説明

不整脈危険性評価装置、不整脈危険性評価システム、およびプログラム。

【課題】従来、創薬の早期の段階で得られるデータを用いて、ヒト等の生物の不整脈危険性を評価できない、という課題があった。
【解決手段】薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する動物薬効情報取得部と、前記動物薬効情報を、変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する薬効変換部と、対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーション部と、心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する不整脈情報取得部と、不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成部と、出力情報を出力する出力部を具備する不整脈危険性評価装置により、創薬の早期の段階で得られるデータを用いて、ヒト等の生物の不整脈危険性を評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象薬物のヒト等の対象の生物の心臓に対する不整脈危険性の度合いを推測する不整脈危険性評価装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品開発過程において、新規候補化合物の心臓に対する薬効・副作用を確認することは必須となっている。現在、製薬企業などでは培養細胞試験や動物実験などの評価試験データを基にヒトに投与した場合の薬効・副作用を予測している。しかしながら、種差等の影響のため、実際に臨床試験などでヒトに投与してみるまで推測の域を出ない。また、臨床試験までを行うには莫大な費用、人的パワー、および時間が必要となる。そこで、医薬品開発のより早期の段階で得られる動物評価試験データから、対象薬物のヒト心臓に対する不整脈危険度を計算機シミュレーションで推測出来れば、創薬プロセスの短縮及びコストカットが期待される。ひいては、医薬品の安全性向上に寄与することが期待される。さらに、催不整脈性を低下させるためには、化合物にどのような薬効を追加、もしくは削除すれば良いかを提示し、医薬品候補化合物合成の指針を示すことが期待される。
【0003】
一方、従来の関連する技術として、以下のシミュレーション方法がある。本シミュレーション方法は、薬物の生体組織内での拡散現象を的確に解析することができる薬物の生体組織内拡散のシミュレーション方法である(特許文献1参照)。かかるシミュレーション方法は、特定物質の生体内拡散を、有限要素法を用いてシミュレーションする方法であって、生体から分離した組織の一部を用いて、有限要素法を使用することなく該生体内の基準拡散特性定数を決定し、該基準拡散特性定数に基づいて基準拡散特性を設定し、解析の対象となる生体構造を有限要素法に基づいて決定し、基準拡散特性定数を用いて決定した生体構造における拡散を有限要素法に基づいて演算し、該生体内における拡散の有限要素法に基づく演算結果にかかる演算拡散特性と有限要素法によらないで決定した基準拡散特性とを比較し、演算拡散特性と基準拡散特性との偏差が最小となるように基準拡散特性定数を補正して有限要素法に基づく最適拡散特性係数を算出することを特徴とする生体内拡散のシミュレーション方法である。
【0004】
また、極めて正確、かつ高速に部位決定できる心臓の電気的活動の部位決定方法についての技術が存在する(特許文献2参照)。かかる心臓の電気的活動の部位決定方法は、多チャンネル測定装置を用いて、心臓の電気的活動によって生じた体表面電位が複数の測定点で測定されて、各測定点の前記体表面電位の特徴を示す値が記憶され、体表面電位の特徴を示す値がデータバンク内に記憶されている比較値と比較され、その際、比較値は、心臓での部位が分かっている比較心臓の電気的活動に起因する比較表面電位を示しており、心臓の電気的活動の比較値が、体表面電位の特徴を示す値と共に極めて大きな類似性を有している、比較心臓の電気的活動の部位は、心臓の電気的活動の部位決定結果として送出される方法において、比較値を、胸郭モデル内に設けた心臓モデルを用いて求めるようにしたことを特徴とする心臓の電気的活動の部位決定方法である。
【0005】
さらに、関連する技術として、生体パラメータセットを入力として受け取り、細胞をシミュレーションし活動電位波形情報を取得するシミュレーション装置がある(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平08−016551(第1頁、第1図等)
【特許文献2】特開平08−280644(第1頁、第1図等)
【非特許文献1】皿井伸明、野間昭典「simBio:生物学的ダイナミックモデル開発基盤」日本エム・イー学会雑誌BME,vol.18,No.2,p.3−11,2004(2004年2月発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術においては、動物評価試験データから、対象薬物のヒト心臓に対する不整脈危険度を取得することはできなかった。また、従来の技術においては、動物評価試験データから、ヒト以外の生物の心臓に対する不整脈危険度も取得することはできなかった。
【0007】
また、従来の技術においては、1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報であるイオン流量情報を用いて、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度または細胞膜電位を算出し、かかる筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度や細胞膜電位から不整脈危険度を取得することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明の一つは、創薬の早期の段階で得られるデータを用いて、ヒトなどの生物に対する不整脈危険性を評価することを目的とする。また、不整脈危険性を低減させ、例えば、QT間隔を延長させないためには、化合物にどのような性質を付加もしくは削除すれば良いか提示することも目的とする。
【0009】
また、本発明の内の他の一つは、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度や細胞膜電位から不整脈危険度を評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本第一の発明の不整脈危険性評価装置は、薬物投与前の動物のパラメータセットと薬物投与後の動物のパラメータセットの組である薬物投与前後パラメータセットを格納している薬物投与前後パラメータセット格納部と、前記薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する動物薬効情報取得部と、動物薬効情報を生物の薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である変換元情報を格納している変換元情報格納部と、前記動物薬効情報を、前記変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する薬効変換部と、前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーション部と、前記心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する不整脈情報取得部と、前記不整脈情報取得部が取得した不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成部と、前記出力情報を出力する出力部を具備する不整脈危険性評価装置である。
【0011】
かかる構成により、創薬の早期の段階で得られるデータを用いて、ヒト等の生物の不整脈危険性を評価できる。
【0012】
また、本第二の発明の不整脈危険性評価装置は、第一の発明に対して、値を固定するパラメータの情報である固定パラメータ情報を格納している固定パラメータ情報格納部と、不整脈情報取得部が取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得する次対象生体薬効情報取得部と、前記次対象生体薬効情報取得部が取得した新たな対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーション部に与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御部をさらに具備し、前記出力情報構成部は、前記不整脈情報取得部が取得した不整脈情報、および前記次対象生体薬効情報取得部が取得した対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する不整脈危険性評価装置である。
【0013】
かかる構成により、不整脈危険性を低減させるには、化合物にどのような性質を付加もしくは削除すれば良いか提示することができる。
【0014】
また、本第三の発明の不整脈危険性評価装置は、第一、第二いずれかの発明に対して、心筋細胞動作情報についての閾値を格納している閾値格納手段と、前記心筋細胞シミュレーション部が取得した心筋細胞動作情報と、前記閾値格納手段の閾値とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果を用いて、前記不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する不整脈判断手段を具備する不整脈判断部をさらに具備し、前記出力情報構成部は、前記不整脈判断部の判断結果をも用いて出力情報を構成する不整脈危険性評価装置である。
【0015】
かかる構成により、不整脈の危険性の有無を自動判断できる。
【0016】
また、本第四の発明の不整脈危険性評価装置は、第一から第三のいずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、活動電位を取得する算出式を示す情報である活動電位モデル情報を格納している活動電位モデル情報格納手段と、前記活動電位モデル情報を読み出し、当該活動電位モデル情報を用いて、活動電位情報を取得する活動電位情報取得手段を具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記活動電位情報を含む不整脈危険性評価装置である。
【0017】
かかる構成により、活動電位から不整脈危険性を評価できる。
【0018】
また、本第五の発明の不整脈危険性評価装置は、第一から第四のいずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、QT間隔を取得する算出式を示す情報であるQT間隔モデル情報を格納しているQT間隔モデル情報格納手段と、前記QT間隔モデル情報を読み出し、当該QT間隔モデル情報を用いて、QT間隔情報を取得するQT間隔シミュレーション手段を具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記QT間隔情報を含む不整脈危険性評価装置である。
【0019】
かかる構成により、QT間隔から不整脈危険性を評価できる。
【0020】
また、本第六の発明の不整脈危険性評価装置は、第一から第五いずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、スパイラルウェーブをシミュレーションするための情報であるスパイラルウェーブモデル情報を格納しているスパイラルウェーブモデル情報格納手段と、前記スパイラルウェーブモデル情報を読み出し、当該スパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行うスパイラルウェーブシミュレーション手段をさらに具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記スパイラルウェーブにシミュレーション結果を含む不整脈危険性評価装置である。
【0021】
かかる構成により、スパイラルウェーブから不整脈危険性を評価できる。
【0022】
また、本第七の発明の不整脈危険性評価装置は、薬物投与の影響を示す1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報である1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付ける受付部と、前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーション部と、前記心筋細胞動作情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成部と、前記出力情報を出力する出力部を具備する不整脈危険性評価装置である。
【0023】
かかる構成により、1以上のイオン流量情報を入力として、不整脈危険性を評価することができる。
【0024】
また、本第八の発明の不整脈危険性評価装置は、第七の発明に対して、値を固定するパラメータの情報である固定パラメータ情報を格納している固定パラメータ情報格納部と、前記心筋細胞動作情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得する次対象生体薬効情報取得部と、前記次対象生体薬効情報取得部が取得した新たな対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーション部に与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御部をさらに具備し、前記出力情報構成部は、前記心筋細胞動作情報、および前記次対象生体薬効情報取得部が取得した対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する不整脈危険性評価装置である。
【0025】
かかる構成により、不整脈危険性を低減させるには、化合物にどのような性質を付加もしくは削除すれば良いか提示することができる。
【0026】
また、本第九の発明の不整脈危険性評価装置は、第七、第八いずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、1以上のイオン流量情報をパラメータとして筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する演算式の情報であるイオン濃度算出モデル情報を格納しているイオン濃度算出モデル情報格納手段と、前記イオン濃度算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記イオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出するイオン濃度算出手段を具備する不整脈危険性評価装置である。
【0027】
かかる構成により、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を用いた不整脈危険性の評価ができる。
【0028】
また、本第十の発明の不整脈危険性評価装置は、第七から第九いずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を格納している細胞膜電位算出モデル情報格納手段と、前記細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する細胞膜電位算出手段を具備する不整脈危険性評価装置である。
【0029】
かかる構成により、細胞膜電位を用いた不整脈危険性の評価ができる。
【0030】
また、本第十一の発明の不整脈危険性評価装置は、第七、第八いずれかの発明に対して、前記心筋細胞シミュレーション部は、1以上のイオン流量情報をパラメータとして筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する演算式の情報であるイオン濃度算出モデル情報を格納しているイオン濃度算出モデル情報格納手段と、前記イオン濃度算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記イオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出するイオン濃度算出手段と、1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を格納している細胞膜電位算出モデル情報格納手段と、前記細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する細胞膜電位算出手段を具備し、前記出力情報構成部は、前記イオン濃度算出手段が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を第一の軸の値とし、前記細胞膜電位算出手段が算出した細胞膜電位を第二の軸の値とする二次元平面上に値をプロットし、前記1以上の筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値、および前記1以上の細胞膜電位についての閾値を前記二次元平面上に明示する出力情報を構成する不整脈危険性評価装置である。
【0031】
かかる構成により、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度や細胞膜電位から不整脈危険度を評価でき、かつ不整脈危険度が容易に把握できる出力を得ることができる。
【0032】
また、本第十二の発明の不整脈危険性評価システムは、第一から第十一いずれかの発明に対して、不整脈危険性評価装置と生体パラメータ決定装置を具備する不整脈危険性評価システムであって、前記生体パラメータ決定装置は、生体のパラメータである生体パラメータを1以上有する生体パラメータセットを2組以上格納している生体パラメータセット格納部と、前記2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するパラメータセット選択部と、当該パラメータセット選択部が選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を得るシミュレーション実行部と、前記活動電位情報を取得する活動電位情報取得部と、動物実験の結果の活動電位情報である実験活動電位情報を格納している実験活動電位情報格納部と、前記活動電位情報取得部が取得した活動電位情報と、前記実験活動電位情報との相違度を算出する相違度算出部と、前記相違度算出部が算出した相違度を用いて、前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する許容パラメータセット決定部と、前記許容パラメータセット決定部が前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットでないと判断した場合に、前記パラメータセット選択部に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示する制御部と、前記許容パラメータセット決定部が前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した場合に、当該一の生体パラメータセットを出力する許容パラメータセット出力部を具備し、前記許容パラメータセット出力部が出力する生体パラメータセットは、前記不整脈危険性評価装置の薬物投与前後パラメータセット格納部に格納されている薬物投与前の動物のパラメータセット、および薬物投与後の動物のパラメータセットの少なくともいずれか一方のパラメータセットである不整脈危険性評価システムである。
【0033】
かかる構成により、生体パラメータ決定装置が決定したパラメータセットを用いて、不整脈危険性の評価ができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明による不整脈危険性評価装置によれば、薬物のヒトなどの生物に対する不整脈危険性を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、不整脈危険性評価装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
【0036】
本実施の形態において、心筋細胞シミュレーション、QT間隔シミュレーション、スパイラルシミュレーションを用いて不整脈危険性の評価を行う不整脈危険性評価装置について説明する。
【0037】
図1は、本不整脈危険性評価装置の構成を示すブロック図である。不整脈危険性評価装置は、受付部100、薬物投与前後パラメータセット格納部101、動物薬効情報取得部102、変換元情報格納部103、薬効変換部104、心筋細胞シミュレーション部105、不整脈情報取得部106、不整脈判断部107、出力情報構成部108、出力部109を具備する。
【0038】
心筋細胞シミュレーション部105は、活動電位モデル情報格納手段1051、活動電位情報取得手段1052、QT間隔モデル情報格納手段1053、QT間隔シミュレーション手段1054、スパイラルウェーブモデル情報格納手段1055、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056を具備する。
【0039】
不整脈判断部107は、閾値格納手段1071、比較手段1072、および不整脈判断手段1073を具備する。
【0040】
受付部100は、ユーザから不整脈危険性評価装置の動作開始の指示や、終了指示などの各種指示を受け付ける。各種指示の入力手段は、キーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。受付部100は、キーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。
【0041】
薬物投与前後パラメータセット格納部101は、薬物投与前の動物のパラメータセットと薬物投与後の動物のパラメータセットの組である薬物投与前後パラメータセットを格納している。パラメータセットとは、1以上の生体パラメータである。生体パラメータには細胞の種々のチャネル(たとえば、Naチャネル、Caチャネル、KATPチャネル、Krチャネル、K1チャネル、Ksチャネルなど)を流れる電流や、各チャネルの開閉速度や、イオン親和性、細胞内外のイオン濃度などがある。また、生体パラメータの種類は、数百にも及ぶ。薬物投与前の動物のパラメータセットと薬物投与後の動物のパラメータセットは、例えば、それぞれ、実施の形態4で述べる生体パラメータ決定装置が取得した生体パラメータセットであることは好適である。また、後述の生体パラメータ決定装置が薬物投与前後パラメータセットを取得し、薬物投与前後パラメータセット格納部101に蓄積する場合、当該生体パラメータ決定装置が利用する実験活動電位情報は、一の動物(例えば、マウス)に対して、薬物投与前に測定した活動電位情報と、当該同一の動物に対して、薬物投与後に測定した活動電位情報である。薬物投与前後パラメータセットは、2つの生体パラメータセットを有する。なお、薬物投与前後パラメータセットの例を図2に示す。図2において、薬物投与前の生体パラメータセットの値、薬物投与後の生体パラメータセットの値を、生体パラメータごとに有する。図2において、生体パラメータ「IKr」は、薬物投与前「2.0」、薬物投与後「2.0」で変化はないが、生体パラメータ「IK1」は、薬物投与前「1.10」、薬物投与後「2.20」で変化する。薬物投与前後パラメータセット格納部101は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0042】
動物薬効情報取得部102は、薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する。動物薬効情報は、通常、薬物投与前の生体パラメータセットと薬物投与後の生体パラメータセットの差に基づく情報である。例えば、薬物投与前の生体パラメータセットを構成するパラメータP1の値が「4」であり、薬物投与後の生体パラメータセットを構成するパラメータP1の値が「2」である場合、動物薬効情報を構成する数値は、薬物投与によって影響を受ける生体パラメータの変化率である「0.5」とする。つまり、動物薬効情報取得部102は、例えば、着目する生体パラメータの薬物投与前後の変化を元に、動物薬効情報を算出する。動物薬効情報取得部102は、例えば、予め決められた演算式「薬物投与後の生体パラメータの値/薬物投与前の生体パラメータの値」を読み出し、当該演算式に薬物投与前の生体パラメータセットを構成するパラメータP1の値「4」、薬物投与後の生体パラメータセットを構成するパラメータP1の値「2」を代入し、動物薬効情報「P1,0.5」を得る。動物薬効情報は、ここでは、パラメータを識別する情報と、動物薬効情報前後のパラメータ値の変化率の情報を有する。動物薬効情報は、例えば、薬物投与前の生体パラメータと薬物投与後の生体パラメータの値の差等でも良い。つまり、上記の「差に基づく情報」は、薬物投与前の生体パラメータセットと薬物投与後の生体パラメータセットの違いの程度を表す情報であれば良く、その取得方法は問わない。動物薬効情報取得部102は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。動物薬効情報取得部102の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0043】
変換元情報格納部103は、動物薬効情報を、他の生物(人などの実験データを取得した生物以外の生物)の薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である変換元情報を格納している。変換元情報は、例えば、「0.5」である。変換元情報は、例えば、マウス等の動物に与える薬効と、ヒトなどの他の生物(実験対象の動物を除く)が受ける薬効の比率である。また、変換元情報は、例えば、[0]イオン電流を定義するマウス等の動物の数式の情報を含む。また、変換元情報は、例えば、[0]同じイオン電流を定義するヒトの数式の情報と、パラメータ「0.5」を含む。ここで、図3に示すように、動物(ここでは、「モルモット」)と人では心筋活動電位の波形や収縮力の時間変化、各イオンチャネルの電流、各イオンチャネルの性質に大きな種差が存在する。そして、図3に示す実験結果に鑑み、本具体例では、変換元情報を、例えば、「0.5」としている。図3において、(1)は人のデータ、(2)は動物のデータである。図3において、(a)は活動電位のグラフ、(b)から(d)はそれぞれ、一過性外向きカリウムイオン電流、L型カルシウムイオン電流、早期活性化遅延整流性カリウムイオン電流、(e)はカルシウムイオンの流量、(f)は心筋細胞の収縮力、(g)は一過性外向きカリウム電流の電位依存性である。変換元情報格納部103は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。また、変換元情報は、ユーザが入力した情報でも良いし、外部装置から送信された情報でも良いし、記録媒体から読み出した情報でも良い。
