるクロッチ部に防水機能のみが施されている場合が多く、パッドからの伝い漏れが発生すると、漏れた体液が下着側で吸収・保水されずに外衣を汚し、着用者の不快感を増大させてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、パッドからの漏れが生じた場合であっても、着用時の不快感を抑えることができる下着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る下着は、着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着可能なクロッチ部を備えた下着であって、クロッチ部は、パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、肌側布に対して縫着面又は装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、肌側布の脇縁部及び裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布と、を備え、裏当布の脇縁部は、肌側布の脇縁部から張り出す張出部分を有し、第1の脇布は、張出部分よりも広い幅を有し、第1の脇布の脇縁部が折り返された状態で肌側布の脇縁部に縫着されることにより、縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
この下着では、肌側布の脇縁部に設けられた第1の脇布が張出部分よりも広い幅を有し、第1の脇布の脇縁部が折り返された状態で肌側布の脇縁部に縫着されることにより、縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部が形成されている。したがって、パッドからの伝い漏れや飛び跳ねが発生した場合であっても、漏れたり飛び跳ねたりした体液が隆起部によって堰き止められて吸水性の肌側布側に戻されるので、外衣が汚れることを防止でき、着用者の不快感を抑えることが可能となる。また、第1の脇布の隆起部は、着用時の姿勢によっては横倒れする場合がある。しかしながら、横倒れが生じた場合には、隆起部が潰れる分だけ幅方向に広がり、肌側布の脇縁部の防水・撥水領域が広がるので、漏れた体液の堰き止め効果が担保される。
【0008】
また、隆起部の高さは、着用状態において着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最大となっていることが好ましい。パッドで受ける体液の量は、臀溝と鼠蹊溝とが連結される部分である鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最も多くなる傾向にある。したがって、隆起部の高さをこの位置で最大としておくことにより、パッドから漏れた体液を一層効果的に堰き止めることができる。この効果は、着用者が起立状態にある場合において特に有効である。なお、鼠蹊溝の最下部に相当する位置は、着用者の体型により異なるものである。そのため、全ての着用者において、着用状態における隆起部の高さを着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最大とすることは困難であるので、本願発明の下着においては、隆起部が最大高さとなる位置が、着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置及びその近傍に位置することを意図している。
【0009】
また、第1の脇布と裏当布との間には、撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第2の脇布が配置され、第2の脇布が肌側布の脇縁部と裏当布の脇縁部とに縫着されることにより、第1の脇布との間で袋部が形成されていることが好ましい。この場合、隆起部にかかる身体の荷重や、運動による形状変化に対する復元性が得られ、隙間が発生しにくくなる。
【0010】
また、第1の脇布の裏側面と第2の脇布の肌側面とは、共に防水性を有する面となっていることが好ましい。防水性を有する布同士は、互いに密着し易い性質を有している。このため、第1の脇布の裏側面と第2の脇布の肌側面とを共に防水性を有する面とすることで、袋部内に体液が入りにくくなると共に、袋部内で体液が広がりにくくなり、外衣が汚れることを一層確実に防止できる。
【0011】
また、第2の脇布の裏側面と裏当布の肌側面とは、共に防水性を有する面となっていることが好ましい。防水性を有する布同士は、互いに密着し易い性質を有している。これは、クロッチ周縁部で特に顕著である。このため、第2の脇布の裏側面と裏当布の肌側面とを共に防水性を有する面とすることで、第2の脇布と裏当布との間で体液が広がりにくくなり、外衣が汚れることを一層確実に防止できる。
【0012】
また、本発明に係る下着は、着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着されるクロッチ部を備えた下着であって、クロッチ部は、パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、肌側布に対して縫着面又は装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、肌側布の脇縁部及び裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布と、を備え、第1の脇布は、肌側布の脇縁部から中央に向かって張り出すように縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部を有していることを特徴としている。
【0013】
