説明

不定形組成物

【課題】耐火性、生体溶解性に優れる無機繊維を含む、実用特性を有する不定形組成物を提供する。
【解決手段】SiO66〜82重量%、CaO10〜34重量%、MgO3重量%以下、Al5重量%以下、SiO、CaO、MgO、Alの合計98重量%以上の組成を有する無機繊維と、金属イオンを含まないキレート剤とを含む不定形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、耐熱性無機繊維含有ハードボード加工品、モールド品の補修剤や接着剤の材料と使用される不定形組成物に関し、より具体的には、特定の生体溶解性無機繊維を含む不定形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不定形組成物は、ガラス繊維、グラスウール、セラミックウール、ロックウール、アルミナ質繊維、ジルコニア質繊維、シリカ・アルミナ質繊維等の無機繊維を、強化繊維として含有していた。不定形組成物は通常ペースト状であり、例えば、鏝塗り、スプレー塗り又は注入施工等により、タイル等の隙間に挿入され、目地を形成する。その際、不定形組成物に含有されている無機繊維は粉塵となって空気中に飛散し、作業者が該粉塵を吸入することとなる。無機繊維は、人に吸入されて肺に侵入すると健康被害が懸念されるため、現在、無機繊維として生体溶解性繊維を用いる不定形組成物が開発されている(例えば、特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306713号公報
【特許文献2】特開2006−282404号公報
【特許文献3】特開2005−281079号公報
【特許文献4】特表2002−524384号公報
【特許文献5】国際公開第2011/083696号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不定形組成物は、通常、製造後保管される。上述したように炉等に使用される成形品(対象成形品)の補修等に塗布されたり埋め込まれた後、乾燥する。その後、炉において高温に晒される。従って、保管時、設備等での施工時、施工後の乾燥時、さらに設備等の加熱時に、それぞれ異なる実用性能が求められる。
具体的には、保管時は、長期安定性を有することであり、施工時には、ちょう度(粘性)が適切であって塗り性に優れることであり、施工と乾燥時には、対象成形品との接着性や整えた形状が保持される成形性に優れることである。加熱時は、耐熱材としての機能、接着性を維持しつつ、対象成形品の性能に悪影響を示さないことである。
【0005】
本発明者らは、耐火性、生体溶解性に優れる新規な生体溶解性繊維を開発した(特願2011−59354)。本発明は、このような耐火性、生体溶解性に優れる無機繊維を含む、実用特性を有する不定形組成物を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の不定形組成物等が提供される。
1.以下の組成を有する無機繊維と、金属イオンを含まないキレート剤とを含む不定形組成物。
[無機繊維の組成]
SiO 66〜82重量%
CaO 10〜34重量%
MgO 3重量%以下
Al 5重量%以下
SiO、CaO、MgO、Alの合計 98重量%以上
2.コロイダルシリカを含む1記載の不定形組成物。
3.前記コロイダルシリカのpHが、8〜11である2記載の不定形組成物。
4.前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸・H・3(NH)又はエチレンジアミン四酢酸・H・2(NH)である1〜3のいずれか記載の不定形組成物。
5.不定形組成物中、無機繊維を10〜60重量%、コロイダルシリカを固形分で1〜60重量%、金属イオンを含まないキレート剤を0.01〜3.0重量%含む1〜4のいずれか記載の不定形組成物。
6.不定形組成物中、10〜80重量%の溶媒を含む1〜5のいずれか記載の不定形組成物。
7.1〜6のいずれか記載の不定形組成物が乾燥した成形物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐火性、生体溶解性に優れる無機繊維を含む、実用特性を有する不定形組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の不定形組成物は、強化繊維として耐火性、生体溶解性に優れる特定の無機繊維を含む。さらに、保存中の固化を防ぐために、金属イオンを含まないキレート剤を含む。
具体的には、本発明の組成物は、以下の組成を有する無機繊維を含む。
SiO 66〜82重量%
CaO 10〜34重量%
MgO 3重量%以下
Al 5重量%以下
SiO、CaO、MgO、Alの合計 98重量%以上
【0009】