【0044】
薬効変換部104は、動物薬効情報を、変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する。薬効変換部104は、例えば、動物薬効情報「P1,0.5」と、変換元情報「0.5」を用いて、対象生体薬効情報「P1,0.25」を得る。薬効変換部104は、例えば、動物薬効情報を構成する数値「0.5」に対して、変換元情報「0.5」を乗算し、対象生体薬効情報を構成する数値「0.25」を得る。対象生体薬効情報は、ここでは、薬物投与による、ヒトなどのシミュレーションの対象となる生物の生体パラメータの変化率の情報であるが、薬物投与後の生体パラメータの値や、薬物投与後の生体パラメータセット等でも良い。なお、「P1」は、生体パラメータの識別子である。また、薬効変換部104は、例えば、イオン電流を定義するヒトの数式の情報を変換元情報格納部103から読み出し、2つの数式の情報と、動物薬効情報「P1,0.5」を用いて、対象生体薬効情報を算出する。具体的には、変換元情報格納部103は、図50に示す動物における、IKrを算出するモデルを格納している。また、薬効変換部104は、図51に示すヒトにおける、IKrを算出するモデルを格納している。図50、図51において、「Vm」は膜電位「Ek」はカリウムイオンの逆転電位、「[K]o」は細胞外カリウム濃度、「Cm」は膜容量である。そして、薬効変換部104は、例えば、図51のモデルと動物薬効情報を構成する数値「0.5」を読み出し、GKrに動物薬効情報を構成する数値「0.5」を乗算し、対象生体薬効情報「IKr」などの値を算出する。薬効変換部104は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。薬効変換部104の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0045】
心筋細胞シミュレーション部105は、対象生体薬効情報を受け付け、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する。なお、心筋細胞動作情報は、例えば、活動電位波形に関する情報である活動電位情報や、心臓の収縮力についての情報や、カルシウムイオンなどのイオンの流量についての情報等である。活動電位情報とは、例えば、活動電位持続時間(Action Potential Duration; APD)についての情報や、活動電位振幅(Action Potential Amplitude;APA)についての情報などである。APDとは、APAの任意の割合における電位を示す、活動電位の立ち上がり相と再分極相の時間の差を言う。APDについての情報とは、例えば、APD30の値、APD60値、およびAPD90の値などがある。APAとは、静止膜電位の絶対値と、活動電位波形のpeak値(アーチファクトやノイズを除く)の和である。また、APAの任意の割合における電位(Vm(x))とは、APAの任意の割合の値を算出し、その値をpeak値から減算した値(電位)である。活動電位の立ち上がり相とは、静止膜電位からpeakに達するまでの間である。活動電位の再分極相とは、peakから静止膜電位におちつくまでの間である。数理モデル、実験データいずれも、Vm(x)に一致する電位と時間のデータが存在しない場合は、そのVm(x)の前後の値から、何らかの方法(例:直線補間)で補間した値を用いる。なお、波形の最高電位(a点)から最低電位(b点)の高さを100とした場合に、a点から30下の高さにおける、波形の幅がAPD30である。同様に、波形の最高電位(a点)から最低電位(b点)の高さを100とした場合に、a点から60下、90下の高さにおける、波形の幅がAPD60、APD90である。心筋細胞シミュレーション部105は、例えば、生体パラメータセットを入力として受け付け、心筋細胞動作情報を出力する機能を有する。また、心筋細胞シミュレーション部105は、後述するQT間隔を取得する処理を行っても良いし、スパイラルウェーブのシミュレーションを行っても良い。QT間隔を取得する処理やスパイラルウェーブのシミュレーションを行う処理は公知技術であるので詳細な説明を省略する。心筋細胞シミュレーション部105は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。心筋細胞シミュレーション部105の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0046】
活動電位モデル情報格納手段1051は、活動電位の情報である活動電位情報を取得する算出式を示す情報である活動電位モデル情報を格納している。活動電位モデル情報は、例えば、以下の数式1である。
【数1】

【0047】
数式1において、「x」は、APAの任意の割合であり、30、60、または90などの数値が代入される。Vm(x)は、上述のように算出される電位である。
【0048】
「f(Vm(x))再分極相」は、活動電位が再分極相におけるAPAの任意の割合に相当する電位を示す時間を示す。
【0049】
「f(Vm(x))立ち上がり相」は、活動電位が立ち上がり相におけるAPAの任意の割合に相当する電位を示す時間を示す。
【0050】
なお、活動電位モデル情報およびAPDを取得する技術は、公知技術であるので、詳細な説明を省略する。また、活動電位モデル情報は、人の活動電位モデルの情報であることが好適であるが、マウス等の活動電位モデルの情報でも良い。マウス等の活動電位モデルの情報を用いて、シミュレーションを行った場合でも、副作用等の検出が可能であるからである。
【0051】
活動電位モデル情報格納手段1051は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0052】
活動電位情報取得手段1052は、活動電位モデル情報格納手段1051の活動電位モデル情報を読み出し、当該活動電位モデル情報を用いて、活動電位情報を取得する。さらに具体的には、活動電位情報取得手段1052は、数式1の活動電位モデル情報を読み出し、Vm(x)を取得し、「f(Vm(x))再分極相」にVm(x)を代入し、「f(Vm(x))再分極相」を算出し、その結果をメモリ上に記憶する。また、活動電位情報取得手段1052は、取得したVm(x)を読み出した「f(Vm(x))立ち上がり相」に代入し、「f(Vm(x))立ち上がり相」の結果を得て、メモリ上の「f(Vm(x))再分極相」の演算結果から「f(Vm(x))立ち上がり相」の演算結果の差を算出し、メモリ上に記憶する。活動電位情報の例は、図4の(1)のグラフである。なお、活動電位情報取得手段1052は、活動電位情報以外の情報であるカルシウムイオンのイオン量(図4(2))、Force(図4(3))などの情報を取得し、一時格納しても良い。なお、Forceとは、心筋細胞の発生する収縮力である。また、活動電位情報取得手段1052が取得する情報は、図5に示す細胞内イオン流量や心筋収縮力の時間変化情報などでも良い。
【0053】
活動電位情報取得手段1052は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。活動電位情報取得手段1052の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0054】
QT間隔モデル情報格納手段1053は、QT間隔を示す情報であるQT間隔情報を取得する算出式を示す情報であるQT間隔モデル情報を格納している。QT間隔モデル情報は、例えば、数式2から数式4の数式である。
【数2】

【0055】
なお、数式2において、「I」は、任意の生体パラメータ、「coefficient」は細胞種特有の係数、「Ix_original」は、基本となる細胞モデルである。基本となる細胞モデルとは、例えば、心内膜側の心室筋細胞(Endo cell)である。なお、基本となる細胞モデルは、他の細胞モデルでも良い。
【0056】
また、QT間隔モデル情報として、QT間隔モデル情報格納手段1053は、図6に示す細胞種特有の係数「coefficient」を保持している、とする。図6は、心筋細胞モデルとして、Epi cell(心外膜細胞)、M cell(心中央膜細胞)、Endo cell(心内膜細胞)の3種類の細胞モデルを使用することが望ましいが、これらEpi細胞、M細胞、Endo細胞は、一例として図6に示すように細胞モデルのIto、IKr、IKsの生体パラメータを変更することにより構成される。
【0057】
また、QT間隔モデル情報格納手段1053は、QT間隔モデル情報として、以下の数式3の情報を保持している。
【数3】

【0058】
数式3は、以下の概念を示す。つまり、上記の3種類の細胞について、Endo細胞−M細胞−Epi細胞の順に並べ、各細胞モデルの間をギャップジャンクションで結合し、Endo細胞の左端の細胞に刺激電流を加える。かかる概念を示す図が図7である。
【0059】
図7において、「stim」とは、Endo細胞の左端の細胞に加える刺激電流である。また、細胞モデルは「Cell」、ギャップジャンクションは「Gap Junction」で示される。また、図7において、細胞は100μmのサイズである。
【0060】
なお、QT間隔モデル情報は、人のQT間隔モデルの情報であることが好適であるが、マウス等のQT間隔モデルの情報でも良い。マウス等のQT間隔モデルの情報を用いて、シミュレーションを行った場合でも、副作用等の検出が可能であるからである。
【0061】
そして、QT間隔シミュレーション手段1054は、各細胞の電位の計算を行うために、数式3の情報をQT間隔モデル情報格納手段1053から読み出し、演算する。QT間隔シミュレーション手段1054は、n番目の細胞の電位を計算する場合には、n−1番目の細胞とn番目の細胞の電位差と、n+1番目とn番目の細胞の電位差の和を1次元ケーブルの抵抗(R)で割った値(ギャップジャンクション電流[((Vi−1−V)+(Vi+1−V)/R)])を計算する。QT間隔シミュレーション手段1054は、このギャップジャンクション電流から、通常の細胞モデルで計算する各細胞のイオン電流(Iion)、刺激電流(Istim)を減算し、i番目の電圧を算出する。
【0062】
なお、数式3において、Cは、細胞膜容量である。
【0063】
次に、QT間隔シミュレーション手段1054は、刺激後の連結した各細胞の電位を、下記の数式4に示す計算式を用い、心電図波形(ECG)を取得する。数式4に示す計算式の情報も、QT間隔モデル情報格納手段1053に格納されている。
【数4】

【0064】
数式4において、「Φ」は心電図電位、「a」は1次元ケーブルの半径、「ρ」はcell内のコンダクタンス、「ρ」はcell外のコンダクタンス、「r」は観測点までの距離、「x」は原点から細胞までの距離である。また、「V」は細胞膜電位である。なお、数式4は、公知の式であり、詳細な説明を省略する。
【0065】
QT間隔モデル情報格納手段1053は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0066】
QT間隔シミュレーション手段1054は、QT間隔モデル情報を読み出し、当該QT間隔モデル情報を用いて、QT間隔情報を取得する。具体的には、例えば、QT間隔シミュレーション手段1054は、上記の数式2から数式4の情報をQT間隔モデル情報格納手段1053から読み出す。そして、数式2から数式4の情報を用いて、上述した演算を行い、図8に示すような心電図波形を得る。そして、QT間隔シミュレーション手段1054は、算出された心電図波形から、QT間隔時間を取得する(図8参照)。なお、数式4における「a」、「ρ」、「ρ」、「r」、「x」は、定数であり、予めQT間隔シミュレーション手段1054が保持しており、QT間隔シミュレーション手段1054は、かかる定数値を読み出して、数式4に代入する。また、心電図波形の情報からQT間隔時間を取得する処理は、公知技術であるので詳細な説明を省略する。QT間隔シミュレーション手段1054は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。QT間隔シミュレーション手段1054の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0067】
スパイラルウェーブモデル情報格納手段1055は、スパイラルウェーブをシミュレーションするための情報であるスパイラルウェーブモデル情報を格納している。スパイラルウェーブは、心筋細胞モデルを2次元に配列したシミュレーションモデル(図9参照)により取得されえる。図9において、GやGなどは、ギャップジャンクションであり、「cell」は心筋細胞モデルである。図9において、心筋細胞モデル(cell)を正方格子上に配列し、各細胞間をギャップジャンクション(G、G)で連結する。各細胞間のギャップジャンクションモデルは、繊維方向と直行方向のコンダクタンス(電流の通過しやすさ)を変化させることで、より詳細なシミュレーションを行うことが可能である。コンダクタンスとして、例えば、繊維方向のG=0.2(s)、直行方向のG=G/Ka(Ka=5.8)である。
【0068】
スパイラルウェーブモデル情報は、例えば、以下の数式5、数式6、数式7の情報である。
【数5】

【数6】

【数7】

【0069】
数式5から数式7を用いて、後述するスパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、各細胞モデルにつき1ステップずつ、細胞間電流と刺激電流の加算を刺激電流として設定し、各細胞モデルの膜電位変化を計算する。また、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、細胞間電流を、各細胞の電位から計算する。
【0070】
数式5において、Iext(i,j)は、二次元のcellの配列において縦i番目、横j番目のcellの外部電流である。Iinter(i,j)は、縦i番目、横j番目のcellの細胞間電流である。Istim(i,j)は、縦i番目、横j番目のcellの刺激電流である。
【0071】
また、数式6において、Vmt1(i,j)は、縦i番目、横j番目のcellの時間t1における膜電位である。Pt0(i,j)は、時間t0(t1の直前の時間)における縦i番目、横j番目のcell自身の保持している膜電位である。fは縦i番目、横j番目のcellが時間t0で外部から加えられる刺激電流(Iext)と自身が保持している膜電位(P)から次の時間t1の縦i番目、横j番目のcellの膜電位を算出する関数である。
【0072】
また、数式7は、各細胞の電位から細胞間電流値(Iintert1(i,j))を算出する式である。数式7において、Gは、繊維方向のコンダクタンスであり、例えば、0.2(s)である。また、数式7において、Gは、直交方向のコンダクタンスであり、例えば、「G/Ka(Ka=5.8)」で算出される。なお、「Ka」とは、偏向性の度合いを示す数値である。さらに、心筋細胞は、繊維方向にはギャップジャンクションが発達しており、コンダクタンスが大きく、電流が伝播しやすい。逆に、心筋細胞は、繊維方向に直交する方向には、あまりギャップジャンクションが発達しておらず、コンダクタンスが低くなっている。これらの生理的な状態を表すのが偏向率(Ka)である。
【0073】
なお、スパイラルウェーブモデル情報は、人のスパイラルウェーブモデルの情報であることが好適であるが、マウス等のスパイラルウェーブモデルの情報でも良い。マウス等のスパイラルウェーブモデルの情報を用いて、シミュレーションを行った場合でも、副作用等の検出が可能であるからである。
【0074】
スパイラルウェーブモデル情報格納手段1055は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0075】
スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、スパイラルウェーブモデル情報を読み出し、当該スパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行う。
【0076】
スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。スパイラルウェーブシミュレーション手段1056の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0077】
不整脈情報取得部106は、心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する。心筋細胞動作情報とは、例えば、活動電位情報取得手段1052が取得した活動電位情報や、QT間隔シミュレーション手段1054におけるシミュレーション結果や、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056におけるシミュレーション結果などである。不整脈情報とは、例えば、副作用(不整脈)のあるなし、副作用(不整脈)の度合い、ADP30,60,90、QT間隔などである。不整脈情報取得部106は、例えば、心筋細胞動作情報を数値として取得する。心筋細胞動作情報と不整脈情報が一致していても良い。かかる場合、不整脈情報取得部106は、不整脈情報である心筋細胞動作情報を、不整脈判断部107に渡す処理(この処理も「不整脈情報を取得する処理」と言う。)を行う。不整脈情報取得部106は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。不整脈情報取得部106の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0078】
不整脈判断部107は、心筋細胞動作情報を用いて不整脈についての判断を行う。さらに具体的には、不整脈判断部107は、不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。なお、不整脈危険性評価装置において、不整脈判断部107は、必須ではない。つまり、後述する出力部109における出力情報の出力態様によって、不整脈判断部107が不整脈か否かの判断を行わなくとも、ユーザは、不整脈の有無を判断できる場合は、不整脈判断部107が行う判断処理は不要である。不整脈判断部107は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。不整脈判断部107の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0079】
閾値格納手段1071は、心筋細胞動作情報についての閾値を格納している。心筋細胞動作情報についての閾値とは、例えば、QT間隔についての閾値やスパイラルウェーブについての閾値などである。閾値格納手段1071は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0080】
比較手段1072は、心筋細胞シミュレーション部105が取得した心筋細胞動作情報と、閾値格納手段1071の閾値とを比較する。また、比較手段1072は、活動電位情報取得手段1052が取得した活動電位情報と、その閾値を比較する。また、比較手段1072は、QT間隔情報とQT間隔についての閾値とを比較する。また、比較手段1072は、スパイラルウェーブのシミュレーション結果とスパイラルウェーブについての閾値とを比較する。比較手段は1072、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。比較手段1072の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0081】
不整脈判断手段1073は、比較手段1072の比較結果を用いて、不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。不整脈判断手段1073は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。不整脈判断手段1073の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0082】
出力情報構成部108は、不整脈情報取得部106が取得した不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する。また、出力情報構成部108は、不整脈判断部107の判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成しても良い。出力情報構成部108は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出力情報構成部108の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0083】
出力部109は、出力情報構成部108が構成した出力情報を出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積等を含む概念である。出力部109は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部109は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0084】
次に、不整脈危険性評価装置の動作について図10から図11のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
(ステップS1001)動物薬効情報取得部102は、薬物投与前後パラメータセット格納部101から、薬物投与前後パラメータセットを読み出す。
【0086】
(ステップS1002)動物薬効情報取得部102は、ステップS1001で読み出した薬物投与前後パラメータセットから、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する。
【0087】
(ステップS1003)薬効変換部104は、変換元情報格納部103から変換元情報を読み出す。
【0088】
(ステップS1004)薬効変換部104は、ステップS1002で取得した動物薬効情報を、ステップS1003で読み出した変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する。
【0089】
(ステップS1005)心筋細胞シミュレーション部105の活動電位情報取得手段1052は、活動電位モデル情報格納手段1051から活動電位モデル情報を読み出す。
【0090】
(ステップS1006)活動電位情報取得手段1052は、ステップS1004で得た対象生体薬効情報を受け付け、当該対象生体薬効情報と、ステップS1005で読み出した活動電位モデル情報を用いて、活動電位情報を取得する。
【0091】
(ステップS1007)QT間隔シミュレーション手段1054は、QT間隔モデル情報格納手段1053のQT間隔モデル情報を読み出す。
【0092】
(ステップS1008)QT間隔シミュレーション手段1054は、ステップS1006で読み出したQT間隔モデル情報を用いて、QT間隔情報を取得する。
【0093】
(ステップS1009)スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、スパイラルウェーブモデル情報格納手段1055のスパイラルウェーブ情報を読み出す。
【0094】
(ステップS1010)スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、ステップS1008で読み出したスパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行う。
【0095】
(ステップS1011)不整脈情報取得部106は、ステップS1006で得た活動電位情報や、ステップS1008におけるシミュレーション結果や、ステップS1010におけるシミュレーション結果を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する。
【0096】
(ステップS1012)不整脈判断部107は、ステップS1011で取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。不整脈判断処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0097】
(ステップS1013)出力情報構成部108は、不整脈判断部107の判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成する。出力情報は、「不整脈の危険性があり」などを示す情報だけでも良い。
【0098】
(ステップS1014)出力部109は、ステップS1013で構成した出力情報を出力する。処理を終了する。
【0099】
なお、図10のフローチャートにおいて、活動電位情報や、QT間隔情報や、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056におけるシミュレーション結果は、心筋細胞動作情報の好ましい一例である。
【0100】
また、図10のフローチャートにおいて、取得した活動電位情報から不整脈あり、と判断した場合に、QT間隔情報やスパイラルウェーブシミュレーション手段1056におけるシミュレーション結果を取得せずに、不整脈ありの旨を示す出力情報を取得しても良い。
【0101】
また、図10のフローチャートにおいて、活動電位情報、QT間隔情報、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056におけるシミュレーション結果の順で不整脈か否かを判断したが、その判断の順序は問わないことは言うまでもない。
