不平衡補償装置と方法、電力供給回路
【課題】 負荷電流の増減に応じて不平衡を補償可能であり、しかも、過負荷にも強く、高調波を発生しない、価格や設置スペースの観点からも有利な不平衡補償装置とその方法、電力供給回路を提供する。
【解決手段】 電源1より電源インピーダンス2を介して単相負荷3に電力を供給する。単相負荷3による不平衡を補償するために、単相負荷3と並列に不平衡補償装置4が接続される。不平衡補償装置4は、デルタスター結線した変圧器5、励磁電流補償用コンデンサ6、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72、LC回路8、から構成される。回転型位相調整機(RPS)71,72は、固定子711,721と回転子712,722、駆動装置と制御装置を有する。回転子の回転位相を調整することにより、補償電流を調整する。
【解決手段】 電源1より電源インピーダンス2を介して単相負荷3に電力を供給する。単相負荷3による不平衡を補償するために、単相負荷3と並列に不平衡補償装置4が接続される。不平衡補償装置4は、デルタスター結線した変圧器5、励磁電流補償用コンデンサ6、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72、LC回路8、から構成される。回転型位相調整機(RPS)71,72は、固定子711,721と回転子712,722、駆動装置と制御装置を有する。回転子の回転位相を調整することにより、補償電流を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路の負荷による不平衡電流を補償するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、3相回路とすることで、設備を効率よく利用できるようになっているが、3相の負荷電流の不平衡が大きくなると、設備の利用率が低下したり、近接する発電機に逆相電流が流れ込むなどの不具合を生じる。そこで、例えば、交流電気鉄道においては、3相電力系統から大容量かつ不平衡が顕著である単相電力を受電する際の電力系統側の不平衡を低減するために、スコット結線変圧器が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、スコット結線変圧器は、M座、T座両変圧器の2次側にそれぞれ負荷容量と力率とが同一である単相負荷を接続した場合にのみ3相側の電流が平衡するため、M座、T座両変圧器の負荷がアンバランスな場合には、3相側に不平衡分が残ってしまう。また、本質的に3相−2相変換用の変圧器であるため、そのM座変圧器およびT座変圧器の2次電圧は互いに90°の位相差を有しており、これらM座、T座変圧器の2次巻線を直列接続しても単相3線方式として利用することができない。このように、スコット結線変圧器は、3相不平衡の充分な低減には負荷条件の制約が生じ、また、3相回路と単相回路とを連結する電気回路としては使いづらい面がある。
【0004】
一方、3相回路と単相回路とを連結する回路として、スタインメッツ回路と称される構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスタインメッツ回路は、相順がUVWである3相電源のU相−V相間にコンデンサを接続し、V相−W相間にリアクトルを接続し、W相−U相間に抵抗負荷を接続した回路構成を有している。そして、上記コンデンサおよびリアクトルのインピーダンスを抵抗のインピーダンスに応じた適切な値に設定することにより、3相回路に流れる相電流を平衡電流とすることができる。
【0005】
しかし、負荷(抵抗のインピーダンス)が変動する場合には、それに応じてコンデンサやリアクトルのインピーダンスを調整する必要があるため、これらを可変にするためにサイリスタ制御を用いる方式や、GTOなどの自己消弧素子で構成される自励式インバータを用いるなどの方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
一方、従来、電力系統において電力調整を行うための装置として、固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する回転型位相調整機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−104930公報
【特許文献2】特開2002−335631公報
【非特許文献1】「電気鉄道工学」、持永芳文著、エース出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上のような従来の不平衡補償方法の場合、サイリスタや自励式インバータなどに使われる自己消弧素子は、高速性などの制御性能は高い反面、過負荷の耐量は弱い。したがって、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、負荷の最大電流に応じて不平衡補償装置の定格容量を決定する必要がある。その結果、装置容量が無駄に大きくなる傾向にあり、このことは、電力を安価に供給するための阻害要因となっている。また、自己消弧素子は、スイッチングにより制御を行っているために、高調波が発生する。したがって、高調波を低減するために別途、高調波抑制用の高調波フィルタを設ける必要があるなど、価格や設置スペースの観点からも改善が望まれる点があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、負荷電流の増減に応じて不平衡を補償可能であり、しかも、過負荷にも強く、高調波を発生しない、価格や設置スペースの観点からも有利な不平衡補償装置とその方法、電力供給回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような目的を達成するために、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を使用して、回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整して、負荷による不平衡電流を補償できるようにしたものである。また、回転型位相調整機は、短時間の過負荷には耐えうるものであり、また、スイッチングによる調整ではないため、高調波を発生することもなく、価格や設置スペースの観点からも有利である。
【0011】
すなわち、本発明の不平衡補償装置は、電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路に接続され、負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償装置において、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を備えたことを特徴としている。ここで、2個の回転型位相調整機は、それぞれ、固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する。また、LC回路は、回転型位相調整機に接続されたコンデンサおよびリアクトルから構成される。この不平衡補償装置は、2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整するように構成されている。
【0012】
また、本発明の不平衡補償方法と電力供給回路は、上記の不平衡補償装置の特徴を、方法の観点、および不平衡補償装置を備えた回路の観点、からそれぞれ把握したものである。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、負荷による不平衡電流が顕著で、かつ大きさが変動しても、回転型位相調整機の回転位相の調整により、不平衡を補償する電流を発生させることができる。また、回転型位相調整機は、巻線型の誘導電動機と類似の構造であり、短時間の過負荷には耐えうる性質を有しているため、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、過負荷の耐量を考慮した不平衡補償装置の設計を行うことにより、回転型位相調整機の容量を無駄に大きくする必要なく、安価に提供できる。また、調整のためにスイッチングを行うものでないため、高調波を発生せず、高調波抑制用のフィルタも不要である。この点も価格や設置スペースの点で有利となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を使用して、回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整して、負荷電流の増減に応じて不平衡を補償可能であり、しかも、過負荷にも強く、高調波を発生しない、価格や設置スペースの観点からも有利な不平衡補償装置とその方法、電力供給回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下には、本発明を適用した複数の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
[構成]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図1の電力供給回路においては、電源1より電源インピーダンス2を介して単相負荷3に電力を供給しているものとする。この単相負荷3による不平衡を補償するために、単相負荷3と並列に不平衡補償装置4が接続されている。
【0017】
不平衡補償装置4は、デルタスター結線した変圧器5、励磁電流補償用コンデンサ6、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72、LC回路8、から構成されている。ここで、回転型位相調整機(RPS)71,72は、固定子711,721および回転子712,722をそれぞれ有し、かつ、図示していないが、回転子712,722と同軸上に機械的に接続された駆動装置およびその制御装置を有しており、回転子712,722の位相角を調整できるようになっている。その結果、回転子712,722の回転位相に応じて、回転子712,722側の巻線に発生させる電圧の位相を調整できる。