生体溶解性繊維は、MgOを多く含むMgシリケート繊維と、CaOを多く含むCaシリケート繊維に大別できるが、本発明では、Caシリケート繊維を用いる。生体溶解性繊維は水に溶けやすいため、通常不定形組成物に含まれる水に溶解し、含有成分が溶出する。それが組成物中の他の成分や、塗布される対象成形品等と反応し不都合をもたらす恐れがある。従って、水に溶けにくいセラミックス繊維を含む組成物は生体溶解性繊維を含む組成物と異なる挙動を示す場合があり、また、生体溶解性繊維の中でも、Mgシリケート繊維を含む組成物とCaシリケート繊維を含む組成物は溶出する成分の種類や量が異なるため、異なる挙動を示す場合がある。
【0010】
不定形組成物に、Mgシリケート繊維を用いるときは、必要な強度を確保するために、バインダーとして有機繊維を添加するが、Caシリケート繊維は有機繊維の添加は必要ではない。また、Mgシリケート繊維を用いるときは、pH調整剤の添加が必要である。pH調整剤を添加しないと、保管中に固化する恐れがあり、乾燥収縮が大きくなる。しかし、Caシリケート繊維の場合は、Mgシリケート繊維と同様な添加してもよいし、しなくてもよい。
【0011】
Caシリケート繊維として以下の組成を例示できる。以下の組成の繊維は加熱後の生体溶解性、耐火性に優れる。このような繊維を特定のキレート剤を含まない不定形組成物に用いると、製造直後は良好に使用できても、長期保管後には不定形組成物が固化してくるため、施工・乾燥後対象成形品との接着が弱まり剥がれてしまう、また補修しにくいが、本発明のように特定のキレート剤を含む不定形組成物は剥がれ難く、さらには補修しやすい。
SiO 66〜82重量%(例えば、68〜80重量%、70〜80重量%、71〜80重量%又は71〜76重量%とできる)
CaO 10〜34重量%(例えば、20〜30重量%又は21〜26重量%とできる)
MgO 3重量%以下(例えば、1重量%以下とできる)
Al 5重量%以下(例えば3.5重量%以下又は3重量%以下とできる。また、1重量%以上又は2重量%以上とできる)
他の酸化物 2重量%未満
【0012】
SiOが上記範囲であると耐熱性に優れる。CaOとMgOが上記範囲であると加熱前後の生体溶解性に優れる。
【0013】
Al含有量は、例えば、3.4重量%以下又は3.0重量%以下とできる。また、1.1重量%以上又は2.0重量%以上とできる。好ましくは0〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%である。この範囲でAlを含むと強度が高くなる。
【0014】
上記の無機繊維は、他の酸化物として、アルカリ金属酸化物(KO、NaO等)、Fe、ZrO、P、B、TiO、MnO、R(RはSc,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y又はこれらの混合物から選択される)等を1以上含んでもよく、含まなくてもよい。他の酸化物は、それぞれ、0.2重量%以下又は0.1重量%以下としてよい。アルカリ金属酸化物は各酸化物を0.2重量%以下としてもよく、アルカリ金属酸化物の合計を0.2重量%以下としてもよい。
【0015】
また、SiO、CaO、MgO、Alの合計を98重量%超又は99重量%超としてよい。
【0016】
生体溶解性無機繊維は、例えば、40℃における生理食塩水溶解率が1%以上の無機繊維である。
生理食塩水溶解率は、例えば、次のようにして測定される。すなわち、先ず、無機繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転の水平振動を50時間継続して加える。その後、ろ過により得られた濾液に含有されている各元素の濃度(mg/L)をICP発光分析装置により測定する。そして、測定された各元素の濃度と、溶解前の無機繊維における各元素の含有量(重量%)と、に基づいて、生理食塩水溶解率(%)を算出する。すなわち、例えば、測定元素が、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)である場合には、次の式により、生理食塩水溶解率C(%)を算出する;C(%)=[ろ液量(L)×(a1+a2+a3+a4)×100]/[溶解前の無機繊維の重量(mg)×(b1+b2+b3+b4)/100]。この式において、a1、a2、a3及びa4は、それぞれ測定されたケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの濃度(mg/L)であり、b1、b2、b3及びb4は、それぞれ溶解前の無機繊維におけるケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの含有量(重量%)である。
【0017】
無機繊維は、強度の観点から、平均繊維径は通常1〜50μm、好ましくは2〜10μm、特に好ましくは2〜5μmであり、平均繊維長は通常1〜200mm、好ましくは2〜50mmである。
【0018】