この下着では、肌側布の脇縁部に設けられた第1の脇布が、肌側布の脇縁部から中央に向かって張り出すように縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部を有している。したがって、パッドからの伝い漏れや飛び跳ねが発生した場合であっても、漏れた体液が隆起部によって堰き止められて吸水性の肌側布側に戻されるので、外衣が汚れることを防止でき、着用者の不快感を抑えることが可能となる。また、第1の脇布の隆起部は、着用時の姿勢によっては横倒れする場合がある。しかしながら、横倒れが生じた場合には、隆起部が潰れる分だけ幅方向に広がり、肌側布の脇縁部の防水・撥水領域が広がるので、着用時の姿勢が変化した場合であっても漏れた体液の堰き止め効果が担保される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パッドからの漏れが生じた場合であっても、着用時の不快感を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明に係る下着の一実施形態である尿失禁者用ショーツを示す正面図であり、(b)はその背面図である。
【図2】図1に示した尿失禁者用ショーツのクロッチ部を示す図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】変形例に係るクロッチ部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る下着の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、本発明に従って構成された下着の一実施形態である女性用の尿失禁者用ショーツを示す正面図であり、図1(b)はその背面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、この尿失禁者用ショーツ1は、ショーツ本体部2と、クロッチ部3とを備えている。
【0018】
ショーツ本体部2は、例えば綿・ナイロンを主体とする布地からなり、背面側の中央部分で左右が縫着されて前身頃及び後身頃を構成している。背面側の中央部分の肌側には、ストレッチ性のテープがクロッチ部中央から、臀部、ウエスト部にかけて縫着されている。これにより、尿によって重くなったパッドの保持と安定が生み出されるようになっている。また、ショーツ本体部2のウエスト部2aには、ストレッチレースが縫着されており、ずれ落ちにくくなっているが、ゴム通し穴も設けられている。また、ショーツ本体部2の左右の股刳り部2bには、伸縮性布4がそれぞれ配されている。これにより、着用時のフィット感が確保されている。
【0019】
次に、クロッチ部3について詳細に説明する。図2は、クロッチ部3を展開して示す平面図である。また、図3は、図2におけるIII−III線断面図であり、図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。図2及び図3に示すように、クロッチ部3は、肌側布11と、裏当布12と、前縁布13と、後縁布14と、第1の脇布15と、第2の脇布16とを備えて構成されている。
【0020】
肌側布11は、例えばポリエステルを主体とし、抗菌性及び防臭性を有する繊維が混織されたメッシュ状の布地により、クロッチ部3の展開形状に合わせて形成されている。すなわち、肌側布11は、着用者の股座に対応する長さ寸法及び幅寸法を有しており、恥骨側に当てられる前縁部11aは、凸状に湾曲して形成され、臀部側に当てられる後縁部11bは、前縁部11aよりも大きな径で凸状に湾曲して形成されている。また、肌側布11の脇縁部11c,11cは、それぞれ凹状に湾曲して形成されている。
【0021】
肌側布11の肌側面は、失禁時の尿が外部に漏れるのを抑えるパッド(不図示)が縫着される装着面11dとなっている。装着面11dには、肌側布11の外形に比べて一回り小さい寸法のパッドの取付領域Pが設定されている。取付領域Pの前縁部は、凸状に湾曲して形成され、後縁部は、前縁部よりも大きな径で凸状に湾曲して形成されている。また、取付領域Pの脇縁部は、それぞれ凹状に湾曲して形成されている。さらに、肌側面の前部には、用便時に装着したパッドが落下するのを防止する落下防止ゴムGが左右方向に配置されている。この落下防止ゴムGの両端部は、後述する隆起部17の下を通って肌側布11に縫着されている。
【0022】
裏当布12は、例えばポリエステル天竺ラミネートからなる布地によって肌側布11と略同形状に形成されている。裏当布12の肌側面12aには、例えばポリウレタンフィルムがラミネートされて防水性が付与されている。また、裏当布12の裏側面12bには、例えばグラビア撥水加工で撥水性が付与されている。この裏当布12は、肌側布11の上面に比べて一回り大きい寸法を有している。これにより、裏当布12の前縁部12c、後縁部12d、及び脇縁部12eは、肌側布11の前縁部11a、後縁部11b、及び脇縁部11cから張り出す張出部分となっている。
【0023】
前縁布13及び後縁布14は、裏当布12と同様の布地によって帯状に形成されている。前縁布13及び後縁布14の肌側面13a,14aには、例えばグラビア撥水加工で撥水性が付与されている。また、前縁布13及び後縁布14の裏側面13b,14bには、例えばポリウレタンフィルムがラミネートされて防水性が付与されている。
【0024】
前縁布13は、肌側布11の前縁部11aに沿って配置されている。図4に示すように、前縁布13における幅方向の一方の縁部13cは、裏側に折り返された状態で、撥水性の糸L1によって肌側布11の前縁部11aに縫着され、前縁布13における幅方向の他方の縁部13dは、撥水性の糸L2によって裏当布12の前縁部12cに縫着されている。また、後縁布14は、肌側布11の後縁部11bに沿って配置されている。後縁布14における幅方向の一方の縁部14cは、裏側に折り返された状態で、撥水性の糸L3によって肌側布11の後縁部11bに縫着され、後縁布14における幅方向の他方の縁部14dは、撥水性の糸L4によって裏当布12の後縁部12dに縫着されている。