【0018】
なお、このような構成の回転型位相調整機(RPS)71,72は、既存の構成である(例えば、特許文献2参照)。また、LC回路8は、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転子712,722間に接続されており、コンデンサ81とリアクトル82から構成されている。
【0019】
[作用]
以下には、図2〜図5を参照して、本実施形態の不平衡補償装置4による不平衡補償の作用について説明する。
【0020】
[不平衡補償の基本原理]
図2は、単相負荷を3相平衡化する不平衡補償の原理を説明するための原理図である。この図2に示す不平衡補償の原理は、従来方法と同様であるが、本発明による不平衡補償装置4の作用を説明するため、便宜上説明する。
【0021】
まず、図2に示す不平衡補償の原理図において、単相負荷3で消費する負荷電流IRは力率1とする。負荷電流IRに対して不平衡補償装置4で発生する補償電流ICと補償電流ILの大きさが1/√3となるようにコンデンサ(C)41とリアクトル(L)42のインピーダンスを決める。図3は、この場合の各部の電圧、電流を示すベクトル図である。
【0022】
図3に破線で示すように、負荷電流IRは、抵抗負荷でW相とU相の線間に接続されているので線間電圧VW−VUに同位相となり、補償電流ILは、誘導性負荷でV相とW相の線間に接続されているのでVV−VWに90度遅れとなり、補償電流ICは、容量性負荷でU相とV相の線間に接続されているのでVU−VVに90度進みとなる。
【0023】
この場合、それぞれの電流は、次の式(1)で表される。なお、この式(1)においては、負荷電流IRを大きさ1として相対表示している。
【数1】
【0024】
次に、電源インピーダンス2に流れる電源側の3相の電流IU〜IWは次の式(2)で表される。
【数2】
【0025】
すなわち、電源インピーダンス2に流れる電源側の3相の電流IU〜IWは、いずれも、単相負荷電流IRに対して、大きさが1/√3で力率1の正相電流となる。図3においては、これらの電流IU〜IWを、太い実線で示している。
【0026】
[回転型位相調整機による補償電流の調整]
本実施形態の不平衡補償装置4においては、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相を調整することにより、補償電流ICと補償電流ILを調整することができる。以下には、このような補償電流の調整について説明する。
【0027】
まず、図1において、励磁電流補償用コンデンサ6は、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72における合計の励磁電流をキャンセルするものである。この励磁電流補償用コンデンサ6により、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72は、励磁電流を補償されているものとし、この部分の説明は省略する。
【0028】
次に、第1の回転型位相調整機(RPS)71の回転位相(1次側に対する2次側の位相)をθ1、第2の回転型位相調整機(RPS)72の回転位相をθ2とする。両者の1次電圧VU,VV,VWに対して両者の位相θ1,θ2を図4のように設定すると、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側の電圧差は、図4の(A),(B)に示すように、1次電圧と同相であり、電圧差の大きさは、回転位相θ1,θ2に応じて大小に調整することができる。
【0029】
ここで、回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側には、図1に示すように、U相にはコンデンサ81が、V相にはリアクトル82がそれぞれ接続されており、図4に示す2次側の電圧差がこれらの端子間に印加される。その結果、U相には電圧差より90°進んだ電流が、V相には電圧差より90°遅れた電流がそれぞれ流れる。また、W相は開放されており、電流が流れない。
【0030】
2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の1次側電流は合成されて、変圧器5を介して電源側に接続される。この場合、変圧器5はデルタスター結線されているため、回転型位相調整機(RPS)71,72が接続されるスター結線側のU相電流は電源側のUV相間に、スター結線側のV相電流は電源側のVW相間に、それぞれ注入されることになる。これは、図2、図3について説明した不平衡補償の原理に対応する。
【0031】
すなわち、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整により、回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側の電圧差を調整できることになり、その結果として、補償電流IC,ILの大きさを、前記(1)式の関係を満たすよう調整できることになる。図5は、このような回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2と2次側の電圧差の関係を示すグラフである。
【0032】
[効果]
以上のような本実施形態の不平衡補償装置4によれば、次のような効果が得られる。
【0033】
まず、単相負荷3による不平衡が顕著で、かつ大きさが変動しても、回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整により、不平衡を補償する補償電流IC,ILを発生させることができる。
【0034】
また、回転型位相調整機(RPS)71,72は、巻線型の誘導電動機と類似の構造であり、短時間の過負荷には耐えうる性質を有している。したがって、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、過負荷の耐量を考慮した不平衡補償装置の設計を行うことにより、回転型位相調整機(RPS)71,72の容量を無駄に大きくする必要なく、安価に提供できる。また、調整のためにスイッチングを行うものでないため、高調波を発生せず、高調波抑制用のフィルタも不要である。この点も価格や設置スペースの点で有利となる。
【0035】
なお、交流電気鉄道などでは、単相負荷3が単純な抵抗負荷でなく、回生となる場合がある。このような場合には、負荷電流の位相が180度反転することから、LC回路8のコンデンサ81とリアクトル82を入れ替えることによって、補償電流も180度反転するので、不平衡を補償するという意味では、単相負荷3が単純な抵抗負荷である場合と同一の作用、効果を得ることができる。
【0036】
[補償電流基準の算出方法]
図6は、第1の実施形態の補足説明として、図1に示す不平衡補償装置4の補償電流基準を算出するための逆相電流検出回路を示すブロック図である。この図6に示すように、母線電圧より位相検出回路401によって電圧の位相δを検出し、母線電圧に同期したcos(ωt+δ),sin(ωt+δ)の信号を出力する。一方、3相分の負荷電流と位相検出回路401からの信号により、逆相分算出回路402によって逆相電流を算出して、この逆相電流を不平衡補償装置4の補償電流基準とする。
【0037】
このような方法で補償電流基準を算出することにより、負荷電流中の逆相電流成分を補償することができる。すなわち、図1に示す不平衡補償装置4は、逆相電流を補償しているのと等価である。これは、図2において、不平衡補償装置4側から発生する電流のベクトル図を作成すると逆相電流となっていることからも確認できる。したがって、一般的な不平衡を含む負荷に対して、負荷電流より図6に示すような逆相電流検出回路によって逆相成分を検出し、これを不平衡補償装置の補償電流基準とすることで、負荷電流中の逆相電流成分を補償することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図7は、本発明を適用した第2の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図7に示す第2の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、不平衡補償装置4と単相負荷3の接続点が、変圧器5Aの電源側ではなく、回転型位相調整機(RPS)71,72と同一母線のW相に接続されている点である。すなわち、単相負荷3は、変圧器5AのW相と中性点の間に接続されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0039】
このような構成を有する本実施形態において、単相負荷3が変圧器5AのW相と中性点の間に接続されていること、および変圧器5Aがデルタスター結線されていることに着目すると、単相負荷3は、変圧器5Aの電源側ではUW相間に接続されているのと等価であるから、不平衡補償装置4の作用は第1の実施形態と同一である。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図8は、本発明を適用した第3の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図8に示す第3の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、不平衡補償装置4と単相負荷3の接続点が、変圧器5Aの電源側ではなく、UV相とVW相に追加された負荷用の巻線51,52を介して接続されている点である。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