無機繊維の表面は被覆層で被覆されていてもいなくてもよい。被覆層は、水に難溶であり、且つ前述の如く生理食塩水には溶け易いものである。無機繊維の表面に被覆層を形成することで、保存期間中、無機繊維の溶液中への溶解は抑制される。
【0019】
無機繊維の表面に被覆層を形成する物質としては、リン酸塩、モリブデン化合物、ポリアミジン化合物、エチレンイミン化合物等が挙げられる。
リン酸塩としては、トリポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸ニ水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等が挙げられる。モリブデン化合物としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム等が挙げられる。ポリアミジン化合物としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルアクリルアミジン塩酸塩、N−ビニルアクリルアミド、ビニルアミン塩酸塩、N−ビニルホルムアミド共重合体等が挙げられる。エチレンイミン化合物としては、アミノエチレン、ジメチレンイミン等が挙げられる。これら被覆層を形成する物質は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
無機繊維を、不定形組成物中、10〜60重量%含むことが好ましく、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。60重量%超であると無機バインダーの量が低下するため接着力が低下する恐れがある。10重量%未満であると成形性が低下する恐れがある。
【0021】
無機バインダーとしてコロイダルシリカを含むことができる。コロイダルシリカのpHは8以上が好ましく、9〜11がより好ましい。8未満であると選択された増粘剤の種類によっては適度の粘度を有するペーストにならない恐れがある。
【0022】
コロイダルシリカを、不定形組成物を100重量%とした場合、固形分として1〜60重量%含むことが好ましく、さらに好ましくは6〜42.5重量%、さらに好ましくは8〜42.5重量%、さらに好ましくは10〜42.5重量%、さらに好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。42.5重量%超であると繊維の補強効果が低下し乾燥収縮率が大きくなる、又は成形性が低下する恐れがある。6重量%未満であると繊維の結合強度や接着性が低下する恐れがある。
【0023】
本発明では、アルカリ土類金属やアルカリ金属等の金属イオンを含まないキレート剤を用いる。このようなキレート剤を用いることにより、保管中の固化を防ぐことができる。
キレート剤の例として、金属イオンを含まない、EDTA(エチレンジアミン四酢酸(Ethylene Diamine Tetraacetic Acid))・H・3(NH)の組成のキレート剤、EDTA・H・2(NH)の組成のキレート剤等が挙げられる。本発明では、キレート剤が無機繊維から溶出するアルカリ土類金属を捕獲し同時に保護層を形成することにより、アルカリ土類金属によりもたらされる保管中の悪影響を防ぐことができると推察される。キレート剤は電子供与基が2以上あるので金属キレート化合物を生成できる。電子供与基には、カルボキシ基、水酸基等がある。
【0024】
キレート剤を、不定形組成物中、0.01〜3.0重量%含むことが好ましく、0.02〜2.5重量%含むことが好ましく、0.05〜1.5重量%含むことが好ましく、さらに0.1〜1.0重量%含むことがより好ましい。量が多すぎと不定形組成物が固化する恐れがある。量が少なすぎても不定形組成物が固化する恐れがある。
【0025】
本発明の組成物は通常溶媒を含む。溶媒としては、特に制限されないが、水及び極性有機溶媒が挙げられ、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類が挙げられる。これらのうち、水が、作業環境の悪化がなく、環境への負荷がない点で好ましい。また、水としては特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等が挙げられる。
【0026】
溶媒の含有量は、不定形組成物を100重量%としたとき、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましくは15〜68重量%であり、より好ましくは20〜68重量%であり、さらに好ましくは25〜68重量%である。含有量が少なすぎると流動性が低くなるので施工性が悪くなり、また、機械的強度、特に曲げ強度が低下する。また、含有量が多すぎると不定形組成物のちょう度が高くなるので施工時に組成物がたれ、また、乾燥による収縮が大きくなる。