【0025】
第1の脇布15は、裏当布12と同様の布地によって帯状に形成されている。第1の脇布15の肌側面15aには、例えばグラビア撥水加工で撥水性が付与されている。また、第1の脇布15の裏側面15bには、例えばポリウレタンフィルムがラミネートされて防水性が付与されている。
【0026】
第1の脇布15は、肌側布11の脇縁部11cに沿って配置されている。図3に示すように、第1の脇布15の一方の脇縁部15cは、裏側に折り返された状態で、撥水性の糸L5によって肌側布11の脇縁部11cに縫着されている。また、第1の脇布15の他方の脇縁部15dは、裏当布12の脇縁部12eと共に肌側に折り返された状態で、撥水性の糸L6によって裏当布12の脇縁部12eに縫着されている。
【0027】
ここで、第1の脇布15は、展開状態において、裏当布12における脇縁部12eの張出部分の幅よりも広い幅を有している。したがって、第1の脇布15の一方の脇縁部15cが裏側に折り返された状態で肌側布11の脇縁部11cに縫着されることにより、図3に示すように、肌側布11の脇縁部11cから中央側(肌側布11側)に向かって張り出すように装着面11dに対して隆起する隆起部17が形成されている。
【0028】
また、展開状態における第1の脇布15の幅は一様ではなく、前後の端部から中央部分に向かって徐々に幅が広くなるような略三日月状となっている。このため、第1の脇布15の幅と裏当布12の脇縁部12eの張出部分の幅との差は、脇縁部11c凹状に湾曲することによって肌側布11の幅が最も小さくなる位置、すなわち、着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置において最大となっている。
【0029】
したがって、第1の脇布15によって形成される隆起部17の高さは、図4に示すように、展開状態における第1の脇布15の幅に比例して、前後の端部から中央部分に向かって徐々に高くなっており、着用状態において、着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最大となっている。
【0030】
第2の脇布16は、第1の脇布15と同様の布地によって帯状に形成されている。第2の脇布16の肌側面16aには、例えばポリウレタンフィルムがラミネートされて防水性が付与されている。また、第2の脇布16の裏側面16bには、例えばポリウレタン撥水加工で撥水性が付与されている。
【0031】
第2の脇布16は、図3に示すように、肌側布11の脇縁部11cに沿って第1の脇布15の裏側に配置されている。第2の脇布16の一方の脇縁部16cは、肌側に折り返された状態で、肌側布11における脇縁部11cの裏側に当てられ、撥水性の糸L5によって第1の脇布15と共に肌側布11の脇縁部11cに縫着されている。また、第2の脇布16の他方の脇縁部16dは、裏当布12の脇縁部12e及び第1の脇布15の他方の脇縁部15dと共に肌側に折り返された状態で、撥水性の糸L6によって裏当布12の脇縁部12eに縫着されている。
【0032】
このような構成により、第2の脇布16は、肌側布11の脇縁部11cに沿って、第1の脇布15との間で袋部Sを形成している。袋部Sの内部では、第1の脇布15の裏側面15bが防水性を有し、かつ第2の脇布16の肌側面16aが防水性を有していることにより、防水性を有する面同士が対面した状態となっている。なお、上述した第1の脇布15の脇縁部15d、第2の脇布16の脇縁部16d、及び裏当布12の脇縁部12eは、撥水性の糸L6によってショーツ本体部2の左右の股刳り部2bに配された伸縮性布4に縫着されている。
【0033】
以上説明したように、尿失禁者用ショーツ1では、クロッチ部3において、肌側布11の脇縁部11cに設けられた第1の脇布15が裏当布12の張出部分よりも広い幅を有している。そして、第1の脇布15の脇縁部15cが折り返された状態で肌側布11の脇縁部11cに縫着されることにより、肌側布11の脇縁部11cから肌側布11の中央側に向かって張り出すように装着面11dに対して隆起する隆起部17が形成されている。
【0034】
したがって、この尿失禁者用ショーツ1では、パッドからの伝い漏れ、飛び跳ね、流れ落ちなどが発生した場合であっても、漏れた尿が隆起部17によって堰き止められて吸水性の肌側布11側に戻されるので、外衣が汚れることを防止でき、着用者の不快感を抑えることが可能となる。また、第1の脇布15の隆起部17は、着用時の姿勢によっては横倒れする場合がある。しかしながら、横倒れが生じた場合には、隆起部17が潰れる分だけ幅方向に広がり、肌側布11の脇縁部11cの防水・撥水領域が広がることとなるので、着用時の姿勢が変化した場合であっても漏れた尿の堰き止め効果が担保される。
【0035】
また、尿失禁者用ショーツ1では、隆起部17の高さが、着用状態において着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最大となっている。パッドで受ける尿の量は、鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最も多くなる傾向にある。したがって、隆起部17の高さをこの位置で最大としておくことにより、パッドから漏れた尿を一層効果的に堰き止めることができる。この効果は、着用者が起立状態にある場合において特に有効である。
【0036】
また、尿失禁者用ショーツ1では、第1の脇布15と裏当布12との間に第2の脇布16が配置され、第2の脇布16が肌側布11の脇縁部11cと裏当布12の脇縁部12eとに縫着されることにより、第1の脇布15との間で袋部Sが形成されている。これにより、身体運動、荷重により押さえつけられても、隆起部17の復元性が得られ、隙間が発生しにくくなる。
【0037】