図9は、このような構成を有する本実施形態の不平衡補償の原理を説明するための原理図であり、また、図10は、図9に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図である。図9において、単相負荷3には電源側のUV相の線間電圧とVW相の線間電圧が直列に印加されており、合成電圧はUW相と同一位相である。したがって、負荷電流は、UW相に接続した場合と同一位相となることに着目すると、不平衡補償装置4の作用は第1の実施形態と同一である。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、変圧器5Aにおいて単相負荷3へ電力供給する巻線51,52は独立に設けられているため、単相負荷3に適した任意の大きさの電圧を供給することができる。
【0044】
[第4の実施形態]
図11は、本発明を適用した第4の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図11に示す第4の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、単相負荷3Aは、抵抗のみでなくリアクトルが並列接続されており、いわゆる力率の悪い負荷となっている点である。一方、不平衡補償装置4側のLC回路8Aには、コンデンサ81およびリアクトル82に加えて、W相に追加のコンデンサ83が設けられている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
このような構成を有する本実施形態において、単相負荷3Aが変化する場合に、力率はほぼ一定であるものとする。すなわち、負荷電流の有効電力成分と無効電力成分の比率はほぼ一定であるものとする。
【0046】
一方、不平衡補償装置4は、基本的には、第1の実施形態について前記(1)式で説明したように、負荷電流に対して一定の比率で補償電流ICとILを発生させるように動作する。この場合に、本実施形態においては、図11に示すように、LC回路8Aに負荷の力率補償用のコンデンサ83が追加されているが、このコンデンサ83のインピーダンスを適切に設定しておけば、コンデンサ83による補償電流も負荷の大きさに応じて調整することができる。
【0047】
すなわち、図11に示すLC回路8Aにおいて、ある大きさの単相負荷3Aに対して無効電力成分をキャンセルするようにコンデンサ83の容量を設定すると、単相負荷3Aが変化した場合、LC回路8Aは、コンデンサ81とリアクトル82により負荷の有効電力成分の不平衡分を補償し、かつ、コンデンサ83により負荷の無効電力成分を補償するように動作する。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、負荷の力率が悪い場合でも、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0049】
なお、ここでは、負荷が遅れ力率の場合を例に説明したが、負荷が進み力率の場合でも、力率補償用のコンデンサ83を力率補償用のリアクトルに置き換えることによって同等の作用、効果が得られる。
【0050】
[第5の実施形態]
図12は、本発明を適用した第5の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図12に示す第5の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、LC回路8Bが、2組のコンデンサ84,86およびリアクトル85,87を有しており、これらの84,86およびリアクトル85,87が、回転型位相調整機71,72における回転子712,722間ではなく、固定子711,721と回転子712,722の間にそれぞれ接続されている点である。
【0051】
すなわち、一方の回転型位相調整機71における固定子711と回転子712の間に、1組のコンデンサ84およびリアクトル85が接続され、他方の回転型位相調整機72における固定子721と回転子722の間に、もう1組のコンデンサ86およびリアクトル87が接続されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
図13は、このような構成を有する本実施形態における補償電流調整の原理を説明するベクトル図である。以下には、この図13のベクトル図を用いて、第1の実施形態と異なる作用を説明する。
【0053】
回転型位相調整機(RPS)71の回転位相をθ1、回転型位相調整機(RPS)72の回転位相をθ2とする。それぞれの固定子−回転子(1次−2次)間の電圧差分は、図13の(A)、(B)に示すように発生する。その結果、u相の1次−2次間には、コンデンサ84,86が接続されているので、電圧差分より90度進んだ電流が流れ、v相の1次−2次間には、リアクトル85,87が接続されているので、電圧差分より90度遅れた電流が流れる。
【0054】
この場合、回転型位相調整機(RPS)71,72への合成電流は図13の(C)に示すようになり、u相にはVuに90度進んだ電流が流れ、v相にはVvに90度遅れた電流が流れ、これらの大きさは回転位相θ1,θ2で調整できる。これ以降は、変圧器5がデルタスター結線されていることより、第1の実施形態と同じ原理で不平衡を補償することができる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0056】
[第6の実施形態]
図14は、本発明を適用した第6の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図14に示す第6の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、LC回路8に加えて、リアクトル91とコンデンサ92から構成されるLC回路9が追加されている点である。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
このような構成を有する本実施形態の作用は次の通りである。
【0058】
まず、図14において、回転型位相調整機(RPS)71,72の補償量が小さい場合、すなわち、図5で基準からの回転位相が小さい場合には、2次側で発生する電圧差が小さいので、LC回路8にはほとんど電流が流れない。その結果、不平衡補償装置4全体において、u相にはLC回路9のリアクトル91による遅れ電流、v相にはLC回路9のコンデンサ92による進み電流、が支配的になる。この調整によれば、単相負荷3が交流電気鉄道などで回生(有効電力を負荷側から電源側に逆送)しているような場合に不平衡を補償することができる。
【0059】
一方、回転型位相調整機(RPS)71,72の補償量が大きい場合、すなわち、図5で基準からの回転位相が大きい場合には、2次側で発生する電圧差が大きいので、LC回路8には大きな電流が流れる。LC回路8の容量をLC回路9の容量より充分大きくしておけば、不平衡補償装置4全体において、u相には回転型位相調整機(RPS)71,72とLC回路8による進み電流、v相には遅れ電流、が支配的になる。この調整によれば、単相負荷3が力行しているような場合に不平衡を補償することができる。
【0060】
また、単相負荷3が回生から力行の間を連続的に変化するような場合でも、回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整で、不平衡補償を連続的に行うことができる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、単相負荷が力行から回生の範囲で変化しても、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0062】
[第7の実施形態]
図15は、本発明を適用した第7の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図15に示す第7の実施形態は、図14に示す第6の実施形態の変形例であり、第6の実施形態と異なる点は、図14に示す追加のLC回路9と励磁電流補償用コンデンサ6が、コンデンサ63,94とリアクトル93から構成された1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aとしてまとめられている点である。ここで、リアクトル93の容量は、リアクトル91の容量−コンデンサ61の容量(線間から相に換算したもの)、コンデンサ94の容量は、コンデンサ92の容量+コンデンサ62の容量(線間から相に換算したもの)である。なお、他の部分の構成は、第6の実施形態と同様である。
【0063】
このような構成を有する本実施形態の不平衡補償装置4において、1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aにまとめられたリアクトル93およびコンデンサ63,94は、図14に示す第6の実施形態の不平衡補償装置4でも固定の値であり、合成した値は図14示す第6の実施形態の不平衡補償装置4でも同様である。したがって、本実施形態の不平衡補償装置4の作用は、実質的に、第6の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態によれば、第6の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、LC回路9と励磁電流補償用コンデンサ6を1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aとしてまとめた分だけ、不平衡補償装置4の構成要素の数は、第6の実施形態より少なくできるため、不平衡補償装置4の構成をより簡略化できる。したがって、価格や設置スペースの観点からより有利である。