【0102】
また、図10のフローチャートにおいて、3種類の心筋細胞動作情報を取得した後、不整脈の判断を行ったが、各心筋細胞動作情報を取得したのち、個別に不整脈の判断を行っても良い。かかる場合、不整脈の危険がある、との判断結果を得た場合に、他の心筋細胞動作情報により不整脈判断を行わなくても良い。
【0103】
さらに、図10のフローチャートにおいて、3種類の心筋細胞動作情報を用いて不整脈の判断を行ったが、一つまたは二つの心筋細胞動作情報を用いて不整脈の判断を行っても良い。
【0104】
次に、ステップS1012の不整脈判断処理について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0105】
(ステップS1101)不整脈判断部107の比較手段18072は、不整脈情報取得部106が取得した活動電位情報を読み出す。
【0106】
(ステップS1102)比較手段18072は、閾値格納手段18071の活動電位情報についての閾値を読み出し、ステップS1101で取得した活動電位情報と閾値を比較する。そして、不整脈判断手段18073は、不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。不整脈の副作用を示している情報であればステップS1103に行き、不整脈の副作用を示している情報でなければステップS1104に行く。
【0107】
(ステップS1103)不整脈判断手段18073は、出力する変数に、「不整脈あり」の旨の情報を代入する。上位関数にリターンする。
【0108】
(ステップS1104)比較手段18072は、不整脈情報取得部106が取得したQT間隔シミュレーション手段1054におけるシミュレーション結果を読み出す。
【0109】
(ステップS1105)比較手段18072は、閾値格納手段18071のQT間隔についての閾値を読み出し、ステップS1103で取得したシミュレーション結果と閾値を比較する。そして、不整脈判断手段18073は、不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。不整脈の副作用を示している情報であればステップS1103に行き、不整脈の副作用を示している情報でなければステップS1106に行く。
【0110】
(ステップS1106)比較手段18072は、不整脈情報取得部106が取得したスパイラルウェーブのシミュレーション結果を読み出す。
【0111】
(ステップS1107)比較手段18072は、閾値格納手段18071のスパイラルウェーブについての閾値を読み出し、ステップS1103で取得したシミュレーション結果と閾値を比較する。そして、不整脈判断手段18073は、不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する。不整脈の副作用を示している情報であればステップS1103に行き、不整脈の副作用を示している情報でなければステップS1108に行く。
【0112】
(ステップS1108)不整脈判断手段18073は、出力する変数に、「不整脈なし」の旨の情報を代入する。上位関数にリターンする。
【0113】
なお、図11のフローチャートにおいて、3種類の心筋細胞動作情報(活動電位情報、QT間隔、スパイラルウェーブ)に対する不整脈の判断の順序は問わない。
【0114】
以下、本実施の形態における不整脈危険性評価装置の具体的な動作について説明する。
(具体例1)
【0115】
まず、活動電位情報を用いた不整脈判断の具体例について説明する。
【0116】
図12は、薬物投与前後パラメータセット格納部101に格納されている薬物投与前後パラメータセットである。図12において、薬物投与前の生体パラメータセットの値、薬物投与後の生体パラメータセットの値を、生体パラメータごとに有する。また、図12において、薬物投与の効果(%)を保持している。図12の薬物投与前後パラメータセットは、薬物(dl−Sotalol)を投与した場合の生体パラメータの変化を示す。
【0117】
また、変換元情報格納部103は、変換元情報「0.98」を保持している、とする。
【0118】
かかる場合、本不整脈危険性評価装置は、以下のように動作する。
【0119】
つまり、動物薬効情報取得部102は、図12の薬物投与前後パラメータセットを読み出す。
【0120】
次に、動物薬効情報取得部102は、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報「IKr,0」を取得する。ここで、「0」は、薬物投与前後で変化のある生体パラメータ識別子「IKr」で識別されるパラメータの変化率である。つまり、薬物投与により、「IKr」が阻害されたこととなる。
【0121】
次に、薬効変換部104は、変換元情報格納部103から変換元情報「0.98」を読み出す。変換元情報は、上述したように、動物薬効情報を生物の薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である。
【0122】
次に、薬効変換部104は、取得した動物薬効情報「IKr,0」を、読み出した変換元情報「0.98」を用いて、対象生体薬効情報「IKr,0」を得る。対象生体薬効情報を構成する値「0」は、例えば、「0×0.98」により得られる。
【0123】
次に、心筋細胞シミュレーション部105の活動電位情報取得手段1052は、得た対象生体薬効情報「IKr,0」を受け付け、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報(ここでは、活動電位情報)を取得する。活動電位情報取得手段1052は、例えば、生体パラメータ「IKr」が、正常な状態からゼロになる、という情報を受け付け、心筋細胞のシミュレーションを行い、活動電位情報を取得する。
【0124】
なお、活動電位情報取得手段1052が行うシミュレーションは、上記の数式1で示される。活動電位情報取得手段1052は、予め格納されている数式1の演算式の情報を読み取り、心筋細胞のシミュレーションを行い、活動電位情報を取得し、一時格納する。薬物投与後の活動電位情報の例は、図13の(2)のグラフである。なお、図13の(1)のグラフは、別途、算出し、出力した薬物投与前の活動電位情報の例である。
【0125】
次に、不整脈情報取得部106は、図13の活動電位情報のグラフから、ここでは、APD90の変化率を算出する。APD90の変化率とは、薬物投与前の活動電位情報のAPD90と、薬物投与後の活動電位情報のAPD90の変化率である。まず、不整脈情報取得部106は、薬物投与前の活動電位情報のAPD90を、図13(1)のグラフから266.3(ms)であると算出し、一時メモリに格納する。そして、不整脈情報取得部106は、薬物投与後の活動電位情報のAPD90を、図13(2)のグラフから311.4(ms)であると算出し、一時メモリに格納する。次に、不整脈情報取得部106は、APD90の変化率を「311.4/266.3*100−100=16.9(%)」と算出する。そして、不整脈判断部107の比較手段1072は、閾値格納手段1071に格納されているAPD90の変化率の正常範囲の上限の閾値「10(%)」を読み出し、実験結果のAPD90の変化率「16.9(%)」と比較する。
【0126】
次に、不整脈判断手段1073は、実験結果のAPD90の変化率「16.9(%)」が正常範囲の上限の閾値「10(%)」より大きいので、不整脈が発生する、と判断する。
【0127】
次に、出力情報構成部108は、例えば、「不整脈が発生します」という文字列と、図13のグラフからなる出力情報を構成し、出力部109は、例えば、図13のグラフとともに「不整脈が発生します」という文字列を出力する。
(具体例2)
【0128】
次に、QT間隔情報を用いた不整脈判断の具体例について説明する。まず、薬物投与前後パラメータセット格納部101には、具体例1と同様、図12に示す薬物投与前後パラメータセットが格納されている。また、変換元情報格納部103は、変換元情報「0.98」を保持している。
【0129】
次に、薬効変換部104は、変換元情報格納部103から変換元情報「0.98」を読み出す。変換元情報は、上述したように、動物薬効情報を生物の薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である。
【0130】
次に、薬効変換部104は、取得した動物薬効情報「IKr,0」を、読み出した変換元情報「0.98」を用いて、対象生体薬効情報「IKr,0」を得る。対象生体薬効情報を構成する値「0」は、例えば、「0×0.98」により得られる。
【0131】
次に、心筋細胞シミュレーション部105のQT間隔シミュレーション手段1054は、得た対象生体薬効情報「IKr,0」を受け付け、QT間隔モデル情報を読み出し、当該QT間隔モデル情報に対象生体薬効情報「IKr,0」を代入し、QT間隔情報(ここでは、QT間隔)を取得する。かかるQT間隔を算出する際の心電図波形、およびQT間隔を図14に示す。図14において、上部のグラフは薬物投与前のグラフであり、下部のグラフは薬物投与後のグラフである。図14において、薬物投与前のQT間隔は、「144.73(ms)」、薬物投与後のQT間隔は、「179.01(ms)」であることを示す。
【0132】
次に、不整脈情報取得部106は、薬物投与前のQT間隔「144.73(ms)」、薬物投与後のQT間隔「179.01(ms)」から、変化率「179.01/144.73*100=123.7(%)」を算出し、メモリ上に配置する。かかる「123.7(%)」は、ここでの不整脈情報である。
【0133】
次に、比較手段1072は、閾値格納手段1071の閾値「+10%」を読み出す。そして、「123.7(%)」における増加分「+23.7(%)」と閾値「+10%」を比較する。
【0134】
次に、不整脈判断手段1073は、「123.7(%)」における増加分「+23.7(%)」が閾値「+10%」の範囲内に入っていないと判断し、その結果、不整脈が発生する、と判断する。
【0135】
次に、出力情報構成部108は、例えば、「不整脈が発生します」との文字列と、図14のグラフを有する出力情報を構成し、出力部109は、図14のグラフとともに「不整脈が発生します」という文字列を出力する。
【0136】
なお、本具体例におけるQT間隔モデル情報は、動物のQT間隔モデル情報を用いている。但し、人に投薬した場合の副作用を検知する場合には問題はない。
(具体例3)
【0137】
次に、スパイラルウェーブを用いた不整脈判断の具体例について説明する。まず、薬物投与前後パラメータセット格納部101には、具体例1、2と同様、図12に示す薬物投与前後パラメータセットが格納されている。また、変換元情報格納部103は、変換元情報「0.98」を保持している。
【0138】
次に、薬効変換部104は、変換元情報格納部103から変換元情報「0.98」を読み出す。変換元情報は、上述したように、動物薬効情報を人などの他の生物の薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である。
【0139】
次に、薬効変換部104は、取得した動物薬効情報「IKr,0」を、読み出した変換元情報「0.98」を用いて、対象生体薬効情報「IKr,0」を得る。対象生体薬効情報を構成する値「0」は、例えば、「0×0.98」により得られる。
【0140】
次に、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、スパイラルウェーブモデル情報を読み出し、当該スパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行う。
【0141】
スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、まず、正方格子上に配列したスパイラルウェーブモデル(図15参照)の上部4列に刺激を加え(図15(a)の定常刺激)、その刺激の208msec後に、スパイラルウェーブモデルの右半分に正常のリズムから外れた期外刺激を加える(図15(b)の期外刺激)、とする。そして、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、かかる情報を画面上に出力する、とする。かかる状況が、図15(a)および(b)である。
【0142】
次に、スパイラルウェーブシミュレーション手段1056は、対象生体薬効情報「IKr,0」をスパイラルウェーブモデル情報格納手段1055のスパイラルウェーブモデル情報(数式5から7の情報)に与え、薬物投与後のスパイラルウェーブモデルを取得し、出力する。すると、図15(d)に示すように、スパイラルウェーブが発生した。なお、スパイラルウェーブに関して、ユーザが画面上でスパイラルウェーブを確認し、スパイラルウェーブが発生した旨の情報を入力しても良い。かかる場合、不整脈情報取得部106は、ユーザの「スパイラルウェーブが発生した旨の情報」を受け付ける。なお、かかる場合、不整脈判断部107は、動作しなくても良い。一方、不整脈判断部107は、スパイラルウェーブの発生を自動検知し、不整脈が発生したことを判断しても良い。スパイラルウェーブ発生の自動検知は、波形の形状の模様がディスプレイ上に存在することを検知する画像処理技術を用いて可能である。
【0143】
なお、図15(c)は、正常細胞モデルを使って作製したスパイラルウェーブモデルである。図15(c)によれば、薬物投与前の正常細胞モデルに、期外刺激を加えても不整脈(リエントリー)の発生を示すスパイラルウェーブは発生することなく、細胞は静止状態に戻った。
【0144】
また、本具体例におけるスパイラルウェーブモデル情報は、動物のスパイラルウェーブモデル情報を用いている。但し、人に投薬した場合の副作用を検知する場合には問題はない。
【0145】
以上、本実施の形態によれば、創薬の早期の段階で得られるデータを用いて、薬物のヒトなどの生物に対する不整脈危険性を評価することができる。さらに具体的には、本実施の形態によれば、活動電位情報や、QT間隔や、スパイラルウェーブから不整脈危険性を評価できる。
【0146】
なお、本実施の形態の不整脈危険性評価装置において、薬物投与前後パラメータセット格納部101、動物薬効情報取得部102は存在せず、最初に動物薬効情報を与えても良い。つまり、薬物投与前後パラメータセット格納部101、動物薬効情報取得部102に代わって、不整脈危険性評価装置は、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を格納している動物薬効情報格納部を有しても良い。
【0147】
また、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。なお、本実施の形態における不整脈危険性評価装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、記録媒体に格納されている薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する動物薬効情報取得ステップと、前記動物薬効情報を、格納されている変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する薬効変換ステップと、前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーションステップと、前記心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する不整脈情報取得ステップと、前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成ステップと、前記出力情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム、である。
【0148】
上記プログラムは、コンピュータに、前記心筋細胞シミュレーションステップで取得した心筋細胞動作情報と、格納している閾値とを比較し、当該比較結果を用いて、前記不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する不整脈判断ステップをさらに実行させ、前記出力情報構成ステップにおいて、前記不整脈判断ステップの判断結果をも用いて出力情報を構成する、ことは好適である。
【0149】
また、上記プログラムにおける前記心筋細胞シミュレーションステップは、活動電位を取得する算出式を示す情報である活動電位モデル情報を読み出し、当該活動電位モデル情報を用いて、活動電位情報を取得する活動電位情報取得ステップを具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記活動電位情報を含む、ことは好適である。
【0150】
また、上記プログラムにおける前記心筋細胞シミュレーションステップは、QT間隔を取得する算出式を示す情報であるQT間隔モデル情報を読み出し、当該QT間隔モデル情報を用いて、QT間隔情報を取得するQT間隔シミュレーションステップを具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記QT間隔情報を含む、ことは好適である。
【0151】
また、上記プログラムにおける前記心筋細胞シミュレーションステップは、スパイラルウェーブをシミュレーションするための情報であるスパイラルウェーブモデル情報を読み出し、当該スパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行うスパイラルウェーブシミュレーションステップをさらに具備し、前記心筋細胞動作情報は、前記スパイラルウェーブにシミュレーション結果を含む、ことは好適である。
(実施の形態2)
【0152】
本実施の形態において、単一細胞レベルの不整脈危険性の評価を行う不整脈危険性評価装置であり、特に、異常自動能ついて評価する装置について説明する。ここで、自動的に電気信号を発生する機能のことを「自動能」と呼び、心筋組織におけるこの機能は、洞結節と呼ばれるペースメーカー細胞が担っている。様々な病的条件下では、自動能が心室筋や心房筋等、洞結節以外の部分に発生することがあり、これを異常自動能といい、不整脈の原因と考えられている。また、異常自動能の一種として、「DAD」「EAD」「Low voltage oscillation」などがある。
【0153】
本不整脈危険性評価装置は、実験動物の心室筋から単離された正常な細胞に与えても、異常自動能を惹起することはないが、病的条件下で投与された場合、異常自動能を惹起する可能性がある薬剤を対象としている。即ち、生理的条件下の活動電位記録で、すでに異常自動能を惹起する薬剤は、その危険性は明らかであり、本不整脈危険性評価装置による解析の対象とはならない。また、本装置には、細胞内Ca2+overloadおよび細胞膜K+conductanceの減少という2種類の病的条件が格納されている。さらに、いわゆるQT延長薬剤の大部分が「HERG channel blocker」であるという事実から、IKrの抑制効果を中心に考慮した装置である。
【0154】
図16は、本実施の形態における不整脈危険性評価装置のブロック図である。
【0155】
不整脈危険性評価装置は、受付部1601、心筋細胞シミュレーション部1602、不整脈判断部1603、出力情報構成部1604、出力部1605を具備する。
【0156】
心筋細胞シミュレーション部1602は、イオン濃度算出モデル情報格納手段16021、イオン濃度算出手段16022、細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023、細胞膜電位算出手段16024を具備する。
【0157】
不整脈判断部1603は、イオン濃度閾値格納手段16031、イオン濃度不整脈判断手段16032、細胞膜電位閾値格納手段16033、細胞膜電位不整脈判断手段16034を具備する。
【0158】
受付部1601は、薬物投与の影響を示す1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報である1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付ける。イオン流量情報は、例えば、本装置内の全てのイオンチャネル・担体電流の電気流量に及ぼす影響を示す情報である。イオン流量情報は、例えば、ICaLの抑制率(例えば、50%)である。また、受付部1601が受け取るイオン流量情報は、実施の形態4で述べる生体パラメータ決定装置が取得した生体パラメータセットから得られる、薬物投与前後のパラメータセットを薬効変換したものであることは好適である。受付部1601は、対象生体薬効情報を、記録媒体から読み込んでも良いし、外部装置から受信しても良いし、ユーザからの入力を受付けても良い。受付部1601は、キーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、受信手段等で実現され得る。
【0159】
心筋細胞シミュレーション部1602は、受付部1601が受け付けた対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する。ここでの心筋細胞動作情報とは、筋小胞体uptake site内(細胞内)カルシウムイオン濃度についての情報や、細胞膜電位についての情報である。筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての情報とは、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度の一周期(400ms)ごとの平均濃度や、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度そのものの値の集合などである。細胞膜電位についての情報とは、細胞膜電位の一周期(400ms)ごとの平均膜電位や、細胞膜電位そのものの値の集合などである。心筋細胞シミュレーション部1602は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。心筋細胞シミュレーション部1602の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0160】
イオン濃度算出モデル情報格納手段16021は、1以上のイオン流量情報をパラメータとして筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する演算式の情報であるイオン濃度算出モデル情報を格納している。イオン濃度算出モデル情報の例は、下記の数式8である。
【数8】

【0161】
数式8において、[Ca]upは、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度である。また、ISRUは、筋小胞体uptake siteへのカルシウムフラックスである。また、ISRTは、筋小胞体uptake siteからrelease siteへのフラックスである。また、ISRLは、筋小胞体uptake siteからのカルシウムリークフラックスである。また、ZCaは、カルシウムのイオン価数(=2)である。また、FはFaraday定数である。また、Vupは、筋小胞体uptake siteの容積である。
【0162】
なお、イオン濃度算出モデル情報は、人のイオン濃度算出モデルの情報であることが好適であるが、マウス等のイオン濃度算出モデルの情報でも良い。マウス等のイオン濃度算出モデルの情報を用いて、シミュレーションを行った場合でも、副作用等の検出が可能であるからである。
【0163】
イオン濃度算出モデル情報格納手段16021は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0164】
イオン濃度算出手段16022は、イオン濃度算出モデル情報格納手段16021のイオン濃度算出モデル情報を読み出し、受付部1601が受け付けた1以上のイオン流量情報をイオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出し、算出結果をメモリ上に記憶する。イオン濃度算出手段16022は、数式8の微分方程式を、四次のRunge-Kuttaを用いて算出することは好適である。四次のRunge-Kuttaについては、公知技術であるので詳細な説明を省略する。イオン濃度算出手段16022は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。イオン濃度算出手段16022の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0165】
細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023は、1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を格納している。細胞膜電位算出モデル情報の例は、下記の数式9である。
【数9】

【0166】
数式9において、「V」は、細胞膜電位である。「Itot」は、細胞全体のイオン電流の総和電流である。また、「Iext」は、細胞外から加えられた刺激電流である。また、「C」は、細胞膜容量である。
【0167】
なお、細胞膜電位算出モデル情報は、人の細胞膜電位算出モデルの情報であることが好適であるが、マウス等の細胞膜電位算出モデルの情報でも良い。マウス等の細胞膜電位算出モデルの情報を用いて、シミュレーションを行った場合でも、副作用等の検出が可能であるからである。
【0168】
細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0169】
細胞膜電位算出手段16024は、細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023から細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、受付部1601が受け付けた1以上のイオン流量情報を細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する。そして、細胞膜電位算出手段16024は、算出した細胞膜電位をメモリ上に記憶する。細胞膜電位算出手段16024は、数式9の微分方程式を、四次のRunge-Kuttaを用いて算出することは好適である。細胞膜電位算出手段16024は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。細胞膜電位算出手段16024の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0170】