また、袋部Sの内部では、第1の脇布15の裏側面15bが防水性を有し、かつ第2の脇布16の肌側面16aが防水性を有していることにより、防水性を有する面同士が対面した状態となっている。防水性を有する布同士は、互いに密着し易い性質を有している。このため、第1の脇布15の裏側面15bと第2の脇布16の肌側面16aとを共に防水性を有する面とすることで、袋部S内に尿が浸透しにくくなると共に、尿が広がりにくくなり、外衣が汚れることを一層確実に防止できる。
【0038】
さらに、肌側布11、裏当布12、前縁布13、後縁布14、第1の脇布15、及び第2の脇布16の縫着に用いる糸には、撥水性の糸L1〜L6がそれぞれ用いられている。したがって、縫着部分を介した尿の伝い漏れを抑制できる。特に、隆起部17を形成している肌側布11と第1の脇布15との縫着部分では、撥水性の糸L5が第1の脇布15の表側に露出しないようになっているので(図3参照)、伝え漏れの経路が効果的に遮断されている。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。図5は、変形例に係るクロッチ部23の要部断面図である。図5に示すように、このクロッチ部23では、第2の脇布16の一方の脇縁部16cは、裏側に折り返された状態で、第1の脇布15における脇縁部15cの裏側面15bに当てられ、撥水性の糸L5によって第1の脇布15と共に肌側布11の脇縁部11cに縫着されている。また、クロッチ部23では、図3の場合とは反対に、第2の脇布16の肌側面16aに撥水性が付与され、第2の脇布16の裏側面16bに防水性が付与されている。この場合、第2の脇布16と裏当布12における脇縁部12eの張出部分との間で、防水性を有する面同士が対面した状態となるので、第2の脇布16と裏当布12との間からの尿漏れの発生を抑制できる。
【0040】
なお、上記実施形態では女性用の尿失禁者用ショーツを例示したが、本発明は人体にフィットする種々の股付き衣類(例えばガードル、生理用ショーツ、ベビー用パンツ、トレーニングパンツなど)に適用できる。また、パッドの取り付け位置等を適宜変更することで、男性用の下着等にも適用できる。肌側布11、第1の脇布15、第2の脇布16、及び裏当布12の固定は縫着に限られず、接着等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1…尿失禁者用ショーツ(下着)、3,23…クロッチ部、11…肌側布、11c…脇縁部、11d…装着面、12…裏当布、12a…肌側面、12e…脇縁部、15…第1の脇布、15b…裏側面、15c…脇縁部、16…第2の脇布、16a…肌側面、17…隆起部、S…袋部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着可能なクロッチ部を備えた下着であって、
前記クロッチ部は、
前記パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、
前記肌側布に対して前記縫着面又は前記装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、
前記肌側布の脇縁部及び前記裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布と、を備え、
前記裏当布の脇縁部は、前記肌側布の脇縁部から張り出す張出部分を有し、
前記第1の脇布は、前記張出部分よりも広い幅を有し、前記第1の脇布の脇縁部が折り返された状態で前記肌側布の脇縁部に縫着されることにより、前記縫着面又は前記装着面に対して隆起する隆起部が形成されていることを特徴とする下着。
【請求項2】
前記隆起部の高さは、着用状態において着用者の鼠蹊溝の最下部に相当する位置で最大となっていることを特徴とする請求項1記載の下着。
【請求項3】
前記第1の脇布と前記裏当布との間には、撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第2の脇布が配置され、
前記第2の脇布が前記肌側布の脇縁部と前記裏当布の脇縁部とに縫着されることにより、前記第1の脇布との間で袋部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の下着。
【請求項4】
前記第1の脇布の裏側面と前記第2の脇布の肌側面とは、共に防水性を有する面となっていることを特徴とする請求項3記載の下着。
【請求項5】
前記第2の脇布の裏側面と前記裏当布の肌側面とは、共に防水性を有する面となっていることを特徴とする請求項3記載の下着。
【請求項6】
着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着可能なクロッチ部を備えた下着であって、
前記クロッチ部は、
前記パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、
前記肌側布に対して前記縫着面又は前記装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、
前記肌側布の脇縁部及び前記裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布と、を備え、
前記第1の脇布は、前記肌側布の脇縁部から中央に向かって張り出すように前記縫着面又は前記装着面に対して隆起する隆起部を有していることを特徴とする下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−261135(P2010−261135A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114973(P2009−114973)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】