【0065】
[第8の実施形態]
図16は、本発明を適用した第8の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図16に示す第8の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態と異なる点は、単相負荷3に替わって、スコット結線変圧器31、M座負荷32、T座負荷33が接続されている点である。
【0066】
このような構成を有する本実施形態においては、スコット結線変圧器31を接続していることから、負荷の配分と力行か回生かで補償方法が異なる。したがって、以下には、本実施形態の補償方法について、これらの組み合わせ毎に説明する。
【0067】
(1)M座力行負荷のみの場合:
回路構成が等価であるため、第1、第4、第5の実施形態における補償方法をそのまま適用可能である。
【0068】
(2)M座負荷+M座回生がある場合:
第6、第7の実施形態の補償方法により、回生にも対応可能である。
【0069】
(3)M座負荷とT座負荷がバランスしている場合:
スコット結線変圧器31により3相平衡されるので、不平衡補償装置4は、出力ゼロとなるよう、図5における基準よりの回転位相を0度として待機すればよい。
【0070】
(4)T座力行負荷のみの場合:
負荷を次のように考える。スコット結線変圧器の1次側電流は、T座負荷電流による分をITとすると、M座負荷電流IMがあるものと仮定した場合の3相平衡電流I1と次の関係で示される。
IT = IT+IM−IM=I1−IM
ここで、I1は3相平衡電流であるから補償する必要はなく、−IMについて補償すればよい。すなわち、M座に回生電流が流れているものとして補償する。この対応方法については上記(2)で説明した通りである。
【0071】
(5)T座負荷+T座回生がある場合:
上記(4)で述べたのと同様、T座の回生電流を、3相平衡となる電流分+M座の負荷電流で表現することができるので、M座の負荷電流分について補償すればよい。
【0072】
(6)一般化:
以上の(1)〜(5)より、M座とT座に力行負荷+回生負荷が混在する場合を一般化してまとめると、スコット結線変圧器のT座の電流を基準に1次電流が3相平衡するに必要なM座の電流成分を算出し(実際にはT座の電流値そのもの)、この値と実際にM座に流れている電流の差分を補償電流の基準とすればよい。
【0073】
図17は、このような補償電流基準を算出するための電流差分検出回路を示すブロック図である。以下の表1は、これらの電流、すなわち、T座電流、M座電流、および補償電流の組み合わせの一例を示している。なお、この表1中の値は、電流の大きさの比率のみを示しており、無単位の値である。
【0074】
【表1】
【0075】
したがって、本実施形態によれば、スコット結線変圧器を用いた負荷に対し、負荷が力行から回生の範囲で変化しても、第6の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0076】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、本発明は、不平衡電流を生じる各種の負荷に対して電力を供給する各種の構成の電力供給回路に同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図2】図1に示す不平衡補償装置において、単相負荷を3相平衡化する不平衡補償の原理を説明するための原理図。
【図3】図2に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図。
【図4】図1に示す不平衡補償装置における補償電流調整の原理を説明するためのベクトル図。
【図5】図1に示す回転型位相調整機の回転位相と2次側の電圧差の関係を示すグラフ。
【図6】図1に示す不平衡補償装置の補償電流基準を算出するための逆相電流検出回路を示すブロック図。
【図7】本発明を適用した第2の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図8】本発明を適用した第3の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図9】図8に示す不平衡補償装置における不平衡補償の原理を説明するための原理図。
【図10】図9に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図。
【図11】本発明を適用した第4の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図12】本発明を適用した第5の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図13】図12に示す不平衡補償装置における補償電流調整の原理を説明するためのベクトル図。
【図14】本発明を適用した第6の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図15】本発明を適用した第7の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図16】本発明を適用した第8の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図17】図16に示す不平衡補償装置の補償電流基準を算出するための電流差分検出回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0078】
1…電源
2…電源インピーダンス
3,3A…単相負荷
31…スコット結線変圧器
32…M座負荷
33…T座負荷
4…不平衡補償装置
5,5A…変圧器
6…励磁電流補償用コンデンサ
61〜63…コンデンサ
71,72…回転型位相調整機(RPS)
8,8A,8B,9,9A…LC回路
81,83,84,86,92,94…コンデンサ
82,85,87,91,93…リアクトル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路の負荷による不平衡電流を補償するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、3相回路とすることで、設備を効率よく利用できるようになっているが、3相の負荷電流の不平衡が大きくなると、設備の利用率が低下したり、近接する発電機に逆相電流が流れ込むなどの不具合を生じる。そこで、例えば、交流電気鉄道においては、3相電力系統から大容量かつ不平衡が顕著である単相電力を受電する際の電力系統側の不平衡を低減するために、スコット結線変圧器が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、スコット結線変圧器は、M座、T座両変圧器の2次側にそれぞれ負荷容量と力率とが同一である単相負荷を接続した場合にのみ3相側の電流が平衡するため、M座、T座両変圧器の負荷がアンバランスな場合には、3相側に不平衡分が残ってしまう。また、本質的に3相−2相変換用の変圧器であるため、そのM座変圧器およびT座変圧器の2次電圧は互いに90°の位相差を有しており、これらM座、T座変圧器の2次巻線を直列接続しても単相3線方式として利用することができない。このように、スコット結線変圧器は、3相不平衡の充分な低減には負荷条件の制約が生じ、また、3相回路と単相回路とを連結する電気回路としては使いづらい面がある。
【0004】
一方、3相回路と単相回路とを連結する回路として、スタインメッツ回路と称される構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスタインメッツ回路は、相順がUVWである3相電源のU相−V相間にコンデンサを接続し、V相−W相間にリアクトルを接続し、W相−U相間に抵抗負荷を接続した回路構成を有している。そして、上記コンデンサおよびリアクトルのインピーダンスを抵抗のインピーダンスに応じた適切な値に設定することにより、3相回路に流れる相電流を平衡電流とすることができる。
【0005】
しかし、負荷(抵抗のインピーダンス)が変動する場合には、それに応じてコンデンサやリアクトルのインピーダンスを調整する必要があるため、これらを可変にするためにサイリスタ制御を用いる方式や、GTOなどの自己消弧素子で構成される自励式インバータを用いるなどの方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
一方、従来、電力系統において電力調整を行うための装置として、固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する回転型位相調整機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−104930公報
【特許文献2】特開2002−335631公報