また、溶媒は、溶媒として独立して添加してもよいし、材料中に含有される溶媒として材料と共に添加してもよい(例えばコロイダルシリカ)。溶媒の量は、独立して添加した量と材料中に含まれる量を合わせた量である。溶媒量を少なくして溶媒をコロイダルシリカに含まれる溶媒だけとすることができる。
【0027】
本発明の組成物は、添加剤として、バインダー、増粘剤、分散剤、防腐剤、pH調整剤等を含むことができる。
【0028】
無機バインダーとして、コロイダルシリカの他、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、リン酸アルミニウム等が挙げられる。有機バインダーとして、有機繊維、アクリルエマルジョン、澱粉等が挙げられる。
【0029】
有機繊維は無機繊維の保護膜として作用する。有機繊維としては、特に制限されず、天然繊維又は疎水処理された合成繊維のいずれであってもよく、天然繊維としては、パルプ、綿、麻等が挙げられ、合成繊維としては、ビニロン、レーヨン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。これらのうち、パルプが、無機繊維を取り込み易い点で好ましい。有機繊維の平均繊維径は、通常1〜30μm、好ましくは2〜10μm、特に好ましくは2〜5μmである。平均繊維径が、1μm未満だと目地の強度が低くなり、また、30μmを超えると無機繊維を取り込み難くなる。有機繊維の含有量は、無機繊維100重量部に対して、5〜50重量部が好ましい。
【0030】
有機繊維及び無機繊維共に、ある程度の疎水性を持たせることが、有機繊維及び無機繊維を水中に投入した際、急激に沈むことなく、ある程度の時間浮遊することになり、互いのあるいは他の混合材料との混合性がよくなる点で好ましい。疎水処理とは、繊維の疎水性を向上させる処理のことを指し、疎水処理の方法としては、例えば、繊維の周りを疎水性の薬剤でコーティングする方法が挙げられる。
【0031】
増粘剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸ナトリウム重合物、ポリエーテルポリオール、アクリル系重合高分子ポリエステルアミン、エチレンオキサイド等が挙げられる。また、非イオン性増粘剤を用いることができる。増粘剤の含有量は、特に制限されないが、不定形組成物中に0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
【0032】
分散剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。具体的には、カルボン酸類、多価アルコール、アミン類等が挙げられる。分散剤の含有量は、特に制限されないが、不定形組成物100重量%に対して0.01〜3重量%が好ましい。
【0033】
防腐剤としては、特に制限されないが、例えば、窒素原子又は硫黄原子を有する無機化合物又は有機化合物等が挙げられる。防腐剤の含有量は、特に制限されないが、不定形組成物100重量%に対して0.01〜3重量%が好ましい。
【0034】
本発明の組成物が、pH調整剤を含んでいると、無機繊維の溶液への溶解を更に抑制することができ好ましい。pH調整剤としては、例えば緩衝溶液又は酸が挙げられる。緩衝溶液としては、pH4標準溶液であるフタール酸塩標準溶液(セーレンセン緩衝液)、pH7標準溶液である中性リン酸塩標準溶液が挙げられ、酸としては、酢酸、蟻酸等が挙げられる。pHは4〜8.5程度が好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、無機粉体を含んでもよいし、含まなくてもよい。原料として添加して組成物を製造してもよいし、組成物を得た後から添加してもよい。
無機粉体としては、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコン、ジルコニア、カオリン、粘土鉱物、チタニア、カルシア、マグネシアから選択される1種または2種以上(混合物)を用いることができる。
【0036】
本発明に係る不定形組成物は、各成分を混合・撹拌して製造できる。本発明に係る成形体は、不定形組成物を成形し乾燥/加熱して得ることができる。本発明の組成物はペースト状(漆喰)であるため、こてで塗ったり、手で固めたり、圧力銃で散布できる。
【0037】
本発明の不定形組成物は、長期に保管しても固化し難い。また、適度なちょう度を有し欠損した対象成形品等に塗り易く、塗って乾燥した後は、接着性に優れる。また、加熱の際も、対象成形品の性能に悪影響を及ぼし難い。
【実施例】
【0038】
実施例1
[不定形組成物の製造]
以下を混合撹拌して不定形組成物を製造した。
SiOを73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Alを2重量%含む無機繊維A 23.9重量%