不整脈判断部1603は、心筋細胞シミュレーション部1602が取得した心筋細胞動作情報を用いて不整脈についての判断を行う。ここでの心筋細胞動作情報は、上述したように、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての情報や、細胞膜電位についての情報である。不整脈判断部1603は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。不整脈判断部1603の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0171】
イオン濃度閾値格納手段16031は、1以上の筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値を格納している。閾値は、1つでも2つ以上でも良く、例えば、「3.58(mM)」と「3.84(mM)」である。イオン濃度閾値格納手段16031は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0172】
イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度算出手段16022が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度と、イオン濃度閾値格納手段16031の閾値を用いて、不整脈についての判断を行う。具体的には、例えば、イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度算出手段16022が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度が閾値「3.58(mM)」以下であれば、正常である、と判断する。また、例えば、イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度算出手段16022が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度が閾値「3.58(mM)」より大きく、「3.84(mM)」以下であれば、DADである、と判断する。さらに、例えば、イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度算出手段16022が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度が閾値「3.84(mM)」より大きければ、DADとEADの両方である、と判断する。ここで、DADとEADは、異常自動能の一種であり、公知ものであるので、説明を省略する。イオン濃度不整脈判断手段16032は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。イオン濃度不整脈判断手段16032の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0173】
細胞膜電位閾値格納手段16033は、1以上の細胞膜電位についての閾値を格納している。細胞膜電位についての閾値は、1つが好適であり、例えば、「−19.6(mV)」である。細胞膜電位閾値格納手段16033は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0174】
細胞膜電位不整脈判断手段16034は、細胞膜電位算出手段16024が算出した細胞膜電位と、細胞膜電位閾値格納手段16033の閾値を用いて、不整脈についての判断を行う。具体的には、例えば、細胞膜電位算出手段16024が算出した細胞膜電位が、閾値「−19.6(mV)」以下である場合には正常である(不整脈は発生しない)と判断し、閾値「−19.6(mV)」より大きければLow voltage oscillationであると判断する。なお、Low voltage oscillationは、不整脈が発生し得る異常自動能の一種である。細胞膜電位不整脈判断手段16034は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。細胞膜電位不整脈判断手段16034の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0175】
出力情報構成部1604は、心筋細胞シミュレーション部1602が取得した心筋細胞動作情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する。また、出力情報構成部1604は、不整脈判断部1603の判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成しても良い。出力情報構成部1604は、イオン濃度算出手段16022が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を第一の軸の値とし、細胞膜電位算出手段16024が算出した細胞膜電位を第二の軸の値とする二次元平面上に値をプロットし、1以上の筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値、および1以上の細胞膜電位についての閾値を二次元平面上に明示する出力情報を構成することは好適である。かかる出力情報の例は、後述する。なお、出力情報は、「不整脈が発生し得ます。」といった簡易な文字列や、不整脈の種類「DAD、EAD、Low voltage oscillation」などでも良い。出力情報のデータ構造は問わない。出力情報構成部1604は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出力情報構成部1604の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0176】
出力部1605は、出力情報構成部1604が構成した出力情報を出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積等を含む概念である。出力部1605は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部1605は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0177】
次に、不整脈危険性評価装置の動作について図17から図19のフローチャートを用いて説明する。
【0178】
(ステップS1701)受付部1601は、1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付けたか否かを判断する。対象生体薬効情報を受け付ければステップS1702に行き、対象生体薬効情報を受け付けなければステップS1701に戻る。
【0179】
(ステップS1702)心筋細胞シミュレーション部1602は、受付部1601が受け付けた対象生体薬効情報をメモリ上に配置する。
【0180】
(ステップS1703)心筋細胞シミュレーション部1602は、ステップS1702で取得した対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する。かかる心筋細胞シミュレーションについて、図18のフローチャートを用いて説明する。
【0181】
(ステップS1704)不整脈判断部1603は、ステップS1703で取得した心筋細胞動作情報を用いて不整脈についての判断を行う。かかる不整脈判断処理について、図19のフローチャートを用いて説明する。
【0182】
(ステップS1705)出力情報構成部1604は、ステップS1704での判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成する。出力情報構成部1604は、例えば、シミュレーション結果(値)から、当該結果(値)が正常な場合と、異常である場合で、視覚的に異なる態様で出力情報を構成する。
【0183】
(ステップS1706)出力部1605は、ステップS1705で構成した出力情報を出力する。処理を終了する。
【0184】
なお、図17のフローチャートにおいて、ステップS1704における判断処理がなくても良い。かかる場合、出力情報構成部1604は、心筋細胞シミュレーション部1602の出力を読み出し、出力情報を構成する。
【0185】
次に、ステップS1703の心筋細胞シミュレーションについて図18のフローチャートを用いて説明する。
【0186】
(ステップS1801)イオン濃度算出手段16022は、イオン濃度算出モデル情報格納手段16021からイオン濃度算出モデル情報を読み出す。
【0187】
(ステップS1802)イオン濃度算出手段16022は、格納している定常状態のパラメータを読み出す。定常状態のパラメータは、イオン濃度算出手段16022に予め格納されている。定常状態のパラメータは、ユーザが入力した情報でも良いし、外部装置から送信された情報でも良い。定常状態のパラメータは、例えば、予め算出され、イオン濃度算出手段16022に格納されている。
【0188】
(ステップS1803)イオン濃度算出手段16022は、カウンタtに1を代入する。
【0189】
(ステップS1804)イオン濃度算出手段16022は、イオン濃度算出処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するならばステップS1808に行き、処理を終了しないならばステップS1805に行く。
【0190】
(ステップS1805)イオン濃度算出手段16022は、ステップS1801で読み込んだイオン濃度算出モデル情報に、ステップS1802で取得した定常状態のパラメータと、受付部1601が受け付けた1以上のイオン流量情報と、tを代入し、[Ca]upを算出する。
【0191】
(ステップS1806)イオン濃度算出手段16022は、ステップS1805で算出した[Ca]upをメモリ上に追記する。
【0192】
(ステップS1807)イオン濃度算出手段16022は、tを1、インクリメントする。ステップS1804に戻る。
【0193】
(ステップS1808)細胞膜電位算出手段16024は、細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023から細胞膜電位算出モデル情報を読み出す。
【0194】
(ステップS1809)細胞膜電位算出手段16024は、格納している定常状態のパラメータを読み出す。定常状態のパラメータは、細胞膜電位算出手段16024が予め格納している。定常状態のパラメータは、ユーザが入力した情報でも良いし、外部装置から送信された情報でも良い。定常状態のパラメータは、例えば、予め算出され、細胞膜電位算出手段16024に格納されている。
【0195】
(ステップS1810)細胞膜電位算出手段16024は、カウンタtに1を代入する。
【0196】
(ステップS1811)細胞膜電位算出手段16024は、細胞膜電位算出処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するならば上位関数にリターンし、処理を終了しないならばステップS1812に行く。
【0197】
(ステップS1812)細胞膜電位算出手段16024は、ステップS1808で読み込んだ細胞膜電位算出モデル情報に、ステップS1809で取得した定常状態のパラメータと、受付部1601が受け付けた1以上のイオン流量情報と、tを代入し、細胞膜電位算出モデル情報Vを算出する。
【0198】
(ステップS1813)細胞膜電位算出手段16024は、ステップS1812で算出したVをメモリ上に追記する。
【0199】
(ステップS1814)細胞膜電位算出手段16024は、tを1、インクリメントする。ステップS1811に戻る。
【0200】
次に、ステップS1704の不整脈判断処理について図19のフローチャートを用いて説明する。
【0201】
(ステップS1901)イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度閾値格納手段16031から、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値(v1、v2)を読み込む。
【0202】
(ステップS1902)イオン濃度不整脈判断手段16032は、カウンタiに1を代入する。
【0203】
(ステップS1903)イオン濃度不整脈判断手段16032は、i番目のシミュレーション結果の値をメモリから読み出し、i番目のシミュレーション結果の値が存在するか否かを判断する。i番目の値が存在すればステップS1904に行き、i番目の値が存在しなければステップS1911に行く。
【0204】
(ステップS1904)イオン濃度不整脈判断手段16032は、「i番目の値<=v1」であるか否かを判断する。「i番目の値<=v1」であればステップS1905に行き、「i番目の値<=v1」でなければステップS1906に行く。
【0205】
(ステップS1905)イオン濃度不整脈判断手段16032は、変数「判断」に「正常」を示す情報を代入する。ステップS1909に行く。
【0206】
(ステップS1906)イオン濃度不整脈判断手段16032は、「v1<i番目の値<=v2」であるか否かを判断する。条件を満たせばステップS1907に行き、条件を満たさなければステップS1908に行く。
【0207】
(ステップS1907)イオン濃度不整脈判断手段16032は、変数「判断」に「DAD」を示す情報を代入する。ステップS1909に行く。
【0208】
(ステップS1908)イオン濃度不整脈判断手段16032は、変数「判断」に「DAD+EAD」を示す情報を代入する。
【0209】
(ステップS1909)イオン濃度不整脈判断手段16032は、i番目の値と、変数「判断」の情報を対にして格納する。
【0210】
(ステップS1910)イオン濃度不整脈判断手段16032は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS1903に戻る。
【0211】
(ステップS1911)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、細胞膜電位閾値格納手段16033から細胞膜電位についての閾値(v2)を読み込む。
【0212】
(ステップS1912)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、カウンタiに1を代入する。
【0213】
(ステップS1913)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、i番目のシミュレーション結果の値を読み出し、i番目のシミュレーション結果の値が存在するか否かを判断する。i番目の値が存在すればステップS1914に行き、i番目の値が存在しなければ上位関数にリターンする。
【0214】
(ステップS1914)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、「i番目の値<=v3」であるか否かを判断する。「i番目の値<=v3」であればステップS1915に行き、「i番目の値<=v1」でなければステップS1916に行く。
【0215】
(ステップS1915)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、変数「判断」に「正常」を示す情報を代入する。ステップS1917に行く。
【0216】
(ステップS1916)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、変数「判断」に「Low voltage oscillation」を示す情報を代入する。ステップS1917に行く。
【0217】
(ステップS1917)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、i番目の値と、変数「判断」の情報を対にして、メモリ上に格納する。
【0218】
(ステップS1918)細胞膜電位不整脈判断手段16034は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS1913に戻る。
【0219】
なお、図17から図19のフローチャートにおいて、第一番目にCa2+ overloadのシミュレーション、および評価を行い、第二番目にLow K+ conductanceのシミュレーション、および評価を行った。しかし、Low K+ conductanceのシミュレーション、および評価を、Ca2+ overloadのシミュレーション、および評価より先に行っても良いし、それぞれ単独で処理を行っても良い。
【0220】
以下、本実施の形態における不整脈危険性評価装置の具体的な動作について説明する。
【0221】
まず、不整脈危険性評価装置の受付部1601は、イオン流量情報を含む対象生体薬効情報である「IKr単独の抑制を0から100%まで、5%刻み」に変更して、不整脈の危険性を評価する命令(イオン流量情報を含む対象生体薬効情報)を受け付けた、とする。つまり、受付部1601は、順に「IKr,−0」、「IKr,−5」、「IKr,−10」、・・・、「IKr,−90」、「IKr,−95」、「IKr,−100」という対象生体薬効情報を受け付ける。
【0222】
次に、心筋細胞シミュレーション部1602のイオン濃度算出手段16022は、上述したように、数式8のイオン濃度算出モデル情報をイオン濃度算出モデル情報格納手段16021から読み出す。ここで算出する筋小胞体uptake siteのカルシウム濃度はシミュレーション経過における平均濃度の最大値である。
【0223】
そして、次に、イオン濃度算出手段16022は、格納している定常状態のパラメータ(例えば、Vm=−91.26mV,[Na]=6.499mM,[K]=141.5mM,[Ca2+]=0.00003118 mM)を読み出す。
【0224】
そして、イオン濃度算出手段16022は、定常状態のパラメータと、「IKr,−0」等のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を、読み出したイオン濃度算出モデル情報が示す演算式に代入し、演算する。
【0225】
そして、イオン濃度算出手段16022は、図20の「カルシウム濃度」の数値を各対象生体薬効情報に対して得る。図20は、心筋細胞シミュレーション結果管理表であり、IKr抑制率である対象生体薬効情報に対するカルシウムイオン濃度「カルシウム濃度」と、細胞膜電位「膜電位」を格納している。
【0226】
イオン濃度算出手段16022は、算出したカルシウムイオン濃度を、IKr抑制率である対象生体薬効情報と対に、心筋細胞シミュレーション結果管理表に格納する。
【0227】
次に、細胞膜電位算出手段16024は、細胞膜電位算出モデル情報格納手段16023から、数式9の細胞膜電位算出モデル情報を読み出す。ここで算出する細胞膜電位は、定常状態での細胞の平均膜電位である。
【0228】
次に、細胞膜電位算出手段16024は、格納している定常状態のパラメータ(例えば、Vm=−89.00mV,[Na]=3.823mM,[K]=144.3mM,[Ca2+]=0.00001544 mM)を読み出す。
【0229】
そして、細胞膜電位算出手段16024は、定常状態のパラメータと、「IKr,−0」等のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を、読み出した細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式に代入し、演算する。
【0230】
そして、細胞膜電位算出手段16024は、図20の「膜電位」の数値を各対象生体薬効情報に対して得る。
【0231】
次に、イオン濃度不整脈判断手段16032は、イオン濃度閾値格納手段16031から、筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値「3.58」と「3.84」を読み込む。
【0232】
そして、イオン濃度不整脈判断手段16032は、図20の表の1番目から21番目までの「カルシウム濃度」の値を順に読み出し、「値<=3.58」であれば、正常であると判断し、「3.58<値<=3.84」であれば「DAD」であると判断し、「3.84<値」であれば「DAD+EAD」であると判断する。そして、イオン濃度不整脈判断手段16032は、判断結果を、各値に対応付けて、蓄積する。
【0233】
次に、細胞膜電位不整脈判断手段16034は、細胞膜電位閾値格納手段16033から細胞膜電位についての閾値「−19.6」を読み込む。
【0234】
そして、細胞膜電位不整脈判断手段16034は、図20の表の1番目から21番目までの「カルシウム濃度」の値を順に読み出し、「値<=−19.6」であれば、正常であると判断し、「−19.6<値」であれば「Low voltage oscillation」であると判断する。そして、細胞膜電位不整脈判断手段16034は、判断結果を、各値に対応付けて、蓄積する。
【0235】
次に、出力情報構成部1604は、イオン濃度不整脈判断手段16032の判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成する。
【0236】
そして、出力部1605は、構成した出力情報を出力する。かかる出力例を図21に示す。
【0237】
以上、本実施の形態によれば、薬剤の催不整脈性を判定することができる。具体的には、本実施の形態によれば、単一細胞レベルの不整脈危険性の評価、特に、異常自動能ついて評価することができる。さらに具体的には、本実施の形態によれば、細胞内Ca2+overloadまたは、細胞膜Kconductanceの減少による異常自動能の発生を自動検知できる。
【0238】
なお、本実施の形態によれば、不整脈判断部1603は、「DAD」「EAD」「Low voltage oscillation」などの異常自動能を判断した。しかし、不整脈判断部1603の判断処理がなくても良い。心筋細胞シミュレーション部1602の出力から、異常自動能の判断できるように、出力情報が構成されれば良い(図21参照)。
【0239】
また、本実施の形態の具体例によれば、IKrの抑制効果を中心とした不整脈危険性評価装置について述べた。しかし、本実施の形態の不整脈危険性評価装置は、モデル細胞に存在するあらゆるチャネル・担体電流への影響を評価できることは言うまでもない。
【0240】
さらに、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。なお、本実施の形態における不整脈危険性評価装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、薬物投与の影響を示す1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報である1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付ける受付ステップと、前記受付ステップで受け付けた対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得し、メモリ上に記憶させる心筋細胞シミュレーションステップと、前記心筋細胞動作情報を読み出し、当該心筋細胞動作情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成ステップと、前記出力情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム、である。
【0241】
また、上記プログラムにおいて、前記心筋細胞シミュレーションステップにおいて、格納しているイオン濃度算出モデル情報を読み出し、前記受付ステップで受け付けた1以上のイオン流量情報を前記イオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する、ことは好適である。
【0242】
さらに、上記プログラムにおいて、前記心筋細胞シミュレーションステップにおいて、1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、前記受付ステップで受け付けた1以上のイオン流量情報を前記細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する、ことは好適である。
(実施の形態3)
【0243】
本実施の形態において、上述した不整脈危険性評価装置における不整脈危険性の評価(心筋細胞シミュレーション、QT間隔シミュレーション、スパイラルシミュレーション、など)の結果から、1つ以上、不整脈の危険度が「あり」と判断された場合に、正常心機能を回復(不整脈危険度を低減)させる生体パラメータセットを探索し、その探索結果を出力し、化合物開発指針を提示する不整脈危険性評価装置について説明する。
【0244】
図22は、本実施の形態における不整脈危険性評価装置のブロック図である。
【0245】
不整脈危険性評価装置は、受付部100、薬物投与前後パラメータセット格納部101、動物薬効情報取得部102、変換元情報格納部103、薬効変換部104、心筋細胞シミュレーション部105、不整脈情報取得部106、不整脈判断部107、固定パラメータ情報格納部2201、次対象生体薬効情報取得部2202、制御部2203、出力情報構成部2208、出力部109を具備する。
【0246】
固定パラメータ情報格納部2201は、値を固定するパラメータの情報である固定パラメータ情報を格納している。固定パラメータ情報は、主薬効と考えられる生体パラメータであり、一つの生体パラメータでも、複数の生体パラメータでも良い。固定パラメータ情報は、例えば、ユーザがキーボード等の入力手段を用いて入力しても良いし、図示しない固定パラメータ決定手段が、薬物投与前後パラメータセット格納部101の薬物投与前後パラメータセットを読み出し、薬物投与前と薬物投与後に所定の閾値以上の変化(大きな変化)があったパラメータを固定パラメータとして決定し、当該パラメータを示す情報を固定パラメータ情報としても良い。また、固定パラメータ情報は、図示しない固定パラメータ決定手段が、薬物投与前後パラメータセット格納部101の薬物投与前後パラメータセットを読み出し、薬物投与前と薬物投与後で、最大の変化率を示す一のパラメータを固定パラメータとして決定し、当該パラメータを示す情報を固定パラメータ情報としても良い。固定パラメータ情報格納部2201は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0247】