【非特許文献1】「電気鉄道工学」、持永芳文著、エース出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上のような従来の不平衡補償方法の場合、サイリスタや自励式インバータなどに使われる自己消弧素子は、高速性などの制御性能は高い反面、過負荷の耐量は弱い。したがって、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、負荷の最大電流に応じて不平衡補償装置の定格容量を決定する必要がある。その結果、装置容量が無駄に大きくなる傾向にあり、このことは、電力を安価に供給するための阻害要因となっている。また、自己消弧素子は、スイッチングにより制御を行っているために、高調波が発生する。したがって、高調波を低減するために別途、高調波抑制用の高調波フィルタを設ける必要があるなど、価格や設置スペースの観点からも改善が望まれる点があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、負荷電流の増減に応じて不平衡を補償可能であり、しかも、過負荷にも強く、高調波を発生しない、価格や設置スペースの観点からも有利な不平衡補償装置とその方法、電力供給回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような目的を達成するために、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を使用して、回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整して、負荷による不平衡電流を補償できるようにしたものである。また、回転型位相調整機は、短時間の過負荷には耐えうるものであり、また、スイッチングによる調整ではないため、高調波を発生することもなく、価格や設置スペースの観点からも有利である。
【0011】
すなわち、本発明の不平衡補償装置は、電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路に接続され、負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償装置において、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を備えたことを特徴としている。ここで、2個の回転型位相調整機は、それぞれ、固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する。また、LC回路は、回転型位相調整機に接続されたコンデンサおよびリアクトルから構成される。この不平衡補償装置は、2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整するように構成されている。
【0012】
また、本発明の不平衡補償方法と電力供給回路は、上記の不平衡補償装置の特徴を、方法の観点、および不平衡補償装置を備えた回路の観点、からそれぞれ把握したものである。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、負荷による不平衡電流が顕著で、かつ大きさが変動しても、回転型位相調整機の回転位相の調整により、不平衡を補償する電流を発生させることができる。また、回転型位相調整機は、巻線型の誘導電動機と類似の構造であり、短時間の過負荷には耐えうる性質を有しているため、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、過負荷の耐量を考慮した不平衡補償装置の設計を行うことにより、回転型位相調整機の容量を無駄に大きくする必要なく、安価に提供できる。また、調整のためにスイッチングを行うものでないため、高調波を発生せず、高調波抑制用のフィルタも不要である。この点も価格や設置スペースの点で有利となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、デルタスター結線した変圧器、励磁電流補償用コンデンサ、2個の回転型位相調整機、LC回路を使用して、回転型位相調整機の回転位相を調整することにより、補償電流を調整して、負荷電流の増減に応じて不平衡を補償可能であり、しかも、過負荷にも強く、高調波を発生しない、価格や設置スペースの観点からも有利な不平衡補償装置とその方法、電力供給回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下には、本発明を適用した複数の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
[構成]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図1の電力供給回路においては、電源1より電源インピーダンス2を介して単相負荷3に電力を供給しているものとする。この単相負荷3による不平衡を補償するために、単相負荷3と並列に不平衡補償装置4が接続されている。
【0017】
不平衡補償装置4は、デルタスター結線した変圧器5、励磁電流補償用コンデンサ6、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72、LC回路8、から構成されている。ここで、回転型位相調整機(RPS)71,72は、固定子711,721および回転子712,722をそれぞれ有し、かつ、図示していないが、回転子712,722と同軸上に機械的に接続された駆動装置およびその制御装置を有しており、回転子712,722の位相角を調整できるようになっている。その結果、回転子712,722の回転位相に応じて、回転子712,722側の巻線に発生させる電圧の位相を調整できる。
【0018】
なお、このような構成の回転型位相調整機(RPS)71,72は、既存の構成である(例えば、特許文献2参照)。また、LC回路8は、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転子712,722間に接続されており、コンデンサ81とリアクトル82から構成されている。
【0019】
[作用]
以下には、図2〜図5を参照して、本実施形態の不平衡補償装置4による不平衡補償の作用について説明する。
【0020】
[不平衡補償の基本原理]
図2は、単相負荷を3相平衡化する不平衡補償の原理を説明するための原理図である。この図2に示す不平衡補償の原理は、従来方法と同様であるが、本発明による不平衡補償装置4の作用を説明するため、便宜上説明する。
【0021】
まず、図2に示す不平衡補償の原理図において、単相負荷3で消費する負荷電流IRは力率1とする。負荷電流IRに対して不平衡補償装置4で発生する補償電流ICと補償電流ILの大きさが1/√3となるようにコンデンサ(C)41とリアクトル(L)42のインピーダンスを決める。図3は、この場合の各部の電圧、電流を示すベクトル図である。
【0022】
図3に破線で示すように、負荷電流IRは、抵抗負荷でW相とU相の線間に接続されているので線間電圧VW−VUに同位相となり、補償電流ILは、誘導性負荷でV相とW相の線間に接続されているのでVV−VWに90度遅れとなり、補償電流ICは、容量性負荷でU相とV相の線間に接続されているのでVU−VVに90度進みとなる。
【0023】
この場合、それぞれの電流は、次の式(1)で表される。なお、この式(1)においては、負荷電流IRを大きさ1として相対表示している。
【数1】
【0024】
次に、電源インピーダンス2に流れる電源側の3相の電流IU〜IWは次の式(2)で表される。
【数2】
【0025】
すなわち、電源インピーダンス2に流れる電源側の3相の電流IU〜IWは、いずれも、単相負荷電流IRに対して、大きさが1/√3で力率1の正相電流となる。図3においては、これらの電流IU〜IWを、太い実線で示している。
【0026】
[回転型位相調整機による補償電流の調整]
本実施形態の不平衡補償装置4においては、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相を調整することにより、補償電流ICと補償電流ILを調整することができる。以下には、このような補償電流の調整について説明する。
【0027】
まず、図1において、励磁電流補償用コンデンサ6は、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72における合計の励磁電流をキャンセルするものである。この励磁電流補償用コンデンサ6により、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72は、励磁電流を補償されているものとし、この部分の説明は省略する。
【0028】
次に、第1の回転型位相調整機(RPS)71の回転位相(1次側に対する2次側の位相)をθ1、第2の回転型位相調整機(RPS)72の回転位相をθ2とする。両者の1次電圧VU,VV,VWに対して両者の位相θ1,θ2を図4のように設定すると、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側の電圧差は、図4の(A),(B)に示すように、1次電圧と同相であり、電圧差の大きさは、回転位相θ1,θ2に応じて大小に調整することができる。
【0029】
ここで、回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側には、図1に示すように、U相にはコンデンサ81が、V相にはリアクトル82がそれぞれ接続されており、図4に示す2次側の電圧差がこれらの端子間に印加される。その結果、U相には電圧差より90°進んだ電流が、V相には電圧差より90°遅れた電流がそれぞれ流れる。また、W相は開放されており、電流が流れない。
【0030】
2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の1次側電流は合成されて、変圧器5を介して電源側に接続される。この場合、変圧器5はデルタスター結線されているため、回転型位相調整機(RPS)71,72が接続されるスター結線側のU相電流は電源側のUV相間に、スター結線側のV相電流は電源側のVW相間に、それぞれ注入されることになる。これは、図2、図3について説明した不平衡補償の原理に対応する。
【0031】
すなわち、2個の回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整により、回転型位相調整機(RPS)71,72の2次側の電圧差を調整できることになり、その結果として、補償電流IC,ILの大きさを、前記(1)式の関係を満たすよう調整できることになる。図5は、このような回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2と2次側の電圧差の関係を示すグラフである。