コロイダルシリカ(スノーテックス30、日産化学工業社製、pH9〜11、固形分が30%の懸濁液) 75.8重量%(22.7重量%(固形分量)、53.1重量%(溶媒量))
EDTA2アンモニウム塩(金属イオンを含まないキレート剤)(キレスト社製) 0.5重量%
増粘剤(hiメトローズ、信越化学工業社製) 0.8重量%
尚、重量%は組成物全体を100重量%としたときの量である。
【0039】
[不定形組成物の評価]
以下について評価した。結果を表1に示す。表中×は固化したこと又は固化したため測定できなかったことを表わす。
(1)ちょう度
製造直後(初期)及び一定期間室温で保管した後の不定形組成物のちょう度をちょう度計により測定した。
【0040】
(2)曲げ強度
製造直後(初期)及び一定期間室温で保管した後の不定形組成物を、所定の型に詰め形状を整えてから、約100℃で乾燥又は室温放置にて自然乾燥した。乾燥したサンプルを所定サイズに切断加工し、これについて曲げ強度を万能試験機により測定した。
【0041】
(3)加熱収縮率
製造直後(初期)及び一定期間室温で保管した後の不定形組成物を、所定の型に詰め形状を整えてから、約100℃で乾燥又は室温放置にて自然乾燥した。乾燥したサンプルを所定サイズに切断加工し、これについて1100℃で24時間加熱して辺または長手方向の加熱収縮率を測定した。
【0042】
(4)施工性
製造直後(初期)及び一定期間室温で保管した後の不定形組成物を、対象成形品に塗布して、接着性、塗り性、成形性を評価した。全てに問題が無ければ○とした。
【0043】
(5)加熱反応性
製造直後(初期)及び一定期間室温で保管した後の不定形組成物を、対象成形品に塗布した後、1300℃で24時間加熱した。接着のはがれ、不定形組成物と対象成形品が溶融反応し形状が変形しなければ○とした。
【0044】
実施例2,3,比較例1〜5
表1に示す成分と組成で、実施例1と同様にして不定形組成物を製造し評価した。尚、表中のコロイダルシリカの量は固形分量である。結果を表1に示す。
【0045】
表中、セラミック繊維は、シリカを40〜60重量%、アルミナを60〜40重量%含む繊維である。
NTAは、NTA(Nitrilo Triacetic Acid)・3Na・HO、NTBは、NTA・H・2Naである。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例1,5の結果から、セラミック繊維を含む組成物は、金属イオンを含まないキレート剤を含まなくても、実用可能であるが、無機繊維Aを含む組成物は、金属イオンを含まないキレート剤を含まなければ、使用できないことが分かる。
また、比較例2,3,4から、金属イオンを含むキレート剤又はクエン酸では本発明の効果を奏することができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の不定形組成物は、無機繊維含有ハードボード加工品、モールド品の補修剤や接着剤の材料と使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成を有する無機繊維と、金属イオンを含まないキレート剤とを含む不定形組成物。
[無機繊維の組成]
SiO 66〜82重量%
CaO 10〜34重量%
MgO 3重量%以下
Al 5重量%以下
SiO、CaO、MgO、Alの合計 98重量%以上
【請求項2】
コロイダルシリカを含む請求項1記載の不定形組成物。
【請求項3】
前記コロイダルシリカのpHが、8〜11である請求項2記載の不定形組成物。
【請求項4】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸・H・3(NH)又はエチレンジアミン四酢酸・H・2(NH)である請求項1〜3のいずれか記載の不定形組成物。
【請求項5】
不定形組成物中、無機繊維を10〜60重量%、コロイダルシリカを固形分で1〜60重量%、金属イオンを含まないキレート剤を0.01〜3.0重量%含む請求項1〜4のいずれか記載の不定形組成物。
【請求項6】
不定形組成物中、10〜80重量%の溶媒を含む請求項1〜5のいずれか記載の不定形組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の不定形組成物が乾燥した成形物。

【公開番号】特開2013−112601(P2013−112601A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263413(P2011−263413)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【特許番号】特許第5022513号(P5022513)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】