次対象生体薬効情報取得部2202は、不整脈情報取得部106が取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得する。次対象生体薬効情報取得部2202は、変動させるパラメータを決定した後、どのようにパラメータの値を変動させるかは問わない。次対象生体薬効情報取得部2202は、例えば、変動させる範囲の情報を予め保持しており、かかる範囲の中で、順に値を増加させ、または減少させても良いし、乱数を発生させることにより値を変動させても良い。次対象生体薬効情報取得部2202は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。次対象生体薬効情報取得部2202の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0248】
制御部2203は、次対象生体薬効情報取得部2202が取得した新たな対象生体薬効情報を心筋細胞シミュレーション部105(または、心筋細胞シミュレーション部1602)に与え、心筋細胞動作情報を取得させる。心筋細胞動作情報は、例えば、実施の形態1で述べた活動電位情報や、QT間隔情報や、スパイラルウェーブのシミュレーション結果や、実施の形態2で述べた筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度や、細胞膜電位についての情報などである。制御部2203は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。制御部2203の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0249】
出力情報構成部2208は、不整脈情報取得部106が取得した不整脈情報および次対象生体薬効情報取得部2202が取得した対象生体薬効情報を用いて、出力する情報である出力情報を構成する。また、出力情報構成部2208は、不整脈判断部107の判断結果をも用いて、出力情報を構成しても良い。出力情報構成部2208は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。出力情報構成部2208の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0250】
次に、不整脈危険性評価装置の動作について図23のフローチャートを用いて説明する。図23のフローチャートにおいて、図10のフローチャートと異なるステップについてのみ説明する。
【0251】
(ステップS2301)次対象生体薬効情報取得部2202は、ステップS1012の不整脈判断の結果が、「不整脈あり」であるか否かを判断する。「不整脈あり」であればステップS2302に行き、「不整脈あり」でなければステップS2304に行く。
【0252】
(ステップS2302)次対象生体薬効情報取得部2202は、処理を終了するか否かを判断する。ここでの処理の終了とは、固定パラメータ情報で示されるパラメータ以外の生体パラメータを変動させる処理が終了したことを言う。処理を終了すると判断した場合はステップS2304に行き、処理を終了しないと判断した場合はステップS2303に行く。
【0253】
(ステップS2303)次対象生体薬効情報取得部2202は、固定パラメータ情報格納部2201から固定パラメータ情報を読み出し、当該固定パラメータ情報で示されるパラメータ以外の生体パラメータの薬効情報を決定し、次対象生体薬効情報を構成する。他のパラメータの値を変動させる(薬効情報を決定する)アルゴリズムについては問わない。本アルゴリズムの具体例は後述する。ステップS1005に戻る。
【0254】
(ステップS2304)出力情報構成部2208は、不整脈判断部107の判断結果、および次対象生体薬効情報取得部2202が取得した対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する。出力情報を構成するアルゴリズムの例について、図24のフローチャートを用いて説明する。
【0255】
(ステップS2305)出力部109は、ステップS2304で構成した出力情報を出力する。処理を終了する。
【0256】
次に、ステップS2304の出力情報構成処理について図24のフローチャートを用いて説明する。
【0257】
(ステップS2401)出力情報構成部2208は、最初に受け付けた薬物投与前後の生体パラメータセットを用いたシミュレーション過程において、一度も「不整脈あり」にならなかったか否かを判断する。一度も「不整脈あり」にならなかった場合ステップS2402に行き、一度は「不整脈あり」になった場合ステップS2403に行く。なお、一度「不整脈あり」になった場合、例えば、予め決められた変数(フラグ)をON「1」にし、他の場合はOFF「0」にする。
【0258】
(ステップS2402)出力情報構成部2208は、出力情報に「対象生体薬効情報」と、「不整脈危険性の判断結果」を代入する。上位関数にリターンする。なお、「不整脈危険性の判断結果」の取得方法の具体例については、後述する。
【0259】
(ステップS2403)出力情報構成部2208は、次対象生体薬効情報において、当初と比較して、変更した生体パラメータの情報を取得する。
【0260】
(ステップS2404)出力情報構成部2208は、出力情報に、ステップS2403で取得した「変更した生体パラメータの情報」を代入する。上位関数にリターンする。
【0261】
以下、本実施の形態における不整脈危険性評価装置の具体的な動作について説明する。
【0262】
今、固定パラメータ情報格納部2201に、主薬効と考えられる生体パラメータである「IKr」を示す固定パラメータ情報が格納されている、とする。また、実施の形態1における不整脈危険性評価装置により、心筋細胞シミュレーション部105は、対象生体薬効情報(ICaL=100%、IK1=100%、IKr=0%、IKs=100%)を受け付け、当該対象生体薬効情報を用いて、活動電位情報取得手段1052が、予め格納されている活動電位モデル情報を読み取り、当該活動電位モデル情報(演算式)を用いて、心筋細胞のシミュレーションを行い、活動電位情報を取得したとする。なお、ここでは、予め格納されている活動電位モデル情報は、動物モデルである。そして、活動電位情報取得手段1052は、図25に示す活動電位波形の情報(ここでは、動物モデルの情報である。)を得る。なお、図25において、(1)が対象生体薬効情報(ICaL=100%、IK1=100%、IKr=0%、IKs=100%)を用いて心筋細胞のシミュレーションを行い、取得した活動電位のグラフ(活動電位波)である。また、(2)は正常な活動電位波形である。正常な活動電位波形の情報は、例えば、予め格納されている。
【0263】
次に、不整脈情報取得部106は、図25の(1)(2)のグラフの情報から、「APD30の変化率=12.7%」、「APD60の変化率=17.7%」、「APD90の変化率=18.7%」を取得する。なお、APD30の変化率とは、薬物投与前から投与後のAPD30の変化率である。
【0264】
次に、不整脈判断手段1073は、正常範囲の「APD30の変化率」「APD60の変化率」「APD90の変化率」を、閾値格納手段1071から読み出す。なお、閾値格納手段1071には、正常範囲の「APD30の変化率」「APD60の変化率」「APD90の変化率」が予め格納されている、とする。
【0265】
次に、不整脈判断手段1073は、読み出した実験結果の「APD30の変化率」「APD60の変化率」「APD90の変化率」の正常範囲に、不整脈情報取得部106が取得した「APD30の変化率=12.7%」、「APD60の変化率=17.7%」、「APD90の変化率=18.7%」のうちの一つ以上が入っていないので、不整脈が発生する、と判断する。なお、本具体例では、QT間隔情報の取得、スパイラルウェーブのシミュレーションの処理を省略しているが、かかる処理を行っても良いことは言うまでもない。
【0266】
次に、次対象生体薬効情報取得部2202は、固定パラメータ情報格納部2201の固定パラメータ情報「IKr」を読み出し、「IKr」以外の生体パラメータ(ICaL,IK1,IKs)を自動的(ここでは、例えば、「ICaL」=84.375%、「IK1」=151.25%、「IKs」=107.5%)に変化させ、かかる生体パラメータの情報(「ICaL」=84.375%、「IK1」=151.25%、「IKs」=107.5%)を取得した、とする。なお、次対象生体薬効情報取得部2202は、例えば、ランダムに、かつ、以前取得した生体パラメータの情報と重ならないように、「IKr」以外の生体パラメータを取得する、とする。
【0267】
そして、心筋細胞シミュレーション部105の活動電位情報取得手段1052は、対象生体薬効情報(ICaL=84.375%、IK1=151.25%、IKr=0%、IKs=107.5%)を受け付け、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である、図26に示す活動電位波形の情報を取得する、とする。図26において、(1)が対象生体薬効情報(ICaL=84.375%、IK1=151.25%、IKr=0%、IKs=107.5%)を用いて心筋細胞のシミュレーションを行い、取得した活動電位のグラフ(活動電位波)である。また、(2)は正常な活動電位波形である。(1)と(2)は概ね重なっており、対象生体薬効情報(ICaL=84.375%、IK1=151.25%、IKr=0%、IKs=107.5%)によれば、正常心機能を回復する生体パラメータセットであると判断できる。
【0268】
次に、不整脈情報取得部106は、図26の(1)の活動電位波形の情報から、APD30の変化率、APD60の変化率、APD90の変化率の値を取得した、とする。また、不整脈情報取得部106は、が取得した、APD30の変化率の値は「7.2%」、APD60の変化率の値は「9.4%」、APD90の変化率の値は「7.9%」である。
【0269】
次に、不整脈判断手段1073は、正常範囲の「APD30の変化率」「APD60の変化率」「APD90の変化率」を、閾値格納手段1071から読み出す。
【0270】
次に、不整脈判断手段1073は、読み出した実験結果の「APD30の変化率」「APD60の変化率」「APD90の変化率」の正常範囲に、不整脈情報取得部106が取得した「APD30の変化率=7.2%」、「APD60の変化率=9.4%」、「APD90の変化率=7.9%」のうちのすべての値が正常範囲に入っているので、不整脈が発生しない、と判断する。なお、本具体例では、QT間隔情報の取得、スパイラルウェーブのシミュレーションの処理を省略しているが、かかる処理を行っても良いことは言うまでもない。
【0271】
そして、次に、出力情報構成部108は、不整脈判断部107の判断結果を用いて出力する情報である出力情報を構成する。具体的には、出力情報構成部108は、不整脈判断部107の判断結果と、心筋細胞シミュレーション部105が取得した心筋細胞動作情報(ここでは、活動電位波形の情報)を用いて、出力情報を、図27に示すように構成する。なお、出力情報構成部108は、図27の出力情報を構成するためのフォーマット情報(文字列と心筋細胞動作情報の配置を示す情報など)や、文字列「<生体パラメータセットの情報>の場合には、<不整脈判断結果>。」という情報を保持しており、出力情報構成部108は、<生体パラメータセットの情報>に対象生体薬効情報を代入し、<不整脈判断結果>に不整脈判断部107の判断結果を代入する。
【0272】
次に、出力部109は、出力情報構成部108が構成した出力情報をディスプレイに表示する。
【0273】
以上、本実施の形態によれば、不整脈危険性の評価(心筋細胞シミュレーション、QT間隔シミュレーション、スパイラルシミュレーション、など)の結果から、1つ以上、不整脈の危険度が「あり」と判断された場合に、正常心機能を回復(不整脈危険度を低減)させる生体パラメータセットを探索し、その探索結果を出力し、化合物開発指針を提示することができる。
【0274】
なお、本実施の形態の具体例における実験で、不整脈が発生しない対象生体薬効情報は、(パターンA)「ICaL=84.375%、IK1=151.25%、IKr=0%、IKs=107.5%」だけではなく、(パターンB)「ICaL=78.75%、IK1=143.125%、IKr=0%、IKs=110%」、(パターンC)「ICaL=60.625%、IK1=150%、IKr=0%、IKs=47.5%」の生体パラメータセットでも動物実験段階での正常心機能を回復する生体パラメータセットであることを取得している。
【0275】
パターンBの生体パラメータセットを心筋細胞シミュレーション部105に与えた場合、活動電位情報取得手段1052は、図28の(c)の活動電位波形の情報を取得し、不整脈情報取得部106は、「APD30の変化率=5.9%」、「APD60の変化率=8.7%」、「APD90の変化率=7.5%」を取得する。
【0276】
また、パターンCの生体パラメータセットを心筋細胞シミュレーション部105に与えた場合、活動電位情報取得手段1052は、図28の(d)の活動電位波形の情報を取得し、不整脈情報取得部106は、「APD30の変化率=24.6%」、「APD60の変化率=28.0%」、「APD90の変化率=25.1%」を取得する。パターンCにおいて、不整脈危険性に改善無しと判定され、正常な心機能を回復する別の生体パラメータのパターンを、同様に不整脈危険性評価装置に入力する。最終的に、不整脈危険性評価装置において不整脈の危険がなしとなる生体パラメータセットを任意の個数取得する(取得する個数は、1つで終了しても良いし、ユーザが任意の数を指定しても良いし、自動的に生体パラメータ決定装置から得られる全パターンを試行し終えることを終了条件としても良い)。最終的に得られた生体パラメータセットが、当該薬物の主薬効(IKr阻害)を保ったまま、不整脈危険度の低い薬効を持つために必要な薬効となる。
【0277】
なお、図28において、(a)は、対象生体薬効情報(ICaL=100%、IK1=100%、IKr=0%、IKs=100%)を受け付け、当該対象生体薬効情報を用いて、活動電位情報取得手段1052が、心筋細胞のシミュレーションを行い、取得した活動電位情報である。
【0278】
また、本実施の形態の具体例によれば、不整脈危険性の評価は、心筋細胞シミュレーションの結果である活動電位情報を用いていたが、他の心筋細胞動作情報を用いても良いことは言うまでもない。つまり、例えば、実施の形態2の図21において、IKr60%の単独抑制では、点は「DAD」発生のゾーンにあるが、このIKr抑制に加えて、ICaLが50%に抑制されたとすると、その結果、点は「正常」ゾーンに移動する。つまり、次対象生体薬効情報取得部2202は、固定パラメータ情報「IKr」ではないパラメータ「ICaL」を50%抑制、と変動させ、制御部2203が「IKr60%抑制,ICaL50%抑制」を心筋細胞シミュレーション部1602に与えた場合、不整脈判断部1603は、不整脈は発生しない、と判断する。かかることを、図21の矢印で示す。つまり、ICaL抑制が加わることにより、催不整脈性において、改善されると判定できる。
【0279】
さらに、本実施の形態における不整脈危険性評価装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、格納されている薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する動物薬効情報取得ステップと、前記動物薬効情報を、格納されている変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する薬効変換ステップと、前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーションステップと、前記心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する不整脈情報取得ステップと、前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成ステップと、前記出力情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム、である。
【0280】
上記プログラムは、コンピュータに、前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得し、メモリ上に配置する次対象生体薬効情報取得ステップと、前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した新たな対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーションステップに与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御ステップをさらに実行させ、前記出力情報構成ステップにおいて、前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報、および前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した対象生体薬効情報を読み出し、出力情報を構成する、ことは好適である。
(実施の形態4)
【0281】
本実施の形態において、動物実験の結果である活動電位の情報を入力することにより、生体パラメータを出力する生体パラメータ決定装置等について述べる。そして、この生体パラメータ決定装置を利用し、薬物投入前の活動電位の情報から生体パラメータセットを取得し、かつ、薬物投入後の活動電位の情報から生体パラメータセットを取得すれば、薬物投入の効果を定量的に得ることができる。なお、薬物投入の効果は、薬物投入前後の生体パラメータセットの差から求められる。
【0282】
図29は、本実施の形態における生体パラメータ決定装置のブロック図である。
【0283】
生体パラメータ決定装置は、生体パラメータセット格納部2901、パラメータセット選択部2902、シミュレーション実行部2903、定常状態判断部2904、活動電位情報取得部2905、実験活動電位情報格納部2906、前処理部2907、相違度算出部2908、許容パラメータセット決定部2909、制御部2910、許容パラメータセット出力部2911を具備する。
【0284】
パラメータセット選択部2902は、探索範囲決定手段29021、パラメータセット選択手段29022を具備する。
【0285】
前処理部2907は、スケーリング手段29071、平滑化手段29072を具備する。
【0286】
相違度算出部2908は、絶対値差情報取得手段29081、変化差情報取得手段29082、相違度算出手段29083を具備する。
【0287】
生体パラメータセット格納部2901は、生体のパラメータである生体パラメータを1以上有する生体パラメータセットを2組以上格納している。生体パラメータには細胞の種々のチャネル(たとえば、Naチャネル、Caチャネル、KATPチャネル、Krチャネル、K1チャネル、Ksチャネルなど)を流れる電流や、各チャネルの開閉速度や、イオン親和性、細胞内外のイオン濃度など、数百にも及ぶパラメータがある。生体パラメータは、通常、生体パラメータを識別する生体パラメータ識別子とパラメータの値を有する。ただし、生体パラメータセット中で、生体パラメータの列挙の順序が決まっている場合、生体パラメータは値だけでも良い。生体パラメータセットは、予め格納されていても良いし、図示しない手段により、算出されても良い。各生体パラメータの採りえる値の範囲の情報を保持しており、図示しない手段が、各生体パラメータの採りえる値の範囲から、各生体パラメータの一の値を決定して、生体パラメータセットを構築しても良い。生体パラメータセット格納部2901は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0288】
パラメータセット選択部2902は、2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択する。一の生体パラメータセットを選択するアルゴリズムは問わない。任意に一の生体パラメータセットを選択しても良いし、予め決められたアルゴリズムで、一の生体パラメータセットを選択しても良い。パラメータセット選択部2902は、探索範囲決定手段29021とパラメータセット選択手段29022の処理により、一の生体パラメータセットを選択することは好適である。一の生体パラメータセットを選択するアルゴリズムの例は後述する。パラメータセット選択部2902は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。パラメータセット選択部2902の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0289】
探索範囲決定手段29021は、2組以上の生体パラメータセットを構成する1以上の各パラメータの値の範囲を用いて、当該1以上の各パラメータの範囲を限定し、当該限定した範囲の情報を有する探索空間を決定する。なお、パラメータの値の範囲は、通常、予め決められており、その範囲の情報は、記録媒体に格納されている。また、探索範囲決定手段29021は、例えば、前回の探索範囲を構成するn個(nは1以上の整数)のパラメータの値の範囲を2分割し、当該2分割したn個のパラメータの組み合わせの値の範囲を有する2個の探索範囲を取得し、当該2個の各探索範囲の代表的なパラメータセットのうちで、最も相違度の小さいパラメータセットを有する探索範囲を前回の探索範囲として、探索範囲を狭めていっても良い。探索範囲決定手段29021は、例えば、前回の2以上のパラメータセットを構成する各パラメータの値の範囲の情報を保持しており、2以上のパラメータセットのうち、前回に最も相違度の小さいパラメータセットを中心に、各パラメータの値の範囲の半分の範囲を次回の探索範囲として、探索範囲を狭めていっても良い。探索範囲決定手段29021は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。探索範囲決定手段29021の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0290】
パラメータセット選択手段29022は、探索範囲決定手段29021が決定した探索空間に存在する1組以上のパラメータセットから、一のパラメータセットを選択する。パラメータセット選択手段29022は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。パラメータセット選択手段の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0291】
シミュレーション実行部2903は、パラメータセット選択部2902が選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を所定の時間間隔で得る。生体パラメータセットを入力にして、活動電位情報を所定の時間間隔で得るシミュレーションの技術は公知技術であるので、詳細な説明は省略する。なお、活動電位情報は、例えば、心臓の活動の電位を示す情報と時刻または時間を示す情報の対の集合である。また、例えば、活動電位情報は、心臓の細胞内の各種のイオン濃度(カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオンなど)の情報を含んでも良い。また、例えば、活動電位情報は、活動電位持続時間(例えば、APD90、APD60、APD30)等の情報でも良い。また、活動電位情報のデータ構造は問わない。また、上記の「所定の時間間隔」とは、定期的とは限らず、また、予め決められている必要もなく、ランダムな間隔(乱数発生などにより取得した間隔)でも良い。シミュレーション実行部2903は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。シミュレーション実行部2903の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0292】
定常状態判断部2904は、シミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報の変化(例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオンなどイオン濃度の変化)から、シミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったか否かを判断する。定常状態判断部2904は、例えば、時刻tのシミュレーション実行部2903の出力であるカリウムイオン濃度、または/およびナトリウムイオン濃度、または/およびカルシウムイオン濃度と、時刻(t+1)のシミュレーション実行部2903の出力であるカリウムイオン濃度、または/およびナトリウムイオン濃度、または/およびカルシウムイオン濃度を比較し、予め決められた差より小さい差しかない場合に、心臓の活動状態が定常状態になったと判断する。また、定常状態判断部2904は、例えば、時刻tのシミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報(V)と、時刻(t+1)のシミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報(Vt+1)を比較し、予め決められた差より小さい差しかない場合に、心臓の活動状態が定常状態になったと判断する。定常状態判断部2904は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。定常状態判断部2904の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0293】