【0032】
[効果]
以上のような本実施形態の不平衡補償装置4によれば、次のような効果が得られる。
【0033】
まず、単相負荷3による不平衡が顕著で、かつ大きさが変動しても、回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整により、不平衡を補償する補償電流IC,ILを発生させることができる。
【0034】
また、回転型位相調整機(RPS)71,72は、巻線型の誘導電動機と類似の構造であり、短時間の過負荷には耐えうる性質を有している。したがって、負荷変動(増減)が顕著な場合や、突入電流を有する負荷の場合には、過負荷の耐量を考慮した不平衡補償装置の設計を行うことにより、回転型位相調整機(RPS)71,72の容量を無駄に大きくする必要なく、安価に提供できる。また、調整のためにスイッチングを行うものでないため、高調波を発生せず、高調波抑制用のフィルタも不要である。この点も価格や設置スペースの点で有利となる。
【0035】
なお、交流電気鉄道などでは、単相負荷3が単純な抵抗負荷でなく、回生となる場合がある。このような場合には、負荷電流の位相が180度反転することから、LC回路8のコンデンサ81とリアクトル82を入れ替えることによって、補償電流も180度反転するので、不平衡を補償するという意味では、単相負荷3が単純な抵抗負荷である場合と同一の作用、効果を得ることができる。
【0036】
[補償電流基準の算出方法]
図6は、第1の実施形態の補足説明として、図1に示す不平衡補償装置4の補償電流基準を算出するための逆相電流検出回路を示すブロック図である。この図6に示すように、母線電圧より位相検出回路401によって電圧の位相δを検出し、母線電圧に同期したcos(ωt+δ),sin(ωt+δ)の信号を出力する。一方、3相分の負荷電流と位相検出回路401からの信号により、逆相分算出回路402によって逆相電流を算出して、この逆相電流を不平衡補償装置4の補償電流基準とする。
【0037】
このような方法で補償電流基準を算出することにより、負荷電流中の逆相電流成分を補償することができる。すなわち、図1に示す不平衡補償装置4は、逆相電流を補償しているのと等価である。これは、図2において、不平衡補償装置4側から発生する電流のベクトル図を作成すると逆相電流となっていることからも確認できる。したがって、一般的な不平衡を含む負荷に対して、負荷電流より図6に示すような逆相電流検出回路によって逆相成分を検出し、これを不平衡補償装置の補償電流基準とすることで、負荷電流中の逆相電流成分を補償することができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図7は、本発明を適用した第2の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図7に示す第2の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、不平衡補償装置4と単相負荷3の接続点が、変圧器5Aの電源側ではなく、回転型位相調整機(RPS)71,72と同一母線のW相に接続されている点である。すなわち、単相負荷3は、変圧器5AのW相と中性点の間に接続されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0039】
このような構成を有する本実施形態において、単相負荷3が変圧器5AのW相と中性点の間に接続されていること、および変圧器5Aがデルタスター結線されていることに着目すると、単相負荷3は、変圧器5Aの電源側ではUW相間に接続されているのと等価であるから、不平衡補償装置4の作用は第1の実施形態と同一である。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図8は、本発明を適用した第3の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図8に示す第3の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、不平衡補償装置4と単相負荷3の接続点が、変圧器5Aの電源側ではなく、UV相とVW相に追加された負荷用の巻線51,52を介して接続されている点である。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
図9は、このような構成を有する本実施形態の不平衡補償の原理を説明するための原理図であり、また、図10は、図9に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図である。図9において、単相負荷3には電源側のUV相の線間電圧とVW相の線間電圧が直列に印加されており、合成電圧はUW相と同一位相である。したがって、負荷電流は、UW相に接続した場合と同一位相となることに着目すると、不平衡補償装置4の作用は第1の実施形態と同一である。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、変圧器5Aにおいて単相負荷3へ電力供給する巻線51,52は独立に設けられているため、単相負荷3に適した任意の大きさの電圧を供給することができる。
【0044】
[第4の実施形態]
図11は、本発明を適用した第4の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図11に示す第4の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、単相負荷3Aは、抵抗のみでなくリアクトルが並列接続されており、いわゆる力率の悪い負荷となっている点である。一方、不平衡補償装置4側のLC回路8Aには、コンデンサ81およびリアクトル82に加えて、W相に追加のコンデンサ83が設けられている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
このような構成を有する本実施形態において、単相負荷3Aが変化する場合に、力率はほぼ一定であるものとする。すなわち、負荷電流の有効電力成分と無効電力成分の比率はほぼ一定であるものとする。
【0046】
一方、不平衡補償装置4は、基本的には、第1の実施形態について前記(1)式で説明したように、負荷電流に対して一定の比率で補償電流ICとILを発生させるように動作する。この場合に、本実施形態においては、図11に示すように、LC回路8Aに負荷の力率補償用のコンデンサ83が追加されているが、このコンデンサ83のインピーダンスを適切に設定しておけば、コンデンサ83による補償電流も負荷の大きさに応じて調整することができる。
【0047】
すなわち、図11に示すLC回路8Aにおいて、ある大きさの単相負荷3Aに対して無効電力成分をキャンセルするようにコンデンサ83の容量を設定すると、単相負荷3Aが変化した場合、LC回路8Aは、コンデンサ81とリアクトル82により負荷の有効電力成分の不平衡分を補償し、かつ、コンデンサ83により負荷の無効電力成分を補償するように動作する。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、負荷の力率が悪い場合でも、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0049】
なお、ここでは、負荷が遅れ力率の場合を例に説明したが、負荷が進み力率の場合でも、力率補償用のコンデンサ83を力率補償用のリアクトルに置き換えることによって同等の作用、効果が得られる。
【0050】
[第5の実施形態]
図12は、本発明を適用した第5の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図12に示す第5の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、LC回路8Bが、2組のコンデンサ84,86およびリアクトル85,87を有しており、これらの84,86およびリアクトル85,87が、回転型位相調整機71,72における回転子712,722間ではなく、固定子711,721と回転子712,722の間にそれぞれ接続されている点である。
【0051】
すなわち、一方の回転型位相調整機71における固定子711と回転子712の間に、1組のコンデンサ84およびリアクトル85が接続され、他方の回転型位相調整機72における固定子721と回転子722の間に、もう1組のコンデンサ86およびリアクトル87が接続されている。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
図13は、このような構成を有する本実施形態における補償電流調整の原理を説明するベクトル図である。以下には、この図13のベクトル図を用いて、第1の実施形態と異なる作用を説明する。
【0053】
回転型位相調整機(RPS)71の回転位相をθ1、回転型位相調整機(RPS)72の回転位相をθ2とする。それぞれの固定子−回転子(1次−2次)間の電圧差分は、図13の(A)、(B)に示すように発生する。その結果、u相の1次−2次間には、コンデンサ84,86が接続されているので、電圧差分より90度進んだ電流が流れ、v相の1次−2次間には、リアクトル85,87が接続されているので、電圧差分より90度遅れた電流が流れる。
【0054】