活動電位情報取得部2905は、定常状態判断部2904がシミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったと判断した場合のシミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報を取得する。活動電位情報取得部2905は、通常、定常状態になったと判断した際の活動電位情報や、シミュレーション実行部2903の最終の出力結果である活動電位情報を得る。活動電位情報取得部2905は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。活動電位情報取得部2905の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0294】
実験活動電位情報格納部2906は、動物実験の結果の活動電位情報である実験活動電位情報を格納している。実験活動電位情報は、人手による入力を受け付けた情報でも良いし、図示しない外部の装置から受信した情報でも良い。実験活動電位情報格納部2906は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0295】
前処理部2907は、実験活動電位情報格納部2906に格納されている実験活動電位情報を読み出し、当該実験活動電位情報に対してノイズを除去する処理である前処理を行い、新たな実験活動電位情報を得る。前処理は、いくつかの種類の処理が有り得、1以上の処理を組み合わせて行っても良い。前処理の例は、後述するスケーリングや平滑化の処理である。前処理部2907は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。前処理部2907の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。なお、前処理部2907が行う前処理は、後述する相違度の算出の精度向上のために必要であるが、必須の処理ではない。
【0296】
スケーリング手段29071は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報が示す電位の最大値と、実験活動電位情報が示す電位の最大値が合致するように、実験活動電位情報が示す電位の値を変更する。かかる処理をスケーリングという。スケーリング手段29071は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。スケーリング手段29071の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0297】
平滑化手段29072は、実験活動電位情報が示す電位の値に対して、移動平均を算出し、当該算出した移動平均の値を新たな実験活動電位情報が示す電位の値とする。かかる処理を平滑化という。移動平均を算出する処理は公知技術であるので、詳細な説明を省略する。平滑化手段29072は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。平滑化手段29072の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0298】
相違度算出部2908は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、実験活動電位情報との相違度を算出する。ここで、「相違度」とは、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、実験活動電位情報との差(違い)という意味であり、類似度でも良い。「相違度が小さい(低い)」とは、「類似度が大きい(高い)」と同意義であることは言うまでもない。相違度算出部2908は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、前処理部2907が得た実験活動電位情報との相違度を算出することが好適である。相違度算出部2908は、通常、相違度を算出するための算出式の情報を図示しない記録媒体に保持しており、かかる算出式の情報を読み出し、当該算出式に、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、実験活動電位情報から得られる情報をパラメータとして代入し、演算を行い、相違度を得る。相違度算出部2908は、後述する絶対値差情のみ、または変化差情報のみ、またはその他の情報を用いて、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、前処理部2907が得た実験活動電位情報との相違度を算出しても良い。相違度算出部2908は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。相違度算出部2908の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0299】
絶対値差情報取得手段29081は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報が示す活動電位の値と、実験活動電位情報が示す活動電位の値との差に関する情報である絶対値差情報を取得する。絶対値差情報取得手段29081が、2つの活動電位の情報が示す値の集合のうち、どの範囲の差の絶対値を取得するかは問わない。絶対値差情報取得手段29081は、例えば、2つの活動電位のVm(細胞膜電位)およびRMP(静止膜電位)の差の絶対値の累積を得ても良いし、2つの活動電位のVmの差の絶対値の累積のみを得ても良い。絶対値差情報取得手段29081は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。絶対値差情報取得手段29081の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0300】
変化差情報取得手段29082は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報が示す活動電位の変化の値と、実験活動電位情報が示す活動電位の変化の値との差に関する情報である変化差情報を取得する。この変化とは、時間的な変化である。時間的な変化とは、時間の経過とともに生じる変化である。変化差情報取得手段29082は、例えば、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報を時間微分した値と、実験活動電位情報が示す活動電位の情報を時間微分した値との差の累積を算出し、取得する。変化差情報取得手段29082は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。変化差情報取得手段29082の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0301】
相違度算出手段29083は、絶対値差情報および変化差情報を用いて、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と、実験活動電位情報との相違度を算出する。相違度算出手段29083は、例えば、絶対値差情報および変化差情報に重み付けをして、その和を相違度として得る。相違度算出手段29083は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。相違度算出手段29083の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0302】
許容パラメータセット決定部2909は、相違度算出部2908が算出した相違度を用いて、一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する。許容パラメータセット決定部2909は、例えば、相違度算出部2908が算出した相違度に対して、応答曲面法を用いて一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する。応答曲面法については、公知技術であるので、説明を省略する。また、許容パラメータセット決定部2909は、例えば、相違度と一の生体パラメータセットをユーザに出力し、ユーザから許容範囲か否かを示す指示の入力を受け付け、当該指示の情報(許容範囲を示す情報または許容範囲外を示す情報)を得る処理を行っても良い。ユーザの指示を受け付ける場合、実質的な決定はユーザが行うこととなり、許容パラメータセット決定部2909は、ユーザの指示を受け付け、保持する処理を行う。許容パラメータセット決定部2909は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。許容パラメータセット決定部2909の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0303】
制御部2910は、許容パラメータセット決定部2909が一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットでないと判断した場合に、パラメータセット選択部2902に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示する。なお、制御部2910は、許容パラメータセット決定部2909が一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した場合にも、他の許容範囲にある生体パラメータセットを得るために、パラメータセット選択部2902に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示する構成でも良い。かかる場合、例えば、生体パラメータセット格納部2901の全パラメータセットに対して、許容範囲か否かを判断することとなる。また、かかる場合、例えば、所定数(例えば、「5」)の許容範囲のパラメータセットが見つかるまで、制御部2910は、パラメータセット選択部2902に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示することとなる。制御部2910は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。制御部2910の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0304】
許容パラメータセット出力部2911は、許容パラメータセット決定部2909が一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した場合に、当該一の生体パラメータセットを出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積等を含む概念である。許容パラメータセット出力部2911は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。許容パラメータセット出力部2911は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0305】
次に、生体パラメータ決定装置の動作について図30から図32のフローチャートを用いて説明する。
【0306】
(ステップS3001)パラメータセット選択部2902は、2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択する。パラメータセット選択部2902は、例えば、生体パラメータセット格納部2901に格納されている生体パラメータセットの中から、格納されている順に一の生体パラメータセットを読み出す。
【0307】
(ステップS3002)シミュレーション実行部2903は、パラメータセット選択部2902が選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を所定の時間間隔で得て、出力する。所定の時間間隔とは、等間隔とは限らない。
【0308】
(ステップS3003)定常状態判断部2904は、ステップS3002におけるシミュレーション結果の2以上の活動電位情報の変化から、シミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったか否かを判断する。通常、直前の活動電位情報と現在の活動電位情報との変化が全くない場合、または所定の差以内の少ない差の場合、定常状態判断部2904は、定常状態になったと判断する。定常状態になっていればステップS3004に行き、定常状態になっていなければステップS3002に戻り、シミュレーション実行部2903によるシミュレーションを続行する。なお、通常、ステップS3002に戻った際に、再度、パラメータセット選択部2902が選択した一の生体パラメータセットを入力する処理は行わず、シミュレーション実行部2903によるシミュレーションを続行するだけである。
【0309】
(ステップS3004)活動電位情報取得部2905は、定常状態判断部2904がシミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったと判断した場合のシミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報を取得する。
【0310】
(ステップS3005)前処理部2907は、メモリ上に、実験活動電位情報格納部2906の実験活動電位情報を読み込む。
【0311】
(ステップS3006)前処理部2907は、ステップS3005で読み込んだ実験活動電位情報に対して前処理を行う。前処理の詳細について、図31のフローチャートを用いて説明する。
【0312】
(ステップS3007)相違度算出部2908は、ステップS3004で取得した活動電位情報と、ステップS3006で前処理を行った結果である実験活動電位情報との相違度を算出する。2つの活動電位情報の相違度を算出するアルゴリズムの詳細について、図32のフローチャートを用いて説明する。
【0313】
(ステップS3008)相違度算出部2908は、選択されている生体パラメータセットと、ステップS3007で算出した相違度の組を、図示しない記録媒体(主メモリでも良い)に格納する。
【0314】
(ステップS3009)許容パラメータセット決定部2909は、ステップS3007で算出した相違度を用いて、選択した一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する。許容範囲か否かは、ユーザが決定し、図示しない入力手段により入力しても良いし、自動的に応答曲面法を用いて決定しても良い。許容範囲であればステップS3010に行き、許容範囲外であればステップS3012に行く。
【0315】
(ステップS3010)制御部2910は、処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するか否かは、一つの許容範囲にある生体パラメータセットが見つかれば処理を終了すると判断しても良いし、所定数の許容範囲にある生体パラメータセットが見つかれば処理を終了すると判断しても良いし、ユーザの終了指示の入力により処理を終了すると判断しても良い。その他、処理を終了すると判断するアルゴリズムは問わない。処理を終了すると判断した場合はステップS3011に行き、処理を終了しないと判断した場合はステップS3013に行く。
【0316】
(ステップS3011)許容パラメータセット出力部2911は、許容パラメータセット決定部2909が許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した生体パラメータセットを読み出し、出力する。処理を終了する。
【0317】
(ステップS3012)制御部2910は、許容範囲にない生体パラメータセットを削除する。
【0318】
(ステップS3013)制御部2910は、次の生体パラメータセットを選択するように、パラメータセット選択部2902に指示する。ステップS3001に戻る。
【0319】
なお、図30のフローチャートにおいて、生体パラメータセットの選択アルゴリズムは、他のアルゴリズムでも良い。
【0320】
次に、生体パラメータ決定装置の前処理(ステップS3006)について図31のフローチャートを用いて説明する。
【0321】
(ステップS3101)スケーリング手段29071は、活動電位情報取得部2905が取得したシミュレーション結果の活動電位情報が示す電位の静止膜電位の平均値(VSRMP)、および最大値(VSH)を、活動電位情報を構成する値から取得する。なお、活動電位情報を構成する情報は、例えば、電圧(mV)と時間の情報を対に有する。
【0322】
(ステップS3102)スケーリング手段29071は、実験活動電位の情報のうちの静止膜電位の平均値(VERMP)、および最大値(VEH)を取得する。
【0323】
(ステップS3103)スケーリング手段29071は、実験活動電位の情報の最大値(VEH)を最大値(VSH)に、最低値(VERMP)を最低値(VSRMP)に変更する。
【0324】
(ステップS3104)スケーリング手段29071は、カウンタiに1を代入する。
【0325】
(ステップS3105)スケーリング手段29071は、実験活動電位の情報の中に、i番目の値があるか否かを判断する。i番目の値があればステップS3106に行き、i番目の値がなければステップS3109に行く。
【0326】
(ステップS3106)スケーリング手段29071は、i番目の値(V)を、VSL、VSH、VERMPSRMPを用いて変更する。具体的には、i番目の値を、(V−VERMP)×(VSH−VSRMP)/(VEH−VERMP)+VSRMPにより決定する。なお、スケーリング手段29071は、演算式(V−VERMP)×(VSH−VSRMP)/(VEH−VERMP)+VSRMPの情報を保持しており、当該演算式の情報を読み込み、取得したパラメータを演算式に代入し、スケーリングしたi番目の値を得る。
【0327】
(ステップS3107)スケーリング手段29071は、ステップS3106で得た新しいi番目の値(V)を格納する。
【0328】
(ステップS3108)スケーリング手段29071は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS3105に戻る。
【0329】
(ステップS3109)平滑化手段29072は、カウンタiに1を代入する。
【0330】
(ステップS3110)平滑化手段29072は、実験活動電位の情報の中に、i番目の点(値)があるか否かを判断する。i番目の点があればステップS3111に行き、i番目の値がなければ上位関数にリターンする。
【0331】
(ステップS3111)平滑化手段29072は、i番目の点の移動平均を算出する。
【0332】
(ステップS3112)平滑化手段29072は、ステップS3111で算出したi番目の点の移動平均を記録媒体(メモリを含む)に格納する。
【0333】
(ステップS3113)平滑化手段29072は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS3110に戻る。
【0334】
なお、図31のフローチャートにおいて、ステップS3101からステップS3108の処理は、スケーリング処理である。また、ステップS3109からステップS3113の処理は、平滑化処理である。
【0335】
また、図31のフローチャートにおいて、スケーリング処理の演算式は、上記の式に限られない。
【0336】
次に、生体パラメータ決定装置の相違度算出処理(ステップS3007)について図32のフローチャートを用いて説明する。
【0337】
(ステップS3201)相違度算出部2908は、図示しない記録媒体に格納されている相違度の演算式の情報を読み出す。
【0338】
(ステップS3202)絶対値差情報取得手段29081は、初期化処理を行う。初期化処理とは、カウンタiに1を代入する処理である。また、相違度を算出するための元になる変数の値を「0」にする処理である。相違度を算出するための元になる変数は、ここでは、絶対値差情報を格納するための変数である絶対値差情報変数がある。
【0339】
(ステップS3203)絶対値差情報取得手段29081は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報または/および実験活動電位情報に、i番目の値が存在するか否かを判断する。なお、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報または/および実験活動電位情報は、活動電位の値と、時刻または時間の情報の対の集合である。
【0340】
(ステップS3204)絶対値差情報取得手段29081は、2つの活動電位情報のi番目の値(活動電位)を取得する。2つの活動電位情報とは、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報と実験活動電位情報である。
【0341】
(ステップS3205)絶対値差情報取得手段29081は、ステップS3204で取得したi番目の値に対応する点がRMPとして取得した点であるか否かを判断する。RMPとして取得した点であればステップS3206に行き、RMPとして取得した点でなければステップS3209に行く。
【0342】
(ステップS3206)絶対値差情報取得手段29081は、ステップS3204で取得したi番目の値に対応する点が最初のRMPとして取得した点であるか否かを判断する。最初のRMPとして取得した点であればステップS3207に行き、最初のRMPとして取得した点でなければステップS3209に行く。
【0343】
なお、ここで、絶対値差情報取得手段29081は、2つの活動電位情報のRMPの差を算出しても良い。
【0344】
(ステップS3207)絶対値差情報取得手段29081は、2つの活動電位情報のi番目の値の差の絶対値を算出する。そして、絶対値差情報取得手段29081は、算出した値を一時格納する。
【0345】
(ステップS3208)絶対値差情報取得手段29081は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS3203に戻る。
【0346】
(ステップS3209)絶対値差情報取得手段29081は、ステップS3204で取得した2つの活動電位情報のi番目の値の差の絶対値を取得する。
【0347】
(ステップS3210)絶対値差情報取得手段29081は、ステップS3209で算出した値を加算する。ステップS3208に行く。
【0348】
(ステップS3211)変化差情報取得手段29082は、2つの活動電位情報の時間微分を算出する。
【0349】
(ステップS3212)変化差情報取得手段29082は、初期化処理を行う。初期化処理とは、カウンタiに1を代入する処理である。また、相違度を算出するための元になる変数の値を「0」にする処理である。相違度を算出するための元になる変数は、ここでは、変化差情報を格納するための変数である変化差情報変数がある。
【0350】
(ステップS3213)変化差情報取得手段29082は、活動電位情報取得部2905が取得した活動電位情報または/および実験活動電位情報に、i番目の値が存在するか否かを判断する。i番目の値が存在すればステップS3214に行き、i番目の値が存在しなければステップS3217に行く。
【0351】
(ステップS3214)変化差情報取得手段29082は、i番目の値に対応する、2つの活動電位情報の時間微分の値を取得し、当該2つの時間微分の値の差に関する情報を算出する。この2つの時間微分の値の差に関する情報は、変化率ともいう。
【0352】
(ステップS3215)変化差情報取得手段29082は、ステップS3214で取得した変化率(値)を加算する。
【0353】
(ステップS3216)変化差情報取得手段29082は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS3212に戻る。
【0354】
(ステップS3217)相違度算出部2908は、ステップS3201で読み出した演算式にパラメータを代入し、相違度を算出する。パラメータとは、ここでは、ステップS3207、ステップS3210、ステップS3215で算出した値である。
【0355】
(ステップS3218)相違度算出部2908は、ステップS3217で算出した相違度を、記録媒体に格納する。
【0356】
なお、図32のフローチャートにおいて、ステップS3202からステップS3210までのステップにおける処理は、絶対値差情報を算出する処理である。また、絶対値差情報を算出する処理の中で、ステップS3206、ステップS3207の処理は、RMPの差の情報(以下、適宜、「静止膜距離情報」という)を取得する処理であり、ステップS3209、ステップS3210の処理は、再分極相の差の情報報(以下、適宜、「再分極相距離情報」という)を取得する処理である。また、ステップS3211からステップS3216までのステップにおける処理は、変化差情報を算出する処理である。図32のフローチャートにおいて、相違度を算出する場合に、絶対値差情報と変化差情報を算出し、この2つの情報(値)に基づいて、相違度を算出した。しかし、相違度の算出は、絶対値差情報、または変化差情報のどちらか一方の情報を使用するだけでも良い。また、絶対値差情報の算出には、静止膜距離情報と再分極相距離情報を使用したが、再分極相距離情報のみを使用しても良い。さらに、静止膜距離情報と再分極距離情報に分離しなくとも、すべてのカウンタiにおいて、絶対値差情報を算出してもよい。
【0357】
また、図32のフローチャートにおいて、ステップS3201において、パラメータセット選択部2902は、1組以上の生体パラメータセットの中から、任意に一の生体パラメータセットを選択した。しかし、パラメータセット選択部2902は、以下のアルゴリズムで、一の生体パラメータセットを選択しても良い。このアルゴリズムは、例えば、以下で説明する単純2分割法である。単純2分割法の概念図を図33に示す。単純2分割法は、前回の探索範囲を構成するn個のパラメータの値の範囲をそれぞれ2分割し、当該2分割したn個のパラメータの組み合わせの値の範囲を有する2個の探索範囲を取得し、当該2個の各探索範囲の代表的なパラメータセットのうちで、最も相違度の小さいパラメータセットを有する探索範囲を前回の探索範囲として、探索範囲を狭めてゆく方法である。さらに具体的には、単純2分割法のアルゴリズムについて、図34、図35のフローチャートを用いて説明する。