この場合、回転型位相調整機(RPS)71,72への合成電流は図13の(C)に示すようになり、u相にはVuに90度進んだ電流が流れ、v相にはVvに90度遅れた電流が流れ、これらの大きさは回転位相θ1,θ2で調整できる。これ以降は、変圧器5がデルタスター結線されていることより、第1の実施形態と同じ原理で不平衡を補償することができる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0056】
[第6の実施形態]
図14は、本発明を適用した第6の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図14に示す第6の実施形態において、図1に示す第1の実施形態と異なる点は、LC回路8に加えて、リアクトル91とコンデンサ92から構成されるLC回路9が追加されている点である。なお、他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
このような構成を有する本実施形態の作用は次の通りである。
【0058】
まず、図14において、回転型位相調整機(RPS)71,72の補償量が小さい場合、すなわち、図5で基準からの回転位相が小さい場合には、2次側で発生する電圧差が小さいので、LC回路8にはほとんど電流が流れない。その結果、不平衡補償装置4全体において、u相にはLC回路9のリアクトル91による遅れ電流、v相にはLC回路9のコンデンサ92による進み電流、が支配的になる。この調整によれば、単相負荷3が交流電気鉄道などで回生(有効電力を負荷側から電源側に逆送)しているような場合に不平衡を補償することができる。
【0059】
一方、回転型位相調整機(RPS)71,72の補償量が大きい場合、すなわち、図5で基準からの回転位相が大きい場合には、2次側で発生する電圧差が大きいので、LC回路8には大きな電流が流れる。LC回路8の容量をLC回路9の容量より充分大きくしておけば、不平衡補償装置4全体において、u相には回転型位相調整機(RPS)71,72とLC回路8による進み電流、v相には遅れ電流、が支配的になる。この調整によれば、単相負荷3が力行しているような場合に不平衡を補償することができる。
【0060】
また、単相負荷3が回生から力行の間を連続的に変化するような場合でも、回転型位相調整機(RPS)71,72の回転位相θ1,θ2の調整で、不平衡補償を連続的に行うことができる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、単相負荷が力行から回生の範囲で変化しても、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0062】
[第7の実施形態]
図15は、本発明を適用した第7の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図15に示す第7の実施形態は、図14に示す第6の実施形態の変形例であり、第6の実施形態と異なる点は、図14に示す追加のLC回路9と励磁電流補償用コンデンサ6が、コンデンサ63,94とリアクトル93から構成された1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aとしてまとめられている点である。ここで、リアクトル93の容量は、リアクトル91の容量−コンデンサ61の容量(線間から相に換算したもの)、コンデンサ94の容量は、コンデンサ92の容量+コンデンサ62の容量(線間から相に換算したもの)である。なお、他の部分の構成は、第6の実施形態と同様である。
【0063】
このような構成を有する本実施形態の不平衡補償装置4において、1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aにまとめられたリアクトル93およびコンデンサ63,94は、図14に示す第6の実施形態の不平衡補償装置4でも固定の値であり、合成した値は図14示す第6の実施形態の不平衡補償装置4でも同様である。したがって、本実施形態の不平衡補償装置4の作用は、実質的に、第6の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態によれば、第6の実施形態と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、LC回路9と励磁電流補償用コンデンサ6を1つの励磁電流補償用コンデンサ兼LC回路9Aとしてまとめた分だけ、不平衡補償装置4の構成要素の数は、第6の実施形態より少なくできるため、不平衡補償装置4の構成をより簡略化できる。したがって、価格や設置スペースの観点からより有利である。
【0065】
[第8の実施形態]
図16は、本発明を適用した第8の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図である。この図16に示す第8の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態と異なる点は、単相負荷3に替わって、スコット結線変圧器31、M座負荷32、T座負荷33が接続されている点である。
【0066】
このような構成を有する本実施形態においては、スコット結線変圧器31を接続していることから、負荷の配分と力行か回生かで補償方法が異なる。したがって、以下には、本実施形態の補償方法について、これらの組み合わせ毎に説明する。
【0067】
(1)M座力行負荷のみの場合:
回路構成が等価であるため、第1、第4、第5の実施形態における補償方法をそのまま適用可能である。
【0068】
(2)M座負荷+M座回生がある場合:
第6、第7の実施形態の補償方法により、回生にも対応可能である。
【0069】
(3)M座負荷とT座負荷がバランスしている場合:
スコット結線変圧器31により3相平衡されるので、不平衡補償装置4は、出力ゼロとなるよう、図5における基準よりの回転位相を0度として待機すればよい。
【0070】
(4)T座力行負荷のみの場合:
負荷を次のように考える。スコット結線変圧器の1次側電流は、T座負荷電流による分をITとすると、M座負荷電流IMがあるものと仮定した場合の3相平衡電流I1と次の関係で示される。
IT = IT+IM−IM=I1−IM
ここで、I1は3相平衡電流であるから補償する必要はなく、−IMについて補償すればよい。すなわち、M座に回生電流が流れているものとして補償する。この対応方法については上記(2)で説明した通りである。
【0071】
(5)T座負荷+T座回生がある場合:
上記(4)で述べたのと同様、T座の回生電流を、3相平衡となる電流分+M座の負荷電流で表現することができるので、M座の負荷電流分について補償すればよい。
【0072】
(6)一般化:
以上の(1)〜(5)より、M座とT座に力行負荷+回生負荷が混在する場合を一般化してまとめると、スコット結線変圧器のT座の電流を基準に1次電流が3相平衡するに必要なM座の電流成分を算出し(実際にはT座の電流値そのもの)、この値と実際にM座に流れている電流の差分を補償電流の基準とすればよい。
【0073】
図17は、このような補償電流基準を算出するための電流差分検出回路を示すブロック図である。以下の表1は、これらの電流、すなわち、T座電流、M座電流、および補償電流の組み合わせの一例を示している。なお、この表1中の値は、電流の大きさの比率のみを示しており、無単位の値である。
【0074】
【表1】
【0075】
したがって、本実施形態によれば、スコット結線変圧器を用いた負荷に対し、負荷が力行から回生の範囲で変化しても、第6の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0076】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、本発明は、不平衡電流を生じる各種の負荷に対して電力を供給する各種の構成の電力供給回路に同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図2】図1に示す不平衡補償装置において、単相負荷を3相平衡化する不平衡補償の原理を説明するための原理図。
【図3】図2に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図。
【図4】図1に示す不平衡補償装置における補償電流調整の原理を説明するためのベクトル図。
【図5】図1に示す回転型位相調整機の回転位相と2次側の電圧差の関係を示すグラフ。
【図6】図1に示す不平衡補償装置の補償電流基準を算出するための逆相電流検出回路を示すブロック図。
【図7】本発明を適用した第2の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図8】本発明を適用した第3の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図9】図8に示す不平衡補償装置における不平衡補償の原理を説明するための原理図。
【図10】図9に示す各部の電圧、電流を示すベクトル図。
【図11】本発明を適用した第4の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図12】本発明を適用した第5の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図13】図12に示す不平衡補償装置における補償電流調整の原理を説明するためのベクトル図。
【図14】本発明を適用した第6の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図15】本発明を適用した第7の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図16】本発明を適用した第8の実施形態に係る電力供給回路を示す構成図。
【図17】図16に示す不平衡補償装置の補償電流基準を算出するための電流差分検出回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0078】
1…電源
2…電源インピーダンス
3,3A…単相負荷
31…スコット結線変圧器
32…M座負荷
33…T座負荷
4…不平衡補償装置
5,5A…変圧器
6…励磁電流補償用コンデンサ
61〜63…コンデンサ
71,72…回転型位相調整機(RPS)
8,8A,8B,9,9A…LC回路
81,83,84,86,92,94…コンデンサ
82,85,87,91,93…リアクトル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路に接続され、負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償装置において、
デルタスター結線した変圧器と、
励磁電流補償用コンデンサと、
固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する2個の回転型位相調整機と、
前記回転型位相調整機に接続されたコンデンサおよびリアクトルから構成されるLC回路を備え、
前記2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより補償電流を調整するように構成されている、
ことを特徴とする不平衡補償装置。
【請求項2】
前記負荷は単相負荷であり、当該単相負荷に対して並列に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項3】
前記負荷は単相負荷であり、
前記デルタスター結線した変圧器における2次側の特定の相に前記単相負荷が接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項4】
前記負荷は単相負荷であり、
前記デルタスター結線した変圧器は、負荷用の巻線を有し、ここに前記単相負荷が接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項5】
前記LC回路は、前記2個の回転型位相調整機の回転子間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項6】
前記LC回路は、前記コンデンサおよび前記リアクトルに加えて、追加のコンデンサまたはリアクトルを備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の不平衡補償装置。
【請求項7】
前記LC回路は、前記回転型位相調整機における前記固定子と前記回転子の間にそれぞれ接続された2組のコンデンサおよびリアクトルを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項8】
前記LC回路に加えて、前記回転型位相調整機の固定子側に、コンデンサとリアクトルから構成される追加のLC回路が設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の不平衡補償装置。
【請求項9】
前記追加のLC回路は、前記励磁電流補償用コンデンサと共に1つの回路にまとめられている、
ことを特徴とする請求項8に記載の不平衡補償装置。
【請求項10】
前記負荷に流れる負荷電流より逆相電流分を検出する逆相電流分検出回路を備え、
前記逆相電流分を補償電流の基準として不平衡補償を行うように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項11】
前記負荷は、スコット結線変圧器とそのT座およびM座にそれぞれ接続されたT座負荷およびM座負荷であり、
前記M座負荷および前記T座負荷の負荷電流値の差分を補償電流の基準として不平衡補償を行うように構成されている、
ことを特徴とする請求項1、請求項5乃至請求項10のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項12】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路の負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償方法において、
デルタスター結線した変圧器と、
励磁電流補償用コンデンサと、
固定子および回転子を有し、回転子には角度を調整できるように駆動装置およびその制御装置を備えた2個の回転型位相調整機と、
前記回転型位相調整機に接続されコンデンサおよびリアクトルを備えたLC回路を使用して、
前記2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより補償電流を調整する、
ことを特徴とする不平衡補償方法。
【請求項13】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路において、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の不平衡補償装置、
を備えたことを特徴とする電力供給回路。
【請求項1】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路に接続され、負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償装置において、
デルタスター結線した変圧器と、
励磁電流補償用コンデンサと、
固定子および回転子を有し、かつ、回転子の角度を調整するための駆動装置およびその制御装置を有する2個の回転型位相調整機と、
前記回転型位相調整機に接続されたコンデンサおよびリアクトルから構成されるLC回路を備え、
前記2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより補償電流を調整するように構成されている、
ことを特徴とする不平衡補償装置。
【請求項2】
前記負荷は単相負荷であり、当該単相負荷に対して並列に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項3】
前記負荷は単相負荷であり、
前記デルタスター結線した変圧器における2次側の特定の相に前記単相負荷が接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項4】
前記負荷は単相負荷であり、
前記デルタスター結線した変圧器は、負荷用の巻線を有し、ここに前記単相負荷が接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の不平衡補償装置。
【請求項5】
前記LC回路は、前記2個の回転型位相調整機の回転子間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項6】
前記LC回路は、前記コンデンサおよび前記リアクトルに加えて、追加のコンデンサまたはリアクトルを備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の不平衡補償装置。
【請求項7】
前記LC回路は、前記回転型位相調整機における前記固定子と前記回転子の間にそれぞれ接続された2組のコンデンサおよびリアクトルを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項8】
前記LC回路に加えて、前記回転型位相調整機の固定子側に、コンデンサとリアクトルから構成される追加のLC回路が設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の不平衡補償装置。
【請求項9】
前記追加のLC回路は、前記励磁電流補償用コンデンサと共に1つの回路にまとめられている、
ことを特徴とする請求項8に記載の不平衡補償装置。
【請求項10】
前記負荷に流れる負荷電流より逆相電流分を検出する逆相電流分検出回路を備え、
前記逆相電流分を補償電流の基準として不平衡補償を行うように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項11】
前記負荷は、スコット結線変圧器とそのT座およびM座にそれぞれ接続されたT座負荷およびM座負荷であり、
前記M座負荷および前記T座負荷の負荷電流値の差分を補償電流の基準として不平衡補償を行うように構成されている、
ことを特徴とする請求項1、請求項5乃至請求項10のいずれかに記載の不平衡補償装置。
【請求項12】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路の負荷による不平衡電流を補償する不平衡補償方法において、
デルタスター結線した変圧器と、
励磁電流補償用コンデンサと、
固定子および回転子を有し、回転子には角度を調整できるように駆動装置およびその制御装置を備えた2個の回転型位相調整機と、
前記回転型位相調整機に接続されコンデンサおよびリアクトルを備えたLC回路を使用して、
前記2個の回転型位相調整機の回転位相を調整することにより補償電流を調整する、
ことを特徴とする不平衡補償方法。
【請求項13】
電源から電源インピーダンスを介して負荷に電力を供給する電力供給回路において、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の不平衡補償装置、
を備えたことを特徴とする電力供給回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−20409(P2006−20409A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194968(P2004−194968)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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