【0358】
(ステップS3401)探索範囲決定手段29021は、各パラメータの探索範囲の情報を読み出す。各パラメータの探索範囲の初期値は、予め決められており、記録媒体に格納されている、とする。
【0359】
(ステップS3402)探索範囲決定手段29021は、ステップS3401で読み出した各パラメータの探索範囲の情報から、各パラメータの探索範囲を2分割した値を取得する。例えば、一のパラメータの範囲は「1〜10」であれば、探索範囲決定手段29021は、例えば、「1〜5」と「6〜10」に分割する。探索範囲決定手段29021は、全パラメータ(n個とする)に対して、その範囲を2分割する。そして、探索範囲決定手段29021は、n個の全パラメータを2分割し、それらの組み合わせである「2」個の探索範囲を得る。
【0360】
(ステップS3403)パラメータセット選択手段29022は、カウンタiに1を代入する。
【0361】
(ステップS3404)パラメータセット選択手段29022は、i番目の探索範囲があるか否かを判断する。i番目の探索範囲があればステップS3405に行き、i番目の探索範囲がなければステップS3407に行く。
【0362】
(ステップS3405)パラメータセット選択手段29022は、i番目の探索範囲に対して、最適解を得る。最適解とは、相違度が最小の生体パラメータセットである。最適解を得るアルゴリズムについて、図35のフローチャートを用いて説明する。
【0363】
(ステップS3406)パラメータセット選択手段29022は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS3404に戻る。
【0364】
(ステップS3407)パラメータセット選択手段29022は、(i−1)の探索範囲で得た最適解の相違度の中で最も小さい相違度の解(生体パラメータセット)を取得する。
【0365】
(ステップS3408)パラメータセット選択手段29022は、ステップS3407で選択した生体パラメータセットを構成する各パラメータの探索範囲の情報を取得する。
【0366】
(ステップS3409)パラメータセット選択手段29022は、処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するならばステップS3410に行き、処理を終了しないならステップS3411に行く。なお、処理を終了するか否かの判断は、2個の探索範囲のすべてのパラメータセットを取得したか否かの判断であり、すべてのパラメータセットを取得していた場合に処理を終了すると判断しても良い。また、処理を終了するか否かの判断は、ユーザが行っても良い。つまり、必要な探索範囲のみのパラメータセットをユーザーが指定して選択し、選択した探索範囲のパラメータセットを取得した時点で修了してもよい。かかる場合、ユーザに選択を促す手段(画面上に選択するためのメニューや入力画面を表示する手段)、およびユーザの入力を受け付ける手段を具備する。
【0367】
(ステップS3410)パラメータセット選択手段29022は、ステップS3407で取得した生体パラメータセット(最適解)を出力する。処理を終了する。
【0368】
(ステップS3411)パラメータセット選択手段29022は、パラメータ選択処理を再帰的に行う。
【0369】
なお、図34のフローチャートは、再帰的な処理になっている。
【0370】
次に、最適解を得るアルゴリズムについて、図35のフローチャートを用いて説明する。図35のフローチャートにおいて、図30のフローチャートと同一のステップについては説明を省略する。
【0371】
(ステップS3501)パラメータセット選択手段29022は、探索範囲の中で最適解を探索するための、n種類のパラメータセットを取得する。n種類のパラメータセットは、ユーザが入力しても良いし、探索範囲の中で、自動的に決定しても良い。自動的に決定するアルゴリズムとして、例えば、あるパラメータの探索範囲は「4〜6」までの場合、「1」の等間隔で「4」「5」「6」を取得するアルゴリズムでも良い。
【0372】
(ステップS3502)パラメータセット選択手段29022は、カウンタiに1を代入する。
【0373】
(ステップS3503)パラメータセット選択手段29022は、「i<=n」であるか否かを判断する。「i<=n」であればステップS3504に行き、「i<=n」でなければステップS3506に行く。
【0374】
(ステップS3504)パラメータセット選択手段29022は、n種類のうちで、i番目のパラメータセットを読み出す。ステップS3002に行く。
【0375】
(ステップS3505)パラメータセット選択手段29022は、カウンタiを1、インクリメントする。
【0376】
(ステップS3506)パラメータセット選択手段29022は、n種類のパラメータセットのうちで、最小の相違度を有するパラメータセットを取得する。上位関数にリターンする。
【0377】
次に、パラメータセット選択部2902が行う、他の生体パラメータセットを選択するアルゴリズムについて述べる。本アルゴリズムは、範囲縮小法という。範囲縮小法の概念図を図36に示す。図36において、(1)、(2)、(3)と探索範囲は半分に狭まっていっている。範囲縮小法は、前回の2以上のパラメータセットを構成する各パラメータの値の範囲の情報を保持しており、前記2以上のパラメータセットのうち、前回に最も相違度の小さいパラメータセットを中心に、前記各パラメータの値の範囲の半分の範囲を次回の探索範囲として、探索範囲を狭めてゆく方法である。
【0378】
具体的な範囲縮小法のアルゴリズムについて、図37のフローチャートを用いて説明する。
【0379】
(ステップS3701)探索範囲決定手段29021は、前回の各パラメータの探索範囲を読み出す。前回が無い場合(初回の場合)は、予め格納された各パラメータの探索範囲を読み出す。
【0380】
(ステップS3702)探索範囲決定手段29021は、最適解を読み出す。最適解は、予め記録媒体に格納されていたり、ユーザが入力したりした情報である。最適解は、生体パラメータセットである。
【0381】
(ステップS3703)探索範囲決定手段29021は、ステップS3701で読み出した探索範囲の幅の半分を、各パラメータに対して算出し、ステップS3702で取得した最適解を中心点として、各パラメータの半分した幅の範囲を、パラメータごとに算出する。ただし、最初に格納されていた範囲、あるいはユーザが指定する探索範囲を超えないように範囲を算出する。もし最初に格納されていた範囲、あるいはユーザが指定する探索範囲を超える場合は、各パラメータの半分した幅の範囲を保持したまま、最適解の中心点を含む範囲を算出する。ステップS3405に行く。
【0382】
(ステップS3704)パラメータセット選択手段29022は、処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するのであればステップS3705に行き、処理を終了しないのであればステップS3706に行く。処理を終了するか否かを判断は、予め本処理のループ回数を決めていても良いし、ユーザからの指示等でも良い。
【0383】
(ステップS3705)パラメータセット選択手段29022は、ステップS3405で算出した最適解を出力する。処理を終了する。
【0384】
(ステップS3706)パラメータセット選択手段29022は、パラメータセット選択処理を再帰的に行う。
【0385】
以下、本実施の形態における生体パラメータ決定装置の具体的な動作について説明する。
【0386】
まず、生体パラメータ決定装置は、図示しない手段により、図38の各生体パラメータの採り得る範囲、および刻み幅の情報を、生体パラメータごとに保持している。ここで、生体パラメータは、「IKr」、「IK1」、および「IKs」で識別されるパラメータを例として挙げている。また、図38において、生体パラメータ「IKr」は、「0.0,0.1,0.2,・・・4.8,4.9,5.0」と採り得ることを示す。なお、「IKr」は、急速活性化遅延整流性カリウムチャネル(Krチャネル)を流れる電流、「IK1」は内向き整流性カリウムチャネル(K1チャネル)を流れる電流、「IKs」は緩除活性化遅延整流性カリウムチャネル(Ksチャネル)を流れる電流である。
【0387】
そして、生体パラメータ決定装置は、図示しない手段により、図38の各生体パラメータの採り得る範囲、および刻み幅の情報を元に、生体パラメータセットを生成し、生体パラメータセット格納部2901に蓄積する。かかる生体パラメータセットを管理する生体パラメータセット管理表を図39に示す。図39において、「ID」と「IKr」、「IK1」、「IKs」などの生体パラメータの値の組からなる生体パラメータセット(表のレコード)を1以上管理している。「ID」は、レコードを識別する情報であり、表におけるレコード管理のために存在する。
【0388】
つまり、本生体パラメータ決定装置は、図39の生体パラメータセットの中から、許容範囲にある生体パラメータセットを取得する装置である。
【0389】
また、図40は、実験活動電位情報格納部2906に格納されている実験活動電位情報をグラフで表示したデータである。実験活動電位情報は、時間(ms)と電位(mV)を対に有する情報の集合であり、動物実験の結果の活動電位の情報の集合である。
【0390】
まず、パラメータセット選択部2902は、図39の生体パラメータセット群の中で、最初「ID=1」の生体パラメータセット「IKr:0.0,IK1:0.20,IKs:1.00,・・・・」を読み出す。
【0391】
次に、シミュレーション実行部2903は、パラメータセット選択部2902が選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を所定の時間間隔で得て、出力する。
【0392】
次に、定常状態判断部2904は、シミュレーション実行部2903におけるシミュレーション結果の2以上の活動電位情報の変化から、シミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったか否かを判断し、定常状態になった場合の活動電位情報を得る。この定常状態の活動電位情報をグラフで表示した図は、図40と類似した形状を有する。
【0393】
次に、活動電位情報取得部2905は、シミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったと判断した場合のシミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報を取り出す。
【0394】
なお、図41は、実験活動電位情報のグラフ(Experiment data)と、シミュレーション実行部2903の出力である活動電位情報(Simulation)のグラフを重ねた図である。図41の縦軸は電位(mV)、横軸は時間(msec)である。
【0395】
次に、前処理部2907は、メモリ上に、実験活動電位情報格納部2906の実験活動電位情報を読み込み、前処理を行う。つまり、前処理部2907のスケーリング手段29071は、活動電位情報取得部2905が取得したシミュレーション結果の活動電位情報が示す電位の静止膜電位の平均値(VSRMP)、および最大値(VSH)を、活動電位情報を構成する値から取得する。そして、スケーリング手段29071は、実験活動電位の情報のうちの静止膜電位の平均値(VERMP)、および最大値(VEH)を取得する。次に、スケーリング手段29071は、実験活動電位の情報の最大値(VEH)を最大値(VSH)に、静止膜電位の平均値(VERMP)を静止膜電位の平均値(VSRMP)に変更する。スケーリング手段29071は、最大値、静止膜電位が実験活動電位の値に合致するように、他の点のデータも、スケーリングする。その結果、図42に示すように、実験活動電位情報の電位幅が、シミュレーション結果の活動電位情報の電位幅と同じになる。スケーリング処理により、活動電位の最大振幅をシミュレーションに合うように実験データ(Experiment data)を縦方向にスケーリングでき、適切な相違度の算出が可能となる。図42の縦軸は電位(mV)、横軸は時間(msec)である。
【0396】
次に、平滑化手段29072は、スケーリング処理を行った実験活動電位情報と、シミュレーション結果の活動電位情報に対して、以下の平滑化処理を行う。つまり、平滑化手段29072は、スケーリング処理を行った実験活動電位情報の全部の点(電位(mV)と時間(ms)からなる情報)に対して、移動平均の値を算出し、その値を、実験活動電位情報の点の値とする。同様に、平滑化手段29072は、シミュレーション結果の活動電位情報の全部の点(電位(mV)と時間(ms)からなる情報)に対して、移動平均の値を算出し、その値を、シミュレーション結果の活動電位情報の点の値とする。図43は、平滑化処理後の活動電位情報を示す。平滑化処理により、実験データのノイズを除去できる。図43は、段階的に移動平均を取ることで、実験データのノイズを除去した結果を示す。上部のライン(a)は、10.0msecの間隔で移動平均をとったデータ群である。また、ラインの一つ外側の帯(b)は、1.0msecの間隔で移動平均をとったデータ群である。また、さらに外側の帯(c)は、0.1msecの間隔で移動平均をとったデータ群である。さらに、(d)は、移動平均を取る前の生データである。
【0397】
以上のスケーリング処理と平滑化処理が完了した際の実験活動電位波形の薬物投与前(Before)と薬物投与後(After)の波形を図44に示す。図44の縦軸は電位(mV)、横軸は時間(msec)である。
【0398】
次に、相違度算出部2908は、シミュレーション結果であり、取得した活動電位情報と、前処理を行った結果である実験活動電位情報との相違度を、以下のようにして算出する。
【0399】
まず、相違度算出部2908は、図示しない記録媒体に格納されている相違度の演算式の情報を読み出す。ここでは、相違度の算出式を、例えば、数式10である、とする。また、図45は、相違度を算出する算出式とその元情報の対応を示す図であり、相違度の概念を示す図である。
【数10】

【0400】
数式10において、パラメータA,B,Cは、重み付けの係数であり、通常、正の値である。また、パラメータA,Bがそれぞれかかっている第1項、第2項は、シミュレーション結果の活動電位情報と、実験活動電位情報との距離である絶対値差情報を算出する項である。また、第1項は、静止膜電位(RMP)の距離である静止膜距離情報を算出する項である。第2項は、再分極相の距離である再分極相距離情報を算出する項である。また、Cがかかっている第3項は、シミュレーション結果の活動電位情報と、実験活動電位情報との距離を規格化して算出される変化差情報を算出する項である。
【0401】
また、数式10において、RMPmodelは、シミュレーション結果の活動電位情報のうちの静止膜電位(RMP)の平均値であり、RMPexpは、実験活動電位情報のうちの静止膜電位(RMP)の平均値であることは好適である。
【0402】
また、数式10において、Vmmodelはシミュレーション結果の活動電位、Vmexpは実験活動電位情報が有する活動電位である。また、phase2とは、活動電位の膜電位が最大値に達した点(時間と膜電位)のことを示す。phase3とは、活動電位の膜電位が最大値となった点(Phase2の開始点)から静止膜電位にまで再分極(静止膜電位に近づく)しきる点(Phase3の終了点)を示す。従って、数式1の第2項のPhase2からPhase3までのVmの絶対値差情報の和を計算するとは、Phase2の開始点からPhase3の終了点までに含まれる活動電位情報(時間、膜電位)の絶対値差情報を計算することをさす。
【0403】
さらに、数式10において、dVm/dtmodelは、Vmmodelを時間微分した値、dVm/dtexpは、Vmexpを時間微分した値である。
【0404】
そして、絶対値差情報取得手段29081は、シミュレーション結果の活動電位情報と、実験活動電位情報を、数式1の第1項、および第2項に入力し、絶対値差情報を算出し、記録媒体に一時格納する。かかる処理の詳細は、図32のフローチャートで述べた通りである。次に、変化差情報取得手段29082は、シミュレーション結果の活動電位情報と、実験活動電位情報を、数式10の第3項に入力し、変化差情報を算出し、記録媒体に一時格納する。
【0405】
そして、相違度算出部2908は、数式10の第1項、第2項および第3項の演算結果を記録媒体から読み出し、それらの和を算出し、相違度を得る。相違度は、値が小さいほど、シミュレーション結果の活動電位情報と、実験活動電位情報が類似していることとなる。
【0406】
次に、許容パラメータセット決定部2909は、算出した相違度を用いて、選択した一の生体パラメータセット(図39の「ID=1」の生体パラメータセット)が許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する。許容パラメータセット決定部2909は、応答曲面法を用いて決定係数を算出し、その決定係数が許容範囲にあるかどうかで、生体パラメータセットが許容範囲内であるか否かを決定することが好適である。なお、応答曲面法を用いる場合、生体パラメータセット格納部2901に格納されている生体パラメータセットとその相違度(相違度算出部2908で算出した相違度)の組が2組以上、応答曲面法を計算するために必要となる。また、応用曲面法を用いれば、応答曲面法の計算結果として、最適解と予測される生体パラメータセットを算出することができる点好適である。
【0407】
そして、許容パラメータセット出力部2911は、許容範囲にある生体パラメータセットを出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示や、記録媒体への蓄積や、外部装置への送信等の概念を含む。
【0408】
次に、生体パラメータ決定装置は、図39の「ID=2」以降の生体パラメータセットに対して、上記と同様の処理を行い、許容範囲にある生体パラメータセットを得る。
【0409】
なお、上記具体例において、許容範囲にある生体パラメータセットを選択する場合、候補となる全生体パラメータセットを処理したが、図34や図37に示すパラメータ選択方法(単純2分割法や範囲縮小法)により、効率的に最適な生体パラメータセットを取得するようにしても良い。
【0410】
以上、本実施の形態によれば、動物実験の結果の活動電位情報である実験活動電位情報から、精度高く生体パラメータセットを得ることができる。
【0411】
また、本実施の形態によれば、応答曲面法を用いて一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定するので、人手を煩わすことなく、容易に、高速に、かつ精度高く生体パラメータセットを得ることができる。
【0412】
なお、本実施の形態において、相違度を算出する場合に、活動電位情報の時間微分(dVm/dt)の情報を用いた。これは、活動電位情報の時間微分(dVm/dt)の情報は、各電流系の変化により特徴的な変化を示す(図46)ことから、薬物による活動電位波形変化を入力として、投与した薬剤の各電流系への直接的な影響を評価することが可能となるからである。なお、図46は、各チャネルのパラメータを0−200%まで変化させた場合のdVm/dt波形変化を示す。具体的には、図46(a)は、生体パラメータ「ICaL」のdVm/dt波形変化、図45(b)は、生体パラメータ「IKr」のdVm/dt波形変化、図46(c)は、生体パラメータ「IK1」のdVm/dt波形変化、図46(d)は、生体パラメータ「IKs」のdVm/dt波形変化を示す。
【0413】
また、本実施の形態における生体パラメータ決定装置を利用し、薬物投入前の活動電位の情報から生体パラメータセットを取得し、かつ、薬物投入後の活動電位の情報から生体パラメータセットを取得すれば、薬物投入の効果や副作用を定量的に得ることができる。なお、薬物投入の効果は、薬物投入前後の生体パラメータセットの差から求められる。
【0414】
また、本実施の形態における生体パラメータ決定装置の出力である生体パラメータセットは、他の装置やソフトウェアが受け付けても良い。例えば、本実施の形態における生体パラメータ決定装置が取得した生体パラメータセットは、薬物投与前後パラメータセット格納部101に格納されている薬物投与前の動物のパラメータセットと薬物投与後の動物のパラメータセットのうちの少なくとも1以上のパラメータセットである。かかる場合、図47に示す不整脈危険性評価システムが構成される。不整脈危険性評価システムは、生体パラメータ決定装置と不整脈危険性評価装置を具備する。不整脈危険性評価装置は、実施の形態1から3で述べたいずれかの不整脈危険性評価装置である。
【0415】
さらに、本実施の形態における生体パラメータ決定装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、格納している2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するパラメータセット選択ステップと、当該パラメータセット選択ステップで選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を得るシミュレーション実行ステップと、前記シミュレーション実行ステップにおける出力である活動電位情報の変化から、シミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったか否かを判断する定常状態判断ステップと、前記定常状態判断ステップでシミュレーション対象の心臓の活動状態が定常状態になったと判断した場合の前記シミュレーション実行ステップにおける出力である活動電位情報を取得する活動電位情報取得ステップと、前記活動電位情報取得ステップで取得した活動電位情報と、格納している実験活動電位情報との相違度を算出する相違度算出ステップと、前記相違度算出ステップで算出した相違度を用いて、前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する許容パラメータセット決定ステップと、前記許容パラメータセット決定ステップで前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットでないと判断した場合に、前記パラメータセット選択部に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示する制御ステップと、前記許容パラメータセット決定ステップで前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した場合に、当該一の生体パラメータセットを出力する許容パラメータセット出力ステップを実行させるためのプログラム、である。
【0416】
また、上記プログラムにおける前記相違度算出ステップは、前記活動電位情報取得ステップで取得した活動電位情報が示す活動電位の値と、前記実験活動電位情報が示す活動電位の値との差に関する情報である絶対値差情報を取得する絶対値差情報取得ステップと、前記活動電位情報取得ステップで取得した活動電位情報が示す活動電位の変化の値と、前記実験活動電位情報が示す活動電位の変化の値との差に関する情報である変化差情報を取得する変化差情報取得ステップと、前記絶対値差情報および前記変化差情報を用いて、前記活動電位情報取得部が取得した活動電位情報と、前記実験活動電位情報との相違度を算出する相違度算出ステップを具備することは好適である。
【0417】
また、上記プログラムは、コンピュータに、前記実験活動電位情報に対してノイズを除去する処理である前処理を行い新たな実験活動電位情報を得る前処理ステップをさらに実行させ、前記相違度算出ステップは、前記活動電位情報取得ステップで取得した活動電位情報と、前記前処理ステップで得た実験活動電位情報との相違度を算出することは好適である。
【0418】
また、上記プログラムにおける前処理ステップは、前記活動電位情報取得ステップで取得した活動電位情報が示す電位の最大値と前記実験活動電位情報が示す電位の最大値が合致するように、前記実験活動電位情報が示す電位の値をスケーリングするスケーリングステップを具備することは好適である。
【0419】
また、上記プログラムにおける前処理ステップは、前記実験活動電位情報が示す電位の値に対して、移動平均を算出し、当該算出した移動平均の値を新たな実験活動電位情報が示す電位の値とする平滑化ステップを具備することは好適である。
【0420】
また、上記プログラムにおける前記パラメータセット選択ステップは、前記2組以上の生体パラメータセットを構成する1以上の各パラメータの値の範囲を用いて、当該1以上の各パラメータの範囲を限定し、当該限定した範囲の情報を有する探索空間を決定する探索範囲決定ステップと、前記探索範囲決定ステップで決定した探索空間に存在する1組以上のパラメータセットから、一のパラメータセットを選択するパラメータセット選択ステップを具備することは好適である。
【0421】
また、上記プログラムにおける前記探索範囲決定ステップは、前回の探索範囲を構成するn個のパラメータの値の範囲を2分割し、当該2分割したn個のパラメータの組み合わせの値の範囲を有する2個の探索範囲を取得し、当該2個の各探索範囲の代表的なパラメータセットのうちで、最も相違度の小さいパラメータセットを有する探索範囲を前回の探索範囲として、探索範囲を狭めてゆくことは好適である。
【0422】
また、上記プログラムにおける前記探索範囲決定ステップは、前回の2以上のパラメータセットを構成する各パラメータの値の範囲の情報を保持しており、前記2以上のパラメータセットのうち、前回に最も相違度の小さいパラメータセットを中心に、前記各パラメータの値の範囲の半分の範囲を次回の探索範囲として、探索範囲を狭めてゆくことは好適である。
【0423】
また、上記プログラムにおける前記許容パラメータセット決定ステップは、前記相違度算出ステップで算出した相違度に対して、応答曲面法を用いて前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定することは好適である。さらに応答曲面法から算出された最適解と予測される生体パラメータセットを選択しても良い。
【0424】
また、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0425】
また、図48は、本明細書で述べたプログラムを実行して、上述した種々の実施の形態の不整脈危険性評価装置、または生体パラメータ決定装置を実現するコンピュータの外観を示す。上述の実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムで実現され得る。図48は、このコンピュータシステム340の概観図であり、図49は、コンピュータシステム340のブロック図である。
【0426】
図48において、コンピュータシステム340は、FD(Flexible Disk)ドライブ、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブを含むコンピュータ341と、キーボード342と、マウス343と、モニタ344とを含む。
【0427】
図49において、コンピュータ341は、FDドライブ3411、CD−ROMドライブ3412に加えて、CPU(Central Processing Unit)3413と、CPU3413、CD−ROMドライブ3412及びFDドライブ3411に接続されたバス3414と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM(Read−Only Memory)3415と、CPU3413に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶するとともに一時記憶空間を提供するためのRAM(Random Access Memory)3416と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するためのハードディスク3417とを含む。ここでは、図示しないが、コンピュータ341は、さらに、LANへの接続を提供するネットワークカードを含んでも良い。
【0428】
コンピュータシステム340に、上述した実施の形態の不整脈危険性評価装置や生体パラメータ決定装置の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM3501、またはFD3502に記憶されて、CD−ROMドライブ3412またはFDドライブ3411に挿入され、さらにハードディスク3417に転送されても良い。これに代えて、プログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ341に送信され、ハードディスク3417に記憶されても良い。プログラムは実行の際にRAM3416にロードされる。プログラムは、CD−ROM3501、FD3502またはネットワークから直接、ロードされても良い。
【0429】
プログラムは、コンピュータ341に、上述した実施の形態の不整脈危険性評価装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティープログラム等は、必ずしも含まなくても良い。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいれば良い。コンピュータシステム340がどのように動作するかは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0430】
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信するステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
【0431】
また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0432】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0433】
以上のように、本発明にかかる不整脈危険性評価装置は、薬物のヒト等の生物に対する不整脈危険性を評価することができる、という効果を有し、不整脈危険性評価システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0434】
【図1】実施の形態1における不整脈危険性評価装置の構成を示すブロック図
【図2】同薬物投与前後パラメータセットの例を示す図
【図3】同心筋活動電位の波形や収縮力の時間変化等の実験結果を示す図
【図4】同活動電位情報の例を示す図
【図5】同活動電位情報取得手段が取得する情報の例を示す図
【図6】同細胞種特有の係数を示す図
【図7】同QT間隔モデル情報の概念を示す図
【図8】同心電図
【図9】同心筋細胞モデルを2次元に配列したシミュレーションモデルを示す図
【図10】同不整脈危険性評価装置の動作について説明するフローチャート
【図11】同不整脈判断処理について説明するフローチャート
【図12】同薬物投与前後パラメータセットの例を示す図
【図13】同活動電位情報の例を示す図
【図14】同心電図の例を示す図
【図15】同スパイラルウェーブシミュレーションの結果の例を示す図
【図16】実施の形態2における不整脈危険性評価装置のブロック図
【図17】同不整脈危険性評価装置の動作について説明するフローチャート
【図18】同心筋細胞シミュレーションの動作について説明するフローチャート
【図19】同不整脈判断処理について説明するフローチャート
【図20】同取得したイオン濃度等の例を示す図
【図21】同出力例を示す図
【図22】実施の形態3における不整脈危険性評価装置のブロック図
【図23】同不整脈危険性評価装置の動作について説明するフローチャート
【図24】同出力情報構成処理について説明するフローチャート
【図25】同活動電位波形の情報を示す図
【図26】同活動電位波形の情報を示す図
【図27】同出力情報の例を示す図
【図28】同活動電位波形の情報の例を示す図
【図29】実施の形態4における生体パラメータ決定装置のブロック図
【図30】同生体パラメータ決定装置の動作について説明するフローチャート
【図31】同前処理の動作について説明するフローチャート
【図32】同相違度算出処理について説明するフローチャート
【図33】同単純2分割法の概念図
【図34】同単純2分割法について説明するフローチャート
【図35】同単純2分割法について説明するフローチャート
【図36】同範囲縮小法の概念図
【図37】同範囲縮小法について説明するフローチャート
【図38】同生体パラメータの情報を示す図
【図39】同生体パラメータセット管理表を示す図
【図40】同実験活動電位情報をグラフで表示した図
【図41】同実験活動電位情報のグラフと活動電位情報(Simulation)のグラフを重ねた図
【図42】同補正したグラフを示す図
【図43】同平滑化処理後の活動電位情報を示す図
【図44】同スケーリング処理と平滑化処理が完了した後の活動電位情報を示す図
【図45】同相違度を算出する算出式とその元情報の対応を示す図
【図46】同各チャネルのパラメータを変化させた場合のdVm/dt波形変化を示す図
【図47】同不整脈危険性評価システムのブロック図
【図48】同コンピュータシステムの概観図
【図49】同コンピュータシステムのブロック図
【図50】動物におけるIKrを算出するモデルを示す図
【図51】ヒトにおけるIKrを算出するモデルを示す図
【符号の説明】
【0435】
100、1601 受付部
101 薬物投与前後パラメータセット格納部
102 動物薬効情報取得部
103 変換元情報格納部
104 薬効変換部
105、1602 心筋細胞シミュレーション部
106 不整脈情報取得部
107、1603 不整脈判断部
108、1604、2208 出力情報構成部
109、1605 出力部
1051 活動電位モデル情報格納手段
1052 活動電位情報取得手段
1053 QT間隔モデル情報格納手段
1054 QT間隔シミュレーション手段
1055 スパイラルウェーブモデル情報格納手段
1056 スパイラルウェーブシミュレーション手段
1071 閾値格納手段
1072 比較手段
1073 不整脈判断手段
2201 固定パラメータ情報格納部
2202 次対象生体薬効情報取得部
2203、2910 制御部
2901 生体パラメータセット格納部
2902 パラメータセット選択部
2903 シミュレーション実行部
2904 定常状態判断部
2905 活動電位情報取得部
2906 実験活動電位情報格納部
2907 前処理部
2908 相違度算出部
2909 許容パラメータセット決定部
2911 許容パラメータセット出力部
16021 イオン濃度算出モデル情報格納手段
16022 イオン濃度算出手段
16023 細胞膜電位算出モデル情報格納手段
16024 細胞膜電位算出手段
16031 イオン濃度閾値格納手段
16032 イオン濃度不整脈判断手段
16033 細胞膜電位閾値格納手段
16034 細胞膜電位不整脈判断手段
18071 閾値格納手段
18072 比較手段
18073 不整脈判断手段
29021 探索範囲決定手段
29022 パラメータセット選択手段
29071 スケーリング手段
29072 平滑化手段
29081 絶対値差情報取得手段
29082 変化差情報取得手段
29083 相違度算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を格納している動物薬効情報格納部と、
前記動物薬効情報を、シミュレーションを行う対象の生体に対する薬効の情報である対象生体薬効情報に変換するための情報である変換元情報を格納している変換元情報格納部と、
前記動物薬効情報を、前記変換元情報を用いて、対象生体薬効情報に変換する薬効変換部と、
前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーション部と、
前記心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得する不整脈情報取得部と、
前記不整脈情報取得部が取得した不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成部と、
前記出力情報を出力する出力部を具備する不整脈危険性評価装置。
【請求項2】
薬物投与前の動物のパラメータセットと薬物投与後の動物のパラメータセットの組である薬物投与前後パラメータセットを格納している薬物投与前後パラメータセット格納部と、
前記薬物投与前後パラメータセットを用いて、動物に対する薬効についての情報である動物薬効情報を取得する動物薬効情報取得部とをさらに具備し、
前記動物薬効情報格納部の動物薬効情報は、動物薬効情報取得部が取得した動物薬効情報である請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項3】
値を固定するパラメータの情報である固定パラメータ情報を格納している固定パラメータ情報格納部と、
前記不整脈情報取得部が取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得する次対象生体薬効情報取得部と、
前記次対象生体薬効情報取得部が取得した新たな対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーション部に与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御部をさらに具備し、
前記出力情報構成部は、
前記不整脈情報取得部が取得した不整脈情報、および前記次対象生体薬効情報取得部が取得した対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項4】
心筋細胞動作情報についての閾値を格納している閾値格納手段と、
前記心筋細胞シミュレーション部が取得した心筋細胞動作情報と、前記閾値格納手段の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果を用いて、前記不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する不整脈判断手段を具備する不整脈判断部をさらに具備し、
前記出力情報構成部は、
前記不整脈判断部の判断結果をも用いて出力情報を構成する請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項5】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
活動電位を取得する算出式を示す情報である活動電位モデル情報を格納している活動電位モデル情報格納手段と、
前記活動電位モデル情報を読み出し、当該活動電位モデル情報を用いて、活動電位情報を取得する活動電位情報取得手段を具備し、
前記心筋細胞動作情報は、前記活動電位情報を含む請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項6】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
QT間隔を取得する算出式を示す情報であるQT間隔モデル情報を格納しているQT間隔モデル情報格納手段と、
前記QT間隔モデル情報を読み出し、当該QT間隔モデル情報を用いて、QT間隔情報を取得するQT間隔シミュレーション手段を具備し、
前記心筋細胞動作情報は、前記QT間隔情報を含む請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項7】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
スパイラルウェーブをシミュレーションするための情報であるスパイラルウェーブモデル情報を格納しているスパイラルウェーブモデル情報格納手段と、
前記スパイラルウェーブモデル情報を読み出し、当該スパイラルウェーブモデル情報を用いて、スパイラルウェーブのシミュレーションを行うスパイラルウェーブシミュレーション手段をさらに具備し、
前記心筋細胞動作情報は、前記スパイラルウェーブにシミュレーション結果を含む請求項1記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項8】
薬物投与の影響を示す1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報である1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付ける受付部と、
前記対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得する心筋細胞シミュレーション部と、
前記心筋細胞動作情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成部と、
前記出力情報を出力する出力部を具備する不整脈危険性評価装置。
【請求項9】
値を固定するパラメータの情報である固定パラメータ情報を格納している固定パラメータ情報格納部と、
前記心筋細胞動作情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得する次対象生体薬効情報取得部と、
前記次対象生体薬効情報取得部が取得した新たな対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーション部に与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御部をさらに具備し、
前記出力情報構成部は、
前記心筋細胞動作情報、および前記次対象生体薬効情報取得部が取得した対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する請求項8記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項10】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
1以上のイオン流量情報をパラメータとして筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する演算式の情報であるイオン濃度算出モデル情報を格納しているイオン濃度算出モデル情報格納手段と、
前記イオン濃度算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記イオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出するイオン濃度算出手段を具備する請求項8記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項11】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を格納している細胞膜電位算出モデル情報格納手段と、
前記細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する細胞膜電位算出手段を具備する請求項8記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項12】
前記心筋細胞シミュレーション部は、
1以上のイオン流量情報をパラメータとして筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出する演算式の情報であるイオン濃度算出モデル情報を格納しているイオン濃度算出モデル情報格納手段と、
前記イオン濃度算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記イオン濃度算出モデル情報に代入し、当該イオン濃度算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を算出するイオン濃度算出手段と、
1以上のイオン流量情報をパラメータとして細胞膜電位を算出する演算式の情報である細胞膜電位算出モデル情報を格納している細胞膜電位算出モデル情報格納手段と、
前記細胞膜電位算出モデル情報を読み出し、前記受付部が受け付けた1以上のイオン流量情報を前記細胞膜電位算出モデル情報に代入し、当該細胞膜電位算出モデル情報が示す演算式を実行し、心筋細胞動作情報である細胞膜電位を算出する細胞膜電位算出手段を具備し、
前記出力情報構成部は、
前記イオン濃度算出手段が算出した筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度を第一の軸の値とし、前記細胞膜電位算出手段が算出した細胞膜電位を第二の軸の値とする二次元平面上に値をプロットし、前記1以上の筋小胞体uptake site内カルシウムイオン濃度についての閾値、および前記1以上の細胞膜電位についての閾値を前記二次元平面上に明示する出力情報を構成する請求項8記載の不整脈危険性評価装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12いずれか記載の不整脈危険性評価装置と生体パラメータ決定装置を具備する不整脈危険性評価システムであって、
前記生体パラメータ決定装置は、
生体のパラメータである生体パラメータを1以上有する生体パラメータセットを2組以上格納している生体パラメータセット格納部と、
前記2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するパラメータセット選択部と、
当該パラメータセット選択部が選択した一の生体パラメータセットを入力にして、心臓の活動をシミュレーションし、心臓の活動電位を示す情報である活動電位情報を得るシミュレーション実行部と、
前記活動電位情報を取得する活動電位情報取得部と、
動物実験の結果の活動電位情報である実験活動電位情報を格納している実験活動電位情報格納部と、
前記活動電位情報取得部が取得した活動電位情報と、前記実験活動電位情報との相違度を算出する相違度算出部と、
前記相違度算出部が算出した相違度を用いて、前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであるか否かを決定する許容パラメータセット決定部と、
前記許容パラメータセット決定部が前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットでないと判断した場合に、前記パラメータセット選択部に未選択の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択するように指示する制御部と、
前記許容パラメータセット決定部が前記一の生体パラメータセットが許容範囲にある生体パラメータセットであると判断した場合に、当該一の生体パラメータセットを出力する許容パラメータセット出力部を具備し、
前記許容パラメータセット出力部が出力する生体パラメータセットは、前記不整脈危険性評価装置の薬物投与前後パラメータセット格納部に格納されている薬物投与前の動物のパラメータセット、および薬物投与後の動物のパラメータセットの少なくともいずれか一方のパラメータセットである不整脈危険性評価システム。
【請求項14】
コンピュータに、
格納されている動物薬効情報を読み出し、かつ格納されている変換元情報を読み出し、当該動物薬効情報と変換元情報を用いて、対象生体薬効情報を取得し、メモリ上に配置する薬効変換ステップと、
前記対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得し、メモリ上に配置する心筋細胞シミュレーションステップと、
前記心筋細胞動作情報を読み出し、当該心筋細胞動作情報を用いて、薬物の心臓に対する不整脈の副作用に関する情報である不整脈情報を取得し、メモリ上に配置する不整脈情報取得ステップと、
前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報を読み出し、当該不整脈情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成ステップと、
前記出力情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得し、メモリ上に配置する次対象生体薬効情報取得ステップと、
前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した新たな対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーションステップに与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御ステップをさらに実行させ、
前記出力情報構成ステップにおいて、
前記不整脈情報取得ステップで取得した不整脈情報、および前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した対象生体薬効情報を読み出し、出力情報を構成する請求項14記載のプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
前記心筋細胞シミュレーションステップで取得した心筋細胞動作情報と、格納している閾値を読み出し、当該心筋細胞動作情報と閾値とを比較し、当該比較結果を用いて、前記不整脈情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報であるか否かを判断する不整脈判断ステップをさらに実行させ、
前記出力情報構成ステップにおいて、
前記不整脈判断ステップの判断結果をも用いて出力情報を構成する請求項13記載のプログラム。
【請求項17】
コンピュータに、
薬物投与の影響を示す1以上のイオンチャネルの電気流量についての情報である1以上のイオン流量情報を含む対象生体薬効情報を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けた対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を用いて、生物の心筋細胞の振る舞いについての情報である心筋細胞動作情報を取得し、メモリ上に記憶させる心筋細胞シミュレーションステップと、
前記心筋細胞動作情報を読み出し、当該心筋細胞動作情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する出力情報構成ステップと、
前記出力情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータに、
前記心筋細胞動作情報が所定以上の不整脈の副作用を示している情報である場合に、前記対象生体薬効情報が有する固定パラメータ情報のパラメータの値を固定して、他のパラメータの値を変動させ、新たな対象生体薬効情報を取得し、メモリ上に配置する次対象生体薬効情報取得ステップと、
前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した新たな対象生体薬効情報を読み出し、当該対象生体薬効情報を前記心筋細胞シミュレーションステップに与え、心筋細胞動作情報を取得させる制御ステップをさらに実行させ、
前記出力情報構成ステップにおいて、
前記心筋細胞動作情報、および前記次対象生体薬効情報取得ステップで取得した対象生体薬効情報を読み出し、当該心筋細胞動作情報、および対象生体薬効情報を用いて出力する情報である出力情報を構成する請求項17記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図34】
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【図35】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図21】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図33】
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【図36】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図50】
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【図51】
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【公開番号】特開2008−86588(P2008−86588A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271601(P2006−271601)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】